IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴィオニア スウェーデン エービーの特許一覧

特許6994031制御装置、駆動方法、コンピュータプログラム及びデータ構造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】制御装置、駆動方法、コンピュータプログラム及びデータ構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/0136 20060101AFI20220106BHJP
   B60R 21/16 20060101ALI20220106BHJP
   G01P 15/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B60R21/0136 310
B60R21/16
G01P15/00 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019523478
(86)(22)【出願日】2018-05-30
(86)【国際出願番号】 JP2018020653
(87)【国際公開番号】W WO2018225591
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2019-11-19
(31)【優先権主張番号】P 2017111905
(32)【優先日】2017-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】518238850
【氏名又は名称】ヴィオニア スウェーデン エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 頼子
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-247277(JP,A)
【文献】特開2016-147668(JP,A)
【文献】特表2008-505002(JP,A)
【文献】特開2007-112297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/00-21/38
G01P 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方で該車両の幅方向の中央位置からずれて一つの加速度センサが配置されており、該加速度センサの検出結果に基づいて、前記車両と対象物との衝突の際に乗員を保護する乗員保護装置を駆動する制御装置において、
前記対象物に対する前記車両の相対速度及び前記車両に対する前記対象物の方向を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて閾値を設定する閾値設定部と、
前記加速度センサの出力信号及び前記閾値に基づいて、前記乗員保護装置の駆動を制御する駆動制御部と
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記閾値設定部は、前記検出部の検出結果に基づいて第1閾値を設定し、
前記駆動制御部は、前記加速度センサの出力信号のレベル及び前記第1閾値に基づいて、前記乗員保護装置の駆動を制御することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記加速度センサの出力信号を積分して速度信号を取得する速度算出部を備えており、
前記閾値設定部は、前記検出部の検出結果に基づいて第2閾値を設定し、
前記駆動制御部は、前記速度信号のレベル及び前記第2閾値に基づいて、前記乗員保護装置の駆動を制御することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記閾値設定部は、前記検出部の検出結果に基づいて第1閾値及び第2閾値を設定し、
前記加速度センサの出力信号を積分して速度信号を取得する速度算出部と、
前記加速度センサの出力信号のレベルが前記第1閾値より高いか否か、及び、前記速度信号のレベルが前記第2閾値より高いか否かを判定する判定部とを備えており、
前記駆動制御部は前記判定部の判定結果に基づいて前記乗員保護装置の駆動を制御することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
複数の相対速度と、複数の対象物の方向との関係に基づいて複数の閾値を記憶している記憶部を備え、
前記閾値設定部は、
検出された車両の相対速度及び対象物の方向に応じて、前記複数の閾値から前記第1閾値を設定することを特徴とする請求項2又は4に記載の制御装置。
【請求項6】
複数の相対速度と、複数の対象物の方向との関係に基づいて複数の閾値を記憶している記憶部を備え、
前記閾値設定部は、
検出された車両の相対速度及び対象物の方向に応じて、前記複数の閾値から前記第2閾値を設定することを特徴とする請求項3又は4に記載の制御装置。
【請求項7】
前記車両の前方の複数箇所に設けられ、前記対象物との距離を検出する距離検出部を備え、
前記閾値設定部は、前記閾値の設定に、前記距離検出部の検出結果を用いることを特徴とする請求項1から6の何れか一つに記載の制御装置。
【請求項8】
前記検出部はレーダーであることを特徴とする請求項1から7の何れか一つに記載の制御装置。
【請求項9】
前記距離検出部はコーナーセンサであることを特徴とする請求項7に記載の制御装置。
【請求項10】
前記閾値設定部は、前記対象物の位置が前記加速度センサに近い程、高い閾値を設定することを特徴とする請求項1から9の何れか一つに記載の制御装置。
【請求項11】
車両の前方で該車両の幅方向の中央位置からずれて一つの加速度センサが配置されており、該加速度センサの検出結果に基づいて、前記車両と対象物との衝突の際に乗員を保護する乗員保護装置を駆動する駆動方法において、
前記対象物に対する前記車両の相対速度及び前記車両に対する前記対象物の方向を検出する検出部の検出結果に基づいて閾値を設定し、
前記加速度センサの出力信号及び前記閾値に基づいて前記乗員保護装置の駆動を制御することを特徴とする駆動方法。
【請求項12】
対象物に対する車両の相対速度及び前記車両に対する前記対象物の方向を検出する検出部の検出結果に基づいて閾値を設定し、
前記車両の前方で該車両の幅方向の中央位置からずれて配置された一つの加速度センサから出力信号を取得し、
取得した前記加速度センサの前記出力信号及び前記閾値に基づいて乗員保護装置へ駆動信号を出力する
処理を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両と対象物との衝突の際に乗員を保護する乗員保護装置を駆動する、制御装置、駆動方法及びコンピュータプログラム、並びに斯かる駆動に用いられるデータ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の乗員を衝突の際の衝撃から保護するために、車両にはエアバッグ装置、シートベルト装置等の乗員保護装置が設けられている。車両が衝突すると、衝突検出センサから検出信号が制御装置に送られ、該制御装置が前記乗員保護装置を駆動する。前記制御装置は車両の中央部(例えば、センターフロア)に配置されており、前記衝突検出センサ(メインセンサ)は例えば前記制御装置に設けられる。しかし、車両の衝突をいち早く検出して適切な乗員保護を行うためには、車両前方部のいわゆるクラッシュゾーン等にも衝突センサ(サテライトセンサ)を設けることが望ましい。
【0003】
一方、昨今の自動車開発における電気制御システムの多様化により、前方監視用のレーダー技術を用いた衝突回避システム等が導入されつつある。前方監視用のレーダーは、車両の前方において該車両の幅方向の中央位置に設置されるので、前記サテライトセンサは、前記中央位置から前記幅方向にずれた位置に配置しなければならない。
【0004】
車両前方部にサテライトセンサを1つ配置する場合、車両の前記中央位置に配置すると、正突(正面衝突)又はオフセット衝突(車両前方右側衝突、車両前方左側衝突)等を検出する場合に車両前方における衝突位置による検出感度特性の偏りがなくて都合が良い。
【0005】
しかしながら、上述したように、サテライトセンサを前記中央位置からずれた位置に配置した場合は、以下のように検出感度特性の偏りが発生する。
例えば、前記中央位置を基準に左側に前記サテライトセンサを配置した場合には、該サテライトセンサは同じ衝突速度であっても車両前方左側衝突の場合には(相対的にサテライトセンサに近いので)大きいレベルの検出信号を出力する。また、車両前方右側衝突の場合には(相対的にサテライトセンサから遠いので)小さいレベルの検出信号を出力する。その結果、サテライトセンサの検出信号からは、衝突速度の低い場合の車両前方左側衝突と、相対的に衝突速度の高い場合の車両前方右側衝突の区別がつかず、正確に前記乗員保護装置を駆動することができない。このような問題は、前記中央位置を基準に右側に前記サテライトセンサを配置した場合も同様である。
【0006】
このような問題に対して、特許文献1においては、車両の走行速度に対応して閾値を設定し、サテライトセンサの出力信号のレベルと設定された閾値とを比較することにより、車両の衝突を判別する乗員保護装置の制御装置について開示されている。
【0007】
一方、特許文献2においては、車両内であってサテライトセンサとは別の場所に、車両の進行方向と直交する方向の衝突加速度を検出するための主センサを設け、前記サテライトセンサからの出力と前記主センサからの出力とのうち大きな値の出力を取り出して、衝突判定を行う乗員拘束装置の制御装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2014/065008号
【文献】特開2005-306185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1においては、車両の走行速度のみに応じて閾値を設定して車両の衝突を判別するので、オフセット衝突等において衝突位置の検出感度特性への影響を反映できない。更に、正確な衝突の判別及び乗員保護装置の駆動のためには、衝突の対象物が停止していたのか移動していたのか、移動していたのであれば斯かる車両と同じ方向だったのか反対方向だったのかを含めて考慮する必要がある。
【0010】
すなわち、正確に衝突の判別及び乗員保護装置の駆動を行うためには、衝突位置の検出感度特性への影響、衝突の対象物の移動如何、移動方向等をパラメータとして反映すべきである。
【0011】
特許文献1の乗員保護装置の制御装置及び特許文献2の乗員拘束装置の制御装置では、このようなパラメータの影響を反映しておらず、正確に衝突の判別を行い、適切に乗員保護装置を駆動できない。
【0012】
実施の形態に係る発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両前方部における衝突位置の検出感度特性への影響、衝突の対象物の移動如何、移動方向のパラメータを反映することによって、正確に衝突の判別を行い、かつ適切に乗員保護装置を駆動する、制御装置、駆動方法及びコンピュータプログラム、並びに斯かる駆動に用いられるデータ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施の形態に係る制御装置は、車両の前方で該車両の幅方向の中央位置からずれて配置された加速度センサの検出結果に基づいて、前記車両と対象物との衝突の際に乗員を保護する乗員保護装置を駆動する制御装置において、前記対象物に対する前記車両の相対速度及び前記車両に対する前記対象物の方向を検出する検出部と、前記検出部の検出結果に基づいて閾値を設定する閾値設定部と、前記加速度センサの出力信号及び前記閾値に基づいて、前記乗員保護装置の駆動を制御する駆動制御部とを備えることを特徴とする。
【0014】
実施の形態に係る制御装置は、前記閾値設定部は、前記検出部の検出結果に基づいて第1閾値を設定し、前記駆動制御部は、前記加速度センサの出力信号のレベル及び前記第1閾値に基づいて、前記乗員保護装置の駆動を制御する。
【0015】
実施の形態に係る制御装置は、前記加速度センサの出力信号を積分して速度信号を取得する速度算出部を備えており、前記閾値設定部は、前記検出部の検出結果に基づいて第2閾値を設定し、前記駆動制御部は、前記速度信号のレベル及び前記第2閾値に基づいて、前記乗員保護装置の駆動を制御する。
【0016】
実施の形態に係る制御装置は、前記閾値設定部は、前記検出部の検出結果に基づいて第1閾値及び第2閾値を設定し、前記加速度センサの出力信号を積分して速度信号を取得する速度算出部と、前記加速度センサの出力信号のレベルが前記第1閾値より高いか否か、及び、前記速度信号のレベルが前記第2閾値より高いか否かを判定する判定部とを備えており、前記駆動制御部は前記判定部の判定結果に基づいて前記乗員保護装置の駆動を制御することを特徴とする。
【0017】
実施の形態に係る制御装置は、複数の相対速度と、複数の対象物の方向との関係に基づいて複数の閾値を記憶している記憶部を備え、前記閾値設定部は、検出された車両の相対速度及び対象物の方向に応じて、前記複数の閾値から前記第1閾値を設定することを特徴とする。
【0018】
実施の形態に係る制御装置は、複数の相対速度と、複数の対象物の方向との関係に基づいて複数の閾値を記憶している記憶部を備え、前記閾値設定部は、検出された車両の相対速度及び対象物の方向に応じて、前記複数の閾値から前記第2閾値を設定することを特徴とする。
【0019】
実施の形態に係る制御装置は、前記車両の前方の複数箇所に設けられ、前記対象物との距離を検出する距離検出部を備え、前記閾値設定部は、前記閾値の設定に、前記距離検出部の検出結果を用いることを特徴とする。
【0020】
実施の形態に係る制御装置は、前記検出部はレーダーであることを特徴とする。
【0021】
実施の形態に係る制御装置は、前記距離検出部はコーナーセンサであることを特徴とする。
【0022】
実施の形態に係る制御装置は、前記閾値設定部は、前記対象物の位置が前記加速度センサに近い程、高い閾値を設定することを特徴とする。
【0023】
実施の形態に係る駆動方法は、車両の前方で該車両の幅方向の中央位置からずれて配置された加速度センサの検出結果に基づいて、前記車両と対象物との衝突の際に乗員を保護する乗員保護装置を駆動する駆動方法において、前記対象物に対する前記車両の相対速度及び前記車両に対する前記対象物の方向を検出する検出部の検出結果に基づいて閾値を設定し、前記加速度センサの出力信号及び前記閾値に基づいて前記乗員保護装置の駆動を制御することを特徴とする。
【0024】
実施の形態に係るコンピュータプログラムは、対象物に対する車両の相対速度及び前記車両に対する前記対象物の方向を検出する検出部の検出結果に基づいて閾値を設定し、前記車両の前方で該車両の幅方向の中央位置からずれて配置された加速度センサから出力信号を取得し、取得した前記加速度センサの前記出力信号及び前記閾値に基づいて乗員保護装置へ駆動信号を出力する処理を実行させることを特徴とする。
【0025】
実施の形態に係るデータ構造は、複数の相対速度と複数の相対位置との夫々の関係に関連付けされた閾値を有するデータ構造であって、コンピュータが、車両の前方にて該車両の幅方向の中央位置からずれて配置された加速度センサを有する前記車両の対象物に対する相対速度及び方向を取得し、前記相対速度と前記方向に対応する相対位置に基づいて、前記データ構造から対応する閾値を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
実施の形態に係る発明によれば、より正確に衝突の判別を行い、より適切に乗員保護装置を駆動する、制御装置、駆動方法及びコンピュータプログラム、並びに斯かる駆動に用いられるデータ構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】加速度センサが車両の幅方向における中央位置からずれて設置された場合の不具合を説明する説明図である。
図2A】サテライトセンサが車両の幅方向の中央位置からずれて設置された場合、左側衝突時の出力信号に基づく速度信号例を示す例示図である。
図2B】サテライトセンサが車両の幅方向の中央位置からずれて設置された場合、右側衝突時の出力信号に基づく速度信号例を示す例示図である。
図3A】サテライトセンサが車両の幅方向の中央位置からずれて設置された場合、左側衝突時の出力信号例を示す例示図である。
図3B】サテライトセンサが車両の幅方向の中央位置からずれて設置された場合、右側衝突時の出力信号例を示す例示図である。
図4】実施の形態1に係る乗員保護システムの要部構成を説明する説明図である。
図5】本実施の形態に係る乗員保護システムの要部構成を説明する説明図である。
図6】本実施の形態に係る乗員保護システムの制御部の要部構成を説明する機能ブロック図である。
図7】本実施の形態に係る制御部の取得部による相対位置の判別を説明する説明図である。
図8】本実施の形態に係る制御部の記憶部が記憶しているLUTを概念的に示す概念図である。
図9】本実施の形態に係る乗員保護システムにおいて、制御部がエアバッグ装置を駆動する処理を説明するフローチャートである。
図10】本実施の形態に係る制御部の取得部によって行われる相対速度の判別処理を説明するフローチャートである。
図11A】本実施の形態に係る車両において、左側衝突時の加速度信号を示す例示図である。
図11B】本実施の形態に係る車両において、右側衝突時の加速度信号を示す例示図である。
図12】実施の形態2に係る乗員保護システムにおいて、制御部がエアバッグ装置を駆動する処理を説明するフローチャートである。
図13A】本実施の形態に係る車両において、左側衝突時の速度信号を示す例示図である。
図13B】本実施の形態に係る車両において、右側衝突時の速度信号を示す例示図である。
図14】実施の形態3に係る乗員保護システムにおいて、制御部がエアバッグ装置を駆動する処理を説明するフローチャートである。
図15】実施の形態4に係る乗員保護システムの要部構成を説明する説明図である。
図16】実施の形態4に係る乗員保護システムの要部構成を説明するブロック図である。
図17】実施の形態5に係る乗員保護システムの要部構成を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、実施の形態に係る乗員保護装置の制御装置及び乗員保護装置の駆動方法を、いわゆる乗員保護システムに適用した場合を例として、図面に基づいて詳述する。斯かる乗員保護システムにおいては、車両の前方にて該車両の幅方向の中央位置からずれて配置された加速度センサと、前記車両と対象物との衝突の際に乗員を保護する乗員保護装置とを備え、前記加速度センサの検出結果に基づいて、前記乗員保護装置を駆動する。
【0029】
(実施の形態1)
図1は加速度センサが車両の幅方向における中央位置からずれて設置された場合の不具合を説明する説明図である。車両Vは前方部にサテライトセンサ2を設けており、車両Vの中央部にメインセンサ(図示せず)を含む制御部3を設けている。
【0030】
サテライトセンサ2は、車両Vの前方部のいわゆるクラッシュゾーンにおける加速度変化(減速度)を検出するものであり、車両Vの幅方向Wにおける中央位置からずれて配置されている。より詳しくは、サテライトセンサ2は、前記中央位置を通って車両Vの前後方向に延びる中央線Cから、前記幅方向Wの図面視左側にずれて位置している。制御部3はサテライトセンサ2からの出力信号に基づいて衝突を判別する。
【0031】
また、車両Vは制御部3によって駆動されるエアバッグ装置4を備えている。制御部3はサテライトセンサ2の検出結果に基づいて、エアバッグ装置4のエアバッグを展開させる。
【0032】
図1に示すように、サテライトセンサ2が中央位置から左側にずれて配置された場合においては、車両Vの左側Lにてオフセット衝突が発生した場合と、車両Vの右側Rにてオフセット衝突が発生した場合とでサテライトセンサ2の検出感度特性の偏りが発生する。以下、詳しく説明する。
【0033】
図2はサテライトセンサ2が車両Vの幅方向Wの中央位置からずれて設置された場合、衝突時の出力信号に基づく速度信号例を示す例示図である。図2の速度信号は、サテライトセンサ2が出力する加速度信号を積分して得られる。図2において縦軸は速度を示しており、横軸は時間を示している。また、図3はサテライトセンサ2が車両Vの幅方向Wの中央位置からずれて設置された場合、衝突時の出力信号(加速度信号)例を示す例示図である。図3において縦軸は加速度を示しており、横軸は時間を示している。
【0034】
図2Aは10km/hの速度にて車両Vの左側Lにてオフセット衝突が発生した場合の速度変化を示しており、図2Bは50km/hの速度にて車両Vの右側Rにてオフセット衝突が発生した場合の速度変化を示している。また、図3Aは10km/hの速度にて車両Vの左側Lにてオフセット衝突が発生した場合の加速度変化を示しており、図3Bは50km/hの速度にて車両Vの右側Rにてオフセット衝突が発生した場合の加速度変化を示している。
【0035】
このように、図2においてはAと、Bとで衝突時の車両Vの速度が異なっており、Bの方の速度が高い。しかしながら、時間t1の経過時点では、図2Aの速度値が参考線refより高く、図2Bの速度値が参考線refより低いことから、低速衝突の図2Aの速度値が高速衝突の図2Bより高い。
【0036】
このような問題は、図3の加速度変化においても同様である。開始後の初期においては、図3Aでは加速度値が参考線refより高い部分が存在するが、図3Bでは加速度値が参考線refより低い。すなわち、低速衝突の図3Aの加速度値が高速の図3Bより高い。
【0037】
一方、図2Bのように車両Vの速度が速い場合は、確実な乗員保護のために、エアバッグ装置4の展開判定の時間を早めなければならず、時間t1の付近でエアバッグ装置を展開させる必要がある。しかし、図2からだと、時間t2の経過以後でないと車両Vの速度差が識別できず、早期での展開判定は困難である。
【0038】
以上のように、サテライトセンサ2が車両Vの幅方向Wの中央位置からずれて設置された場合は、上述したようなサテライトセンサ2の検出感度特性の偏りが発生する。従って、左右のオフセット衝突に対しては、サテライトセンサ2の検出のみで乗員保護装置を適切に駆動することは非常に難しい。
【0039】
実施の形態に係る乗員保護システムの制御装置は、このような問題に対応できるように構成されている。以下、実施の形態1に対して、詳しく説明する。
【0040】
図4は実施の形態1に係る乗員保護システムの要部構成を説明する説明図である。以下において、図1と同様の部分については同一の符号を付し、斯かる部分の詳細な説明を省略する。
【0041】
実施の形態1に係る乗員保護システム1においては、車両Vの前方部に、レーダー5(検出部)が、車両Vの幅方向Wにおける中央位置を通って車両Vの前後方向に延びる中央線C上に配置されている。また、車両Vは前方部にサテライトセンサ2(加速度センサ)を更に設けており、車両Vの中央部には制御部3(制御装置)を設けている。
【0042】
サテライトセンサ2は、前記中央位置を通って車両Vの前後方向に延びる中央線Cから、前記幅方向Wの図面視左側にずれて位置している。サテライトセンサ2は加速度センサであり、車両Vの前方部のクラッシュゾーンにおける加速度変化(減速度)を検出して制御部3に送る。本実施の形態ではサテライトセンサ2が中央線Cに対して図面視左側にずれて設置されている場合を例に挙げて説明するが、これに限るものでなく、中央線Cに対して図面視右側にずれて設置されても良い。
【0043】
レーダー5はいわゆる前方監視用のレーダーであり、例えばミリ波レーダー、レーザレーダー、超音波レーダー等である。レーダー5は、車両Vの前方へ電波、レーザ等の電磁波又は超音波を出力し、反射波を検出することによって、前方の対象物に対する車両Vの相対速度、車両Vに対する前記対象物の方向等を検出する。本実施の形態においては、レーダー5が車両Vの前記中央位置に一つ設けられた場合を例に説明するが、これに限るものではない。車両Vの前方部にて中央線Cの両側に対称的又は非対称的に複数のレーダー5が設けられても良い。
【0044】
また、車両Vは制御部3によって駆動される乗員保護装置4を備えている。乗員保護装置4は、例えば、エアバッグ装置、シートベルト装置、警告装置等である。制御部3はサテライトセンサ2の検出結果に基づいて、エアバッグ装置のエアバッグを展開させ、シートベルト装置のベルトを急速に巻き上げ、警告装置の警告音を鳴らす。以下においては、乗員保護装置4がハンドルに内蔵されているエアバッグ装置である場合を例に説明し、乗員保護装置4をエアバッグ装置4と言う。
エアバッグ装置4はハンドル装置、ダッシュパネル等に内蔵されており、制御部3から起動信号を受信するとガス発生装置の動作によってエアバッグが展開する。
【0045】
制御部3は、車両Vのほぼ中央部(センターフロア)に配置されており、サテライトセンサ2及びレーダー5からの出力信号に基づいて乗員保護装置4を駆動させる。制御部3は、例えば、マイクロコンピュータシステムなどによって構成される信号処理機能や論理判断機能を供える電子制御装置(ECU)である。
【0046】
図5は本実施の形態に係る乗員保護システム1の要部構成を説明する説明図である。制御部3は、サテライトセンサ2の出力信号を受信してデジタル信号に変換する通信IF31、信号処理、制御アルゴリズム等を実行する信号処理部32、メインセンサ33、信号処理部32が発する起動指令信号を受信してエアバッグ装置4の起爆信号を生成してエアバッグ装置4に送信する起動回路34等を備えている。
【0047】
通信IF31はサテライトセンサ2の出力信号の受信に対応して信号処理部32の内蔵タイマ(図示せず)に動作指令信号を送る。前記内蔵タイマはこれに応じて前記出力信号の受信からの経時時間tnを出力する。
【0048】
本実施の形態においては、エアバッグ装置4の駆動は、サテライトセンサ2及びレーダー5の検出結果に基づいて制御部3が行う。エアバッグ装置4の駆動に、メインセンサ33の検出結果は影響しない。
本実施の形態においては、サテライトセンサ2の配置位置が車両センター位置から偏倚しているのでそれによる感度特性の偏りの発生を回避するように信号処理部32で信号処理及び判断アルゴリズムが実行される。
【0049】
図6は、本実施の形態に係る乗員保護システム1の制御部3の要部構成を説明する機能ブロック図である。信号処理部32はCPU321と、取得部322と、閾値設定部323と、速度算出部324と、判定部325と、駆動制御部326と、記憶部327とを有している。
【0050】
取得部322は、衝突に際して、衝突に係る対象物に対する車両Vの相対速度と、車両Vに対する前記対象物の方向をレーダー5から取得する。すなわち、取得部322は、レーダー5からの出力信号に基づいて、前記対象物に対する車両Vの相対速度と、該対象物の車両Vに対する相対位置を判別する。
【0051】
相対速度については、取得部322は、レーダー5からの出力信号(相対速度)を受信して、車両Vの相対速度を、例えば、2つの閾値を用いて、低速、中速、高速のうちの何れかの区分に振り分けて判別する。例えば、斯かる判別用の閾値が18km/h及び45km/hである場合、取得部322は、0~18km/hの相対速度を低速と、18~45km/hの相対速度を中速と、45km/h以上の相対速度を高速と判別する。
【0052】
図7は、本実施の形態に係る制御部3の取得部322による相対位置の判別を説明する説明図である。
相対位置については、図7に示すように、車両Vの中央線Cの位置を0度とし、2つの方向閾値を用いて、相対方向がθ度である前記対象物に対して左右方向と中央方向に判別することができる。これによって、取得部322は斯かる対象物の衝突の際、左右のオフセット衝突か、正面衝突かを検出し、対象物の相対位置を夫々左右又は正面に判別できる。
また、斯かる対象物の相対方向がθであると検出された場合、右側オフセット衝突は+θ度の範囲内にあり、左側オフセット衝突は-θ度の範囲内となる。また、中央の場合は、+方向及び-方向の両方にわたって対象物が感知される。従って、取得部322は右側のオフセット衝突、左側のオフセット衝突、そして中央のオフセット衝突を検出し、対象物の相対位置を夫々右、左、中央に判別することができる。
以上の記載に限るものでなく、車両V内で別途左方向、右方向、中央方向の判別ができるのであれば、斯かる判別の結果を取得部322が取得するように構成しても良い。
【0053】
閾値設定部323は、レーダー5の検出結果、又は、取得部322での判別の結果に基づいて、一つの加速度閾値(第1閾値)を設定する。また、閾値設定部323は、レーダー5の検出結果、又は、取得部322での判別の結果に基づいて、一つの速度閾値(第2閾値)を設定する。例えば、記憶部327には複数の加速度閾値及び複数の速度閾値を示すLUT(Look Up Table)が記憶されており、閾値設定部323は、車両Vの相対速度及び前記対象物の相対位置に基づいて、前記LUTから加速度閾値及び速度閾値を設定する。
【0054】
記憶部327は、例えば、フラッシュメモリ、EEPROM(登録商標)、HDD、MRAM(磁気抵抗メモリ)、FeRAM(強誘電体メモリ)、又は、OUM等の不揮発性の記憶媒体により構成されている。記憶部327は上述したように、LUT(判断テーブル)を記憶している。
【0055】
図8は本実施の形態に係る制御部3の記憶部327が記憶しているLUTを概念的に示す概念図である。LUTにおいては、車両Vの相対速度の区分及び対象物の相対位置に閾値タイプが関連付けられている。詳しくは、相対速度の低速、中速、高速の区分と、相対位置の左、中央、右の区分の9つの組み合わせ毎に、閾値タイプ1~4が関連付けされている。また、図示しないが、記憶部327には、各閾値タイプ毎に前記加速度閾値及び速度閾値が記憶されている。
【0056】
前記閾値タイプ1~4は、閾値タイプ1、閾値タイプ2、閾値タイプ3、閾値タイプ4の順に閾値が低くなる。すなわち、LUTは、速度が高い程、対象物の位置(相対位置)がサテライトセンサ2の位置から遠い程、閾値が低くなること、また、速度が低い程、対象物の位置(相対位置)がサテライトセンサ2の位置に近い程、閾値が高くなることを示している。また、LUTは、同一の速度においては、対象物の位置(相対位置)がサテライトセンサ2の位置から遠い程、閾値が低くなることを示している。
【0057】
また、本実施の形態におけるLUTでは、サテライトセンサ2が設置されている車両Vの左側と、サテライトセンサ2に近い中央を同じ閾値タイプにすることにより、処理を簡略化している。しかし、これに限るものでなく、前記9つの組み合わせ毎に異なる閾値タイプを定めておいても良い。
【0058】
取得部322は、レーダー5の検出結果を取得して車両Vの相対速度及び前記対象物の相対位置を判別し、閾値設定部323は、取得部322で判別された車両Vの相対速度及び前記対象物の相対位置に基づいて、前記LUTから一つの閾値タイプを選択し、選択された閾値タイプに対応する加速度閾値及び速度閾値を設定する。
【0059】
速度算出部324は、サテライトセンサ2からの出力信号を積分することによって速度信号を取得する。
【0060】
判定部325は、サテライトセンサ2の出力信号に係る加速度信号のレベルを、上述のように閾値設定部323によって設定された加速度閾値と比較して、何れの方が大きいかを判定する。また、判定部325は、速度算出部324によって取得された速度信号のレベルを、上述のように閾値設定部323によって設定された速度閾値と比較して、何れの方が大きいかを判定する。
【0061】
駆動制御部326は、判定部325の判定結果に基づいて、エアバッグ装置4の起爆信号をエアバッグ装置4に送信する指示(起動指令信号)を起動回路34に送る。
【0062】
CPU321は、このような制御アルゴリズムを適宜実行することによって、上述した各種ハードウェアの制御を行なう。
【0063】
なお、上述した取得部322、閾値設定部323、速度算出部324、判定部325、駆動制御部326、記憶部327はハードウェアロジックによって構成してもよいし、CPU321が所定のプログラムを実行することにより、ソフトウェア的に構築されてもよい。
【0064】
図9は本実施の形態に係る乗員保護システム1において、制御部3がエアバッグ装置4を駆動する処理を説明するフローチャートである。
【0065】
斯かる対象物と車両Vとの衝突に前後して、制御部3の速度算出部324はレーダー5からレーダー5の検出結果を読み取り、車両Vの相対速度を取得し(ステップS101)、取得した車両Vの相対速度をレジスタ(図示せず)に記憶して確定する(ステップS102)。
【0066】
次いで、取得部322は、斯かる相対速度が低速、中速、高速の何れかの区分に属するか判別する処理を行う(ステップS103)。以下、斯かる相対速度の判別処理について詳しく説明する。
【0067】
図10は本実施の形態に係る制御部3の取得部322によって行われる相対速度の判別処理を説明するフローチャートである。説明の便宜上、前記レジスタには、斯かる判別処理に用いられる2つの閾値(閾値1,閾値2)が記憶されているとする。また、閾値1は閾値2より低い速度値である。
【0068】
取得部322は、図9のステップS101にて取得した車両Vの相対速度が閾値1より低い(遅い)か否かを判定する(ステップS201)。取得した相対速度が閾値1より低いと判定した場合(ステップS201:YES)、取得部322は取得した相対速度を低速の区分として判別する(ステップS202)。
【0069】
また、取得した相対速度が閾値1より低くないと判定した場合(ステップS201:NO)、取得部322は取得した相対速度が閾値2より低いか否かを更に判定する(ステップS203)。取得した相対速度が閾値2より低い(遅い)と判定した場合(ステップS203:YES)、取得部322は取得した相対速度を中速の区分として判別する(ステップS204)。
【0070】
一方、取得した相対速度が閾値2より低くないと判定した場合(ステップS203:NO)、取得部322は取得した相対速度を高速の区分として判別する(ステップS205)。
以上のような処理によって、取得した車両Vの相対速度は、低速、中速、高速の何れかの区分に判別される。
【0071】
次いで、取得部322は、衝突に係る対象物の相対位置の判別を行い、相対位置を確定する(ステップS104)。取得部322によって行われる、対象物の相対位置の判別については既に説明しており、詳細な説明を省略する。
【0072】
そして、閾値設定部323は、前記LUTから前記閾値タイプを選択して加速度閾値(a)を設定する、閾値設定処理を行う(ステップS105)。すなわち、斯かる閾値設定処理では、ステップS103で判別された車両Vの相対速度と、ステップS104で確定された対象物の相対位置に基づき、相対速度が低速、中速、高速の区分の何れかであるか、相対位置が左、中央、右の区分の何れかであるかに応じて、前記LUTから対応する閾値タイプが選択される。以後、閾値設定部323は選択された閾値タイプに対応する加速度閾値(a)を設定する。
【0073】
次いで、CPU321は、ステップS105の閾値設定処理にて、閾値タイプ1が選択されたか否かを判定する(ステップS106)。閾値タイプ1が選択されたと判定した場合(ステップS106:YES)、CPU321はサテライトセンサ2から出力信号(加速度データ)を読み取って取得する(ステップS107)。
【0074】
また、判定部325は、サテライトセンサ2の出力信号に係る加速度信号のレベルが、ステップS105にて設定された閾値タイプ1の加速度閾値(a)より大きいか否かを判定する(ステップS108)。
【0075】
判定部325によってサテライトセンサ2の出力信号に係る加速度信号のレベルが、閾値タイプ1の加速度閾値(a)より大きいと判定された場合(ステップS108:YES)、駆動制御部326は前記起動指令信号を起動回路34に送る。駆動制御部326からの起動指令信号に応じて起動回路34はエアバッグ装置4に起爆信号を出力し(ステップS117)、エアバッグ装置4を展開させる。
【0076】
また、判定部325によって、サテライトセンサ2の出力信号に係る加速度信号のレベルが、閾値タイプ1の加速度閾値(a)より大きくないと判定された場合(ステップS108:NO)、CPU321は処理を再びステップS107に戻す。
【0077】
一方、ステップS106において、ステップS105の閾値設定処理で、閾値タイプ1が選択されなかったと判定した場合(ステップS106:NO)、CPU321は、ステップS105の閾値設定処理にて、閾値タイプ2が選択されたか否かを再び判定する(ステップS109)。
【0078】
閾値タイプ2が選択されたと判定した場合(ステップS109:YES)、CPU321はサテライトセンサ2から出力信号(加速度データ)を読み取って取得する(ステップS110)。
【0079】
また、判定部325は、サテライトセンサ2の出力信号に係る加速度信号のレベルが、ステップS105にて設定された閾値タイプ2の加速度閾値(a)より大きいか否かを判定する(ステップS111)。
【0080】
判定部325によってサテライトセンサ2の出力信号に係る加速度信号のレベルが、閾値タイプ2の加速度閾値(a)より大きいと判定された場合(ステップS111:YES)、駆動制御部326は前記起動指令信号を起動回路34に送る。駆動制御部326からの起動指令信号に応じて起動回路34はエアバッグ装置4に起爆信号を出力する(ステップS117)。
【0081】
また、判定部325によって、サテライトセンサ2の出力信号に係る加速度信号のレベルが、閾値タイプ2の加速度閾値(a)より大きくないと判定された場合(ステップS111:NO)、CPU321は処理を再びステップS110に戻す。
【0082】
一方、ステップS109において、ステップS105の閾値設定処理で、閾値タイプ2が選択されなかったと判定した場合(ステップS109:NO)、CPU321は、ステップS105の閾値設定処理にて、閾値タイプ3が選択されたか否かを再び判定する(ステップS112)。
【0083】
閾値タイプ3が選択されたと判定した場合(ステップS112:YES)、CPU321はサテライトセンサ2から出力信号(加速度データ)を読み取って取得する(ステップS113)。
【0084】
また、判定部325は、サテライトセンサ2の出力信号に係る加速度信号のレベルが、ステップS105にて設定された閾値タイプ3の加速度閾値(a)より大きいか否かを判定する(ステップS114)。
【0085】
判定部325によってサテライトセンサ2の出力信号に係る加速度信号のレベルが、閾値タイプ3の加速度閾値(a)より大きいと判定された場合(ステップS114:YES)、駆動制御部326は前記起動指令信号を起動回路34に送る。駆動制御部326からの起動指令信号に応じて起動回路34はエアバッグ装置4に起爆信号を出力する(ステップS117)。
【0086】
また、判定部325によって、サテライトセンサ2の出力信号に係る加速度信号のレベルが、閾値タイプ3の加速度閾値(a)より大きくないと判定された場合(ステップS114:NO)、CPU321は処理を再びステップS113に戻す。
【0087】
一方、ステップS112において、ステップS105の閾値設定処理で、閾値タイプ3が選択されなかったと判定した場合(ステップS112:NO)、CPU321はサテライトセンサ2から出力信号(加速度データ)を読み取って取得する(ステップS115)。
【0088】
また、判定部325は、サテライトセンサ2の出力信号に係る加速度信号のレベルが、ステップS105にて設定された閾値タイプ4の加速度閾値(a)より大きいか否かを判定する(ステップS116)。
【0089】
判定部325によってサテライトセンサ2の出力信号に係る加速度信号のレベルが、閾値タイプ4の加速度閾値(a)より大きいと判定された場合(ステップS116:YES)、駆動制御部326は前記起動指令信号を起動回路34に送る。駆動制御部326からの起動指令信号に応じて起動回路34はエアバッグ装置4に起爆信号を出力する(ステップS117)。
【0090】
また、判定部325によって、サテライトセンサ2の出力信号に係る加速度信号のレベルが、閾値タイプ4の加速度閾値(a)より大きくないと判定された場合(ステップS116:NO)、CPU321は処理を再びステップS115に戻す。
【0091】
以上のように、本実施の形態においては、衝突の際、対象物との相対速度と、対象物と車両Vとの相対位置、すなわち衝突位置を反映して、閾値を設定する。従って、サテライトセンサ2が車両Vの幅方向Wの中央位置からずれて設置されたことから、サテライトセンサ2の検出感度特性に上述したような偏りが発生した場合でも、最適な閾値設定によって適切にエアバッグ装置4を制御できる。
【0092】
図11は本実施の形態に係る車両Vにおいて、衝突時の加速度信号を示す例示図である。図11Aは10km/hの相対速度にて車両Vの左側にてオフセット衝突が発生した場合の加速度変化を示しており、図11Bは50km/hの相対速度にて車両Vの右側にてオフセット衝突が発生した場合の加速度変化を示している。図11において縦軸は相対速度を示しており、横軸は時間を示している。
【0093】
本実施の形態においては、図11Aのように、相対速度が低速の区分であって、相対位置が左である場合は、図11A中に一点鎖線として表す一の加速度閾値(a)を設定する。また、図11Bのように、相対速度が高速の区分であって、相対位置が右である場合は、図11B中に実線として表す、前記一の加速度閾値(a)より低い他の加速度閾値(a)を設定する。
【0094】
従って、図11Aのような低速では高価なエアバッグ装置4のエアバッグの展開を抑制し、図11Bのような高速では、早期にエアバッグ装置4のエアバッグを展開させることができ、乗員保護を図ることができる。
【0095】
(実施の形態2)
図12は実施の形態2に係る乗員保護システム1において、制御部3がエアバッグ装置4を駆動する処理を説明するフローチャートである。
【0096】
斯かる対象物と車両Vとの衝突に前後して、制御部3の速度算出部324はレーダー5からレーダー5の検出結果を読み取り、車両Vの相対速度を取得し(ステップS301)、取得した車両Vの相対速度をレジスタに記憶して確定する(ステップS302)。
【0097】
次いで、取得部322は、斯かる相対速度が低速、中速、高速の何れかの区分に属するか判別する処理を行う(ステップS303)。制御部3の取得部322によって行われる相対速度の判別処理については既に説明しており、詳しく説明を省略する。
【0098】
次いで、取得部322は、衝突に係る対象物の相対位置の判別を行い、相対位置を確定する(ステップS304)。取得部322によって行われる、対象物の相対位置の判別については既に説明しており、詳細な説明を省略する。
【0099】
そして、閾値設定部323は、前記LUTから前記閾値タイプを選択して速度閾値(V)を設定する、閾値設定処理を行う(ステップS305)。すなわち、斯かる閾値設定処理では、ステップS303で判別された車両Vの相対速度と、ステップS304で確定された対象物の相対位置に基づき、相対速度が低速、中速、高速の区分の何れかであるか、相対位置が左、中央、右の区分の何れかであるかに応じて、前記LUTから対応する閾値タイプが選択される。以後、閾値設定部323は選択された閾値タイプに対応する速度閾値(V)を設定する。
【0100】
次いで、CPU321は、ステップS305の閾値設定処理にて、閾値タイプ1が選択されたか否かを判定する(ステップS306)。閾値タイプ1が選択されたと判定した場合(ステップS306:YES)、CPU321はサテライトセンサ2から出力信号(加速度データ)を読み取る。また、速度算出部324は読み取られた出力信号を積分することによって速度信号を取得する(ステップS307)。
【0101】
また、判定部325は、取得された速度信号のレベルが、ステップS305にて設定された閾値タイプ1の速度閾値(V)より大きいか否かを判定する(ステップS308)。
【0102】
判定部325によって、取得された速度信号のレベルが閾値タイプ1の速度閾値(V)より大きいと判定された場合(ステップS308:YES)、駆動制御部326は前記起動指令信号を起動回路34に送る。駆動制御部326からの起動指令信号に応じて起動回路34はエアバッグ装置4に起爆信号を出力し(ステップS317)、エアバッグ装置4を展開させる。
【0103】
また、判定部325によって、取得された速度信号のレベルが、閾値タイプ1の速度閾値(V)より大きくないと判定された場合(ステップS308:NO)、CPU321は処理を再びステップS307に戻す。
【0104】
一方、ステップS306において、ステップS305の閾値設定処理で閾値タイプ1が選択されなかったと判定した場合(ステップS306:NO)、CPU321は、ステップS305の閾値設定処理にて、閾値タイプ2が選択されたか否かを再び判定する(ステップS309)。
【0105】
閾値タイプ2が選択されたと判定した場合(ステップS309:YES)、CPU321はサテライトセンサ2から出力信号(加速度データ)を読み取る。また、速度算出部324は読み取られた出力信号を積分することによって速度信号を取得する(ステップS310)。
【0106】
また、判定部325は、取得された速度信号のレベルが、ステップS305にて設定された閾値タイプ2の速度閾値(V)より大きいか否かを判定する(ステップS311)。
【0107】
判定部325によって、取得された速度信号のレベルが閾値タイプ2の速度閾値(V)より大きいと判定された場合(ステップS311:YES)、駆動制御部326は前記起動指令信号を起動回路34に送る。駆動制御部326からの起動指令信号に応じて起動回路34はエアバッグ装置4に起爆信号を出力する(ステップS317)。
【0108】
また、判定部325によって、取得された速度信号のレベルが、閾値タイプ2の速度閾値(V)より大きくないと判定された場合(ステップS311:NO)、CPU321は処理を再びステップS310に戻す。
【0109】
一方、ステップS309において、ステップS305の閾値設定処理で、閾値タイプ2が選択されなかったと判定した場合(ステップS309:NO)、CPU321は、ステップS305の閾値設定処理にて、閾値タイプ3が選択されたか否かを再び判定する(ステップS312)。
【0110】
閾値タイプ3が選択されたと判定した場合(ステップS312:YES)、CPU321はサテライトセンサ2から出力信号(加速度データ)を読み取る。また、速度算出部324は読み取られた出力信号を積分することによって速度信号を取得する(ステップS313)。
【0111】
また、判定部325は、取得された速度信号のレベルが、ステップS305にて設定された閾値タイプ3の速度閾値(V)より大きいか否かを判定する(ステップS314)。
【0112】
判定部325によって、取得された速度信号のレベルが、閾値タイプ3の速度閾値(V)より大きいと判定された場合(ステップS314:YES)、駆動制御部326は前記起動指令信号を起動回路34に送る。駆動制御部326からの起動指令信号に応じて起動回路34はエアバッグ装置4に起爆信号を出力する(ステップS317)。
【0113】
また、判定部325によって、取得された速度信号のレベルが、閾値タイプ3の速度閾値(V)より大きくないと判定された場合(ステップS314:NO)、CPU321は処理を再びステップS313に戻す。
【0114】
一方、ステップS312において、ステップS305の閾値設定処理で、閾値タイプ3が選択されなかったと判定した場合(ステップS312:NO)、CPU321はサテライトセンサ2から出力信号(加速度データ)を読み取る。また、速度算出部324は読み取られた出力信号を積分することによって速度信号を取得する(ステップS315)。
【0115】
また、判定部325は、取得された速度信号のレベルが、ステップS305にて設定された閾値タイプ4の速度閾値(V)より大きいか否かを判定する(ステップS316)。
【0116】
判定部325によって、取得された速度信号のレベルが、閾値タイプ4の速度閾値(V)より大きいと判定された場合(ステップS316:YES)、駆動制御部326は前記起動指令信号を起動回路34に送る。駆動制御部326からの起動指令信号に応じて起動回路34はエアバッグ装置4に起爆信号を出力する(ステップS317)。
【0117】
また、判定部325によって、取得された速度信号のレベルが、閾値タイプ4の速度閾値(V)より大きくないと判定された場合(ステップS316:NO)、CPU321は処理を再びステップS315に戻す。
【0118】
以上のように、本実施の形態においては、衝突の際、対象物との相対速度と、対象物と車両Vとの相対位置、すなわち衝突位置を反映して、閾値を設定する。従って、サテライトセンサ2が車両Vの幅方向Wの中央位置からずれて設置されたことから、サテライトセンサ2の検出感度特性に上述したような偏りが発生した場合でも、最適な閾値設定によって適切にエアバッグ装置4を制御できる。
【0119】
図13は本実施の形態に係る車両Vにおいて、衝突時の速度信号を示す例示図である。図13Aは10km/hの相対速度にて車両Vの左側にてオフセット衝突が発生した場合の速度変化を示しており、図13Bは50km/hの相対速度にて車両Vの右側にてオフセット衝突が発生した場合の速度変化を示している。図13において縦軸は相対速度を示しており、横軸は時間を示している。
【0120】
本実施の形態においては、図13Aのように、相対速度が低速の区分であって、相対位置が左である場合は、図13A中に一点鎖線として表す一の速度閾値(V)を設定する。また、図13Bのように、相対速度が高速の区分であって、相対位置が右である場合は、図13B中に一点鎖線として表す、他の速度閾値(V)を設定する。他の速度閾値(V)は初期(t1付近)にて前記一の速度閾値(V)より低い。
【0121】
従って、図13Aのような低速では高価なエアバッグ装置4のエアバッグの展開を抑制し、図13Bのような高速では、早期にエアバッグ装置4のエアバッグを展開させることができ、乗員保護を図ることができる。
【0122】
実施の形態1と同様の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0123】
(実施の形態3)
図14は実施の形態3に係る乗員保護システム1において、制御部3がエアバッグ装置4を駆動する処理を説明するフローチャートである。
【0124】
ステップS401~ステップS404までの処理は、図12のステップS301~ステップS304の処理と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0125】
閾値設定部323は、前記LUTから前記閾値タイプを選択して加速度閾値(a)及び速度閾値(V)を設定する、閾値設定処理を行う(ステップS405)。すなわち、斯かる閾値設定処理では、ステップS403で判別された車両Vの相対速度と、ステップS404で確定された対象物の相対位置に基づき、相対速度が低速、中速、高速の区分の何れかであるか、相対位置が左、中央、右の区分の何れかであるかに応じて、前記LUTから対応する閾値タイプが選択される。以後、閾値設定部323は選択された閾値タイプに対応する加速度閾値(a)及び速度閾値(V)を設定する。
【0126】
次いで、CPU321は、ステップS405の閾値設定処理にて、閾値タイプ1が選択されたか否かを判定する(ステップS406)。閾値タイプ1が選択されたと判定した場合(ステップS406:YES)、CPU321はサテライトセンサ2から出力信号(加速度データ)を読み取って取得する(ステップS407)。また、速度算出部324は読み取られた出力信号を積分することによって速度信号を取得する(ステップS408)。
【0127】
また、判定部325は、サテライトセンサ2の出力信号に係る加速度信号のレベルが、ステップS405にて設定された閾値タイプ1の加速度閾値(a)より大きいか否かを判定する(ステップS409)。
【0128】
判定部325によって、サテライトセンサ2の出力信号に係る加速度信号のレベルが、閾値タイプ1の加速度閾値(a)より大きくないと判定された場合(ステップS409:NO)、CPU321は処理を再びステップS407に戻す。
【0129】
また、サテライトセンサ2の出力信号に係る加速度信号のレベルが、閾値タイプ1の加速度閾値(a)より大きいと判定した場合(ステップS409:YES)、更に、判定部325は、取得された速度信号のレベルが、ステップS405にて設定された閾値タイプ1の速度閾値(V)より大きいか否かを判定する(ステップS410)。
【0130】
判定部325によって、取得された速度信号のレベルが閾値タイプ1の速度閾値(V)より大きいと判定された場合(ステップS410:YES)、駆動制御部326は前記起動指令信号を起動回路34に送る。駆動制御部326からの起動指令信号に応じて起動回路34はエアバッグ装置4に起爆信号を出力し(ステップS425)、エアバッグ装置4を展開させる。
【0131】
また、判定部325によって、取得された速度信号のレベルが、閾値タイプ1の速度閾値(V)より大きくないと判定された場合(ステップS410:NO)、CPU321は処理を再びステップS407に戻す。
【0132】
一方、ステップS406において、ステップS405の閾値設定処理で、閾値タイプ1が選択されなかったと判定した場合(ステップS406:NO)、CPU321は、ステップS405の閾値設定処理にて、閾値タイプ2が選択されたか否かを再び判定する(ステップS411)。
【0133】
閾値タイプ2が選択されたと判定した場合(ステップS411:YES)、CPU321はサテライトセンサ2から出力信号(加速度データ)を読み取って取得する(ステップS412)。また、速度算出部324は読み取られた出力信号を積分することによって速度信号を取得する(ステップS413)。
【0134】
また、判定部325は、サテライトセンサ2の出力信号に係る加速度信号のレベルが、ステップS405にて設定された閾値タイプ2の加速度閾値(a)より大きいか否かを判定する(ステップS414)。
【0135】
判定部325によって、サテライトセンサ2の出力信号に係る加速度信号のレベルが、閾値タイプ2の加速度閾値(a)より大きくないと判定された場合(ステップS414:NO)、CPU321は処理を再びステップS412に戻す。
【0136】
また、サテライトセンサ2の出力信号に係る加速度信号のレベルが、閾値タイプ2の加速度閾値(a)より大きいと判定した場合(ステップS414:YES)、更に、判定部325は、取得された速度信号のレベルが、ステップS405にて設定された閾値タイプ2の速度閾値(V)より大きいか否かを判定する(ステップS415)。
【0137】
判定部325によって、取得された速度信号のレベルが閾値タイプ2の速度閾値(V)より大きいと判定された場合(ステップS415:YES)、駆動制御部326は前記起動指令信号を起動回路34に送る。駆動制御部326からの起動指令信号に応じて起動回路34はエアバッグ装置4に起爆信号を出力し(ステップS425)、エアバッグ装置4を展開させる。
【0138】
また、判定部325によって、取得された速度信号のレベルが、閾値タイプ2の速度閾値(V)より大きくないと判定された場合(ステップS415:NO)、CPU321は処理を再びステップS412に戻す。
【0139】
一方、ステップS411において、ステップS405の閾値設定処理で、閾値タイプ2が選択されなかったと判定した場合(ステップS411:NO)、CPU321は、ステップS405の閾値設定処理にて、閾値タイプ3が選択されたか否かを再び判定する(ステップS416)。
【0140】
閾値タイプ3が選択されたと判定した場合(ステップS416:YES)、CPU321はサテライトセンサ2から出力信号(加速度データ)を読み取って取得する(ステップS417)。また、速度算出部324は読み取られた出力信号を積分することによって速度信号を取得する(ステップS418)。
【0141】
また、判定部325は、サテライトセンサ2の出力信号に係る加速度信号のレベルが、ステップS405にて設定された閾値タイプ3の加速度閾値(a)より大きいか否かを判定する(ステップS419)。
【0142】
判定部325によって、サテライトセンサ2の出力信号に係る加速度信号のレベルが、閾値タイプ3の加速度閾値(a)より大きくないと判定された場合(ステップS419:NO)、CPU321は処理を再びステップS417に戻す。
【0143】
また、サテライトセンサ2の出力信号に係る加速度信号のレベルが、閾値タイプ3の加速度閾値(a)より大きいと判定した場合(ステップS419:YES)、更に、判定部325は、取得された速度信号のレベルが、ステップS405にて設定された閾値タイプ3の速度閾値(V)より大きいか否かを判定する(ステップS420)。
【0144】
判定部325によって、取得された速度信号のレベルが閾値タイプ3の速度閾値(V)より大きいと判定された場合(ステップS420:YES)、駆動制御部326は前記起動指令信号を起動回路34に送る。駆動制御部326からの起動指令信号に応じて起動回路34はエアバッグ装置4に起爆信号を出力し(ステップS425)、エアバッグ装置4を展開させる。
【0145】
また、判定部325によって、取得された速度信号のレベルが、閾値タイプ3の速度閾値(V)より大きくないと判定された場合(ステップS420:NO)、CPU321は処理を再びステップS417に戻す。
【0146】
一方、ステップS416において、ステップS405の閾値設定処理で、閾値タイプ3が選択されなかったと判定した場合(ステップS416:NO)、CPU321はサテライトセンサ2から出力信号(加速度データ)を読み取って取得する(ステップS421)。また、速度算出部324は読み取られた出力信号を積分することによって速度信号を取得する(ステップS422)。
【0147】
また、判定部325は、サテライトセンサ2の出力信号に係る加速度信号のレベルが、ステップS405にて設定された閾値タイプ4の加速度閾値(a)より大きいか否かを判定する(ステップS423)。
【0148】
判定部325によって、サテライトセンサ2の出力信号に係る加速度信号のレベルが、閾値タイプ4の加速度閾値(a)より大きくないと判定された場合(ステップS423:NO)、CPU321は処理を再びステップS421に戻す。
【0149】
また、サテライトセンサ2の出力信号に係る加速度信号のレベルが、閾値タイプ4の加速度閾値(a)より大きいと判定した場合(ステップS423:YES)、更に、判定部325は、取得された速度信号のレベルが、ステップS405にて設定された閾値タイプ4の速度閾値(V)より大きいか否かを判定する(ステップS424)。
【0150】
判定部325によって、取得された速度信号のレベルが閾値タイプ4の速度閾値(V)より大きいと判定された場合(ステップS424:YES)、駆動制御部326は前記起動指令信号を起動回路34に送る。駆動制御部326からの起動指令信号に応じて起動回路34はエアバッグ装置4に起爆信号を出力し(ステップS425)、エアバッグ装置4を展開させる。
【0151】
また、判定部325によって、取得された速度信号のレベルが、閾値タイプ4の速度閾値(V)より大きくないと判定された場合(ステップS424:NO)、CPU321は処理を再びステップS421に戻す。
【0152】
以上のように、本実施の形態においては、衝突の際、対象物との相対速度と、対象物と車両Vとの相対位置、すなわち衝突位置を反映して、閾値を設定する。従って、サテライトセンサ2が車両Vの幅方向Wの中央位置からずれて設置されたことから、サテライトセンサ2の検出感度特性に上述したような偏りが発生した場合でも、最適な閾値設定によって適切にエアバッグ装置4を制御できる。
【0153】
更に、本実施の形態においては、対象物との相対速度と衝突位置とを反映して設定された閾値、及び、サテライトセンサ2からの出力信号に基づく加速度レベル、かつ速度レベルに基づいてエアバッグ装置4の駆動を制御する。従って、より適切にエアバッグ装置4を制御できる。
【0154】
実施の形態1と同様の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0155】
(実施の形態4)
以上においては、レーダー5から取得した相対速度及び相対位置をパラメータとして反映し、閾値を設定する場合を例に説明したがこれに限るものでない。例えば、いわゆるコーナーセンサからの出力信号をパラメータとして更に反映するように構成しても良い。
【0156】
図15は実施の形態4に係る乗員保護システム1の要部構成を説明する説明図であり、図16は実施の形態4に係る乗員保護システム1の要部構成を説明するブロック図である。以下において、実施の形態1と同様の部分については同一の符号を付し、斯かる部分の詳細な説明を省略する。
【0157】
本実施の形態に係る車両Vは、3つのコーナーセンサ6(距離検出部)を備えている。夫々のコーナーセンサ6は、車両Vの前方部の左右端部、中央線C上に夫々設けられている。例えば、コーナーセンサ6は車両Vの前方のバンパに埋め込まれてもよい。コーナーセンサ6は、ミリ波、超音波などを利用して、車両Vの前方から側面方向にかけて存在する対象物を検出し、検出結果を信号処理部32に出力する。各コーナーセンサ6からの出力信号には、例えば、対象物の有無、対象物との距離などの情報が含まれる。
【0158】
取得部322は、衝突に際して、衝突に係る対象物に対する車両Vの相対速度と、車両Vに対する前記対象物の方向をレーダー5から取得する。車両Vに対する前記対象物の方向、すなわち、相対位置を取得する際、取得部322は、コーナーセンサ6から検出結果(出力信号)を取得して反映する。
【0159】
例えば、コーナーセンサ6の検出結果から対象物との距離情報を取得できるので、3つのコーナーセンサ6の検出結果のうち最小値に対応するコーナーセンサ6の位置にて対象物との衝突が発生したと判別することができる。従って、衝突に際し、取得部322がレーダー5から取得する車両Vに対する対象物の方向に基づいて前記相対位置を判別する際、コーナーセンサ6から検出結果を更に反映することで、より確実に前記相対位置の判別が可能である。
【0160】
以上においては、3つのコーナーセンサ6が車両Vの前方部に設けられている場合を例に説明したが、これに限るものではない。例えば、2つのコーナーセンサ6が中央線Cに対して互いに対称とするように設けられても良い。
【0161】
実施の形態1と同様の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0162】
(実施の形態5)
図17は実施の形態5に係る乗員保護システム1の要部構成を説明する説明図である。本実施の形態に係る乗員保護システム1においては、制御を行うためのコンピュータプログラムが、I/Fを介してUSBメモリ等の可搬型記録媒体Uで提供することも可能であるように構成されている。
【0163】
本実施の形態に係る乗員保護システム1は外装(又は内装)の記録媒体読み取り装置(図示せず)を備えており、該記録媒体読み取り装置に、対象物に対する車両の相対速度及び前記車両に対する前記対象物の方向を検出する検出部の検出結果に基づいて閾値を設定し、前記車両の前方で該車両の幅方向の中央位置からずれて配置された加速度センサから出力信号を取得し、取得した前記加速度センサの前記出力信号及び前記閾値に基づいて乗員保護装置へ駆動信号を出力するプログラム等が記録された可搬型記録媒体Uを挿入して、例えば、CPU321が斯かるプログラムを実行する。これにより、本実施の形態に係る乗員保護システム1として機能する。
【0164】
前記記録媒体としては、いわゆるプログラムメディアであっても良く、磁気テープ及びカセットテープ等のテープ系、フレキシブルディスク及びハードディスク等の磁気ディスク並びにCD-ROM/MO/MD/DVD等の光ディスクのディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM、EPROM、EEPROM(登録商標)、フラッシュROM等による半導体メモリを含めた固定的にプログラムコードを担持する媒体であっても良い。
【0165】
実施の形態1と同様の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【符号の説明】
【0166】
2 サテライトセンサ
3 制御部
4 エアバッグ装置
5 レーダー
6 コーナーセンサ
323 閾値設定部
324 速度算出部
325 判定部
327 記憶部
326 駆動制御部
V 車両
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17