(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】MC型レコード再生用カンチレバー、MC型レコード再生用カートリッジ、およびレコードプレーヤー
(51)【国際特許分類】
G11B 3/50 20060101AFI20220106BHJP
G11B 33/12 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
G11B3/50 M
G11B33/12 313G
G11B3/50 Q
(21)【出願番号】P 2021087407
(22)【出願日】2021-05-25
【審査請求日】2021-05-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519397873
【氏名又は名称】小峰 崇城
(74)【代理人】
【識別番号】100180426
【氏名又は名称】剱物 英貴
(72)【発明者】
【氏名】小峰 崇城
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-176206(JP,U)
【文献】特開昭57-127901(JP,A)
【文献】国際公開第00/016318(WO,A1)
【文献】特開2008-052846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 3/50
G11B 33/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端にレコード針であるスタイラスを備える先端部、中間部、および後端部で構成されるMC型レコード再生用カンチレバーであって、
前記先端部は、前記先端の近傍領域にコイル巻回部を備え、
前記先端部と前記後端部は、形状記憶合金で構成される前記中間部で接続されて
おり、
前記先端部には先端部支柱が設けられている
ことを特徴とするMC型レコード再生用カンチレバー。
【請求項2】
前記中間部は、前記先端部および前記後端部より細い、請求項1に記載のMC型レコード再生用カンチレバー。
【請求項3】
前記コイル巻回部は、導線が略平面状に並べて渦巻き状に巻回されてなる、請求項1または2に記載のMC型レコード再生用カンチレバー。
【請求項4】
前記コイル巻回部は、前記コイル巻回部の平面方向が前記先端部の長手方向と平行になるように前記先端部に接続されている、請求項3に記載のMC型レコード再生用カンチレバー。
【請求項5】
請求項
1~4のいずれか1項に記載のMC型レコード再生用カンチレバーを備えるMC型レコード再生用カートリッジであって、
表面に弾性部材を備える土台と、
前記後端部を前記土台に固定する後端部固定支柱と、を備え
前記先端部に設けられた前記先端部支柱と前記弾性部材が接続されている
MC型レコード再生用カートリッジ。
【請求項6】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のMC型レコード再生用カンチレバーを備えるレコードプレーヤー。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、アナログレコードの再生に用いるMC型レコード再生用カンチレバー、MC型レコード再生用カートリッジ、およびレコードプレーヤーに関する。
【0002】
レコードを再生するレコードプレーヤーは、レコードにカートリッジを載置して音声信号をスピーカーに出力する。回転するレコードの表面にカートリッジを載置すると、カンチレバーに備えられているレコード針(以下、「スタイラス」と称する。)の先端がレコードに設けられている断面略V字の音溝に嵌る。そして、レコードが回転することにより、音溝の形状に応じてスタイラスが振動し、カンチレバーを介してスタイラスの振動が音声信号に変換される。
【0003】
カンチレバーの振動を音声信号に変換する形式としては、主としてMoving Magnet Type(以下、単に「MM型」と称する。)とMoving Coil Type(以下、単に「MC型」と称する。)がある。MM型は、カンチレバーの後端が磁石に固定されており、磁石が振動することにより、ポールピースに巻かれたコイルに起電力が発生して音声信号が出力される。MC型は、カンチレバーの後端にコイルが巻かれており、磁石を備えるホールピースにより形成される磁界中でコイルが振動し、コイルに誘導起電力が発生することにより音声信号が出力される。
【0004】
このように、カンチレバーは、スタイラスの振動が減衰せず正確に伝導するように、一般に、Be、Ti、Bなどの硬い素材が用いられている。しかし、硬い素材は脆いために折れ易い。そこで、例えば、特許文献1には、BまたはTiB2のカンチレバー本体をAlなどの軽金属でコーティングしたカンチレバーが開示されている。また、特許文献2には、カンチレバー本体を樹脂でコーティングするとともに内部に樹脂を充填することが開示されている。特許文献3には、比較的脆性が小さいAlを用いたAl製カンチレバーにおいて、カンチレバー本体表面をテーパー状の酸化膜でコートする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭57-200905号
【文献】特開昭57-200904号
【文献】特公昭59-021082号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1~3に記載の発明では、折れなどの破損を抑制するために種々の検討がなされているものの、脆い材質が用いられているため、カンチレバーの破損を十分に抑制するには至っていない。ここで、カンチレバーにスタイラスを設けることを考慮すると、カンチレバー本体がAlで構成されてもよいとも思われる。しかし、カンチレバーの本体がAlで構成されたとしても、Alでも折れやすいという問題点は、特許文献3に記載のように従来から存在する。そして、特許文献3に記載の技術を用いたとしても、やはり、折れ易いAlが用いられているため、折れの発生を抑制するためには更なる検討が必要である。
【0007】
そこで、本発明の課題は、使用時の破損を抑制することができるMC型レコード再生用カンチレバー、MC型レコード再生用カートリッジ、およびレコードプレーヤーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、折れ易さを改善するため、折れの原因を再検討した。カートリッジをレコードに載置する際、カンチレバーには縦方向の応力が印加される。また、カートリッジがレコードに載置された後、スタイラスがレコードの音溝に移動する際、カンチレバーには横方向の応力が加わる。
【0009】
ここで、従来のMC型のカンチレバーは、スタイラスが設けられている端部とは反対側の他端部に細い導線でコイル巻回部を設ける必要がある。しかし、カンチレバーの直径は概ね0.1~2mm程度であり、コイルを巻くためには熟練の技術が必要であり、カンチレバー本体が破損した場合には修理に時間とコストがかかる。そこで、カートリッジの移動時に発生し得るカンチレバーの折れを抑制するためには、カンチレバーで応力を緩和することができるようにするか、若しくはカンチレバーが折れたとしても元に戻るようにすればよい。
【0010】
そこで、本発明者らは、振動伝達性が優れるとともに外部応力によりカンチレバーが変形したとしても元に戻る材質として、形状記憶合金を用いることに思い至った。形状記憶合金を用いることにより、カンチレバーに外部応力が加わり折れ曲がったとしても直ちに元に戻すことができるため、高額な修理を回避することができる。
【0011】
ただ、形状記憶合金は硬いため、スタイラスの挿入孔を加工することが困難である。また、カンチレバーの補強を鑑みると、従来技術のように、カンチレバーの表面および内部に工夫を施すことは提案されてきたが、長手方向において異なる材料を用いることは避けられていた。これは以下の理由であると考えられていた。従来のMC型の場合には、スタイラスの振動がカンチレバーに伝導し、カンチレバー後端部のコイルが振動して音声信号が電磁誘導により出力される。途中で材質が変わると、つなぎ目で振動が減衰したり、材質の違いにより振動が変質する恐れがある。このため、高音質を維持するためには、スタイラスが設けられている箇所の材質と同じ材質でカンチレバー全体が構成されている方が、高音質の音声信号が出力される、と考えられてきた。このため、外部応力による破損を抑制することと、高音質の音声信号を出力することが同時に満足することはなかった。
【0012】
本発明者らは、従来の技術常識に逆らい、まずは、外部応力による破損を抑制するため、敢えて、カンチレバーの長手方向に工夫を施してみた。具体的には、カンチレバーを、スタイラスが設けられる先端部、中間部、および後端部に分け、先端部および後端部を形状記憶合金で構成される中間部で接続した。これにともない、従来では後端部に設けられていたコイルを先端部に移動した。その結果、予想外にも、従来のカンチレバーより高音質が得られるとともに、外部応力によりカンチレバーが曲がった場合であっても容易に元に戻すことができる知見が得られた。
【0013】
この知見により得られた本発明は以下のとおりである。
(1)先端にレコード針であるスタイラスを備える先端部、中間部、および後端部で構成されるMC型レコード再生用カンチレバーであって、先端部は、先端の近傍領域にコイル巻回部を備え、記先端部と後端部は、形状記憶合金で構成される中間部で接続されており、先端部には先端部支柱が設けられていることを特徴とするMC型レコード再生用カンチレバー。
【0014】
(2)中間部は、先端部および後端部より細い、上記(1)に記載のMC型レコード再生用カンチレバー。
【0015】
(3)コイル巻回部は、導線が略平面状に並べて渦巻き状に巻回されてなる、上記(1)または上記(2)に記載のMC型レコード再生用カンチレバー。
【0016】
(4)コイル巻回部は、コイル巻回部の平面方向が先端部の長手方向と平行になるように先端部に接続されている、上記(3)に記載のMC型レコード再生用カンチレバー。
【0019】
(5)上記(1)~上記(4)のいずれか1項に記載のMC型レコード再生用カンチレバーを備えるMC型レコード再生用カートリッジであって、表面に弾性部材を備える土台と、後端部を土台に固定する後端部固定支柱と、を備え先端部に設けられた先端部支柱と弾性部材が接続されているMC型レコード再生用カートリッジ。
【0020】
(6)上記(1)~上記(4)のいずれか1項に記載のMC型レコード再生用カンチレバーを備えるレコードプレーヤー。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るMC型レコード再生用カンチレバーの一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態レコード再生用カートリッジの一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係るMC型レコード再生用カートリッジの一例を示す部分側面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係るMC型レコード再生用カートリッジの一例を示す部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を、図を用いて詳述する。なお、本発明は、以下で詳述する実施形態に限定されることはなく、また、好ましい態様を適宜組み合わせることができる。
【0023】
1. MC型レコード再生用カンチレバー
(1)MC型レコード再生用カンチレバーの概要
本実施形態に係るMC型レコード再生用カンチレバー(以下、単に、「カンチレバー」と称する。)は、コイルがカンチレバーに設けられているMC型のカンチレバーである。MC型は、スタイラスの振動がそのままコイル巻回部の振動になり、磁石を備えるホールピースにより発生する磁界がその振動により変化し、コイル巻回部に誘導起電力が発生する。このため、MC型は、MM型と比較して高音質になることが知られている。
【0024】
従来のMC型レコード再生用カンチレバーは、コイル巻回部を備える。コイル巻回部がホールピースの間に位置し、コイル巻回部が振動することによりコイル巻回部の端子から音声信号が出力される。
【0025】
このように、従来のMC型レコード再生用カンチレバーは、通常カンチレバー本体が一体的に形成されているため、外部応力により変形した場合には部品の交換を余儀なくされる。これに対して、本実施形態では、コイル巻回部の位置と、カンチレバーの構成が工夫されていることにより、従来ではなし得なかった高音質と外部応力に対する復元力を両立することができる。本実施形態に係るカンチレバーを、
図1を用いて詳述する。
【0026】
(2)本実施形態に係るカンチレバーの基本構造
図1は、本実施形態に係るMC型レコード再生用カンチレバー1の一例を示す斜視図である。本実施形態に係るカンチレバー1は、先端部2、中間部3、および後端部4で構成されている。先端部2と後端部4は中間部3を介して接続されている。
【0027】
先端部2と中間部3の接続部や、中間部3と後端部4との接続部は、各々溶接などにより接合されていてもよい。また、中間部3の両端が、各々先端部2または後端部4の内部に挿入され、先端部2や後端部4の内部に充填されている樹脂により、挿入された中間部3の端部が各々先端部2および後端部4の内部で固定されていてもよい。溶接で接合する場合と比較して、内部に挿入する方が容易に製造することができる点で好ましい。また、振動を後端部4に伝導させる必要がないため、樹脂などで固定しても音質に影響はない。
【0028】
(3)先端部
本実施形態の先端部2は、スタイラス2a、コイル巻回部2b、および先端部支柱2cを備える。スタイラス2aは、従来と同様に、ダイヤモンド、サファイヤなど、従来から使用している材質であれよく、形状や寸法も従来と同様のものを用いればよい。また、スタイラス2aは、従来と同様に先端部2の先端に設けられている。レコードを再生する際、スタイラス2aがレコードの表面に形成された略V字型の溝に嵌り、レコードが回転してスタイラス2aが溝に沿って動くことにより振動が発生する。
【0029】
先端部2は、ある程度の硬さを備えるとともに、スタイラス2aを固定するための篏合穴を加工する観点から、AlもしくはAl合金(形状記憶合金を除く。)で形成されることが好ましい。また、先端部2の中は空洞であってもよく、スタイラス2aが固定される側とは反対側の端部側面に中間部3の挿入孔が設けられており、内部に樹脂を充填してもよい。この場合、中間部3の一端を挿入向から挿入することができるとともに、中に充填された樹脂で中間部3を固定することができる。
【0030】
コイル巻回部2bは先端部2の先端の近傍領域に接続されている。スタイラス2aの振動が先端部2と中間部3との接続部、中間部3と後端部4との接続部、並びに中間部3の材質などに影響されず、コイル巻回部2bから高音質の信号を送信することができる。コイル巻回部2bの接続位置は特に限定されないが、
図1に示すように先端部2の略中央部、若しくは、なるべくスタイラス2aに近い方が好ましい。スタイラス2aの振動が先端部2により減衰する可能性を極力低減することができるためである。本実施形態において、先端の近傍領域とは、スタイラス2aから先端部2の略中央部までの領域を表す。
【0031】
コイル巻回部2bは、先端部2に直接巻回されていてもよいが、例えば
図1に示すように、予め導線が略平面状に並べて渦巻き状に巻回されていてもよい。これにより、先端部2に導線を巻回する必要がなく製造がしやすくなる。また、巻回数が多いコイル巻回部を取り換えることが容易になり、汎用性が向上する。コイル巻回部2bは1枚であっても十分に機能するが、音声信号の出力を上げる必要がある場合、
図1に示すように、コイル巻回部2bを2枚備えてもよく、これにより出力を2倍にすることができる。
【0032】
コイル巻回部2bは、
図1に示すように、コイル巻回部2bの平面方向が先端部2の長手方向と平行になるように、コイル巻回部の側面の一部で先端部2に樹脂などで接着されていてもよい。コイル巻回部2bが先端部2に接着しやすいようにするため、コイル巻回部2bの平面形状は、
図1に示すように、略三角形であることが好ましく、略四角形などの略多角形であってもよい。一方で、角が多すぎると円に近づくために先端部2に接着し難くなる。このため、コイル巻回部2bの平面形状は、略四角形から略八角形程度であればよい。コイル巻回部2bの大きさは、先端部2の設置領域に応じて適宜調整すればよく、後述する本実施形態に係るカートリッジの筐体に入る程度であればよい。
【0033】
コイル巻回部2bを構成する導線は、太いほど電気抵抗が低くなり、より高い誘導起電力を発生させることができるものの、太すぎると先端部2が重くなる。これら考慮し、適宜導線を選択することができる。コイル巻回部2bの巻数は、多いほど高い誘導起電力を発生させることができるが、先端部2が重くなり、却って振動を減衰させる懸念がある。このため、出力と重さを鑑み最適な条件に設定することができる。また、コイル巻回部2bの両端は、音声信号を外部に送信するため、不図示の端子が設けられている。この端子は、後述するように、カートリッジの外部接続端子と接続される。コイル巻回部2bは、漏電を防ぐために樹脂でモールドされていてもよい。
このように、カンチレバー1は、従来のカンチレバーと比較してスタイラス2aの振動がコイル巻回部2bに伝導しやすくなり、それにより高音質化を実現することができる。
【0034】
図1に示すように、カンチレバー1は、先端部2に先端部支柱2cが設けられていてもよい。太い導線を用いたり巻数を多くした場合など、先端部2が重くなった場合であっても、特にカートリッジがレコードに載置された際に発生する縦方向の応力を緩和することができる。また、先端部支柱2cが備えられていれば、中間部3での硬度を向上させる必要がなく、中間部3に用いる材料の選択の幅が広がる。
【0035】
先端部支柱2cは、後述するように、カンチレバー1がカートリッジに取り付けられる際、土台に設けられた弾性部材と接続されており、スタイラス2aが振動可能な状態を維持する。よって、スタイラス2aの振動の減衰を最小限に留めることができる。詳細は後述する。先端部2における先端部支柱2cの位置は特に限定されないが、例えば
図1に示すように、カンチレバー1を横から見たときに、コイル巻回部2bと重なる位置であればよい。コイル巻回部2bと先端部支柱2cがこのような配置であると、先端部2を長くする必要がなく、スタイラス2aの振動の減衰が極力抑制される。先端部支柱2cは、例えばAlやAl合金(形状記憶合金を除く。)などで形成されていればよい。先端部支柱2cと先端部2は、溶接または樹脂で接着されていればよいが、特に限定されない。
【0036】
(4)中間部
本実施形態に係るカンチレバーは、先端部2と後端部4との間に中間部3を備える。中間部3は形状記憶合金で構成されている。形状記憶合金は超弾性材料であるため、外部応力によりカンチレバーが折れ曲がったとしても直ちに元の形状に戻り、カンチレバーの交換が不要になる。
【0037】
カンチレバー1の先端部2、中間部3、および後端部4がいずれも形状記憶合金で一体的に構成される場合には、折れ曲がった場合に簡単に元に戻すことができるものの、外部応力が先端部に集中するとコイル巻回部2bが変形する恐れがある。このため、本実施形態では、カンチレバー1の本体を3つに分け、中間部3にのみ形状記憶合金を用いることにより、初めて、高音質と破損の抑制を両立することができる。
【0038】
本実施形態に係るカンチレバー1は、外部応力が先端部2や後端部4ではなく、中間部3に集中することが望ましい。このためには、中間部3の直径は、先端部2や後端部4より細いことが好ましく、先端部2及び/又は後端部4の直径の50%以下であることが好ましい。
【0039】
中間部3の材質は、形状記憶合金であれば特に限定されることがなく、例えば、Ni-Ti系合金、Ni-Ti-Co系合金、Cu-Zn-Al系合金、Ag-Cd系合金、Cu-Al-Ni系合金、Cu-Au-Zn系合金、Cu-Sn系合金、Cu-Zn系合金、Ni-Al系合金、およびFe-Ni-Co-Ti系合金の少なくとも1種で構成されることが好ましい。これらの中で、Ni-Ti系合金、Ni-Ti-Cu系合金が好ましく、JIS H 7107:2009で規定するNi-Ti系合金であることが特に好ましい。
【0040】
(5)後端部
本実施形態に係るカンチレバーは、後端部4を備える。後端部4は先端部2と同様に、内部が空洞であってもよく、中間部3と接続する側の端部側面に中間部3の挿入孔が設けられており、内部に樹脂を充填してもよい。これにより、中間部3を後端部4で固定することができる。また、先端部2と同様に変形し難く硬い材料であればよく、例えばAlやAl合金(形状記憶合金を除く。)で構成されていればよい。
【0041】
(5)カンチレバーの製造方法
本実施形態に係るカンチレバー1の製造方法の一例は以下のとおりである。まず、スタイラス2a、先端部2、中間部3、および後端部4を準備する。次に、先端部2にレーザーで挿入孔を形成し、スタイラス2aを挿入孔に挿入した後、樹脂等でスタイラス2aを先端部2に固定する。そして、先端部2および後端部4の内部に熱可塑性樹脂などの固定用樹脂を充てんし、中間部3の一端を先端部2に挿入するとともに中間部3の他端を後端部4に挿入し、加熱等により樹脂を硬化させて中間部3を固定する。最後に、先端部2の直径方向において、スタイラス2aが設けられている側とは反対側に、コイル巻回部2bおよび、必要に応じて先端部支柱2cを樹脂などで接続する。
【0042】
先端部2と中間部3、および中間部3と後端部4は、各々溶接により接続してもよい。また、コイルを先端部2に直接巻き付ける場合には、作業性を鑑み、少なくとも先端部支柱2cを接続する前に行うことが好ましい。
【0043】
2. レコード再生用カートリッジ
図2に示すように、本実施形態に係るレコード再生用カートリッジ10は、MC型の通常のカートリッジと同様に、筐体18および本実施形態に係るカンチレバー11を備え、カンチレバー11のスタイラス12aがレコードと対向するように設けられている。また、不図示の外部出力端子を備え、コイル巻回部から発生する音声信号を外部に出力する。筐体18の内部構造について、
図3および
図4を用いて詳述する。
【0044】
図3は、本実施形態に係るMC型レコード再生用カートリッジ20の一例を示す部分側面図である。
図4は、本実施形態に係るMC型レコード再生用カートリッジ20の一例を示す部分平面図である。
図3では、磁石26の裏面のコイル巻回部22bおよび先端部22の一部が薄く示されている。
図4は、
図3を下から見た平面図である。本実施形態に係るMC型レコード再生用カートリッジ(以下、単に、「カートリッジ」と称する。)20は、本実施形態に係るカンチレバー21、土台25、および磁石26を備える。
【0045】
土台25は、弾性部材25aおよび後端部固定支柱25bを備える。カンチレバー21が先端部支柱22cを備える場合には、先端部支柱22cは弾性部材25aと接続される。この場合、先端部22には、巻数が多く重いコイル巻回部22bを備えることができるとともに、中間部23を細くすることができる。また、先端部支柱22cは弾性部材25aと接続されているため、スタイラス22aの振動の減衰を最低限に留めることができ、高品質の音声信号を外部に送信することができる。
【0046】
中間部23がある程度の強度を備える程度の太さであれば先端部支柱22cを設ける必要はない。ただ、先端部支柱22cが備えられていれば、コイル巻回部22bの形状、巻数、導線の太さ、大きさなどの選択肢を広げるとともに、中間部23の材質の選択肢をも広げることができる。これを鑑みると、カンチレバー21が先端部支柱22cを備えるとともに土台25が弾性部材25aを備えることが好ましい。
図3に示すように、カンチレバー21は使用時にぶら下がる状態になるため、弾性部材25aは、先端部2の振動を阻害しない材質であればよく、例えば、ゴム、ばね、樹脂など、弾性を示すものであれば特に限定されない。
【0047】
カンチレバー21の後端部24は、土台25に設けられた後端部固定支柱25bで固定されていてもよい。後端部4が振動すると、先端部22に振動が伝わりノイズの原因になり得るためである。後端部固定支柱25bは、後端部24の振動を抑制するため、Al、Al合金(形状記憶合金を除く。)、真鍮などで形成されていればよい。
【0048】
本実施形態に係るカートリッジ20は、さらに、2枚の磁石26を備えてもよい。2枚の磁石によりコイル巻回部22bの周囲には磁界が発生する。コイル巻回部22bが振動することにより誘導起電力がコイル巻回部22bに発生し、コイル巻回部22bの端子からカートリッジ20の不図示の外部接続端子を介して外部に音声信号が送信される。磁石26の向きは、S極同士もしくはN極同士が対向するように設けられていてもよく、異なる極が対向するように設けられていてもよい。
【0049】
3. レコードプレーヤー
本発明に係るレコードプレーヤーは、従来と同様に、電源スイッチ、スタート/ストップボタン、レコードを載置するターンテーブル、ターンテーブルを回転させるためのモータ、モータを格納するとともにターンテーブルを載せる台、台への振動を吸収するために台の下面に設けられるインシュレーター、レコードへの埃の付着を抑制するために台に設けられるダストカバー、ならびに、トーンアーム、ヘッドシェル、およびカートリッジで構成されるピックアップ機構で構成されている。また、MC型では起電力が小さくノイズが発生しやすいため、ヘッドアンプ、昇圧トラインス、イコライザーなどを備えてもよい。
レコード再生用アナログプレーヤーの動作は、従来のように、まず、電源を入れ、レコードをターンテーブルに載置し、スタートボタン/ストップボタンを押下してターンテーブルの回転が開始される。そして、カートリッジがピックアップ機構により回転するレコードに載置され、レコードから音声信号が読み取られ、レコードが再生される。終了時には、スタートボタン/ストップボタンを押下してピックアップ機構が上昇するとともにターンテーブルの回転が停止し、レコードをターンテーブルから取り出す。
【符号の説明】
【0050】
1,11,21 (MC型レコード再生用)カンチレバー、2,22 先端部、2a,12a,22a スタイラス、2b,22b,120 コイル巻回部、2c,22c 先端部支柱、3,23 中間部、4,24 後端部、10 レコード再生用カートリッジ、18 筐体、20 (MC型レコード再生用)カートリッジ、25 土台、25a 弾性部材、25b 後端部固定支柱、26 磁石
【要約】 (修正有)
【課題】使用時の破損を抑制することができるMC型レコード再生用カンチレバー、MC型レコード再生用カートリッジおよびレコードプレーヤーを提供する。
【解決手段】MC型レコード再生用カンチレバー1は、先端にレコード針であるスタイラス2aを備える先端部2、中間部3及び後端部4で構成される。先端部は、先端の近傍領域にコイル巻回部2bを備え、先端部と後端部は、形状記憶合金で構成される中間部で接続されている。
【選択図】
図1