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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】船舶推進システム
(51)【国際特許分類】
   B63H 21/17 20060101AFI20220106BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20220106BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20220106BHJP
   B60L 50/70 20190101ALI20220106BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20220106BHJP
【FI】
B63H21/17
B60L50/16
B60L50/60
B60L50/70
B60L53/14
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020507434
(86)(22)【出願日】2019-02-15
(86)【国際出願番号】 JP2019005470
(87)【国際公開番号】W WO2019181301
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】P 2018051711
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514307497
【氏名又は名称】株式会社カレントダイナミックス
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100204032
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100200001
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 明彦
(72)【発明者】
【氏名】森 和彦
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-227115(JP,A)
【文献】特表2011-506180(JP,A)
【文献】中国実用新案第204532528(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 21/17
B60L 50/16
B60L 50/60
B60L 50/70
B60L 53/14
B60K 6/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の移動を主目的とする船舶に自動車を搭載し、排ガスの少ない航行環境を提供し、該自動車に搭載された燃料を利用して、該船舶に推進力を付与するとともに、該自動車が適宜選択した陸上の燃料充填施設と該船舶間を必要に応じ繰り返し往復することにより、燃料を再充填して繰り返し搭載することで該船舶推進のためのエネルギーを効率よく確実に確保することが可能な利便性の高い船舶推進システムであって、
前記船舶に設けられ、回転駆動による駆動力を発生させる船舶側駆動部と、
前記船舶側駆動部で発生させた前記駆動力が伝達されて前記船舶に前記推進力を付与する船舶推進プロペラあるいはジェット推進ポンプと、を備え、
前記船舶側駆動部は、前記自動車に搭載された自動車側駆動源のエネルギーの付与、又は該自動車側駆動源の動力伝達によって、前記船舶推進プロペラあるいは前記ジェット推進ポンプを駆動させることを特徴とする船舶推進システム。
【請求項2】
前記自動車は燃料電池を備える燃料電池車で、前記自動車側駆動源のエネルギー源が燃料電池車搭載水素であり、該燃料電池によって発生した電力によって駆動される船舶推進システムであって、
前記船舶側駆動部は、
前記船舶推進プロペラを回転駆動させる船舶推進用モータと、
前記燃料電池から発生する前記電力が供給されて前記船舶推進用モータの回転駆動動作を制御する船舶推進用モータコントローラと、を備え、
前記船舶推進用モータは、前記燃料電池車に搭載されたモータコントローラを使用して直接駆動できるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の船舶推進システム。
【請求項3】
前記自動車は、蓄電池を有する電気自動車あるいはハイブリッド車、あるいはプラグインハイブリッド車であって、
前記船舶には船舶推進用モータと、該船舶推進用モータの回転駆動動作を制御する船舶推進用モータコントローラと、を備え、該船舶に搭載された電気自動車あるいはハイブリッド車、あるいはプラグインハイブリッド車の蓄電池に貯蔵された電気エネルギーを該船舶に供給することにより、該船舶を電動船として駆動することを特徴とする請求項1に記載の船舶推進システム。
【請求項4】
前記自動車と前記船舶推進用モータコントローラとの間に、料電池車から発生する電力、又は、電気自動車あるいはハイブリッド車、あるいはプラグインハイブリッド車搭載電力を電圧変換する補助電源となる補機用インバータが前記船舶に設けられることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の船舶推進システム。
【請求項5】
前記自動車と前記船舶推進用モータコントローラとの間に、料電池車から発生する電力、又は、電気自動車あるいはハイブリッド車、あるいはプラグインハイブリッド車搭載電力を直流から交流に変換するDC-ACインバータと、交流に変換された電力を直流に変換するAC-DCコンバータが更に設けられることを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の船舶推進システム。
【請求項6】
前記船舶は、
前記燃料電池車から供給される前記電力を蓄電する蓄電池と、
前記蓄電池の電圧を検知する蓄電池電圧検知部と、
前記蓄電池電圧検知部の検知結果に基づいて操作される充電制御用の継電装置と、を更に備え、
前記燃料電池車による充電後は、前記蓄電池に蓄電された電力でも前記船舶推進用モータによる船舶推進が可能に構成されることを特徴とする請求項2に記載の船舶推進システム。
【請求項7】
前記自動車は、燃料電池車あるいは天然ガス車あるいはLPG車であり、
前記船舶側駆動部は、前記船舶に搭載される内燃機関エンジンであり、該内燃機関エンジンは、燃料電池車搭載水素あるいは天然ガス車搭載天然ガスあるいはLPG車搭載LPGを燃料として、前記船舶推進プロペラあるいは前記ジェット推進ポンプを駆動させることを特徴とする請求項1に記載の船舶推進システム。
【請求項8】
前記内燃機関エンジンは水素ないし天然ガスないしLPGを燃料とする気体エンジンであり、前記水素ないし前記天然ガスないし前記LPGに前記船舶に搭載された液体燃料を混合させて燃焼運転させることを特徴とする請求項7に記載の船舶推進システム。
【請求項9】
前記自動車は、前記自動車側駆動源が電動機である電気自動車あるいはハイブリッド車、あるいはプラグインハイブリッド車、あるいは燃料電池車であり、
前記船舶側駆動部は、
前記船舶推進プロペラを回転駆動させる船舶推進用モータと、
前記電気自動車あるいはハイブリッド車、あるいはプラグインハイブリッド車、あるいは燃料電池車に貯蔵された電力が供給されて前記船舶推進用モータの回転駆動動作を制御する船舶推進用モータコントローラと、を備え、
前記船舶推進用モータコントローラは、前記電気自動車あるいはハイブリッド車、あるいはプラグインハイブリッド車、あるいは燃料電池車において発生ないし搭載された電気エネルギー源を、DCとして直接、ないしDCからACに変換して、接続されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の船舶推進システム。
【請求項10】
前記自動車は、前記自動車側駆動源が電動機又は液体燃料エンジンの何れかの自動車であり、
前記船舶側駆動部は、前記自動車のタイヤの回転力を前記船舶推進プロペラに直接伝達する動力伝達機構であることを特徴とする請求項1に記載の船舶推進システム。
【請求項11】
前記船舶には、エンジンと操舵を遠隔操作する遠隔操作機能が更に設けられ、これら該遠隔操作機能による操舵を操作する操作部が前記自動車に搭載可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の船舶推進システム。
【請求項12】
船舶にモータ駆動の自動車を搭載し、該自動車に搭載された燃料を利用して、該船舶に推進力を付与する船舶推進システムであって、
前記船舶に設けられ、回転駆動による駆動力を発生させる船舶側駆動部と、
前記船舶側駆動部で発生させた前記駆動力が伝達されて前記船舶に前記推進力を付与する船舶推進プロペラと、
前記船舶推進プロペラを回転駆動させる船舶推進用モータと、
料電池から発生する力が供給されて前記船舶推進用モータの回転駆動動作を制御する船舶推進用モータコントローラと、
を備え、
前記船舶側駆動部は、前記自動車に搭載された自動車側駆動源のエネルギーの付与、又は該自動車側駆動源の動力伝達によって、前記船舶推進プロペラを駆動させ、
前記船舶推進用モータは、前記自動車に搭載されたモータコントローラを使用して直接駆動できるように構成されていることを特徴とする船舶推進システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池車等の自動車が搭載される船舶に推進力を付与する船舶推進システムに関する。本出願は、日本国において2018年3月19日に出願された日本特許出願番号特願2018-051711を基礎として優先権を主張するものであり、この出願は参照されることにより、本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
水素を燃料とする燃料電池システムは、推進力を確保するための燃焼により排気ガスとして水蒸気のみ発生させ、機械的振動も殆ど見られないことから、極めて環境に優しい電力発生システムとして普及しており、自動車の駆動源として燃料電池を搭載した燃料電池車が開発されている。近年、船舶においても、排出ガスの規制が行われ、かつ、環境に考慮した優れた燃料を用いた船舶推進システムが求められているので、船舶の動力源として燃料電池を使用した燃料電池船の開発が進められている。
【0003】
特許文献1には、燃料電池を電力源として航行する燃料電池船の船体内の居住性を向上させるために、燃料電池に供給する燃料を貯留する燃料タンクを船体外に配置したものが開示されている。一方、特許文献2には、モータの駆動音が騒音として船体内に聞こえることを抑制するために、燃料電池に供給する燃料を貯留する燃料タンクがモータを覆うように並べて配置されるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-196410号公報
【文献】特開2015-196411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水素は、気体状態では、700気圧に圧縮しても、その体積当たりのエネルギーが軽油等の石油に比べ小さい。このため、水素を燃料とする燃料電池システムを船舶に適用して普及させるためには、高気圧の水素供給ステーションを船舶のある岸壁に多数設置する必要があり、その設備の設置や運用維持に多額のコストがかかる。一方、固体や液体の水素を燃料として用いる場合には、比較的容易に燃料として運搬貯蔵が可能であるが、気体水素に戻すための方式や容器のコストの点で技術的にも経済的にも確立されておらず、多くの課題を抱えている。
【0006】
また、燃料として気体水素を充填した高圧ボンベを船舶に積み込む方法による場合は、水中落下した際のリスクが懸念され、水素を燃料とする船舶推進システムにおいては、船舶への水素の供給や運搬が、普及を妨げる大きな要因になっていた。このように、船舶への高利便性の水素供給手段の実現が難しい現状では、燃料電池搭載の燃料電池船の普及が困難であると言える。すなわち、水素を燃料とする船舶推進システムにおいては、船舶への水素の供給や運搬に関して、低コストで利便性が高いものが望まれていた。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、船舶への水素等のエネルギー源の供給や運搬を低コストで行った上で利便性を高めることの可能な、新規かつ優れた船舶推進システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、船舶に自動車を搭載し、該自動車に搭載された燃料を利用して、該船舶に推進力を付与する船舶推進システムであって、前記船舶に設けられ、回転駆動による駆動力を発生させる船舶側駆動部と、前記船舶側駆動部で発生させた前記駆動力が伝達されて前記船舶に前記推進力を付与する船舶推進プロペラあるいはジェット推進ポンプと、を備え、前記船舶側駆動部は、前記自動車に搭載された自動車側駆動源のエネルギーの付与、又は該自動車側駆動源の動力伝達によって、前記船舶推進プロペラを駆動させることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様によれば、自動車に搭載された自動車側駆動源のエネルギーの付与、又は自動車側駆動源の動力の伝達によって、船舶に搭載した船舶側駆動部を介して船舶推進プロペラあるいはジェット推進ポンプを駆動させるので、岸壁等において、船舶に直接水素ガスを充填させる作業や水素ガスを充填させた水素タンクの搭載作業等が不要になる。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記自動車は、燃料電池を備える燃料電池車であって、前記燃料電池車を駆動するエネルギー源が燃料電池車搭載水素である。前記船舶側駆動部には、前記燃料電池車の燃料電池から発生する前記電力が供給され、前記船舶は、船舶推進プロペラを回転駆動させる船舶推進用モータと、前記船舶推進用モータの回転駆動動作を制御する船舶推進用モータコントローラと、を備え、前記船舶推進用モータコントローラは、前記燃料電池車に搭載された前記燃料電池で発生した電気エネルギーを直接使用するように構成されていることとしてもよい。
【0011】
このようにすれば、船舶に搭載する燃料電池車の燃料電池から発生する電力をエネルギー源として、船舶を推進させることができるので、船舶に直接水素ガスを充填させる作業や水素ガスを充填させた水素タンクの搭載作業等が不要になる。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記自動車は、蓄電池を有する電気自動車あるいはハイブリッド車、あるいはプラグインハイブリッド車であって、前記船舶には船舶推進用モータと、該船舶推進用モータの回転駆動動作を制御する船舶推進用モータコントローラと、を備え、該船舶に搭載された電気自動車あるいはハイブリッド車、あるいはプラグインハイブリッド車の蓄電池に貯蔵された電気エネルギーを該船舶に供給することにより、該船舶を電動船として駆動するようにしてもよい。
【0013】
このようにすれば、船舶に搭載する電気自動車あるいはハイブリッド車、あるいはプラグインハイブリッド車の蓄電池から発生する電力をエネルギー源として、船舶を推進させることができるので、岸壁で充電する設備がなくても船舶の推進に必要な多くの電力を確実に確保することができる。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記自動車と前記船舶推進用モータコントローラとの間に、前記燃料電池車から発生する電力、又は、電気自動車あるいはハイブリッド車、あるいはプラグインハイブリッド車搭載電力を電圧変換する補助電源となる補機用インバータが前記船舶に設けられることとしてもよい。
【0015】
このようにすれば、自動車に搭載された燃料電池等から発生した高電圧の電力から、船舶制御用の低電圧の電力に変換して使用することができる。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記自動車と前記船舶推進用モータコントローラとの間に、前記燃料電池車から発生する電力、又は、電気自動車あるいはハイブリッド車、あるいはプラグインハイブリッド車搭載電力を直流から交流に変換するDC-ACインバータと、交流に変換された電力を直流に変換するAC-DCコンバータが更に設けられることとしてもよい。
【0017】
このようにすれば、船舶に搭載する燃料電池車等を改造せずに、電気自動車の直流電力から家庭用交流電力を取り出すV2Hシステム電源等の装置を使用して、容易に該電動船舶を推進させることができる。
【0018】
また、本発明の一態様では、前記船舶は、前記燃料電池車から供給される前記電力を蓄電する蓄電池と、前記蓄電池の電圧を検知する蓄電池電圧検知部と、前記蓄電池電圧検知部の検知結果に基づいて操作される充電制御用の継電装置と、を更に備え、前記燃料電池車による充電後は、前記蓄電池に蓄電された電力でも前記船舶推進用モータによる船舶推進が可能に構成されることとしてもよい。
【0019】
このようにすれば、船舶に搭載した蓄電池も電源として使用できるので、船舶側駆動部へのより安定した電力供給を可能にした上で、燃料電池車の繰り返しの搭載を介して蓄電池に充電させることによって、船舶の長時間推進に必要な多くの電力を確実に確保することができる。
【0020】
また、本発明の一態様では、前記自動車は、燃料電池車あるいは天然ガス車あるいはLPG車であり、前記船舶側駆動部は、前記船舶に搭載される内燃機関エンジンであり、該内燃機関エンジンは、燃料電池車搭載水素あるいは天然ガス車搭載天然ガスあるいはLPG車搭載LPGを燃料として、前記船舶推進プロペラあるいは前記ジェット推進ポンプを駆動させることとしてもよい。
【0021】
このようにすれば、船舶に搭載する車両の燃料をエネルギー源として船舶を推進させることができるので、船舶に対して充填が容易ではない水素、天然ガス、LPG燃料を船舶搭載燃料タンクに充填させる作業や船舶搭載燃料タンク自体搭載が不要になる。
【0022】
また、本発明の一態様では、前記内燃機関エンジンは水素、天然ガス、LPGを燃料とする気体(ガス)エンジンであり、水素、天然ガス、LPGに前記船舶に搭載されたガソリン、軽油、重油等の液体燃料を混合させて使用することとしてもよい。
【0023】
このようにすれば、環境負荷の小さいガス燃料エンジンを搭載した船舶推進システムを、充填の複雑な作業無しで構成することができる。
【0024】
また、本発明の一態様では、前記自動車は、前記自動車側駆動源が電動機である電気自動車あるいはハイブリッド車、あるいはプラグインハイブリッド車、あるいは燃料電池車であり、前記船舶側駆動部は、前記船舶推進プロペラを回転駆動させる船舶推進用モータと、前記電気自動車あるいはハイブリッド車、あるいはプラグインハイブリッド車、あるいは燃料電池車に貯蔵された電力が供給されて前記船舶推進用モータの回転駆動動作を制御する船舶推進用モータコントローラと、を備え、前記船舶推進用モータコントローラは、前記電気自動車あるいはハイブリッド車、あるいはプラグインハイブリッド車、あるいは燃料電池車において発生ないし搭載された電気エネルギー源を、DCとして直接、ないしDCからACに変換して、接続されるように構成されていることとしてもよい。
【0025】
このようにすれば、電気自動車あるいはハイブリッド車、あるいはプラグインハイブリッド車、あるいは燃料電池車に搭載されたエネルギー源となる蓄電池の電力を直接使用することによって、船舶の推進に必要な電力を確実に確保することができる。
【0026】
また、本発明の一態様では、前記自動車は、前記自動車側駆動源が電動機又は液体燃料エンジンの何れかの自動車であり、前記船舶側駆動部は、前記自動車のタイヤの回転力を前記船舶推進プロペラに直接伝達する動力伝達機構であることとしてもよい。
【0027】
このようにすれば、動力伝達機構を介して船舶に搭載した自動車のタイヤの回転力で船舶の船舶推進プロペラを直接回転駆動できるので、船舶の推進力を確保できる。
【0028】
また、本発明の一態様では、前記船舶には、エンジンと操舵を遠隔操作する遠隔操作機能が更に設けられ、該遠隔操作機能による操舵を操作する操作部が前記自動車に搭載可能に構成されていることとしてもよい。
【0029】
このようにすれば、船舶に搭載された自動車の運転室を、船舶の操舵室とすることが出来、該遠隔操作部によって、船舶のエンジンと操舵を遠隔操作できるので、搭載させた燃料電池車自体のスペースや車内のエアコンやナビゲーション設備等の有効活用が可能になる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように本発明によれば、船舶に搭載した燃料電池車等の自動車のエネルギー源や自動車側駆動源で船舶を直接推進させることができるので、船舶に天然ガス、LPG、水素ガスを充填させる設備や作業や当該ガスを充填させたタンクの搭載作業が不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1A乃至図1Dは、本発明の一実施形態に係る船舶推進システムと車両の搭載方法の概略構成を示す説明図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る船舶推進システムの機能構成を示すブロック図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る船舶推進システムの一変形例の機能構成を示すブロック図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る船舶推進システムの他の変形例の機能構成を示すブロック図である。
図5図5は、本発明の他の実施形態に係る船舶推進システムの機能構成を示すブロック図である。
図6図6Aは、本発明の更に他の実施形態に係る船舶推進システムの概略構成を示す平面図であり、図6Bは、本発明の更に他の実施形態に係る船舶推進システムの概略構成を示す正面図である。
図7図7は、本発明の更に他の実施形態に係る船舶推進システムの機能構成を示すブロック図である。
図8図8は、本発明の更に他の実施形態に係る船舶推進システムの機能構成を示すブロック図である。
図9図9は、本発明の更に他の実施形態に係る船舶推進システムの機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0033】
まず、本発明の一実施形態に係る船舶推進システムの概略構成について、図面を使用しながら説明する。図1A乃至図1Dは、本発明の一実施形態に係る船舶推進システムと車両の搭載方法の概略構成を示す説明図である。
【0034】
本発明の一実施形態に係る船舶推進システム100は、燃料電池車ないし、天然ガス自動車、LPG車、あるいは後述する電気自動車120が搭載される船舶110に推進力を付与するに際して、船舶110に搭載した燃料電池車ないし、天然ガス自動車、LPG車、あるいは後述する電気自動車120のエネルギー源を船舶110の推進力の付与に使用することを特徴とする。すなわち、本発明の一実施形態に係る船舶推進システム100は、陸上において、水素充填ないし天然ガス、LPGを充填された車両120を船舶110に搭載し、その車両120搭載の水素によって発生する電力あるいは天然ガスないしLPG燃料を船舶110の推進力として使用するシステムである。あるいは、船舶110にガソリン、軽油、重油等液体燃料用の内燃機関エンジンを搭載し、該車両に水素ないし天然ガスないしLPGを搭載し、該液体燃料と混合ないし、ガス燃料単独で内燃機関を運転することによって、該船舶を駆動するシステムである。本実施形態では、図1A及び図1Bに示すように、船舶110の長さ方向(縦方向)に沿って該車両120を船舶110に搭載させるか、図1C及び図1Dに示すように、船舶110の幅方向(横方向)に沿って該車両120を船舶110に搭載させる。なお、ここに説明した車両搭載方法は例示であって、その実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。
【0035】
本実施形態では、船舶110への燃料電池車ないし、天然ガス自動車、LPG車120の搭載は、燃料電池車ないし、天然ガス自動車、LPG車120の自走、又はクレーンによる該車両120の移動によって、任意の方向に該車両120を船舶110の船体に搭載する。船体が比較的大きい場合には、燃料電池車ないし、天然ガス自動車、LPG車120の自走により燃料電池車120を船舶110に搭載する。一方、船体が比較的小さい場合には、燃料電池車ないし、天然ガス自動車、LPG車120に一方向から乗船すると、船舶110の船体の反対側が浮き上がって危険が伴う場合があるので、かかる危険を避けるため、クレーンで直接、燃料電池車120の全荷重を船舶110の甲板に乗せるようにしている。
【0036】
次に、本発明の一実施形態に係る船舶推進システムの機能構成について、図面を使用しながら説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る船舶推進システムの機能構成を示すブロック図である。なお、図2は燃料電池車の場合を例に説明している。
【0037】
本発明の一実施形態に係る船舶推進システム100は、燃料電池車120が搭載される船舶110に推進力を付与するに際して、船舶110に搭載した燃料電池車120の燃料電池121から起電する電力をエネルギー源として、船舶110の推進力の付与に使用することを特徴とする。すなわち、本実施形態では、水素を陸上の水素供給ステーションにおいて充填した燃料電池車120そのものを船舶110に搭載して、燃料電池車120に搭載された水素によって燃料電池121から起電する電力によって船舶110の船上で電力を発生させ、船舶110の駆動電力として使用しながら、船舶110側に設けられる補機用インバータ119を介して制御電源等の補助電力を賄うことを特徴とする。
【0038】
船舶110には、船舶側駆動部112で発生させた駆動力が伝達されて回転駆動することによって船舶110に推進力を付与する船舶推進プロペラ111と、回転駆動による駆動力を発生させて船舶推進プロペラ111に回転駆動力を付与する船舶側駆動部112が設けられている。船舶推進プロペラの代わりにジェット推進ポンプを使用してもよい。本実施形態では、船舶推進システム100は、燃料電池車120搭載の水素燃料によって燃料電池121で発生する電力によって船舶110の推進力が付与される。
【0039】
このため、船舶側駆動部112には、船舶推進プロペラ111を回転駆動させる船舶推進用モータ113と、燃料電池121から発生する電力が供給されて船舶推進用モータ113の回転駆動動作を制御する船舶推進用モータコントローラ114が設けられている。これによって、船舶推進用モータコントローラ114は、燃料電池車120に搭載された燃料電池121から発生する電力により作動するようになる。なお、本実施形態では、船舶110と燃料電池車120の電気的接続に関しては、例えば、燃料電池車120ないし再該船舶に設けられる不図示のインバータによる直流交流電力変換器を介した接続用端子から船舶110への給電を行うか、燃料電池車120に搭載された燃料電池121から直接直流電力を取るための不図示の端子が船舶110に設けられることによって行われる。
【0040】
船舶110に搭載される燃料電池車120には、図2に示すように、燃料電池121、水素タンク122、水素注入口123、蓄電池124、モータコントローラ125、及びモータ126が設けられている。燃料電池車120では、水素注入口123から水素タンク122に水素を700気圧程度の高圧に圧縮された状態になるように水素供給ステーションで充填される。
【0041】
燃料電池車120は、通常、搭載された燃料電池121が水素タンク122から供給される水素を空気中の酸素と反応させることによって電力を発生させ、その電力をモータコントローラ125に供給することによって、モータコントローラ125が燃料電池車120の自動車側駆動源となるモータ126を駆動させて車輪で走行する。本発明の一実施形態に係る船舶推進システム100が適用される燃料電池車120が搭載された船舶110の動作としては、燃料電池121で発生した電力を船舶110に搭載された船舶推進用モータコントローラ114と船舶推進用モータ113に供給して、船舶推進プロペラ111の回転駆動によって燃料電池船として航行する。なお、船舶110に搭載される電力推進に使用される船舶推進用モータコントローラ114や船舶推進用モータ113は、それぞれ複数個搭載してもよい。また、船舶推進プロペラの代わりにジェット推進ポンプを使用してもよい。
【0042】
また、本実施形態では、燃料電池121で発生させた電力の一部は、車内に搭載した蓄電池124に蓄電され、当該蓄電池124に蓄電された電力も船舶110に搭載された船舶推進用モータコントローラ114と船舶推進用モータ113に供給して、船舶推進プロペラ111の駆動に使用することが出来る。すなわち、陸上を走行する燃料電池車120では、モータ126の駆動のための電力が搭載された燃料電池121によって発生し、モータ126を駆動すると共に、該燃料電池車に搭載された蓄電池124にその一部のエネルギーを貯蔵される。そして、蓄電池124に貯蔵された電気エネルギーも船舶110の推進に利用できるようになっている。なお、水素タンク122から燃料電池121との間には、水素タンク122内の高圧の水素を減圧するための不図示の減圧器が設けられている。
【0043】
また、本実施形態では、例えば、燃料電池車120に搭載された燃料電池121から発生した比較的高電圧大電力を使用する自動車駆動用電力から、船舶110内のラジオや船舶方向変化用スラスター等に使用する比較的低電圧な電力に変換するために、燃料電池121と船舶推進用モータコントローラ114との間には、燃料電池121から発生する電力を電圧変換する補助電源となる補機用インバータ119が設けられている。すなわち、船舶110の駆動電力以外の必要電力を使用するために、船舶用補助電源が必要となる場合があるので、本実施形態では、燃料電池121と船舶推進用モータコントローラ114との間に、補機用インバータ119が設けられている。
【0044】
このように、本実施形態では、燃料電池車120を搭載した船舶110の航行時には、燃料電池車120に搭載された燃料電池121によって発電を行うと共に、燃料電池車120に搭載された蓄電池124に蓄電された電気エネルギーによる充放電補助を受けることも可能である。そして、船舶110に搭載された船舶推進用モータコントローラ114を介して電動の船舶推進用モータ113を駆動し、船舶推進プロペラ111によって推進するようになる。
【0045】
従来の燃料電池船は、岸壁における水素ガスの船舶へ供給のための高価な水素中移転ステーションの設置や、水素ガスタンクの危険な積み込み作業等が必要であった。本発明によれば、燃料電池船に水素燃料を確保するための、船舶110に水素ガスを充填させる作業や水素を充填させた燃料タンクとなる水素タンクの搭載作業が不要になるので、船舶110への水素の供給や運搬を低コストで行った上で利便性を高めることが実現される。また、本実施形態では、船舶110の航行によって水素がほぼ使用され尽くした場合には、燃料電池車120を下船させて、陸上の水素充填ステーションで水素充填をした後に、再び当該燃料電池車120を船舶110に上船させて、船舶110の推進駆動を行うことを繰り返し行えるようになる。本発明によって、水素のかわりに該船舶が天然ガスやLPGで航走する場合も同様の利点がもたらされる。
【0046】
また、本発明の一実施形態に係る船舶推進システム100では、自動車120として蓄電池を有する電気自動車あるいはハイブリッド車、あるいはプラグインハイブリッド車を用いることも可能である。この場合も、上述したように蓄電池124に蓄電された電力を船舶110に搭載された船舶推進用モータコントローラ114と船舶推進用モータ113に供給して、船舶推進プロペラ111の駆動に使用することが出来る。なお、電気自動車あるいはハイブリッド車、あるいはプラグインハイブリッド車の場合には、図2において、燃料電池121、水素タンク122、水素注入口123は、不要であったり、ガソリン注入口、ガソリンタンク、ガソリンエンジンによる充電機構などに置き換えられることは言うまでもない。
【0047】
なお、本発明の一実施形態に係る船舶推進システム100は、燃料電池車120に搭載された燃料電池121と蓄電池124以外に、船舶110に更に蓄電池を搭載して、より安定な船舶推進を実現可能としてもよい。以下、本発明の一実施形態に係る船舶推進システム100の一変形例について、図面を使用しながら説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る船舶推進システムの一変形例の機能構成を示すブロック図である。
【0048】
本実施形態の一変形例に係る船舶推進システム200では、図3に示すように、船舶210には、燃料電池221から供給される電力を蓄電する蓄電池となる船舶搭載蓄電池215と、当該船舶搭載蓄電池215の電圧を検知する蓄電池電圧検知部216と、蓄電池電圧検知部216の検知結果に基づいて操作される継電装置217が設けられている。このため、船舶推進用モータコントローラ214は、船舶搭載蓄電池215に蓄電された電力でも作動できるようになっている。このため、船舶210に搭載した蓄電池215も電源として使用できるので、船舶側駆動部212へのより安定した電力供給が可能になる。
【0049】
また、本実施形態では、船舶推進用モータコントローラ214を使用せずに、当該燃料電池車220が具備するモータ226の駆動用のモータコントローラ225を使用して、船舶推進用モータ213を駆動しても良い。その際に、船舶速度制御は、燃料電池車220が具備する速度制御用アクセレレータ228を操作して行っても良い。
【0050】
船舶210に搭載の船舶推進用モータコントローラ214を使用する際には、燃料電池車220に備わる不図示の自動充電量制御装置によって、燃料電池車220に搭載の蓄電池224と船舶210に搭載の蓄電池215に対して、航行中又は停泊中に任意に充電することが出来るようになる。その際に、燃料電池車220に搭載の蓄電池224、及び船舶210に搭載の蓄電池215の充電が完了した場合に、充電回路を遮断して、過充電にならないようにして蓄電池215を二重に保護するために、蓄電池電圧検知部216とその電圧によって操作される充電制御用の継電装置217を設置しても良い。
【0051】
なお、本実施形態の一変形例に係る船舶推進システム200に備わる船舶推進プロペラ211、船舶側駆動部212、補機用インバータ219、及び燃料電池車220に備わる他の構成要素の構成及び作用は、本発明の一実施形態に係る船舶推進システム100に備わるものと同様なので、その説明については、省略する。
【0052】
また、本実施形態の一変形例に係る船舶推進システム200では、図4に示すように、燃料電池車220の燃料電池221と船舶推進用モータコントローラ214との間に、燃料電池221から発生する電力を直流から交流に変換するDC-ACインバータ218と、交流に変換された電力を直流に変換するAC-DCコンバータ218aが更に設けられるようにしてもよい。このように構成することによって、燃料電池車220から家庭用AC電力を得るためのV2Hシステム電源等の汎用インバータ装置を使用することが出来るようになる。燃料電池車220に搭載された燃料電池221から出力される、例えば200V以上の高電圧の直流を例えば200Vの交流に変換してから、再度、船上で直流に変換するので、船舶210に搭載する燃料電池車220を改造せずに、容易に船舶210を推進させることができる。なお、該船舶は、従来電動船で行われている不図示の陸上の系統電力等からの外部充電が可能であることは言うまでもない。DC-ACインバータ218とAC-DCコンバータ218aは、船舶側と車両側のいずれに設けられていてもよい。すなわち、DC-ACインバータ218とAC-DCコンバータ218aの両方が船舶側に設けられている場合、DC-ACインバータ218は車両側に設けられAC-DCコンバータ218aは船舶側に設けられている場合、DC-ACインバータ218とAC-DCコンバータ218aの両方が車両側に設けられている場合のいずれでもよい。
【0053】
さらに、本発明の一実施形態に係る船舶推進システム100は、船舶110に搭載する燃料電池車120の燃料電池121から発生する電力をエネルギー源として船舶110を推進させているが、当該燃料電池121に供給される水素ガスを直接エネルギー源として船舶110を推進させるようにしてもよい。また、燃料電池車100のかわりに、天然ガス車、LPG車を使用してもよい。以下、本発明の他の実施形態に係る船舶推進システムについて、図面を使用しながら説明する。図5は、本発明の他の実施形態に係る船舶推進システムの機能構成を示すブロック図である。なお、図5は、燃料電池車の場合を示したものであるが、天然ガス車、LPG車の場合は、図5中の水素タンク322、水素注入口323は、天然ガスタンク、天然ガス注入口、及び、LPGタンク、LPG注入口に置き換えられる。また、燃料電池車320の代わりに天然ガス車ないしLPG車が搭載されたシステムでは、燃料電池車固有の燃料電池321、蓄電池324、モータコントローラ325、モータ326が使用されていないことは言うまでもない。
【0054】
本発明の他の実施形態に係る船舶推進システム300は、燃料電池車320が搭載される船舶310に推進力を付与するに際して、船舶310に搭載した燃料電池車320の燃料電池321に供給される水素をエネルギー源として、船舶310の推進力の付与に使用することを特徴とする。すなわち、本実施形態では、陸上の燃料供給ステーションにおいて充填した燃料電池車320搭載の水素燃料そのものを、直接内燃機関エンジン312の燃料として供給することによって、内燃機関エンジン312を運転させ、その動力で船舶推進プロペラ311を駆動させて、船舶310に推進力を与えていることを特徴とする。その際、燃料電池車320の代わりに天然ガス車ないしLPG車を該船舶に搭載し、これら気体燃料を内燃機関エンジン312に供給し、その動力で推進してもよい。内燃機関エンジン312としては、例えば、水素燃料エンジンであり、このときは燃料は水素となるし、天然ガス車では天然ガスエンジン、LPG車ではLPGエンジンとなる。
【0055】
また、本実施形態では、内燃機関エンジン312に発電機318が機械的に接続されているので、内燃機関エンジン312の駆動力を活用して、発電機318で電力を発生させられるようになっている。すなわち、発電機318は、燃料電池車320が搭載した該気体燃料によって、船舶310に搭載した内燃機関エンジン312によって発電するシステムを構成している。このように、発電機318で発生させた電力は、船舶310内の各種装置の電力として使用される。
【0056】
このように、本実施形態では、船舶310に搭載する燃料電池車320の燃料電池321に供給される燃料(水素ガス、天然ガス、LPG)をエネルギー源として船舶310を推進させることができるので、船舶310に燃料(水素ガス、天然ガス、LPG)を充填させる作業や燃料を充填させた該船舶への単独の燃料タンクの搭載や充填設備が不要になる。また、本実施形態では、内燃機関エンジン312は、燃料に船舶310に搭載された液体燃料タンク313から切替バルブ314を介してガソリン、軽油、重油等の石油燃料からなる液体燃料を混合させて、当該内燃機関エンジン312の燃料としてもよい。
【0057】
すなわち、本実施形態では、船舶310に搭載された燃料電池車320の燃料(水素ガス、天然ガス、LPG)を利用して、ガソリン、軽油、重油等の石油燃料との混合、又は該気体燃料単独で運転される内燃機関エンジン312により、船舶推進プロペラ311を直接駆動することにより航行できるようになる。換言すると、陸上の燃料供給ステーションにおいて燃料(ガソリン、軽油、重油等)を充填した燃料電池車320を船舶310に搭載し、その充填された燃料を利用して、軽油等の石油燃料と混合して、又は水素ガス、天然ガス、LPG単独で燃料として使用することによって、内燃機関エンジン312を運転する。そして、その動力によって船舶推進プロペラ311を直接駆動することによって、船舶310を航行できる。なお、本実施形態に係る船舶推進システム300に備わる燃料電池車320に備わる構成要素の構成及び作用は、本発明の一実施形態に係る船舶推進システム100に備わるものと同様なので、その説明については、省略する。
【0058】
また、図6A及び図6Bに示すように、船舶推進システム400は、船舶410にオートパイロット419が更に設けられ、当該オートパイロット419の操舵を操作する操作部416が燃料電池車ないし天然ガス車ないしLPG車、あるいは電気自動車420に搭載可能に構成されていることとしてもよい。このようにすれば、該車両の空間を有効に使用することができるとともに、該車両搭載設備の併用が可能になる。
【0059】
本実施形態では、図6A及び図6Bに示すように、船舶410の前方側に燃料電池車420を搭載して、燃料電池車420の後方に船舶推進プロペラ411を駆動する船舶推進用モータ413と船舶推進用モータコントローラ414、船舶搭載蓄電池415、補助発電機418、操舵制御部417、及び舵となるオートパイロット419がそれぞれ設けられている。このような構成とすることによって、船舶410のエンジンと操舵を遠隔操作する遠隔操作機能を有する操作部416を燃料電池車420に乗せて、操舵操作を燃料電池車420の車内から行えるようになる。なお、ここに説明した車両搭載方法は例示であって、その実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。
【0060】
このようにすることによって、燃料電池車420自体のスペースを船舶410の乗船部分にすることができる。また、燃料電池車420内は、雨天時でも車内に備え付けのワイパーやデフロスタ、ナビゲーション設備等を使用できるので、船舶410での操舵が容易になる。さらに、燃料電池車420の空調設備を使用して、より快適な環境下での運転が可能になる。
【0061】
すなわち、燃料電池車等の搭載車両420に搭載された船舶410のエンジンと操舵を遠隔操作する遠隔操作機能を有する操作部416によって、船舶410のオートパイロット419を操作できるので、搭載させた燃料電池車420自体のスペースや設備が有効活用されるようになる。なお、本実施形態における船舶410のエンジンと操舵を遠隔操作する操作部416に関しては、船舶410に搭載する自動車が燃料電池車以外の電気自動車や液体燃料エンジン自動車等にも適用可能である。
【0062】
さらに、前述した本発明の各実施形態に係る船舶推進システム100、200、300、400では、燃料電池車120、220、320、420の燃料タンクとなる水素タンク122、222、322に水素を充填させてから船舶110、210、310、410への燃料電池車120、220、320、420の搭載のサイクルを繰り返すことにより、燃料電池車120、220、320、420から船舶110、210、310、410にエネルギー源を供給することとしてもよい。また、燃料電池車の代わりに天然ガス車、LPG車を搭載し、同様の燃料供給サイクル運転を行ってもよい。
【0063】
例えば、市販の1台の燃料電池車では、水素5kgを搭載して約165kWhの熱量のエネルギーを有しており、燃料電池の効率が約50%とした場合に、約80kWhの電気エネルギーを搭載していることになる。このため、船舶の全長が約10mの場合では、燃料電池車の水素を1回充填することによって、8km/hで8時間程度の航行が可能となる。このため、更に長時間の航行を実現させるために、燃料電池車の繰り返しの搭載と船舶搭載電池215の容量増加を介して船舶の推進に必要なより多くの電力を確保することができる。
【0064】
すなわち、船舶に大容量の蓄電池を搭載し、船舶が停泊中に水素充填ステーションと当該船舶間の繰り返し往復により、船舶搭載の当該蓄電池を充電してもよい。また、該車両が天然ガス車の場合は天然ガス充填ステーションとの往復になり、LPG車の場合はLPG充填ステーションとの往復になることは言うまでもない。このとき、自動車から停泊中の船舶への充電においては、従来から行われている陸上からの系統電力による充電と同様、自動車は、船舶に搭載せず、船舶の近傍の陸上から充電を行ってもよい。また、車両によって必要量の充電が完了した後に船舶が出航する際には、当該燃料電池車ないし天然ガス車ないしLPG車が船舶に搭載されていない状態で航行してもよい。
【0065】
このように、船舶での航行用及び船舶補機電源用の電力として水素を使用した燃料電池車120、220、320、420は、下船して陸上の水素充填ステーションにて再度水素を充填して、再び船舶110、210、310、410に乗船して、燃料電池船としての電力を供給するように、燃料電池車の繰り返しの搭載を介して船舶の推進に必要な多くの電力を確実に確保することができる。該車両が天然ガス車やLPG車の場合も同様である。
【0066】
なお、前述した本発明の各実施形態に係る船舶推進システム100、200、300、400では、船舶110、210、310、410に搭載した燃料電池車120、220、320、420のエネルギー源を当該船舶の推進駆動に使用したものとなっているが、船舶に搭載する自動車は、燃料電池車に限定されず、電気自動車やハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、天然ガスエンジン、LPGエンジン、液体燃料エンジンで駆動する通常の自動車にも適用可能である。
【0067】
例えば、図7に示すように、本発明の更に他の実施形態に係る船舶推進システム500では、船舶510に搭載する自動車520は、自動車側駆動源が電動機となるモータ526である電気自動車としている。本実施形態では、電気自動車520に搭載した蓄電池524に蓄電された電力をそのまま船舶510の船舶側駆動部512の船舶推進用モータコントローラ514に供給することによって、船舶推進用モータ513を介して船舶推進プロペラ511を回転駆動させている。すなわち、本実施形態では、電気自動車520に搭載された蓄電池524をエネルギー源として直接使用することによって、船舶510の推進に必要な電力を確実に確保できるようになっている。なお、本実施形態では、船舶510側に設けられる補機用インバータ519を介して制御電源等の補助電力を賄うようになっている。
【0068】
また、本実施形態では、船舶510に大容量の蓄電池を搭載し、船舶510が停泊中に電気自動車充填ステーションと当該船舶間の繰り返し往復によって、船舶510に搭載された蓄電池を充電してもよい。このとき、電気自動車520から停泊中の船舶510への充電においては、電気自動車520は、船舶510に搭載せずに、その近傍の陸上から充電を行ってもよい。これによって、船舶停泊先に具備すべき急速充電ステーションが不必要となり、電動船舶の実用性が高められる。また、該車両によって必要量の充電が完了した後に、船舶510が出航する際には、当該電気自動車520が船舶510に搭載されていない状態で航行してもよい。
【0069】
また、図8に示すように、本発明の更に他の実施形態に係る船舶推進システム600は、電気自動車ないしハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車620の自動車側駆動源となるモータ626によって回転駆動するタイヤ628の回転力を利用して、船舶610の船舶推進プロペラ611を回転駆動させるようにしてもよい。具体的には、ギアやカム等から構成される動力伝達機構612が船舶推進プロペラ611を回転駆動させる船舶側駆動部として機能して、電気自動車620のタイヤ628の回転力を船舶推進プロペラ611に直接伝達することによって、船舶610の推進力を確保できる。
【0070】
さらに、図9に示すように、船舶推進システム700は、ガソリン等の液体燃料で駆動する液体燃料エンジン721を自動車側駆動源とする自動車720を船舶710に搭載した場合には、液体燃料エンジン721によって回転駆動するタイヤ728の回転力を利用して、船舶710の船舶推進プロペラ711を回転駆動させる。具体的には、ギアやカム等から構成される動力伝達機構712が船舶推進プロペラ711を回転駆動させる船舶側駆動部として機能して、自動車720のタイヤ728の回転力を船舶推進プロペラ711に直接伝達することによって、船舶710の推進力を確保できる。
【0071】
以上説明したように、本発明の各実施形態によれば、船舶に搭載した燃料電池車等の自動車の自動車側駆動源のエネルギー付与、又は当該自動車側駆動源の動力伝達によって船舶を推進させることができるので、船舶に水素ガスを充填させる作業や当該水素ガスを充填させた燃料タンクの搭載が不要になる。
【0072】
すなわち、本発明の各実施形態では、高圧水素タンク・燃料電池及び蓄電池を個別に搭載して燃料電池船を構成する従来の方式に比べて、高額な水素充填ステーションを個別船舶のために設置する必要がなくなる。すなわち、燃料電池車は、燃料電池船と比べて、格段に普及率が進展しているので、燃料電池車に充填したエネルギー源をそのまま用いることによって、従来の燃料電池船にはない高利便性を有した低コストな船舶推進システムを提供できるようになる。電気自動車ないしハイブリッド車、プラグインハイブリッド車の場合も同じ効用がもたらされる。
【0073】
このため、現時点では、普及が遅れている燃料電池船の画期的な普及を図り、排ガスを出さないクリーンな水素推進船を世界に提供することが可能になるので、結果として、船舶の快適性と高効率性を両立させた電動式の船舶を大量に普及させることが実現される。このように本発明の各実施形態に係る船舶推進システムは、船舶関連産業の今後の新たな発展に多大な貢献が期待できるので、極めて大きな工業的価値を有する。
【0074】
なお、上記のように本発明の各実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0075】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、船舶推進システムの構成、動作も本発明の各実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0076】
100、200、300、400、500、600、700 船舶推進システム、110、210、310、410、510、610、710 船舶、111、211、311、411、511、611、711 船舶推進プロペラ、112、212、512 船舶側駆動部、113、213 船舶推進用モータ、114、214、414、514 船舶推進用モータコントローラ、119、219、519 補機用インバータ、120、220、320、420 自動車(燃料電池車あるいは天然ガス車あるいはLPG車)、121、221、321 燃料電池、122、222、322 水素タンク、124、224、324、524、624 蓄電池、126、226、326、526、626 モータ、215、415 (船舶搭載)蓄電池、216 蓄電池電圧検知部、217 継電装置、218 DC-ACインバータ、218a AC-DCコンバータ、312 内燃機関エンジン、416 操作部、520、620 自動車(電気自動車)、612、712 動力伝達機構、720 自動車(液体燃料エンジン自動車)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9