(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】シランを製造する方法、シランでシリカを変性する方法及び変性シリカ
(51)【国際特許分類】
C07F 7/18 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
C07F7/18 W CSP
(21)【出願番号】P 2019564914
(86)(22)【出願日】2018-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2018062293
(87)【国際公開番号】W WO2019001823
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2019-11-22
(31)【優先権主張番号】102017211110.0
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510156561
【氏名又は名称】コンチネンタル・ライフェン・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコプ・アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ダウアー・ダーヴィット-ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】シュトローマイアー・ユリアン
(72)【発明者】
【氏名】シェッフェル・ユリア
(72)【発明者】
【氏名】レッカー・カルラ
(72)【発明者】
【氏名】シュヴェーケンディーク・キルステン
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー・ノルベルト
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-201312(JP,A)
【文献】特開2015-218170(JP,A)
【文献】特表2017-514978(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0280239(US,A1)
【文献】特表2000-517297(JP,A)
【文献】特開平02-006465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I):
I)(R
1)
oSi-R
2-HNC(=O)NH-A-HNC(=O)-A-S
k-A-C(=O)NH-A-NHC(=O)NH-R
2-Si(R
1)
o
(式中、oは、1、2又は3であり得、及びkは、2~10の整数であり、及びシリル基(R
1)
oSi-中及び分子の両側の基R
1は、同一又は異なり得、且つ1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基、4~10個の炭素原子を有するシクロアルコキシ基、6~20個の炭素原子を有するフェノキシ基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、2~20個の炭素原子を有するアルキニル基、7~20個の炭素原子を有するアラルキル基、ハライド又はアルキルポリエーテル基-O-(R
6-O)
r-R
5から選択され、ここで、R
6は、同一又は異なり、且つ分岐又は非分岐、飽和又は不飽和、脂肪族、芳香族又は混合脂肪族/芳香族の二価のC
1~C
30炭化水素基
であり、rは、1~30
の整数であり、及びR
5は、非置換又は置換、分岐又は非分岐の一価のアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基
であるか、又は
2つのR
1は、2~10個の炭素原子を有する環状ジアルコキシ基を形成し、ここで、oは、<3であるか、又は
前記式I)の2つ以上のシランは、基R
1を介してカップリングされることが可能であり、
基R
2は、1~20個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基、又は4~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、又は6~20個の炭素原子を有するアリール基、又は2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、2~20個の炭素原子を有するアルキニル基、又は7~20個の炭素原子を有するアラルキル基であり、分子中の基Aは、同一又は異なり得、且つフェニル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、キノリル基、ピロール基、フラン基、チオフェン基、ピラゾール基、イミダゾール基、チアゾール基及びオキサゾール基からなる群から選択される芳香族基であり、前記シランは、前記式I)のシランの加水分解及び縮合を通して形成されるオリゴマーの形態で存在することもできる)
のシランを調製する方法であって、少なくとも以下の方法ステップ:
a)有機溶媒中のジアミノ置換芳香族H
2N-A-NH
2をイソシアナト官能性シラン(R
1)
oSi-R
2-NCOと反応させることによって、物質(R
1)
oSi-R
2-HNC(=O)NH-A-NH
2を提供するステップ、
b)芳香族チオールHOC(=O)-A-SHの有機溶媒中におけるヨウ素の存在下での酸化によって、物質HOC(=O)-A-S
2-A-C(=O)OHを提供するステップ、
c)ステップb)からの前記物質を活性化させるステップであって、前記物質を、有機溶媒中に懸濁し、そして触媒の存在下で活性化剤を用いて反応させてClC(=O)-A-S
2-A-C(=O)Clを形成し、ここで前記活性化剤は塩化オキサリル及び塩化チオニルから選択されるステップ、
d)少なくとも2当量の、ステップa)からの前記物質を、1当量の、ステップc)からの前記物質と反応させ、この場合、有機溶媒中のステップa)からの物質の溶液をステップc)からの物質の溶液に室温で接触させ、そして次に撹拌し、それによって前記式I)のシランを得るステップ、
e)任意選択的に、ステップd)で得られた前記式I)の前記シランを精製するステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記基R
1は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、又は1~6個の炭素原子を有するアルコキシ基、又はハライドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基R
2は、2~8個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基又は4~8個の炭素原子を有するシクロアルキル基である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記式I)の前記調製されるシランは、以下の式II):
【化1】
を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記式I)の前記調製されるシランは、以下の式III):
【化2】
を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
kは、2~8の整数であり、硫化は、さらなる方法ステップs)における元素硫黄の添加を通して行われ、それにより、3以上のkが得られる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
式I)で表されるシラン:
I)(R
1)
oSi-R
2-HNC(=O)NH-A-HNC(=O)-A-S
k-A-C(=O)NH-A-NHC(=O)NH-R
2-Si(R
1)
o
(式中、oは、1、2又は3であり得、及びkは、2~10の整数であり、及びシリル基(R
1)
oSi-中及び分子の両側の基R
1は、同一又は異なり得、且つ1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基、4~10個の炭素原子を有するシクロアルコキシ基、6~20個の炭素原子を有するフェノキシ基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、2~20個の炭素原子を有するアルキニル基、7~20個の炭素原子を有するアラルキル基、ハライド又はアルキルポリエーテル基-O-(R
6-O)
r-R
5から選択され、ここで、R
6は、同一又は異なり、且つ分岐又は非分岐、飽和又は不飽和、脂肪族、芳香族又は混合脂肪族/芳香族の二価のC
1~C
30炭化水素基
であり、rは、1~30
の整数であり、及びR
5は、非置換又は置換、分岐又は非分岐の一価のアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基
であるか、又は
2つのR
1は、2~10個の炭素原子を有する環状ジアルコキシ基を形成し、ここで、oは、<3であるか、又は
前記式I)の2つ以上のシランは、基R
1を介してカップリングされることが可能であり、
基R
2は、1~20個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基、又は4~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、又は6~20個の炭素原子を有するアリール基、又は2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、2~20個の炭素原子を有するアルキニル基、又は7~20個の炭素原子を有するアラルキル基であり、分子中の基Aは、同一又は異なり得、且つフェニル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、キノリル基、ピロール基、フラン基、チオフェン基、ピラゾール基、イミダゾール基、チアゾール基及びオキサゾール基からなる群から選択される芳香族基であり、前記シランは、前記式I)のシランの加水分解及び縮合を通して形成されるオリゴマーの形態で存在することもできる)。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載のように調製された少なくとも1つのシランで改質されるシリカを調製する方法であって、少なくとも以下の方法ステップ:
f)方法ステップd)又はe)で得られた前記精製シランを有機溶媒中に溶解させるステップ、
g)少なくとも1つのシリカをステップf)からの溶液と接触させ、且つその後、得られた懸濁液
を撹拌するステップ、
h)得られた前記変性シリカを乾燥させるステップ
を含む方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法によって調製される変性シリカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シランを調製する方法、シランでシリカを変性する方法及び変性シリカに関する。
【背景技術】
【0002】
シランは、ゴム混合物、特に車両用タイヤ、特に少なくとも1つのシリカを充填剤として含むゴム混合物の添加剤として知られている。従来技術で知られているシランは、例えば、独国特許発明第2536674 C3号明細書及び独国特許発明第2255577 C3号明細書に開示されている。この場合、シリカは、このようなシランによってポリマーに結合し、したがって、シランは、カップリング剤とも呼ばれる。シランカップリング剤によるシリカの結合は、ゴム混合物の転がり抵抗特性及び加工性に関して有利となる。このようなシランは、通常、少なくとも1つの硫黄部分を有し、これは、ゴム混合物の加硫に関与する。
【0003】
記載の性質に加えて、ゴム混合物の他の性質も重要な役割を果たし、特に車両用タイヤ中に使用される場合、特に混合物の剛性などは、特に車両用タイヤのハンドリング特性に影響を与える。
【0004】
国際公開第2015/172915 A1号パンフレットには、従来技術よりも高い剛性を有するが、転がり抵抗及びウェットグリップに関してほぼ不変の指標を維持する、尿素含有シランを含むゴム混合物が開示されている。この場合、尿素基は、いわゆるスペーサー中、すなわち(充填剤に結合する)ケイ素と、(ジエンゴムに結合する)硫黄との間のスペーシング基の中に存在する。
【0005】
特開2002-201312号公報では、ゴム混合物中の充填剤としてのカーボンブラック又はシリカの分散性を改良すると言われている、スペーシング基中に尿素部分又は酸アミドとフェニル基とを有するゴム混合用シランが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ゴム混合物への添加に特に適切な新規シラン及びシランの一形態の調製方法を提供することを目的とする。
【0007】
ゴム混合物中、特に車両用タイヤに使用される場合、剛性、したがってゴム混合物のハンドリングプレディクタ-(handling predictor)を従来技術よりもさらに改善するためのシランが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1及び11に記載の本発明による方法、請求項10に記載の本発明によるシラン並びに請求項12に記載の本発明による変性シリカによって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
請求項1に記載の本発明による方法は、式I):
I)(R1)oSi-R2-HNC(=O)NH-A-HNC(=O)-A-Sk-A-C(=O)NH-A-NHC(=O)-R2-Si(R1)o
(式中、oは、1、2又は3であり得、及びkは、2以上の整数であり、及びシリル基(R1)oSi-中及び分子の両側の基R1は、同一又は異なり得、且つ1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基、4~10個の炭素原子を有するシクロアルコキシ基、6~20個の炭素原子を有するフェノキシ基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、2~20個の炭素原子を有するアルキニル基、7~20個の炭素原子を有するアラルキル基、ハライド又はアルキルポリエーテル基-O-(R6-O)r-R5から選択され、ここで、R6は、同一又は異なり、且つ分岐又は非分岐、飽和又は不飽和、脂肪族、芳香族又は混合脂肪族/芳香族の二価のC1~C30炭化水素基、好ましくは-CH2-CH2-であり、rは、1~30、好ましくは3~10の整数であり、及びR5は、非置換又は置換、分岐又は非分岐の一価のアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基、好ましくは-C13H27アルキル基であるか、又は
2つのR1は、2~10個の炭素原子を有する環状ジアルコキシ基を形成し、ここで、oは、<3であるか、又は
式I)の2つ以上のシランは、基R1を介してカップリングされることが可能であり、
基R2は、1~20個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基、又は4~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、又は6~20個の炭素原子を有するアリール基、又は2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、2~20個の炭素原子を有するアルキニル基、又は7~20個の炭素原子を有するアラルキル基であり、分子中の基Aは、同一又は異なり得、且つ芳香族基であり、シランは、式I)のシランの加水分解及び縮合を通して形成されるオリゴマーの形態で存在することもできる)
のシランを、少なくとも以下の方法ステップ:
a)物質(R1)oSi-R2-HNC(=O)NH-A-NH2を提供するステップ、
b)物質HOC(=O)-A-S2-A-C(=O)OHを提供するステップ、
c)ステップb)からの物質を活性化させるステップであって、前記物質は、有機溶媒中に且つ活性化剤と反応された触媒の存在下で懸濁されて、ClC(=O)-A-S2-A-C(=O)Clを形成する、ステップ、
d)少なくとも2当量の、ステップa)からの物質を、1当量の、ステップc)からの物質と反応させるステップであって、有機溶媒中のステップa)からの物質の溶液をステップc)からの物質の溶液に室温で接触させ、且つ次に4~18時間撹拌し、それによって式I)のシランを得るステップ、
e)任意選択的に、ステップd)で得られた式I)のシランを精製するステップ
によって調製する。
【0010】
従来技術から周知のシランと比較すると、本発明による方法によって調製される-R2-HNC(=O)NH-A-HNC(=O)-A-基を含むシランは、Si原子とS原子との間に比較的長いスペーシング基を有し、これは、少なくとも2つの芳香族基Aと、連結単位-HNC(=O)NH-及び-HNC(=O)-とを含む。
【0011】
したがって、本発明は、新規のシラン及びこのシランの新規の調製方法を提供する。本発明によるシランを含むゴム混合物は、驚くべきことに、より高い、したがって改善された剛性を示し、これは、特にスペーシング基中(すなわちSk部分のそれぞれの側)に上記連結単位とともに存在する2つの芳香族基Aによるものであり得る。
【0012】
請求項11に記載の本発明による方法を用いると、本発明により調製されたシランを用いて変性されるシリカが調製される。これにより、特に車両用タイヤのためのゴム混合物への添加に特に適切な一形態のシランが得られる。
【0013】
より良い理解のため、最初に式I)のシランの構造及び個別の特徴を以下に説明する。
【0014】
基の特徴及び好ましい実施形態は、対応する出発物質を選択することにより、本発明による方法において得られる。
【0015】
式I)中に示されるように、シランの基本構造は、Sk部分を中心と考えて対称となる。
【0016】
-HNC(=O)-基は、カルボキサミド基であり、分子の両側の2つのそれぞれの窒素原子は、-HNC(=O)NH-及び-HNC(=O)-に連結する芳香族基Aに結合している。
【0017】
基-HNC(=O)NH-は、尿素基を表す。
【0018】
芳香族基Aは、原則的に、あらゆる芳香族基であり得、分子のそれぞれの側のA基は、同一又は異なり得る。ここで、芳香族基Aは、式-HNC(=O)NH-、-HNC(=O)-及びSkに明記される置換基に加えて、芳香族環系の1つ以上の原子上にヘテロ原子を含み、且つ/又は置換基を有する(それぞれの水素原子の場合)ことができる。
【0019】
芳香族基Aは、好ましくは、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、キノリル基、ピロール基、フラン基、チオフェン基、ピラゾール基、イミダゾール基、チアゾール基及びオキサゾール基からなる群から選択される。
【0020】
これらの基は、芳香族環系の考えられるすべての原子、特に炭素原子を介してそれぞれの芳香族基に結合することができる。フェニル基などの6つの環原子を有する単環式芳香族では、これは、例えば、基が互いに対してパラ位、メタ位又はオルト位で配置可能であることを意味する。
【0021】
本発明の特に有利な一実施形態では、分子のそれぞれの側のすべてのA基がフェニル基である。
【0022】
本発明の好ましい一実施形態では、-HNC(=O)NH-及び-HNC(=O)-、さらに-HNC(=O)-及び-Sk-は、それぞれの場合、それぞれの芳香族基A中で互いに対してパラ位で配置される。
【0023】
これにより、シランが細長い分子構造となり、これは、特にゴム混合物中でその剛性のさらなる増加に寄与することができる。
【0024】
本発明のさらに好ましい一実施形態では、それぞれの芳香族基Aにおいて、-HNC(=O)NH-及び-HNC(=O)-は、互いに対してパラ位に配置され、-HNC(=O)-及び-S2-は、互いに対してオルト位に配置される。
【0025】
これによってシランが剛直分子構造となり、これは、特にゴム混合物中でその剛性のさらなる増加に寄与することができる。
【0026】
本発明によるシランでは、シリル基(R1)oSi-中及び分子の両側の基R1は、同一又は異なり得、且つ1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基、4~10個の炭素原子を有するシクロアルコキシ基、6~20個の炭素原子を有するフェノキシ基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、2~20個の炭素原子を有するアルキニル基、7~20個の炭素原子を有するアラルキル基、ハライド又はアルキルポリエーテル基-O-(R6-O)r-R5から選択され、ここで、R6は、同一又は異なり、且つ分岐又は非分岐、飽和又は不飽和、脂肪族、芳香族又は混合脂肪族/芳香族の二価のC1~C30炭化水素基、好ましくは-CH2-CH2-であり、rは、1~30、好ましくは3~10の整数であり、及びR5は、非置換又は置換、分岐又は非分岐の一価のアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基、好ましくは-C13H27アルキル基であるか、又は
2つのR1は、2~10個の炭素原子を有する環状ジアルコキシ基を形成し、ここで、oは、<3であるか、又は
式I)の2つ以上のシランは、基R1を介してカップリングされることが可能である。
【0027】
記載のすべての基R1及び結合を1つのシリル基中で組み合わせることができる。
【0028】
式I)の2つのシランが互いにカップリングする場合、それらは、同じ基R1を共有する。この方法で3つ以上のシランを互いに結合させることも可能である。したがって、式I)のシランの合成に続いて、基R1を介して式I)の2つのシランを互いに連結させることが考えられる。例えば、ジアルコキシ基を介してこの方法で3つ以上のシランを互いに連結することも可能である。
【0029】
本発明によるシランは、式I)のシランの加水分解及び縮合によって形成されるオリゴマーを含むこともできる。
【0030】
式I)のシランは、好ましくは、それぞれのシリル基(R1)oSi-中において、脱離基として機能できる少なくとも1つの基R1、特にアルコキシ基又は酸素原子によってケイ素原子に結合する任意の別の記載の基又はハライドを含む。
【0031】
基R1は、好ましくは、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、又は1~6個の炭素原子を有するアルコキシ基、又はハライド、特に好ましくは1~6個の炭素原子を有するアルコキシ基を含む。
【0032】
本発明の特に有利な一実施形態では、同じシリル基(R1)oSi-中の基R1は、同一であり、1又は2個の炭素原子を有するアルコキシ基、すなわちメトキシ基又はエトキシ基であり、最も好ましくはエトキシ基であり、o=3である。
【0033】
しかし、オリゴマーの場合又は2つのR1がジアルコキシ基を形成する場合を含めて、残りの基R1は、好ましくは、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、又はハライド、又は1~6個の炭素原子、好ましくは1若しくは2個の炭素原子を有するアルコキシ基、すなわちメトキシ基又はエトキシ基、最も好ましくはエトキシ基である。
【0034】
本発明により調製されるシランの基R2は、1~20個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基、又は4~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、又は6~20個の炭素原子を有するアリール基、又は2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、2~20個の炭素原子を有するアルキニル基、又は7~20個の炭素原子を有するアラルキル基である。
【0035】
基R2は、好ましくは、2~8個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基又は4~8個の炭素原子を有するシクロアルキル基、例えば特にシクロヘキシル基である。
【0036】
本発明の特に有利な一実施形態では、基R2は、2~6個の炭素原子、好ましくは2~4個の炭素原子、特に好ましくは2又は3個の炭素原子を有するアルキル基であり、3個の炭素原子を有するプロピル基が最も好ましい。
【0037】
Sk部分は、k個の硫黄原子を含むスルフィド架橋であり、これらのk個の硫黄原子は、1つの鎖中で連結して、分子中でポリスルフィド部分を形成する。ここで、指数kは、2以上の整数である。
【0038】
当業者に周知のように、方法ステップa)~f)後、さらなる方法ステップs)において元素硫黄を加えることによる硫化により、ジスルフィド部分をポリスルフィドに変換することができ、これによって3以上のkが得られ、Wang et al.,Journal of Sulfur Chemistry,2013,34,55-66が参照される。
【0039】
硫化は、原理上、方法の早い段階、特にステップb)又はc)後の合成の出発分子に対して行うこともできる。次に、分子HOC(=O)-A-Sk-A-C(=O)OH及びClC(=O)-A-Sk-A-C(=O)Clを用いて合成が続けられる。
【0040】
硫化は、ステップd)後の任意選択の精製前に行うこともできる。
【0041】
好ましくは、kは、2~10の整数(2及び10を含む)、より好ましくは2~8の整数、最も好ましくは2、3又は4である。
【0042】
例えば、kが3以上である場合、ステップa)~e)からの分子中のS2基に対してさらなる方法ステップs)で硫化を行ってk>2のSk基が得られる。
【0043】
本発明により調製されるシランは、種々のk値を有する混合物として存在することもできる。
【0044】
硫化後、これによって以下の代表的で好ましい構造式II)及びIII)が得られ、ここで、kは、好ましくは、2~8である。
【化1】
【0045】
ここで、式I)に関して、すべてのR1は、エトキシ基であり、R2は、プロピル基であり、すべてのAは、フェニル基であり、分子II)の場合、すべての結合は、パラ位で配置され、分子III)の場合、基Sk-及び-C(=O)NHは、互いに対してオルト位で配置される。
【0046】
本発明の好ましい一実施形態では、k=2である。
【0047】
本発明の特に好ましく代表的な一実施形態では、k=2であり、本発明により調製されるシランは、例えば、以下に示される式IV)を有する。
【化2】
【0048】
式II)のシランは、方法ステップa)~d)又はe)によって本発明により調製される好ましい一例となる。
【0049】
本発明のさらなる特に好ましく代表的な一実施形態では、本発明により調製されるシランは、以下の式V)を有する。
【化3】
【0050】
ここで、式I)に関して、k=2であり、すべてのR1は、エトキシ基であり、R2は、プロピル基であり、-HNC(=O)NH-及び-HNC(=O)-は、互いに対してパラ位に配置され、-HNC(=O)-及び-S2-は、それぞれの芳香族基A中で互いに対してオルト位で配置され、すべてのAは、フェニル基である。
【0051】
式V)のシランは、方法ステップa)~d)又はe)によって本発明により調製される好ましい一例となる。
【0052】
式I)のシランを調製するための本発明による方法の個別の方法ステップa)~e)を以下に説明する。
【0053】
ステップa)では、物質(R1)oSi-R2-HNC(=O)NH-A-NH2が最初に提供される。指数o、基R1、R2及び基Aに関して、前述の説明のすべてが適用される。
【0054】
物質(R1)oSi-R2-HNC(=O)NH-A-NH2は、好ましくは、ジアミノ置換芳香族H2N-A-NH2を有機溶媒中でイソシアナト官能化シラン(R1)oSi-R2-NCOと反応させる方法a1)によって提供される。これは、好ましくは、2当量のジアミノ置換芳香族H2N-A-NH2と1当量のイソシアナト官能性シラン(R1)oSi-R2-NCOとを用いて行われる。
【0055】
本発明の特に好ましい一実施形態では、すべてのR1は、エトキシ基であり、R2は、プロピル基であり、Aは、フェニル基であり、2つのアミノ基は、互いに対してパラ位に配置される(芳香族中で1,4-置換)。
【0056】
本発明の好ましい一実施形態では、有機溶媒は、ジクロロメタン(DCM)である。
【0057】
この反応は、好ましくは、室温(RT)で行われ、好ましくは官能化シラン(R1)oSi-R2-NCOをジアミノ置換芳香族H2N-A-NH2の溶液に滴下することによって行われる。
【0058】
ステップa1)による反応混合物は、好ましくは、6~18時間撹拌され、その後、溶媒、好ましくはDCMが減圧下で除去される。好ましくは、これに続いて、精製、例えばシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー又は結晶化プロセス若しくは沈殿などの別の精製が行われる。
【0059】
最後に生成物が乾燥され、好ましくは減圧下で乾燥される。
【0060】
ステップb)では、物質HOC(=O)-A-S2-A-C(=O)OHが提供される。基Aに関して、シランの構造に関する前述の説明のすべてが適用される。本発明の好ましい一実施形態では、両方のAは、フェニル基であり、HOC(=O)-及び-S2-は、好ましくは、パラ位(1,4-置換)に配置される。
【0061】
ジスルフィドHOC(=O)-A-S2-A-C(=O)OHが市販されていない場合、ステップb)におけるこの物質は、好ましくは、(1当量のジスルフィドを調製するために)少なくとも2当量の芳香族チオールHOC(=O)-A-SHを1当量のヨウ素の存在下で有機溶媒中において酸化させるプロセスb1)によって提供される。
【0062】
芳香族チオールの有機溶媒は、好ましくは、アルコール、特に好ましくはエタノール(EtOH)である。
【0063】
この反応は、好ましくは、室温(RT)で行われ、好ましくは飽和エタノール性ヨウ素溶液をチオールの溶液に滴下することによって行われる。この添加は、好ましくは、反応混合物が過剰のヨウ素によってちょうど淡黄色を呈するまで行われる。
【0064】
この結果得られる反応混合物は、濾過され、残留物は、好ましくは、過剰のヨウ素を除去するために冷脱イオン水及び冷エタノールで洗浄され、「冷」は、冷蔵庫の低温であることを意味し、好ましくは0~+8℃の温度を意味する。
【0065】
最後に生成物が乾燥され、好ましくは減圧下で乾燥される。
【0066】
方法ステップc)では、ステップb)からの物質が活性化され、ここで、有機溶媒中に且つ活性化剤と反応された触媒の存在下で懸濁されて、ClC(=O)-A-S2-A-C(=O)Clが形成される。ステップc)中の有機溶媒は、好ましくは、テトラヒドロフラン(THF)である。
【0067】
触媒は、特に有機触媒であり、特に好ましくは触媒量のジメチルホルムアミド(DMF)を含む。
【0068】
活性化剤は、好ましくは、塩化オキサリル及び塩化チオニルから選択される。
【0069】
1当量のステップb)からのジスルフィドと、10当量の活性化剤、好ましくは塩化オキサリルとを使用することが好ましい。
【0070】
この反応は、好ましくは、0℃で行われる。活性化剤、例えば塩化オキサリルが好ましくはジスルフィドの懸濁液に滴下され、0℃で30分間撹拌される。次に、好ましくはRTで3時間撹拌される。
【0071】
次に、溶媒及び過剰の活性化剤は、好ましくは、減圧下で除去される。
【0072】
この結果得られる反応生成物は、さらに精製することなく次のステップに使用することができる。
【0073】
ステップd)では、少なくとも2当量のステップa)からの物質を1当量のステップc)からの物質と反応させ、この場合、有機溶媒中のステップa)の物質の溶液をステップc)からの物質の溶液に室温で接触させ、次に4~18、特に好ましくは6~18時間撹拌し、それによって式I)のシランが得られる。
【0074】
2.2当量のステップa)からの物質を反応させる場合が好ましい。ステップd)中の有機溶媒は、(a)及びc)からの)両方の物質に関して好ましくはTHFである。
【0075】
この反応は、好ましくは、RTで行われ、ステップc)からのジスルフィドの溶液をステップa)からの物質の溶液に滴下することによって行われる。
【0076】
この結果得られる懸濁液は、次に、好ましくは6~12時間撹拌され、次に濾過することにより、式I)のシランが調製される。
【0077】
方法ステップe)では、ステップd)で得られた式I)のシランが任意選択的に精製され、この精製の種類は、シランが固体として得られるかどうかによって決定される。この場合、これは、例えば、濾過され、濾過で得られた濾過ケーキは、好ましくは、冷THF及び冷脱イオン水で洗浄され、この場合も同様に「冷」は、好ましくは、0~+8℃の温度を意味する。最後に、生成物の式I)のシランは、好ましくは、減圧下で乾燥される。
【0078】
他の場合、カラムクロマトグラフィーによる精製を考慮することができる。
【0079】
しかし、後述のように、調製されたシランは、精製ステップを用いずに、例えばシリカ上に吸収させてさらに使用することも考慮される。
【0080】
本発明により調製された式I)のシランは、好ましくは、本発明によるさらなる方法ステップでシリカ上に吸収され、それにより特に車両用タイヤのためのゴム混合物にシランを添加するために特に適切な形態が得られる。
【0081】
これらのさらなる方法ステップは、本発明により調製されたシランを用いたシリカの変性を示している。
【0082】
このため、本発明による方法は、以下のさらなる方法ステップ:
f)方法ステップd)又はe)で得られた精製シランを有機溶媒中に溶解させるステップ、
g)少なくとも1つのシリカをステップf)からの溶液と接触させ、得られた懸濁液を好ましくは30分~18時間、特に6~18時間撹拌するステップ、
h)得られた変性シリカを乾燥させるステップ
を含む。
【0083】
「ケイ酸」及び「シリカ」という用語は、本発明に関連して同義で使用される。
【0084】
シリカは、タイヤゴム混合物の充填剤として適切な当業者に周知のあらゆるシリカであり得る。しかし、窒素表面積(BET表面積)(DIN ISO 9277及びDIN 66132に準拠)が35~400m2/g、好ましくは35~350m2/g、より好ましくは100~320m2/g、最も好ましくは120~235m2/gであり、CTAB表面積(ASTM D 3765に準拠)が30~400m2/g、好ましくは30~330m2/g、より好ましくは95~300m2/g、最も好ましくは115~200m2/gである微粉砕された沈降シリカが特に好ましい。
【0085】
このようなシリカにより、例えば、タイヤ内部の構成要素のためのゴム混合物が得られ、特に加硫物中で良好な物理的性質が得られる。同じ製品特性を維持しながら、混合時間の短縮による混合物処理の利点も実現でき、それによって生産性が改善される。したがって、使用可能なシリカとしては、例えばEvonikのUltrasil(登録商標)VN3(商品名)の種類のものだけでなく、比較的低いBET表面積のシリカ(例えばSolvayのZeosil(登録商標)1115又はZeosil(登録商標)1085など)及び高分散性シリカ、いわゆるHDシリカ(例えばSolvayのZeosil(登録商標)1165 MP)も挙げられる。
【0086】
方法ステップf)では、方法ステップd)又はe)で得られた精製シランを有機溶媒中に溶解させ、ステップf)中の有機溶媒は、好ましくは、DMFである。
【0087】
方法ステップg)では、少なくとも1つシリカをステップf)からの溶液と接触させ、得られた懸濁液を次に好ましくは30分~18時間、より好ましくは4~18時間、特に好ましくは6~18時間撹拌する。撹拌は、好ましくは、120℃の温度で行われる。
【0088】
シラン対シリカの所望の重量比は、シラン溶液の量及び濃度並びに懸濁したシリカの量によって決定される。
【0089】
任意選択的に、シリカは、有機溶媒中において、例えばDMF中の懸濁液の形態のシランと接触させることもできる。
【0090】
方法ステップh)では、得られた変性シリカに対して最終的な乾燥が行われる。これは、好ましくは、減圧下で溶媒を除去し、次に生成物を好ましくは減圧下で20~60℃において1~3日間乾燥させることで行われる。
【0091】
この方法であらかじめ乾燥させた変性シリカは、希望する細かさによっては、任意選択的に粉砕することができる。次に、シリカは、好ましくは、減圧下で20~60℃においてさらに1~3日間乾燥される。
【0092】
本発明は、ステップf)~h)後にこうして得られる変性シリカをさらに提供する。
【0093】
このシリカは、車両用タイヤのためのゴム混合物の添加剤として特に適切であり、シリカ上のシランの組合せにより、混合物の加工がより容易になり、式I)によるシランを用いることでより高い、したがって改善された剛性が混合物に付与される。
【0094】
式IV)及び式V)のシランの合成を参照しながら以下に本発明を説明する。
【0095】
式IV)のシランの調製:
1.式VI)中に示す合成スキームによるビス(4-カルボキシフェニル)ジスルフィドの調製
【化4】
4-メルカプト安息香酸(7.50g、48.6mmol、1.0当量)のエタノール(500mL、EtOH)中の溶液に飽和エタノール性ヨウ素溶液(合計25mL)を室温において滴下した。添加すると、ヨウ素溶液は、脱色し、反応混合物は、濁り始めた。過剰のヨウ素のために得られた懸濁液が淡黄色になるまでヨウ素の添加を続けた。
【0096】
次に、ブフナー漏斗を用いてこの反応混合物を濾過し、過剰のヨウ素を除去するために残留物を冷脱イオン水(4×50mL)及び冷エタノール(4×50mL)で洗浄した。
【0097】
高真空下での乾燥後、目標化合物を白色粉末(6.69g、21.8mmol、90%)として単離した。
1H NMR(500MHz,DMSO-d6;ジメチルスルホキシド)δ 13.08(s,2H),7.97-7.88(m,4H),7.67-7.59(m,4H).
13C NMR(126MHz,DMSO-d6)δ 167.22,141.16,130.83,130.31,126.54.
【0098】
2.式VII)中に示される合成スキームによる1-(4’-アミノフェニル)-3-(3’’-(トリエトキシシリル)プロピル)尿素の調製
【化5】
パラ-フェニレンジアミン(10.00g、92.5mmol、2.0当量)のジクロロメタン(300mL DCM)中の溶液に室温で3-(イソシアナトプロピル)トリエトキシシラン(11.44mL、11.44g、46.2mmol、1.0当量)を滴下した。終夜撹拌した後、ロータリーエバポレーター上で溶媒を除去すると、粗生成物として灰色固体(21.57g)が得られた。
【0099】
これを、それぞれ約3~4gの数個の小さい部分に分けてシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(DCM/EtOH9:1)によって精製した(それぞれの場合の収率は、74重量%であった)。
【0100】
高真空下での乾燥後、目標化合物を薄灰色粉末(全生成物として推定:15.96g、44.9mmol、シランを基準として97%)として単離した。
1H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ 7.82(s,1H),6.98(d,J=8.7Hz,2H),6.45(d,J=8.7Hz,2H),5.91(t,J=5.8Hz,1H),4.66(s,2H),3.74(q,J=7.0Hz,6H),3.00(q,J=6.8Hz,2H),1.48-1.39(m,2H),1.14(t,J=7.0Hz,9H),0.57-0.49(m,2H).
13C NMR(126MHz,DMSO-d6)δ 155.69,143.33,129.62,120.22,114.12,57.70,41.81,23.49,18.24,7.25.
【0101】
3.式VIII)中に示される合成スキームによるビス(4-カルボキシルクロリドフェニル)ジスルフィドの(その場での)調製
【化6】
ビス(4-カルボキシフェニル)ジスルフィド(1.96g、6.4mmol、1.0当量)のテトラヒドロフラン(60mL THF)中の懸濁液にジメチルホルムアミド(0.1mL DMF、触媒)を加えた。0℃においてこの反応混合物に塩化オキサリル(5.49mL、8.12g、64.0mmol、10.0当量)を滴下し、その混合物をこの温度で30分間撹拌した。得られた黄色溶液を次にRTでさらに3時間撹拌した。次に、溶媒及び過剰の塩化オキサリルを留去した。黄色固体を単離し、これを、さらなる分析及び精製を行うことなく合成の次のステップに使用した(その反応性を考慮した)。
【0102】
4.式IX)中に示される合成スキームによる式IV)のシランの調製
【化7】
1-(4-アミノフェニル)-3-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)尿素(2.55g、7.17mmol、2.2当量)及びトリエチルアミン(2.11mL、1.65g、16.3mmol、5.0当量)のTHF(10mL)中の溶液にRTにおいて15分間かけてビス(4-カルボキシルクロリドフェニル)ジスルフィド(1.12g、3.26mmol、1.0当量)のTHF(40mL)中の溶液を滴下した。得られた淡黄色懸濁液を次に終夜撹拌し、次に濾過した。濾過ケーキを冷THF(2×10mL)で洗浄した。高真空下での乾燥後、目標を白色粉末(2.39g、2.44mmol、75%)として単離した。
1H NMR(500MHz,DMSO-d
6)δ 10.13(s,2H),8.45(s,2H),7.94(d,J=8.5Hz,4H),7.67(d,J=8.6Hz,4H),7.56(d,J=9.0Hz,4H),7.34(d,J=9.0Hz,4H),6.23(t,J=5.8Hz,2H),3.74(q,J=7.0Hz,12H),3.03(q,J=6.6Hz,4H),1.52-1.41(m,4H),1.14(t,J=7.0Hz,18H),0.60-0.51(m,4H).
13C NMR(126MHz,DMSO-d
6)δ 164.32,155.34,139.05,136.78,134.16,132.49,128.75,126.38,121.10,117.79,57.80,56.12,41.84,23.45,18.31,7.32.
29Si NMR(99MHz,DMSO-d
6)δ -44.52.
【0103】
調製した式IV)のシランは、好ましくは、シリカ上に吸収され、すなわち好ましくは調製した式IV)のシランでシリカが変性される。
【0104】
シリカ上への吸収は、例えば、以下のように行われる:粒状シリカのDMF中の懸濁液に室温において所望のシリカ/シラン比でDMF中に溶解させた式IV)のシランの溶液を加える。例えば、31.2gのシリカ(VN3、Evonik)及び4.62gの式IV)のシランが使用される。得られた懸濁液を120℃で6~18時間撹拌し、その後、減圧下で溶媒を除去する。高真空下40℃で1日間乾燥させた後、得られた変性シリカを粉砕する。次に、これを高真空下40℃でさらに1日間乾燥させる。
【0105】
式V)のシランの調製:
シランV)、すなわちオルト-ジスルフィド基を含む結合を有するシランの調製は、シランIV)の調製と実質的に類似の方法で行われる。したがって、差異のみを以下に記載する。
【0106】
合成は、市販のビス(2-カルボキシフェニル)ジスルフィドから開始し、これをスキームX)により塩化オキサリルと反応させて、ビス(2-カルボキシルクロリドフェニル)ジスルフィドが形成される。
【化8】
【0107】
ビス(2-カルボキシフェニル)ジスルフィド(2.94g、9.6mmol、1.0当量)のTHF(60mL)中の懸濁液にDMF(0.15mL、触媒)を加えた。0℃においてこの反応混合物に塩化オキサリル(8.23mL、12.19g、96.0mmol、10.0当量)を滴下し、混合物をこの温度で30間撹拌した。得られた黄色溶液を次にRTでさらに3時間撹拌した。次に、溶媒及び過剰の塩化オキサリルを留去した。
【0108】
黄色固体を単離し、これを、さらなる分析及び精製を行うことなく合成の次のステップに使用した(その反応性を考慮した)。
【0109】
これに続いて、前述のように調製される1-(4-アミノフェニル)-3-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)尿素との合成スキームXI)による反応を行った。
【化9】
【0110】
1-(4-アミノフェニル)-3-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)尿素(7.51g、21.1mmol、2.2当量)及びトリエチルアミン(6.65mL、4.86g、48.0mmol、5.0当量)のTHF(30mL)中の溶液にRTにおいて15分間かけてビス(2-カルボキシルクロリドフェニル)ジスルフィド(3.30g、9.6mmol、1.0当量)のTHF(80mL)中の溶液を滴下した。得られた淡黄色溶液を次に終夜撹拌し、次に濾過した。濾液を濃縮し、沈殿したさらなる固体を再び濾過した。得られた濾過ケーキを冷THF(2×25mL)及び脱イオン水(2×25mL)で洗浄した。
【0111】
高真空下での乾燥後、目標化合物を白色粉末(2.70g、2.75mmol、29%)として単離した。
1H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ 10.41(s,2H),8.39(s,2H),7.76(d,J=7.6Hz,1H),7.72(d,J=8.1Hz,1H),7.60(d,J=9.0Hz,3H),7.50(ddd,J=8.5,7.4,1.5Hz,2H),7.40-7.34(m,6H),6.14(t,J=5.7Hz,2H),3.75(q,J=7.0Hz,12H),3.05(q,J=6.6Hz,4H),1.54-1.42(m,4H),1.15(t,J=7.0Hz,18H),0.63-0.51(m,4H).
13C NMR(126MHz,DMSO-d6)δ 165.20,155.21,136.85,136.49,134.67,132.32,131.30,128.37,126.25,126.09,120.76,117.77,57.73,41.77,23.39,18.25,7.27.
29Si NMR(99MHz,DMSO-d6)δ -44.57.
【0112】
調製した式V)のシランは、好ましくは、シリカ上に吸収され、すなわち好ましくは調製した式V)のシランでシリカが変性される。
【0113】
シリカ上への吸収は、例えば、式IV)のシランに関して前述したように行われる。
【0114】
式IV)又はV)のシランを含む代表的なゴム混合物について以下に記載し、従来技術から周知のシランを含むゴム混合物と比較する。組成及び結果を表1にまとめている。比較用混合物は、Cで示しており、本発明によるシランを含む混合物は、Iで示している。混合物C1及びI1、並びにC2及びE2、並びにC3及びE3及びE4は、それぞれの場合、従来技術からのシラン(C1、C2、C3)又は本発明によるシランIV)(I1、I2、I3)若しくは本発明によるシランV)(I4)を等モル量で含む。
【0115】
シランは、それぞれの場合にシリカ(各混合物中95phr)上に担持され、それによってそれぞれのシラン-変性シリカを混入した。したがって、量は、変性反応の生成物を意味し、95phrのシリカが各混合物中に使用される。したがって、残りの量(差:表の値-95phr)は、シリカに結合したシランを表す。
【0116】
他の点では、混合物は、ゴム産業において通常使用される方法により、標準条件下、80ミリリットル~3リットルの容量を有する実験室用ミキサー中において2段階で調製し、第1の混合段階(基本混合段階)では、加硫系(硫黄及び加硫に影響する物質)を除いたすべての成分を最初に145~165℃、目標温度152~157℃で200~600秒間混合した。第2段階(最終混合段階)で加硫系を加え、90~120℃で180~300秒間混合して最終混合物を調製した。
【0117】
すべての混合物を使用して、t95までの加硫(ASTM D 5289-12/ISO 6502に準拠したムービングディスクレオメーター上で測定)で加圧下160℃において試験片を作製し、これらの試験片を使用し、以下に指定の試験方法により、ゴム産業において典型的な材料特性を測定した。
・ISO 868に準拠した室温におけるショアA硬度(Sh A)
・ISO 4662に準拠した室温における反発弾性
・0.15%及び6%の伸びにおけるDIN 53 513に準拠した55℃における動的貯蔵弾性率E’
・ISO 37に準拠した、タイプ3ダンベルの試験片の室温における50%、100%、200%、300%及び400%の伸びにおける応力値
【0118】
使用した物質:
a)シリカUltrasil(登録商標)VN3、Evonik、それぞれの場合に95phr、それぞれの場合に残りは結合したシラン
b)TESPD(3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
c)前述のように調製した式IV)の本発明によるシラン
d)前述のように調製した式V)の本発明によるシラン
e)老化安定剤、オゾン劣化防止ワックス、酸化亜鉛、ステアリン酸
f)DPG及びCBS。
【0119】
表1に示されるように、ゴム混合物I1~I4は、より高い剛性値及びより高い硬度を示す。したがって、本発明の実施例、すなわち本発明により調製したシランを含む混合物は、特に改善されたハンドリング指数を示す。
【0120】
式IV)によるシランを含む本発明による実施例I1~I3は、(C1~C3よりも)低い反発弾性を有し、したがってさらに改善されたウェットブレーキ指数を有する。
【0121】
【表1】
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.式I):
I)(R
1
)
o
Si-R
2
-HNC(=O)NH-A-HNC(=O)-A-S
k
-A-C(=O)NH-A-NHC(=O)-R
2
-Si(R
1
)
o
(式中、oは、1、2又は3であり得、及びkは、2以上の整数であり、及びシリル基(R
1
)
o
Si-中及び分子の両側の基R
1
は、同一又は異なり得、且つ1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基、4~10個の炭素原子を有するシクロアルコキシ基、6~20個の炭素原子を有するフェノキシ基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、2~20個の炭素原子を有するアルキニル基、7~20個の炭素原子を有するアラルキル基、ハライド又はアルキルポリエーテル基-O-(R
6
-O)
r
-R
5
から選択され、ここで、R
6
は、同一又は異なり、且つ分岐又は非分岐、飽和又は不飽和、脂肪族、芳香族又は混合脂肪族/芳香族の二価のC
1
~C
30
炭化水素基、好ましくは-CH
2
-CH
2
-であり、rは、1~30、好ましくは3~10の整数であり、及びR
5
は、非置換又は置換、分岐又は非分岐の一価のアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基、好ましくは-C
13
H
27
アルキル基であるか、又は
2つのR
1
は、2~10個の炭素原子を有する環状ジアルコキシ基を形成し、ここで、oは、<3であるか、又は
前記式I)の2つ以上のシランは、基R
1
を介してカップリングされることが可能であり、
基R
2
は、1~20個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基、又は4~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、又は6~20個の炭素原子を有するアリール基、又は2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、2~20個の炭素原子を有するアルキニル基、又は7~20個の炭素原子を有するアラルキル基であり、分子中の基Aは、同一又は異なり得、且つ芳香族基であり、前記シランは、前記式I)のシランの加水分解及び縮合を通して形成されるオリゴマーの形態で存在することもできる)
のシランを調製する方法であって、少なくとも以下の方法ステップ:
a)物質(R
1
)
o
Si-R
2
-HNC(=O)NH-A-NH
2
を提供するステップ、
b)物質HOC(=O)-A-S
2
-A-C(=O)OHを提供するステップ、
c)ステップb)からの前記物質を活性化させるステップであって、前記物質を、有機溶媒中に懸濁し、そして触媒の存在下で活性化剤を用いて反応させてClC(=O)-A-S
2
-A-C(=O)Clを形成する、ステップ、
d)少なくとも2当量の、ステップa)から前記物質を、1当量の、ステップa)からの前記物質と有機溶媒中で反応させることは、ステップc)からの物質の溶液と室温で接触され、且つ次に撹拌され、それによって前記式I)のシランを得るステップ、
e)任意選択的に、ステップd)で得られた前記式I)の前記シランを精製するステップ
を含む方法。
2.ステップa)の前記物質は、有機溶媒中のジアミノ置換芳香族H
2
N-A-NH
2
をイソシアナト官能性シラン(R
1
)
o
Si-R
2
-NCOと反応させることによって提供される、上記1に記載の方法。
3.ステップb)の前記物質は、芳香族チオールHOC(=O)-A-SHの有機溶媒中におけるヨウ素の存在下での酸化によって提供される、上記1又は2に記載の方法。
4.前記芳香族基Aは、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、キノリル基、ピロール基、フラン基、チオフェン基、ピラゾール基、イミダゾール基、チアゾール基及びオキサゾール基からなる群から選択される、上記1~3のいずれか一項に記載の方法。
5.前記基R
1
は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、又は1~6個の炭素原子を有するアルコキシ基、又はハライドである、上記1~4のいずれか一項に記載の方法。
6.前記基R
2
は、2~8個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基又は4~8個の炭素原子を有するシクロアルキル基である、上記1~5のいずれか一項に記載の方法。
7.前記式I)の前記調製されるシランは、以下の式II):
【化10】
を有する、上記1~6のいずれか一項に記載の方法。
8.前記式I)の前記調製されるシランは、以下の式III):
【化11】
を有する、上記1~7のいずれか一項に記載の方法。
9.kは、2~8の整数であり、硫化は、さらなる方法ステップs)における元素硫黄の添加を通して行われ、それにより、3以上のkが得られる、上記1~8のいずれか一項に記載の方法。
10.上記1~9のいずれか一項に記載の方法によって調製されるシラン。
11.上記1~9のいずれか一項に記載のように調製された少なくとも1つのシランで改質されるシリカを調製する方法であって、少なくとも以下の方法ステップ:
f)方法ステップd)又はe)で得られた前記精製シランを有機溶媒中に溶解させるステップ、
g)少なくとも1つのシリカをステップf)からの溶液と接触させ、且つその後、得られた懸濁液を好ましくは30分~18時間にわたって撹拌するステップ、
h)得られた前記変性シリカを乾燥させるステップ
を含む方法。
12.上記11に記載の方法によって調製される変性シリカ。