IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中能中科(天津)新能源科技有限公司の特許一覧

特許6994049疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料、その調製方法及び応用
<>
  • 特許-疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料、その調製方法及び応用 図1
  • 特許-疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料、その調製方法及び応用 図2
  • 特許-疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料、その調製方法及び応用 図3
  • 特許-疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料、その調製方法及び応用 図4
  • 特許-疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料、その調製方法及び応用 図5
  • 特許-疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料、その調製方法及び応用 図6
  • 特許-疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料、その調製方法及び応用 図7
  • 特許-疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料、その調製方法及び応用 図8
  • 特許-疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料、その調製方法及び応用 図9
  • 特許-疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料、その調製方法及び応用 図10
  • 特許-疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料、その調製方法及び応用 図11
  • 特許-疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料、その調製方法及び応用 図12
  • 特許-疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料、その調製方法及び応用 図13
  • 特許-疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料、その調製方法及び応用 図14
  • 特許-疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料、その調製方法及び応用 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料、その調製方法及び応用
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/168 20170101AFI20220106BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220106BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220106BHJP
   H01M 12/06 20060101ALI20220106BHJP
   H01M 12/08 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
C01B32/168
H01M4/36 A
H01M4/36 C
H01M10/052
H01M12/06 D
H01M12/08 K
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019560435
(86)(22)【出願日】2017-10-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 CN2017105675
(87)【国際公開番号】W WO2019019411
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2019-07-22
(31)【優先権主張番号】201710616957.2
(32)【優先日】2017-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519265907
【氏名又は名称】中能中科(天津)新能源科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】康 拓
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 立▲ガイ▼
(72)【発明者】
【氏名】▲盧▼ 威
(72)【発明者】
【氏名】沈 炎▲賓▼
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲亜▼▲竜▼
(72)【発明者】
【氏名】郭 峰
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 承浩
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 鵬
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-141058(JP,A)
【文献】特表2017-517853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/168
H01M 4/36
H01M 10/052
H01M 12/06
H01M 12/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質炭素材料担体と少なくとも前記多孔質炭素材料担体の空隙中に分布している金属リチウムとを含む金属リチウム-骨格炭素複合材料と
少なくとも前記金属リチウム-骨格炭素複合材料の空隙中に分布している金属リチウムを被覆する疎水被覆層と
を含み、
前記疎水被覆層はリチウム反応性部分と疎水性部分を有する化合物からなり、前記リチウム反応性部分は金属リチウムと反応してそれをパッシベーションしており、前記疎水性部分は外部疎水層を形成しており、
前記リチウム反応性部分は、リン酸基、チオール基、及びフルオロシリル基の少なくとも一種を含む、ことを特徴とする疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料。
【請求項2】
前記疎水性部分は、C-C22アルキル基、C-C24アリール基、及びシロキサン基の少なくとも一種を含み、これらの基は疎水性置換基で置換されてもよいことを特徴とする請求項1に記載の金属リチウム-骨格炭素複合材料。
【請求項3】
前記疎水性置換基は、フルオロ基、パーフルオロ基、及びシロキサンの少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項2に記載の金属リチウム-骨格炭素複合材料。
【請求項4】
前記リチウム反応性部分と疎水性部分を有する化合物は、オクタデシルホスフェート、ドデシルチオール及びフェニルリン酸から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の金属リチウム-骨格炭素複合材料。
【請求項5】
前記疎水被覆層は10~50nmの厚さを有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の金属リチウム-骨格炭素複合材料。
【請求項6】
前記疎水被覆層は電子絶縁性及び/又はイオン導電性を有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の金属リチウム-骨格炭素複合材料。
【請求項7】
パッシベーションした金属リチウム-骨格炭素複合材料であって、前記多孔質炭素材料担体の材料は、カーボンナノチューブ、多孔質炭素、カーボンブラック、グラフェン、カーボンファイバ、アセチレンブラック、カーボンエアロゲルのいずれか一種又は二種以上の組み合わせを含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の金属リチウム-骨格炭素複合材料。
【請求項8】
パッシベーションした金属リチウム-骨格炭素複合材料であって、前記多孔質炭素材料担体は、少なくとも微小粒子状中実凝集構造、球形凝集構造、略球状凝集構造、及びドーナツ型凝集構造のいずれか一種を有し、
及び/又は、前記多孔質炭素材料担体に含まれる空孔の平均孔径が10~100 nmであり、
及び/又は、前記多孔質炭素材料担体の平均粒子径が1~15μmであり、
及び/又は、前記多孔質炭素材料担体の電気伝導度が1×10-3~10 S・cm-1であり、
及び/又は、前記多孔質炭素材料担体の比表面積が100~1500 m/gであり、
及び/又は、前記多孔質炭素材料担体の耐えられる最高圧力が20MPa以上であり、
及び/又は、前記金属リチウムの金属リチウム-骨格炭素複合材料における担持量が10~50wt%であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の金属リチウム-骨格炭素複合材料。
【請求項9】
金属リチウム-炭素骨格複合材料及び、リチウム反応性部分と疎水性部分を有する化合物を溶解した有機溶媒を混合すること;並びに
固液分離又は蒸発することにより、疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料を得ること;
を含むことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料の調製方法。
【請求項10】
前記有機溶媒は、n-ヘキサン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、N-メチルピロリドンのいずれか一種又は二種以上の組み合わせを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、前記金属リチウム-炭素骨格複合材料を有機溶媒中に分散させておくことを含み、前記分散用有機溶媒はリチウム反応性部分と疎水性部分を有する化合物を溶解した有機溶媒と同じ又は異なっていることを特徴とする請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか1項に記載の疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料を電極材料として含むことを特徴とする電極。
【請求項13】
請求項12に記載の電極を含むことを特徴とする電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項14】
前記電気化学エネルギー貯蔵装置は、金属リチウム-酸化物電池、リチウムイオン電池、リチウム硫黄電池、又は金属リチウム-空気電池を含むことを特徴とする請求項13に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池技術分野に関し、特に、リチウム電池に用いられるリチウム炭素複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
1991年Sony株式会社がリチウム電池を正式に市場に出してから、過去の20年の間、リチウムイオン電池は十分に発展した。リチウムイオン電池は、その高容量、高エネルギー密度及び良好なサイクル安定性のため、電子製品及び電気自動車に広く応用されている。金属リチウム負極は最も低い還元電位(-3.045VvsH/H)を有するため、伝統的な黒鉛負極の理論容量の十倍もあり(3860mAhg-1、黒鉛負極:372mAhg-1)、電池エネルギー貯蔵界の「聖杯」と言われている。さらに、金属リチウム負極を用いる必要がある次世代リチウム電池であるリチウム硫黄電池(理論エネルギー密度2600Wh/kg)、リチウム空気電池(理論エネルギー密度5210Wh/kg)は、いずれも現在のリチウムイオン電池のエネルギー密度を遥かに超え、これらの電池を動力自動車の電源として採用すれば、自動車が電気を充満した後により長い走行距離を有し、現世界のエネルギー問題に非常に良い解決方法を提供する。
【0003】
しかしながら、金属リチウムの化学性質の活性は極めて高く、空気中の酸素や水と激しく反応し、大量な熱を放出する。したがって、金属リチウム負極の作業はアルゴンガスの保護条件で行わなければならず、金属リチウムの使用コスト及び安全リスクを高くする。さらに、金属リチウム負極は、サイクル過程で表面にデンドライトを形成し、デンドライトの成長は、セパレーターを突き刺し、正負極が接続して内部短絡を引き起こし、大量の熱を放出し、電池が燃焼ひいては爆発するおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は、疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料、その調製方法、該金属リチウム-骨格炭素複合材料を含有する電極及び電気化学エネルギー貯蔵装置、並びに水、酸素に敏感な活性金属を含む材料を保護する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明で採用する技術態様は以下を含む。
【0006】
ある実施例において、多孔質炭素材料担体と少なくとも前記多孔質炭素材料担体の空隙中に分布している金属リチウムとを含む金属リチウム-骨格炭素複合材料と、少なくとも前記金属リチウム-骨格炭素複合材料中の金属リチウムを被覆する疎水被覆層と、を含む、疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料を提供する。
【0007】
ある実施例において、金属リチウム-炭素骨格複合材料及び、成膜性疎水物質又はリチウム反応性部分と疎水性部分を有する化合物を溶解した有機溶媒を混合すること;並びに、固液分離又は蒸発により、疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料を得ることを含む、上記の疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料の調製方法を提供する。
【0008】
ある実施例において、前記材料に、少なくとも前記材料中の活性金属を被覆する疎水被覆層を形成することを含む、水、酸素に敏感な活性金属を含む材料を保護する方法を提供する。
【0009】
ある実施例において、上記の疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料を電極材料として含む電極を提供する。
【0010】
ある実施例において、上記の電極を含む電気化学エネルギー貯蔵装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は以下の有益効果の少なくとも一つを有する。
【0012】
(1)形成した緻密疎水被覆層は水と酸素を遮断する機能を有し、被覆された材料は空気中で安定に存在できる;
(2)リチウム反応性部分と疎水性部分を有する化合物が形成した被覆層はパッシベーション層と疎水層の二重機能を有する;
(3)疎水被覆層は、一定の機械的強度を有し、金属リチウム-骨格炭素複合材料の表面の固体電解質界面膜(SEI膜)の体積変化に耐えられ、そのサイクル安定性を向上し、デンドライトの生成を抑制する;
(4)疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料をリチウム電池の負極として用いることは、電池の安全性とサイクル寿命を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施例1におけるオクタデシルホスフェートが金属リチウム-骨格炭素複合材料を被覆する模式図である。
図2図2は、実施例1における金属リチウム-骨格炭素複合材料(a,b)とオクタデシルホスフェート-金属リチウム-骨格炭素複合材料(c,d)の走査電子顕微鏡写真である。
図3図3は、実施例1における金属リチウム-骨格炭素複合材料とオクタデシルホスフェート-金属リチウム-骨格炭素複合材料が乾燥空気中で1h暴露する前後の酸素含有量変化のEDS(エネルギースペクトル)の分析結果である。
図4図4は、実施例1における金属リチウム-骨格炭素複合材料とオクタデシルホスフェート-金属リチウム-骨格炭素炭素複合材料の乾燥空気中での容量安定性の測定結果である。
図5図5は、実施例1におけるオクタデシルホスフェート-金属リチウム-骨格炭素複合材料/リチウム半電池と金属リチウム-骨格炭素複合材料/リチウム半電池が定電流充放電測定過程において異なるサイクル回数での、電圧vs.容量曲線図である。
図6図6は、実施例1における1Cレートの条件でオクタデシルホスフェート-金属リチウム-骨格炭素複合材料、金属リチウム-骨格炭素複合材料、リチウムシートがそれぞれリン酸鉄リチウムと組み立てた全電池の放電比容量vs.サイクル回数図である。
図7図7は、実施例2におけるPMMA-金属リチウム-骨格炭素複合材料のSEM図である。
図8図8は、実施例2におけるPMMA-金属リチウム-骨格炭素複合材料の空気中での安定性測定結果である。
図9図9は、実施例3におけるパラフィン-金属リチウム-骨格炭素複合材料のSEM図である。
図10図10は、実施例3におけるパラフィン-金属リチウム-骨格炭素複合材料の空気中での安定性測定結果である。
図11図11は、実施例4におけるドデシルチオール-金属リチウム-骨格炭素複合材料のSEM図である。
図12図12は、実施例4におけるドデシルチオール-金属リチウム-骨格炭素複合材料の空気中での安定性測定結果である。
図13図13は、実施例5におけるフェニルリン酸-金属リチウム-骨格炭素複合材料のSEM図である。
図14図14は、実施例5におけるフェニルリン酸-金属リチウム-骨格炭素複合材料の空気中での安定性測定結果である。
図15図15は、実施例5における模擬電池の定電流定容量測定グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一つの形態では、多孔質炭素材料担体と少なくとも前記多孔質炭素材料担体の空隙中に分布している金属リチウムとを含む金属リチウム-骨格炭素複合材料と、少なくとも前記金属リチウム-骨格炭素複合材料中の金属リチウムを被覆する疎水被覆層と、を含む、疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料を提供する。
【0015】
ある実施例において、疎水被覆層は成膜性疎水物質からなってもよく、前記成膜性疎水物質が金属リチウム-骨格炭素複合材料の暴露表面に疎水膜を形成する。
【0016】
ある具体的な実施例において、成膜性疎水物質は、成膜性疎水高分子と成膜性疎水低分子から選ばれ、成膜性疎水高分子はポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などを含んでもよい;成膜性疎水低分子はパラフィン、ホワイトオイル、ベンゾトリアゾールなどを含んでもよい。
【0017】
ある実施例において、疎水被覆層はリチウム反応性部分と疎水性部分を有する化合物からなってもよく、リチウム反応性部分は金属リチウムと反応してそれをパッシベーションし、疎水性部分は疎水層を形成し、疎水層は最も外側に位置する。
【0018】
ある具体的な実施例において、リチウム反応性部分と疎水性部分を有する化合物は線形低分子化合物であってもよく、一端はリチウム反応性基(リチウム反応性部分)を有し、他端は疎水性の有機分子鎖(疎水性部分)を有し、リチウム反応性基と金属リチウムとの反応のアンカー効果により、疎水性の有機分子鎖は金属リチウム表面で疎水層に組み立てる。このような線形低分子化合物の例は界面活性剤などを含んでもよい。
【0019】
ある具体的な実施例において、リチウム反応性部分と疎水性部分を有する化合物のリチウム反応性部分は、リン酸基、チオール基、炭酸基及びフルオロ化されてもよいシリル基の少なくとも一種を含む。
【0020】
ある具体的な実施例において、リチウム反応性部分と疎水性部分を有する化合物の疎水性部分は、C-C22アルキル基、C-C24アリール基、及びシロキサン基の少なくとも一種を含み、これらの基は疎水性置換基で置換されてもよい。C-C22アルキル基はC-C22アルキル基、更にC12-C22アルキル基であることが好ましい。疎水性置換基はフルオロ基、パーフルオロ基、シロキサンなどから選択してもよい。
【0021】
ある実施例において、疎水被覆層は1~100nm、例えば10~50nmの厚さを有する。
【0022】
ある実施例において、疎水被覆層は電子絶縁性及び/又はイオン導電性を有する。
ある実施例において、金属リチウム-骨格炭素複合材料中の多孔質炭素材料担体の材料は、カーボンナノチューブ、多孔質炭素、カーボンブラック、グラフェン、カーボンファイバ、アセチレンブラック、カーボンエアロゲルのいずれか一種又は二種以上の組み合わせを含む。
【0023】
ある具体的な実施例において、多孔質炭素材料担体は少なくとも微小粒子状中実凝集構造、球形凝集構造、略球状凝集構造及びドーナツ型凝集構造のいずれか一種を有する。
【0024】
ある具体的な実施例において、多孔質炭素材料担体に含まれる空孔の平均孔径が10~100nmである。
【0025】
ある具体的な実施例において、多孔質炭素材料担体の平均粒子径が1~100μmであり、好ましくは1~50μmであり、又は1~15μmである。
【0026】
ある具体的な実施例において、多孔質炭素材料担体の電気伝導度が1×10-3~10S・cm-1である。
【0027】
ある具体的な実施例において、多孔質炭素材料担体の比表面積が100~1500m/gである。
【0028】
ある具体的な実施例において、多孔質炭素材料担体の耐えられる最高圧力が20MPa以上である。
【0029】
ある具体的な実施例において、多孔質炭素材料担体は、カーボンファイバマイクロビーズ、多孔質カーボンナノチューブマイクロビーズ、及びアセチレンブラックを含む。カーボンファイバマイクロビーズと多孔質カーボンナノチューブマイクロビーズは、カーボンナノチューブ又は炭素ナノファイバが互いに絡まって凝集してなるものであり、内部及び表面上に大量のナノサイズの空隙がある。このようなマイクロビーズは中実に近似する構造(毛糸玉構造に類似する)を有し、つまり、マイクロビーズの内部はカーボンナノチューブ又は炭素ナノファイバで満たされているが、絡まって凝集するカーボンナノチューブ又は炭素ナノファイバの間にはナノサイズの空隙が存在し、これらの空隙は金属リチウム粒子を収納するために用いられる。アセチレンブラックは、アセチレンガスを高温で空気を遮断したままで熱分解した後、冷却、収集したカーボンブラックであり、粒子径が40~50ナノメートルであってもよい。
【0030】
ある具体的な実施例において、カーボンナノチューブマイクロビーズは球形又は略球状粒子であり、平均直径が1μm~100μmであってもよいが、1μm~25μmであることが好ましい。
【0031】
ある具体的な実施例において、カーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、及び単層カーボンナノチューブのいずれか一種又は二種以上の組み合わせを含み、前記カーボンナノチューブは表面機能化処理されてもよい。カーボンナノチューブの表面に修飾している基は、-COOH、-OH、-NHなどの基から選択されてもよいが、これらに限定されることはない。
【0032】
ある実施例において、カーボンナノチューブマイクロビーズは、カーボンナノチューブを溶媒に分散して分散液を形成した後に、噴霧乾燥することにより調製してもよい。例えば、調製方法は以下のステップを含んでもよい。
【0033】
A、カーボンナノチューブを超音波処理により分散溶媒(界面活性剤を含まない)に分散し、分散液を得る;
B、ステップA中で得られた分散液を噴霧乾燥機のノズルよりスプレーし、送風温度と排風温度を予め設定し、噴霧過程で溶液を攪拌状態にする;
C、冷却して、カーボンナノチューブマイクロビーズを得る。
【0034】
ある具体的な実施例において、前記溶媒は、カーボンナノチューブ/炭素ナノファイバとナノ炭素粒子を均一に分散できる有機及び/又は無機液体、例えば、水、アンモニア水、塩酸溶液、エタノール、プロパノン、イソプロピルアルコールのいずれか一種又は数種の組み合わせを使用する。
【0035】
ある具体的な実施例において、前記溶媒は、体積比が1:10のエタノールと水との混合物であってもよい。
【0036】
ある具体的な実施例において、噴霧乾燥の条件は、送風温度が150~250℃であり、排風温度が75℃以上、例えば75~150℃、又は90℃以上であることを含んでもよい;好ましい噴霧乾燥の条件は、送風温度が190~210℃であり、排風温度が90~110℃であることを含む。
【0037】
ある具体的な実施例において、噴霧乾燥する時の噴霧速度は1mL/分~100L/分であってもよい。
【0038】
ある実施例において、金属リチウム-骨格炭素複合材料は、溶融金属リチウムと多孔質骨格炭素材料とを混合し、冷却してから得られる。前記混合は、金属リチウムと多孔質骨格炭素材料とを加熱(例えば、約200℃)しながら攪拌混合すること、又は多孔質骨格炭素材料を溶融金属リチウムに浸漬することを含んでもよい。金属リチウム-骨格炭素複合材料の調製は不活性雰囲気中で行われ、例えばアルゴンガス雰囲気のグローブボックス中(水含有量<10ppm、酸素含有量<10ppm)で行われる。
【0039】
ある具体的な実施例において、金属リチウムの金属リチウム-骨格炭素複合材料における担持量は10~90wt%である。
【0040】
本発明の別の面では、金属リチウム-炭素骨格複合材料及び、成膜性疎水物質又はリチウム反応性部分と疎水性部分を有する化合物を溶解した有機溶媒を混合すること;並びに、固液分離又は蒸発により、疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料を得ることを含む、上記の疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料の調製方法を提供する。
【0041】
「金属リチウム-炭素骨格複合材料」、「成膜性疎水物質」と「リチウム反応性部分と疎水性部分を有する化合物」について、上記の対応部分を参照する。
【0042】
ある実施例において、成膜性疎水物質又はリチウム反応性部分と疎水性部分を有する化合物を溶解した有機溶媒は、n-ヘキサン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、N-メチルピロリドンのいずれか一種又は二種以上の組み合わせを含んでもよい。
【0043】
ある実施例において、金属リチウム-炭素骨格複合材料及び、成膜性疎水物質又はリチウム反応性部分と疎水性部分を有する化合物を溶解した有機溶媒を混合する前に、前記金属リチウム-炭素骨格複合材料を別の有機溶媒に分散させ、前記別の有機溶媒は、成膜性疎水物質又はリチウム反応性部分と疎水性部分を有する化合物を溶解した有機溶媒と同じであってもよく、異なってもよく、n-ヘキサン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、N-メチルピロリドンのいずれか一種又は二種以上の組み合わせから選択される。
【0044】
ある実施例において、金属リチウム-炭素骨格複合材料及び、成膜性疎水物質又はリチウム反応性部分と疎水性部分を有する化合物を溶解した有機溶媒の混合は攪拌で行われる。
【0045】
ある実施例において、疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料を得るための固液分離は、濾過、例えば、吸引濾過などを含む。
【0046】
本発明の他の面では、前記材料に、少なくとも前記材料における活性金属を被覆する疎水被覆層を形成することを含む、水、酸素に敏感な活性金属を含む材料の保護方法を提供する。
【0047】
ある実施例において、保護される材料は、金属リチウム-炭素骨格複合材料、リチウム箔、リチウム粉、及び金属ナトリウムを含む。
【0048】
疎水被覆層及びその形成方法について、上記の対応部分を参照する。
【0049】
本発明の他の面では、上記の疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料を電極材料として含む電極を提供する。
【0050】
本発明の他の面では、上記の電極を含む電気化学エネルギー貯蔵装置を提供する。
ある実施例において、電気化学エネルギー貯蔵装置は、金属リチウム-酸化物電池、リチウムイオン電池、リチウム硫黄電池、又は金属リチウム-空気電池などを含む。
【0051】
以下の実施の形態は本公開を例示的に説明するものであり、限定するものではない。
【0052】
実施の形態1は、
多孔質炭素材料担体と少なくとも前記多孔質炭素材料担体の空隙中に分布している金属リチウムとを含む金属リチウム-骨格炭素複合材料;と
少なくとも前記金属リチウム-骨格炭素複合材料中の金属リチウムを被覆する疎水被覆層;と
を含む疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料。
【0053】
実施の形態2は、
前記疎水被覆層は、成膜性疎水物質からなり、前記金属リチウム-骨格炭素複合材料の暴露表面を覆う。前記成膜性疎水物質は、成膜性疎水高分子、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、及び成膜性疎水低分子、例えば、パラフィン、ホワイトオイル、ベンゾトリアゾールからなる群より選択されることが好ましい実施の形態1に記載の金属リチウム-骨格炭素複合材料。
【0054】
実施の形態3は、
前記疎水被覆層がリチウム反応性部分と疎水性部分を有する化合物からなり、前記リチウム反応性部分は金属リチウムと反応してそれをパッシベーションし、前記疎水性部分は外部疎水層を形成する実施の形態1に記載の金属リチウム-骨格炭素複合材料。
【0055】
実施の形態4は、
前記リチウム反応性部分は、リン酸基、チオール基、炭酸基、及びフルオロシリル基の少なくとも一種を含む;
及び/又は、前記疎水性部分は、C-C22アルキル基、C-C24アリール基、及びシロキサン基の少なくとも一種を含み、これらの基は疎水性置換基で置換されてもよい実施の形態3に記載の金属リチウム-骨格炭素複合材料。
【0056】
実施の形態5は、
前記疎水性置換基は、フルオロ基、パーフルオロ基、及びシロキサンの少なくとも一種を含む実施の形態4に記載の金属リチウム-骨格炭素複合材料。
【0057】
実施の形態6は、
前記疎水被覆層は10~50nmの厚さを有する実施の形態1~5のいずれか1つに記載の金属リチウム-骨格炭素複合材料。
【0058】
実施の形態7は、
前記疎水被覆層は電子絶縁性及び/又はイオン導電性を有する実施の形態1~6のいずれか1つに記載の金属リチウム-骨格炭素複合材料。
【0059】
実施の形態8は、
パッシベーションした金属リチウム-骨格炭素複合材料であって、前記多孔質炭素材料担体の材料は、カーボンナノチューブ、多孔質炭素、カーボンブラック、グラフェン、カーボンファイバ、アセチレンブラック、カーボンエアロゲルのいずれか一種又は二種以上の組み合わせを含む実施の形態1~7のいずれか1つに記載の金属リチウム-骨格炭素複合材料。
【0060】
実施の形態9は、
パッシベーションした金属リチウム-骨格炭素複合材料であって、前記多孔質炭素材料担体は、少なくとも微小粒子状中実凝集構造、球形凝集構造、略球状凝集構造、及びドーナツ型凝集構造のいずれか一種を有する;
及び/又は、前記多孔質炭素材料担体に含まれる空孔の平均孔径が10~100nmである;
及び/又は、前記多孔質炭素材料担体の平均粒子径が1~15μmである;
及び/又は、前記多孔質炭素材料担体の電気伝導度が1×10-3~10S・cm-1である;
及び/又は、前記多孔質炭素材料担体の比表面積が100~1500m/gである;
及び/又は、前記多孔質炭素材料担体の耐えられる最高圧力が20MPa以上である;
及び/又は、前記金属リチウムの金属リチウム-骨格炭素複合材料における担持量が10~50wt%である;
実施の形態1~8のいずれか1つに記載の金属リチウム-骨格炭素複合材料。
【0061】
実施の形態10は、
金属リチウム-炭素骨格複合材料及び、成膜性疎水物質又はリチウム反応性部分と疎水性部分を有する化合物を溶解した有機溶媒を混合すること;並びに
固液分離又は蒸発により、疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料を得ること;
を含む実施の形態1~9のいずれか1つに記載の疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料の調製方法。
【0062】
実施の形態11は、
前記有機溶媒は、n-ヘキサン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、N-メチルピロリドンのいずれか一種又は二種以上の組み合わせを含む実施の形態10に記載の方法。
【0063】
実施の形態12は、
前記方法は、前記金属リチウム-炭素骨格複合材料を有機溶媒に分散させておくことをさらに含み、前記分散用有機溶媒は、成膜性疎水物質又はリチウム反応性部分と疎水性部分を有する化合物を溶解した有機溶媒と同じ又は異なっている実施の形態10又は11に記載の方法。
【0064】
実施の形態13は、
前記材料に、少なくとも前記材料における活性金属を被覆する疎水被覆層を形成することを含む、水、酸素に敏感な活性金属を含む材料の保護方法。
【0065】
実施の形態14は、
前記材料は、金属リチウム-炭素骨格複合材料、リチウム箔、リチウム粉、及び金属ナトリウムを含む実施の形態13に記載の方法。
【0066】
実施の形態15は、
前記疎水被覆層は、成膜性疎水物質からなり、又はリチウム反応性部分と疎水性部分を有する化合物からなる実施の形態13又は14に記載の方法。
【0067】
実施の形態16は、
実施の形態1~9のいずれか1つに記載の疎水被覆層を有する金属リチウム-骨格炭素複合材料を電極材料として含む電極。
【0068】
実施の形態17は、
実施の形態16に記載の電極を含む電気化学エネルギー貯蔵装置。
【0069】
実施の形態18は、
前記電気化学エネルギー貯蔵装置は、金属リチウム-酸化物電池、リチウムイオン電池、リチウム硫黄電池、又は金属リチウム-空気電池を含む実施の形態17に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【実施例
【0070】
本発明の目的、技術態様、及び利点をより明白にするために、以下では図面及び実施例に基づいて、本発明をさらに詳しく説明する。ここで記載している具体的な実施例は単に本発明を説明するものであり、本発明を限定するものではないことは言うまでもない。さらに、以下に記載している本発明のそれぞれの実施形態にかかる技術特徴は、互いに衝突しなければ組み合わせてもよい。
【0071】
また、以下の実施例で採用する各種の製品構造パラメータ、各種の反応参加物、及びプロセス条件はいずれも典型的な範例であるが、本発明者が行った大量の試験検証により、上記に列挙した他の異なる構造パラメータ、他のタイプの反応参加物、及び他のプロセス条件もいずれも適用でき、いずれも発明の技術効果を達成できることが分かっている。
【0072】
合成実施例1
まず、全く化学処理されていない多層カーボンナノチューブ2g(上海鵬芯新材料科技会社)を脱イオン水200mLに加えた後、無水エタノール20mLを加えた。密封攪拌し、130W超音波プローブで5時間超音波処理し、サンプルを均一に分散させた。完了後、サンプルを噴霧乾燥機に入れた。送風温度を200℃、排風温度を150℃、噴霧圧力を40MPa、注入量を500mL/hとして、乾燥して多孔質カーボンナノチューブマイクロビーズ材料が得られた。マイクロビーズに窒素吸着脱着の測定を行い、マイクロビーズ比表面積が151m/gであり、平均孔径が18.7nmであった。
【0073】
電池グレードの金属リチウム100mgと多孔質カーボンナノチューブマイクロビーズ100mg(カーボンナノチューブは噴霧乾燥により得られ、平均孔径が18.7nmである)を秤量し、金属リチウムに不活性のヒータに入れ、200℃まで加熱(金属リチウムの融点よりも高い)して、6分間攪拌し、混合を終了させ、室温まで降温し、全過程はアルゴン気雰囲気中で行われた。金属リチウム-多孔質カーボンナノチューブマイクロビーズ複合材料(リチウム-炭素骨格複合材料)が得られた。秤量により、金属リチウムを吸収していないカーボンナノチューブマイクロビーズの重量と比較し、金属リチウムの担持量が15.0%と測定された。
【0074】
実施例1
合成実施例1で調製された金属リチウム-骨格炭素複合材料1gをn-ヘキサン溶液8gに分散させ、さらに0.1%wtオクタデシルホスフェートのテトラヒドロフラン溶液10mlを加え、常温で10min攪拌して反応させ、攪拌終了後に液体を濾過し、粉末を乾燥させた後にリン酸エステル-金属リチウム-骨格炭素複合材料が得られた。
【0075】
図1は、オクタデシルホスフェートが金属リチウム-骨格炭素複合材料を被覆する模式図を示す。図1において、オクタデシルホスフェートのリン酸基は金属リチウムの表面に結合し、金属リチウムと反応することでそれをパッシベーションするため、結合する場所はパッシベーション層に相当し、オクタデシルホスフェートのアルキル基部分(疎水基)は金属リチウムの表面で垂直に配列し、疎水膜(疎水層)となる。
【0076】
図2は、金属リチウム-骨格炭素複合材料(a,b)及びオクタデシルホスフェート-金属リチウム-骨格炭素複合材料(c,d)の走査電子顕微鏡写真を示す。調製されたオクタデシルホスフェート-金属リチウム-骨格炭素複合粒子は、金属リチウム-骨格炭素複合材料の球形又は略球状形態を保ち、狭い粒径分布を有することが分かる。
【0077】
図3は、金属リチウム-骨格炭素複合材料とオクタデシルホスフェート-金属リチウム-骨格炭素複合材料を乾燥空気中に1h暴露する前後の酸素含有量変化のEDS(スペクトル)分析結果を示す。図4は、金属リチウム-骨格炭素複合材料とオクタデシルホスフェート-金属リチウム-骨格炭素炭素複合材料の乾燥空気中での容量安定性の測定結果を示す。測定条件:温度25℃、相対湿度50%。図3及び4から、オクタデシルホスフェート-金属リチウム-骨格炭素複合材料を乾燥空気中で1h暴露した後、酸素含有量がわずかに増加したが、容量が顕著に減衰しなかったため、オクタデシルホスフェート-金属リチウム-骨格炭素複合材料は乾燥空気中で安定に保存できることがわかる。
【0078】
図5は、オクタデシルホスフェート-金属リチウム-骨格炭素複合材料/リチウム半電池、及び金属リチウム-骨格炭素複合材料/リチウム半電池が、定電流充放電測定過程で、異なるサイクル回数における、電圧vs.容量曲線図を示す(材料を発泡銅に押して作用電極とし、15ミリメートルの金属リチウム箔をリチウム電池の対極とする;電解液は1mol/LのLiPFの三成分混合溶媒EC:DMC:EMC=1:1:1(体積比v/v/v)であり、ポリプロピレン微細孔薄膜はセパレータであり、模擬電池を組み立てる)。図6は、1Cレートの条件で、オクタデシルホスフェート-金属リチウム-骨格炭素複合材料、金属リチウム-骨格炭素複合材料、リチウムシートがそれぞれリン酸鉄リチウムと組み立てた全電池の放電比容量vs.サイクル回数図を示す(材料を発泡銅に押して負極とし、リン酸鉄リチウム(蘇州納新新能源科技会社)を正極とする;電解液は1mol/LのLiPFの三成分混合溶媒EC:DMC:EMC=1:1:1(体積比v/v/v)であり、ポリプロピレン微細孔薄膜はセパレータであり、模擬電池を組み立てる)。リチウムシートと組み立てた半電池の測定過程において、オクタデシルホスフェート-金属リチウム-骨格炭素複合材料はサイクル過程で顕著に分極しなかったので、この材料は良好な乾燥環境における安定性及びサイクル安定性を有する。この複合材料とリン酸鉄リチウム正極とからなる全電池では、正負極容量の比例が約1~30であり、1Cレートの条件で、300サイクル繰り返した後、容量がほぼ減衰しなかった;リチウム-カーボンナノチューブマイクロビーズ複合物を負極とする全電池は、300サイクル繰り返した後の容量維持率が82%であった;リチウムシートを負極とする全電池は、250サイクル繰り返した後、容量維持率が急に低下し、そして引き続き使用できなくなった。
【0079】
実施例2
合成実施例1で調製された金属リチウム-骨格炭素複合材料1gをn-ヘキサン溶液8gに分散させ、さらに0.1%wtのPMMAのテトラヒドロフラン溶液20mlを加え、激しく攪拌した後、PMMAは金属リチウム-骨格炭素複合材料の表面に析出沈殿した。それを濾過、洗浄、乾燥した後、PMMA-金属リチウム-骨格炭素複合材料が得られた。
【0080】
図7はこの材料のSEM図であり、図面からわかるように、PMMAは金属リチウム-骨格炭素複合材料を被覆している。図8はこの材料の空気中での安定性測定である(測定条件:温度25℃、相対湿度50%)。この測定より、材料は空気中で一定の安定性を有し、金属リチウム-骨格炭素複合材料よりも優れた空気安定性及び加工可能性を有することが分かる。
【0081】
実施例3
合成実施例1で調製された金属リチウム-骨格炭素複合材料1gをn-ヘキサン溶液8gに分散させ、さらに0.1%wtのパラフィンのn-ヘキサン溶液20mlを加え、溶媒を攪拌しながら加熱して蒸発乾燥させ、パラフィンは金属リチウム-骨格炭素複合材料の表面に析出沈殿し、パラフィン-金属リチウム-骨格炭素複合材料が得られた。
【0082】
図9はこの材料のSEM図であり、図面からわかるように、パラフィンは金属リチウム-骨格炭素複合材料の表面を被覆している。図10はこの材料の空気中での安定性測定である(測定条件:温度25℃、相対湿度50%)。この測定より、材料は空気中で一定の安定性を有し、金属リチウム-骨格炭素複合材料よりも優れた空気安定性及び加工可能性を有することが分かる。
【0083】
実施例4
合成実施例1で調製された金属リチウム-骨格炭素複合材料1gをn-ヘキサン溶液8gに分散させ、さらに0.1%wtのドデシルチオールのn-ヘキサン溶液10mlを加え、10min攪拌し、反応終了後に産物を吸引濾過、洗浄し、ドデシルチオール-金属リチウム-骨格炭素複合材料が得られた。
【0084】
図11はこの材料のSEM図であり、図面からわかるように、ドデシルチオールは金属リチウム-骨格炭素複合材料の表面を被覆している。図12はこの材料の空気中での安定性測定である(測定条件:温度25℃、相対湿度50%)。この測定より、材料は空気中で一定の安定性を有し、金属リチウム-骨格炭素複合材料よりも優れた空気安定性及び加工可能性を有することが分かる。
【0085】
実施例5
合成実施例1で調製された金属リチウム-骨格炭素複合材料1gをn-ヘキサン溶液8gに分散させ、さらに0.1%wtフェニルリン酸のn-ヘキサン溶液10mlを加え、10min攪拌し、反応終了後に産物を吸引濾過、洗浄し、フェニルリン酸-金属リチウム-骨格炭素複合材料が得られた。
【0086】
図13はこの材料のSEM図であり、図面からわかるように、フェニルリン酸は金属リチウム-骨格炭素複合材料の表面を被覆している。図14はこの材料の空気中での安定性測定である(測定条件:温度25℃、相対湿度50%)。この測定より、材料は空気中で一定の安定性を有し、金属リチウム-骨格炭素複合材料よりも優れた空気安定性及び加工可能性を有することが分かる。図15は、この実施例で調製されたリチウム-カーボンナノチューブマイクロビーズ複合材料を負極として製造された模擬電池の定電流定容量測定グラフを示す(材料を発泡銅に押して作用電極とし、15ミリの金属リチウム箔をリチウム電池の対極とする。電解液は1mol/LのLiPFの三成分混合溶媒EC:DMC:EMC=1:1:1(体積比v/v/v)であり、ポリプロピレン微細孔薄膜はセパレータであり、模擬電池を組み立てる)。この図面からわかるように、リチウム-カーボンナノチューブマイクロビーズ複合材料は最初に分極電圧が小さく、材料が大きな比表面積を有し、電流密度を大きく低下させ、リチウムデンドライトの生成を効果的に抑制し、デンドライト短絡による電池安全リスクを避けることができることを示す。さらに、フェニル基は一定のイオン導電率を有し、リン酸基も一定のイオン導電率を有するため、フェニルリン酸で被覆された金属リチウム-骨格炭素材料は被覆されていないものより、サイクル過程でより低い過電位及びより良いサイクル寿命を有する。
【0087】
上述に記載しているのは本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を制限するものではないことは言うまでもない。本発明の趣旨と原則に基づいて行われた全ての補正、均等置換や改善などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15