(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】無段変速機
(51)【国際特許分類】
F16H 9/10 20060101AFI20220106BHJP
F16H 9/24 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
F16H9/10
F16H9/24
(21)【出願番号】P 2019164932
(22)【出願日】2019-08-26
【審査請求日】2021-06-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519327892
【氏名又は名称】高橋 遼太
(72)【発明者】
【氏名】高橋 遼太
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-147148(JP,A)
【文献】特開2016-109262(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111094798(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 9/10
F16H 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項3】
前記歯車の駆動にウォームギヤを用いたことを特徴とする請求項1に記載の無段変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧による変速動作を必要としない無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無段変速機に用いられるCVTプーリーは、長い軸部を有する固定フランジと、その軸部に摺動可能に嵌め込まれた可動フランジとからなり、可動フランジが軸部を摺動することで二つのフランジの幅を無段階で調整することができる。
【先行技術文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来の無段変速機においては、ベルトとプーリーの摩擦力を稼ぐために非常に高い油圧を必要とする。高い油圧の生成には動力装置全体の伝達ロスを生じる。また、変速比の高い領域ではベルトとプーリーにすべりが生じてしまう。そしてこれらプーリーおよび油圧発生機構の重量の総和は大きい。
【0005】
本発明は油圧を必要とせず、モーター等の動力の付加により無段階の変速が可能であり、回転すべりを発生させず、且つ機構全体の重量を抑え、軸方向の長さを抑えることができる無段変速機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
基本構成はそれぞれが有効径を変更可能である入力と出力2組のスプロケットとスプロケットに巻き掛けられるチェーン又はベルトと、前記それぞれのスプロケットの有効径を変更するための変速駆動機構から成る。前記スプロケットはそれぞれ、ハブと、前記ハブに取付けられ同一の回転を可能とする放射状に伸びる複数のアームと、前記複数のアームに備えられた歯車部に噛み合い可能な歯車から構成され、前記複数のアームの先端は前記チェーン又はベルトと噛合可能である。前記複数のアームはそれぞれが前記ハブとの取付部によって軸支持されており相対的に動くことが可能である。
【0007】
前記の歯車に回転力を与えた場合、前記複数のアームはそれぞれが前記ハブとの取付け基点より相対的に可動し、前記チェーン又はベルトとの噛合点となるスプロケットの有効径が変更可能である。チェーン又はベルトと巻き掛けられるそれぞれのスプロケットの巻き掛け有効径が可変することで入出力回転は変速自在となる。前記歯車の回転にはウォームギヤを介しモーター等で駆動することで入出力トルクの影響を受けることなく前記歯車の回転保持又は駆動が可能となる。
【発明の効果】
【0008】
上述した構成によれば、変速にモーターを使用することで油圧を必要とせず、チェーン又はベルトによる噛合いを行う為回転すべりを発生させず、プーリーのような軸方向の移動を必要としないことからコンパクトな機構で無段階の変速が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図1のうち、2組あるスプロケット機構の片側の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、当然のことながら、異なる図面上の同じ符号は、同一又は機能類似の構造要素を特定している。さらに、本発明は、ここで説明する特定の実施の形態、手順、材料及び変更に限られず、それ自体にもちろん変更が加えられてもよい。また、本明細書で使用する用語は、特定の態様を説明することを目的としたものにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ特定される。
【0011】
特段の規定がなければ、本明細書で使用するすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有するものが通常理解しているのと同じ意味を有する。本明細書で説明するものと類似又は等価の方法、装置又は材料のすべてが、本発明の実施又は試験に際して使用可能である。
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
図1に示す本発明の課題解決手段では、入力軸Aと、出力軸Bの有効径が変更可能である2組のスプロケット機構があり、それぞれのスプロケットは入力軸側の有効径が極小に、出力軸側の有効径が極大の位置を示しており、2組のスプロケットに掛けられたベルトは軌道4を描き、入力回転に対し出力回転が減速となっている。それぞれのスプロケットは同様に構成され、回転力の入出力を伝えるハブ1と、前記ハブ1に接続される6本のアーム2があり、それぞれのアーム2は前記ハブ1と同一の回転を行うと共に前記ハブ1に軸支持されている為、相対動きが可能である。
図1には前記アーム2の可動イメージが示されており、ある1つの前記アーム2が軸Cを基準に軌道Yを描いて稼動している。また、前記それぞれのアーム2は歯車部2bを有しており、前記ハブ1との支持軸に対して歯が切ってある。前記アーム2の歯車部2bはそれぞれが環状ギヤ3の内歯と噛合っており、前記環状ギヤ3が回転することで前記環状ギヤ3と噛合っている6本のアーム2は同調してそれぞれが同一の動きを行うことが出来る。また、前記それぞれのアーム2はベルトと噛合う歯部2aを有しており、上述しているスプロケット機構の歯に該当する。前記歯部2aの形状はスプロケットとしての有効径が極小の位置から極大の位置までの全ての状態で掛け合されるベルトとの噛合いが行える形状となっている。
【0014】
図1に示す状態より、入力側の前記環状ギヤ3に時計周り方向に回転を与え、同調して出力側の前記環状ギヤ3に対しては反時計周りの回転を与えた場合、それぞれの環状ギヤ3と噛合っている前記それぞれのアーム2は可動し、スプロケットとしての有効径は入力側が極大に、出力側が極小に転じる。
図1に示す実施形態におけるスプロケットとしての有効径の変化代はXとすることが出来る。かくして、入力回転に対しては出力回転が増速となり、前記環状ギヤ3に回転を与えることで意図する変速が自在となる。
【0015】
図1に示す実施形態では、スプロケットとしての有効径の変化代を大きく取れるよう、前記アーム2の長さは出来る限り長く、また有効径が極小の位置で隣接する前記アーム2と干渉しないようにする目的から湾曲した形状に工夫がなされている。
【0016】
図1に示す実施形態では、入出力それぞれの前記環状ギヤ3の外径側にも歯を切り、それぞれウォームギヤ5を噛合わせている。前記ウォームギヤをモーターで駆動させることにより、前記それぞれの環状ギヤ3回転を与えることが出来る。
【0017】
以上で説明したように、この実施形態による無段自動変速機によれば、油圧を必要とせず、ベルトによる噛合いを行う為回転すべりを発生させず、コンパクトな機構で無段階の変速をモーターからの入力のみで行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0018】
A 入力軸
B 出力軸
C アーム可動軸
X 有効径変化代
Y アームの軌道
1 ハブ
2 アーム
2a アーム歯部
2b アーム歯車部
3 環状ギヤ
4 ベルト軌道
5 ウォームギヤ