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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】耐水性の携行型時計ケース
(51)【国際特許分類】
   G04B 37/08 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
G04B37/08 C
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020077149
(22)【出願日】2020-04-24
(65)【公開番号】P2020183952
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2020-04-24
(31)【優先権主張番号】19173328.6
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507276380
【氏名又は名称】オメガ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・カルテンリーダー
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・キスリング
(72)【発明者】
【氏名】イヴ・ウィンクレ
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】スイス国特許発明第00378792(CH,A)
【文献】実開昭53-075160(JP,U)
【文献】特開昭52-104964(JP,A)
【文献】スイス国特許出願公告第1028272(CH,A4)
【文献】特開昭61-254882(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03163380(EP,A1)
【文献】特開2014-121608(JP,A)
【文献】特表2016-506264(JP,A)
【文献】特公昭58-001393(JP,B2)
【文献】英国特許出願公告第01055252(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00-99/00
F16J 13/00-15/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にダイビングウォッチのための、耐水性の携行型時計ケースであって、
当該携行型時計ケース(1)は、ミドル部(2)と、前記ミドル部(2)の下側に取り付けられる少なくとも1つの裏部(4)と、風防(3)と、及び前記風防(3)を前記ミドル部(2)の上側に取り付けるためのガスケット(5、5’)とを備え、
前記裏部(4)には、環状支持面(24)があり、この環状支持面(24)は、前記裏部(4)を前記ミドル部(2)に取り付けるときに前記環状支持面(24)に対して相補的な形である前記ミドル部(2)の環状内側面(32)と接触するようになり、
前記環状支持面(24)及び前記環状内側面(32)の双方における各テーパーの形の頂上は、当該携行型時計ケースの内側の方向にあり、
前記環状支持面(24)と前記環状内側面(32)は、前記裏部(4)の平面と、当該携行型時計ケース(1)の平面に垂直な中心軸とに対して当該携行型時計ケース(1)の内側の方へと90°未満の所定の角度傾斜しており、これによって、潜水時の水圧に起因する応力を前記風防(3)と前記ミドル部(2)の間で分散させ、
前記風防(3)には、前記ミドル部(2)の上側に対して相補的な形である環状内側面(12)上に前記ガスケットの少なくとも第1の部分(5)を用いて取り付けられるテーパー状の環状周面(13)があり、
前記風防(3)の前記環状周面(13)が、前記風防(3)の面の平面に対して及び当該携行型時計ケースの平面に垂直な中軸に対して当該携行型時計ケース(1)の内側の方へと90°未満の角度傾斜しており、
前記ガスケットの第2の部分(5’)は、前記環状内側面(12)の上の前記ミドル部(2)の円筒状の環状内側壁(22)と、前記環状周面(13)の上の前記風防(3)の円筒状の環状外側壁(2)との間にてこれらと接触しており、これによって、潜水しているときの水圧に起因する前記風防(3)と前記ミドル部(2)の間の応力を分散させ、
前記ミドル部(2)の下側には、さらに、前記裏部(4)が前記ミドル部(2)に取り付けられているときに前記環状支持面(24)に接触するパッキン(6)を収容する環状溝(16)がある
ことを特徴とする携行型時計ケース(1)。
【請求項2】
前記裏部(4)の前記環状支持面(24)及び前記ミドル部(2)の前記環状内側面(32)は、テーパー状の面である
ことを特徴とする請求項1に記載の携行型時計ケース(1)。
【請求項3】
前記環状支持面(24)と前記環状内側面(32)の前記所定の傾斜角度は、中心軸に対して60°±5°のオーダーである
ことを特徴とする請求項1に記載の携行型時計ケース(1)。
【請求項4】
前記裏部(4)には、内側ねじ山がある環状リム(14)があり、この環状リム(14)は、前記裏部(4)を前記ミドル部(2)に取り付けるときに、前記ミドル部(2)の下側にあるねじ山(26)にねじ込まれる
ことを特徴とする請求項1に記載の携行型時計ケース(1)。
【請求項5】
前記裏部(4)を前記ミドル部(2)に取り付けるためにリング(4’)を備え、
このリング(4’)には、相補的な形である前記裏部(4)の外側周面と接触する内側支持面があり、
前記リング(4’)には、内側ねじ山がある環状リム(14)があり、この環状リム(14)は、前記ミドル部(2)の下側にあるねじ山(26)にねじ込まれる
ことを特徴とする請求項1に記載の携行型時計ケース(1)。
【請求項6】
前記環状周面(13)と前記環状内側面(12)の間の前記ガスケットの前記第1の部分()は、アモルファス金属又はアモルファス金属合金によって作られている
ことを特徴とする請求項5に記載の携行型時計ケース(1)。
【請求項7】
前記内側環状壁(22)及び外側環状壁(23)は、前記中心軸と平行である
ことを特徴とする請求項1に記載の携行型時計ケース(1)。
【請求項8】
特にダイビングウォッチのための、耐水性の携行型時計ケースであって、
当該携行型時計ケース(1)は、ミドル部(2)と、前記ミドル部(2)の下側に取り付けられる少なくとも1つの裏部(4)と、風防(3)と、及び前記風防(3)を前記ミドル部(2)の上側に取り付けるためのガスケット(5、5’)とを備え、
前記裏部(4)には、環状支持面(24)があり、この環状支持面(24)は、前記裏部(4)を前記ミドル部(2)に取り付けるときに前記環状支持面(24)に対して相補的な形である前記ミドル部(2)の環状内側面(32)と接触するようになり、
前記環状支持面(24)及び前記環状内側面(32)の双方における各テーパーの形の頂上は、当該携行型時計ケースの内側の方向にあり、
前記環状支持面(24)と前記環状内側面(32)は、前記裏部(4)の平面と、当該携行型時計ケース(1)の平面に垂直な中心軸とに対して当該携行型時計ケース(1)の内側の方へと90°未満の所定の角度傾斜しており、これによって、潜水時の水圧に起因する応力を前記風防(3)と前記ミドル部(2)の間で分散させ、
前記風防(3)には、前記ミドル部(2)の上側に対して相補的な形である環状内側面(12)上に前記ガスケットの少なくとも第1の部分(5)を用いて取り付けられるテーパー状の環状周面(13)があり、
前記風防(3)の前記環状周面(13)が、前記風防(3)の面の平面に対して及び当該携行型時計ケースの平面に垂直な中軸に対して当該携行型時計ケース(1)の内側の方へと90°未満の角度傾斜しており、
前記ガスケットの第2の部分(5’)は、前記環状内側面(12)の上の前記ミドル部(2)の円筒状の環状内側壁(22)と、前記環状周面(13)の上の前記風防(3)の円筒状の環状外側壁(2)との間にてこれらと接触しており、これによって、潜水しているときの水圧に起因する前記風防(3)と前記ミドル部(2)の間の応力を分散させ、
前記ガスケットの前記第1の部分(5)は、アモルファス金属又はアモルファス金属合金によって作られており、
前記ガスケットの第2の部分(5’)は、ポリウレタンによって作られており、これによって、前記風防(3)を前記ミドル部(2)に固定する
ことを特徴とする携行型時計ケース(1)。
【請求項9】
前記ガスケット(5、5’)の少なくとも一部のアモルファス金属合金は、主にジルコニウムをベースとしている
ことを特徴とする請求項6又は8に記載の携行型時計ケース(1)。
【請求項10】
前記ガスケット(5、5’)の少なくとも一部のアモルファス金属合金は、主に白金をベースとしている
ことを特徴とする請求項6又は8に記載の携行型時計ケース(1)。
【請求項11】
前記ガスケット(5、5’)の少なくとも一部のアモルファス金属合金は、主にパラジウムをベースとしている
ことを特徴とする請求項6又は8に記載の携行型時計ケース(1)。
【請求項12】
前記風防(3)の前記環状周面(13)及び前記ミドル部(2)の前記環状内側面(12)の前記所定の傾斜角度は、前記中心軸に対して43°±5°のオーダーの角度である
ことを特徴とする請求項1-11のいずれか一項に記載の携行型時計ケース(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐水性の携行型時計(例、腕時計、懐中時計)のケースに関し、特に、ダイビングウォッチ用のものに関する。
【背景技術】
【0002】
機械式又は電子式の携行型時計を水中で用いるためには、計時器用ムーブメントやタイムベースの計時器用モジュールを搭載している携行型時計ケースが密封されていなければならない。このために、携行型時計ケースは、ミドル部の第1の側に密封固定される裏部と、第1の側とは反対側のミドル部の第2の側に固定される風防とを備える。携行型時計の裏部、ミドル部及び風防を組み付けるために、パッキンが用いられる。また、携行型時計機能の制御メンバーないし設定メンバーは、待機位置において、ケースのミドル部を貫通するように密封取り付けされている。
【0003】
潜水中などのときには携行型時計ケース内の圧力が大気圧に近く、携行型時計ケースは、一般的には、携行型時計ケースの高い水圧に耐えるように構成していたり組み付けられたりしていない。伝統的な携行型時計の単純なパッキンでは、非常に深くまで潜水しているときに耐水性が良好であることを確実にするために十分ではない。
【0004】
スイス特許文献CH690870A5には、耐水性の携行型時計ケースが記載されている。この携行型時計ケースは、上側でミドルベゼルに固定される風防と、ミドル部の内ねじにねじ込まれることによって固定される裏部によって構成している。この風防は、円環状の環状パッキンを用いてミドル部に固定され、ミドル部のリムに支えられる。また、裏部の外側リムとミドル部の下面の間にもパッキンが設けられる。また、ねじ山が高い水圧で損傷する可能性があるため、耐久性が高い金属によって作られたドームも設けられる。このドームは、裏部の内側面、そして、ミドル部の内側縁部に支えられる。しかし、携行型時計ケースがこのように構成していても、非常に深い深さまで潜水しているときにケースの耐水性が良好であることを確実にすることはできていない。このことは望ましくない。
【0005】
スイス特許文献CH372606は、裏部を囲み風防によって閉じられる中央部ないしミドル部を備える耐水性の携行型時計ケースについて記載している。ねじ山付きリングは、裏部の傾斜した外側面に支えられて裏部を保持し、ミドル部に接続された固定部にねじ込まれる。このような構成では、非常に深い深さまで潜水しているときにケースの良好な耐水性を確実にすることはできない。このことは望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、深い深さに潜水するために高い水圧に耐えるように構成している耐水性の携行型時計ケースを提案することによって、上述の従来技術の課題を解決することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このために、本発明は、独立請求項1に記載の特徴を備える耐水性の携行型時計ケースに関する。
【0008】
従属請求項2~16に、耐水性の携行型時計ケースの特定の実施形態が定められている。
【0009】
この耐水性の携行型時計ケースの利点は、この携行型時計ケースの内側の方に傾斜した裏部の環状支持面が、裏部をミドル部に取り付けるときに環状支持面と相補的な形状であるミドル部の環状内側面と接触することに基づいている。支持面と内側面は、携行型時計ケースの平面に垂直な中心軸に対して90°未満の所定の角度携行型時計ケースの内側の方に傾斜している。概して円筒状であるミドル部の場合、支持面と内側面は、テーパー状である。このことによって、深い深さまで潜水しているときの水圧に起因する裏部とミドル部の間の応力の分布を良好にすることができる。
【0010】
この耐水性の携行型時計ケースの利点は、ガスケットを用いて風防がミドル部に固定されていることと、ミドル部と風防の接触面が傾いていることに基づいている。概して円筒状であるミドル部の場合、風防とミドル部上にテーパー状の支持面が形成される。このようにして、風防にかかる圧力の力は、テーパー状の支持面を介してミドル部に伝達される。
【0011】
図面を参照しながら以下の説明を読むことによって、耐水性の携行型時計ケースの目的、利点及び特徴をよく理解することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1a図1aは、本発明に係る耐水性のケースを備える携行型時計の第1の実施形態の断面図を示している。
図1b図1bは、本発明の第1の実施形態に係るミドル部に対する風防の固定を示している部分的な詳細断面図を示している。
図2a図2aは、単純な形態で、本発明に係る耐水性のケースを備える携行型時計の第2の実施形態の断面図を示している。
図2b図2bは、本発明の第2の実施形態に係るミドル部に対する風防の固定を示している部分的な詳細断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、当業者によく知られている、耐水性の携行型時計、特に、ダイビングウォッチ、のケースの構成要素についてはすべて簡略化した形態でのみ説明している。
【0014】
図1a及び1bは、ダイビングウォッチに用いることができる携行型時計ケース1の一実施形態を示している。携行型時計ケース1は、基本的に、ミドル部2の上側に固定されサファイアや鉱物の結晶によって作ることができる風防3と、及びミドル部2の下側に取り付けられる裏部4とを備える。また、ミドル部2の上側上にベゼル7を取り付けることもできる。携行型時計ケース1には、ケーシングサークル8内に計時器用ムーブメント又はモジュール10が配置されており、ダイビングウォッチの時間、日付又は他の機能を設定するために、ミドル部2上に又はミドル部2を貫通するように、安静位置において密封されるように、少なくとも1つの制御メンバー(図示せず)を取り付けることができる。
【0015】
第1の変形実施形態において、裏部4は、ミドル部2の下側に取り付けられる環状リム14のような固定手段を備える。裏部4の環状支持面24は、裏部4をミドル部2に取り付けるときにミドル部2の環状内側面32と接触する。この環状内側面32は、支持面24と相補的な形状である。支持面24と内側面32は、携行型時計ケース1の平面に垂直な中心軸に対して90°未満の所定の角度携行型時計ケース1の内側の方に傾斜している。
【0016】
概して円筒状であるミドル部2の場合、面24、32は円錐状であり、携行型時計ケース1の中心軸に対して90°未満の所定の角度携行型時計ケース1の内側の方に傾いている。このことは、各テーパーの形の頂上が携行型時計ケース1の内側の方向にあることを意味している。また、ミドル部2の下側には、裏部4がミドル部2に取り付けられているときに支持面24に接触する円環状のパッキン6(ブタジエンゴムニトリル)を収容する環状溝16がある。好ましくは、裏部4の環状リム14には、内側ねじ山があり、これによって、ミドル部2の下側にあるねじ山26にねじ込むことができる。チタンのような材料によって作られたミドル部2と堅固な裏部4の場合、前記角度は中心軸に対して60°±5°のオーダーであることができる。このことによって、深い深さまで潜水しているときの水圧に起因する堅固な裏部4とミドル部2の間の応力の分布を良好にすることができる。
【0017】
なお、裏部4は、風防3と同様にサファイアや鉱物ガラスによって作って、スケルトン的な携行型時計ケースとすることができ、これによって、ダイビングウォッチの内側を見ることができるようにすることかできる。
【0018】
風防3には、環状周面13があり、ミドル部2の上側の環状内側面12上に環状の固定用ガスケット5、5’の少なくとも一部を用いて取り付けられる。環状内側面12は、環状周面13に対して相補的な形状であることが好ましい。風防3の環状周面13は、携行型時計ケース1の平面に垂直な軸に対して90°未満の所定の角度傾斜している。好ましくは、環状内側面12は、概して、中心軸に対して環状周面13と同じ角度で携行型時計ケース1の内側の方に傾斜している。
【0019】
ミドル部2が概して円筒状である場合、内側周面13と環状内側面12はテーパー状であり、携行型時計ケースの内側の方に所定の角度傾斜している。このことは、各テーパーの形の頂上が携行型時計ケース1の内側の方向にあることを意味している。面12及び13の所定の傾斜角度は、中心軸に対して43°±5°のオーダーであることができる。このことのおかげで、深い深さまで潜水しているときの水圧に起因する風防3とミドル部2の間の応力の分布が良好になる。ケース1の内側の方に接触面12、13が傾いているおかげで、携行型時計ケース1内の圧力と水圧の差によって、接触面12、13と固定用ガスケット5、5’の間の隙間をいずれも閉じる傾向が発生する。このことによって、耐水性が良好であることと耐圧力性が確実になる。
【0020】
この第1の変形実施形態において、固定用ガスケット5、5は、好ましくは、アモルファス金属、金属性ガラス又はアモルファス金属合金によって作られた第1の部分5と、及びポリマー(例、ポリウレタン)によって作られた第2の部分5’とによって構成しており、これによって、風防3を保持する。固定用ガスケット5、5’は、ミドル部2上にて風防3を密封して閉じるために環状の形状をしている。概して円筒状であるミドル部2のために、ガスケットの第1の部分5はテーパー状であり、第2の部分5’は第1の部分5の上側縁部上にてリンクしており円筒状である。風防3がミドル部2上にて固定されると、第1の部分5はミドル部2と風防3の傾斜面を支えるようにリンクしており、かつ、第2の部分5’は風防3の環状周面13の上方の風防3の環状内側壁22及び環状外側壁23に取り付けられる。好ましくは、第2の部分5’は、ベゼル7のすぐ下の風防3の中間的な高さで止まり、かつ、ガスケットの第1の部分5は、風防3の底部とミドル部2の間のリンクの高さレベルよりも下まで延在している。
【0021】
断面における第1の部分5の長さは、5mmのオーダーであることができ、ガスケット5、5’の第2の部分の高さは、2.5mmのオーダーであることができる。なお、この形態には限定されない。ガスケットの厚みは、0.65mmのオーダーであることができる。
【0022】
通常、風防3がミドル部2上に固定される前に環状の固定用ガスケット5、5’が作られる場合、ガスケットの第1の部分5が風防3をミドル部2上に担持するタイプであるときに、風防3をミドル部2に対して保持するようにはたらくのは主にガスケットの第2の部分5’である。しかし、これらの2つの部分が分離しており、環状外側壁23によって風防3をミドル部2の内側壁22に保持するためにガスケットの第2の部分5’を第1の部分5上に設ける前に第1の部分5をミドル部2と風防3に熱間固定することも想像することができ、このことによっても耐水性が良好であることを確実にすることができる。
【0023】
このことによって、携行型時計ケース1が水中の深い深さまで沈められたときに、風防3とミドル部2の傾斜面12、13が貢献して、また、ガスケットの金属製の第1の部分5によって、風防3とミドル部2の間のいずれの隙間をも閉じることが可能になる。したがって、アモルファス金属又はアモルファス金属合金によって作られた、ガスケットの金属製の第1の部分5が貢献して、風防3とミドル部2の間の応力の分布が良好になる。
【0024】
なお、ミドル部2の環状内側面12は、携行型時計ケース1の内側の方へと傾斜しており、環状内側面12の後に約3°内側に曲がった面12’で終わっている。したがって、ガスケットの第1の部分5は、この曲がった表面12’と直接接触しなくなっている。一方、潜水時に水圧が大きく増加すると、ガスケットの第1の部分5は風防3によって内側の方に押されて、曲がった面12’と接触ないし一致するようになる。したがって、このことによって、風防3の内側の角の圧力がガスケットの第1の部分5において応力を集中させてガスケットを破壊してしまうことを防ぐことができる。
【0025】
いくつかのタイプのアモルファス金属合金を用いて、ガスケットの金属製の第1の部分5を作ることができる。最も一般的な場合では、アモルファス金属合金は、主にジルコニウムによって構成していることができる。このことによって、350°よりも高い温度で、すなわち、合金のガラス転移温度よりも高い温度で、ガスケットを形成することが可能になる。ジルコニウムベースのアモルファス金属合金は、Zr(52.5%)、Cu(17.6%)、Ni(14.9%)、Al(10%)及びTi(5%)によって構成していることができる。また、ジルコニウムベースのアモルファス金属合金は、Zr(58.5%)、Cu(15.6%)、Ni(12.8%)、Al(10.3%)及びNb(2.8%)を含有することができる。また、ジルコニウムベースのアモルファス金属合金は、Zr(44%)、Ti(11%)、Cu(9.8%)、Ni(10.2%)及びBe(25%)を含有することができ、あるいは最後に、Zr(58%)、Cu(22%)、Fe(8%)及びAl(12%)を含有することができる。好ましくは、このようなガスケットの製造を容易にするために、アモルファス金属合金は、主に、白金によって構成していることができる。このことによって、230℃よりも高い温度でガスケットを形成することが可能になる白金ベースのアモルファス金属合金は、Pt(57.5%)、Cu(14.7%)、Ni(5.3%)及びP(22.5%)を含有することができる。また、主にパラジウム(Pd)をベースとするアモルファス金属合金の一体的な金属ガスケット5、5’を作ることも可能である。このことによって、300℃よりも高い温度でガスケットを形成することができる。
【0026】
また、以下のようなアモルファス金属の他の合金についても言及することができる。チタンベースのアモルファス金属合金は、Ti(41.5%)、Zr(10%)、Cu(35%)、Pd(11%)及びSn(2.5%)を含有することができる。パラジウムベースのアモルファス金属合金は、Pd(43%)、Cu(27%)、Ni(10%)及びP(20%)を含有することができ、あるいはPd(77%)、Cu(6%)及びSi(16.5%)を含有することができ、あるいは最後に、Pd(79%)、Cu(6%)、Si(10%)及びP(5%)を含有することができる。ニッケルベースのアモルファス金属合金は、Ni(53%)、Nb(20%)、Ti(10%)、Zr(8%)、Co(6%)及びCu(3%)を含有することができ、あるいはNi(67%)、Cr(6%)、Fe(4%)、Si(7%)、C(0.25%)及びB(15.75%)を含有することができ、あるいは最後に、Ni(60%)、Pd(20%)、P(17%)及びB(3%)を含有することができる。鉄ベースのアモルファス金属合金は、Fe(45%)、Cr(20%)、Mo(14%)、C(15%)及びB(6%)を含有することができ、あるいはFe(56%)、Co(7%)、Ni(7%)、Zr(8%)、Nb(2%)及びB(20%)を含有することができる。金ベースのアモルファス金属合金は、Au(49%)、Ag(5%)、Pd(2.3%)、Cu(26.9%)及びSi(16.3%)を含有することができる。
【0027】
図2a及び2bは、ダイビングウォッチに用いることができる携行型時計ケース1の第2の変形実施形態を示している。この第2の変形実施形態の要素のほとんどが図1a及び1bを参照しながら説明した第1の変形実施形態と同じであるので、これらについては繰り返して説明しない。ミドル部2の下側の裏部4の固定手段、そして、風防3をミドル部2に固定する金属ガスケット5、5’において、相違している。
【0028】
堅固な裏部4は、固定手段としてはたらくリング4’を用いてミドル部2に固定される。このリング4’には、相補的な形であることが好ましい裏部4の外側周面と接触する内側支持面がある。リング4’の内側支持面は、裏部4の中央の方に曲がっており又は傾斜している。リング4’には、さらに、内側ねじ山がある環状リム14があり、これは、リング4’の内側支持面に支えられている裏部4をミドル部2に取り付けるときに、ミドル部2の下側にあるねじ山26にねじ込まれる。リング4の材料は、裏部4と同じ材料であることができ、また、別の金属製の材料であることができる。
【0029】
概して円筒状であるミドル部の場合、環状の固定用ガスケット5、5’の全体は、アモルファス金属、金属性ガラス又はアモルファス金属性合金によって構成していることができる。これは、テーパー状のガスケットの第1の部分5と、及びこの第1の部分5の上側リムにリンクされる円筒状の第2の部分5’とを備えて、1つの単一の部品を形成することができる。固定用ガスケット5、5’の全体的な形は、図1a及び1bのものと同じであり、面12、13の傾斜角度についても同様である。好ましくは、風防3は、アモルファス金属によって作られたガスケットを用いてミドル部2に熱間固定される。
【0030】
情報として、このようなアモルファス金属によって作られたガスケット5、5’の製造は、以下のような異なる成形方法のいずれかによって行うことができる。
- 溶融金属から直接製造する方法である。例えば、圧力注入、重力鋳造、遠心鋳造、抗重力鋳造、吸引鋳造、付加的粉末製造の方法である。
- ガラス転移温度よりも高い温度での熱変形によってアモルファスプレフォームから製造する方法である。例えば、電磁成形、容量性放電による成形、ガス圧下での成形、機械的成形の方法である。このステップの目的は、正確な寸法を有するプレフォームを得て、十分な割合のアモルファス相を含むようにして後述するアセンブリーステップの間にそのプレフォームの変形を可能にすることである。
【0031】
この刻み込みは、携行型時計のブランドを示すこともできる。なお、上述した変形実施形態にしたがってミドル部2に風防3を固定すること及び風防3とミドル部2の間のテーパー面の接触によって、風防3とミドル部2の間の耐水性及び応力分布が良好であることが確実になる。裏部のテーパー状の面とミドル部2のテーパー状の面の接触についても同様である。このことは、携行型時計がその内部の圧力と深い深さの水の中における水圧との間の圧力差に起因する高い応力に耐えなければならないために必要である。このテーパー状の形のために、ミドル部2、ガスケット5、5’及び風防3の間又はミドル部2と裏部4の間の接触面が非常に大きいため、より広い面積にわたって応力伝達が良好に行われる。このことは、深くまで潜水しているときに、携行型時計の耐水性を確実にするために重要である。このような構成によって、携行型時計ケース上に与えられる水圧は、接触面の間のいずれの隙間をも閉じようとする。また、このことによって、固定用ガスケット5、5’の押し出しを防ぐ。
【0032】
以上の説明から、当業者であれば、請求の範囲において定められた本発明の範囲から逸脱することなく、携行型時計ケースのいくつかの代替的な実施形態を設計することができる。携行型時計ケースのミドル部の全体的な形は、円筒状ではない形であることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 携行型時計ケース
2 ミドル部
3 風防
4 裏部
4’ リング
5 ガスケットの第1の部分
5’ ガスケットの第2の部分
6 パッキン
10 計時器用ムーブメント
12 環状内側面
13 環状周面
14 環状リム
16 環状溝
22 環状内側壁
24 環状支持面
26 ねじ山
32 環状内側面
22、23 環状壁
図1a
図1b
図2a
図2b