(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】CO2捕獲および分離のための進歩した多孔性炭素吸着剤
(51)【国際特許分類】
B01J 20/30 20060101AFI20220106BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20220106BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20220106BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20220106BHJP
B01D 39/20 20060101ALI20220106BHJP
C01B 32/05 20170101ALI20220106BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20220106BHJP
C01B 39/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B01J20/30
B01J20/20 B
B01J20/28 Z
B01D53/04
B01D39/20 C
C01B32/05
C01B32/50
C01B39/00
(21)【出願番号】P 2019525993
(86)(22)【出願日】2017-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2017079542
(87)【国際公開番号】W WO2018091630
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-10-16
(32)【優先日】2016-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2016-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】フィンシー, ヴァンセント
(72)【発明者】
【氏名】デュボワ, エリック ピエール
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-529747(JP,A)
【文献】特表平03-505697(JP,A)
【文献】国際公開第2016/003680(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/109381(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02J 20/00-20/28、20/30-20/34
B01D 53/02-53/12
C01B 32/00-32/991、33/20-39/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性炭素質モノリス構造体の製造方法であって、以下の工程:
i -
塩化ビニリデンポリマーおよびフッ化ビニリデンポリマーから選択される、ある融点を有するハロゲン化ポリマーを含む粒子
からなる前駆体材料を金型に導入する工程と、
ii - 同時に、ハロゲン化ポリマーが塩化ビニリデンホモポリマーである場合10~300バール、そしてハロゲン化ポリマーが塩化ビニリデンホモポリマーとは異なる場合10~150バールの範囲の圧力Pを前駆体材料に加えること、かつ、T
1,最低=20℃~T
1,最高=T
m-50℃(ここで、T
mは、ハロゲン化ポリマーの融点である)の範囲の温度T
1に前駆体材料を維持することによって、前駆体材料の粒子の凝集体を含む成形体を形成する工程と、
iii - 任意選択的に成形体を冷却し、次に離型する工程と、
iv - 成形体を炉に導入する工程と、
v - 多孔性炭素質モノリス構造体が得られるまで炉中でハロゲン化ポリマーの熱分解をもたらす工程と
を含む方法。
【請求項2】
ハロゲン化ポリマーがどんなものであれ、圧力Pが10~150バー
ルの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ハロゲン化ポリマーがどんなものであれ、圧力Pが10~50バールの範囲である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程vが、
v
a - 成形体の温度を、厳密にT
2,最低=T
m-50℃よりも上の、そして厳密にT
2,最高=T
mよりも下の温度T
2までにすることと、
v
b - 成形体を、不活性ガスフロー下で温度T
2に維持してハロゲン化ポリマーの熱分解および不溶融性チャーの形成をもたらすことと、
v
c - 不溶融性チャーの温度を、厳密にT
3,最低=T
mよりも上の、そして厳密にT
3,最高=900℃よりも下の温度T
3までにすることと、
v
d - 不溶融性チャーを、不活性ガスフロー下で温度T
3に維持してハロゲン化ポリマーの熱分解をもたらし、それによって多孔性炭素質モノリス構造体を得ることと
を含む請求項1
~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ハロゲン化ポリマーを含む粒子が145μm~400μmの範囲の平均径を有する請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
(i)少なくとも4の長さ対幅および/または長さ対厚さ比、ならびに(ii)3重量%~24重量%の範囲の
ジ-イソ-ノニルフタレート(DINP
)吸収の容量を有する、請求項1または
5に定義され
るハロゲン化ポリマーを含む粒子
からなる前駆体材料の粒子の凝集体を含む成形体。
【請求項7】
溝付き炭素質モノリスの製造方法であって、前記方法が、
- 請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法によって多孔性炭素質モノリス構造体を製造する工程と、
- そのようにして製造された多孔性炭素質モノリス構造体を彫刻する工程と
を含む方法。
【請求項8】
ミクロ多孔性と、粒子内マクロ多孔性および粒子間マクロ多孔性の少なくとも1つとを示すハニカム多孔性炭素質構造体の製造方法であって、前記方法が、
- 請求項
7に記載の方法によって溝付き炭素質モノリスを製造する工程と、
- そのようにして製造された溝付き炭素質モノリスを組み立てる工程と
を含む方法。
【請求項9】
そのようにして製造された溝付き炭素質モノリスを組み立てる工程が、接着剤で接着させることによって、またはポリマーフィルムで包むことによって達成される請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
ミクロ多孔性と、粒子内マクロ多孔性および粒子間マクロ多孔性の少なくとも1つとを示すハニカム多孔性炭素質構造体の製造方法であって、前記方法が、
- 請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法によって多孔性炭素質モノリス構造体を製造する工程と、
- そのようにして製造された多孔性炭素質モノリス構造体にドリルで穴を開ける工程と
を含む方法。
【請求項11】
CO
2ガスを選択的に吸着することによってガス組成物からCO
2を抽出するための
、請求項
1~
5のいずれか一項に記載の
方法によって製造された多孔性炭素質モノリス構造体の、または請求項
7に記載の方法によって製造された溝付き
炭素質モノリスの
、または請求項
8~
10のいずれか一項に記載の方法によって製造されたハニカム多孔性炭素質構造体
の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年11月17日出願の欧州特許出願第16199421.5号および2016年11月30日出願の欧州特許出願第16201573.9号に対する優先権を主張するものであり、これらの出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、多孔性炭素質モノリス構造体の製造方法に関する。それはまた、ハロゲン化ポリマーを含む粒子の凝集体を含む成形体の製造に関する。それは、両方ともミクロ多孔性と、粒子内マクロ多孔性および粒子間マクロ多孔性の少なくとも1つとを示す炭素質モノリス構造体、ハニカム多孔性炭素質構造体に関する。それはまた、CO2ガスを選択的に吸着することによりガス組成物からCO2を抽出するための前記多孔性炭素質モノリスのまたは前記ハニカム多孔性炭素質構造体の使用に関する。
【0003】
精製のための固体吸着剤の使用が、蒸留、液体ベースの吸収プロセスまたは抽出プロセスなどの従来プロセスよりも経済的、エネルギー的および生態学的利点を提供することは一般に認められている。分離技術の2、3の例としては、圧力スイング吸着(PSA)、温度スイング吸着(TSA)、真空スイング吸着(VSA)、電気スイング吸着(ESA)ならびに真空および温度スイング吸着の組み合わせ(VTSA)または真空および圧力スイング吸着の組み合わせ(VPSA)が挙げられる。PSAおよびTSAは両方とも商業的に利用可能な技術であり、工業界において広く用いられているけれども、非常に大量のフィード流れ容積が処理される必要があるプロセスでの吸着技術の適用は、依然として困難だがやりがいのあるままである。これは、煙道ガスおよび天然ガスなどのCO2含有フィード流れからのCO2の捕獲および精製について特に当てはまる。
【0004】
TSAは、低温での一成分の選択的吸着のための第1工程と、吸着剤の温度上昇が気相中の吸着成分のモル分率の増加、それ故に生成物流れの精製に関与する第2工程とを含む。TSAプロセスを実行可能にするために、吸着、再生、および冷却工程によって吸着剤を迅速にサイクルすることができる、高速温度スイング吸着(RTSA)プロセスが必要とされる。
【0005】
薄壁寸法が迅速な加熱および物質移行を可能にする、中空繊維、ラミネートおよびハニカムなどの高アスペクト比構造体への吸着剤の組み立てが前途有望である。一般に、相互接続したおよび分岐したマクロ多孔性流路を持った、モノリスのような、構造化吸着剤は、従来のビーズおよび顆粒と比べて性能が優れている。
【0006】
多孔性炭素は、水処理、大気浄化またはガス貯蔵などの多くの用途に使用されてきた。様々な前駆体の不活性雰囲気下での炭化が、効率的な材料を生成すると考えられてきた。一般に、材料を多孔性炭素として使用できるように表面積を高めるために、炭化に、酸化雰囲気での活性化工程が続く。
【0007】
塩化またはフッ化ビニリデンポリマーの炭化は、そのようなポリマーの熱分解が、触媒投入のいかなる必要もなしに引き起こされるので、そして結果として生じた炭素質材料が所望の孔隙率を生成するためのいかなる活性化工程をも必要としないので有利な方法である。塩化およびフッ化ビニリデンポリマーは両方とも、多孔性炭素質構造体の前駆体としての良好な候補であり得るが、塩化ビニリデンが、その分解がフッ化ビニリデンほど厳しい温度を必要としないので、かつ、その熱分解が、フッ化水素よりも取り扱うのがより容易である塩酸を生成するので一般に好ましい。
【0008】
多孔性炭素質材料の前駆体としての塩化ビニリデンポリマーは、文書で十分に裏付けされている。しかしながら、少ない公文書が、そのようなポリマーから出発する炭素モノリスの製造を取り扱っているにすぎない。実際に、炭素モノリスは、多孔性炭素粉末をバインダーと混合することによって、および結果として生じた混合物をプレスして適切な形状にすることによって一般に製造される。それらの中で、国際公開第2015/109381号パンフレットは、PVDC粒子とPVDCラテックスとの混合、引き続く比較的低い温度で真空下での混合物の乾燥によるポリ塩化ビニリデン(PVDC)モノリスの製造を開示している。結果として、乾燥ラテックスは、粒子用のバインダーとして働くモノリスにおけるPVDC粒子の凝集力を確実にする。PVDCモノリスは次に、ゆっくりした速度で温度を上げることによって加熱され、このようにして炭素質材料を与えるために金型中で不活性雰囲気下に段階的に熱分解される。この方法は、バインダーと粒子とが同じ化学的性質を有するという、かつ、その結果として、それらが炭素質材料を与えるために同じ分解経路に当然従うだろうという利点を有する。しかしながら、前記バインダーが結果として生じる炭素質モノリスのポロシティへのアクセスを阻止する良いチャンスがある。
【0009】
米国特許出願公開第2013/0298769号明細書は、選択的CO2捕獲に好適なデバイスを製造するためのPVDCから得られる炭素質材料の使用を開示している。この特許については、PVDCは、ばらばらの粒子の形態下でまたはモノリスの形態で熱分解される。任意選択的に、活性化工程が、所望の多孔性構造体を得るために行われる。多孔性炭素質材料を調製するために用いられる正確な手順は、明らかに記載されておらず、モノリスのマクロ多孔性に関してこの公文書には何も言われていない。
【0010】
米国特許出願公開第2004/0107838号明細書において、PVDC粒子は、ガス/流体貯蔵ができるデバイスの製造に有用な多孔性モノリスを与えるために炭化される前にプレス成形される。この手順によれば、用いられる圧力は、最終多孔性炭素質モノリスのマクロ多孔性に害を及ぼす、600バールを超えている。
【0011】
最後に、米国特許出願公開第2002/0025290号明細書および米国特許第6,294,501号明細書は、PVDC粒子の合成および氷の存在下でのすり潰しを記載している。米国特許出願公開第2002/0025290号明細書に提供されている粒度分布図は、すり潰されたPVDCがサイズの観点から幾つかの集団の粒子を含むことを明らかにしている。すり潰された粒子はさらに造形されてペレットになり、前記ペレットは、数ミリメートルの範囲の寸法および1.0~1.5の範囲の長さ対直径比を有する多孔性炭素質物体を与えるために熱分解される。熱分解前後のペレットにおける粒子の凝集力に関しては何も言われていない。両公文書とも、炭素質物体のマクロ多孔性に関して沈黙している。
【0012】
ガス吸着用の、より具体的にはCO2吸着用の多孔性炭素質材料の分野において、吸着されるCO2の量が、高い割合について、微小孔の存在のためであることはよく知られている。さらに、高速サイクリングプロセスにおける高い吸着および脱着速度論のための重要なパラメータである、ガスの効率的な物質移行を確実にするために、高度に結び付いたマクロ多孔性ネットワークが、微小孔性ネットワークを供給するために必要とされる。
【0013】
上記全てに従って、本出願人は、精製のための固体吸着剤の使用の領域におけるいくつかのニーズを特定している。
【0014】
高速サイクルで動作する吸着および脱着方法の開発が必要とされている。
【0015】
これらの方法用の好適な吸着剤のおよびモノリシック吸着剤構造体の開発が必要とされている。
【0016】
いかなるバインダーをも使用することなく製造されたハロゲン化ポリマーを含む凝集粒子から製造された成形体が必要とされている。
【0017】
高いマクロ多孔性を有するそのような成形体を製造するための、行うのが容易で、かつ、要求度が低い方法が必要とされている。
【0018】
粒子を含む炭素質モノリス構造体であって;前記粒子が、ガスの改善された選択的吸着のためのミクロ多孔性と、前記ガスのおよび/または前記ガスを含むガス混合物の高められた物質移行のためのマクロ多孔性とを示す構造体が必要とされている。
【0019】
粒子間マクロ多孔性を示すそのような凝集粒子を含む多孔性炭素質モノリスが必要とされている。
【0020】
そのようなモノリス構造体を製造するための、行うのが容易で、かつ、要求度が低い方法が必要とされている。
【0021】
ハロゲン化ポリマーを含む凝集粒子であって、粒子間の凝集力が、4に少なくとも等しい長さ対幅および/または長さ対厚さ比を有する成形体の製造を可能にするのに十分に強い、ハロゲン化ポリマーを含む凝集粒子が必要とされている。
【0022】
粒子間の凝集力が、4に少なくとも等しい長さ対幅および/または長さ対厚さ比を有する炭素質モノリスの製造を可能にするのに十分に強い、凝集炭素質粒子が必要とされている。
【0023】
ミクロ多孔性と、粒子内マクロ多孔性および粒子間マクロ多孔性の少なくとも1つとを示し、ガスが高速で、そして層流で循環することができるカナルを有する、彫刻されたまたはドリルで穴を開けられた炭素質モノリスを含むハニカム構造体が必要とされている。
【0024】
選択的なCO2容量を有するそのようなハニカム構造体が必要とされている。
【0025】
最後に、これらのハニカム構造体を製造するのに好適な、簡単な、時間のかからない、かつ、低コスト方法が必要とされている。
【0026】
全てのこれらのニーズおよびさらに他のものは有利には、多孔性炭素質モノリス構造体の製造方法であって、以下の工程:
i - ある融点を有するハロゲン化ポリマーを含む粒子を含む前駆体材料を金型に導入する工程と、
ii - 同時に、ハロゲン化ポリマーが塩化ビニリデンホモポリマーである場合10~300バール、そしてハロゲン化ポリマーが塩化ビニリデンホモポリマーとは異なる場合10~150バールの範囲の圧力Pを前駆体材料に加えること、かつ、T1,最低=20℃~T1,最高=Tm-50℃(ここで、Tmは、ハロゲン化ポリマーの融点である)の範囲の温度T1に前駆体材料を維持することによって、前駆体材料の粒子の凝集体を含む成形体を形成する工程と、
iii - 任意選択的に冷却し、次に成形体を離型する工程と、
iv - 成形体を炉に導入する工程と、
v - 多孔性炭素質モノリス構造体が得られるまで炉中でハロゲン化ポリマーの熱分解をもたらす工程と
を含む方法によって満たされる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】細孔径の関数の漸増侵入容積を例証するHgポロシメトリー曲線を表す。
【0028】
当業者に早期に知られているように、本発明の背景である、ポリマーの熱分解によって得られた材料を使用するガス吸着との、より具体的にはCO2吸着との関連で、炭素質材料は、本質的にまたは完全に炭素からなる材料として、すなわち、炭素以外のいかなる他の元素をも実質的に含まないまたは完全に含まない材料として理解される。
【0029】
本発明による炭素質モノリスは、一般に少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも98重量%、さらにより好ましくは少なくとも99重量%の炭素からなる。
【0030】
本発明に好適なハロゲン化ポリマーは有利には、塩化ビニリデンポリマーおよびフッ化ビニリデンポリマーから選択される。
【0031】
フッ化ビニリデンポリマーが選択される場合、それは、フッ化ビニリデンホモポリマー、またはトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレンおよびクロロフルオロエチレンからなる群から好ましくは選択される少なくとも1つのコモノマーに由来する繰り返し単位を含むフッ化ビニリデンコポリマーであってもよい。
【0032】
本発明者らは、塩化ビニリデンポリマーが本発明に特に好適であることを見いだした。それは、塩化ビニリデンホモポリマー、または塩化ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸、アルキルアクリレート、メタクリル酸およびアルキルメタクリレートからなる群から好ましくは選択される少なくとも1つのコモノマーに由来する繰り返し単位を含む塩化ビニリデンコポリマーであってもよい。
【0033】
塩化ビニリデンポリマーがコポリマーである場合;それは有利には、塩化ビニルまたはアルキルアクリレートに由来する繰り返し単位を含むコポリマーである。
【0034】
塩化ビニリデンコポリマーが、アルキルアクリレートに由来する繰り返し単位を含む場合、このアルキルアクリレートは好ましくは、ブチルアクリレートまたはメチルアクリレートであり;より好ましくは、それはメチルアクリレートである。
【0035】
塩化ビニリデンポリマーは、繰り返し単位の合計に関して、好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも65%、さらにより好ましくは少なくとも75%の塩化ビニリデンに由来する(好ましくは塩化ビニリデンのフリーラジカル重合から生じる)、繰り返し単位を含む。当業者が理解するだろうように、百分率(%)はモル百分率である。
【0036】
良好な結果は、Solvay Specialty Polymersによって商業化されている、塩化ビニルまたはメチルアクリレート部分を含む、IXAN(登録商標)PV708、IXAN(登録商標)PV919およびIXAN(登録商標)PV925塩化ビニリデンコポリマーで得られた。
【0037】
本発明に好適な、フッ化ビニリデンまたは塩化ビニリデンポリマーを含む、粒子は一般に、乳化重合または懸濁重合によって調製される。
【0038】
粒子が乳化重合によって調製される場合、ポリマーラテックスの凝固の工程が、所望の平均径の粒子を得るために必要とされる。この凝固工程は、当業者に周知の任意の方法に従って、例えば、多価カチオンを使用して、一般にアニオン性である、乳化剤を中和することによって行われ得る。
【0039】
ハロゲン化ポリマーを含む粒子は好ましくは、少なくとも1つの懸濁剤と、少なくとも1つの有機可溶性フリーラジカル開始剤とを使用する懸濁重合プロセスによって調製される。
【0040】
粒子は、一般に50ppm未満、好ましくは30ppm未満、さらにより好ましくは20ppm未満の残存モノマーを含有している。この低い残存モノマー含有量は、例えばスラリーのストリッピングプロセスによって、または当業者に周知の任意の方法によって得ることができる。粒子は一般に、濾過によってスラリーから回収され、乾燥させられる前に洗浄されてもよい。乾燥は一般に流動床で成し遂げられるが、任意の他の方法を用いることができる。
【0041】
それらの製造方法の結果として、ハロゲン化ポリマーを含む粒子は、一般に高多孔性である。
【0042】
ハロゲン化ポリマーを含む粒子の孔隙率は、当業者によって適切に選択される、前記ポリマーによって吸収される可塑剤の量で特徴付けられ得る。可塑剤の種類は一般に、前記ポリマーの種類に依存している。塩化ビニリデンポリマーを含む粒子については、孔隙率は、重量%単位で表される吸収されたジ-イソ-ノニルフタレート(DINP)の量で特徴付けられ得る。この目的のために、ポリマー粉末は、底部に0.8mm開口部を含有する、円錐底部(90°)のステンレス鋼遠心分離管に移され、大過剰(試料の質量の約2倍)のジ-イソノニルフタレート(DINP)が添加される。室温で15分の吸収後に、過剰のDINPが、30分間3200gでの遠心分離によって除去される。ポリマー粉末によって吸収されたDINPの量は、遠心分離管に導入されたポリマー試料の総重量の重量パーセントで表される。
【0043】
一般に、塩化ビニリデンポリマー粉末によるDINP吸収は、少なくとも4重量%、好ましくは少なくとも8重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、さらにより好ましくは少なくとも11重量%である。一般に、ポリマー粉末によるDINP吸収は、最大でも26重量%であり、好ましくは最大でも22重量%、より好ましくは最大でも20重量%、さらにより好ましくは最大でも18重量%である。
【0044】
ポリマーの融点は、吸熱のピーク温度を用いる示差走査熱量測定法によって測定され得る。
【0045】
ハロゲン化ポリマーがフッ化ビニリデンポリマーである場合、融点は、ポリマーの組成に依存する。一般に融点は120℃~175℃の範囲である。
【0046】
ハロゲン化ポリマーが塩化ビニリデンポリマーである場合、融点はまた、ポリマーの組成に依存する。一般に融点は130℃~210℃の範囲である。
【0047】
ハロゲン化ポリマーが塩化ビニリデンホモポリマーである場合、融点は一般に165℃~210℃の範囲である。
【0048】
工程i-による前駆体材料は、ハロゲン化ポリマーを含む粒子を含み、滑剤、分散剤、離型剤、粘着防止剤、バインダー、充填材などの任意の他の成分を含んでもよい。
【0049】
工程i-による粒子は、ハロゲン化ポリマーを含み、分散剤、熱安定剤、充填材、可塑剤などの任意の他の成分を含んでもよい。
【0050】
一般に、前駆体材料の総重量に関してのハロゲン化ポリマーを含む粒子の含有量は、少なくとも65重量%である。それは好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、さらにより好ましくは少なくとも95重量%である。なおまた、本著者らは、ハロゲン化ポリマーを含む粒子から本質的になる前駆体材料を使用することが有利であり、ハロゲン化ポリマーを含む粒子からなる前駆体材料を使用することがより有利であることを見いだした。
【0051】
一般に、粒子の総重量に関してのハロゲン化ポリマーの含有量は、少なくとも65重量%である。それは、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、さらにより好ましくは少なくとも95重量%である。なおまた、本著者らは、ハロゲン化ポリマーから本質的になる粒子を使用することが有利であり、ハロゲン化ポリマーからなる粒子を使用することがより有利であることを見いだした。
【0052】
好ましい実施形態において、ハロゲン化ポリマーを含む粒子の平均径は、一般に少なくとも145μmの、最大でも1000μmの、好ましくは最大でも400μmのものである。良好な結果は、最大でも300μmの、場合により最大でも250μmの、結局最大でも220μmの平均径を有する粒子で得ることができる。
【0053】
なおまた、ハロゲン化ポリマーを含む粒子のスパンは、一般に最大でも1.5の、好ましくは最大でも1.2の、より好ましくは最大でも1.0のものである。
【0054】
粒径は、Malvern製のMastersizer 2000機器でのレーザー回折分析によって測定され得る。試料は、2000rpmの攪拌および3~10%の範囲のオブスキュレーション・セッティングを使ってエタノール中で分析される。塩化ビニリデンポリマーについて用いられる屈折率は1.52である。平均径D(50)は、試料の50%がそれよりも小さく、50%がそれよりも大きいミクロン単位でのサイズであり、スパンは、
(式中、D(10)は、分布の容積単位での累積曲線上で、粒子の10%がそれよりも小さいサイズであり、D(90)は、粒子の90%がそれよりも小さいサイズである)
のとおり計算される。
【0055】
分布が狭ければ狭いほど、スパンはより小さくなる。
【0056】
同時に、金型中で、ハロゲン化ポリマーが塩化ビニリデンホモポリマーである場合10~300バール、好ましくは10~150バール、そしてハロゲン化ポリマーが塩化ビニリデンコポリマーまたはフッ化ビニリデンコポリマーである場合10~150バールの範囲の圧力Pを前駆体材料に加えること、かつ、T1,最低=20℃~T1,最高=Tm-50℃(ここで、Tmは、ハロゲン化ポリマーの融点である)の範囲の温度T1に前駆体材料を維持することによって、前駆体材料中に含まれる粒子の凝集体を含む成形体を提供することが本発明の目的である。
【0057】
温度T1で、圧力Pは、一般に少なくとも0.5分の、好ましくは少なくとも1分の、より好ましくは少なくとも3分の、さらにより好ましくは少なくとも5分の継続時間Dの間加えられる。温度T1で、圧力Pは、一般に15分を超えない、好ましくは12分を超えない、より好ましくは9分を超えない、さらにより好ましくは6分を超えない継続時間Dの間加えられる。
【0058】
温度のおよび圧力の組み合わせは、それが成形体の凝集力をセットするので重要なパラメータである。したがって、所与のハロゲン化ポリマーを含む粒子については、閾値温度値よりも下の温度では、粒子の不十分な凝集力またはゼロの凝集力が観察される。同様に、閾値圧力値よりも下の圧力では、粒子の不十分な凝集力またはゼロの凝集力が観察される。
【0059】
さらに、温度のおよび圧力の組み合わせは、成形体の粒子内マクロ多孔性および粒子間マクロ多孔性を決定する。したがって、余りにも高い温度でのおよび/または余りにも高い圧力での処理が適用される場合にマクロ多孔性は少なくとも部分的に崩壊する。その結果、温度のおよび圧力の理想的な組み合わせが、重合直後のばらばらの粒子のマクロ多孔性の近くにポリマーを含む粒子内にマクロ多孔性を維持しながら、粒子間の良好な接着、すなわち、成形体の良好な凝集力を確実にする。
【0060】
塩化ビニリデンホモポリマーの場合には、温度T1は。一般に少なくとも20℃の、好ましくは少なくとも30℃の、より好ましくは少なくとも40℃のものである。なおまた、温度T1は、一般に高くても170℃の、好ましくは高くても150℃の、より好ましくは高くても140℃の、さらにより好ましくは高くても130℃のものである。
【0061】
塩化ビニリデンコポリマーの場合には、温度T1は、一般に少なくとも20℃の、好ましくは少なくとも30℃の、より好ましくは少なくとも40℃のものである。なおまた、温度T1は、一般に高くても120℃の、好ましくは高くても110℃の、より好ましくは高くても100℃のものである。
【0062】
圧力Pは、好ましくは少なくとも15バールの、より好ましくは少なくとも20バールのものである。
【0063】
なおまた、塩化ビニリデンポリマーがホモポリマーである場合には、圧力Pは、10~200バールの範囲であってもよく、好ましくは10~150バールである。
【0064】
全般的に見て、本発明のある種の必須のまたは好ましい実施形態において、ハロゲン化ポリマーが塩化ビニリデンホモポリマーであるか否かに応じて、圧力Pは10~150バールである。より好ましくは、ハロゲン化ポリマーが塩化ビニリデンホモポリマーであるか否かに関係なく、圧力Pは、最大でも140バール、最大でも130バールまたは最大でも100バール、さらにより好ましくは最大でも60バール、最も好ましくは最大でも30バールのものである。
【0065】
室温まで冷却した後、成形体は、その後の熱分解工程に関与する前に任意選択的に型から取り出される。
【0066】
結果として生じた成形体は、重合直後のばらばらの粒子の孔隙率に一般に近い孔隙率を示すハロゲン化ポリマーを含む凝集粒子でできている。
【0067】
成形体の全体孔隙率は、ハロゲン化ポリマー粉末について前に記載されたように吸収される可塑剤の量で特徴付けられ得る。前記可塑剤は、ポリマーの種類に応じて当業者によって適切に選択され得る。
【0068】
例えば、ハロゲン化ポリマーが塩化ビニリデンポリマーである場合、成形体の全体孔隙率は、重量%単位で表されるジ-イソノニルフタレート(DINP)の吸収量で評価することができる。
【0069】
一般に、成形体によるDINP吸収は、少なくとも3重量%であり、好ましくは少なくとも6重量%、より好ましくは少なくとも9重量%である。一般に、DINP吸収は、最大でも24重量%であり、好ましくは最大でも20重量%である。
【0070】
成形体は一般に、円柱、楕円柱および多角形プリズムからなるリストから選択される形状を有する固体である。好ましくは、成形体は、円柱または長方形プリズム、より好ましくは長方形プリズムである。一般に、成形体は、少なくとも4の、好ましくは少なくとも6の、より好ましくは少なくとも8の長さ対幅および/または長さ対厚さ比を有する。
【0071】
成形体の長さは、一般に少なくとも1cmの、好ましくは少なくとも8cmの、より好ましくは少なくとも10cmのものである。
【0072】
成形体が円柱である場合、厚さおよび幅は、円形基部の直径に等しい。多角形プリズムによって、その基部が多角形であるプリズムが理解される。単に例のために、三角形、四角形または六角形プリズムが有利に考えられ得る。
【0073】
ハロゲン化ポリマーを含む凝集粒子からできた得られた成形体を熱分解することによって、多孔性炭素質モノリス吸着剤構造体を提供することが本発明の別の目的である。
【0074】
この目的のために、任意選択的に型から取り出した後、成形体は炉に導入され、炉におけるハロゲン化ポリマーの熱分解の誘発は、
va - 成形体の温度を、厳密にT2,最低=Tm-50℃よりも上の、そして厳密にT2,最高=Tmよりも下の温度T2までにすることと、
vb - 成形体を、不活性ガスフロー下で温度T2に維持してハロゲン化ポリマーの熱分解および不溶融性チャーの形成をもたらすことと、
vc - 不溶融性チャーの温度を、厳密にT3,最低=Tmよりも上の、そして厳密にT3,最高=1300℃よりも下の、好ましくは厳密にT3,最高=900℃よりも下の温度T3までにすることと、
vd - 不溶融性チャーを、不活性ガスフロー下で温度T3に維持してハロゲン化ポリマーの熱分解をもたらし、それによって多孔性炭素質モノリス構造体を得ることと
を含む工程vにおいて行われ得る。
【0075】
塩化ビニリデンホモポリマーの場合には、温度T2は、一般に少なくとも150℃の、好ましくは少なくとも155℃の、より好ましくは少なくとも160℃のものである。なおまた、温度T2は、一般に高くても210℃の、好ましくは高くても200℃の、より好ましくは高くても190℃の、さらにより好ましくは高くても180℃のものである。
【0076】
塩化ビニリデンコポリマーの場合には、温度T2は、一般に少なくとも110℃の、好ましくは少なくとも120℃の、より好ましくは少なくとも130℃のものである。なおまた、温度T2は、一般に高くても180℃の、好ましくは高くても160℃の、より好ましくは高くても150℃のものである。
【0077】
成形体は、ハロゲン化ポリマーの熱分解をもたらすために、不活性ガスフロー下で温度T2に維持される。
【0078】
不活性ガスフローは一般に、アルゴン、ヘリウムまたはそれらの混合物を含む。
【0079】
任意選択的に、炉に導入された後に、そして温度T2にされる前に、成形体は、乾燥のために不活性ガスフロー下で水の沸点に近い温度に維持される。
【0080】
塩化ビニリデンホモポリマーの場合には、乾燥のための温度は、一般に少なくとも60℃のものである。それは、好ましくは少なくとも70℃の、より好ましくは少なくとも80℃の、さらにより好ましくは少なくとも90℃のものである。なおまた、乾燥のための温度は、一般に高くても140℃の、好ましくは高くても135℃の、より好ましくは高くても130℃のものである。
【0081】
塩化ビニリデンコポリマーの場合には、乾燥のための温度は、一般に少なくとも60℃のものである。それは、好ましくは少なくとも70℃の、より好ましくは少なくとも80℃の、さらにより好ましくは少なくとも90℃のものである。なおまた、乾燥のための温度は、一般に高くても130℃の、好ましくは高くても120℃の、より好ましくは高くても110℃のものである。
【0082】
T2,最高は、厳密にハロゲン化ポリマーの融点(Tm)よりも下であるので、脱ハロゲン化水素は、成形体の構造体の崩壊も、粒子のマクロ多孔性の崩壊も観察することなく起こる。実際に、この温度での成形体の暴露は、より高温でのさらなる熱分解に関与する不溶融性チャーの形成をもたらす。
【0083】
最後の炭化のために、不溶融性チャーは、厳密にT3,最低=Tmよりも上の、そして厳密にT3,最高=1300℃よりも下の、好ましくは厳密にT3,最高=900℃よりも下の温度T3までにされ、ここで、Tmは前に定義されたとおりである。
【0084】
塩化ビニリデンポリマーの場合には、温度T3は、一般に少なくとも400℃の、好ましくは少なくとも450℃の、より好ましくは少なくとも500℃のものである。なおまた、温度T3は、一般に高くても1300℃の、好ましくは高くても1100℃の、より好ましくは高くても1000℃の、さらにより好ましくは高くても900℃のものである。
【0085】
不溶融性チャーは、ハロゲン化ポリマーの熱分解をもたらし、それによって多孔性炭素質モノリス構造体を得るために、不活性ガスフロー下で温度T3に維持される。結果として生じた多孔性炭素質モノリスは、一緒に焼結され、このようにして向上した機械的特性を構造体に与える個別の多孔性炭素質粒子からなる。
【0086】
別の実施形態において、ハロゲン化ポリマーの熱分解の誘発は、異なる上昇温度θ1
…~θn(ここで、θ1<…<θnであり、2≦n≦6である)で段階的に行われる。好ましい実施形態において、n=3である。
【0087】
こうして、成形体は、炉に導入され、前に記載されたように任意選択的に乾燥させられる。次に、成形体の温度は、加熱速度H1で温度θ1まで上げられ、継続時間D1の間、不活性ガスフロー下で、これらの温度に維持される。その後、温度は、一連の加熱速度Hnでθ1から一連の温度θnまで任意選択的に上げられ、一連の継続時間Dnの間、不活性ガスフロー下で、これらの温度に維持される。
【0088】
ハロゲン化ポリマーが塩化ビニリデンホモポリマーである場合、θ1は、一般に110℃~190℃の範囲であり、θnは、一般に200℃~1300℃の範囲である。好ましくは、θ1は、120℃~170℃の範囲であり、θnは、250℃~900℃の範囲である。
【0089】
加熱速度H1は、一般に1℃/分~20℃/分の範囲である。加熱速度Hnは、一般に0.1℃/分~20℃/分の範囲である。
【0090】
継続時間D1は、一般に72hを超えず、好ましくは48hを超えず、より好ましくは24hを超えず、さらにより好ましくは20hを超えない。継続時間D1は、一般に少なくとも0.1h、好ましくは少なくとも0.2h、より好ましくは少なくとも0.5hである。継続時間Dnは、一般に30hを超えず、好ましくは25hを超えず、より好ましくは20hを超えない。継続時間Dnは、一般に少なくとも0.1h、好ましくは少なくとも0.2h、より好ましくは少なくとも0.5hである。
【0091】
本発明による多孔性炭素質モノリス構造体は、ミクロ多孔性を示す。国際純正応用化学連合(IUPAC)によって提供される定義によれば、微小孔は、2nmよりも下の幅を有し、そして一方、メゾ細孔は2nm~50nmの範囲の幅を有し、マクロ孔は、50nmよりも上の幅を有する。
【0092】
ミクロ多孔性は、N2ポロシメトリーによって測定される。N2吸着等温線は、ASAP 2020 Micromeritics機器を用いて測定される。比表面積(SBET)は、ISO 9277:2010ノルム(Determination of the specific surface area of solids by gas adsorption-BET method-Annex C: Surface area of microporous materials)に従って測定される。BETモデルが適用されてきた相対圧力、P/P0領域は、C定数が正値を有するように選択される。細孔径および細孔径分布は、細孔のようなスリットを仮定する、密度関数理論を用いて計算される(DFTによる炭素スリット細孔、正則化0.003)。
【0093】
効率的なガス吸着を確実にするために、本出願人は、本発明による炭素質モノリスが少なくとも700m2/gのBET表面積を有することが有利であり、少なくとも800m2/gのものがより有利であり、少なくとも900m2/gのものがさらにより有利であることを見いだした。
【0094】
N2ポロシティによって測定される、微小孔容積は、一般に少なくとも0.2ml/g、好ましくは少なくとも0.25ml/g、より好ましくは少なくとも0.3ml/g、さらにより好ましくは少なくとも0.34ml/g、最も好ましくは少なくとも0.38ml/gである。微小孔容積は、一般に0.7ml/gを超えない。
【0095】
ミクロ多孔性に加えて、本発明による多孔性炭素質モノリス構造体は、粒子内マクロ多孔性および粒子間マクロ多孔性の少なくとも1つを示す。
【0096】
水銀ポロシメトリーが、多孔性炭素試料のマクロ多孔性特性を測定するために用いられる。測定は、Micromeritics Autopore 9520ポロシメーターNo.10で行われる。測定は、2バール以下の真空で始まり、1から2000バールまでの測定がそれに続く。生成物の試料サイズは、膨張計の測定範囲を考慮して、および毛管容積の30~50%を消費するために選択される(約500~700mg)。Type CD3P 35ml容積粉末膨張計が用いられる。試料は、真空中150℃で乾燥させられ、素早く膨張計に移され、膨張計は次に閉じられる。その後、1h、1ミリバール未満まで真空に引かれる。計算は、接触角130°および485ダイン/cmの表面張力および約25℃での正確なHg温度依存密度を使って行われる。モノリスは、それらが膨張計に適合するために壊して1~2cmの小片にされる。
【0097】
図1は、細孔径の関数の漸増侵入容積を例証するHgポロシメトリー曲線を表す。測定曲線から、粒子内(a)および粒子間(b)細孔容積が全(c)細孔容積から計算される(
図1を参照されたい)。細孔径の関数の漸増侵入容積を示す曲線が、粒子内および粒子間平均細孔径を計算するために用いられる。
【0098】
Hgポロシティによって測定される、粒子内マクロ孔容積は、一般に少なくとも0.03ml/gの、好ましくは少なくとも0.05ml/gの、より好ましくは少なくとも0.10ml/g、さらにより好ましくは少なくとも0.15ml/gのものである。なおまた、粒子内マクロ孔容積は一般に0.40ml/gを超えない。
【0099】
Hgポロシティによって測定される、粒子間マクロ孔容積は、一般に少なくとも0.10ml/gの、好ましくは少なくとも0.15ml/gの、より好ましくは少なくとも0.20ml/gの、さらにより好ましくは少なくとも0.25ml/gの、最も好ましくは少なくとも0.27ml/gのものである。なおまた、粒子間マクロ孔容積は一般に0.90ml/gを超えない。
【0100】
Hgポロシティによって測定される、累積粒子内および粒子間マクロ孔容積または全マクロ孔容積は、一般に少なくとも0.12ml/g、好ましくは少なくとも0.30ml/g、より好ましくは少なくとも0.35ml/g、さらにより好ましくは少なくとも0.40ml/gのものである。
【0101】
なおまた、全マクロ孔容積は一般に1.30ml/gを超えない。
【0102】
粒子内マクロ孔は、一般に少なくとも0.2μmの、好ましくは少なくとも0.4μmの、より好ましくは少なくとも0.5μmの、Hgポロシティによって測定される、平均径を有する。なおまた、粒子内マクロ孔は、5μmを一般に超えない平均径を有する。
【0103】
粒子間マクロ孔は、一般に少なくとも1μmの、好ましくは少なくとも2μmの、より好ましくは少なくとも2.5μmの、Hgポロシティによって測定される、平均径を有する。なおまた、粒子間マクロ孔は、50μmを一般に超えない平均径を有する。
【0104】
本発明による多孔性炭素質モノリスの孔隙率は、当業者に周知の化学的または物理的活性化プロセスによって任意選択的にさらに変更されてもよい。
【0105】
多孔性炭素質モノリスは一般に、円柱、楕円柱および多角形プリズムからなるリストから選択される形状を有する固体である。好ましくは、モノリスは、円柱または長方形プリズム、より好ましくは長方形プリズムである。一般に、多孔性炭素質モノリスは、少なくとも4の、好ましくは少なくとも6の、より好ましくは少なくとも8の長さ対幅および/または長さ対厚さ比を有する。
【0106】
炭素質モノリスの長さは、一般に少なくとも1cmの、好ましくは少なくとも8cmの、より好ましくは少なくとも10cmのものである。
【0107】
ミクロ多孔性と、粒子内マクロ多孔性および粒子間マクロ多孔性の少なくとも1つとを示し、ガスが高速でおよび層流で循環することができるカナルを有する溝付き炭素質モノリスを提供することがまた本発明の目的である。溝付き炭素質モノリスは、本発明による炭素質モノリス構造体を彫刻する工程を含む方法によって製造され得る。
【0108】
溝付き炭素質モノリスの製造方法であって、前記方法が、
- 前に記載された任意の方法によって多孔性炭素質モノリス構造体を製造する工程と、
- そのようにして製造された多孔性炭素質モノリス構造体を彫刻する工程と
を含む方法を提案することが本発明の目的である。例えば、直線流路が、個別の溝付けモノリスを与えるために炭素質モノリスの長さに沿って切り取られてもよい。
【0109】
溝付きモノリスの孔隙率(ミクロ多孔性、粒子内および粒子間マクロ多孔性…)の特性は、前に記載されたような炭素質モノリスの特性に似ている。
【0110】
溝付きモノリスは、機械加工中にセットされる異なる壁厚を有してもよい。
【0111】
ミクロ多孔性と、粒子内マクロ多孔性および粒子間マクロ多孔性の少なくとも1つとを示し、ガスが高速でおよび層流で循環することができるカナルを有するハニカム多孔性炭素質構造体を提案することが本発明の目的である。
【0112】
好ましい実施形態において、個別の溝付きモノリスは、ミクロ多孔性と、粒子内マクロ多孔性および粒子間マクロ多孔性の少なくとも1つとを示すハニカム多孔性炭素質構造体を与えるために重ね合わせられ、組み立てられる。本発明はまた、ミクロ多孔性と、粒子内マクロ多孔性および粒子間マクロ多孔性の少なくとも1つとを示すハニカム多孔性炭素質構造体の製造方法であって、前記方法が、
- 前に記載された方法によって溝付き炭素質モノリスを製造する工程と、
- そのようにして製造された溝付き炭素質モノリスを組み立てる工程と
を含む方法を提案する。
【0113】
モノリスの組み立ては、接着剤で接着させることによって、またはポリマーフィルムで包むことによって行われる。
【0114】
別の好ましい実施形態において、ミクロ多孔性と、粒子内マクロ多孔性および粒子間マクロ多孔性の少なくとも1つとを示すハニカム多孔性炭素質構造体は、本発明の炭素質モノリス構造体にドリルで穴を開けることによって製造される。本発明はまた、ミクロ多孔性と、粒子内マクロ多孔性および粒子間マクロ多孔性の少なくとも1つとを示すハニカム多孔性炭素質構造体の製造方法であって、前記方法が、
- 前に記載された方法によって多孔性炭素質モノリス構造体を製造する工程と、
- そのようにして製造された多孔性炭素質モノリス構造体にドリルで穴を開ける工程と
を含む方法を包含する。
【0115】
ハニカム多孔性炭素質構造体の孔隙率(ミクロ多孔性、粒子内および粒子間マクロ多孔性…)の特性は、前に記載されたような炭素質モノリスの特性に似ている。これらのハニカム構造体は、それらが製造される方法とは無関係に、本発明の別の目的であり、それらが特定の1平方インチ単位当たりのセルの数(cpsi)を有することを特徴とし得る。
【0116】
一般に、本発明によるハニカム構造体は、少なくとも50cpsi、好ましくは少なくとも100cpsi、より好ましくは少なくとも150cpsi、さらにより好ましくは少なくとも200cpsiを有する。なおまた、本発明によるハニカム構造体は、有利には最大でも1200cpsi、好ましくは最大でも800cpsi、より好ましくは最大でも600cpsiを有する。
【0117】
多くの用途を、とりわけ水処理およびガス精製の分野で,本発明によるモノリスまたはハニカム構造体について見いだすことができる。
【0118】
本発明の別の態様は、CO2ガスを選択的に吸着することによってCO2を含有する煙道ガスを精製するための多孔性炭素質モノリスの使用である。
【0119】
多孔性炭素モノリスおよびマイクロビーズの動的および選択的CO2容量は、CO2およびN2(容積で15/85)を含有するガス流れが一定流量で試料に供給される実験によって測定され得る。純ガス全ての流量は、マスフローコントローラーによって調節される。試料出口は、実験の全継続時間にわたってArおよびCO2濃度をオンライン測定する、質量分析計に接続される。各実験の前に、試料は、周囲温度でまたは120℃で純N2流れ(分離実験の流量に等しい)中で活性化される。モノリスは、実験セットアップでの据え付け前に110℃で真空下に一晩乾燥させられる。全ての分離実験は、室温(約21℃)および50ml/分~200ml/分または500ml/分の全流量で行われる。システム無駄時間を測定するために、トレーサーガス流れ(5ml/分のAr)が、CO2/N2ガス流れに添加される。
【0120】
モノリスに関する実験は、8~12cmの長さおよび約1cm2の横断面のモノリスに関して行われる。モノリスは、入口および出口管材料に直接接続される。
【0121】
選択的CO
2容量、Q
CO2は、実験曲線の積分によって計算される。
【0122】
ここで、q0’およびqt’はそれぞれ、時間ゼロでのカラム入口および時間tでのカラム出口での質量流量である。時間ゼロは、非吸着トレーサーフロー(Ar)をフィード流れに注入することによって実験的に決定される。時間ゼロは、Ar実験曲線がその最大高さの半分に達する時間として選択される。
【0123】
本発明による炭素質モノリスは、一般に少なくとも15mg/gの、好ましくは少なくとも20mg/gの、より好ましくは少なくとも25mg/gの、さらにより好ましくは少なくとも27mg/gの、選択的CO2容量、QCO2を有する。
【0124】
本発明による多孔性炭素質モノリス構造体は、任意のガス精製のために使用され得る。例えば、CO2は、煙道ガスから、または天然ガスおよびバイオガスを含むガス組成物から抽出され、精製され得る。CO2はまた、任意の局所中に、例えば建物中に含有される空気から、加熱、換気またはエアコン据え付けによって吹き出される空気から抽出され得る。多孔性炭素質モノリス構造体はまた、天然ガスおよびバイオガス精製のために使用され得る。それらはまた、空気および水処理用途向けにも使用され得る。最後に、それらは、ガス貯蔵のためにおよび触媒作用用途向けに使用され得る。しかしながら、用途分野は、これらの例に限定されない。
【0125】
参照により本明細書に援用される特許、特許出願、および刊行物のいずれかの開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
【0126】
PVDC銘柄選択
Solvay’s Specialty Polymer PVDC部門製の市販PVDC懸濁液樹脂を使用してPVDC成形体を調製した。異なる組成(コモノマーおよび添加剤のタイプおよび量)ならびに粒径の銘柄を評価した。この実施例に使用されるPVDC樹脂のいくつかの特性を表1に報告する。
【0127】
【0128】
本発明によるPVDC成形体の調製
バインダーなしのIXAN(登録商標)PV708 PVDC成形体を、PVDC樹脂をそれらの融点よりも下で圧縮することによって製造した。3mm厚さの長方形フレームに樹脂を満たし、40℃の温度および28.8バールの圧力でプレスした。圧力を40℃の一定温度で28.8バールに6分間維持した。結果として生じた成形体は、一緒に凝集した個別の多孔性PVDCポリマー粒子からなった。冷却後に成形体を型から取り出した。類似の手順を用いてIXAN(登録商標)PV919およびIXAN(登録商標)PV925コポリマーから出発して成形体を調製した。
【0129】
比較例のためのPVDC成形体の調製
2つのタイプのPVDC成形体を比較例として製造した。第1のものは、その融点よりも下のIXAN(登録商標)PV708 PVDC樹脂を、塩化ビニリデンコポリマーについて本発明で用いられる圧力範囲を超える圧力で圧縮することによって製造した。3mm厚さの長方形フレームに樹脂を満たし、110℃の温度および192バールの圧力でプレスした。圧力を110℃の一定温度で192バールに6分間維持した。冷却後に成形体を型から取り出した。
【0130】
第2のものは、PVDC粒子の成形体を調製するためのバインダーとしてPVDCラテックスを使用することによって製造した。この目的のために、10gのIXAN(登録商標)PV708 PVDC樹脂を8gの60重量%PVDCラテックスと混合してペーストを得た。ストランドを次に、10mlシリンジを使って室温で押し出した。
【0131】
PVDC成形体の孔隙率
全体孔隙率は、本明細書の主要部において前に記載されたように室温でのDINP吸着によって測定した。表2に報告される結果は、一定温度で製造された成形体の孔隙率への圧力の影響を例証する。トレンドは、圧力の増加と共に孔隙率の低下であった。
【0132】
【0133】
表3の結果は、一定圧力で製造された成形体の孔隙率への温度の影響を示す。トレンドは、温度の上昇と共に孔隙率の低下であった。
【0134】
【0135】
表2および3に含有される、結果は、温度のおよび圧力の理想的な組み合わせが、ポリマーを含む粒子内のマクロ多孔性を維持しながら、粒子間の良好な接着、すなわち、成形体の良好な凝集力を確実にし得るという明らかな証拠を与える。さらに、温度と圧力との間の良好な折衷が見いだされる場合、成形体における粒子内マクロ多孔性は、市販樹脂粒子の粒子内マクロ多孔性に予想外に近かった(表1におけるIXAN(登録商標)PV925粒子の孔隙率、すなわち、13重量%と、表3における成形体1の孔隙率、すなわち、11.9重量%とを比較されたい)。
【0136】
多孔性炭素質粒子の調製
約20gのIXAN(登録商標)PV925ポリマー粉末を含有するセラミック坩堝を、3ゾーン水平管状炉(carbolite HZS 12/900)中に配置された、石英管に入れた。ポリマー粉末を乾燥させるために温度を10℃/分の速度で室温から130℃まで昇温し、その温度に1h保持した。次に1℃/分の加熱速度で中間温度(すなわち、150℃)まで温度をさらに上げ、この温度に17h保持した。最後に、10℃/分の加熱速度で炭化温度(すなわち、600℃)まで温度を上げ、この温度に1h保持した。
【0137】
本発明による多孔性炭素質モノリスの調製
IXAN(登録商標)PV925 PVDCから製造された成形体を、3ゾーン水平管状炉(carbolite HZS 12/900)中に配置された石英管に入れた。成形体を乾燥させるために温度を次に10℃/分の速度で室温から130℃まで昇温し、その温度に1h保持した。次に1℃/分の加熱速度で中間温度(すなわち、150℃)まで温度をさらに上げ、この温度に17h保持した。その後、1℃/分の加熱速度で300℃まで温度をさらに上げ、この温度に1h保持した。最後に、10℃/分の加熱速度で炭化温度(すなわち、600℃)まで温度を上げ、この温度に1h保持した。類似の手順を用いてIXAN(登録商標)PV919およびIXAN(登録商標)PV708 PVDCから発せられた成形体から出発して炭素質モノリスを調製した。
【0138】
比較例のための多孔性炭素質モノリスの調製
比較例として製造された2つのPVDC成形体を、本発明に従って調製された成形体と類似の方法で処理した。しかしながら、それらの挙動は全く異なった。
【0139】
一方では、192バールの圧力および110℃で製造された成形体は、奇妙に挙動した。実際に、熱分解によって生成した、塩化水素ガスの蓄積、引き続く圧力増加による前記ガスの突然の放出によるらしい、いくらかの発泡が加熱段階中に観察された。多孔性網状構造によるガス放出についての不十分な効率が、恐らくこのガス蓄積の理由であった。これは、成形体調製中の圧力の増加および/または温度の上昇と共に孔隙率が低下したトレンドを裏付けた。結果として、この成形体から出発して好適なモノリスを得ることは可能でなかった。実際に、結果として生じたモノリスの形状は不規則であり;その表面は、モノリスを小型用途向けに不適当にする多くのクレーターおよび欠陥によって覆われていた。150℃での工程の継続時間を数日まで増やしても問題を解決しなかった。
【0140】
他方では、PVDC粒子とPVDCラテックスとを混合することによって得られた、成形体は、熱処理後に多孔性炭素質モノリスを生成した。第1工程において、上に記載されたような、ストランドを、管状炉に導入し、乾燥のために10℃/分の速度で室温から130℃まで温度を上げ、その後その温度に1h保持した。第2工程において、1℃/分の加熱速度で中間温度(175℃)まで温度をさらに上げ、この温度に17h保持した。最後に、10℃/分の加熱速度で炭化温度(600℃)まで温度を上げ、この温度に1h保持して炭素質モノリスを得た。
【0141】
多孔性炭素質粒子およびモノリスの孔隙率
炭素質粒子およびモノリスのミクロ多孔性を、N2ポロシメトリーによって測定し、そして一方、マクロ多孔性をHgポロシメトリーによって評価した。両技術は、本明細書において前に記載された。結果は、粒子がマクロ多孔性と組み合わせられたミクロ多孔性を示すことを裏付けた。それらはまた、モノリスが3種類の孔隙率:ミクロ多孔性と、粒子内孔隙率である、マクロ多孔性、および粒子間に位置する、したがって粒子間マクロ多孔性と称されるマクロ多孔性とを示すことを明らかにした。
【0142】
表4に集められた結果は、本発明による方法によって得られたモノリスの微小孔容積および比表面積が対応する粒子の微小孔容積および比表面積に似ていたことを明らかに示し、したがって、PVDC粒子の凝集体を含む、成形体の形成、および前記成形体のさらなる熱分解が、最終炭素質モノリスのミクロ多孔性に意外にも害を及ぼさなかったという証拠を与える。
【0143】
【0144】
さらに、表5の結果は、本発明による方法によって得られたモノリスの粒子内マクロ孔容積および粒子内マクロ孔平均サイズが、IXAN(登録商標)PV708のおよびIXAN(登録商標)PV925 PVDCの場合には、粒子の粒子内マクロ孔容積および粒子内マクロ孔平均サイズに非常に近かったことを明らかに示し、したがって、PVDC粒子の凝集体を含む、成形体の形成、および前記成形体のさらなる熱分解が、最終炭素質モノリスの粒子内マクロ多孔性に意外にも害を及ぼさなかったという証拠を与える。
【0145】
【0146】
PVDC粒子とラテックスとを混合することによって調製された成形体から得られた、多孔性炭素質モノリスのN2吸着/脱着等温線を引こうとする試みは、失敗した。実際に、異なる方法で得られたモノリスについて用いられるものに似た評価の条件下で、平衡は全く得られなかった。ミクロ多孔性へのガスのアクセスは相当減少するように思われた。それは恐らく、ラテックスがマクロ多孔性をとじ込んでしまうかまたは覆ってしまい、したがって結果として生じた炭素質モノリスにおけるガスの物質移行、およびその結果としてガス吸着を阻むためであった。
【0147】
ハニカムモノリスの調製
0.8mm幅および0.8mm深さの、幾つかの直線流路を、CNC Milling Machine(Datron Electronics,CAT 3D-M5)を用いて多孔性炭素モノリスの長さに沿って彫刻した。それぞれ5~7つの流路を含有する、約1.2cm幅および8~12cm長さの個別のモノリスを、この溝付き多孔性炭素モノリスから切り取った。その後、個別のモノリスを重ね合わせ、組み立てて5または6つのレベルの多孔性炭素ハニカムモノリスを得た。
【0148】
モノリスの組み立ては、ポリマーフィルムで包むことによって行った。最後に、そのような方法で組み立てられた溝付きモノリスは、正方形流路および200cpsiのセル密度(1平方インチ当たりのセル)付きハニカムモノリスをもたらした。
【0149】
個別のモノリスのまたは溝付きモノリスの(その結果としてハニカムモノリスの)壁厚は、デジタルマイクロメーターを用いて測定した。モノリスの壁厚値は、互いに1cmの距離を置いた、前記モノリスの5つの異なる場所で行われた5つの測定の平均であった。
【0150】
多孔性炭素質粒子およびハニカムモノリスの選択的CO2容量
粒子に関する実験は、0.5~0.9gの吸着剤を詰め込んだ、約10cmの長さおよび0.6cmの内径のカラムを使用して行った。モノリスに関する実験は、8cmの長さおよび約1cm2の横断面のモノリスに関して行った。モノリスを入口および出口管材料に直接接続した。
【0151】
選択的CO2容量、QCO2を表6に報告する。
【0152】
【0153】
表6の結果は、本発明による、すなわち、前駆体材料から粒子の凝集体を含む成形体を形成する工程と、加熱してハロゲン化ポリマーを含む粒子の熱分解をもたらす工程とを含む多孔性炭素質モノリス構造体の製造方法が、結果として生じた多孔性炭素質モノリスの選択的CO2容量に予想外にも害を及ぼさなかったという証拠を与える。実際に、モノリスについて得られたQCO2の値は、対応する粒子について得られた値に近かった。
【0154】
さらに、本発明のハニカムモノリスは、CarboTech AC GmbH製の商業的に入手可能なハニカムモノリスの性能に対して改善された性能を有した。この結果は、両ハニカムモノリスが同じ流路密度を有したが、PVDCベースのモノリスの壁厚(1mm)がCarboTechモノリスの壁厚(0.35mm)と比べてはるかにより厚かったので全く意外であった。実際に、CarboTechモノリスのより小さい壁厚は、ポロシティへのアクセス可能性の観点から、本発明によるPVDCベースのモノリスの壁厚よりも、明らかな利点を与えるはずであった。CarboTechモノリスは、多孔性炭素吸着剤の隣に、その小さい壁厚にもかかわらず吸着容量を大いに低下させる不活性無機バインダーを含有した。