(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】ランフラット空気入りタイヤの側部インサートの配合物
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20220106BHJP
C08K 5/01 20060101ALI20220106BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20220106BHJP
B60C 17/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K5/01
B60C1/00 Z
B60C17/00 B
(21)【出願番号】P 2020522013
(86)(22)【出願日】2018-10-19
(86)【国際出願番号】 EP2018078811
(87)【国際公開番号】W WO2019081386
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2020-05-08
(31)【優先権主張番号】102017000121310
(32)【優先日】2017-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
【住所又は居所原語表記】Kleine Kloosterstraat 10, B-1932 Zaventem (BE)
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】クラウディア アーリシチオ
(72)【発明者】
【氏名】ラファエレ ディ ロンザ
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-083639(JP,A)
【文献】特開2014-177518(JP,A)
【文献】特表2016-539213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
B60C 1/00- 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋後にエラストマーの化学的、物理的および機械的特性のすべてを想定できる、架橋可能な不飽和鎖ポリマーベースと、充填剤と、可塑剤と、硬化システムと、を含む、ランフラット空気入りタイヤの側部インサートの配合物であって;
前記可塑剤が、脂肪族鎖からなり、50℃~100℃の溶融温度を有
し、
前記可塑剤が、配合物中に、10~30phrの量で存在することを特徴とする、配合物。
【請求項2】
前記可塑剤が、69℃~90℃の溶融温度を有することを特徴とする、請求項1に記載の配合物。
【請求項3】
前記脂肪族鎖が、C30~C50の長さを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の配合物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の配合物を使用して得られる、ランフラット空気入りタイヤの側部インサート。
【請求項5】
請求項
4に記載の側部インサートを備える、ランフラット空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランフラット空気入りタイヤの側部インサートの配合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ランフラット空気入りタイヤは、パンクが発生した場合に、車を減速させてさらに数キロメートル走行させることができる空気入りタイヤである。この効果は、サイドウォールに配置された特別なゴム製インサートの存在により可能になる。ゴム製インサートは、特にパンクが発生した場合に最大の応力を受ける、空気入りタイヤの部品である。
【0003】
車両の持続可能性を確保し、かつパンクした空気入りタイヤの条件下で劣化率を低減するために、これらの側部インサートは、パンク条件下での動作中に発生する高温でインサートそれ自体に高い剛性を提供でき、かつ低ヒステリシスを提供できる材料で作られている。一般に、必要とされる剛性特性は、ランフラット動作条件下で生成される高温で剛性を維持できる、特定の成分の組み合わせによって確保される。
【0004】
当業者に知られているように、カーボンブラック含有量を減らし、その結果、ヒステリシスのレベルを低下させることにより、そのような配合物の持続時間を改善することができる。しかしながら、そのような解決策は必然的に剛性の点で悪化をもたらすであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、ランフラット配合物の寿命を改善する解決策、ひいては剛性レベルを低下させることなくヒステリシスレベルを低下させることを可能にする解決策が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者らは、ランフラット空気入りタイヤの側部インサートの配合物に、特定の範囲内の溶融温度を特徴とする可塑剤を使用すると、結果として、剛性レベルを悪化させることなくヒステリシスレベルを低下させることができることを知見した。
【0007】
本発明の対象は、ランフラット空気入りタイヤの側部インサートの配合物である。当該配合物は、架橋可能な不飽和鎖ポリマーベースと、充填剤と、可塑剤と、硬化システムと、を含む、配合物であって;可塑剤が、脂肪族鎖からなり、50℃~100℃の溶融点を有することを特徴とする。
【0008】
ここで、および以下において、「架橋可能な不飽和鎖ポリマーベース」という用語は、硫黄または過酸化物系との架橋(硬化)後にエラストマーに通常想定されるすべての化学的、物理的および機械的特性を想定できる、天然または合成の非架橋ポリマーをいう。
【0009】
ここで、および以下において、硬化システムという用語は、少なくとも硫黄および促進化合物を含む成分の複合体であって、配合物の調製時に最終ブレンド段階で添加され、配合物が硬化温度にさらされるとポリマーベースの硬化を促進することを目的とする複合体をいう。
【0010】
好ましくは、可塑剤が、60℃~90℃の溶融温度を有する。
【0011】
好ましくは、脂肪族鎖が、C30~C50の長さを有する。
【0012】
好ましくは、可塑剤が、配合物中に、10~30phrの量で存在する。
【0013】
本発明のさらなる対象は、本発明の対象の配合物を使用して得られる、ランフラット空気入りタイヤの側部インサートである。
【0014】
本発明のさらに別の対象は、本発明の配合物を使用して得られる側部インサートを備える、ランフラット空気入りタイヤである。
【0015】
本発明をよりよく理解するために、以下の実施例は、例示的かつ非限定的な目的で提供される。
【実施例】
【0016】
3つの比較例の配合物を(配合物A~C)と、本発明の教示による配合物(配合物D)と、を調製した。
【0017】
具体的には、配合物Aは、可塑剤を含まず、
配合物Bは、ヒステリシスを低減する目的でカーボンブラックの量が少ない、という点で配合物Aとは異なり、
配合物Cは、本発明により提供されるものよりも低い溶融温度を特徴とする可塑剤を含む、という点で配合物Aとは異なり、
配合物Dは、本発明により提供されるものと一致する溶融温度を有する可塑剤を含む、という点で配合物Aとは異なっている。
【0018】
実施例で説明する配合物は、以下に報告する手順に従って得た。
【0019】
-配合物の調製-
【0020】
[第1の混合ステップ]
混合を開始する前に、接線ロータを有し、内容積が230~270リットルのミキサーに、架橋可能なポリマーベース、カーボンブラック、フェノール酸、および提供される場合は可塑剤を充填した。これより、充填率が66~72%に達した。
【0021】
ミキサーを40~60回転/分の速度で操作し、140~160℃の温度に達したら、形成された混合物を取り出した。
【0022】
[第2の混合ステップ]
先のステップで得られた混合物を、40~60回転/分の速度で操作されるミキサーで再処理し、その後、130~150℃の温度に達したら取り出した。
【0023】
[第3の混合ステップ]
先のステップで得られた混合物に、加硫システム(硫黄、促進剤、酸化防止剤/オゾン劣化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸)を加え、充填率が63~67%に達した。
【0024】
ミキサーを20~40回転/分の速度で操作し、100~110℃の温度に達したら、形成された混合物を取り出した。
【0025】
表1に、6つの配合物のphr単位での組成を示す。
【0026】
【0027】
S-SBRは、平均分子量がそれぞれ800~1500×103および500~900×103であり、スチレン含有量が20~45%である、溶液重合プロセスによって得られるポリマーベースである。
【0028】
BRは、1,4シス含有量が少なくとも40%のブタジエンゴムである。
【0029】
可塑剤*は、(本発明により提供されるものよりも低い)約20℃の溶融温度を特徴とするペンタデカン酸メチルエステルである。
【0030】
可塑剤**は、(本発明により提供されるものと一致する)70℃の溶融温度を特徴とするC40鎖を有する飽和パラフィンである。
【0031】
TMQは、ポリ(1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン)の頭字語であり、酸化防止剤として使用されている。
【0032】
CBSは、ベンゾチアジル-シクロヘキシル-スルフェンアミドの頭字語であり、加硫促進剤として使用されている。
【0033】
強化用樹脂は、フェノール-ホルムアルデヒド系樹脂である。
【0034】
6PPDは、N-1,3-ジメチルブチル-N’-フェニル-パラフェニレンジアミンの頭字語であり、酸化防止剤として使用されている。
【0035】
上述の配合物を、その剛性およびヒステリシス特性を評価するために試験した。当業者に知られているように、弾性率E’(30℃)の測定は剛性の評価を提供し、tanδ(200℃)の測定はヒステリシスの評価を提供する。弾性率E’(30℃)およびtanδ(200℃)の値は、ISO4664規格に従って取得した。
【0036】
表2は、比較例の配合物Aに対する指数で示された剛性およびヒステリシスの結果の一覧である。具体的には、より高い値は、より高い剛性およびより低いヒステリシスに関連している。
【0037】
【0038】
表2に列挙されている値から、カーボンブラックの量の削減(配合物B)、および本発明によって提供されるものとは異なる溶融温度を特徴とする可塑剤の使用(配合物C)は、ヒステリシスに所望の低減を生じさせたとしても、望ましくない剛性の低下を引き起こすことは明らかである。
【0039】
対照的に、本発明に従う範囲内の溶融温度を特徴とする可塑剤の使用(配合物D)は、ヒステリシス値の低減を、これが剛性レベルの低下に反映されることなく、確実にすることができる。