(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】粘着剤組成物および粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 153/02 20060101AFI20220106BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
C09J153/02
C09J11/06
(21)【出願番号】P 2020023001
(22)【出願日】2020-02-14
(62)【分割の表示】P 2018003686の分割
【原出願日】2014-01-14
【審査請求日】2020-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2013017842
(32)【優先日】2013-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2013136881
(32)【優先日】2013-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【氏名又は名称】谷 征史
(72)【発明者】
【氏名】岡田 吉弘
(72)【発明者】
【氏名】西山 直幸
(72)【発明者】
【氏名】大竹 宏尚
(72)【発明者】
【氏名】中山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中山 純一
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-162747(JP,A)
【文献】特開2001-271049(JP,A)
【文献】特公平05-035747(JP,B2)
【文献】特開平08-157794(JP,A)
【文献】特開平08-157686(JP,A)
【文献】特開平07-224255(JP,A)
【文献】特開2000-313862(JP,A)
【文献】特開2011-122069(JP,A)
【文献】国際公開第2009/017160(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースポリマーとしてのモノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体と、粘着付与樹脂と、を含有
する粘着剤組成物であって、
前記粘着剤組成物は、前記ベースポリマーと前記粘着付与樹脂との合計量が、該粘着剤の全質量の90質量%以上を占める組成であり、
前記粘着付与樹脂は、石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、ロジン系樹脂、ロジン誘導体樹脂およびケトン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記粘着付与樹脂は、軟化点120℃以上の粘着付与樹脂T
H
と、軟化点120℃未満の粘着付与樹脂T
L
と、を含み、
前記粘着付与樹脂T
Hは、芳香環を有しかつ水酸基価が30mgKOH/g以下である粘着付与樹脂T
HR1を含み、
前記粘着付与樹脂T
HR1
は、芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂、スチレン変性テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂およびロジンフェノール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記粘着付与樹脂T
H
は、前記粘着付与樹脂T
HR1
に該当しない粘着付与樹脂T
HO
をさらに含み、
前記粘着付与樹脂T
HO
は、水酸基価が80mgKOH/g以上の粘着付与樹脂T
HO1
を含み、
前記ベースポリマー100質量部に対する前記粘着付与樹脂T
L
の総量は70質量部以下である、粘着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体(例えばスチレン系ブロック共重合体)をベースポリマーとする粘着剤組成物に関する。また本発明は、かかる共重合体をベースポリマーとする粘着剤を備えた粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に粘着剤(感圧接着剤ともいう。以下同じ。)は、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する。かかる性質を活かして、粘着剤は、作業性がよく接着の信頼性の高い接合手段として、家電製品から自動車、OA機器等の各種産業分野において広く利用されている。粘着剤の代表的な組成として、ベースポリマーと粘着付与樹脂とを含む組成が挙げられる。ベースポリマーとしては、常温でゴム弾性を示すポリマーが好ましく採用され得る。例えば特許文献1~3には、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体やスチレンブタジエンスチレンブロック共重合体等のスチレン系ブロック共重合体を含む粘着剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-123140号公報
【文献】特開2001-342441号公報
【文献】特開平10-287858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体(例えばスチレン系ブロック共重合体)をベースポリマーとする粘着剤は、一般に、常温における凝集性に比べて高温における凝集性が大きく低下しがちである。上記ブロック共重合体をベースポリマーとする粘着剤の高温凝集性を改善することができれば有用である。
【0005】
そこで本発明は、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体(例えばスチレン系ブロック共重合体)をベースポリマーとする粘着剤組成物であって、高温環境下における凝集性(高温凝集性)が改善された粘着剤を形成し得る粘着剤組成物を提供することを一つの目的とする。関連する他の目的は、かかる粘着剤組成物から形成された粘着剤を含む粘着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書により開示される一つの粘着剤組成物は、ベースポリマーと粘着付与樹脂とを含有する。上記ベースポリマーは、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体である。上記粘着付与樹脂は、軟化点が120℃以上の粘着付与樹脂THを含む。そして、上記粘着付与樹脂THは、芳香環を有しかつ水酸基価が30mgKOH/g以下である粘着付与樹脂THR1を含む。かかる組成の粘着剤組成物によると、改善された高温凝集性を示す粘着シートが実現され得る。
【0007】
好ましい一態様において、上記粘着付与樹脂THR1は、クマロン・インデン樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂およびスチレン系樹脂から選択され得る。かかる態様によると、より良好な高温凝集性を示す粘着シートが実現され得る。
【0008】
この明細書により開示される他の一つの粘着剤組成物は、ベースポリマーと粘着付与樹脂とを含有する。上記ベースポリマーは、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体である。上記粘着付与樹脂は、軟化点が120℃以上の粘着付与樹脂THを含む。そして、上記粘着付与樹脂THは、芳香環を有しかつイソプレン単位、テルペン骨格およびロジン骨格を実質的に含まない粘着付与樹脂THR2を含む。かかる組成の粘着剤組成物によると、改善された高温凝集性を示す粘着シートが実現され得る。
上記粘着付与樹脂THR2は、クマロン・インデン樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂およびスチレン系樹脂から選択され得る。かかる態様によると、より良好な高温凝集性を示す粘着シートが実現され得る。
【0009】
ここに開示される粘着剤組成物は、上記粘着付与樹脂が軟化点120℃未満の粘着付与樹脂TLをさらに含む態様で好ましく実施され得る。かかる態様によると、良好な高温凝集性と高い粘着性とを兼ね備えた粘着シートが実現され得る。
【0010】
上記ベースポリマーとしては、ジブロック体比率が60質量%以上であるものを好ましく採用し得る。このことによって、良好な高温凝集性と高い粘着性とを兼ね備えた粘着シートが実現され得る。
【0011】
上記ベースポリマーとしては、スチレン系ブロック共重合体(スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体等)を好ましく採用し得る。例えば、スチレン含有量が20質量%以下のスチレン系ブロック共重合体が好ましい。このようなスチレン系ブロック共重合体をベースポリマーとして含む粘着剤組成物によると、良好な高温凝集性と高い粘着性とを兼ね備えた粘着シートが実現され得る。
【0012】
上記粘着付与樹脂THR1の含有量としては、前記スチレン系ブロック共重合体中のスチレン成分1質量部に対して0.1~10質量部の範囲が好ましい。このことによって、より高性能な粘着シートが実現され得る。上記粘着付与樹脂THR2の含有量も同様である。
【0013】
ここに開示される粘着剤組成物におけるベースポリマーとしては、ジブロック体比率が60質量%以上であるものを好ましく採用し得る。かかるベースポリマーを含む粘着剤組成物によると、より高性能な粘着シートが実現され得る。
【0014】
好ましい一態様に係る粘着剤組成物は、導電性粒子をさらに含有する。かかる導電性粒子を含有する粘着剤組成物によると、優れた粘着特性(例えば粘着力)を示す導電性の粘着シートが実現され得る。前記導電性粒子の含有量は、特に限定されないが、該導電性粒子を除く粘着剤組成物の全固形分100質量部に対して0.01~100質量部であることが好ましい。
【0015】
この明細書によると、また、ここに開示されるいずれかの粘着剤組成物から形成された粘着剤を含む粘着シートが提供される。かかる粘着シートによると、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体をベースポリマーとする粘着剤を含む構成において、良好な高温凝集性が発揮され得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態に係る粘着シート(基材付き両面粘着シート)の構成を示す模式的断面図である。
【
図2】他の実施形態に係る粘着シート(基材レス両面粘着シート)の構成を示す模式的断面図である。
【
図3】他の実施形態に係る粘着シート(基材付き片面粘着シート)の構成を示す模式的断面図である。
【
図4】耐反撥性評価試験の方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、製品として実際に提供される本発明の粘着シートのサイズや縮尺を正確に表したものではない。
【0018】
この明細書において「粘着剤」とは、前述のように、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する材料をいう。ここでいう粘着剤は、「C. A. Dahlquist, “Adhesion : Fundamental and Practice”, McLaren & Sons, (1966) P. 143」に定義されているとおり、一般的に、複素引張弾性率E*(1Hz)<107dyne/cm2を満たす性質を有する材料(典型的には、25℃において上記性質を有する材料)である。ここに開示される技術における粘着剤は、粘着剤組成物の固形分または粘着剤層の構成成分としても把握され得る。
また、粘着剤の「ベースポリマー」とは、該粘着剤に含まれるゴム状ポリマー(室温付近の温度域においてゴム弾性を示すポリマー)のうちの主成分(すなわち、該ゴム状ポリマーの50質量%超を占める成分)をいう。
【0019】
この明細書において「モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体」とは、モノビニル置換芳香族化合物を主モノマー(50質量%を超える共重合成分をいう。以下同じ。)とするセグメント(以下「Aセグメント」ともいう。)と、共役ジエン化合物を主モノマーとするセグメント(以下「Bセグメント」ともいう。)とを、それぞれ少なくとも一つ有するポリマーをいう。一般に、Aセグメントのガラス転移温度はBセグメントのガラス転移温度よりも高い。かかるポリマーの代表的な構造として、Bセグメント(ソフトセグメント)の両端にそれぞれAセグメント(ハードセグメント)を有するトリブロック構造の共重合体(A-B-A構造のトリブロック体)、一つのAセグメントと一つのBセグメントとからなるジブロック構造の共重合体(A-B構造のジブロック体)等が挙げられる。
【0020】
この明細書において「スチレン系ブロック共重合体」とは、少なくとも一つのスチレンブロックを有するポリマーを意味する。上記スチレンブロックとは、スチレンを主モノマーとするセグメントを指す。実質的にスチレンのみからなるセグメントは、ここでいうスチレンブロックの典型例である。また、「スチレンイソプレンブロック共重合体」とは、少なくとも一つのスチレンブロックと、少なくとも一つのイソプレンブロック(イソプレンを主モノマーとするセグメント)とを有するポリマーをいう。スチレンイソプレンブロック共重合体の代表例として、イソプレンブロック(ソフトセグメント)の両端にそれぞれスチレンブロック(ハードセグメント)を有するトリブロック構造の共重合体(トリブロック体)、一つのイソプレンブロックと一つのスチレンブロックとからなるジブロック構造の共重合体(ジブロック体)等が挙げられる。「スチレンブタジエンブロック共重合体」とは、少なくとも一つのスチレンブロックと、少なくとも一つのブタジエンブロック(ブタジエンを主モノマーとするセグメント)とを有するポリマーをいう。
【0021】
この明細書において、スチレン系ブロック共重合体の「スチレン含有量」とは、当該ブロック共重合体の全体質量に占めるスチレン成分の質量割合をいう。上記スチレン含有量は、NMR(核磁器共鳴スペクトル法)により測定することができる。
また、スチレン系ブロック共重合体に占めるジブロック体の割合(以下「ジブロック体比率」または「ジブロック比」ということがある。)は、次の方法により求められる。すなわち、スチレン系ブロック共重合体をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、東ソー(株)製GS5000HおよびG4000Hの液体クロマトグラフ用カラムをそれぞれ2段ずつ計4段を直列につなぎ、移動相にTHFを用いて、温度40℃、流量1mL/分の条件下で高速液体クロマトグラフィを行う。得られたチャートからジブロック体に対応するピーク面積を測定する。そして、全体のピーク面積に対する前記ジブロック体に対応するピーク面積の百分率を算出することにより、ジブロック体比率が求められる。
【0022】
<ベースポリマー>
ここに開示される粘着剤組成物は、ベースポリマーとして、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体を含有する。上記モノビニル置換芳香族化合物とは、ビニル基を有する官能基が芳香環に一つ結合した化合物を指す。上記芳香環の代表例として、ベンゼン環(ビニル基を有しない官能基(例えばアルキル基)で置換されたベンゼン環であり得る。)が挙げられる。上記モノビニル置換芳香族化合物の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等が挙げられる。上記共役ジエン化合物の具体例としては、1,3-ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。このようなブロック共重合体は、1種を単独で、または2種以上を併用してベースポリマーに用いることができる。
【0023】
上記ブロック共重合体におけるAセグメント(ハードセグメント)は、上記モノビニル置換芳香族化合物(2種以上を併用し得る。)の共重合割合が70質量%以上(より好ましくは90質量%以上であり、実質的に100質量%であってもよい。)であることが好ましい。上記ブロック共重合体におけるBセグメント(ソフトセグメント)は、上記共役ジエン化合物(2種以上を併用し得る。)の共重合割合が70質量%以上(より好ましくは90質量%以上であり、実質的に100質量%であってもよい。)であることが好ましい。かかるブロック共重合体によると、より高性能な粘着シートが実現され得る。
【0024】
上記ブロック共重合体は、ジブロック体、トリブロック体、放射状(radial)体、これらの混合物、等の形態であり得る。トリブロック体や放射状体においては、ポリマー鎖の末端にAセグメント(例えばスチレンブロック)が配されていることが好ましい。ポリマー鎖の末端に配されたAセグメントは、集まってドメインを形成しやすく、これにより疑似的な架橋構造が形成されて粘着剤の凝集性が向上するためである。
ここに開示される技術におけるブロック共重合体としては、被着体に対する粘着力(剥離強度)の観点から、ジブロック体比率が30質量%以上(より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上、典型的には65質量%以上)のものを好ましく用いることができる。剥離強度の観点から、ジブロック体比率が70質量%以上のブロック共重合体が特に好ましい。また、凝集性等の観点から、ジブロック体比率が90質量%以下(より好ましくは85質量%以下、例えば80質量%以下)のブロック共重合体を好ましく用いることができる。例えば、ジブロック体比率が60~85質量%のブロック共重合体が好ましく、70~85質量%(例えば70~80質量%)のものがより好ましい。
【0025】
<スチレン系ブロック共重合体>
ここに開示される技術の好ましい一態様では、上記ベースポリマーがスチレン系ブロック共重合体である。例えば、上記ベースポリマーがスチレンイソプレンブロック共重合体およびスチレンブタジエンブロック共重合体の少なくとも一方を含む態様が好ましい。粘着剤に含まれるスチレン系ブロック共重合体のうち、スチレンイソプレンブロック共重合体の割合が70質量%以上であるか、スチレンブタジエンブロック共重合体の割合が70質量%以上であるか、あるいはスチレンイソプレンブロック共重合体とスチレンブタジエンブロック共重合体との合計割合が70質量%以上であることが好ましい。好ましい一態様では、上記スチレン系ブロック共重合体の実質的に全部(例えば95~100質量%)がスチレンイソプレンブロック共重合体である。他の好ましい一態様では、上記スチレン系ブロック共重合体の実質的に全部(例えば95~100質量%)がスチレンブタジエンブロック共重合体である。このような組成によると、ここに開示される技術を適用することの効果がよりよく発揮され得る。
【0026】
上記スチレン系ブロック共重合体は、ジブロック体、トリブロック体、放射状(radial)体、これらの混合物、等の形態であり得る。トリブロック体および放射状体においては、ポリマー鎖の末端にスチレンブロックが配されていることが好ましい。ポリマー鎖の末端に配されたスチレンブロックは、集まってスチレンドメインを形成しやすく、これにより疑似的な架橋構造が形成されて粘着剤の凝集性が向上するためである。ここに開示される技術において用いられるスチレン系ブロック共重合体としては、被着体に対する粘着力(剥離強度)の観点から、ジブロック体比率が30質量%以上(より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上、典型的には65質量%以上)のものを好ましく用いることができる。ジブロック体比率が70質量%以上(例えば75質量%以上)のスチレン系ブロック共重合体であってもよい。また、凝集性等の観点から、ジブロック体比率が90質量%以下(より好ましくは85質量%以下、例えば80質量%以下)のスチレン系ブロック共重合体を好ましく用いることができる。ここに開示される技術を適用して高温凝集性と他の特性(例えば剥離強度)とをバランス良く両立させる観点から、ジブロック体比率が60~85質量%のスチレン系ブロック共重合体が好ましく、70~85質量%(例えば70~80質量%)のスチレン系ブロック共重合体がより好ましい。
【0027】
上記スチレン系ブロック共重合体のスチレン含有量は、例えば、5~40質量%であり得る。凝集性の観点から、通常は、スチレン含有量が10質量%以上(より好ましくは10質量%超、例えば12質量%以上)のスチレン系ブロック共重合体が好ましい。また、剥離強度の観点から、スチレン含有量は35質量%以下(典型的には30質量%以下、より好ましくは25質量%以下)が好ましく、20質量%以下(典型的には20質量%未満、例えば18質量%以下)が特に好ましい。ここに開示される技術を適用することの効果(例えば、高温凝集性を向上させる効果)をよりよく発揮させる観点から、スチレン含有量が12質量%以上20質量%未満のスチレン系ブロック共重合体を好ましく採用し得る。
【0028】
<粘着付与樹脂>
ここに開示される粘着剤組成物は、上記ベースポリマーに加えて粘着付与樹脂を含む。粘着付与樹脂としては、石油樹脂、スチレン系樹脂、クマロン・インデン樹脂、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、ロジン系樹脂、ロジン誘導体樹脂、ケトン系樹脂等の、公知の各種粘着付与樹脂から選択される1種または2種以上を用いることができる。
【0029】
石油樹脂の例としては、脂肪族系(C5系)石油樹脂、芳香族系(C9系)石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系(C5/C9系)石油樹脂、これらの水素添加物(例えば、芳香族系石油樹脂に水素添加して得られる脂環族系石油樹脂)等が挙げられる。
【0030】
スチレン系樹脂の例としては、スチレンの単独重合体を主成分とするもの、α-メチルスチレンの単独重合体を主成分とするもの、ビニルトルエンの単独重合体を主成分とするもの、スチレン、α-メチルスチレンおよびビニルトルエンのうち2種以上をモノマー組成に含む共重合体を主成分とするもの(例えば、α-メチルスチレン/スチレン共重合体を主成分とするα-メチルスチレン/スチレン共重合体樹脂)等が挙げられる。
【0031】
クマロン・インデン樹脂としては、樹脂の骨格(主鎖)を構成するモノマー成分としてクマロンおよびインデンを含む樹脂を用いることができる。クマロンおよびインデン以外に樹脂の骨格に含まれ得るモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエン等が例示される。
【0032】
テルペン樹脂の例としては、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、ジペンテン重合体等が挙げられる。変性テルペン樹脂の例としては、上記テルペン樹脂を変性(フェノール変性、スチレン変性、水素添加変性、炭化水素変性等)したものが挙げられる。具体的には、テルペンフェノール樹脂、スチレン変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂等が例示される。
【0033】
上記「テルペンフェノール樹脂」とは、テルペン残基およびフェノール残基を含むポリマーを指し、テルペンとフェノール化合物との共重合体(テルペン-フェノール共重合体樹脂)と、テルペンの単独重合体または共重合体(テルペン樹脂、典型的には未変性テルペン樹脂)をフェノール変性したもの(フェノール変性テルペン樹脂)との双方を包含する概念である。上記テルペンフェノール樹脂を構成するテルペンの好適例としては、α-ピネン、β-ピネン、リモネン(d体、l体およびd/l体(ジペンテン)を包含する。)等のモノテルペンが挙げられる。
【0034】
ロジン系樹脂の具体的としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未変性ロジン(生ロジン);これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合等により変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等);等が挙げられる。また、ロジン誘導体樹脂の例としては、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、ロジンのエステル化物)、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)をアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、変性ロジンのエステル化物)等のロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)、不飽和脂肪酸変性ロジン類または不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシル基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等のロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩;ロジン類(未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂;等が挙げられる。
【0035】
ここに開示される粘着剤組成物は、上記粘着付与樹脂として、軟化点が120℃以上の粘着付与樹脂THを含有する。高温凝集性の観点から、粘着付与樹脂THの軟化点は、125℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましく、135℃以上(例えば140℃以上)がさらに好ましい。また、被着体に対する剥離強度等の観点から、粘着付与樹脂THの軟化点は、通常、200℃以下が適当であり、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下(例えば160℃以下)である。
【0036】
ここでいう粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K5902およびJIS K2207に規定する軟化点試験方法(環球法)に基づいて測定された値として定義される。具体的には、試料をできるだけ低温ですみやかに融解し、これを平らな金属板の上に置いた環の中に、泡ができないように注意して満たす。冷えたのち、少し加熱した小刀で環の上端を含む平面から盛り上がった部分を切り去る。つぎに、径85mm以上、高さ127mm以上のガラス容器(加熱浴)の中に支持器(環台)を入れ、グリセリンを深さ90mm以上となるまで注ぐ。つぎに、鋼球(径9.5mm、重量3.5g)と、試料を満たした環とを互いに接触しないようにしてグリセリン中に浸し、グリセリンの温度を20℃プラスマイナス5℃に15分間保つ。つぎに、環中の試料の表面の中央に鋼球をのせ、これを支持器の上の定位置に置く。つぎに、環の上端からグリセリン面までの距離を50mmに保ち、温度計を置き、温度計の水銀球の中心の位置を環の中心と同じ高さとし、容器を加熱する。加熱に用いるブンゼンバーナーの炎は、容器の底の中心と縁との中間にあたるようにし、加熱を均等にする。なお、加熱が始まってから40℃に達したのちの浴温の上昇する割合は、毎分5.0プラスマイナス0.5℃でなければならない。試料がしだいに軟化して環から流れ落ち、ついに底板に接触したときの温度を読み、これを軟化点とする。軟化点の測定は、同時に2個以上行い、その平均値を採用する。
【0037】
<粘着付与樹脂THR1>
ここに開示される技術の好ましい一態様において、上記粘着付与樹脂THは、芳香環を有しかつ水酸基価が30mgKOH/g以下である粘着付与樹脂THR1を含有し得る。このことによって高温凝集力を効果的に改善することができる。粘着付与樹脂THR1は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
粘着付与樹脂THR1の水酸基価は、10mgKOH/g未満であることが好ましく、5mgKOH/g未満がより好ましく、3mgKOH/g未満がさらに好ましい。例えば、水酸基価が1mgKOH/g未満であるか、あるいは水酸基が検出されない粘着付与樹脂THR1を好ましく使用し得る。
【0038】
芳香環を有する粘着付与樹脂の例としては、上述の芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂、スチレン系樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン変性テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ロジンフェノール樹脂等が挙げられる。これらのうち、軟化点が120℃以上(好ましくは130℃以上、例えば135℃以上)かつ水酸基価30mgKOH/g以下(好ましくは5mgKOH/g未満、例えば1mgKOH/g未満)であるものを粘着付与樹脂THR1として採用することができる。
【0039】
ここで、上記水酸基価の値としては、JIS K0070:1992に規定する電位差滴定法により測定される値を採用することができる。具体的な測定方法は以下に示すとおりである。
[水酸基価の測定方法]
1.試薬
(1)アセチル化試薬としては、無水酢酸約12.5g(約11.8mL)を取り、これにピリジンを加えて全量を50mLにし、充分に攪拌したものを使用する。または、無水酢酸約25g(約23.5mL)を取り、これにピリジンを加えて全量を100mLにし、充分に攪拌したものを使用する。
(2)測定試薬としては、0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液を使用する。
(3)その他、トルエン、ピリジン、エタノールおよび蒸留水を準備する。
2.操作
(1)平底フラスコに試料約2gを精秤採取し、アセチル化試薬5mLおよびピリジン10mLを加え、空気冷却管を装着する。
(2)上記フラスコを100℃の浴中で70分間加熱した後、放冷し、冷却管の上部から溶剤としてトルエン35mLを加えて攪拌した後、蒸留水1mLを加えて攪拌することにより無水酢酸を分解する。分解を完全にするため再度浴中で10分間加熱し、放冷する。
(3)エタノール5mLで冷却管を洗い、取り外す。次いで、溶剤としてピリジン50mLを加えて攪拌する。
(4)0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液を、ホールピペットを用いて25mL加える。
(5)0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で電位差滴定を行う。得られた滴定曲線の変曲点を終点とする。
(6)空試験は、試料を入れないで上記(1)~(5)を行う。
3.計算
以下の式により水酸基価を算出する。
水酸基価(mgKOH/g)=[(B-C)×f×28.05]/S+D
ここで、
B: 空試験に用いた0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)、
C: 試料に用いた0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)、
f: 0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクター、
S: 試料の質量(g)、
D: 酸価、
28.05: 水酸化カリウムの分子量56.11の1/2、
である。
【0040】
粘着付与樹脂THR1として使用し得る材料の好適例として、芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂、スチレン系樹脂およびクマロン・インデン樹脂が挙げられる。脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂としては、C5留分の共重合割合が15質量%未満(より好ましくは10質量%未満、さらに好ましくは5質量%未満、例えば3質量%未満)のものが好ましい。また、C9留分の共重合割合が55質量%以上(より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上)のものが好ましい。
なかでも好ましい粘着付与樹脂THR1として、芳香族系石油樹脂およびスチレン系樹脂(例えば、α-メチルスチレン/スチレン共重合体樹脂)が挙げられる。
【0041】
ここに開示される技術を実施するにあたり、粘着付与樹脂THR1の使用により高温凝集性が改善される理由を明らかにする必要はないが、例えば以下のことが考えられる。すなわち、粘着付与樹脂THR1は、芳香環を有することから、モノビニル置換芳香族化合物を主モノマーとするハードセグメントが集まって形成されたドメイン(以下「ハードドメイン」ともいう。例えば、スチレン系ブロック共重合体におけるスチレンドメイン)に相溶しやすい。高軟化点の粘着付与樹脂THR1がハードドメインに相溶することにより、該ハードドメインによる疑似架橋の耐熱性が向上し得る。このことが粘着剤の高温凝集性の改善に寄与するものと考えられる。
ここで、一般的な傾向として、高軟化点の粘着付与樹脂THは低軟化点の粘着付与樹脂TLに比べて相溶性が低い。このため、芳香環を有していても水酸基価の高い粘着付与樹脂THは、ハードドメインに相溶し得る量が少なく、あるいはハードドメイン内でミクロ相分離を起こして該ハードドメイン内の均一性を損ないやすく、高温凝集性を向上させる効果を適切に発揮し難い。このことは、ベースポリマーにおけるハードセグメントの含有量(例えば、スチレン系ブロック共重合体におけるスチレン含有量)が比較的少ない組成ではさらに顕著である。
ここに開示される技術における粘着付与樹脂THR1は、高軟化点でありながら水酸基価が30mgKOH/g以下に制限されているので、ハードセグメントの含有量が比較的少ない組成(例えば、スチレン含有量が20質量%以下のスチレン系ブロック共重合体)においても該ハードドメインに適切に相溶し、これにより高温凝集性が効果的に改善されるものと考えられる。
【0042】
粘着付与樹脂THR1の使用量は特に制限されず、粘着剤組成物の目的や用途に応じて適宜設定することができる。高温凝集性の観点から、通常は、ベースポリマー100質量部に対する粘着付与樹脂THR1の使用量は、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。また、高温凝集性と剥離強度とを高レベルで両立させる観点から、ベースポリマー100質量部に対する粘着付与樹脂THR1の使用量は、例えば100質量部以下とすることができ、通常は80質量部以下(例えば60質量部以下)が好ましい。低温における粘着性能(例えば剥離強度)を考慮すると、ベースポリマー100質量部に対する粘着付与樹脂THR1の使用量は、40質量部以下が好ましく、30質量部以下(例えば25質量部以下)がより好ましい。
【0043】
特に限定するものではないが、ベースポリマーがスチレン系ブロック共重合体である態様において、該ブロック共重合体中のスチレン成分1質量部に対する粘着付与樹脂THR1の使用量は、例えば0.1質量部以上とすることができ、高温凝集性の観点から0.2質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。また、ブロック共重合体中のスチレン成分1質量部に対する粘着付与樹脂THR1の使用量は、例えば10質量部以下とすることができ、高温凝集性と剥離強度とを高レベルで両立させる観点から7質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0044】
<粘着付与樹脂THR2>
ここに開示される粘着剤組成物の他の好ましい一態様において、上記粘着付与樹脂THは、芳香環を有しかつイソプレン単位、テルペン骨格およびロジン骨格を実質的に含まない粘着付与樹脂THR2を含有し得る。このことによって高温凝集力を効果的に改善することができる。粘着付与樹脂THR2は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ここで粘着付与樹脂THR2がイソプレン単位、テルペン骨格およびロジン骨格を実質的に含まないとは、これらの構造部分(すなわち、イソプレン単位、テルペン骨格およびロジン骨格)が粘着付与樹脂THR2に占める割合が合計10質量%未満(より好ましくは8質量%未満、さらに好ましくは5質量%未満、例えば3質量%未満)であることをいう。上記割合が0質量%であってもよい。なお、粘着付与樹脂THR2に占めるイソプレン単位、テルペン骨格およびロジン骨格の割合は、例えばNMR(核磁器共鳴スペクトル法)により測定することができる。
【0045】
芳香環を有しかつイソプレン単位、テルペン骨格およびロジン骨格を実質的に含まない粘着付与樹脂の例としては、上述の芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂、スチレン系樹脂、クマロン・インデン樹脂等が挙げられる。これらのうち軟化点が120℃以上(好ましくは130℃以上、例えば135℃以上)であるものを粘着付与樹脂THR2として採用することができる。
なかでも好ましい粘着付与樹脂THR2として、芳香族系石油樹脂およびスチレン系樹脂(例えば、α-メチルスチレン/スチレン共重合体樹脂)が挙げられる。
【0046】
粘着付与樹脂THR2は、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体(例えば、スチレン系ブロック共重合体)のハードドメイン(例えばスチレンドメイン)に相溶しやすい芳香環を有し、かつソフトセグメント(共役ジエン化合物を主モノマーとするセグメント)との親和性の高いイソプレン単位、テルペン骨格およびロジン骨格を実質的に含まない。このため、上記ブロック共重合体をベースポリマーとする粘着剤に配合された粘着付与樹脂THR2は上記ハードドメインに集中的に分配され(相溶し)、これにより該ハードドメインによる疑似架橋の耐熱性を効率よく向上させることができる。また、イソプレン単位、テルペン骨格およびロジン骨格を実質的に含まないことにより、高軟化点の粘着付与樹脂THR2がソフトセグメントに相溶しすぎることで生じ得る弊害(剥離強度の低下、ハードドメインへの相溶量が不足することによる高温凝集性向上効果の減少等)を回避または抑制し得る。これにより、高温凝集性と剥離強度とが高レベルで両立した粘着シートが実現され得る。
【0047】
粘着付与樹脂THR2の使用量は特に制限されず、粘着剤組成物の目的や用途に応じて適宜設定することができる。高温凝集性の観点から、通常は、ベースポリマー100質量部に対する粘着付与樹脂THR2の使用量は、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。また、高温凝集性と剥離強度とを高レベルで両立させる観点から、ベースポリマー100質量部に対する粘着付与樹脂THR2の使用量は、例えば100質量部以下とすることができ、通常は80質量部以下(例えば60質量部以下)が好ましい。低温における粘着性能(例えば剥離強度)の観点からは、ベースポリマー100質量部に対する粘着付与樹脂THR2の使用量は、40質量部以下が好ましく、30質量部以下(例えば25質量部以下)がより好ましい。
【0048】
特に限定するものではないが、ベースポリマーがスチレン系ブロック共重合体である態様において、該ブロック共重合体中のスチレン成分1質量部に対する粘着付与樹脂THR2の使用量は、例えば0.1質量部以上とすることができ、高温凝集性の観点から0.2質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。また、ブロック共重合体中のスチレン成分1質量部に対する粘着付与樹脂THR2の使用量は、例えば10質量部以下とすることができ、高温凝集性と剥離強度とを高レベルで両立させる観点から7質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0049】
特に限定するものではないが、粘着付与樹脂THR2としては、粘着付与樹脂THR1と同様の理由により、水酸基価が30mgKOH/g以下(好ましくは5mgKOH/g未満、例えば1mgKOH/g未満)のものを好ましく採用し得る。したがって、ここに開示される技術における粘着付与樹脂THR2としては、粘着付与樹脂THR1にも該当するものを好ましく使用し得る。同様に、ここに開示される技術における粘着付与樹脂THR1としては、粘着付与樹脂THR2にも該当するものを好ましく使用し得る。
【0050】
ここに開示される技術は、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体をベースポリマーとする粘着剤組成物に粘着付与樹脂THR1および/またはTHR2を含有させることによって粘着剤の高温凝集性を改善するものである。したがって、粘着付与樹脂として実質的に粘着付与樹脂THR1および/またはTHR2のみを用いる態様でも好ましく実施され、かかる態様においても本発明の課題は解決され得る。
【0051】
一方、ここに開示される技術は、目的や用途等に応じて、粘着付与樹脂THR1および/またはTHR2と他の粘着付与樹脂(以下「任意粘着付与樹脂」ということもある。)とを併用する態様でも好ましく実施され得る。
【0052】
<粘着付与樹脂TL>
任意粘着付与樹脂を含む態様の一好適例として、軟化点120℃未満の粘着付与樹脂TLを含む態様が挙げられる。かかる態様によると、例えば、より剥離強度に優れた粘着シートが実現され得る。
粘着付与樹脂TLの軟化点の下限は特に制限されない。通常は、軟化点が40℃以上(典型的には60℃以上)のものを好ましく用いることができる。高温凝集性と剥離強度とを高レベルで両立させる観点から、通常は、軟化点が80℃以上(より好ましくは100℃以上)120℃未満の粘着付与樹脂TLを好ましく採用することができる。なかでも、軟化点が110℃以上120℃未満の粘着付与樹脂TLの使用が好ましい。
【0053】
粘着付与樹脂TLの水酸基価や構造(例えば、芳香環の有無、イソプレン単位の有無、テルペン骨格の有無、ロジン骨格の有無等)は特に限定されない。上述した各種の粘着付与樹脂(石油樹脂、スチレン系樹脂、クマロン・インデン樹脂、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、ロジン系樹脂、ロジン誘導体樹脂、ケトン系樹脂等)であって軟化点が120℃未満のものを適宜選択して用いることができる。
【0054】
ここに開示される技術は、上記粘着剤が、石油樹脂およびテルペン樹脂の少なくとも一方を上記粘着付与樹脂TLとして含む態様で好ましく実施され得る。例えば、粘着付与樹脂TLの主成分(すなわち、粘着付与樹脂TLのうちの50質量%超を占める成分)が、石油樹脂である組成、テルペン樹脂である組成、石油樹脂とテルペン樹脂との組み合わせである組成、等を好ましく採用し得る。粘着力および相溶性の観点から、粘着付与樹脂TLの主成分がテルペン樹脂(例えば、α-ピネン重合体やβ-ピネン重合体)である態様が好ましい。粘着付与樹脂TLの実質的に全部(例えば95質量%以上)がテルペン樹脂であってもよい。
【0055】
<粘着付与樹脂THO>
任意粘着付与樹脂を含む態様の一好適例として、粘着付与樹脂THR1およびTHR2の少なくとも一方に該当しない粘着付与樹脂TH(以下「粘着付与樹脂THO」と表記することがある。)を含む態様が挙げられる。粘着付与樹脂THOの使用は、例えば、耐反撥性や定荷重剥離特性等の性能の向上に役立ち得る。
【0056】
粘着付与樹脂THOとしては、例えば、テルペンフェノール樹脂、ロジンフェノール樹脂、重合ロジン、重合ロジンのエステル化物等を用いることができる。このような粘着付与樹脂THOは、1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましい一態様として、粘着付与樹脂THOとして1種または2種以上のテルペンフェノール樹脂を用いる態様が挙げられる。例えば、粘着付与樹脂THOの25質量%以上(より好ましくは30質量%以上)がテルペンフェノール樹脂である態様が好ましい。粘着付与樹脂THOの50質量%以上(より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、例えば90質量%以上)がテルペンフェノール樹脂であってもよく、粘着付与樹脂THOの実質的に全部(例えば95質量%以上)がテルペンフェノール樹脂であってもよい。軟化点が120℃以上200℃以下(典型的には130℃以上180℃以下、例えば135℃以上170℃以下)のテルペンフェノール樹脂を好ましく採用することができる。
【0057】
ここに開示される技術は、例えば、粘着付与樹脂THOとして、水酸基価が80mgKOH/g以上(例えば90mgKOH/g以上)の粘着付与樹脂(THO1)を含む態様で好ましく実施され得る。粘着付与樹脂THO1の水酸基価は、典型的には200mgKOH/g以下であり、好ましくは180mgKOH/g以下(例えば160mgKOH/g以下)である。上記水酸基価の値としては、上述したJIS K0070:1992に規定する電位差滴定法により測定される値、具体的には、上述した水酸基価の測定方法を適用した値を採用することができる。かかる粘着付与樹脂THO1を含む粘着剤によると、より高性能な粘着シートが実現され得る。高温凝集性と他の特性(例えば、耐反撥性や定荷重剥離特性等)とをより高レベルで両立する粘着シートが実現され得る。
【0058】
粘着付与樹脂THO1としては、上述した各種の粘着付与樹脂のうち所定値以上の水酸基価を有するものを、単独で、あるいは適宜組み合わせて用いることができる。好ましい一態様では、粘着付与樹脂THO1として、少なくともテルペンフェノール樹脂を使用する。テルペンフェノール樹脂は、フェノールの共重合割合によって水酸基価を任意にコントロールすることができるので好ましい。粘着付与樹脂THO1のうち50質量%以上(より好ましくは70質量%以上、例えば90質量%以上)がテルペンフェノール樹脂であることが好ましく、実質的に全部(例えば95~100質量%、さらには99~100質量%)がテルペンフェノール樹脂であってもよい。
【0059】
ここに開示される粘着剤組成物は、粘着付与樹脂THOとして、水酸基価が0以上80mgKOH/g未満の粘着付与樹脂(THO2)を含有してもよい。粘着付与樹脂THO2は、粘着付与樹脂THO1に代えて用いてもよく、粘着付与樹脂THO1と組み合わせて用いてもよい。好ましい一態様として、水酸基価が80mgKOH/g以上の粘着付与樹脂THO1と、粘着付与樹脂THO2とを含む態様が挙げられる。粘着付与樹脂THO2としては、上述した各種の粘着付与樹脂のうち水酸基価が上記範囲にあるものを、単独で、あるいは適宜組み合わせて用いることができる。例えば、水酸基価が0以上80mgKOH/g未満のテルペンフェノール樹脂、石油樹脂(例えば、C5系石油樹脂)、テルペン樹脂(例えば、β-ピネン重合体)、ロジン系樹脂(例えば、重合ロジン)、ロジン誘導体樹脂(例えば、重合ロジンのエステル化物)等を用いることができる。
【0060】
ここに開示される技術は、上記粘着剤組成物が水酸基価80mgKOH/g以上(典型的には80~160mgKOH/g、例えば80~140mgKOH/g)の粘着付与樹脂THO1と、水酸基価40mgKOH/g以上80mgKOH/g未満の粘着付与樹脂THO2とを組み合わせて含む態様で好ましく実施され得る。この場合において、THO1とTHO2との使用量の関係は、例えば、質量比(THO1:THO2)が1:5~5:1の範囲となるように設定することができ、通常は1:3~3:1(例えば1:2~2:1)の範囲となるように設定することが適当である。好ましい一態様として、THO1,THO2がいずれもテルペンフェノール樹脂である態様が挙げられる。
【0061】
ベースポリマー100質量部に対する粘着付与樹脂の総量は特に限定されないが、高温凝集性と剥離強度とを両立する観点から、通常は20質量部以上が適当であり、30質量部以上が好ましく、40質量部以上(例えば50質量部以上)がより好ましい。また、低温特性(例えば低温剥離強度)等の観点から、ベースポリマー100質量部に対する粘着付与樹脂の含有量は、通常、200質量部以下が適当であり、150質量部以下が好ましく、120質量部以下(例えば100質量部以下)がより好ましい。
【0062】
特に限定するものではないが、ベースポリマー100質量部に対する粘着付与樹脂THの総量(すなわち、軟化点120℃以上の粘着付与樹脂の総量)は、高温凝集性や耐反撥性等の観点から、例えば10質量部以上とすることができ、20質量部以上(例えば25質量部以上)が好ましい。また、剥離強度や低温特性(例えば低温剥離強度)等の観点から、ベースポリマー100質量部に対する粘着付与樹脂THの含有量は、通常120質量部以下が適当であり、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下(例えば60質量部以下)である。ベースポリマー100質量部に対する粘着付与樹脂THの総量を55質量部以下(例えば50質量部以下)とすることにより、より高い剥離強度が実現され得る。
【0063】
粘着付与樹脂TLを含む態様において、ベースポリマー100質量部に対する粘着付与樹脂TLの総量は特に限定されないが、例えば10質量部以上とすることができ、剥離強度の観点から15質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましい。また、ベースポリマー100質量部に対する粘着付与樹脂TLの総量は、高温凝集性や耐反撥性の観点から、120質量部以下が適当であり、90質量部以下が好ましく、70質量部以下(例えば60質量部以下)がより好ましい。粘着付与樹脂TLの含有量を50質量部以下(例えば40質量部以下)としてもよい。
ここに開示される粘着剤組成物に含まれる全粘着付与樹脂のうち粘着付与樹脂TLの占める割合は、特に限定されない。上記割合は、例えば10~70質量%とすることができ、通常は20~50質量%が好ましい。
【0064】
ここに開示される粘着剤組成物が粘着付与樹脂TLと粘着付与樹脂THとを含む場合、それらの使用量の関係は、TL:THの質量比が1:5~3:1(より好ましくは1:5~2:1)となるように設定することが好ましい。ここに開示される技術は、上記粘着剤が、粘着付与樹脂としてTLよりもTHを多く含む態様(例えば、TL:THの質量比が1:1.2~1:5)で好ましく実施され得る。かかる態様によると、より高性能な粘着シートが実現され得る。
ここに開示される粘着剤組成物に含まれる全粘着付与樹脂のうち粘着付与樹脂THの占める割合は、特に限定されない。上記割合は、例えば30~90質量%とすることができ、通常は50~80質量%が好ましい。
【0065】
特に限定するものではないが、ここに開示される粘着剤組成物に含まれる全粘着付与樹脂のうち粘着付与樹脂THR1の占める割合は、例えば1~100質量%とすることができ、通常は5~80質量%が好ましく、10~70質量%がより好ましい。粘着剤組成物に含まれる全粘着付与樹脂のうち粘着付与樹脂THR2の占める割合についても同様である。
【0066】
<イソシアネート化合物>
ここに開示される粘着剤組成物は、さらにイソシアネート化合物を含有し得る。かかる粘着剤組成物によると、より高性能な(例えば、耐反撥性や定荷重剥離特性に優れた)粘着シートが実現され得る。イソシアネート化合物としては、多官能イソシアネート(1分子当たり平均2個以上のイソシアネート基を有する化合物をいい、イソシアヌレート構造を有するものを包含する。)が好ましく使用され得る。かかる多官能イソシアネートとしては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する各種のイソシアネート化合物(ポリイソシアネート)から選択される1種または2種以上を用いることができる。かかる多官能イソシアネートの例として、脂肪族ポリイソシアネート類、脂環族ポリイソシアネート類、芳香族ポリイソシアネート類等が挙げられる。
【0067】
脂肪族ポリイソシアネート類の具体例としては、1,2-エチレンジイソシアネート;1,2-テトラメチレンジイソシアネート、1,3-テトラメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート等のテトラメチレンジイソシアネート;1,2-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,5-ヘキサメチレンジイソシアネート等のヘキサメチレンジイソシアネート;2-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、等が挙げられる。
【0068】
脂環族ポリイソシアネート類の具体例としては、イソホロンジイソシアネート;1,2-シクロヘキシルジイソシアネート、1,3-シクロヘキシルジイソシアネート、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート等のシクロヘキシルジイソシアネート;1,2-シクロペンチルジイソシアネート、1,3-シクロペンチルジイソシアネート等のシクロペンチルジイソシアネート;水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、等が挙げられる。
【0069】
芳香族ポリイソシアネート類の具体例としては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、キシリレン-1,4-ジイソシアネート、キシリレン-1,3-ジイソシアネート等が挙げられる。
【0070】
好ましいイソシアネート化合物として、1分子当たり平均して3個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートが例示される。かかる3官能以上のイソシアネートは、2官能または3官能以上のイソシアネートの多量体(典型的には2量体または3量体)、誘導体(例えば、多価アルコールと2分子以上の多官能イソシアネートとの付加反応生成物)、重合物等であり得る。例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの2量体や3量体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(イソシアヌレート構造の3量体付加物)、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、等の多官能イソシアネートが挙げられる。かかる多官能イソシアネートの市販品としては、旭化成ケミカルズ社製の商品名「デュラネートTPA-100」、日本ポリウレタン工業社製の商品名「コロネートL」、同「コロネートHL」、同「コロネートHK」、同「コロネートHX」、同「コロネート2096」等が挙げられる。
【0071】
イソシアネート化合物を用いる場合、その使用量は特に限定されないが、例えばベースポリマー100質量部に対して0質量部を超えて10質量部以下(典型的には0.01~10質量部)とすることができる。通常は、ベースポリマー100質量部に対するイソシアネート化合物の使用量を0.1~10質量部とすることが適当であり、0.1~5質量部(典型的には0.3~3質量部、例えば0.5~1質量部)とすることが好ましい。かかる範囲でイソシアネート化合物を用いることにより、特に性能バランスに優れた粘着シートが実現され得る。
【0072】
<導電性粒子>
好ましい一態様に係る粘着剤組成物は、上記ベースポリマーに加えて導電性粒子をさらに含有する。これによって、該粘着剤組成物から形成される粘着剤に導電性が付与される。典型的には、該粘着剤組成物から形成される粘着剤層は厚さ方向に導電性を有し得る。導電性粒子としては、公知のものを使用することができる。例えば、ニッケル、鉄、クロム、コバルト、アルミニウム、アンチモン、モリブデン、銅、銀、白金、金、錫、ビスマス等の金属、これらの合金もしくは酸化物、カーボンブラック等のカーボン粒子、または、これらをポリマービーズ、ガラス、樹脂等に被覆した導電性粒子が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、金属粒子や金属被覆粒子が好ましく、そのなかでも、ニッケル粒子が特に好ましい。
【0073】
導電性粒子の形状は、特には限定されず、例えば、球状、薄板状、スパイク状等の形状とすることができる。分散性や導電性の観点から、導電性粒子は球状またはスパイク状であることが好ましい。導電性粒子のアスペクト比は特に限定されず、例えば1~10(典型的には1~5)の範囲から選択されることが好ましい。なお、上記アスペクト比は走査型電子顕微鏡(SEM)により測定することができる。
【0074】
導電性粒子の平均粒子径としては、特には限定されないが、高い導電性を得つつ、外観不良等の不具合を防止する観点から、例えば、0.1~100μmとすることが適当であり、好ましくは1~50μmであり、より好ましくは5~30μmである。平均粒子径は、レーザー回析・散乱法により測定される50%累積値d50を採用すればよい。測定装置としては、例えば日機装社製のレーザー回折・散乱式マイクロトラック粒度分布測定装置「MT3300」を用いることができる。
【0075】
導電性粒子の含有量は、良好な導電性を得る観点から、導電性粒子を除く粘着剤組成物の全固形分100質量部に対して、凡そ0.01質量部以上とすることが適当であり、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上(例えば5質量部以上、典型的には25質量部以上)である。また、良好な粘着特性を維持する観点から、上記含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは75質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下(例えば40質量部以下、典型的には15質量部以下)である。
【0076】
<その他成分>
ここに開示される粘着剤組成物は、必要に応じて、ベースポリマー以外のゴム状ポリマーを1種または2種以上含有し得る。かかるゴム状ポリマーは、粘着剤の分野において公知のゴム系、アクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ポリエーテル系、シリコーン系、ポリアミド系、フッ素系等の各種ポリマーであり得る。ゴム系のゴム状ポリマーの例としては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリイソブチレン、ブチルゴム、再生ゴム等が挙げられる。上記粘着剤がベースポリマー以外のゴム状ポリマーを含む場合において、該ゴム状ポリマーの使用量は、通常、ベースポリマー100質量部あたり50質量部以下とすることが適当であり、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下(例えば5質量部以下)である。ここに開示される技術は、上記粘着剤組成物がベースポリマー以外のゴム状ポリマーを実質的に含有しない態様(例えば、ベースポリマー100質量部当たりの含有量が0~1質量部である態様)で好ましく実施され得る。
【0077】
ここに開示される粘着剤組成物は、必要に応じて、レベリング剤、架橋剤、架橋助剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、着色剤(顔料、染料等)、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の、粘着剤の分野において一般的な各種の添加剤を含有するものであり得る。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができる。ここに開示される粘着剤は、ポリブテン等の液状ゴムを実質的に含有しない(例えば、ベースポリマー100質量部当たりの含有量が1質量部以下であり、0質量部であってもよい。)態様で好ましく実施され得る。かかる粘着剤によると、より耐反撥性および/または定荷重剥離特性に優れた粘着シートが実現され得る。
【0078】
好ましい一態様において、上記粘着剤組成物は、ベースポリマーと粘着付与樹脂との合計量が、該粘着剤の全質量(すなわち、この粘着剤により構成される粘着剤層の質量)の90質量%以上を占める組成であり得る。例えば、ベースポリマーと粘着付与樹脂との合計量が上記粘着剤の全質量の90~99.8質量%(典型的には、例えば95~99.5質量%)である態様を好ましく採用し得る。
好ましい他の一態様において、上記粘着剤組成物は、キレート化合物を実質的に含まない組成であり得る。ここで、上記キレート化合物とは、例えば、アルカリ土類金属の酸化物と、該酸化物が配位可能な官能基(水酸基、メチロール基等)を有する樹脂(アルキルフェノール樹脂等)とのキレート化合物を指す。ここに開示される技術は、上記粘着剤組成物が、このようなキレート化合物を全く含まないか、あるいは該キレート化合物の含有割合が1質量%以下である態様で好ましく実施され得る。かかる態様によると、より粘着力に優れた粘着シートが実現され得る。
【0079】
ここに開示される粘着剤組成物の形態は特に限定されず、例えば、上述のような組成の粘着剤(粘着成分)を有機溶媒中に含む形態(溶剤型)の粘着剤組成物、粘着剤が水性溶媒に分散した形態(水分散型、典型的には水性エマルション型)の粘着剤組成物、ホットメルト型の粘着剤組成物等であり得る。塗工性および基材の選択自由度等の観点から、溶剤型または水分散型の粘着剤組成物を好ましく採用し得る。より高い粘着性能を実現する観点から、溶剤型の粘着剤組成物が特に好ましい。溶剤型の粘着剤組成物は、導電性粒子や充填剤の分散性に優れる点でも好ましい。かかる溶剤型粘着剤組成物は、典型的には、上述した各成分を有機溶媒中に含む溶液の形態に調製される。上記有機溶媒は、公知ないし慣用の有機溶媒から適宜選択することができる。例えば、トルエン、キシレン等の芳香族化合物類(典型的には芳香族炭化水素類);酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類;1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化アルカン類;メチルエチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;等から選択されるいずれか1種の溶媒、または2種以上の混合溶媒を用いることができる。特に限定するものではないが、通常は、上記溶剤型粘着剤組成物を固形分(NV)30~65質量%(例えば40~55質量%)に調製することが適当である。NVが低すぎると製造コストが高くなりがちであり、NVが高すぎると塗工性等の取扱性が低下することがある。
【0080】
粘着剤組成物から粘着シートを得る方法としては、従来公知の種々の方法を適用し得る。例えば、粘着剤組成物を基材に直接付与(典型的には塗付)して乾燥させることにより粘着剤層を形成する方法(直接法)を好ましく採用することができる。また、上記粘着剤組成物を剥離性のよい表面(例えば、剥離ライナーの表面、離型処理された支持基材背面等)に付与して乾燥させることにより該表面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層を基材に転写する方法(転写法)を採用してもよい。
粘着剤組成物の塗付は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の、公知ないし慣用のコーターを用いて行うことができる。架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、粘着剤組成物の乾燥は加熱下で行うことが好ましい。通常は、例えば凡そ40℃~150℃(典型的には40℃~120℃、例えば50℃~120℃、さらには70℃~100℃)程度の乾燥温度を好ましく採用することができる。乾燥時間は特に限定されないが、数十秒から数分程度(例えば凡そ5分以内、好ましくは30秒~2分程度)とすればよい。その後、必要に応じて追加の乾燥工程を設けてもよい。粘着剤層は、典型的には連続的に形成されるが、目的および用途によっては点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成されてもよい。
【0081】
<粘着シートの構造例>
ここに開示される粘着シート(テープ状等の長尺状の形態であり得る。)は、例えば、
図1に示す断面構造を有する両面粘着シートの形態であり得る。この両面粘着シート1は、基材(例えばプラスチックフィルム)15と、その基材15の両面にそれぞれ支持された第一粘着剤層11および第二粘着剤層12とを備える。より詳しくは、基材15の第一面15Aおよび第二面15B(いずれも非剥離性)に、第一粘着剤層11および第二粘着剤層12がそれぞれ設けられている。使用前(被着体への貼り付け前)の両面粘着シート1は、
図1に示すように、前面21Aおよび背面21Bがいずれも剥離面である剥離ライナー21と重ね合わされて渦巻き状に巻回された形態であり得る。かかる形態の両面粘着シート1は、第二粘着剤層12の表面(第二粘着面12A)が剥離ライナー21の前面21Aにより、第一粘着剤層11の表面(第一粘着面11A)が剥離ライナー21の背面21Bにより、それぞれ保護されている。あるいは、第一粘着面11Aおよび第二粘着面12Aが2枚の独立した剥離ライナーによりそれぞれ保護された形態であってもよい。
【0082】
ここに開示される技術は、
図1に示すような基材付き両面粘着シートに好ましく適用されるほか、
図2に示すような基材レスの(すなわち、基材を有しない)両面粘着シート2にも適用され得る。使用前の両面粘着シート2は、例えば
図2に示すように、基材レスの粘着剤層11の第一粘着面11Aおよび第二粘着面11Bが、少なくとも該粘着剤層側の表面(前面)が剥離面となっている剥離ライナー21,22によってそれぞれ保護された形態であり得る。あるいは、剥離ライナー22を省略し、両面が剥離面となっている剥離ライナー21を用い、これと粘着剤層11とを重ね合わせて渦巻き状に巻回することにより第二粘着面11Bが剥離ライナー21の背面に当接して保護された形態であってもよい。
【0083】
ここに開示される技術は、また、
図3に示すように、基材15と該基材の第一面(非剥離面)15Aに支持された粘着剤層11とを備える片面粘着タイプの基材付き粘着シート3にも適用され得る。使用前の粘着シート3は、例えば
図3に示すように、その粘着剤層11の表面(粘着面)11Aが、少なくとも該粘着剤層側の表面(前面)が剥離面となっている剥離ライナー21で保護された形態であり得る。あるいは、剥離ライナー21を省略し、第二面15Bが剥離面となっている基材15を用い、基材付き粘着シート3を巻回することにより第一粘着面11Aが基材15の第二面15Bに当接して保護された形態であってもよい。
【0084】
<基材>
ここに開示される技術を基材付き両面粘着シートまたは基材付き片面粘着シートに適用する場合、基材としては、例えば、ポリプロピレンフィルム、エチレン-プロピレン共重合体フィルム、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等のプラスチックフィルム;ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリクロロプレンフォーム等の発泡体からなる発泡体シート;各種の繊維状物質(麻、綿等の天然繊維、ポリエステル、ビニロン等の合成繊維、アセテート等の半合成繊維、等であり得る。)の単独または混紡等による織布および不織布(和紙、上質紙等の紙類を包含する意味である。);アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;等を、粘着シートの用途に応じて適宜選択して用いることができる。上記プラスチックフィルム(典型的には非多孔質のプラスチック膜を指し、織布や不織布とは区別される概念である。)としては、無延伸フィルムおよび延伸(一軸延伸または二軸延伸)フィルムのいずれも使用可能である。また、基材のうち粘着剤層が設けられる面には、下塗剤の塗付、コロナ放電処理等の表面処理が施されていてもよい。基材の厚さは目的に応じて適宜選択できるが、一般的には概ね2μm~500μm(典型的には10μm~200μm)程度である。
【0085】
ここに開示される基材に適用される不織布としては、例えば、木材パルプ等のパルプ類、綿、麻等の天然繊維から構成される不織布;ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維等のポリエステル繊維、レーヨン、ビニロン、アセテート繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維等の化学繊維(合成繊維)から構成される不織布;材質の異なる2種以上の繊維を併用して構成された不織布;等を使用することができる。なかでも、粘着剤の含浸性や耐反撥性の観点から、パルプや麻(例えば麻パルプ)から構成される不織布、PET繊維から構成される不織布等が好ましい。不織布基材の適用はまた、粘着シートの柔軟性向上や手切れ性向上にも寄与する。
【0086】
ここに開示される技術における不織布(不織布基材)としては、坪量が凡そ30g/m2以下(例えば25g/m2以下、典型的には20g/m2以下)のものを好ましく採用し得る。かかる坪量の不織布は、軽量でかつ粘着性能に優れた粘着シートを作製するのに適している。耐反撥性の観点からは、坪量が18g/m2未満(例えば16g/m2以下、典型的には15g/m2以下)の不織布が好ましい。基材自体の強度を向上する観点からは、上記坪量は10g/m2以上(例えば12g/m2以上、典型的には13g/m2以上)であることが好ましい。
【0087】
ここに開示される技術において、不織布基材の厚さは、通常、凡そ150μm以下であることが適当である。粘着剤を基材全体に充分に含浸させる観点からは、上記厚さは100μm以下(例えば70μm以下、典型的には60μm以下)であることが好ましい。また、粘着シート作製時の取扱い性を考慮すると、上記厚さは10μm以上(例えば25μm以上、典型的には30μm以上)であることが好ましい。耐反撥性の観点からは、上記厚さは30~60μm(例えば35~50μm、典型的には40~45μm)であることが好ましい。
【0088】
不織布基材の嵩密度(坪量を厚さで除して算出され得る。)は、通常、0.20~0.50g/cm3程度が適当であり、0.25~0.40g/cm3程度であることが好ましい。嵩密度が上記の範囲内であることにより、基材自体が適当な強度を有し、良好な粘着剤含浸性が得られる。耐反撥性の観点からは、嵩密度0.25~0.40g/cm3(例えば0.30~0.35g/cm3)程度の不織布基材の使用が特に好ましい。
【0089】
ここに開示される不織布基材は、上記好ましい範囲の坪量、厚さおよび嵩密度のうち2つ以上(例えば坪量および厚さ、より好ましくは坪量、厚さおよび嵩密度のすべて)を満たすことが好ましい。これによって、複数の粘着特性(例えば耐反撥性や高温凝集性、剥離強度等)が高度にバランスした粘着シートが実現され得る。
【0090】
不織布基材は、上述のような構成繊維の他に、デンプン(例えば、カチオン化デンプン)、ポリアクリルアミド、ビスコース、ポリビニルアルコール、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン等の樹脂成分を含有し得る。上記樹脂成分は、当該不織布基材の紙力増強剤として機能するものであり得る。かかる樹脂成分を必要に応じて使用することにより、不織布基材の強度を調整することができる。ここに開示される技術における不織布基材は、その他、歩留まり向上剤、濾水剤、粘度調整剤、分散剤等の、不織布の製造に関する分野において一般的な添加剤を必要に応じて含有し得る。
【0091】
ここに開示される技術における粘着シートを導電性粘着シートとして構成する場合、当該導電性粘着シートは、基材レスの粘着シート(典型的には粘着剤層からなるシート)であってもよく、導電性基材の片面または両面に導電性粘着剤層が形成されてなる導電性粘着シートであってもよい。好ましい一態様に係る導電性粘着シートとして、導電性基材の少なくとも一方の表面(典型的には片面)に、導電性粒子を含む導電性粘着層が設けられたものが挙げられる。
【0092】
上記導電性基材としては金属箔を用いることが好ましい。具体的には、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、鉄、鉛、錫やこれらの合金等からなる金属箔が挙げられる。なかでも、導電性、加工性等の観点から、アルミニウム箔、銅箔が好ましく、銅箔がより好ましい。銅箔のなかでは、電解銅箔が好ましく使用される。上記金属箔は、めっき等の各種表面処理が施されていてもよい。導電性基材の厚さは特に限定されない。凡そ5~300μm(例えば10~100μm、典型的には15~70μm)の厚さを有する導電性基材が好ましく用いられる。
【0093】
<粘着剤層>
特に限定するものではないが、粘着剤層の厚さは、通常、凡そ4μm~150μm(典型的には20μm~120μm、例えば30μm~100μm)程度が適当である。基材付き両面粘着シートの場合、基材の両面それぞれに上記厚さの粘着剤層が設けられた構成とするとよい。導電性粒子を含ませることにより粘着剤層に導電性を付与する場合、厚さ方向に良好な導電性を得る観点から、粘着剤層の厚さは、凡そ100μm以下(より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下)とすることが好ましい。また、導電性と粘着特性との両立の観点から、粘着剤層の厚さは、5μm以上(例えば10μm以上)とすることが好ましい。粘着剤層は、典型的には連続的に形成されるが、目的および用途によっては点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成されてもよい。
【0094】
<剥離ライナー>
剥離ライナーとしては、慣用の剥離紙等を使用することができ、特に限定されない。例えば、プラスチックフィルムや紙等の基材の表面に剥離処理層を有する剥離ライナー、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)の低接着性材料からなる剥離ライナー等を用いることができる。上記剥離処理層は、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により上記基材を表面処理して形成されたものであり得る。
【0095】
<用途>
ここに開示される粘着剤組成物または粘着シートは、各種のOA機器、家電製品、自動車等における部材間の接合(例えば、かかる製品における各種部品の固定用途)に有用である。特に、弾性のある樹脂シート(例えば、厚さ0.05mm~0.2mm程度のプラスチックフィルム)をアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリカーボネート(PC)とABSとのポリマーブレンド(PC/ABS)等の樹脂製の筐体、あるいはアルミニウム製の筐体に接合する用途に好適である。かかる接合箇所を有する製品の例として、トナーカートリッジ、プリンター、ノートパソコン、携帯電話やスマートフォン、タブレット型携帯端末等のモバイル機器が挙げられる。また、ここに開示される導電性の粘着シートは、各種電子機器における導電性接着部材として好ましく利用され得る。上記導電性の粘着シートは、電子機器やケーブル等の電磁波シールドや、静電気防止用途等にも好ましく利用され得る。
【0096】
<粘着シートの特性>
ここに開示される粘着シートは、好ましい一態様において、被着体としてのステンレス鋼板(SUS304板)に、幅10mm、長さ20mmの接着面積にて2kgのローラを1往復させて圧着し、80℃の環境下に垂下して30分間放置した後、500gの荷重を付与して同環境下に1時間放置する耐熱保持力測定(より詳しくは、後述する実施例に記載の耐熱保持力測定方法に従って行われる。)において、上記荷重を付与してから粘着シートが被着体から剥がれて落下するまでの時間が1時間以上のものであり得る。
【0097】
ここに開示される粘着シートは、好ましい他の一態様において、23℃、50%RHの環境下にて、被着体としてのステンレス鋼板(SUS304板)の表面に2kgのローラを1往復させて圧着し、30分間放置した後、JIS Z0237に準じて引張速度300mm/分の条件で測定される180度引き剥がし粘着力(N/20mm幅)(より詳しくは、後述する実施例に記載の180度剥離強度測定方法に従って行われる。)が、典型的には10N/20mm以上のものであり得る。上記180度引き剥がし粘着力は、15N/20mm以上が好ましく、20N/20mm以上がより好ましい。特に好ましい一態様に係る粘着シートは、上記180度引き剥がし粘着力(N/20mm幅)が25N/20mm以上(さらには30N/20mm以上)であり得る。
【0098】
ここに開示される粘着シートは、好ましい一態様においては、後述する実施例に記載の耐反撥性評価方法において、被着体としてのアルミニウム製円筒に圧着し、70℃、80%RHの環境下に12時間放置した後に測定される浮き距離が5mm以下のものであり得る。より好ましい一態様では、上記浮き距離が3mm以下(例えば1.8mm以下、典型的に1.2mm以下)である。
【0099】
ここに開示される粘着シートを導電性粘着シートとして構成する場合、粘着シートの抵抗値は、0.9Ω以下(例えば0.3Ω以下、典型的には0.1Ω以下)であることが好ましい。粘着シートの抵抗は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0100】
ここに開示される粘着シートの総厚さは、特に限定されず、薄膜化、小型化、軽量化、省資源化等の観点から、凡そ1000μm以下(例えば500μm以下、典型的には300μm以下)とすることが好ましい。また、良好な粘着特性を確保する等の観点から、50μm以上(例えば70μm以上、典型的には100μm以上)とすることが適当である。ここに開示される粘着シートが導電性を有する場合には、粘着シートの総厚さは、導電性等の観点から、凡そ150μm以下(例えば120μm以下、典型的には90μm以下)とすることが好ましい。
【0101】
<発泡体基材を備えた粘着シート>
ここに開示される粘着剤組成物の好ましい用途の一例として、シート状の発泡体基材と、該発泡体基材の片面または両面に設けられた粘着剤層とを含む粘着シートを製造する用途が挙げられる。上記シート状の発泡体基材とは、気泡(気泡構造)を有する部分を備えた基材であって、典型的には、薄い層状の発泡体(発泡体層)を構成要素として含む基材をいう。上記発泡体基材は、1層または2層以上の発泡体層のみにより実質的に構成された基材であってもよく、発泡体層と非発泡体層とを含む複合基材(例えば、上記発泡体層と非発泡体層とが積層した基材)であってもよい。ここで非発泡体層とは、気泡構造を有しない層を指す。発泡体基材が2層以上の発泡体層を含む場合、それらの発泡体層の材質や構造は、同一であってもよく異なってもよい。
以下、1層の発泡体層から実質的に構成された構造の発泡体基材と、ここに開示される粘着剤組成物から形成され上記発泡体基材の両面に設けられた粘着剤層とを含む両面粘着シート(発泡体基材付き両面粘着シート)を主な例として説明するが、ここに開示される粘着シートの構造を限定する意図ではない。
【0102】
発泡体基材の厚さは、粘着シートの強度や柔軟性、使用目的等に応じて適宜設定することができる。所望の粘着特性を発揮し得る粘着剤層の厚さを確保しやすいという観点から、通常は、発泡体基材の厚さを350μm以下(例えば300μm以下)とすることが適当であり、好ましくは250μm以下、より好ましくは220μm以下、例えば200μm以下である。厚さ180μm以下の発泡体基材を用いてもよい。また、両面粘着シートの耐反撥性や耐衝撃性等の観点からは、発泡体基材の厚さを30μm以上とすることが適当であり、好ましくは40μm以上、より好ましくは50μm以上(例えば60μm以上)である。
【0103】
発泡体基材の材質は特に制限されない。通常は、プラスチック材料の発泡体(プラスチック発泡体)により形成された発泡体層を含む発泡体基材が好ましい。プラスチック発泡体を形成するためのプラスチック材料(ゴム材料を包含する意味である。)は、特に制限されず、公知のプラスチック材料の中から適宜選択することができる。プラスチック材料は、1種を単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0104】
プラスチック発泡体の具体例としては、ポリエチレン製発泡体、ポリプロピレン製発泡体等のポリオレフィン系樹脂発泡体;ポリエチレンテレフタレート製発泡体、ポリエチレンナフタレート製発泡体、ポリブチレンテレフタレート製発泡体等のポリエステル系樹脂製発泡体;ポリ塩化ビニル製発泡体等のポリ塩化ビニル系樹脂製発泡体;酢酸ビニル系樹脂製発泡体;ポリフェニレンスルフィド樹脂製発泡体;ポリアミド(ナイロン)樹脂製発泡体、全芳香族ポリアミド(アラミド)樹脂製発泡体等のアミド系樹脂製発泡体;ポリイミド系樹脂製発泡体;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)製発泡体;ポリスチレン製発泡体等のスチレン系樹脂製発泡体;ポリウレタン樹脂製発泡体等のウレタン系樹脂製発泡体;等が挙げられる。また、プラスチック発泡体として、ポリクロロプレンゴム製発泡体等のゴム系樹脂製発泡体を用いてもよい。
【0105】
好ましい発泡体として、ポリオレフィン系樹脂発泡体が例示される。上記ポリオレフィン系発泡体を構成するプラスチック材料(すなわちポリオレフィン系樹脂)としては、公知または慣用の各種のポリオレフィン系樹脂を特に限定なく用いることができる。例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセン触媒系直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。このようなポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0106】
ここに開示される技術における発泡体基材の好適例としては、耐衝撃性や防水性等の観点から、ポリエチレン系樹脂の発泡体から実質的に構成されるポリエチレン系発泡体基材、ポリプロピレン系樹脂の発泡体から実質的に構成されるポリプロピレン系発泡体基材等が挙げられる。ここで、ポリエチレン系樹脂とは、エチレンを主モノマー(すなわち、モノマーのなかの主成分)とする樹脂を指し、HDPE、LDPE、LLDPE等のほか、エチレンの共重合割合が50質量%を超えるエチレン-プロピレン共重合体やエチレン-酢酸ビニル共重合体等を包含し得る。同様に、ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンを主モノマーとする樹脂を指す。ここに開示される技術における発泡体基材としては、ポリエチレン系発泡体基材を好ましく採用し得る。
【0107】
上記発泡体基材の平均気泡径は特に限定されないが、通常は10μm~1000μmであることが好ましく、より好ましくは20μm~600μmである。平均気泡径を10μm以上とすることにより、耐衝撃性が向上する傾向がある。一方、平均気泡径を1000μm以下とすることにより、防水性(止水性)が向上する傾向がある。なお、平均気泡径は、例えば光学顕微鏡により測定することができる。
【0108】
上記発泡体基材の密度(見掛け密度)は、特に限定されないが、通常は0.1~0.5g/cm3であることが好ましく、より好ましくは0.2~0.4g/cm3である。密度を0.1g/cm3以上とすることにより、発泡体基材の強度(ひいては両面粘着シートの強度)が向上し、耐衝撃性や取扱性が向上する傾向にある。一方、密度を0.5g/cm3以下とすることにより、柔軟性が低下し過ぎず、段差追従性が向上する傾向にある。両面粘着シートの段差追従性が良好であると、一般に、段差を有する被着体に貼り合わせた場合でも、被着体表面との間に隙間を生じにくく、防水性が向上する。なお、発泡体基材の密度(見掛け密度)は、例えば、JIS K6767に準拠する方法により測定することができる。
【0109】
上記発泡体基材の発泡倍率は、特に限定されないが、通常は2~10cm3/gが好ましく、より好ましくは2.5~5cm3/gである。発泡倍率を2cm3/g以上とすることにより、柔軟性が向上し、段差追従性が向上する傾向がある。一方、発泡倍率を10cm3/g以下とすることにより、発泡体基材の強度(ひいては両面粘着シートの強度)が向上し、耐衝撃性や取扱性が向上する傾向がある。なお、本明細書において、発泡体基材の発泡倍率は、JIS K6767に準拠して測定される見掛け密度(g/cm3)の逆数として定義される。
【0110】
上記発泡体基材(例えばポリオレフィン系発泡体基材)の伸びは、特に限定されない。例えば、長手方向(MD)の伸びが200~800%(より好ましくは400~600%)であることが好ましい。また、幅方向(TD)の伸びが50~800%(より好ましくは100~600%)であることが好ましい。上述した下限値以上の伸びとすることにより、耐衝撃性や段差追従性が向上し得る。一方、上述した上限値以下の伸びとすることにより、発泡体基材の強度が向上し、耐衝撃性が向上し得る。発泡体基材の伸びは、JIS K6767に準拠して測定される。上記発泡体基材の伸びは、例えば、架橋度や発泡倍率等により制御することができる。
【0111】
上記発泡体基材(例えばポリオレフィン系発泡体基材)の引張強さ(引張強度)は、特に限定されない。例えば、長手方向(MD)の引張強さが0.5~20MPa(より好ましくは1~15MPa)であることが好ましい。また、幅方向(TD)の引張強さが0.2~20MPa(より好ましくは0.5~15MPa)であることが好ましい。上述した下限値以上の引張強さとすることにより、発泡体基材および両面粘着シートの取扱性が向上し得る。一方、上述した上限値以下の引張強さとすることにより、耐衝撃性や段差追従性が向上し得る。発泡体基材の引張強さ(長手方向の引張強さ、幅方向の引張強さ)は、JIS K6767に準拠して測定される。上記発泡体基材の引張強さは、例えば、架橋度や発泡倍率等により制御することができる。
【0112】
上記発泡体基材(例えばポリオレフィン系発泡体基材)は、該発泡体基材を約25mmの厚さとなるように積み重ねて平板で挟み込み、それを当初の厚さの25%に圧縮したときの荷重が10~300kPa(より好ましくは30~200kPa)となる圧縮硬さを有することが好ましい。圧縮硬さを10kPa以上とすることにより、取扱性が向上し得る。一方、圧縮硬さを300kPa以下とすることにより、段差追従性が向上し得る。発泡体基材の圧縮硬さは、JIS K6767に準拠して測定される。上記発泡体基材の圧縮硬さは、例えば、架橋度や発泡倍率等により制御することができる。
【0113】
上記発泡体基材には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤等)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、難燃剤、界面活性剤等の各種添加剤が配合されていてもよい。
【0114】
ここに開示される技術における発泡体基材は、該発泡体基材を備える両面粘着シートにおいて所望の意匠性や光学特性(例えば、遮光性、光反射性等)を発現させるために、着色されていてもよい。この着色には、公知の有機または無機の着色剤を、単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0115】
例えば、ここに開示される発泡体基材付き両面粘着シートを遮光用途に用いる場合、発泡体基材の可視光透過率は、特に限定されないが、後述の両面粘着シートの可視光透過率と同様に、0~15%が好ましく、より好ましくは0~10%である。また、ここに開示される両面粘着テープを光反射用途に用いる場合、発泡体基材の可視光反射率は、両面粘着テープの可視光反射率と同様に、20~100%が好ましく、より好ましくは25~100%である。
【0116】
発泡体基材の可視光透過率は、分光光度計(例えば、日立ハイテクノロジーズ社製の分光光度計、型式「U-4100」)を用いて、波長550nmにおいて、発泡体基材の一方の面側から照射して他方の面側に透過した光の強度を測定することにより求めることができる。発泡体基材の可視光反射率は、上記分光光度計を用いて、波長550nmにおいて、発泡体基材の一方の面に照射して反射した光の強度を測定することにより求めることができる。なお、両面粘着シートの可視光透過率や可視光反射率も、同様の方法により求めることができる。
【0117】
ここに開示される発泡体基材付き両面粘着シートを遮光用途に用いる場合、上記発泡体基材は黒色に着色されていることが好ましい。黒色としては、L*a*b*表色系で規定されるL*(明度)で、35以下(例えば、0~35)が好ましく、より好ましくは30以下(例えば、0~30)である。なお、L*a*b*表色系で規定されるa*やb*は、それぞれ、L*の値に応じて適宜選択することができる。a*やb*としては、特に限定されないが、両方とも-10~10(より好ましくは-5~5、さらに好ましくは-2.5~2.5)の範囲であることが好ましい。例えば、a*およびb*がいずれも0または略0であることが好ましい。
【0118】
なお、本明細書において、L*a*b*表色系で規定されるL*、a*、b*は、色彩色差計(例えば、ミノルタ社製の色彩色差計、商品名「CR-200」)を用いて測定することにより求められる。なお、L*a*b*表色系は、国際照明委員会(CIE)が1976年に推奨した色空間であり、CIE1976(L*a*b*)表色系と称される色空間のことを意味している。また、L*a*b*表色系は、日本工業規格では、JIS Z8729に規定されている。
【0119】
発泡体基材を黒色に着色する際に用いられる黒色着色剤としては、例えば、カーボンブラック(ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等)、グラファイト、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、シアニンブラック、活性炭、フェライト(非磁性フェライト、磁性フェライト等)、マグネタイト、酸化クロム、酸化鉄、二硫化モリブデン、クロム錯体、複合酸化物系黒色色素、アントラキノン系有機黒色色素等を用いることができる。コストや入手性の観点から好ましい黒色着色剤として、カーボンブラックが例示される。黒色着色剤の使用量は特に限定されず、所望の光学特性を付与できるように適宜調整した量とすることができる。
【0120】
ここに開示される発泡体基材付き両面粘着シートを光反射用途に用いる場合、上記発泡体基材は白色に着色されていることが好ましい。白色としては、L*a*b*表色系で規定されるL*(明度)で、87以上(例えば、87~100)が好ましく、より好ましくは90以上(例えば、90~100)である。L*a*b*表色系で規定されるa*やb*は、それぞれ、L*の値に応じて適宜選択することができる。a*やb*としては、例えば、両方とも-10~10(より好ましくは-5~5、さらに好ましくは-2.5~2.5)の範囲であることが好ましい。例えば、a*およびb*がいずれも0または略0であることが好ましい。
【0121】
発泡体基材を白色に着色する際に用いられる白色着色剤としては、例えば、酸化チタン(ルチル型二酸化チタン、アナターゼ型二酸化チタン等の二酸化チタン)、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化スズ、酸化バリウム、酸化セシウム、酸化イットリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム等)、炭酸バリウム、炭酸亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、亜鉛華、硫化亜鉛、タルク、シリカ、アルミナ、クレー、カオリン、燐酸チタン、マイカ、石膏、ホワイトカーボン、珪藻土、ベントナイト、リトポン、ゼオライト、セリサイト、加水ハロイサイト等の無機系白色着色剤や、アクリル系樹脂粒子、ポリスチレン系樹脂粒子、ポリウレタン系樹脂粒子、アミド系樹脂粒子、ポリカーボネート系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子、尿素-ホルマリン系樹脂粒子、メラミン系樹脂粒子等の有機系白色着色剤等が挙げられる。白色着色剤の使用量は特に限定されず、所望の光学特性を付与できるように適宜調整した量とすることができる。
【0122】
発泡体基材の表面には、必要に応じて、適宜の表面処理が施されていてもよい。この表面処理は、例えば、隣接する材料(例えば粘着剤層)に対する密着性を高めるための化学的または物理的な処理であり得る。かかる表面処理の例としては、コロナ放電処理、クロム酸処理、オゾン曝露、火炎曝露、紫外線照射処理、プラズマ処理、下塗剤(プライマー)の塗付等が挙げられる。
【0123】
ここに開示される発泡体基材付き両面粘着シートは、このような発泡体基材と、第一粘着剤層と、第二粘着剤層とを含むものであり得る。かかる両面粘着シートの総厚さ(発泡体基材と、その両面に設けられた粘着剤層との合計厚さを指し、剥離ライナーの厚さは含まない。)は特に限定されない。好ましい一態様において、上記発泡体基材付き両面粘着シートの総厚さは400μm以下(典型的には350μm以下)であり得る。薄膜化、小型化、軽量化、省資源化等の観点から、総厚さが300μm以下(より好ましくは250μm以下、例えば230μm以下)の発泡体基材付き両面粘着シートが好ましい。上記両面粘着シートの総厚さの下限は特に制限されないが、通常は、耐衝撃性や防水性等の観点から50μm以上とすることが適当であり、好ましくは70μm以上(より好ましくは100μm以上、さらには150μm以上、例えば190μm以上)である。
【0124】
発泡体基材の両側に設けられた粘着剤層の合計厚さは特に限定されない。好ましい一態様において、粘着剤層の合計厚さを10μm~200μmとすることができる。粘着性能の観点から、通常は、粘着剤層の合計厚さを20μm以上とすることが適当であり、30μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましい。また、所望の特性を発揮し得る発泡体基材の厚さを確保しやすいという観点から、通常は、粘着剤層の総厚さを170μm以下とすることが適当であり、150μm以下が好ましく、100μm以下(例えば80μm以下)がより好ましい。
【0125】
第一粘着剤層の厚さと第二粘着剤層の厚さとは、同一でもよく異なってもよい。通常は、両粘着剤層の厚さが概ね同程度である構成を好ましく採用し得る。また、上述した粘着剤(すなわち、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体をベースポリマーとして含む粘着剤)から形成された粘着剤層の厚さは、片面当たり、例えば5μm~100μmとすることができ、好ましくは10μm~75μm、より好ましくは15μm~65μm(例えば20μm~40μm)である。各粘着剤層は、単層および多層のいずれの形態を有していてもよい。
【0126】
ここに開示される両面粘着シートは、本発明の効果を大きく損なわない範囲で、発泡体基材および粘着剤層以外の層(中間層、下塗り層等。以下「他の層」ともいう。)をさらに含んでもよい。例えば、発泡体基材といずれか一方または両方の粘着剤層との間に上記他の層が設けられていてもよい。このような構成の両面粘着シートでは、上記他の層の厚さは両面粘着シートの総厚さ(すなわち、一方の粘着面から他方の粘着面までの厚さ)に含まれる。
【0127】
ここに開示される発泡体基材付き両面粘着シートは、所望の光学特性(透過率、反射率等)を有するものであり得る。例えば、遮光用途に用いられる両面粘着シートは、可視光透過率が0%~15%(より好ましくは0%~10%)であることが好ましい。また、光反射用途に用いられる両面粘着シートは、可視光反射率が20%~100%(より好ましくは25%~100%)であることが好ましい。両面粘着シートの光学特性は、例えば、上述のように発泡体基材を着色すること等により調整することができる。
【0128】
ここに開示される発泡体基材付き両面粘着シートは、金属の腐食防止等の観点から、ハロゲンフリーであることが好ましい。両面粘着シートがハロゲンフリーであることは、例えば、この両面粘着シートが電気・電子部品の固定に用いられ得る場合において、有利な特徴となり得る。また、燃焼時におけるハロゲン含有ガスの発生を抑制し得るので、環境負荷軽減の観点からも好ましい。ハロゲンフリーの両面粘着シートは、ハロゲン化合物を発泡体基材や粘着剤の原料として意図的に用いないこと、ハロゲン化合物を意図的に配合しない発泡体基材を用いること、添加剤を用いる場合にハロゲン化合物由来の添加剤を用いないこと、等の手段を単独で、あるいは適宜組み合わせて採用することにより得ることができる。
【0129】
ここに開示される発泡体基材付き両面粘着シートの用途は特に限定されない。例えば、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等の金属材料;ガラス、セラミックス等の無機材料;ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂材料;天然ゴム、ブチルゴム等のゴム材料;およびこれらの複合素材等からなる被着体に対して用いることができる。
【0130】
ここに開示される両面粘着シートは、発泡体基材を含むことから耐衝撃性や段差追従性に優れ、また総厚さが比較的小さくても耐反撥性に優れたものとなり得る。したがって、このような特長を活かして、電子機器用途、例えば、携帯電話のレンズ固定用、携帯電話のキーモジュール部材固定用、電子機器の衝撃吸収材、テレビのデコレーションパネル固定用、パソコンのバッテリーパック保護用途、デジタルビデオカメラのレンズ防水等の用途に好ましく適用され得る。特に好ましい用途として、携帯用の電子機器、特に、液晶表示装置を内蔵する携帯用の電子機器(例えば、携帯電話、スマートフォン等)に好ましく使用され得る。例えば、このような携帯用電子機器において、表示パネルと筐体とを接合する用途等に好適である。
【0131】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り質量基準である。また、以下の説明中の各特性は、それぞれ次のようにして測定または評価した。
【0132】
(1)耐熱保持力
両面粘着シートの一方の粘着面を覆う剥離ライナーを剥がし、厚さ25μmのPETフィルムに貼り付けて裏打ちした。この裏打ちされた粘着シートを幅10mm、長さ100mmのサイズにカットして測定サンプルを作製した。上記測定サンプルの他方の粘着面を覆う剥離ライナーを剥がし、該他方の粘着面を被着体としてのステンレス鋼板(SUS304板)に、幅10mm、長さ20mmの接着面積にて、2kgのローラを1往復させて圧着した。このようにして被着体に貼り付けられた測定サンプルを80℃の環境下に垂下して30分間放置した後、該測定サンプルの自由端に500gの荷重を付与し、JIS Z0237に準じて、該荷重が付与された状態で80℃の環境下に1時間放置した後における測定サンプルの最初の貼付け位置からのズレ距離(mm)を測定した。上記荷重を付与してから1時間以内に測定サンプルが被着体から剥がれて落下した場合には、荷重付与から落下までの時間(分)を測定した。
【0133】
(2)180度剥離強度
両面粘着シートの一方の粘着面に厚さ25μmのPETフィルムを貼り合わせ、これを幅20mm、長さ100mmのサイズにカットして測定サンプルを作製した。
(常温剥離強度)
23℃、50%RHの環境下にて、上記測定サンプルの他方の粘着面を露出させ、該他方の粘着面を被着体の表面に、2kgのローラを1往復させて圧着した。これを同環境下に30分間放置した後、万能引張圧縮試験機(装置名「引張圧縮試験機、TG-1kN」ミネベア(株)製)を使用して、JIS Z0237に準じて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で、常温剥離強度(N/20mm幅)を測定した。被着体としてはステンレス鋼板(SUS304板)を使用した。
(低温剥離強度)
測定サンプルおよび被着体を0℃の環境下に1時間以上保持した後、同環境(0℃)にて上記常温SUS接着力と同様に測定サンプルを被着体に圧着し、これを同環境下に30分間放置した後、万能引張圧縮試験機(装置名「引張圧縮試験機、TG-1kN」ミネベア(株)製)を使用して、JIS Z0237に準じて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で、低温剥離強度(N/20mm幅)を測定した。被着体としてはステンレス鋼板(SUS304板)を使用した。
【0134】
<実験例1>
[粘着剤組成物の調製]
(例a1)
ベースポリマーとしてのスチレンイソプレンブロック共重合体(日本ゼオン社製、製品名「クインタック(Quintac)3520」、スチレン含有量15%、ジブロック体比率78%)100部と、芳香族系石油樹脂(JX日鉱日石エネルギー社製、製品名「日石ネオポリマー120」、軟化点120℃、水酸基価1mgKOH/g未満)20部と、テルペンフェノール樹脂40部と、テルペン樹脂30部と、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製品、製品名「コロネートL」)を固形分基準で0.75部と、老化防止剤1部と、溶媒としてのトルエンとを撹拌混合して、NV50%の粘着剤組成物a1を調製した。
ここで、テルペンフェノール樹脂としては、ヤスハラケミカル社製の商品名「YSポリスターS145」(軟化点145℃、水酸基価100mgKOH/g)と、同社製の商品名「YSポリスターT145」(軟化点145℃、水酸基価60mgKOH/g)との二種類を、1:1の質量比で、それらの合計が40部となるように使用した。テルペン樹脂としては、ヤスハラケミカル社製の製品名「YSレジンPX1150N」(軟化点115℃、水酸基価1mgKOH/g未満)を使用した。老化防止剤としては、BASF社製の製品名「IRGANOX CB612」(BASF社製の製品名「IRGAFOS 168」と同社製の製品名「IRGANOX 565」との質量比2:1のブレンド配合物)を使用した。
【0135】
(例a2~a5)
例a1で使用した芳香族系石油樹脂に代えて、JX日鉱日石エネルギー社製の芳香族系石油樹脂、製品名「日石ネオポリマー130」、同「日石ネオポリマー140」、同「日石ネオポリマー150」および同「日石ネオポリマー170S」をそれぞれ使用した。各芳香族系石油樹脂の軟化点および水酸基価は表1に示すとおりである。その他の点は例a1と同様にして、各例に係る粘着剤組成物a2~a5を調製した。
【0136】
(例a6~a8)
例a1で使用した芳香族系石油樹脂に代えて、東ソー社製の芳香族系石油樹脂、製品名「ペトコール130」、同「ペトコール140」および同「ペトコール150」をそれぞれ使用した。各芳香族系石油樹脂の軟化点および水酸基価は表1に示すとおりである。その他の点は例a1と同様にして、各例に係る粘着剤組成物a6~a8を調製した。
【0137】
(例a9~a10)
例a1で使用した芳香族系石油樹脂に代えて、日塗化学社製のクマロン・インデン樹脂、製品名「ニットレジン クマロンV-120」(軟化点120℃、水酸基価30mgKOH/g)を、ベースポリマー100部に対して20部(例a9)または50部(例a10)使用した。その他の点は例a1と同様にして、例a9,a10に係る粘着剤組成物を調製した。
【0138】
(例a11~a12)
例a1で使用した芳香族系石油樹脂に代えて、三井化学社製のα-メチルスチレン/スチレン共重合体、製品名「FTR2140」(軟化点137℃、水酸基価1mgKOH/g未満)を、ベースポリマー100部に対して10部(例a11)または20部(例a12)使用した。その他の点は例a1と同様にして、例a11,a12に係る粘着剤組成物を調製した。
【0139】
(例a13)
例a1で使用した芳香族系石油樹脂に代えて、東ソー社製の脂肪族/芳香族系共重合系石油樹脂、製品名「ペトロタック130」(軟化点130℃、水酸基価1mgKOH/g未満)を使用した。この脂肪族/芳香族系共重合系石油樹脂の共重合組成は、C5留分7%、シクロペンタジエン4%、ジシクロペンタジエン18%、C9留分70%である。その他の点は例a1と同様にして、例a13に係る粘着剤組成物を調製した。
【0140】
(例b1)
芳香族系石油樹脂を使用しない点以外は例a1と同様にして、例b1に係る粘着剤組成物を調製した。
【0141】
(例b2~b4)
例1で使用した芳香族系石油樹脂に代えて、スチレン樹脂(ヤスハラケミカル社製、製品名「YSレジンSX」、軟化点100℃、水酸基価1mgKOH/g未満)、α-メチルスチレン/スチレン共重合体(理化ハーキュレス社製、製品名「ピコテックス120」、軟化点118℃、水酸基価1mgKOH/g未満)、および脂肪族/芳香族系共重合系石油樹脂(東ソー社製、製品名「ペトロタック120」、軟化点119℃、水酸基価1mgKOH/g未満)をそれぞれ使用した。上記脂肪族/芳香族系共重合系石油樹脂(ペトロタック120)の共重合組成は、C5留分14%、シクロペンタジエン6%、ジシクロペンタジエン19%、C9留分61%である。その他の点は例a1と同様にして、各例に係る粘着剤組成物b2~b4を調製した。
【0142】
[両面粘着シートの作製および評価]
これらの粘着剤組成物a1~a13およびb1~b4の各々を、基材としての厚さ12μmのPETフィルム(東レ社製、商品名「ルミラーS10」)の第一面に塗付し、120℃で3分間乾燥処理して、厚さ64μmの粘着剤層を形成した。その粘着剤層に、シリコーン系剥離剤により剥離処理された剥離ライナーを貼り合わせた。次いで、上記PETフィルムの第二面(第一面とは反対側の面)に、第一面と同様にして厚さ64μmの粘着剤層を形成し、剥離ライナーを貼り合わせた。このようにして、各粘着剤組成物に対応する両面粘着シートを作製した。
得られた両面粘着シートの耐熱保持力を評価した結果を表1~表3に示す。
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
表1~3に示されるように、粘着付与樹脂THR1(軟化点が120℃以上であり、芳香環を有しており、かつ水酸基価が30mgKOH/g以下である粘着付与樹脂)を含まない例b1(表3)は、耐熱保持力測定において16分で測定サンプルが落下した。
これに対して、例b1の組成に、種々の粘着付与樹脂THR1をベースポリマー100部当たり10~50部加えた組成に相当する例a1~a13の粘着シートは、いずれも耐熱保持力測定において1時間経過後も測定サンプルが落下することがなく、例b1に比べて高温凝集力が顕著に向上した。なお、例a1~a13で使用した粘着付与樹脂THR1は、いずれも、イソプレン単位、テルペン骨格およびロジン骨格を実質的に含有しない粘着付与樹脂である。
一方、例b1の組成に、粘着付与樹脂THR1に該当しない粘着付与樹脂を20部配合した例b2~b4は、例a1~a13に比べて高温凝集力の向上効果が明らかに少なく(例b2,b4)、あるいは高温凝集力がさらに低下した(例b3)。
【0147】
<実験例2>
[粘着剤組成物の調製]
(例c1)
ベースポリマーとしてのスチレンイソプレンブロック共重合体(日本ゼオン社製、製品名「クインタック3520」、スチレン含有量15%、ジブロック体比率78%)100部と、芳香族系石油樹脂(JX日鉱日石エネルギー社製、製品名「日石ネオポリマー150」、軟化点155℃、水酸基価1mgKOH/g未満)40部と、テルペン樹脂30部と、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製品、製品名「コロネートL」)を固形分基準で0.75部と、老化防止剤1部と、溶媒としてのトルエンとを撹拌混合して、NV50%の粘着剤組成物c1を調製した。
ここで、テルペン樹脂としては、ヤスハラケミカル社製の製品名「YSレジンPX1150N」(軟化点115℃、水酸基価1mgKOH/g未満)を使用した。老化防止剤としては、BASF社製の製品名「IRGANOX CB612」(BASF社製の製品名「IRGAFOS 168」と同社製の製品名「IRGANOX 565」との質量比2:1のブレンド配合物)を使用した。
【0148】
(例c2)
例c1で使用したスチレンイソプレンブロック共重合体に代えて、JSR社製のスチレンイソプレンブロック共重合体、製品名「SIS5505」(スチレン含有量16%、ジブロック体比率50%)を使用した。その他の点は例c1と同様にして、例c2に係る粘着剤組成物を調製した。
【0149】
(例c3)
例c1で使用したスチレンイソプレンブロック共重合体に代えて、クレイトンポリマージャパン社製のスチレンイソプレンブロック共重合体、製品名「D1113PT」(スチレン含有量16%、ジブロック体比率56%)を使用した。その他の点は例c1と同様にして、例c3に係る粘着剤組成物を調製した。
【0150】
(例c4)
例c1で使用したスチレンイソプレンブロック共重合体に代えて、クレイトンポリマージャパン社製のスチレンイソプレンブロック共重合体、製品名「D1119PT」(スチレン含有量22%、ジブロック体比率66%)を使用した。その他の点は例c1と同様にして、例c4に係る粘着剤組成物を調製した。
【0151】
[両面粘着シートの作製および評価]
上記で得られた粘着剤組成物c1~c4を用いて、実験例1と同様にして両面粘着シートを作製した。これらの両面粘着シートc1~c4および実験例1で作製した両面粘着シートb1,a4について耐熱保持力および常温剥離強度を評価した結果を表4に示す。
【0152】
【0153】
表4に示す例b1と例c1との比較から、粘着付与樹脂THR1に該当しない粘着付与樹脂TH(水酸基価の高いテルペンフェノール樹脂)を粘着付与樹脂THR1(ここでは芳香族系石油樹脂)に置き換えることにより、高温凝集性が顕著に改善されることが確認された。また、ベースポリマー100部に対する粘着付与樹脂THの総量が60部である例a4に比べて、粘着付与樹脂THの総量が55部以下である例c1は、さらに高い常温剥離強度を示すものであった。この例c1に係る粘着シートは、例b1に匹敵する高い常温剥離強度と、例a4と同等以上の優れた高温凝集性とを兼ね備えた高性能な粘着シートであった。
粘着付与樹脂THR1の種類および使用量が同じであってベースポリマーの種類が異なる例c2~c4の粘着シートは、いずれも例c1と同レベルの優れた高温凝集性を示した。これらのうち、スチレン含有量が20%未満のスチレンイソプレンブロック共重合体をベースポリマーに用いた例c1~c3の粘着シートは、例c4に比べてより高い(具体的には20N/20mm以上の)常温剥離強度を示した。なかでも、ジブロック体比率が70%以上であるスチレンイソプレンブロック共重合体をベースポリマーに用いた例c1の粘着シートは、特に優れた(具体的には30N/20mm以上の)常温剥離強度を示した。
【0154】
<実験例3>
[粘着剤組成物の調製]
(例d1)
ベースポリマーとしてのスチレンイソプレンブロック共重合体(日本ゼオン社製、製品名「クインタック3520」、スチレン含有量15%、ジブロック体比率78%)100部と、α-メチルスチレン/スチレン共重合体(理化ハーキュレス社製、製品名「ピコテックス120」、軟化点118℃、水酸基価1mgKOH/g未満)10部と、テルペンフェノール樹脂40部と、テルペン樹脂30部と、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製品、製品名「コロネートL」)を固形分基準で0.75部と、老化防止剤1部と、溶媒としてのトルエンとを撹拌混合して、NV50%の粘着剤組成物d1を調製した。
ここで、テルペンフェノール樹脂としては、ヤスハラケミカル社製の商品名「YSポリスターS145」(軟化点145℃、水酸基価100mgKOH/g)と、同社製の商品名「YSポリスターT145」(軟化点145℃、水酸基価60mgKOH/g)との二種類を、1:1の質量比で、それらの合計が40部となるように使用した。テルペン樹脂としては、ヤスハラケミカル社製の製品名「YSレジンPX1150N」(軟化点115℃、水酸基価1mgKOH/g未満)を使用した。老化防止剤としては、BASF社製の製品名「IRGANOX CB612」(BASF社製の製品名「IRGAFOS 168」と同社製の製品名「IRGANOX 565」との質量比2:1のブレンド配合物)を使用した。
【0155】
(例d2)
α-メチルスチレン/スチレン共重合体(軟化点118℃)の使用量を40部に変更した他は例d1と同様にして、例d2に係る粘着剤組成物を調製した。
【0156】
(例d3)
例d1で用いたα-メチルスチレン/スチレン共重合体に代えて、三井化学社製のα-メチルスチレン/スチレン共重合体(製品名「FTR2140」、軟化点137℃、水酸基価1mgKOH/g未満)30部を使用した。その他の点は例d1と同様にして、例d3に係る粘着剤組成物を調製した。
【0157】
(例d4)
α-メチルスチレン/スチレン共重合体(軟化点137℃)の使用量を40部に変更した他は例d3と同様にして、例d4に係る粘着剤組成物を調製した。
【0158】
[両面粘着シートの作製および評価]
上記で得られた粘着剤組成物d1~d4を用いて、実験例1と同様にして両面粘着シートを作製した。これらの両面粘着シートd1~d4および実験例1で作製した両面粘着シートb1,b3,a11,a12について耐熱保持力、常温剥離強度および低温剥離強度を評価した結果を表5に示す。表5において、耐熱保持力を示す欄の「-」は未評価であることを示している。
【0159】
【0160】
表5に示す例a11,a12,d3およびd4の結果から、ベースポリマー100部に対する粘着付与樹脂THR1の使用量が少なくとも10部~40部の範囲において、例b1と同等の常温剥離強度と、例b1に比べて著しく改善された耐熱保持力(高温凝集性)とが同時に実現され得ることがわかる。また、粘着付与樹脂THR1の使用量が30部以上では低温剥離強度の低下がみられたが、その低下の程度は、粘着付与樹脂THR1に該当しない粘着付与樹脂を用いた場合(例d1,b3,d2)に比べて少なかった。
【0161】
<実験例4>
(例e1)
[粘着剤組成物の調製]
ベースポリマーとしてのスチレンイソプレンブロック共重合体(日本ゼオン社製、製品名「クインタック3520」、スチレン含有量15%、ジブロック体比率78%)100部と、テルペンフェノール樹脂40部と、テルペン樹脂30部と、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製品、製品名「コロネートL」)を固形分基準で0.75部と、老化防止剤3部と、溶媒としてのトルエンとを撹拌混合して、NV50%の粘着剤組成物を調製した。
ここで、テルペンフェノール樹脂としては、ヤスハラケミカル社製の商品名「YSポリスターS145」(軟化点145℃、水酸基価100mgKOH/g)と、同社製の商品名「YSポリスターT145」(軟化点145℃、水酸基価60mgKOH/g)との二種類を、1:1の質量比で、それらの合計が40部となるように使用した。テルペン樹脂としては、ヤスハラケミカル社製の製品名「YSレジンPX1150N」(軟化点115℃、水酸基価1mgKOH/g未満)を使用した。老化防止剤としては、BASF社製の製品名「IRGANOX CB612」(BASF社製の製品名「IRGAFOS 168」と同社製の製品名「IRGANOX 565」との質量比2:1のブレンド配合物)を使用した。
【0162】
[両面粘着シートの作製]
上質紙の片面に厚さ25μmのPE層がラミネートされ、その上にシリコーン系剥離剤による剥離処理が行われたシート状の剥離ライナーを用意した。この剥離ライナーの剥離処理面に上記で得た粘着剤組成物を塗付し、乾燥処理して粘着剤層を形成した。得られた粘着剤層を基材の第一面に転写した。同様にして基材の第二面にも粘着剤層を形成した。基材としては、坪量14g/m2、厚さ40μm、嵩密度0.35g/cm3のPET系不織布を用いた。このようにして例e1に係る両面粘着シート(総厚140μm)を作製した。
【0163】
(例e2)
基材として、坪量23g/m2、厚さ76μm、嵩密度0.30g/cm3の麻パルプ100%の不織布を用いた他は例e1と同様にして例e2に係る両面粘着シートを作製した。
【0164】
(例e3)
基材として、坪量14g/m2、厚さ42μm、嵩密度0.33g/cm3のパルプ系不織布を用いた他は例e1と同様にして例e3に係る両面粘着シートを作製した。
【0165】
(例e4)
基材として、坪量14g/m2、厚さ50μm、嵩密度0.28g/cm3の麻パルプ100%の不織布を用いた他は例e1と同様にして例e4に係る両面粘着シートを作製した。
【0166】
(例e5)
基材として、坪量14g/m2、厚さ27μm、嵩密度0.52g/cm3のパルプ系不織布を用いた他は例e1と同様にして例e5に係る両面粘着シートを作製した。
【0167】
(例e6)
基材として、坪量14g/m2、厚さ28μm、嵩密度0.50g/cm3のパルプ100%の不織布を用いた他は例e1と同様にして例e6に係る両面粘着シートを作製した。
【0168】
(例e7)
ベースポリマーとしてのスチレンイソプレンブロック共重合体(日本ゼオン社製、製品名「クインタック3520」、スチレン含有量15%、ジブロック体比率78%)100部と、芳香族系石油樹脂(JX日鉱日石エネルギー社製、製品名「日石ネオポリマー150」、軟化点155℃、水酸基価1mgKOH/g未満)20部と、テルペンフェノール樹脂40部と、テルペン樹脂30部と、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製品、製品名「コロネートL」)を固形分基準で0.75部と、老化防止剤3部と、溶媒としてのトルエンとを撹拌混合して、NV50%の粘着剤組成物を調製した。なお、テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂、老化防止剤は例e1と同じものを使用した。この粘着剤組成物を用いた他は例e3と同様にして例e7に係る両面粘着シートを作製した。
【0169】
(例e8)
基材として、厚さ12μmのPETフィルムを用いた他は例e1と同様にして例e8に両面粘着シートを作製した。
【0170】
[耐反撥性評価]
直径24mmのアルミニウム製円筒を被着体に用いて、各例に係る両面粘着シートの耐反撥性を評価した。すなわち、
図4に示すように、両面粘着シート4の一方の粘着面4Aを、厚さ300μmのPETフィルム42に貼り付けて裏打ちした。この裏打ちされた両面粘着シート4を幅10mm、長さ40mmのサイズにカットして試験片44を作製した。23℃、50%RHの環境下にて、試験片44の他方の粘着面4Bを、試験片44の長手方向が被着体(アルミニウム製円筒)46の円周方向となるようにして、2kgのローラを1往復させて圧着した。なお、被着体46は、あらかじめエチルアルコールで洗浄して使用した。これを70℃、80%RHの環境下に12時間放置した後、試験片44の長手方向の両端44A,44Bが被着体46の表面から剥がれて浮いているか否かを観察し、浮いていた場合にはその浮き距離(試験片44が被着体46の表面から浮き上がった部分の長さ)を測定した。試験片の両端が浮いていた場合には両端の浮き距離の平均値を当該試験片の浮き距離とした。結果を表6および表7に示す。
【0171】
【0172】
【0173】
表6に示されるように、基材として不織布を用いた例e1~e6に係る両面粘着シートはいずれも良好な耐反撥性を示した。なかでも、坪量、厚さ、嵩密度が所定の範囲にある(具体的には、坪量14g/m2、厚さ40~50μm、嵩密度0.28~0.35g/cm3の)不織布を用いた例e1,e3,e4に係る両面粘着シートでは、耐反撥性評価における浮き距離が2mm以下と、より良好な結果が得られた。特に、例e3に係る両面粘着シートは例e1~e6のなかで最も優れた耐反撥性を示した。さらに、表7に示されるように、軟化点120℃以上かつ水酸基価30mgKOH/g以下の粘着付与樹脂を配合したゴム系粘着剤を用いた例e7に係る両面粘着シートは、基材としてPETフィルムを用いた例e8と遜色ない耐反撥性を示した。これらの結果から、軟化点120℃以上かつ水酸基価30mgKOH/g以下の粘着付与樹脂を配合したゴム系粘着剤と不織布基材とを組み合わせて用いることにより、優れた耐反撥性を示す粘着シートが得られることがわかる。なお、特に示さないが、例e1~e8に係る両面粘着シートについて、上述の方法で対SUS引き剥がし粘着力(常温剥離強度)を測定したところ、いずれも28N/20mm以上の粘着力を示した。また、例e7について上述の方法で耐熱保持力測定を実施したところ、被着体に貼り付けられた粘着シートは1時間以上落下せずに保持された。
【0174】
<実験例5>
(例f1)
[粘着剤組成物の調製]
ベースポリマーとしてのスチレンイソプレンブロック共重合体(日本ゼオン社製、製品名「クインタック3520」、スチレン含有量15%、ジブロック体比率78%)100部と、テルペンフェノール樹脂40部と、テルペン樹脂30部と、芳香族系石油樹脂(JX日鉱日石エネルギー社製、製品名「日石ネオポリマー150」、軟化点155℃、水酸基価1mgKOH/g未満)20部と、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製品、製品名「コロネートL」)を固形分基準で1.00部と、老化防止剤3部と、溶媒としてのトルエンとを撹拌混合して、NV48%に調製した。この混合物の固形分100部に対し、導電性粒子(福田金属箔粉工業社製、商品名「Ni123」、ニッケルフィラー、平均粒径11μm)を5部添加し混合することにより、本例に係る粘着剤組成物を調製した。
ここで、テルペンフェノール樹脂としては、ヤスハラケミカル社製の商品名「YSポリスターS145」(軟化点145℃、水酸基価100mgKOH/g)と、同社製の商品名「YSポリスターT145」(軟化点145℃、水酸基価60mgKOH/g)との二種類を、1:1の質量比で、それらの合計が40部となるように使用した。テルペン樹脂としては、ヤスハラケミカル社製の製品名「YSレジンPX1150N」(軟化点115℃、水酸基価1mgKOH/g未満)を使用した。老化防止剤としては、BASF社製の製品名「IRGANOX CB612」(BASF社製の製品名「IRGAFOS 168」と同社製の製品名「IRGANOX 565」との質量比2:1のブレンド配合物)を使用した。
【0175】
[導電性片面粘着シートの作製]
片面がシリコーン系剥離剤により剥離処理されたシート状のPET製剥離ライナー(三菱ポリエステルフィルム社製、商品名「MRF♯38」、厚さ38μm)を用意した。この剥離ライナーの剥離処理面に上記で得た粘着剤組成物を塗付し、100℃で3分間の乾燥処理を行い、粘着剤層を形成した。得られた粘着剤層を基材の片面に転写した。基材としては、電解銅箔(福田金属箔粉工業社製、商品名「CF-T8G-UN-35」、厚さ35μm)を用いた。このようにして、厚さ20μmの粘着剤層が導電性基材の片面に設けられた導電性片面粘着シートを作製した。
【0176】
(例f2)
導電性粒子の添加量を、上記混合物の固形分100部に対して35部に変更した他は例f1と同様にして例f2に係る導電性片面粘着シートを作製した。
【0177】
[180度剥離強度]
各例に係る片面粘着シートを幅20mm、長さ100mmのサイズにカットして測定サンプルを作製した。23℃、60%RHの環境下にて、上記測定サンプルの粘着面を被着体の表面に2kgのローラを1往復させて圧着した。これを同環境下に30分間放置した後、万能引張圧縮試験機(装置名「引張圧縮試験機、TG-1kN」ミネベア(株)製)を使用して、JIS Z0237に準じて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で、180度剥離強度(N/20mm幅)を測定した。被着体としてはステンレス鋼板(SUS304板)を使用した。結果を表8に示す。
【0178】
[抵抗測定]
各例に係る片面粘着テープを幅30mm、長さ40mmのサイズにカットして測定サンプルを作製した。
図5に示されるように、ガラス板(ソーダライムガラス)51の上に、幅20mmの長尺状銅箔(圧延銅箔、厚さ35μm)52を配置した。その上にさらに、銅箔52の長手方向と直交するように長尺状の絶縁テープ53を重ね合わせた。絶縁テープ53は、2枚用意し、それら2枚が互いに平行するように20mmの間隔をおいて配置した。そして、銅箔52および絶縁テープ53と重なるように、測定サンプル54を圧着した。測定サンプル54(片面粘着シート)の粘着剤層の粘着面が銅箔52の表面と接するように貼り合わせた。測定サンプル54と銅箔52とは、貼り合わせ部分(
図5の中央に位置する破線で囲まれた正方形領域)55にて接触している(接触面積4cm
2)。圧着は、常温環境下にて、ハンドローラー(幅30mm)を用いて圧力5.0N/cmの条件で行った。なお、
図5の縦方向が測定サンプル54の長さ方向である。そして、常温環境下で15分放置した後、銅箔52の端部(
図5の符号T1で示される部分)と測定サンプル54の基材(電解銅箔)の端部(
図5の符号T2で示される部分)に電流計(KIKUSUI社製、直流安定化電源「PMC18-S」)の端子を接続した。また、測定サンプル54の基材(電解銅箔)の端部(
図5の符号T3で示される部分)と銅箔52の端部(
図5の符号T4で示される部分)にデジタルマルチメーター(IWATSU社製、商品名「VOAC7521A」)の端子を接続した。そして、電流計にて0.1Aの電流を流した際の電位差をデジタルマルチメーターにて測定した。得られた電位差から、オームの法則により抵抗値を求めた。結果を表8に示す。
【0179】
【0180】
表8に示されるように、粘着剤層に導電性粒子を配合した例f1、f2に係る粘着シートは、高い粘着力(具体的には25N/20mm以上の粘着力)を示しつつ、抵抗値は0.1Ω以下であった。この結果から、ここに開示される粘着剤に導電性粒子を配合することにより、高い接着力を示し、かつ優れた導電性を有する粘着シートが実現されることがわかる。
【0181】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0182】
1,2,3 粘着シート
11 第一粘着剤層
12 第二粘着剤層
15 基材
21,22 剥離ライナー