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  • 特許-撮像装置および焦点制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】撮像装置および焦点制御方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/36 20210101AFI20220106BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20220106BHJP
   G03B 13/36 20210101ALI20220106BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
G02B7/36
G03B15/00 S
G03B13/36
H04N5/232 120
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020548187
(86)(22)【出願日】2019-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2019033060
(87)【国際公開番号】W WO2020059424
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2020-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2018174122
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】向後 清孝
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-310143(JP,A)
【文献】特開2003-322789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/28-7/40
G03B 15/00
G03B 13/36
H04N 5/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系を介して形成される被写体像を撮像して映像信号を生成する撮像部と、
前記映像信号から低周波成分を低減し、AF検波用の映像信号を生成する帯域補正部と、
前記AF検波用の映像信号からコントラスト評価値CTを求めるAF検波部と、
前記コントラスト評価値CTが高くなる方向に前記光学系の合焦位置を制御する焦点制御部と
を備え
前記帯域補正部は、
前記映像信号から前記低周波成分を抽出するローパスフィルタと、
前記映像信号から前記低周波成分を減算する減算部と、
前記減算した後の映像信号に対して黒レベルの補正を行い、前記AF検波用の映像信号を生成する黒レベル補正部とを備える
撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記帯域補正部は、
霧や霞などの低コントラストに起因する信号ムラの空間周波数帯域を、前記低周波成分として前記映像信号から低減する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の撮像装置において、
前記帯域補正部は、
前記合焦位置までの撮影距離を取得し、
前記撮影距離が遠くなるほど、前記低周波成分の低減量を増やす
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の撮像装置において、
前記帯域補正部は、
前記光学系および前記撮像部の少なくとも一方において生じる前記映像信号の信号ムラの空間周波数帯域を、前記低周波成分として前記映像信号から低減する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
光学系を介して形成される被写体像を撮像して映像信号を生成する撮像部を備えた撮像装置の焦点制御方法であって、
前記映像信号から低周波成分を低減し、AF検波用の映像信号を生成する帯域補正ステップと、
前記AF検波用の映像信号からコントラスト評価値CTを求めるAF検波ステップと、
前記コントラスト評価値CTが高くなる方向に前記光学系の合焦位置を制御する焦点制御ステップと
を備え
前記帯域補正ステップは、
前記映像信号から前記低周波成分を抽出するローパスフィルタ処理ステップと、
前記映像信号から前記低周波成分を減算する減算ステップと、
前記減算した後の映像信号に対して黒レベルの補正を行い、前記AF検波用の映像信号を生成する黒レベル補正ステップとを備える
焦点制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の焦点制御方法において、
前記帯域補正ステップは、
霧や霞などの低コントラストに起因する信号ムラの空間周波数帯域を、前記低周波成分として前記映像信号から低減する
ことを特徴とする焦点制御方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の焦点制御方法において、
前記帯域補正ステップは、
前記合焦位置までの撮影距離を取得し、
前記撮影距離が遠くなるほど、前記低周波成分の低減量を増やす
ことを特徴とする焦点制御方法。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1項に記載の焦点制御方法において、
前記帯域補正ステップは、
前記光学系および前記撮像部の少なくとも一方において生じる前記映像信号の信号ムラの空間周波数帯域を、前記低周波成分として前記映像信号から低減する
ことを特徴とする焦点制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置および焦点制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コントラストAF方式として、映像信号のコントラストが最大ピークとなるよう にレンズの自動焦点調節を行う技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、CCD撮像素子のスミア現象や夜景の点光源による偽の合焦 状態を回避するため、コントラストの他に、映像中のエッジ数やエッジ幅重心値を合焦判 定に併用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-262783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
屋外において遠方を撮影する監視カメラでは、霧や霞などの影響を受けやすく、撮像映 像のコントラストが低くなる。そこで、カメラ内において、撮像映像のコントラストをリ アルタイムに伸張させて明暗をくっきりさせる処理(以下「霞補正」という)が施される 。
【0006】
この霞補正により、映像信号のコントラストはリアルタイムに変動する。そのため、霞 補正がかかった映像信号に対してコントラストAFを行うと、霞補正のコントラスト変動 (信号ムラ)を合焦状態のピークと間違え、偽の合焦状態(以下「偽合焦」という)に陥 ってしまう虞がある。
【0007】
また、撮像装置では、レンズの周辺減光やフレア、撮像素子のシェーディングによって 偽の映像信号が生じる。この偽の映像信号によってもコントラスト変動(信号ムラ)が発 生し、合焦状態のピークと間違えて偽合焦してしまう虞がある。
【0008】
なお、上述した特許文献1には、このような信号ムラの課題や、そのための偽合焦を解 決する手段について開示も示唆もない。
【0009】
そこで、本発明は、信号ムラによる偽合焦を低減する技術を提供することを目的とする 。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、代表的な本発明の撮像装置の一つは、光学系を介して結像 される被写体像を撮像して映像信号を生成する撮像部と、映像信号から低周波成分を低減 し、AF検波用の映像信号を生成する帯域補正部と、AF検波用の映像信号からコントラ スト評価値を求めるAF検波部と、コントラスト評価値が高くなる方向に光学系の合焦位 置を制御する焦点制御部とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、コントラストAFにおいて信号ムラによる偽合焦を低減することが可能に なる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】撮像装置の構成を示すブロック図である。
図2】コントラストAFを説明するデータフローである。
図3】コントラストAFの各部波形の様子を説明する図である。
図4】フルHDの映像信号に含まれる映像コントラスト成分と信号ムラ成分を示す 図である。
図5】AF検波用の輝度信号Yafの映像帯域を示す図である。
図6】フォーカス位置によるコントラスト評価値CTの変化を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に従って、実施形態を説明する。
【0014】
<撮像装置の構成説明>
図1は、屋外遠方監視用の撮像装置1の構成を示すブロック図である。
同図において、撮像装置1は、レンズ10、撮像部20、帯域補正部30、AF検波部 40、および焦点制御部50を備える。
【0015】
レンズ10は、屋外遠方監視用のレンズであり、被写体像を撮像部20の撮像面に形成 する。レンズ10の内部には、レンズ10の合焦位置を遠近方向に変化させるレンズ駆動 部10aを備える。このレンズ駆動部10aは、撮像面から合焦位置までの距離(以下「 撮影距離」という)に換算可能なレンズ位置情報を帯域補正部30に出力する。
【0016】
撮像部20は、撮像面に形成される被写体像を撮像して映像信号を出力する撮像素子2 1と、映像信号に対して信号処理、デモザイク処理、YC処理、霞補正、階調補正(ガン マ補正)、輪郭補正、および色補正などを施して外部出力する映像信号処理部22とを備 える。
この映像信号処理部22は、霞補正を施した映像信号の輝度信号Y0を、帯域補正部3 0に出力する。
【0017】
帯域補正部30は、ローパスフィルタ31、減算部32、および黒レベル補正部33を 備える。
【0018】
ローパスフィルタ31は、輝度信号Y0から、霧や霞などの信号ムラの空間周波数帯域 や、レンズ10または撮像素子21による信号ムラの空間周波数帯域の成分を抽出して、 低周波成分として出力する。
【0019】
減算部32は、この低周波成分に対して係数α(k≦α≦1)を乗算した信号を、輝度 信号Y0から減算し、輝度信号Y1として出力する。
【0020】
この係数αは、レンズ駆動部10aから取得するレンズ位置情報(撮影距離)に応じて 適応的に変化する。例えば、減算部32は、撮影距離が遠くなるほど係数αを大きくする 。
【0021】
黒レベル補正部33は、シーンの明るさに応じて、減算後の輝度信号Y1をオフセット 補正して黒レベルを復元する。黒レベルが復元した信号は、AF検波用の映像信号Yafと して出力される。
【0022】
AF検波部40は、このAF検波用の映像信号Yafからフレーム単位にコントラスト評 価値CTを算出して焦点制御部50に出力する。
【0023】
焦点制御部50は、コントラスト評価値CTが高くなる方向に(いわゆる山登り式に) レンズ駆動部10aを駆動制御して、レンズ10の焦点制御を行う。
【0024】
<撮像装置の動作説明>
図2は、撮像装置1のコントラストAFを説明するデータフローである。
図3は、コントラストAFの各部波形の様子を説明する図である。
以下、図2に示すステップ番号に沿って、コントラストAFの動作を説明する。
【0025】
ステップS11: 帯域補正部30は、撮影距離に換算可能なレンズ位置情報をレンズ駆 動部10aから取得し、最新のレンズ位置情報の値を更新する。
【0026】
ステップS12: 撮像装置1は、ピントを合わせる被写体領域(AF領域)を自動また は手動で設定する機能を有する。この機能に従って、帯域補正部30は、映像信号処理部 22から霞補正などを施した輝度信号のうち、AF領域に相当する範囲の輝度信号Y0を 取り込む(図3[A]参照)。
【0027】
図3[A]に示すように、合焦時の輝度信号Y0に比べて、非合焦時の輝度信号Y0は 高域の信号成分が少なくなる分だけ、信号ムラΔYのコントラスト変動が相対的に大きく 現れる。
【0028】
この輝度信号Y0には、霧や霞などの低コントラストに起因する信号ムラが含まれる。 また、輝度信号Y0には、レンズ10の周辺減光やフレア、撮像素子21のシェーディン グに伴う信号ムラが含まれる。
【0029】
ステップS13: ローパスフィルタ31は、輝度信号Y0に対して移動加重平均や局所 積和演算をとるフィルタ処理を施し、低周波成分Ylpを抽出する(図3[B]参照)。図 3[B]に示すように、低周波成分Ylpには、高域の信号成分がカットされることにより 、信号ムラΔYが現れる。
【0030】
なお、図3では、合焦時と非合焦時において、信号ムラΔYの大きさを等しく図示して いるが、霞補正の影響などにより非合焦時の信号ムラΔYの方が大きくなりやすい。
【0031】
このローパスフィルタ31のサイズや係数は、霧や霞などの低コントラストに起因する 信号ムラの空間周波数帯域や、レンズ10の周辺減光やフレア、撮像素子21のシェーデ ィングによる信号ムラの空間周波数帯域の成分を抽出するように設定される。
【0032】
ステップS14: 減算部32は、最新のレンズ位置情報に基づいて、撮像素子21の撮 像面からレンズ10の合焦位置までの撮影距離を求める。減算部32は、この撮影距離が 遠いほど、係数α(k≦α≦1)を大きくする。ここで、係数αの最小設定値kは、撮影 距離の影響を受けない信号ムラの量(例えばレンズ10の周辺減光やフレア、撮像素子2 1のシェーディングに伴う信号ムラの量)に応じて設定される。
【0033】
ステップS15: ローパスフィルタ31により低周波成分に遅延が生じる場合は、減算 部32は、減算演算の対象である輝度信号Y0にも低周波成分と同様の遅延処理を施す。 減算部32は、遅延処理後の輝度信号Y0から、低周波成分に係数αを乗じた信号を減算 して、信号ムラΔYを適度に低減した輝度信号Y1を生成する(図3[C]参照)。
減算部32は、輝度信号Y0および輝度信号Y1を黒レベル補正部33に出力する。
【0034】
ステップS16: 黒レベル補正部33は、輝度信号Y0をフレーム単位に積算する。
【0035】
ステップS17: 黒レベル補正部33は、輝度信号Y0のフレーム積算値をフレーム画 素数で除算することにより、フレーム平均輝度を求める。
【0036】
ステップS18: 黒レベル補正部33は、フレーム平均輝度をシーンの明るさとしてホ ールドする(図3[D]参照)。
【0037】
ステップS19: 黒レベル補正部33は、信号ムラを低減した輝度信号Y1に対して、 シーンの明るさを加算(オフセット)して、輝度信号Y1の黒レベル(DC成分)を復元 する(図3[E]参照)。
【0038】
ステップS20: 黒レベル補正部33は、黒レベルを復元した輝度信号を、AF検波用 の輝度信号Yafとして、AF検波部40に出力する。
【0039】
ステップS21: AF検波部40は、輝度信号Yafに対して、移動差分や局所積差演算 をとるハイパスフィルタ処理を施し、エッジやディテール成分を抽出する。このハイパス フィルタ処理のサイズや係数は、コントラストAFをかけたい映像のエッジやディテール 成分の空間周波数帯域に合わせて設定される。
【0040】
このハイパスフィルタ後の信号は、正負両方の信号となるため、絶対値化して、コント ラスト(コントラストの大きさ)を求める。
【0041】
ステップS22: AF検波部40は、AF領域のコントラストをフレーム毎に積算して 、AF領域のコントラスト評価値CTを求める。なお、AF領域のコントラストの最大値 をフレーム毎に求めて、コントラスト評価値CTとしてもよい。
【0042】
ステップS23: 焦点制御部50は、AF検波部40から取得するコントラスト評価値 CTが高くなるように(いわゆる山登り式に)、レンズ駆動部10aを介してレンズ10 の合焦位置を遠近方向に制御する。なお、コントラスト評価値CTのピーク付近では、合 焦判定に応じて合焦位置の行き過ぎ幅を小さくすることにより、合焦付近での収束を速め てもよい。
【0043】
以上の一連のデータフロー(ステップS11~S23)を繰り返し行うことにより、コ ントラストAFによって撮像装置1の自動焦点調整が行われる。
【0044】
<帯域補正部30の周波数特性の一例>
続いて、帯域補正部30の周波数特性について説明する。
図4は、フルHDの輝度信号Y0に含まれる映像コントラスト成分(エッジやディテー ルなど)の周波数帯域と、信号ムラの周波数帯域とを示す図である。
【0045】
フルHD用の撮像素子21(サンプリング周波数74MHz)により、輝度信号Y0と して再現可能な映像帯域は上限が約37MHzとなる。
【0046】
この映像帯域のうち、3~4画素ピッチのエッジ幅やディテールが人間の視覚には鮮鋭 かつ目立つ絵柄として視認されやすい。この3~4画素ピッチはおよそ10MHzの映像 帯域に相当する。そこで、コントラスト評価値CTのためのハイパスフィルタとしては、 およそ10MHzの抽出感度を高めることが好ましい。
【0047】
さらに、200kHzの映像帯域は、なだらかに変化する幅広のエッジ成分である。こ の映像帯域は、合焦しているか否かがぎりぎり視認される帯域である。200kHz未満 の映像帯域については、コントラストが高くても合焦しているとは視認されにくい帯域で ある。そこで、コントラスト評価値CTのためのハイパスフィルタとしては、およそ20 0kHz未満の映像帯域には抽出感度を持たせない方が好ましい。
【0048】
したがって、図4に示すように、200kHz未満の映像帯域をカットし、かつ10M Hz付近に最大感度を有するように、AF検波部40内のハイパスフィルタを設計するこ とが好ましい。
【0049】
一方、霧や霞などの低コントラストに起因する信号ムラの妨害帯域は、40kHz以下 に集中する。また、レンズ10の周辺減光やフレア、撮像素子21のシェーディングによ る信号ムラの妨害帯域も、40kHz以下に集中する。
【0050】
これらの妨害帯域は、霞補正や混変調などのプロセスを経て、非合焦時の映像帯域のコ ントラストに影響を及ぼす可能性がある。
【0051】
したがって、図4に示すように、およそ40kHz以下の低周波成分を通過帯域とする ように、ローパスフィルタ31を設計する。
【0052】
図5は、AF検波用の輝度信号Yafの映像帯域を示す図である。
同図に示すように、およそ40kHz以下の信号ムラの妨害帯域を低減した輝度信号Y afとなっている。
【0053】
なお、SD用の撮像素子の場合は、サンプリング周波数は24.54MHz(正方画素 )であり、フルHDの場合のおよそ1/3倍である。
【0054】
そこで、SD用のコントラスト評価値CT用のハイパスフィルタについては、フルHD 用の周波数を1/3倍に換算すればよい。
また、信号ムラ抽出用の周波数については、信号ムラの妨害帯域を実験やシミュレーシ ョンで求めて決定すればよい。
【0055】
フルHDよりも高いサンプリング周波数の場合についても、そのサンプリング周波数の 倍数でコントラスト評価値CT用のハイパスフィルタを換算すればよい。また、信号ムラ の妨害帯域についても、実験やシミュレーションで求めて決定すればよい。
【0056】
<実施形態の効果>
図6は、フォーカス位置によるコントラスト評価値CTの変化を説明する図である。
【0057】
実施形態では、AF検波用の映像信号において低周波成分を低減することにより、フォ ーカス位置の変位に伴って発生するコントラスト評価値CTの偽のピークが小さくなり、 偽合焦を防止することが可能になる。
【0058】
また、実施形態では、霧や霞などの低コントラストに起因する信号ムラの空間周波数帯 域を、低周波成分として映像信号から低減する。そのため、霧や霞などの低コントラスト 要因によって生じていた偽合焦を抑制することができる。
【0059】
特に、屋外遠方監視の場合、霧や霞の影響を受けて低コントラストのシーンが多くなる 。そのため、AF検波用の映像信号において低周波成分を低減することの効果が大きく、 偽合焦を顕著に抑制することが可能になる。
【0060】
また、AF検波用の映像信号に霞補正が加わることで、コントラストAFに対する妨害 作用(信号ムラ)は複雑になる。すなわち、霞補正は、非合焦状態のコントラスト低下を 打ち消す方向に働く。この作用により、低周波のコントラスト成分が変動してコントラス トAFがかかりづらくなり、合焦までの時間が長くかかるようになる。また、低周波のコ ントラスト成分の変動に偽ピークが生じれば、偽合焦を生じてしまう。しかしながら、霧 や霞による低周波成分を霞補正後に帯域補正部30で低減することにより、霞補正による 妨害作用が抑えられる。その結果、合焦までの時間が短縮されて早くなり、かつ偽合焦を 防止することが可能になる。
【0061】
その上、実施形態では撮影距離が遠くなるほど霧や霞などの低コントラストに起因する 信号ムラの低周波成分の低減量を増やす。この撮影距離が遠くなるほど、被写体とカメラ との間に入る霧や霞の空気層が厚くなり、映像信号のコントラストが一層低くなる。この とき、霞補正によるコントラストの伸張がさらに強く働き、信号ムラの成分が大きくなる 。しかし、実施形態のように撮影距離に応じて、信号ムラの低周波成分の低減量を適応的 に増やすことにより、信号ムラの増大を適量に抑えて偽合焦を防止することが可能になる 。
【0062】
さらに、実施形態では、レンズ10のシェーディングやフレア、撮像素子21のシェー ディングといった偽信号(信号ムラ)の空間周波数帯域を、低周波成分として映像信号か ら低減する。したがって、レンズ10や撮像素子21による信号ムラで発生する偽合焦を 防止することが可能になる。
【0063】
また、実施形態では、黒レベル補正部33を設け、減算部32において失ったDC(直 流)成分を復元する。そのため、DC成分を含む映像信号を扱うAF検波部40を、従来 通りにそのまま使用することが可能になる。
【0064】
<実施形態の補足事項>
なお、実施形態では、輝度信号のコントラスト評価値CTに基づいて焦点制御を行う。 しかしながら、本発明はこれに限定されない。映像信号の緑色光信号Gのコントラスト評 価値CTに基づいて焦点制御を行ってもよい。また、監視カメラなどにおいて夜間など近 赤外線画像を撮影する場合は、映像信号の赤色光信号Rのコントラスト評価値CTに基づ いて焦点制御を行ってもよい。
【0065】
また、実施形態では、シーンの明るさ(平均値)を加算することで黒レベルを補正して 、AF検波用の映像信号のDC成分を復元している。しかしながら、本発明はこれに限定 されない。クランプ回路によりAF検波用の映像信号を所定のクランプレベルにクランプ することで、黒レベルを補正して、AF検波用の映像信号のDC成分を復元してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、監視カメラなどの撮像装置や、撮像装置の焦点制御方法に利用することができる。この出願は、2018年9月18日に出願された日本出願特願2018-174122を基礎として優先権の利益を主張するものであり、その開示の全てを引用によってここに取り込む。
【符号の説明】
【0067】
1…撮像装置、10…レンズ、10a…レンズ駆動部、20…撮像部、21…撮像素子、 22…映像信号処理部、30…帯域補正部、31…ローパスフィルタ、32…減算部、3 3…黒レベル補正部、40…AF検波部、50…焦点制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6