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特許6994114慣用の廃棄物燃焼においてエネルギを生成する設備および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】慣用の廃棄物燃焼においてエネルギを生成する設備および方法
(51)【国際特許分類】
   F01K 3/18 20060101AFI20220106BHJP
   F01K 25/10 20060101ALI20220106BHJP
   F23G 5/46 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
F01K3/18 ZAB
F01K25/10 R
F23G5/46 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020528942
(86)(22)【出願日】2018-11-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 DE2018100961
(87)【国際公開番号】W WO2019105511
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-06-26
(31)【優先権主張番号】102017010984.2
(32)【優先日】2017-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516351681
【氏名又は名称】シュタインミュラー バブコック インヴァイアランメント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Steinmueller Babcock Environment GmbH
【住所又は居所原語表記】Fabrikstrasse 1, D-51643 Gummersbach, Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 友子
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ツォアバッハ・インゴ
(72)【発明者】
【氏名】ミュック・ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ベア・マルティン
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-190324(JP,A)
【文献】特開2013-124568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 3/18
F01K 25/10
F23G 5/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼火格子を有する燃焼室(1)と、排ガス浄化設備(3)と、蒸発器(2,13,14)と、蒸気ドラム(15,16)と、タービン(4,38)と、発電機(5,39)と、凝縮器(12)と、配管とから構成された、慣用の廃棄物利用においてエネルギを生成する設備において、
発器(2)は、少なくとも、ND蒸発器(13)とHD蒸発器(14)から構成されていて、各々の蒸発器(13,14)は、配管を介して、蒸気ドラム(15,16)と別個の凝縮器(17.1,17.2)とに接続されていて
縮器(17.1,17.2)は、配管を介して、ORCタービン(38)に接続されている
ことを特徴とする、慣用の廃棄物利用においてエネルギを生成する設備。
【請求項2】
D蒸発器(13)が、一部分で、放射熱交換器として隔壁(8)を有して構成されていて、他の部分で対流束加熱面を有して構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の設備。
【請求項3】
D蒸発器(13)が、排ガス路において、HD蒸発器(14)の上流側に接続されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の設備。
【請求項4】
D蒸発器(14)が、対流束加熱面を有して構成されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の設備。
【請求項5】
2つの別個の凝縮器(17.1,17.2)が、相前後して接続して配置されていて、第1の凝縮器(17.1)は、配管を介して、ND蒸発器(13)に接続されていて、第2の凝縮器(17.2)は、配管を介して、HD蒸発器(14)に接続されていて、両方の凝縮器(17.1,17.2)は、作動媒体(31)用の配管を介して、相互にかつORCタービン(38)に接続されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の設備。
【請求項6】
水を用いて運転される蒸気発生器が、多段に構成されているとともに、ORCプロセス(17)に連結されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の特徴に基づく設備を運転する方法。
【請求項7】
15bar~30barの圧力レベルを有するND蒸気(20)が生成されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
75bar~120barの圧力レベルを有するHD蒸気(21)が生成されることを特徴とする、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
蒸気の過熱が3K~5Kを超えないことを特徴とする、請求項6から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ORCプロセス(17)における作動媒体として、有機作動媒体(31)が使用されることを特徴とする、請求項6から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
第1の凝縮器(17.1)では、液状の有機作動媒体(31)が、冷めていくND蒸気(20)によって予熱され、そして部分的には完全に蒸発され、第2の凝縮器(17.2)では、完全に蒸発され、続いて過熱されるか、はまだなお蒸発点に至るまで加温され、蒸発され、そして過熱され、続いてORCタービン(38)に供給されることを特徴とする、請求項6から10までのいずれ1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に相応する、慣用の廃棄物燃焼においてエネルギを生成する設備および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、慣用の廃棄物燃焼が廃棄物燃焼火格子上で行われるあらゆる所で使用可能であり、その際、発生する排熱は、エネルギ生成に利用される。
【0003】
独国特許出願公開第19856417号明細書において、廃棄物焼却設備に使用するための、蒸発器と蒸気ドラムと過熱器とを有する蒸気発生器が知られている。
【0004】
廃棄物焼却設備におけるマルチパスボイラが、独国特許出願公開第102008027740号明細書に記載されている。
【0005】
廃棄物焼却設備における慣用の廃棄物燃焼におけるエネルギ利用は、単段の蒸気プロセスを介して行われる。この種の設備について、以下、概要を述べる。
【0006】
まず、廃棄物が、燃焼室において空気を供給することによって、火格子上で燃焼される。その際に発生する排ガスは、通常は循環蒸気発生器、たとえば自然循環蒸気発生器においてでエネルギ利用され、続いて排ガス浄化設備に供給される。排ガスから水蒸気システムへの熱伝達は、蒸気タービンのために新鮮蒸気を生成することを目的として、放射加熱面および接触加熱面を介して行われる。蒸気発生器全体は、圧力装置から構成される。
【0007】
蒸発器において生成された飽和蒸気は、蒸気ドラムにおいて水から分離され、過熱器に導かれ、続いて新鮮蒸気として通常は蒸気タービンに導かれ、そこで発電機にて電気エネルギを生成するために使用される。さらに、タービンの排蒸気は、地域熱を生成するために加熱凝縮器にて利用することができる。タービンに設けられた抽気部によって、通常は給水容器が脱気され、加温され、そして凝縮水が予熱される。加熱凝縮器が使用されないときには、通常は空冷式の凝縮器が使用される。
【0008】
タービンにおいて可能な限り高い電気効率を得るために、蒸気プロセスのために可能な限り高い蒸気圧および蒸気温度が必要である。廃棄物燃焼に際して発生する排ガスは、腐食性ガス(主に塩化水素HClおよび二酸化硫黄SO2)と、スラグを形成する腐食性ダスト(カリウム塩および鉛塩など)とを含む。温度が上昇するにつれ腐食度が大幅に増加することに基づいて、蒸気圧は、約90barに制限されていて、新鮮蒸気温度は、約500℃に制限されている。他の制限によれば、過熱器面の高温腐食およびスラグ発生を回避するために、排ガス温度は、第1の過熱器の上流側で650℃~700℃の範囲内にあるべきである、または放射領域における過熱器加熱面のコストが嵩み、メンテナンスが集中的である。
【0009】
自然循環ボイラでは、全ての隔壁は、大体において、対応する飽和蒸気圧の温度を有する。蒸気圧は、主に高温の排ガスと燃焼室の下流側の、つまり第1のボイラパスにおける壁温度とによって制限されている(~90barの飽和蒸気圧が約308℃に対応する)。新鮮蒸気温度は、過熱器における高温腐食によって制限されている。腐食を低減するために、隔壁および最後の過熱器に、通常は金属またはセラミックの保護層が設けられている。たとえば、ここではインコネル肉盛溶接が用いられる。これらの保護層の使用は、高いコストを伴う。
【0010】
作動媒体として水を用いる蒸気プロセスの代替例を、ORCプロセス(有機ランキンサイクル)が成している。そこでは、蒸気の代わりに、水よりも著しく低い蒸発エンタルピを有する有機作動媒体が用いられ、この有機作動媒体が、タービンを駆動する。2010年以降、利用可能な設備サイズおよびORC設備の効率が、新たな作動媒体の汎用性によって著しく改善されてきた。ORCプロセスは、より低い温度レベルで進行する。OCRプロセスの上流側にエネルギ供給のための燃焼設備が接続されているときには、キャリア媒体、たいていは熱媒油が、燃焼時に発生した熱の伝達を担う。タービンを駆動する有機作動媒体は、別個の閉回路内でガイドされる。
【0011】
廃棄物燃焼に際して、熱伝達媒体として水を使用することが有利である。廃棄物燃焼は、ある種の蓄積燃焼であり、要するにエネルギ供給を急に停止することができない。ここでは、水または蒸気が、伝達媒体として、多くの観点でシステムのための防護を供する。設備内でたとえば腐食に起因する管破断が生じるときには、管からは水(液状および/または蒸気状)しか流出しない。これにより、危険性は、専ら作動媒体の高温および高圧に基づいて成されるだけである。これに対して、OCRプロセスで使用される熱媒油が管から流出したら、ボイラ内で火災が発生するおそれがある。この場合、火災は、その消化が決めて困難であり、これに相応して大きな損害および安全上のリスクが発生してしまう。
【0012】
水の別の利点は、水を大気中(通常はボイラハウスの屋根の上)に合目的的に放出することによって、ボイラ内の圧力を放出することができることにある。これは、特に、設備において全停電が発生したときに必要である。この場合、安全弁が設備の自動的な防護を担う。
【0013】
複数の圧力レベル、つまり高圧(HD)および低圧(ND)を用いる蒸気発生器が、効率を最適化するためにコンバインドサイクル(GuD)設備において既に使用されている。生成された蒸気は、直接にタービンに供給される。それぞれ異なる圧力レベルによって、排ガスからの排熱をより多くガスタービンに利用することができる。コンバインドサイクル排熱回収蒸気発生器では、排ガス路において、より高い温度レベルで作動する高圧システム(HD)が、低圧システム(ND)の上流側に接続されている。この種の接続では、腐食を全く回避することができない。これにより、コンバインドサイクル設備で典型的な接続は、腐食条件に基づいて廃棄物燃焼には使用することができない。さらに、そのような接続は、その複雑性によって、さしたる改善を伴わずに設備投資を増大させてしまう。廃棄物燃焼時に伝達可能な絶対的な熱量がわずかであることによって、そのような接続は、蒸気プロセスにとって極めて不経済である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】独国特許出願公開第19856417号明細書
【文献】独国特許出願公開第102008027740号明細書
【0015】
このような従来技術から出発して、本発明の課題は、慣用の廃棄物燃焼に際してエネルギを生成する設備および方法を発展させて、蒸気ボイラにおける腐食および加熱面の大きさを低減することができるようにすることである。
【0016】
この課題は、請求項1の特徴に基づく設備および請求項6の特徴に基づく方法によって解決される。
【0017】
従属請求項は、本発明の有利な形態を表している。
【0018】
本発明に係る設備および本発明に係る方法は、慣用の廃棄物焼却設備において、慣用の蒸気ボイラとORCプロセス(有機ランキンサイクル)とを組み合わせたものであり、その利点によれば、蒸気ボイラにおける排ガスによる腐食が、特別な加熱面接続によって最小化され、この場合、それと同時に高い効率を得ることができる。
【0019】
ORCプロセスとは、ここでは、蒸気の代わりに、凝縮器にて加熱されてそしてタービンを駆動する、水よりも著しく低い蒸発エンタルピを有する有機作動媒体が使用されるプロセスと解される。ORCプロセスは、より低い温度レベルで進行する。凝縮器にて加熱されてそしてタービンを駆動する有機作動媒体は、別個の閉回路内でガイドされる。
【0020】
本発明による解決手段では、両方の設備部分をプロセスに連結するために、少なくとも1つの高圧(HD)蒸気システムと少なくとも1つの低圧(ND)蒸気システムとから成る、水を用いて運転される蒸気発生システムが、ORCプロセスに連結されることが想定される。
【0021】
蒸気発生システムについては、相前後して接続された複数の蒸気発生器システムも考えられる。
【0022】
少なくとも2つの蒸気システムの各々は、排ガス路において、蒸発器と、下流側に接続された蒸気ドラムと、凝縮器と、装置間の配管とから構成される。この場合、ND蒸発器が、排ガス路においてHD蒸発器の上流側に接続されていると有利である。浄化された排ガスは、煙突を介して設備から離れる。
【0023】
ND蒸気システムは、廃棄物の断熱燃焼温度から約700℃を下回るに至るまでの温度範囲で、燃焼室にて生成された排ガスの熱を利用する。排ガスの高い温度によって、ND蒸気システムの一部分は、好適には、隔壁としてND蒸発器の外側の画定部を形成する放射熱交換器として構成されている。ND蒸発器の他の部分は、好適には、対流束熱面として構成されている。
【0024】
HD蒸気システムは、最高で約900℃から最低でHD蒸気システムのHD蒸気の飽和蒸気温度に至るまでの温度範囲で排ガスの熱を利用する。HD蒸発器の加熱面は、好適には、対流束加熱面として排ガス路に組み付けられていて、これにより、NDシステムにより妨げられずに、そしてこれに依存せずに拡張することができる。
【0025】
両方の蒸気圧システムは、自然循環蒸気発生器として構成されている。
【0026】
蒸気圧の変化によって、システムは、燃料および蒸気発生器の汚染特性の側からの要求の変化に、特定の範囲内でフレキシブルに反応することができる。
【0027】
この蒸気圧システムの接続形態は、高い排ガス温度にさらされる全ての伝達面、特に第1のボイラパスおよび燃焼室の高温腐食を低減するのに有用である。ND蒸気システムにおける低い飽和蒸気圧によって、伝達面は、わずか200℃~230℃の範囲内の壁温度を有し、これは、高温腐食にとって臨海的な範囲内にはない。
【0028】
ORCプロセス用のORC回路は、少なくとも2つの凝縮器から成り、これらの凝縮器は、有機作動媒体(ORC媒体)用の配管によって相互にかつORCタービンに接続されており、この場合、両方の凝縮器の各々は、両方の蒸気システム、つまりND蒸発器およびHD蒸発器のうちの1つに接続されている。
【0029】
ORC回路におけるシクロペンタン(CAS番号287-92-3)またはトルエン(CAS番号108-88-3)などの熱媒体としてのORC媒体の選択によって、両方の蒸気回路または蒸気システムの必要な熱量および温度が確定される。温度の選択によって、また飽和蒸気温度と飽和蒸気圧との関連性を介して、直接に、蒸気システムにおける圧力も決定される。ORC回路内のシステム圧が上昇するにつれ、ORC回路/プロセスにおける蒸発温度も同様に上昇する。これにより、蒸気システムにおける温度、ひいては圧力も上昇させなければならない。前述のパラメータは、最適な領域を表しており、その領域では、設備全体が経済的に建設されるのみならず、エネルギ効率的に運転することもできる。
【0030】
エネルギ生成は、本発明によれば、少なくとも2段の蒸気システムを介して行われる。まず、廃棄物が、燃焼室において空気を供給することによって燃焼される。その際に発生する排ガスは、蒸気発生器においてエネルギ利用され、続いて排ガス浄化設備に供給され、煙突を通して環境に放出される。排ガスから水蒸気システムへの熱伝達は、飽和蒸気またはわずかに過熱された飽和蒸気を生成することを目的として、自然循環ボイラの隔壁における放射加熱面および接触加熱面と、HD蒸発器およびND蒸発器の束加熱面とを介して行われる。
【0031】
本発明に係る2段の蒸気システムでは、HD蒸気およびND蒸気が生成される。HD蒸気の圧力レベルは、75bar~120barであり、ND蒸気のレベルは、15bar~30barである。生成された蒸気は、過熱されなくてよい。この蒸気が過熱されるときでも、過熱は、わずか3K~5Kであるべきであり、供給を行っている蒸気システムの結露を回避するためだけに有用である。
【0032】
生成されたHD蒸気およびND蒸気は、廃棄物燃焼によって解放された熱をORCプロセスへ熱伝達するために有用である。有機作動媒体への熱伝達は、ORCシステムにおいて別個の凝縮器にて蒸気を凝縮することによって行われる。この場合、第1の凝縮器では、液状の有機作動媒体が、ND蒸気によって予熱され、部分的にまたは完全に蒸発される。第2の凝縮器では、有機作動媒体は、第1の凝縮器から流出した後に状況に応じて、完全に蒸発され、続いて過熱される、またはまだなお蒸発点に至るまで加温され、蒸発され、そして過熱される。
【0033】
本発明による解決手段は、以下の利点を有する。
蒸発ボイラにおける腐食の低減
蒸気発生器における熱伝達に必要な加熱面の縮小
過熱器加熱面の回避(蒸気過熱が不要である)
熱伝達が凝縮によるので、第2の回路による慣用の蒸気プロセスに対する蒸気品質の要求の低下
ORCプロセスのコンポーネントが有する蒸気品質の要求が大幅に低下しているので、慣用の蒸気プロセスに対する給水品質の低下
極めて小さな過熱(最大10K)による低減(のみならず過熱器加熱面の完全な省略)、これによるボイラ、鉄骨構造、灰除去などの縮小、ひいてはコスト削減
システムの縮小によるコスト削減
大きなコンポーネントの高いプレハブ度による組立ての容易化
設置完了されたコンポーネントによる設備全体の運転開始にかかる手間の低減
部分耐荷重の改善による設備のフレキシビリティの向上
運転時間の向上、2度の停止状態の間の間隔の延長による壁構造物の摩耗の低減(運転時間の延長によって、さらに設備の処理能力が向上し、これにより、さらなる経済的な利点が生じる)
慣用の蒸気ボイラと中間媒体(熱媒油)を使用しないORCプロセスとの組合せ
蒸気(蓄積燃焼)による管破裂時のリスクの最小化。
【0034】
以下、従来技術および本発明を、1つの実施形態および3つの図面につき詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】従来技術による設備の概略図を示す。
図2】本発明に係る設備または本発明に係る方法の概略図を示す。
図3】凝縮器におけるHD蒸気およびND蒸気からORCシステムへの熱伝達のQT線図である。
【0036】
図1は、従来技術に対応する廃棄物焼却設備を示している。廃棄物32が、燃焼室1において空気33を供給することによって燃焼火格子上で燃焼される。その際に発生する排ガスは、通常は自然循環蒸気発生器2にてエネルギ利用され、続いて排ガス浄化設備3に供給される。浄化された排ガスは、煙突19を介して設備から離れる。排ガスから水蒸気システムへの熱伝達は、蒸気タービン4のために少なくとも2つの異なる圧力段で新鮮蒸気を生成することを目的として、放射加熱面および接触加熱面を介して行われる。蒸気発生器全体は、圧力装置18から構成される。
【0037】
蒸発器にて生成された飽和蒸気は、蒸気ドラム10において水から分離されて、そして1つまたは複数の過熱器9に導かれ、続いて新鮮蒸気として通常は蒸気タービン4に導かれ、そこで膨張される。その際、蒸気に含まれる圧力エネルギおよびその熱が機械エネルギに変換され、この機械エネルギは、続いて発電機5にて電気エネルギを生成するために利用される。さらに、タービン4の排蒸気は、加熱凝縮器11にて地域熱を生成するために利用することができる。タービン4に設けられた抽気部46によって、通常は給水容器6が脱気されるとともに加温され、そして凝縮水7が予熱される。加熱凝縮器11が使用されないときには、通常は空冷式の凝縮器12が使用される。
【0038】
タービンにおいて可能な限り高い電気効率を得るために、蒸気プロセスにとって可能な限り高い蒸気圧および蒸気温度が必要である。廃棄物燃焼に際して発生する排ガスは、腐食性ガス(主に塩化水素HClおよび二酸化硫黄SO2)と、スラグを形成する腐食性ダスト(カリウム塩および鉛塩など)とを含む。温度が上昇するにつれ腐食度が大幅に増加することに基づいて、蒸気圧は、約90barに制限されていて、新鮮蒸気温度は、約500℃に制限されている。他の制限によれば、過熱器面の高温腐食およびスラグ発生を回避するために、排ガス温度は、第1の過熱器9の上流側で650℃~700℃の範囲にあるべきである。
【0039】
自然循環蒸気発生器2では、全ての隔壁8は、大体において、対応する飽和蒸気圧の温度を有する。蒸気圧は、主に、燃焼室の下流側の高温の排ガスにおける、つまり第1のボイラパス(42)における壁温度によって制限されている(~90barの飽和蒸気圧が約300℃に対応する)。新鮮蒸気温度は、過熱器9における高温腐食によって制限されている。腐食を低減するために、隔壁8および過熱器9に、通常は金属またはセラミックの保護層が設けられている。
【0040】
図2は、本発明に係る設備を概略図で示している。
【0041】
これによれば、蒸気発生器は、高圧蒸気システム41(以下、HD蒸気システムと称される)と低圧蒸気システム40(以下、ND蒸気システムと称される)とから構成される。ここでは、排ガス路において、低圧蒸気システム40のND蒸発器13が、HD蒸気システム41のHD蒸発器14の上流側に接続されている。
【0042】
ND蒸気システム40は、燃焼室1内で発生した排ガスの熱を、廃棄物の断熱燃焼温度から約700℃を下回るまでに至る温度範囲で利用する。排ガスの高い温度によって、ND蒸発器13の一部分は、隔壁8としてND蒸発器13の外側の画定部を形成する放射熱交換器として構成されている。ND蒸発器13の他の部分は、対流束加熱面として構成されている。
【0043】
HD蒸気システム41は、HD蒸発器14によって、排ガスの熱を、最高で約900℃から最低でHD蒸気の飽和蒸気温度に至るまでの温度範囲で利用する。HD蒸発器14の加熱面は、対流束加熱面として、排ガス路内に組み付けられている。
【0044】
両方の蒸気圧システムは、自然循環蒸気発生器として構成されている。したがって、各々の蒸気圧システム40,41は、独自の蒸気ドラム15,16を有し、つまりND蒸気システム40には、ND蒸気ドラム15が対応付けられており、HD蒸気システム41には、HD蒸気制御装置41が対応付けられている。
【0045】
この接続形態は、高い排ガス温度にさらされる全ての伝達面、特に第1のボイラパス42および燃焼室1の高温腐食を低減するのに有用である。ND蒸気システム40における低い飽和蒸気圧によって、ND蒸発器13の伝達面は、たった200℃~230℃の範囲の壁温度を有し、これは、高温腐食に関して臨界的でない範囲にある。
【0046】
供給ポンプ45と、凝縮器17.1,17.2と、有機作動媒体31が中を流れる配管と、ORCタービン38と、発電機39と、凝縮器43と、通常は伝熱式熱交換器44とから構成されるORCプロセス17における熱媒体の選択によって、両方の蒸気回路または蒸気システム(ND,HD)の必要な熱量および温度が確定される。温度の選択によって、さらにまた飽和蒸気温度と飽和蒸気圧との関連性を介して、直接に、蒸気圧システム40,41における圧力も決定される。ORCプロセス17におけるシステム圧が上昇するにつれ、ORC回路17における蒸発温度も同様に上昇する。これにより、両方の蒸気圧システム40,41における温度、ひいては圧力も上昇しなければならない。前述のパラメータは、設備全体を経済的に建設するのみならず、エネルギ効率的に運転することができる最適な範囲を表している。
【0047】
排気ガスから水蒸気システムへの熱伝達は、飽和蒸気またはわずかに過熱された飽和蒸気を生成することを目的として、隔壁8の放射加熱面および接触加熱面と、ND蒸発器13およびHD蒸発器14の束加熱面とを介して行われる。
【0048】
以下、2段の蒸気圧システム40,41についてのみ詳説する。
【0049】
HD蒸気21およびND蒸気20が、HD蒸気ドラム16またはND蒸気ドラム15を介して生成される。HD蒸気21の圧力レベルは、75bar~120barであり、ND蒸発20の圧力レベルは、15bar~30barである。生成された蒸気は、過熱されなくてよい。この蒸気が過熱されるときでも、過熱は、わずか3K~5Kであるべきであり、供給を行っている蒸気システムにおける結露を回避するためだけに有用である。
【0050】
生成されたHD蒸気21およびND蒸気20は、廃棄物燃焼によって解放された熱をORCプロセス17へ、ひいてはORCタービン38へ熱伝達するために有用である。ORC媒体31(有機作動媒体)への熱伝達は、ORCシステム17において別個の凝縮器17.1,17.2にて蒸気を凝縮することによって行われる。この場合、管路を介してND蒸発器13に接続された第1の凝縮器17.1において、液状の有機作動媒体が、ND蒸気20によって予熱され、部分的にまたは完全に蒸発される。HD蒸発器14に接続された第2の凝縮器17.2において、ORC媒体31は、HD蒸気21によって、第1の凝縮器17.1から流出した後に状況に応じて完全に蒸発され、続いて過熱される、またはまだなお蒸発点に至るまで加温され、蒸発され、そして過熱される。ORC媒体(作動媒体)31が中にある配管は、発電機39を駆動するORCタービン38と各々の個々の凝縮器17.1,17.2とに接続されている。
【0051】
浄化された排ガスは、煙突19を介して設備から離れる。
【0052】
図3は、QT線図として熱伝達を示している。
【0053】
過熱されたND蒸気は、冷却22され、等温凝縮23され、続いて過冷却24される。同時に、ORC媒体は、加温30され、部分蒸発29aされる。ORC媒体の完全蒸発29bおよび過熱28は、過熱されたHD蒸気の冷却25、その等温凝縮26およびその過冷却27によって行われる。プロセスステップ22,23,24,29aおよび30は、第1の凝縮器17.1において行われる。プロセスステップ25,26,27,29bおよび28は、第2の凝縮器17.2において行われる。
【0054】
続いて、有機作動媒体31の蒸気が、発電のためにORCタービン38に供給される。
【符号の説明】
【0055】
1 燃焼室
2 自然循環蒸発器
3 排ガス浄化設備
4 タービン
5 発電機
6 給水容器
7 凝縮液
8 自然循環蒸気発生器の隔壁
図1の過熱器
10 蒸気ドラム
11 加熱凝縮器
12 凝縮器 空冷式
13 ND蒸発器
14 HD蒸発器
15 ND蒸気システムの蒸気ドラム
16 HD蒸気システムの蒸気ドラム
17 ORCプロセス
17.1 ORCシステムにおける第1の凝縮器
17.2 ORCシステムにおける第2の凝縮器
18 圧力装置
19 煙突
20 ND蒸気
21 HD蒸気
22 過熱されたND蒸気の冷却
23 ND蒸気の等温凝縮
24 ND凝縮液の冷却
25 過熱されたHD蒸気の冷却
26 HD蒸気の等温凝縮
27 ND凝縮液の冷却
28 ORC媒体の過熱
29a ORC媒体の部分蒸発
29b ORC媒体の完全蒸発
30 ORC媒体の加温
31 ORC媒体、作動媒体
32 廃棄物
33 空気
34 スラグ
35 凝縮液
36 空気予熱器
37 給水予熱器(ECO)
38 ORCタービン
39 ORC発電機
40 ND蒸気システム
41 HD蒸気システム
42 第1のボイラパス
43 ORCシステムの凝縮器
44 ORCシステムの伝熱式熱交換器
45 ORCシステムの供給ポンプ
46 空気予熱のための抽気蒸気
図1
図2
図3