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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】光コム発生装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/01 20060101AFI20220127BHJP
   G01S 17/32 20200101ALI20220127BHJP
【FI】
G02F1/01 B
G01S17/32
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021055640
(22)【出願日】2021-03-29
【審査請求日】2021-06-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503249810
【氏名又は名称】株式会社XTIA
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100200001
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 明彦
(72)【発明者】
【氏名】今井 一宏
(72)【発明者】
【氏名】興梠 元伸
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-086137(JP,A)
【文献】特開2009-244621(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0092158(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00 - 1/125
G02F 1/21 - 7/00
G01S 7/48 - 7/51
G01S 17/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定光の干渉信号と基準光の干渉信号の時間差から距離を測定する光コム距離計測用の光コム発生装置であって、
M(Mは2以上の整数)個の光コム発生器を備える光コム発生部と、
基準周波数信号に位相同期されたN(Nは3以上の整数)種類の変調周波数が巡回的に切り替えられた互いに変調周波数が異なるM種類の駆動信号を上記M個の光コム発生器に供給して、上記光コム発生部からM種類の光コムを出力させる制御を行う駆動制御部と
備え、
上記光コム発生部は、上記M個の光コム発生器から、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、N種類の変調周波数が巡回的に切り替えられた互いに変調周波数が異なるM種類の光コムを出力することを特徴とする光コム発生装置。
【請求項2】
上記駆動制御部は、
上記基準周波数信号に位相同期された互いに変調周波数の異なるN種類の変調信号を出力するN個の信号源と、
上記N個の信号源に接続されたN入力M出力のスイッチ部と、
上記スイッチ部の動作を制御して、N種類の変調信号を巡回的に切り替えた互いに変調周波数が異なるM種類の変調信号を出力させる切り替え制御手段と
を備え、
上記M種類の変調信号を駆動信号として上記M個の光コム発生器に供給することを特徴とする請求項1記載の光コム発生装置。
【請求項3】
上記N個の信号源は、それぞれPLL回路により基準の周波数信号に位相同期された変調周波数が固定された状態のN種類の変調信号を発生することを特徴とする請求項2に記載の光コム発生装置。
【請求項4】
上記駆動制御部は、
上記基準周波数信号に位相同期されたシステムクロックにより動作するM個のDDS(Direct Digital Synthesizer)からなる信号源と、
上記M個のDDSの動作を制御して、N種類の変調周波数を巡回的に切り替えた互いに変調周波数が異なるM種類の変調信号を出力させる切り替え制御手段と
を備え、
上記M種類の変調信号を駆動信号として上記光コム発生部に供給することを特徴とする請求項1記載の光コム発生装置。
【請求項5】
測定光の干渉信号と基準光の干渉信号の時間差から距離を測定する光コム距離計測用の光コム発生装置であって、
基準周波数信号に位相同期された互いに変調周波数の異なるN種類の変調信号を駆動信号として出力するN個の信号源と、
上記N個の信号源から出力される駆動信号により駆動され、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周波数が異なるN種類の光コムを発生するN個の光コム発生器を備える光コム発生部と、
上記光コム発生部に備えた上記N個の光コム発生器により発生されるN種類の光コムから、互いに変調周波数が異なるM種類の光コムを巡回的に選択して出力するN入力M出力の光スイッチと、
上記基準周波数信号に同期して上記光スイッチによる光コムの選択動作を制御する光スイッチ制御部と
を備えることを特徴とする光コム発生装置
【請求項6】
上記駆動制御部は、切替順序の一方向と逆方向を連続させて切り替える巡回方式でN(Nは3以上の整数)種類の変調周波数が巡回的に切り替えられた互いに変調周波数が異なるM(Mは2以上の整数)種類の光コムを上記光コム発生部から出力させる制御を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか1項に記載の光コム発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定光の干渉信号と基準光の干渉信号の時間差から距離を測定する光コム距離計などに用いられる光コム発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、精密なポイントの距離計測が可能なアクティブ式距離計測方法として、レーザ光を利用する光学原理による距離計測が知られている。レーザ光を用いて対象物体までの距離を測定するレーザ距離計ではレーザ光の発射時刻と、測定対象に当たり反射してきたレーザ光を受光素子にて検出した時刻との差に基づいて、測定対象物までの距離が算出される(たとえば特許文献1参照)。また、例えば、半導体レーザの駆動電流に三角波等の変調をかけ、対象物での反射光を半導体レーザ素子の中に埋め込まれたフォトダイオードを使用して受光し、フォトダイオード出力電流に現れた鋸歯状波の主波数から距離情報を得ている。
【0003】
ある点から測定点までの絶対距離を高精度で測定する装置としてレーザ距離計が知られている。たとえば、特許文献1には、測定光の干渉信号と基準光の干渉信号の時間差から距離を測定する距離計が記載されている。
【0004】
従来の絶対距離計では、長い距離を高精度で測れる実用的な絶対距離計を実現することが難しく、高い分解能を得るためにはレーザ変位計のように原点復帰が必要なため絶対距離測定に適さない方法しか手段がなかった。
【0005】
本件発明者等は、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周波数が異なる干渉性のある基準光と測定光をパルス出射する2つの光コム発生器を備え、基準面に照射される基準光パルスと測定面に照射される測定光パルスとの干渉光を基準光検出器により検出するとともに、上記基準面により反射された基準光パルスと上記測定面により反射された測定光パルスとの干渉光を測定光検出器により検出して、上記基準光検出器と測定光検出器により得られる2つ干渉信号の時間差から、上記基準面までの距離と上記測定面までの距離の差を求めることにより、高精度で、しかも短時間に行うことの可能な光コム距離計を先に提案している(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
また、測定面までの距離の基準点位置を基準光路により規定して、長距離測定を高精度で、しかも短時間に行うことができるようにした光コム距離計を先に提案している(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
光コム距離計では、原理的に周波数が異なる2種類の変調信号により駆動される2つの光コム発生器からパルス出射される干渉性のある基準光パルスと測定光パルスを用いることにより、信号処理部において、基準光検出器により得られる干渉信号(以下、参照信号と言う。)と、測定光検出器により得られる干渉信号(以下、測定信号と言う。)について周波数解析を行い、光コムの中心周波数から数えたモード番号をPとして、参照信号と測定信号のP次モード同士の位相差を計算して光コム発生器から基準点までの光コム生成、伝送過程の光位相差を相殺した後、周波数軸で次数1あたりの位相差の増分を計算して信号パルスの位相差を求めることにより、基準点から測定面までの距離を算出する。
【0008】
ここで、マイクロ波帯域の変調周波数にΔf(例えば、500kHz)の周波数差のある1対の変調信号により駆動される2つの光コム発生器から出力される基準光パルスと測定光パルスを用いて行われる光コム距離計における相対距離測定の計測速度は、上記変調周波数の周波数差Δfで決定され、絶対距離測定では、基準光パルスと測定光パルスの変調周波数を切り替えて、複数回距離測定を行って得られる各位相から絶対距離を計算する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2001-343234号公報
【文献】特許第5231883号公報
【文献】特開2020-12641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
測定光の干渉信号と基準光の干渉信号の時間差から距離を測定する光コム距離計では、原理的に2つの光コム発生器を駆動する2種類の変調信号を交互に切り替えることにより、距離計測を行うことができるのであるが、測定対象以外の信号返送経路による位相オフセットが測定誤差となるという問題点がある。また、測定対象が速度をもって移動している場合も考慮しなければならない問題もある。
【0011】
本発明の目的は、上述の如き問題点に鑑み、測定光の干渉信号と基準光の干渉信号の時間差から距離を測定する光コム距離計などにおいて、測定対象以外の信号伝送経路による位相オフセットを補正して高精度に絶対距離結果を得ることができる光コム発生装置を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、移動速度が速くなればなるほど絶対距離の測定時間を短縮する必要がある移動体に対しても、高精度に絶対距離測定を行うことができる光コム発生装置を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下に説明される実施の形態の説明から一層明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、測定光の干渉信号と基準光の干渉信号の時間差から距離を測定する光コム距離計測用の光コム発生装置であって、M(Mは2以上の整数)個の光コム発生器を備える光コム発生部と、基準周波数信号に位相同期されたN(Nは3以上の整数)種類の変調周波数が巡回的に切り替えられた互いに変調周波数が異なるM種類の駆動信号を上記M個の光コム発生器に供給して、上記光コム発生部からM種類の光コムを出力させる制御を行う駆動制御部とを備え、上記光コム発生部は、上記M個の光コム発生器から、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、N種類の変調周波数が巡回的に切り替えられた互いに変調周波数が異なるM種類の光コムを出力することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る光コム発生装置において、上記駆動制御部は、上記基準周波数信号に位相同期された互いに変調周波数の異なるN種類の変調信号を出力するN個の信号源と、上記N個の信号源に接続されたN入力M出力のスイッチ部と、上記スイッチ部の動作を制御して、N種類の変調信号を巡回的に切り替えた互いに変調周波数が異なるM種類の変調信号を出力させる切り替え制御手段とを備え、上記M種類の変調信号を駆動信号として上記M個の光コム発生器に供給するものとすることができる。
【0016】
また、本発明に係る光コム発生装置において、上記N個の信号源は、それぞれPLL回路により基準の周波数信号に位相同期された変調周波数が固定された状態のN種類の変調信号を発生するものとすることができる。
【0017】
さらに、本発明に係る光コム発生装置において、上記駆動制御部は、上記基準周波数信号に位相同期されたシステムクロックにより動作するM個のDDS(Direct Digital Synthesizer)からなる信号源と、上記M個のDDSの動作を制御して、N種類の変調周波数を巡回的に切り替えた互いに変調周波数が異なるM種類の変調信号を出力させる切り替え制御手段とを備え、上記M種類の変調信号を駆動信号として上記光コム発生部に供給するものとすることができる。
【0018】
また、本発明は、測定光の干渉信号と基準光の干渉信号の時間差から距離を測定する光コム距離計測用の光コム発生装置であって、 基準周波数信号に位相同期された互いに変調周波数の異なるN種類の変調信号を駆動信号として出力するN個の信号源と、上記N個の信号源から出力される駆動信号により駆動され、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周波数が異なるN種類の光コムを発生するN個の光コム発生器を備える光コム発生部と、上記光コム発生部に備えた上記N個の光コム発生器により発生されるN種類の光コムから、互いに変調周波数が異なるM種類の光コムを巡回的に選択して出力するN入力M出力の光スイッチと、上記基準周波数信号に同期して上記光スイッチによる光コムの選択動作を制御する光スイッチ制御部とを備えることを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明に係る光コム発生装置において、上記駆動制御部は、切替順序の一方向と逆方向を連続させて切り替える巡回方式でN(Nは3以上の整数)種類の変調周波数が巡回的に切り替えられた互いに変調周波数が異なるM(Mは2以上の整数)種類の光コムを上記光コム発生部から出力させる制御を行うものとすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、基準周波数信号に位相同期されたM種類の駆動信号を光コム発生部に供給して、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、N(Nは3以上の整数)種類の変調周波数が巡回的に切り替えられた互いに変調周波数が異なるM(Mは2以上の整数)種類の光コムを出力させることにより、測定光の干渉信号と基準光の干渉信号の時間差から距離を測定する光コム距離計などにおいて、測定対象以外の信号伝送経路による位相オフセットを補正して高精度に絶対距離結果を得ることができる
【0021】
また、本発明によれば、移動速度が速くなればなるほど絶対距離の測定時間を短縮する必要がある移動体に対しても、絶対距離の測定時間を短縮して高精度に絶対距離測定を行うことができる光コム発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明を適用した光コム発生装置の構成例を示すブロック図である。
図2】上記光コム発生装置において、2つ光コム発生器に供給される駆動信号の状態遷移を示す状態遷移図である。
図3】上記光コム発生装置におけるスイッチ部の具体的な構成例を示すブロック図である。
図4】本発明を適用した光コム発生装置の他の構成例を示すブロック図である。
図5】光コム発生装置に用いられる周波数変換器の構成例を示すブロック図である。
図6】DDS発振器により光コム発生器を駆動するようにした光コム発生装置の基本構成を示すブロック図である。
図7】DDS発振器により光コム発生器を駆動するようにした本発明に係る光コム発生装置の構成例を示すブロック図である。
図8】光スイッチにより光コムを切り替えるようにした本発明に係る光コム発生装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、共通の構成要素については、共通の指示符号を図中に付して説明する。また、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能であることは言うまでもない。
【0024】
本発明は、例えば図1のブロック図に示すように、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周波数が異なる干渉性のある測定光と基準光と出射する2つの光コム発生器16A,16Bを備える光コム発生装置10に適用される。
【0025】
この光コム発生装置10は、例えば特許文献1,2等に記載されている測定光の干渉信号と基準光の干渉信号の時間差から距離を測定する光コム距離計や三次元形状測定機において、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周波数が異なる干渉性のある測定光と基準光と出射する光源として用いられる。
【0026】
この光コム発生装置10は、駆動制御部11から、N(Nは3以上の整数)種類の変調周期が巡回的に切り替えられた互いに変調周波数が異なるM(Mは2以上の整数)種類の駆動信号が与えられる光コム発生部16により、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、N(Nは3以上の整数)種類の変調周波数が巡回的に切り替えられた互いに変調周波数が異なるM(Mは2以上の整数)種類の光コムを出力するもので、ここでは、N=4、M=2として、上記駆動制御部11からN(N=4)種類の変調周波数が巡回的に切り替えられた互いに変調周波数が異なるM(M=2)種類の駆動信号FmA,FmBが、光コム発生部16に備えられたM(M=2)個の光コム発生器16A,16Bに与えられることにより、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、N(N=4)種類の変調周波数が巡回的に切り替えられた互いに変調周波数が異なるM(M=2)種類の光コムを上記光コム発生器16A,16Bから出力するようになっている。
【0027】
この光コム発生装置10における駆動制御部11は、基準発振器12Rにより与えられる基準周波数信号FREFに位相同期して周波数が固定された互いに周波数が異なるN(N=4)種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4を発生するN(N=4)個のPLL発振器12A,12B,12C,12Dを備える変調信号発生部12と、この変調信号発生部12からN(N=4)種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4が入力されるN(N=4)入力M(M=2)出力のスイッチ部14と、このスイッチ部14による変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4の選択出力の切り替え制御を行う制御部15を備える。
【0028】
第1のPLL発振器12Aは、上記基準発振器12Rにより発生される基準周波数信号FREFにPLL回路により位相同期されて第1の周波数f(f=25000MHz)に固定された第1の変調信号Fm1を発生する。
【0029】
また、第2のPLL発振器12Bは、上記基準発振器12Rにより発生される基準周波数信号FREFにPLL回路により位相同期されて第2の周波数f+Δf(f+Δf=25010MHz)に固定された第2の変調信号Fm2を発生する。
【0030】
また、第3のPLL発振器12Cは、上記基準発振器12Rにより発生される基準周波数信号FREFにPLL回路により位相同期されて第3の周波数f+Δf(f+Δf=25000.5MHz)に固定された第3の変調信号Fm3を発生する。
【0031】
さらに、第4のPLL発振器12Dは、上記基準発振器12Rにより発生される基準周波数信号FREFにPLL回路により位相同期されて第4の周波数f+Δf(f+Δf+Δf=25010.5MHz)に固定された第4の変調信号Fm4を発生する。
【0032】
なお、この駆動制御部11では、 変調信号発生部12とスイッチ部14の間にアイソレータ13A,13B,13C,13Dを挿入して、変調信号発生部12からアイソレータ13A,13B,13C,13Dを介してスイッチ部14にN(N=4)種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4が入力されるようになっている。
【0033】
このようにアイソレータ13A,13B,13C,13Dを挿入して、上記変調信号発生部12からアイソレータ13A,13B,13C,13Dを介してスイッチ部14に周波数信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4を入力することにより、スイッチ部14以降の回路の遮断や解放などによる負荷変動で信号源(PLL発振器12A,12B,12C,12D)の動作が不安定になるのを防止することができる。
【0034】
上記アイソレータ13A,13B,13C,13Dには、リバースアイソレーションが大きいマイクロ波増幅器、π型抵抗減衰器やT型抵抗減衰器、フェライトを用いたマイクロ波アイソレータなどのアイソレーション素子や、可変減衰器と帯域通過フィルタとを組み合わせたアイソレーション回路やアイソレーション増幅器と抵抗減衰器や帯域通過フィルタとを組み合わせたアイソレーション回路など用いることができる。
【0035】
そして、上記スイッチ部14は、上記変調信号発生部12から上記アイソレータ13A,13B,13C,13Dを介して入力される4種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4を巡回的に切り替えて2つの出力端子から交互に出力し、上記2つの出力端子に接続されている上記光コム発生部16に備えられた2つの光コム発生器16A,16Bに駆動信号FmA,FmBとして供給する4種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4を巡回的に切り替える4入力2出力のセレクタスイッチとして機能する。
【0036】
この光コム発生装置10における上記光コム発生部16に備えられた2つ光コム発生器16A,16Bに駆動信号FmA,FmBの遷移状態を図2に示すように、上記スイッチ部14は、上記光コム発生器16A,16Bに駆動信号FmA,FmBとして供給する4種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4を巡回的に切り替える。
【0037】
ここで、この光コム発生装置10は、特許文献1,2等に記載されている光コム距離計や三次元形状測定機において周波数の切り替えを要する絶対距離測定を行うための基準光パルスと測定光パルスとして2種類の光コムを発生するものであって、上記4種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4を上記スイッチ部14により巡回的に切り替えて上記光コム発生器16A,16Bに駆動信号FmA,FmBとして供給することにより、上記光コム発生器16A,16Bから、表1に示すように、変調周波数が循回的に切り替えられた互いに変調周波数が異なる2種類の光コムが出力される。
【表1】
【0038】
表1は、#1~4の設定における2つの光コム発生器16A,16Bの駆動信号FmA,FmBの遷移状態OFCG1/OFCG2と位相差を示しており、駆動信号の周波数は、例えば、Δf=500kHz、Δf=10MHz、f=Fm1(25000MHz)、f+Δf=Fm2(25010MHzMHz)、f+Δf=Fm3(25000.5MHz)、f+Δf+Δf=Fm4(25010.5MHz)である。
【0039】
図2は、この光コム発生装置10において、2つ光コム発生器16A,16Bに供給される駆動信号FmA,FmBの状態遷移を示す状態遷移図である。
【0040】
ここで、光コム距離計では、原理的に周波数が異なる2種類の変調信号により駆動される2つの光コム発生器からパルス出射される干渉性のある基準光パルスと測定光パルスを用いることにより、信号処理部において、基準光検出器により得られる干渉信号(以下、参照信号と言う。)測定光検出器により得られる干渉信号(以下、測定信号と言う。)について周波数解析を行い、光コムの中心周波数から数えたモード番号をPとして、参照信号と測定信号のP次モード同士の位相差を計算して光コム発生器から基準点までの光コム生成、伝送過程の光位相差を相殺した後、周波数軸で次数1あたりの位相差の増分を計算して信号パルスの位相差を求めることにより、基準点から測定面までの距離を算出する。
【0041】
なお、測定距離が変調周波数fの半波長を超えると物体光の周期性によりその半波長の整数倍の距離が不明となって一義的に距離を求められないので、表1に示す4通りの変調周波数に設定した基準光パルスと測定光パルスを用いて4回測定して、信号処理部において、同じ処理を行うことにより得られる各位相差を用いて、半波長相当の多義性距離(La=c/2f c:光速)を超える距離を算出する。
【0042】
すなわち、表1に示す4通りの変調周波数に設定して測定して得られる参照信号と測定信号の位相差は、2つの光コム発生器(OFCG1,OFCG2)を駆動する変調信号の変調周波数がfとf+Δfである#1の設定では-2πfTとなり、変調信号の変調周波数がf+Δfとf+Δf+Δfである#2の設定では-2π(f+Δf)Tとなり、変調信号の変調周波数がf+Δfとfである#3の設定では-2π(f+Δf)Tとなり、変調信号の変調周波数がf+Δf+Δfとf+Δfである#4の設定では-2π(f+Δf+Δf)Tとなる。
【0043】
距離(La=c/2f c:光速)も長い場合、参照信号と測定信号の位相差(-2πfT)は、mを整数としてφ+2mπの形であり、計算によりφの部分だけが求められるが、整数値mは不明である。
【0044】
一方、#1の設定での参照信号と測定信号の位相差-2πfTと#2の設定での参照信号と測定信号の位相差-2π(f+Δf)Tの差は2πΔfTであり、また、#3の設定での参照信号と測定信号の位相差-2π(f+Δf)Tと#4の設定での参照信号と測定信号の位相差-2π(f+Δf+Δf)Tの差は2πΔfTであり、1/Δfの波長に相当する距離(Δf=10MHzであればLaは15m)までならば、一義的に位相が決まる。
【0045】
そして、この位相をf/Δf倍して#1の位相差との比較により整数mを判定することができる。
【0046】
さらに、表1の#1の設定での位相差-2πfTと#3の設定での位相差-2π(f+Δf)Tの差から2πΔfTが得られる。
【0047】
さらに、表1の#2の設定での位相差-2π(f+Δf)Tと#4の設定での位相差-2π(f+Δf+Δf)Tの差から2πΔfTが得られる。
【0048】
ここで、f=25GHz、Δf=500kHz、Δf=10MHzとした場合、Δf=500kHzであるからLa=300mまでの距離計測を行うことができる。
【0049】
この光コム発生装置10を搭載した光コム距離計では、表1に示す4通りの変調周波数に設定して測定して得られる参照信号と測定信号を用いて絶対距離計測が行われる。すなわち、1つの状態を一定時間保持した後に他の状態に移り、一定の区間でその状態の信号位相計測を行い、#1、#2、#3、#4の設定状態の位相を使って絶対距離の計算処理を実行する。
【0050】
光コム距離計における計測速度は、6mm以内の相対距離測定ではΔfに等しく500kHzであるのに対し、周波数の切り替えを要する絶対距離測定では、周波数の切り替え時間と絶対距離計算時間を含めたものとなる。
【0051】
上記光コム発生装置10では、上記4種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4を上記スイッチ部14により巡回的に切り替えて、2つの光コム発生器16A,16Bの駆動状態を迅速に遷移させることができ、参照信号と測定信号の変調周波数を切り替えて絶対距離計測を行う2つの光コム光源として用いることにより、絶対距離の測定時間を短縮することができる。
【0052】
すなわち、後述するように、発振周波数を自由に切り替え設定することができるPLL発振器により、互いに変調周波数が異なるM種類の変調信号を得るようにPLL発振器の発振周波数を実時間で切り替え設定するのでは、発振周波数を切り替えて設定周波数で位相同期させて目的の周波数で安定した周波数信号を得るのに必要なセトリング時間が長く、迅速な測定処理を必要とする移動体に対する距離測定などの用途において、絶対距離の測定に時間がかかってしまい、実用的でないが、この光コム発生装置10では、移動速度が速くなればなるほど絶対距離の測定時間を短縮する必要がある移動体に対しても、絶対距離の測定時間を短縮して高精度に絶対距離測定を行うことができる。
【0053】
なお、この場合15mまでの距離計測だけであれば、#1と#2の設定のみ、あるいは、#3と#4の設定のみでも可能であるが、上述のごとく#1,#2,#3,#4の設定、すなわち、上記4種類の変調周波数Fm1,Fm2,Fm3,Fm4を上記スイッチ部14により巡回的に切り替えることにより、距離測定範囲が300mに拡張されるほか、測定対象以外の信号伝送経路による位相オフセットを補正して高精度に絶対距離結果を得ることができる。すなわち、2つの光コム発生器(OFCG1,OFCG2)16A,16Bの変調周波数を入れ替えたときに測定対象距離に由来の位相は絶対値が変わらず符号が反転する。一方、干渉信号伝送路のケーブル長さに由来するオフセットは符号が変わらず一定値になる。したがって、2回の位相測定の結果を差し引いて2で割るとオフセットを除外した位相値を求めることができる。
【0054】
ここで、巡回的な状態遷移は、#1を起点としてみた場合、次に#3、#2,#4、#2,#3、そして、#1に戻るように切り替えを設定している。この設定は、OFCG1とOFCG2を駆動している周波数の入れ替えた計測結果と、周波数の入れ替えの順序を逆順にして測定した結果も加味して距離計算することで、測定対象が速度をもって移動している間でも距離測定誤差が最小かつ最短時間で実行することに配慮して決定されている。
【0055】
位相オフセットを除外した位相値を得る2回の位相測定を行うに当たり、表1に示す4通りの変調周波数の切替順序は原理的には任意であるが、#1→#2→#3→#4→#4→#3→#2→#1の繰り返しや#1→#3→#2→#4→#4→#2→#3→#1の繰り返しのように、切替順序の一方向と逆方向を連続させて切り替える巡回方式を採用することにより、距離測定誤差や計測処理時間を少なくすることができる。
【0056】
なお、絶対距離計測を行うに当たり、基本的には周波数の「遷移状態」は4つ一組で距離計算を行うが、原理的にはΔf=Δfの場合も否定しないので、f、f+Δf、f+2Δfの3種類の変調周波数でも可能あり、本発明に係る光コム発生装置は、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、N(Nは3以上の整数)種類の変調周波数が巡回的に切り替えられた互いに変調周波数が異なるM(Mは2以上の整数)種類の光コムを出力する光コム発生部と、基準周波数信号に位相同期されたM種類の駆動信号を上記光コム発生部に供給して、上記M種類の光コムを出力させる制御を行う駆動制御部とを備えることにより、2つの光コム発生器の駆動状態を迅速に遷移させることができ、参照信号と測定信号の変調周波数を切り替えて絶対距離計測を行う2つの光コム光源として用いることにより、絶対距離の測定時間を短縮することができる。
【0057】
ここで、図3は、上記光コム発生装置10に備えられる4入力2出力のスイッチ部14の具体的な構成例を示すブロック図である。
【0058】
すなわち、スイッチ部14は、図3のブロック図に示すように、上記変調信号発生部12のPLL発振器12A,12B,12C,12Dにより発生される4種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4が、上記変調信号発生部12に接続されたアイソレータ13A,13B,13C,13Dを介して入力される初段のそれぞれ1入力2出力の4つのスイッチ回路141A,141B,141C,141D、上記初段のスイッチ回路141A,141B,141C,141Dを介して上記4種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4が入力される次の段に設けられたそれぞれ2入力1出力の2つのスイッチ回路142A,142B、上記2つのスイッチ回路142A,142Bの各出力端子に接続されたさらに次の段の1入力2出力の2つのスイッチ回路143A,143B、上記2つのスイッチ回路143A,143Bに接続された最終段のそれぞれ2入力1出力の2つのスイッチ回路144A,144Bが制御部(ロジック回路)15により10MHzの基準周波数信号FREFに同期して切り替え制御されることにより、上記2つ光コム発生器16A、16Bに駆動信号FmA,FmBの遷移状態を図2に示すように、上記2つ光コム発生器16A、16Bに駆動信号Fma,Fmbとして供給する上記4種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4を巡回的に切り替えるようになっている。
【0059】
このスイッチ部14において、初段の4つのスイッチ回路141A,141B,141C,141Dは、それぞれ2つの出力端子のうちの一方が次段の2つのスイッチ回路142A,142Bの入力端子に接続され、他方の出力端子が終端抵抗により終端されている。
【0060】
なお、図3のブロック図に示すスイッチ部14の具体例では、それぞれ可変減衰器と帯域通過フィルタを組み合わせたアイソレータ回路からなるから各アイアイソレータ13A,13B,13C,13Dを介して上記4種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4が初段の4つのスイッチ回路141A,141B,141C,141Dに入力され、終段の2つのスイッチ回路144A,144Bの出力端子から、上記巡回的に切り替える4種類の変調信号Fm1,Fm2,Fm3,Fm4がそれぞれアイソレーション増幅器と帯域通過フィルタを組み合わせたアイソレータ回路からなる第1、第2の帯域通過フィルタ14A,14Bを介して出力されるようになっている。
【0061】
次に、図4に示す光コム発生装置20は、図1に示した光コム発生装置10における2つ光コム発生器16A、16B供給する駆動信号として、変調信号発生部12により発生される1GHz帯域の周波数信号F,F,F,Fを周波数変換器23A,23Bによりアップコンバートして25GHz帯域の変調信号FmA,FmBを得るようにしたものである。
【0062】
この光コム発生装置20における駆動制御部11の変調信号発生部12は、1GHz帯域帯域の周波数信号F,F,F,Fを発生する4個のPLL発振器12A,12B,12C,12Dと24GHzの周波数信号Fを発生する1個のPLL発振器12Eを備える。
【0063】
この光コム発生装置20において、変調信号発生部12の第5のPLL発振器12Eは、基準発振器12Rから供給される基準周波数信号FREFにPLL回路により位相同期されて周波数fが固定された24GHzの周波数信号Fをパワーデバイダ21を介して上記2の周波数変換器23A,23Bに供給する。
【0064】
また、上記変調信号発生部12において、第1のPLL発振器12Aは、上記基準発振器12Rにより発生される周波数が例えば10MHzの基準周波数信号FREFにPLL回路により位相同期されて周波数がf’(f’=1000MHz)に固定された第1の周波数信号Fを発生する。
【0065】
また、第2のPLL発振器12Bは、上記基準発振器12Rにより発生される基準周波数信号FREFにPLL回路により位相同期されて周波数がf’+Δf(f’+Δf=1010MHz)に固定された第2の周波数信号Fを発生する。
【0066】
また、第3のPLL発振器12Cは、上記基準発振器12Rにより発生される基準周波数信号FREFにPLL回路により位相同期されて周波数がf’+Δf(f’+Δf=1000.5MHz)に固定された第3の周波数信号Fを発生する。
【0067】
さらに、第4の発振器12Dは、上記基準発振器12Rにより発生される基準周波数信号FREFにPLL回路により位相同期されて周波数がf’+Δf+Δf(f’+Δf+Δf=1010.5MHz)に固定された第4の周波数信号Fを発生する。
【0068】
上記変調信号発生部12において、上記第1乃至第4のPLL発振器12A,12B,12C,12Dにより得られる第1乃至第4の周波数信号F,F,F,Fは、アイソレータ13A,13B,13C,13Dを介して4入力2出力のスイッチ部14に入力される。
【0069】
上記スイッチ部14は、上記変調信号発生部12の基準発振器12Rにより与えられる基準周波数信号FREFに同期して、上記変調信号発生部12から上記アイソレータ13A,13B,13C,13Dを介して4個の入力端子に入力される上記第1乃至第4の周波数信号F,F,F,Fを巡回的に切り替えて2つの出力端子から出力し、1GHz帯の4種類の周波数信号F,F,F,Fを巡回的に切り替えた第1、第2の変調信号Fma,Fmbを上記2つの周波数変換器23A,23Bに供給する4入力2出力のセレクタスイッチとして機能する。
【0070】
ここで、上記変調信号発生部12とスイッチ部14の間にアイソレータ13A,13B,13C,13Dを挿入して、上記変調信号発生部12からアイソレータ13A,13B,13C,13Dを介してスイッチ回路14に周波数信号F,F,F,Fを入力することにより、スイッチ回路14以降の回路の遮断や解放などによる負荷変動で信号源の動作が不安定になるのを防止することができる。
【0071】
上記アイソレータ13A,13B,13C,13Dには、リバースアイソレーションが大きいマイクロ波増幅器、π型抵抗減衰器やT型抵抗減衰器、フェライトを用いたマイクロ波アイソレータなどのアイソレーション素子や、可変減衰器と帯域通過フィルタとを組み合わせたアイソレーション回路やアイソレーション増幅器と抵抗減衰器や帯域通過フィルタとを組み合わせたアイソレーション回路など用いることができる。
【0072】
そして、上記第1,第2の周波数変換器23A,23Bは、上記第5のPLL発振器12Eから供給される周波数(例えば、24GHz)の周波数信号F0と、上記スイッチ部から1GHz帯の4種類の周波数f’=1000MHz、f’+Δf=1010MHz、f’+Δf=1000.5MHz、f’+Δf’+Δf=1010.5MHzの周波数信号F,F,F,Fが巡回的に切り替えて交互に出力される第1、第2の変調信号Fma,Fmbを用いて、25GHz帯域の4種類の変調周波数f=25000MHz,f+Δf=25010MHz,f+Δf=25000.5MHz,f+Δf+Δf=25010.5MHzに周波数変換した第1、第2の変調信号FmA,FmBを得て、上記第1、第2の光コム発生器16A,16Bに駆動信号として供給する。
【0073】
すなわち、上記第1,第2の周波数変換器23A,23Bは、1GHz帯の周波数信号F,F,F,Fからなる第1、第2の変調信号Fma,Fmbを上記第1、第2の光コム発生器16A,16Bに駆動信号として供給する25GHz帯域の第1、第2の変調信号FmA,FmBに周波数変換するアップコンバータとして機能する。
【0074】
上記第1,第2の周波数変換器23A,23BにはダイオードやダブルバランスドミキサやIQミキサなどの周波数混合器、あるいは、例えば、図5に示すような構成の位相同期を利用した周波数変換器23が用いられる。
【0075】
ここで、上記第1,第2の周波数変換器23A,23BにダイオードやダブルバランスドミキサやIQミキサなどの周波数混合器を用いる場合、周波数混合器は、非線形素子であるために、上記#1,#2,#3,#4の設定状態で必要な周波数成分(f、f+Δf、f+Δf、f+Δf+Δf)以外の周波数成分が発生するので、第1,第2の周波数変換器23A,23Bの出力側にそれぞれ帯域通過フィルタ24A,24Bを挿入して必要な周波数成分だけを駆動信号として光コム発生器16A,16Bに供給することになる。
【0076】
例えば、周波数混合器を用いた第1の周波数変換器23Aでは、例えば#1の設定の場合、必要なfの周波数成分だけでなく望まない周波数成分f+Sf(S=0を除く)のスプリアスが発生する。ここで、Sは整数であり、fは周波数混合器23Aに入力される周波数変換前の変調信号の周波数である。この周波数成分が第1の光コム発生器16Aに駆動信号として供給する第1の変調信号FmAに混入すると、上記第1の光コム発生器16Aによる光コム発生においてスプリアスとなって計測値に影響を及ぼす場合がある。この影響を避けるために帯域通過フィルタ24Aを用いて、必要なfの周波数成分だけを通過させ、それ以外の周波数成分を測定仕様に影響しない程度まで減衰させる。
【0077】
また、周波数混合器を用いた第1の周波数変換器23Aにより発生される望まない周波数成分f+Sfは、入力側のパワーデバイダ21の方向にも伝搬し、パワーデバイダ21も理想的な特性ではないので、第2の周波数変換器23Bに到達することになる。第2の周波数変換器23Bに到達した上記望まない周波数成分f+Sfが周波数変換されることにより、該第2の周波数変換器23Bの出力には、f+Sf+S’(f+Δf)の周波数成分が混入することになる。ここで(f+Δf)は周波数変換器23Bに入力される周波数変換前の変調信号の周波数である。
【0078】
ここで、S’は整数である。S+S’=0以外の周波数成分は、fから+f又は-fの外になるので、必要なf+Δfの周波数を通過させる帯域通過フィルタ24Aにより減衰させることできる。しかし、S+S’=0の周波数成分は、f+S’Δfとなり、必要なS’=1のf+Δfに極めて近い周波数成分で、帯域通過フィルタ24Aにより取り去ることは困難であるが、入力側にそれぞれアイソレータ22A,22Bを挿入することにより、周波数変換器23A,23Bによる反射成分を減衰させることができる。
【0079】
上記アイソレータ22A,22Bには、リバースアイソレーションが大きいマイクロ波増幅器、パイ型抵抗減衰器やT型抵抗減衰器、フェライトを用いたマイクロ波アイソレータなどのアイソレーション素子や、可変減衰器と帯域通過フィルタとを組み合わせたアイソレーション回路やアイソレーション増幅器と抵抗減衰器や帯域通過フィルタとを組み合わせたアイソレーション回路など用いることができる。
【0080】
上記光コム発生装置20では、実用上、これらを組み合わせて、パフォーマンスの向上が図られた最適な構造が採用される。
【0081】
なお、上記光コム発生装置20において、f、f+Δfを100MHz程度とすると、40dB以上の相対位相雑音の改善が見込まれるが、f=25GHzの場合でf=100MHzの場合、帯域通過フィルタ25A,25Bには、f+f又はf-fのスプリアスを低減するには2500以上の極めてQ値の高いフィルタが必要となる。
【0082】
ここで、上記周波数変換器23A,23Bには、ダイオードやダブルバランスドミキサやIQミキサなどの周波数混合器ではなく、図5に示すような構成の位相同期を利用した周波数変換器23を用いることもできる。
【0083】
この周波数変換器23は、位相比較器231と、この位相比較器231により発振位相が制御される電圧制御型発振器232と、この電圧制御型発振器232から出力される周波数信号が分岐されて入力される周波数混合器233を備える。
【0084】
この周波数変換器23では、100MHz帯の変調周波数fの変調信号Fが位相比較器231に入力され、上記第5のPLL発振器12Eから周波数がf-fの周波数信号として24.9GHzの周波数信号Fが周波数混合器233に供給される。電圧制御型発振器232から出力される25GHz帯の変調周波数fの変調信号Fと上記24.9GHzの周波数信号Fとの差周波数f’の周波数信号を上記周波数混合器233により得て上記100MHz帯の変調周波数fの変調信号Fと上記位相比較器231により位相比較して得られる位相比較出力で上記電圧制御型発振器232の発振位相を制御することにより、上記100MHz帯の変調周波数fの変調信号Fに位相同期して周波数が固定された25GHz帯の変調周波数fの変調信号Fを上記電圧制御型発振器232から出力する。
【0085】
すなわち、この周波数変換器23は、例えば上記周波数変換器23Aとして用いる場合、上記位相比較器231に上記スイッチ部14により100MHz帯の4種類の周波数信号F,F,F,Fを巡回的に切り替えた第1の変調信号Fmaが供給されることにより、上記差周波数f’の周波数信号と上記第1の変調信号Fmaとの位相比較を行い上記電圧制御型発振器232にフィードバックして、上記電圧制御型発振器232の発振位相を制御して、100MHz帯の第1の変調信号Fmaをアップコンバートした25GHz帯の周波数fmAの変調信号FmAを上記電圧制御型発振器232から出力することができる。
【0086】
また、この周波数変換器23は、例えば上記周波数変換器23Bとして用いる場合、上記位相比較器231に上記スイッチ部14により100MHz帯の4種類の周波数信号F,F,F,Fを巡回的に切り替えた第2の変調信号Fmbが供給されることにより、上記差周波数f’の周波数信号と上記第2の変調信号Fmbとの位相比較を行い上記電圧制御型発振器232にフィードバックして、上記電圧制御型発振器232の発振位相を制御して、100MHz帯の第2の変調信号Fmbをアップコンバートした25GHz帯の周波数fmBの変調信号FmBを上記電圧制御型発振器232から出力することができる。
【0087】
ここで、この周波数変換器23において、上記位相比較器231は、ダブルバランスドミキサなどの位相比較器が用いられ、同一周波数同士の位相比較を行うため低雑音である。また、周波数比較が変調周波数fの100MHz帯の周波数で行われるため、制御帯域を大きくでき、例えば10MHz以上とることができる。そのため、周波数変換器23A,23Bの出力の相対位相雑音は、100MHz帯の変調周波数f、f+Δfの信号の相対位相雑音となる。さらに、PLLの制御帯域が大きいため目的の周波数で安定した周波数信号を得るのに必要なセトリング時間は小さくできる。
【0088】
また、周波数変換器23の出力は、100MHz帯の変調周波数f又はf+Δfの信号の位相同期の制御帯域より十分大きいので、電圧制御型発振器232のスプリアスf+f又はスプリアスf-fを小さくできる。
【0089】
したがって、上記周波数変換器23A,23Bとしてそれぞれ上記位相同期を利用した周波数変換器23を用いることにより、出力側の帯域通過フィルタ23A,23Bは、不要とする、あるいは仕様を軽減することができる。
【0090】
ここで、PLL発振器は、発振周波数を自由に切り替え設定することができるので、上記駆動制御部11は、M個のPLL発振器の発振周波数をそれぞれ巡回的に切り替え設定することにより、スイッチ部を必要とすることなく、互いに変調周波数が異なるM種類の変調信号をM個のPLL発振器により得て、M個の光コム発生器に駆動信号として供給することができる。しかしながら、発振周波数を自由に切り替え設定することができるPLL発振器は、発振周波数を切り替え設定する場合に、発振周波数を切り替えて設定周波数で位相同期させて目的の周波数で安定した周波数信号を得るのに必要なセトリング時間が長く、迅速な測定処理を必要とする用途において、互いに変調周波数が異なるM種類の変調信号を得るようにPLL発振器の発振周波数を実時間で切り替え設定するのは実用的でない。
【0091】
なお、PLL発振器の発振周波数を実時間で切り替え設定するのは実用的でないが、DDS発振器であれば、発振周波数を実時間で切り替え設定して使用することができる。
【0092】
DDSはダイレクト・ディジタル・シンセサイザの略で、周波数データ(位相増加分)を設定するだけで任意周波数の出力が得られる発振器として知られている。DDS発振器33を用いた変調信号発生部32を備える駆動制御部31により、光コム発生部36の光コム発生器36Aを駆動するようにした光コム発生装置30の基本的な構成例を図6のブロック図に示す。
【0093】
この光コム発生装置30における駆動制御部31は、DDS発振器33を用いた変調信号発生部32と、上記DDS発振器33の動作制御を行うDDS制御部35からなり、上記DDS制御部35により動作制御される上記DDS発振器33から各種変調周波数の変調信号を光コム発生部36に備えられた光コム発生器36Aに駆動信号として供給する。
【0094】
変調信号発生部32は、基準信号発生器32Rにより発生される基準周波数信号FREFに同期してシステムクロックを発生するPLL発振器32Aと、このシステムクロックにより駆動されるDDS発振器33とを備え、上記DDS制御部35により上記DDS発振器33の動作が制御されることにより、上記DDS制御部35により設定される任意のタイミングで位相が連続した状態で周波数を切り替えて、上記DDS発振器33から各種変調周波数の変調信号を出力する。
【0095】
光コム発生部36に備えられた光コム発生器36Aは、上記DDS発振器33から駆動信号として供給される各種変調周波数に瞬時に切り替え可能な変調信号により駆動されることにより、光コムを発生する。
【0096】
ここで、DDS発振器33は、位相同期法による発振器と異なり、システムクロックにより駆動され、選択されるDDS内のROMテーブルの波形データを読みだしDA変換して周波数信号を出力するため、瞬時に周波数の切り替えが行え、位相同期のような緩和時間は存在しない。これは変調周波数の切り替えを行う光コム発生システム簡略化に寄与し、緩和時間の無駄時間を軽減し高速測定に寄与できる。
【0097】
図7のブロック図に示す光コム発生装置40は、参照信号と測定信号の変調周波数を切り替えて絶対距離計測を行う光コム距離計用の複数M個(ここでは、M=2)の光コム発生器36A、36Bを複数M個(ここでは、M=2)のDDS発振器33A、33Bにより駆動するようにしたものであある。
【0098】
この光コム発生装置40において、DDS発振器33A、33Bは、基準信号発生器32Rにより発生される基準周波数信号FREFに同期してPLL発振器32Aにより発生されるシステムクロックにより駆動され、DDS制御部35により設定される任意のタイミングで周波数を位相が連続した状態で切り替えて各種変調周波数の変調信号を出力することができ、ここでは、1GHz帯の4種類の周波数f’=1000MHz、f’+Δf=1010MHz、f’+Δf=1000.5MHz、f’+Δf+Δf=1010.5MHzが図2に示した遷移状態となるタイミングで巡回的に切り替えられた第1、第2の変調信号Fma,Fmbを交互に出力する。
【0099】
そして、この光コム発生装置40における駆動制御部31は、変調信号発生部12のDDS発振器33A、33Bにより発生される1GHz帯の4種類の周波数f’=1000MHz、f’+Δf=1010MHz、f’+Δf=1000.5MHz、f’+Δf+Δf=1010.5MHzが巡回的に切り替えられた第1、第2の変調信号Fma,Fmbを周波数変換器42A,42Bによりアップコンバートして25GHz帯域の変調信号FmA,FmBを得て、光コム発生器36に備えられた2つの光コム発生器16A,16Bに駆動信号として供給する。
【0100】
すなわち、この光コム発生装置40における変調信号発生部32は、基準信号発生器32Rにより発生される基準周波数信号FREFに同期して周波数が24GHzの周波数信号を発生するPLL発振器32Bを備え、このPLL発振器33Bにより発生される周波数が24GHzの周波数信号がアイソレータ41A,41Bを介して上記周波数変換器42A,42Bに供給されることにより、上記DDS発振器33A、33Bにより発生される1GHz帯の第1、第2の変調信号Fma,Fmbを上記周波数変換器42A,42Bにより25GHz帯域の変調信号FmA,FmBにアップコンバートして、帯域通過フィルタ43A,43Bを介して光コム発生器36に備えられた2つの光コム発生器36A,36Bに駆動信号として供給するようになっている。
【0101】
なお、上記周波数変換器42A,42Bとして、図5に示した位相同期を利用した周波数変換器23を用いることにより、出力側の帯域通過フィルタ43A,43Bは、不要とする、あるいは仕様を軽減することができる。
【0102】
この光コム発生装置40では、DDS制御部35によりDDS発振器33A、33Bの動作を制御することにより、位相が連続した状態で変調周波数を巡回的に切り替えて光コム発生器36に備えられた2つの光コム発生器36A,36Bの駆動状態を迅速に遷移させることができ、参照信号と測定信号の変調周波数を切り替えて絶対距離計測を行う2つの光コム光源として用いることにより、絶対距離の測定時間を短縮することができる。
【0103】
ここで、上記光コム発生装置10,20,40では、N=4、M=2として、N(N=4)種類の変調周波数が巡回的に切り替えられた互いに変調周波数が異なるM(M=2)種類の光コムを上記光コム発生部16(36)の2つの光コム発生器16A,16B(36A,36B)から出力するようにしたが、変調周波数の数Nは、N=4に限定されることなく、3以上の整数であればよく、また、光コム発生器の数Mは、M=2に限定されることなく、2以上の整数であればよく、駆動制御部11(31)は、基準周波数信号FREFに位相同期されたN種類の変調周波数が巡回的に切り替えられた互いに変調周波数が異なるM種類の駆動信号を光コム発生部16(36)に供給して、上記光コム発生部16(36)からM種類の光コムを出力させる駆動制御を行うものとすることができる。
【0104】
例えば、上記光コム発生装置10,20において、上記駆動制御部11は、基準周波数信号発生器12Rにより与えられる基準周波数信号FREFに位相同期された互いに発振周波数が異なるN種類の変調信号を巡回的に切り替えた互いに変調周波数が異なるM種類の変調信号を出力するものとすることができ、例えば、N個のPLL発振器により得られる互いに発振周波数が異なるN種類の変調信号をN入力M出力のスイッチ部14により循環的に切り替えて互いに変調周波数が異なるM種類の変調信号を得るようにして、上記M種類の変調信号を駆動信号として光コム発生部に備えられるM個の光コム発生器に供給するものとすることができる。
【0105】
また、上記光コム発生装置40において、上記駆動制御部31は、M個のDDS発振器により基準周波数信号FREFに位相同期された互いに発振周波数が異なるN種類の変調信号を巡回的に切り替えた互いに変調周波数が異なるM種類の変調信号を得るようにして、上記M種類の変調信号を駆動信号として光コム発生部に備えられるM個の光コム発生器に供給するものとすることができる。
【0106】
また、上記光コム発生装置10、20では、上記駆動制御部11は、基準周波数信号発生器12Rにより与えられる基準周波数信号FREFに位相同期された互いに発振周波数が異なるN種類の変調信号をN入力M出力のスイッチ部14により巡回的に切り替えて、互いに変調周波数が異なるM種類の変調信号を駆動信号として光コム発生部に備えられるM個の光コム発生器によりM種類の光コムを出力させるようにしたが、図8に示す光コム発生装置50のように、互いに変調周波数が異なるN種類の光コムを発生するN個の光コム発生器16A,16B,・・・により発生されるN種類の光コムからN入力M出力の光スイッチ31により互いに変調周波数が異なるM種類の光コムを巡回的に選択して出力することもできる。
【0107】
この場合、すべての光コムの変調周波数が異なっている必要はなく、一部は同じ変調周波数でも波長違いとか、別の切換えにも使うことができる。干渉を取るために変調周波数が異なっている同一波長帯の光コムが一組含まれていることは必須であるが、同じ変調周波数の組み合わせで別波長帯の光コムが含まれていても機能する。
【0108】
ここでは、N=4、M=2として、この光コム発生装置50における光コム発生部16は互いに変調周波数が異なる4種類の光コムを発生する4個の光コム発生器16A,16B,16C,16Dを備え、駆動制御部11は、基準発振器12Rにより発生される基準周波数信号FREFに位相同期されたN(N=4)種類の変調信号を発生する4個のPLL発振器12A,12B,12C,12Dを備える変調信号発生部12と、上記光コム発生部16により発生される4種類の光コムから互いに変調周波数が異なる2種類の光コムを巡回的に選択して出力する4入力2出力の光スイッチ51と、上記4入力2出力の光スイッチ51による光コムの選択動作を制御する制御部52を備え、上記4入力2出力の光スイッチ51により互いに変調周波数波長帯域が異なる4種類の光コムを巡回的に選択した2種類の光コムを出力する。
【0109】
この光コム発生装置50における駆動制御部11は、光コムを切り替えるので、変調信号発生部12で発生される互いに変調周期が異なる変調信号を切り替える必要がない。
【0110】
10,20,30,40,50 光コム発生装置、11,31 駆動制御部、12,32 変調信号発生部、12A,12B,12C,12D,12E,32A、32B PLL発振器、12R,32R 基準信号発振器、13A,13B,13C,13D,22A,22B,41A,41B アイソレータ、14 スイッチ部、14A,14B,24A,24B,43A,43B 帯域通過フィルタ、15,52 制御部、16,36 光コム発生部、16A,16B,16C,16D,36A,36B 光コム発生器、23,23A,23B 周波数変換器、21 パワーデバイダ、33,33A,33B DDS発振器、35 DDS制御部、51 光スイッチ、231 位相比較器、22 電圧制御型発振器、233 周波数混合器
【要約】
【課題】 測定光の干渉信号と基準光の干渉信号の時間差から距離を測定する光コム距離計などにおいて、測定対象以外の信号返送経路による位相オフセットを補正して高精度に絶対距離結果を得ることができる光コム発生装置を提供する。
【解決手段】 駆動制御部11により、光コム発生部16に備えられたM個の光コム発生器16A,16Bに駆動信号を供給して、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、N((Nは3以上の整数)の整数)種類の変調周期が巡回的に切り替えられた互いに変調周期が異なるM(Mは2以上の整数)種類の光コムを上記M個の光コム発生器16A,16Bから出力させる制御を行う。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8