(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】樹脂組成物、プリプレグ、金属箔張積層板、樹脂シート及びプリント配線板
(51)【国際特許分類】
C08G 73/06 20060101AFI20220106BHJP
C08L 79/00 20060101ALI20220106BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20220106BHJP
B32B 15/088 20060101ALI20220106BHJP
B32B 15/09 20060101ALI20220106BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20220106BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20220106BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
C08G73/06
C08L79/00 Z
C08J5/24 CEZ
B32B15/088
B32B15/09 Z
B32B27/34
B32B27/36
H05K1/03 610T
(21)【出願番号】P 2017204629
(22)【出願日】2017-10-23
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】杉山 源希
(72)【発明者】
【氏名】古賀 将太
(72)【発明者】
【氏名】高野 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】片桐 誠之
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-090823(JP,A)
【文献】特開昭57-025356(JP,A)
【文献】特開昭56-127629(JP,A)
【文献】特開2017-165827(JP,A)
【文献】特開2017-088745(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0114693(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/06
C08L 79/00
C08J 5/24
B32B 15/088
B32B 15/09
B32B 27/34
B32B 27/36
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されるシアン酸エステル化合物(A)、及び
マレイミド化合物(B)
を少なくとも含有する、樹脂組成物。
【化1】
(式中、R
1~R
4は、各々独立に水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、nは
1~6の整数を表す。
なお、上記式(I)で表されるシアン酸エステル化合物(A)は、nが異なる複数の化合物の混合物であってもよい。)
【請求項2】
前記シアン酸エステル化合物(A)の含有量が、前記樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、1~90質量部である
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
充填材(C)をさらに含有する
請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記充填材(C)の含有量が、前記樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、50~1600質量部である
請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記式(I)で表されるシアン酸エステル化合物(A)以外のシアン酸エステル化合物、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、オキセタン樹脂、ベンゾオキサジン化合物、及び重合可能な不飽和基を有する化合物よりなる群から選択される1種以上をさらに含有する
請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
基材、及び
前記基材に含浸又は塗布された、請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物を少なくとも備える、プリプレグ。
【請求項7】
少なくとも1枚以上の請求項6に記載のプリプレグ、及び
前記プリプレグの片面又は両面に配された金属箔、
を少なくとも備える、金属箔張積層板。
【請求項8】
支持体、及び
前記支持体の表面に設けられた、請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物を少なくとも備える、樹脂シート。
【請求項9】
絶縁層、及び前記絶縁層の表面に設けられた導体層を少なくとも備え、
前記絶縁層が、請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、
プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、プリプレグ、金属箔張積層板、樹脂シート及びプリント配線板等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器や通信機、パーソナルコンピューター等に広く用いられている半導体の高集積化、微細化はますます加速している。これに伴い、プリント配線板に用いられる半導体パッケージ用積層板に求められる諸特性はますます厳しいものとなっている。特に発熱に対するプリント配線板の放熱技術が求められるようになっている。これは、半導体の高機能化にともない、半導体から発生する熱量が大きくなっており、かつ高集積化や高密度実装化の影響により熱が内部に溜まりやすい構成になってきているためである。
【0003】
プリント配線板の絶縁層に用いられるエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂自体は、熱伝導率が比較的に低い。そこで、プリント配線板の熱伝導率を向上させるため、所定の粒径分布を有する混合フィラー(無機充填材)を熱硬化性樹脂に80~95重量%配合することで硬化物の熱伝導率を3~10W/mKにする熱伝導性樹脂組成物が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のように無機充填材を高充填すると、熱伝導率を向上させることはできるものの、熱硬化性樹脂の体積比率が少なくなるため成形性が悪化し、樹脂と無機充填材の間にクラックやボイドが発生しやすくなる等の問題を引き起こす。そのため、樹脂そのものの改良が求められている。
【0005】
従来から、耐熱性や電気特性に優れるプリント配線板用樹脂として、シアン酸エステル化合物が知られており、近年シアン酸エステル化合物にエポキシ樹脂、マレイミド化合物等を併用した樹脂組成物が半導体プラスチックパッケージ用等の高機能のプリント配線板用材料等に幅広く使用されている。
【0006】
プリント配線板材料等に広く使用されているシアン酸エステル化合物としては、例えば、ビスフェノールA型シアン酸エステル化合物と、他の熱硬化性樹脂等を用いた樹脂組成物が挙げられる。ビスフェノールA型シアン酸エステル化合物は、電気特性、機械特性、及び耐薬品性等の優れた特性を有しているが、耐熱性、低吸水性、吸湿耐熱性、及び難燃性においては不十分な場合がある。そのため、さらなる特性の向上を目的として、構造が異なる種々のシアン酸エステル化合物の検討が行われている。
【0007】
ビスフェノールA型シアン酸エステル化合物と構造が異なる樹脂として、例えば、ノボラック型シアン酸エステル化合物がよく使用されている(特許文献2参照)。また、ノボラック型シアン酸エステル化合物とビスフェノールA型シアン酸エステル化合物とのプレポリマー化が提案されている(特許文献3参照)。さらにこれらを改良したものとして、ポリナフチレンエーテル構造を有するフェノール樹脂をシアネート化したシアン酸エルテル化合物が提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-348488号公報
【文献】特開平11-124433号公報
【文献】特開2000-191776号公報
【文献】国際公開第2014/065422号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2~4のシアン酸エルテル化合物は、耐熱性等の改善は見込まれるものの、熱伝導率の向上の観点からは、さらなる改善が求められている。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、耐熱性のみならず熱伝導性においても優れた物性を発現する樹脂組成物、並びに、これを用いたプリプレグ、金属箔張積層板、樹脂シート及びプリント配線板等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、フェニレンエーテルの繰り返し骨格を有する特定構造のシアン酸エステル化合物(A)とマレイミド化合物(B)とを併用することにより上記課題が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
[1]下記式(I)で表されるシアン酸エステル化合物(A)、及びマレイミド化合物(B)を少なくとも含有する、樹脂組成物。
【化1】
(式中、R
1~R
4は、各々独立に水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、nは0以上の整数を表す。)
【0013】
[2]前記シアン酸エステル化合物(A)の含有量が、前記樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、1~90質量部である[1]に記載の樹脂組成物。
[3]充填材(C)をさらに含有する[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]前記充填材(C)の含有量が、前記樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、50~1600質量部である[3]に記載の樹脂組成物。
[5]前記式(I)で表されるシアン酸エステル化合物(A)以外のシアン酸エステル化合物、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、オキセタン樹脂、ベンゾオキサジン化合物、及び重合可能な不飽和基を有する化合物よりなる群から選択される1種以上をさらに含有する[1]~[4]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【0014】
[6]基材、及び前記基材に含浸又は塗布された、[1]~[5]のいずれか一項に記載の樹脂組成物を少なくとも備える、プリプレグ。
[7]少なくとも1枚以上の[6]に記載のプリプレグ、及び前記プリプレグの片面又は両面に配された金属箔、を少なくとも備える、金属箔張積層板。
[8]支持体、及び前記支持体の表面に設けられた、[1]~[5]のいずれか一項に記載の樹脂組成物を少なくとも備える、樹脂シート。
[9]絶縁層、及び前記絶縁層の表面に設けられた導体層を少なくとも備え、前記絶縁層が、[1]~[5]のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、プリント配線板。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、耐熱性及び熱伝導性において優れた物性バランスを発現する樹脂組成物、並びに、これを用いたプリプレグ、金属箔張積層板、樹脂シート及びプリント配線板等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】合成例1のシアン酸エステル化合物(A)のIRスペクトルを示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0018】
[樹脂組成物]
本実施形態の樹脂組成物は、下記式(I)で表されるシアン酸エステル化合物(A)とマレイミド化合物(B)とを少なくとも含有する。このように構成されているため、本実施形態の樹脂組成物は、耐熱性及び熱伝導性において優れた物性バランスを発現することができる。
【0019】
【化2】
(式中、R
1~R
4は、各々独立に水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、nは0以上の整数を表す。)
【0020】
〔シアン酸エステル化合物(A)〕
本実施形態における樹脂組成物に含まれるシアン酸エステル化合物(A)としては、上記式(I)で表されるシアン酸エステル化合物である。シアン酸エステル化合物を用いた樹脂組成物は、硬化物とした際に、ガラス転移温度、熱伝導性、低熱膨張性、めっき密着性等に優れた特性を有する。
【0021】
上記式(I)中、R1~R4は、各々独立に水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表す。このアルキル基は、直鎖もしくは分枝の鎖状構造のいずれを有していてもよい。上記式(I)中のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。また、式(I)中のアルキル基は、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシル基、又はシアノ基等で置換されていてもよい。
【0022】
上記式(I)中、nは0以上の整数を表し、好ましくは1~6の整数である。上記式(I)で表される化合物は、nが異なる複数の化合物の混合物として、本実施形態の樹脂組成物に含まれていてもよい。
【0023】
上記式(I)中のOCN基及びR1~R4は、任意の位置を選択できる。例えば、式(I)に示す2個の酸素原子が1,4位又は1,3位に結合しOCN基が2位、5位、又は6位に結合するベンゼントリイル基が挙げられる。
【0024】
上記した式(I)で表されるシアン酸エステル化合物(A)は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
上記式(I)で表されるシアン酸エステル化合物(A)は、従来公知の合成方法を適用して合成でき、その製造方法は特に限定されない。例えば、フェニレンエーテルの繰り返し骨格を有するフェノール樹脂と塩化シアンとを、アミン等の塩基の存在下で反応させ、ヒドロキシ基をシアネート化することでシアン酸エステル化合物(A)を得ることができる。なお、シアネート化における反応の進行度は、液体クロマトグラフィー又はIRスペクトル法等で分析することができる。また、得られたシアン酸エステル化合物(A)は、NMR等の公知の方法により同定することができ、その純度は、液体クロマトグラフィー又はIRスペクトル法等で分析することができる。さらに、ジシアンやジアルキルシアノアミド等の副生物や残存溶媒等の揮発成分は、ガスクロマトグラフィーで定量分析することができる。
【0026】
本実施形態における上記式(I)で表されるシアン酸エステル化合物(A)の含有量は、所望する特性に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、耐熱性及び熱伝導性の物性バランスをより向上させる観点から、樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは1~90質量部であり、より好ましくは10~85質量部であり、さらに好ましくは20~80質量部である。シアン酸エステル化合物(A)の含有量が上記範囲内であることにより、得られる硬化物の耐熱性及び熱伝導性がより向上する傾向にある。
【0027】
なお、本実施形態において、「樹脂固形分」とは、特に断りのない限り、本実施形態の樹脂組成物における、溶剤及び充填材を除いた成分をいい、「樹脂固形分100質量部」とは、本実施形態の樹脂組成物における溶剤及び充填材を除いた成分の合計が100質量部であることをいうものとする。
【0028】
〔マレイミド化合物(B)〕
マレイミド化合物としては、分子中に1個以上のマレイミド基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、N-フェニルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン、下記式(1)で表されるマレイミド化合物、下記式(2)で表されるマレイミド化合物、下記式(3)で表されるマレイミド化合物、これらマレイミド化合物のプレポリマー、若しくはマレイミド化合物とアミン化合物のプレポリマーが挙げられる。これらの中でも、2,2'-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン及び下記式(1)で表されるマレイミド化合物、下記式(2)で表されるマレイミド化合物、下記式(3)で表されるマレイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。このようなマレイミド化合物(B)を含むことにより、得られる硬化物の物性バランスがより優れたものとなる傾向にある。同様の観点から、マレイミド化合物(B)が、下記式(1)で表されるマレイミド化合物、及び下記式(2)で表されるマレイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有することがより好ましい。
【0029】
【0030】
ここで、式(1)中、R5は、各々独立して、水素原子又はメチル基を示し、好ましくは水素原子を示す。また、式(1)中、n1は1以上の整数を表し、好ましくは10以下の整数であり、より好ましくは7以下の整数である。上記式(1)で表されるマレイミド化合物は、n1が異なる複数の化合物の混合物として、本実施形態の樹脂組成物に含まれていてもよい。
【0031】
【化4】
(上記式(2)中、n
2は1以上の整数を表し、好ましくは5以下の整数であり、より好ましくは4以下の整数であり、さらに好ましくは3以下の整数である。上記式(2)で表されるマレイミド化合物は、n
2が異なる複数の化合物の混合物として、本実施形態の樹脂組成物に含まれていてもよい。)
【0032】
【化5】
(上記式(3)中、n
3は1以上の整数を表し、好ましくは30以下の整数であり、より好ましくは20以下の整数であり、さらに好ましくは15以下の整数である。上記式(3)で表されるマレイミド化合物は、n
3が異なる複数の化合物の混合物として、本実施形態の樹脂組成物に含まれていてもよい。)
【0033】
上記したマレイミド化合物(B)は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0034】
本実施形態におけるマレイミド化合物(B)の含有量は、所望する特性に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、電気特性、耐熱性及び熱伝導性の物性バランスをより向上させる観点から、樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは1~90質量部であり、より好ましくは10~85質量部であり、さらに好ましくは20~80質量部である。マレイミド化合物(B)の含有量が上記範囲内であることにより、得られる硬化物の熱膨張率がより低下し、耐熱性がより向上する傾向にある。
【0035】
本実施形態の樹脂組成物は、上記式(I)で表されるシアン酸エステル化合物(A)以外のシアン酸エステル化合物(以降において、単に「シアン酸エステル化合物」と称する場合がある。)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、オキタセン樹脂、ベンゾオキサジン化合物、及び重合可能な不飽和基を有する化合物よりなる群から選択される1種以上をさらに含有していてもよい。以下、これらの各成分について説明する。
【0036】
本実施形態の樹脂組成物に含まれてもよいシアン酸エステル化合物としては、シアナト基(シアン酸エステル基)で少なくとも1個置換された芳香族部分を分子内に有する化合物であれば、特に限定されない。シアン酸エステル化合物を用いた樹脂組成物は、硬化物とした際に、ガラス転移温度、低熱膨張性、めっき密着性等に優れた特性を有する。なお、上記式(I)で表されるシアン酸エステル化合物(A)に該当するものは、ここで説明する併用可能なシアン酸エステル化合物には含まれない。
【0037】
シアン酸エステル化合物の例としては、以下に限定されないが、下記式(4)で表されるものが挙げられる。
【0038】
【0039】
上記式(4)中、Ar1は、ベンゼン環、ナフタレン環又は2つのベンゼン環が単結合したものを表す。Ar1が複数ある場合は、互いに同一であっても異なっていてもよい。Raは各々独立に水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~4のアルコキシル基、炭素数1~6のアルキル基と炭素数6~12のアリール基とが結合された基を示す。Raにおける芳香環は置換基を有していてもよく、Ar1及びRaにおける置換基は任意の位置を選択できる。pはAr1に結合するシアナト基の数を示し、各々独立に1~3の整数である。qはAr1に結合するRaの数を示し、Ar1がベンゼン環のときは4-p、ナフタレン環のときは6-p、2つのベンゼン環が単結合したもののときは8-pである。tは繰り返し数を示し、0~50の範囲の整数であり、上記式(4)で表されるシアン酸エステル化合物は、tが異なる複数の化合物の混合物として、本実施形態の樹脂組成物に含まれていてもよい。Xは、複数ある場合は各々独立に、単結合、炭素数1~50の2価の有機基(水素原子がヘテロ原子に置換されていてもよい。)、窒素数1~10の2価の有機基(例えば-N-R-N-(ここでRは有機基を示す。))、カルボニル基(-CO-)、カルボキシ基(-C(=O)O-)、カルボニルジオキサイド基(-OC(=O)O-)、スルホニル基(-SO2-)、2価の硫黄原子又は2価の酸素原子のいずれかを示す。
【0040】
上記式(4)のRaにおけるアルキル基は、直鎖もしくは分枝の鎖状構造、及び、環状構造(例えばシクロアルキル基等)のいずれを有していてもよい。
また、式(4)におけるアルキル基及びRaにおけるアリール基中の水素原子は、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシル基、又はシアノ基等で置換されていてもよい。
【0041】
アルキル基の具体例としては、以下に限定されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、1-エチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、及びトリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0042】
アリール基の具体例としては、以下に限定されないが、フェニル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、フェノキシフェニル基、エチルフェニル基、o-,m-又はp-フルオロフェニル基、ジクロロフェニル基、ジシアノフェニル基、トリフルオロフェニル基、メトキシフェニル基、及びo-,m-又はp-トリル基等が挙げられる。
【0043】
アルコキシル基としては、以下に限定されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、及びtert-ブトキシ基等が挙げられる。
【0044】
上記式(4)のXにおける炭素数1~50の2価の有機基の具体例としては、以下に限定されないが、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、トリメチルシクロヘキシレン基、ビフェニルイルメチレン基、ジメチルメチレン-フェニレン-ジメチルメチレン基、フルオレンジイル基、及びフタリドジイル基等が挙げられる。該2価の有機基中の水素原子は、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシル基、シアノ基等で置換されていてもよい。
【0045】
上記式(4)のXにおける窒素数1~10の2価の有機基の例としては、以下に限定されないが、イミノ基、ポリイミド基等が挙げられる。
【0046】
また、上記式(4)中のXの有機基として、例えば、下記式(5)又は下記式(6)で表される構造であるものが挙げられる。
【0047】
【化7】
(上記式(5)中、Ar
2はベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基又はビフェニルテトライル基を示し、uが2以上の場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。Rb、Rc、Rf、及びRgは各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、トリフルオロメチル基、又はフェノール性ヒドロキシ基を少なくとも1個有するアリール基を示す。Rd及び、Reは各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~4のアルコキシル基、又はヒドロキシ基のいずれか一種から選択される。uは0~5の整数を示す。)
【0048】
【化8】
(式(6)中、Ar
3はベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基又はビフェニルテトライル基を示し、vが2以上の場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。Ri、及びRjは各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、ベンジル基、炭素数1~4のアルコキシル基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基、又はシアナト基が少なくとも1個置換されたアリール基を示す。vは0~5の整数を示すが、vが異なる化合物の混合物であってもよい。)
【0049】
さらに、式(4)中のXとしては、下記式で表される2価の基が挙げられる。
【0050】
【化9】
(上記式中、zは4~7の整数を示す。Rkは各々独立に、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示す。)
【0051】
式(5)のAr2及び式(6)のAr3の具体例としては、式(5)に示す2個の炭素原子、又は式(6)に示す2個の酸素原子が、1,4位又は1,3位に結合するベンゼンテトライル基、上記2個の炭素原子又は2個の酸素原子が4,4'位、2,4'位、2,2'位、2,3'位、3,3'位、又は3,4'位に結合するビフェニルテトライル基、及び、上記2個の炭素原子又は2個の酸素原子が、2,6位、1,5位、1,6位、1,8位、1,3位、1,4位、又は2,7位に結合するナフタレンテトライル基が挙げられる。
【0052】
式(5)のRb、Rc、Rd、Re、Rf及びRg、並びに式(6)のRi、Rjにおけるアルキル基及びアリール基は、上記式(4)におけるものと同義である。
【0053】
上記式(4)で表されるシアナト置換芳香族化合物の具体例としては、以下に限定されないが、シアナトベンゼン、1-シアナト-2-,1-シアナト-3-,又は1-シアナト-4-メチルベンゼン、1-シアナト-2-,1-シアナト-3-,又は1-シアナト-4-メトキシベンゼン、1-シアナト-2,3-,1-シアナト-2,4-,1-シアナト-2,5-,1-シアナト-2,6-,1-シアナト-3,4-又は1-シアナト-3,5-ジメチルベンゼン、シアナトエチルベンゼン、シアナトブチルベンゼン、シアナトオクチルベンゼン、シアナトノニルベンゼン、2-(4-シアナフェニル)-2-フェニルプロパン(4-α-クミルフェノールのシアネート)、1-シアナト-4-シクロヘキシルベンゼン、1-シアナト-4-ビニルベンゼン、1-シアナト-2-又は1-シアナト-3-クロロベンゼン、1-シアナト-2,6-ジクロロベンゼン、1-シアナト-2-メチル-3-クロロベンゼン、シアナトニトロベンゼン、1-シアナト-4-ニトロ-2-エチルベンゼン、1-シアナト-2-メトキシ-4-アリルベンゼン(オイゲノールのシアネート)、メチル(4-シアナトフェニル)スルフィド、1-シアナト-3-トリフルオロメチルベンゼン、4-シアナトビフェニル、1-シアナト-2-又は1-シアナト-4-アセチルベンゼン、4-シアナトベンズアルデヒド、4-シアナト安息香酸メチルエステル、4-シアナト安息香酸フェニルエステル、1-シアナト-4-アセトアミノベンゼン、4-シアナトベンゾフェノン、1-シアナト-2,6-ジ-tert-ブチルベンゼン、1,2-ジシアナトベンゼン、1,3-ジシアナトベンゼン、1,4-ジシアナトベンゼン、1,4-ジシアナト-2-tert-ブチルベンゼン、1,4-ジシアナト-2,4-ジメチルベンゼン、1,4-ジシアナト-2,3,4-ジメチルベンゼン、1,3-ジシアナト-2,4,6-トリメチルベンゼン、1,3-ジシアナト-5-メチルベンゼン、1-シアナト又は2-シアナトナフタレン、1-シアナト4-メトキシナフタレン、2-シアナト-6-メチルナフタレン、2-シアナト-7-メトキシナフタレン、2,2'-ジシアナト-1,1'-ビナフチル、1,3-,1,4-,1,5-,1,6-,1,7-,2,3-,2,6-又は2,7-ジシアナトシナフタレン、2,2'-又は4,4'-ジシアナトビフェニル、4,4'-ジシアナトオクタフルオロビフェニル、2,4'-又は4,4'-ジシアナトジフェニルメタン、ビス(4-シアナト-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)エタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-シアナト-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(2-シアナト-5-ビフェニルイル)プロパン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-シアナト-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)イソブタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)ペンタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)-3-メチルブタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)-2-メチルブタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)-2,2-ジメチルプロパン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)ヘキサン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)-3-メチルブタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)-3,3-ジメチルブタン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)ヘキサン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)ヘプタン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)オクタン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)-2-メチルペンタン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)-2-メチルヘキサン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)-2,2-ジメチルペンタン、4,4-ビス(4-シアナトフェニル)-3-メチルヘプタン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)-2-メチルヘプタン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)-2,2-ジメチルヘキサン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)-2,4-ジメチルヘキサン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)-2,2,4-トリメチルペンタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-シアナトフェニル)フェニルメタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-シアナトフェニル)ビフェニルメタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-シアナト-3-イソプロピルフェニル)プロパン、1,1-ビス(3-シクロヘキシル-4-シアナトフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-シアナトフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4-シアナトフェニル)-2,2-ジクロロエチレン、1,3-ビス[2-(4-シアナトフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,4-ビス[2-(4-シアナトフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4-[ビス(4-シアナトフェニル)メチル]ビフェニル、4,4-ジシアナトベンゾフェノン、1,3-ビス(4-シアナトフェニル)-2-プロペン-1-オン、ビス(4-シアナトフェニル)エーテル、ビス(4-シアナトフェニル)スルフィド、ビス(4-シアナトフェニル)スルホン、4-シアナト安息香酸-4-シアナトフェニルエステル(4-シアナトフェニル-4-シアナトベンゾエート)、ビス-(4-シアナトフェニル)カーボネート、1,3-ビス(4-シアナトフェニル)アダマンタン、1,3-ビス(4-シアナトフェニル)-5,7-ジメチルアダマンタン、3,3-ビス(4-シアナトフェニル)イソベンゾフラン-1(3H)-オン(フェノールフタレインのシアネート)、3,3-ビス(4-シアナト-3-メチルフェニル)イソベンゾフラン-1(3H)-オン(o-クレゾールフタレインのシアネート)、9,9'-ビス(4-シアナトフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-シアナト-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(2-シアナト-5-ビフェニルイル)フルオレン、トリス(4-シアナトフェニル)メタン、1,1,1-トリス(4-シアナトフェニル)エタン、1,1,3-トリス(4-シアナトフェニル)プロパン、α,α,α'-トリス(4-シアナトフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼン、1,1,2,2-テトラキス(4-シアナトフェニル)エタン、テトラキス(4-シアナトフェニル)メタン、2,4,6-トリス(N-メチル-4-シアナトアニリノ)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(N-メチル-4-シアナトアニリノ)-6-(N-メチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、ビス(N-4-シアナト-2-メチルフェニル)-4,4'-オキシジフタルイミド、ビス(N-3-シアナト-4-メチルフェニル)-4,4'-オキシジフタルイミド、ビス(N-4-シアナトフェニル)-4,4'-オキシジフタルイミド、ビス(N-4-シアナト-2-メチルフェニル)-4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタルイミド、トリス(3,5-ジメチル-4-シアナトベンジル)イソシアヌレート、2-フェニル-3,3-ビス(4-シアナトフェニル)フタルイミジン、2-(4-メチルフェニル)-3,3-ビス(4-シアナトフェニル)フタルイミジン、2-フェニル-3,3-ビス(4-シアナト-3-メチルフェニル)フタルイミジン、1-メチル-3,3-ビス(4-シアナトフェニル)インドリン-2-オン、及び、2-フェニル-3,3-ビス(4-シアナトフェニル)インドリン-2-オンが挙げられる。
【0054】
また、上記式(4)で表される化合物の別の具体例としては、以下に限定されないが、フェノールノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂(公知の方法により、フェノール、アルキル置換フェノール又はハロゲン置換フェノールと、ホルマリンやパラホルムアルデヒド等のホルムアルデヒド化合物とを、酸性溶液中で反応させたもの)、トリスフェノールノボラック樹脂(ヒドロキシベンズアルデヒドとフェノールとを酸性触媒の存在下に反応させたもの)、フルオレンノボラック樹脂(フルオレノン化合物と9,9-ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類を酸性触媒の存在下に反応させたもの)、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂及びビフェニルアラルキル樹脂(公知の方法により、Ar4-(CH2Y)2(Ar4はフェニル基を示し、Yはハロゲン原子を示す。以下、この段落において同様。)で表されるようなビスハロゲノメチル化合物とフェノール化合物とを酸性触媒若しくは無触媒で反応させたもの、Ar4-(CH2OR)2で表されるようなビス(アルコキシメチル)化合物とフェノール化合物とを酸性触媒の存在下に反応させたもの、又は、Ar4-(CH2OH)2で表されるようなビス(ヒドロキシメチル)化合物とフェノール化合物を酸性触媒の存在下に反応させたもの、あるいは、芳香族アルデヒド化合物とアラルキル化合物とフェノール化合物とを重縮合させたもの)、フェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂(公知の方法により、キシレンホルムアルデヒド樹脂とフェノール化合物とを酸性触媒の存在下に反応させたもの)、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂(公知の方法により、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂とヒドロキシ置換芳香族化合物を酸性触媒の存在下に反応させたもの)、フェノール変性ジシクロペンタジエン樹脂、ポリナフチレンエーテル構造を有するフェノール樹脂(公知の方法により、フェノール性ヒドロキシ基を1分子中に2つ以上有する多価ヒドロキシナフタレン化合物を、塩基性触媒の存在下に脱水縮合させたもの)等のフェノール樹脂を、上述と同様の方法によりシアネート化したもの等、並びにこれらのプレポリマー等が挙げられる。上記したシアン酸エステル化合物は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0055】
上述したシアン酸エステル化合物の中でも、ビスフェノールA型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールE型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールF型シアン酸エステル化合物等のビスフェノール型シアン酸エステル化合物、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、及びフェノールノボラック型シアン酸エステル化合物が好ましい。すなわち、本実施形態において、シアン酸エステル化合物が、ビスフェノール型シアン酸エステル化合物、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、及びフェノールノボラック型シアン酸エステル化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。さらに、シアン酸エステル化合物が、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、及びジアリルビスフェノールA型シアン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。とりわけ、下記式(7)で示されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、又は下記式(8)で表されるジアリルビスフェノールA型シアン酸エステル化合物が好適に用いられる。
【0056】
【化10】
(式(7)中、Rは、各々独立に水素原子又はメチル基を示す。nは1以上50以下の整数を示す。上記式(7)で表されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物は、nが異なる複数の化合物の混合物として、本実施形態の樹脂組成物に含まれていてもよい。)
【0057】
【化11】
(式(8)中、R
1~R
3は、各々独立に水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表す。)
【0058】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば、公知のものを適宜使用することができ、その種類は特に限定されない。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエステル、ブタジエン等の二重結合をエポキシ化した化合物、水酸基含有シリコーン樹脂類とエピクロルヒドリンとの反応により得られる化合物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂のなかでは、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂が難燃性、耐熱性の面で好ましい。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
(フェノール樹脂)
フェノール樹脂としては、1分子中に2個以上のヒドロキシ基を有するフェノール樹脂であれば、一般に公知のものを使用できる。その具体例としては、ビスフェノールA型フェノール樹脂、ビスフェノールE型フェノール樹脂、ビスフェノールF型フェノール樹脂、ビスフェノールS型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック型フェノール樹脂、グリシジルエステル型フェノール樹脂、アラルキルノボラック型フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、多官能フェノール樹脂、ナフトール樹脂、ナフトールノボラック樹脂、多官能ナフトール樹脂、アントラセン型フェノール樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂、ナフトールアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、ポリオール型フェノール樹脂、リン含有フェノール樹脂、水酸基含有シリコーン樹脂類等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらのフェノール樹脂の中では、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、ナフトールアラルキル型フェノール樹脂、リン含有フェノール樹脂、水酸基含有シリコーン樹脂が難燃性の点で好ましい。これらのフェノール樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
(オキセタン樹脂)
オキセタン樹脂としては、一般に公知のものを使用できる。例えば、オキセタン、2-メチルオキセタン、2,2-ジメチルオキセタン、3-メチルオキセタン、3,3-ジメチルオキセタン等のアルキルオキセタン、3-メチル-3-メトキシメチルオキセタン、3,3-ジ(トリフルオロメチル)パーフルオキセタン、2-クロロメチルオキセタン、3,3-ビス(クロロメチル)オキセタン、ビフェニル型オキセタン、OXT-101(東亞合成製商品名)、OXT-121(東亞合成製商品名)等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらのオキセタン樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
(ベンゾオキサジン化合物)
ベンゾオキサジン化合物としては、1分子中に2個以上のジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物であれば、一般に公知のものを用いることができる。例えば、ビスフェノールA型ベンゾオキサジンBA-BXZ(小西化学製商品名)ビスフェノールF型ベンゾオキサジンBF-BXZ(小西化学製商品名)、ビスフェノールS型ベンゾオキサジンBS-BXZ(小西化学製商品名)、P-d型ベンゾオキサジン(四国化成工業製商品名)、F-a型ベンゾオキサジン(四国化成工業製商品名)等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらのベンゾオキサジン化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
(重合可能な不飽和基を有する化合物)
重合可能な不飽和基を有する化合物としては、一般に公知のものを使用できる。例えば、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル等のビニル化合物、メチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の1価又は多価アルコールの(メタ)アクリレート類、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート類、及びベンゾシクロブテン樹脂、が挙げられるが、特に限定されるものではない。なお、上記「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びそれに対応するメタクリレートを包含する概念である。これらの不飽和基を有する化合物は、1種又は2種以上混合して用いることができる。
【0063】
上述した式(I)で表されるシアン酸エステル化合物(A)以外のシアン酸エステル化合物、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、オキタセン樹脂、ベンゾオキサジン化合物、及び重合可能な不飽和基を有する化合物よりなる群から選択される1種以上の成分の含有量は、所望する特性に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。例えば、樹脂固形分100質量部に対して、これらの合計で1~50質量部が好ましく、より好ましくは2~30質量部であり、さらに好ましくは3~20質量部である。
【0064】
〔充填材(C)〕
本実施形態の樹脂組成物は、熱膨張特性、寸法安定性、難燃性、熱伝導率、電気特性等の観点から、充填材(C)をさらに含有することが好ましい。充填材(C)としては、公知のものを適宜使用することができ、その種類は特に限定されない。特に、積層板用途において一般に使用されている充填材を、充填材(C)として好適に用いることができる。充填材(C)の具体例としては、以下に限定されないが、天然シリカ、溶融シリカ、合成シリカ、アモルファスシリカ、アエロジル、中空シリカ等のシリカ類、ホワイトカーボン、チタンホワイト、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム等の酸化物、窒化ホウ素、凝集窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム加熱処理品(水酸化アルミニウムを加熱処理し、結晶水の一部を減じたもの)、ベーマイト、水酸化マグネシウム等の金属水和物、酸化モリブデンやモリブデン酸亜鉛等のモリブデン化合物、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、アルミナ、クレー、カオリン、タルク、焼成クレー、焼成カオリン、焼成タルク、マイカ、E-ガラス、A-ガラス、NE-ガラス、C-ガラス、L-ガラス、D-ガラス、S-ガラス、M-ガラスG20、ガラス短繊維(Eガラス、Tガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス等のガラス微粉末類を含む。)、中空ガラス、球状ガラス等無機系の充填材(C)の他、スチレン型、ブタジエン型、アクリル型等のゴムパウダー、コアシェル型のゴムパウダー、並びにシリコーンレジンパウダー、シリコーンゴムパウダー、シリコーン複合パウダー等有機系の充填材(C)等が挙げられる。これらの中でも、シリカ、水酸化アルミニウム、ベーマイト、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムからなる群から選択される1種又は2種以上が好適である。これらの充填材(C)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
本実施形態の樹脂組成物における充填材(C)の含有量は、所望する特性に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、樹脂組成物の成形性等の観点から、樹脂固形分を100質量部とした場合、50~1600質量部が好ましく、より好ましくは50~750質量部であり、さらに好ましくは50~300質量部であり、特に好ましくは50~200質量部である。
【0066】
ここで充填材(C)を樹脂組成物に含有させるにあたり、シランカップリング剤や湿潤分散剤を併用することが好ましい。
【0067】
シランカップリング剤としては、一般に無機物の表面処理に用いられるものを好適に用いることができ、その種類は特に限定されない。シランカップリング剤として、具体的には、以下に限定されないが、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシラン等のアミノシラン系、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系、γ-メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルートリ(β-メトキシエトキシ)シラン等のビニルシラン系、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩等のカチオニックシラン系、並びにフェニルシラン系のシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
また、湿潤分散剤としては、一般に塗料用に用いられているものを好適に用いることができ、その種類は特に限定されない。湿潤分散剤としては、好ましくは、共重合体ベースの湿潤分散剤が用いられ、市販品であってもよい。市販品の具体例としては、以下に限定されないが、ビックケミー・ジャパン(株)製のDisperbyk-110、111、161、180、BYK-W996、BYK-W9010、BYK-W903、BYK-W940等が挙げられる。湿潤分散剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
(硬化促進剤)
また、本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて、硬化速度を適宜調節するための硬化促進剤を含有していてもよい。この硬化促進剤としては、シアン酸エステル化合物やエポキシ樹脂等の硬化促進剤として一般に使用されているものを好適に用いることができ、その種類は特に限定されない。硬化促進剤の具体例としては、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、アセチルアセトン鉄、オクチル酸ニッケル、オクチル酸マンガン等の有機金属塩類、フェノール、キシレノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、オクチルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール化合物、1-ブタノール、2-エチルヘキサノール等のアルコール類、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類及びこれらのイミダゾール類のカルボン酸若しくはその酸無水類の付加体等の誘導体、ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン類、ホスフィン系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、ホスホニウム塩系化合物、ダイホスフィン系化合物等のリン化合物、エポキシ-イミダゾールアダクト系化合物、ベンゾイルパーオキサイド、p-クロロベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシカーボネート等の過酸化物、又はアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N-ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。硬化促進剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
(他の添加剤)
さらに、本実施形態の樹脂組成物は、所期の特性が損なわれない範囲において、他の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂及びそのオリゴマー、エラストマー類等の種々の高分子化合物、難燃性化合物、並びに各種添加剤等を併用することができる。これらは一般に使用されているものであれば、特に限定されるものではない。難燃性化合物の具体例としては、以下に限定されないが、4,4'-ジブロモビフェニル等の臭素化合物、リン酸エステル、リン酸メラミン、リン含有エポキシ樹脂、メラミン及びベンゾグアナミン等の窒素化合物、オキサジン環含有化合物、並びに、シリコーン系化合物等が挙げられる。また、各種添加剤としては、以下に限定されないが、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、流動調整剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光沢剤、重合禁止剤等が挙げられる。これらは、所望に応じて1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
(有機溶剤)
なお、本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて、有機溶剤を含有することができる。この場合、本実施形態の樹脂組成物は、上述した各種樹脂成分の少なくとも一部、好ましくは全部が有機溶剤に溶解又は相溶した態様(溶液又はワニス)として用いることができる。有機溶剤としては、上述した各種樹脂成分の少なくとも一部、好ましくは全部を溶解又は相溶可能なものであれば、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されるものではない。有機溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ系溶媒、乳酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステル系溶媒、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類等の極性溶剤類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等の無極性溶剤が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
本実施形態の樹脂組成物は、常法にしたがって調製することができ、本実施形態におけるシアン酸エステル化合物(A)及びマレイミド化合物(B)並びに上述したその他の任意成分を均一に含有する樹脂組成物が得られる方法であれば、その調製方法は特に限定されない。例えば、本実施形態におけるシアン酸エステル化合物(A)及びマレイミド化合物(B)並びに上述したその他の任意成分を溶剤に順次配合し、十分に撹拌することで本実施形態の樹脂組成物を容易に調製することができる。
【0073】
なお、樹脂組成物の調製時に、各成分を均一に溶解或いは分散させるための公知の処理(撹拌、混合、混練処理等)を行うことができる。例えば、充填材(C)の均一分散にあたり、適切な撹拌能力を有する撹拌機を付設した撹拌槽を用いて撹拌分散処理を行うことで、樹脂組成物に対する分散性が高められる。上記の撹拌、混合、混練処理は、例えば、ボールミル、ビーズミル等の混合を目的とした装置、または、公転・自転型の混合装置等の公知の装置を用いて適宜行うことができる。
【0074】
本実施形態の樹脂組成物は、プリプレグ、金属箔張積層板、プリント配線板、及び半導体パッケージの構成材料として用いることができる。例えば、本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を基材に含浸又は塗布し乾燥することでプリプレグを得ることができる。
【0075】
また、基材として剥離可能なプラスチックフィルムを用い、本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を、そのプラスチックフィルムに塗布し乾燥することでビルドアップ用フィルム又はドライフィルムソルダーレジストを得ることができる。ここで、溶剤は、20℃~150℃の温度で1~90分間乾燥することで乾燥できる。また、本実施形態の樹脂組成物は溶剤を乾燥しただけの未硬化の状態で使用することもできるし、必要に応じて半硬化(Bステージ化)の状態にして使用することもできる。
【0076】
以下、本実施形態のプリプレグについて詳述する。本実施形態のプリプレグは、基材と、該基材に含浸又は塗布された上記樹脂組成物とを有するものである。本実施形態のプリプレグの製造方法は、本実施形態の樹脂組成物と基材とを組み合わせてプリプレグを製造する方法であれば、特に限定されない。具体的には、本実施形態の樹脂組成物を基材に含浸又は塗布させた後、120~220℃の乾燥機中で、2~15分程度乾燥させる方法等によって半硬化させることで、本実施形態のプリプレグを製造することができる。このとき、基材に対する樹脂組成物の付着量、すなわち半硬化後のプリプレグの総量に対する樹脂組成物の含有量(充填材(C)を含む。)は、20~99質量%の範囲であることが好ましい。
【0077】
本実施形態のプリプレグを製造する際に用いる基材としては、各種プリント配線板材料に用いられている公知のものであってもよい。そのような基材としては、例えば、Eガラス、Dガラス、Lガラス、Sガラス、Tガラス、Qガラス、UNガラス、NEガラス、球状ガラス等のガラス繊維、クォーツ等のガラス以外の無機繊維、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル等の有機繊維、液晶ポリエステル等の織布が挙げられるが、これらに特に限定されるものではない。基材の形状としては、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット、及びサーフェシングマット等が知られており、これらのいずれであってもよい。基材は、1種を単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。織布の中では、特に超開繊処理や目詰め処理を施した織布が、寸法安定性の観点から好適である。さらに、エポキシシラン処理、又はアミノシラン処理等のシランカップリング剤等で表面処理したガラス織布は吸湿耐熱性の観点から好ましい。また、液晶ポリエステル織布は、電気特性の面から好ましい。さらに、基材の厚さは、特に限定されないが、積層板用途であれば、0.01~0.2mmの範囲が好ましい。
【0078】
本実施形態の金属箔張積層板は、少なくとも1枚以上積層された上述のプリプレグと、そのプリプレグの片面又は両面に配された金属箔とを有するものである。具体的には、前述のプリプレグ1枚に対して、又はプリプレグを複数枚重ねたものに対して、その片面又は両面に銅やアルミニウム等の金属箔を配置して、積層成形することにより作製することができる。ここで用いられる金属箔は、プリント配線板材料に用いられているものであれば、特に限定されないが、圧延銅箔及び電解銅箔等の銅箔が好ましい。また、金属箔の厚さは、特に限定されないが、2~70μmであると好ましく、3~35μmであるとより好ましい。成形条件としては、通常のプリント配線板用積層板及び多層板の作製時に用いられる手法を採用できる。例えば、多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機、又はオートクレーブ成形機等を用い、温度180~350℃、加熱時間100~300分、面圧20~100kg/cm2の条件で積層成形することにより本実施形態の金属箔張積層板を製造することができる。また、上記のプリプレグと、別途作製した内層用の配線板とを組み合わせて積層成形することにより、多層板を作製することもできる。多層板の製造方法としては、例えば、上述したプリプレグ1枚の両面に35μmの銅箔を配置し、上記条件にて積層形成した後、内層回路を形成し、この回路に黒化処理を実施して内層回路板を形成する。さらに、この内層回路板と上記のプリプレグとを交互に1枚ずつ配置し、さらに最外層に銅箔を配置して、上記条件にて好ましくは真空下で積層成形する。こうして、多層板を作製することができる。
【0079】
本実施形態の金属箔張積層板は、さらにパターン形成することにより、プリント配線板として好適に用いることができる。プリント配線板は、常法に従って製造することができ、その製造方法は特に限定されない。以下、プリント配線板の製造方法の一例を示す。まず、上述した金属箔張積層板を用意する。次に、金属箔張積層板の表面にエッチング処理を施して内層回路を形成することにより、内層基板を作製する。この内層基板の内層回路表面に、必要に応じて接着強度を高めるための表面処理を施し、次いで、その内層回路表面に上述したプリプレグを所要枚数重ねる。さらに、その外側に外層回路用の金属箔を積層し、加熱加圧して一体成形する。このようにして、内層回路と外層回路用の金属箔との間に、基材及び樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層が形成された多層の積層板が製造される。次いで、この多層の積層板にスルーホールやバイアホール用の穴あけ加工を施した後、この穴の壁面に内層回路と外層回路用の金属箔とを導通させるめっき金属皮膜を形成する。さらに、外層回路用の金属箔にエッチング処理を施して外層回路を形成することで、プリント配線板が製造される。
【0080】
上記の製造例で得られるプリント配線板は、絶縁層と、この絶縁層の表面に形成された導体層とを有し、絶縁層が上述した本実施形態の樹脂組成物を含む構成となる。すなわち、上述した本実施形態のプリプレグ(基材及びこれに含浸又は塗布された本実施形態の樹脂組成物)、上述した本実施形態の金属箔張積層板の樹脂組成物の層(本実施形態の樹脂組成物からなる層)が、本実施形態の樹脂組成物を含む絶縁層から構成されることになる。
【0081】
本実施形態の樹脂シートは、支持体と、その支持体の表面に配された、上記樹脂組成物層(積層シート)を備えている。本実施形態の樹脂シートは、積層シートとして用いることができ、また、支持体を取り除いた樹脂組成物層のみ(単層シート)としても用いることができる。すなわち、本実施形態の樹脂シートは、少なくとも、本実施形態の樹脂組成物を有するものである。この積層シートは、上記の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を支持体に塗布し乾燥することで得ることができる。ここで用いる支持体としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体フィルム、並びにこれらのフィルムの表面に離型剤を塗布した離型フィルム、ポリイミドフィルム等の有機系のフィルム基材、銅箔、アルミ箔等の導体箔、ガラス板、SUS板、FRP等の板状の無機系のフィルムが挙げられる。塗布方法としては、例えば、上記の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を、バーコーター、ダイコーター、ドクターブレード、ベーカーアプリケーター等で支持体上に塗布することで、支持体と樹脂組成物層が一体となった積層シートを作製する方法が挙げられる。また、塗布後、さらに乾燥して得られる樹脂シートから支持体を剥離又はエッチングすることで、単層シートを得ることもできる。なお、上記の本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解又は相溶させた溶液を、シート状のキャビティを有する金型内に供給し乾燥する等してシート状に成形することで、支持体を用いることなく単層シートを得ることもできる。
【0082】
なお、本実施形態の樹脂シート又は単層シートの作製において、溶剤を除去する際の乾燥条件は、特に限定されないが、20℃~200℃の温度で1~90分間乾燥させることが好ましい。20℃以上であると樹脂組成物中への溶剤の残存をより防止でき、200℃以下であると樹脂組成物の硬化の進行を抑制することができる。また、本実施形態の樹脂シート又は単層シートにおける樹脂層の厚さは、本実施形態の樹脂組成物の溶液の濃度と塗布厚さにより調整することができ、特に限定されない。ただし、その厚さは0.1~500μmであると好ましい。樹脂層の厚さが500μm以下であると、乾燥時に溶剤がさらに残り難くなる。
【実施例】
【0083】
以下、本実施形態を実施例及び比較例を用いてさらに具体的に説明する。但し、本発明は、これらにより何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における好ましい上限値又は好ましい下限値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0084】
〔合成例1〕フェニレンエーテル骨格を有するシアン酸エステル化合物(A)(NOCN)の合成
フェニレンエーテル骨格を有するフェノール樹脂(DIC(株)製、EXB-9600)300g(OH基換算3.75mol)、及びトリエチルアミン580.8g(5.74mol、前記ヒドロキシ基1molに対して1.53mol)を、ジクロロメタン1800gに溶解させ、これを溶液1とした。
塩化シアン380.4g(6.19mol、前記ヒドロキシ基1molに対して1.65mol)、ジクロロメタン887.5g、36%塩酸569.7g(5.63mol、前記ヒドロキシ基1モルに対して1.5モル)、及び水2800gの混合溶液に、撹拌下、液温-2~-0.5℃に保ちながら、溶液1を100分かけて注下した。溶液1の注下終了後、同温度にて30分撹拌した後、トリエチルアミン227.7g(2.25mol、前記ヒドロキシ基1molに対して0.6mol)をジクロロメタン230gに溶解させた溶液(溶液2)を、40分かけて注下した。溶液2の注下終了後、同温度にて30分撹拌して反応を完結させた。
その後反応液を静置して有機相と水相を分離した。得られた有機相を、0.1N塩酸2Lにより洗浄した後、水2000gで7回洗浄した。水洗7回目の廃水の電気伝導度は50μS/cmであり、水による洗浄により、除けるイオン性化合物は十分に除けられたことを確認した。
水洗後の有機相を減圧下で濃縮し、最終的に90℃で1時間濃縮乾固させて目的とするシアン酸エステル化合物NOCN(黒紫色粘性物)197gを得た。得られたNOCNのIRスペクトルは2250cm
-1にシアン酸エステル基の吸収を示し、且つ、ヒドロキシ基の吸収は示さなかった。得られたNOCNのIRチャート、及び原料として用いたEXB-9600のIRチャートを、
図1に示す。
【0085】
(実施例1)
合成例1のシアン酸エステル化合物(A)(NOCN、シアネート基当量108g/eq.)50.0質量部、ノボラック型マレイミド化合物(大和化成工業社製、BMI-2300、不飽和イミド基当量186g/eq.)50.0質量部、エポキシシラン処理された溶融シリカ(アドマテックス製、SC2050MB)100.0質量部、2,4,5-Triphenylimidazole(東京化成工業(株)製)0.5質量部、オクチル酸亜鉛(日本化学産業(株)製)0.10質量部をメチルエチルケトンに混合して、実施例1のワニスを得た。
得られた実施例1のワニスを厚さ0.1mmのEガラスクロスに含浸塗工し、乾燥機(耐圧防爆型スチーム乾燥機、(株)高杉製作所製))を用いて165℃、5分加熱乾燥し、樹脂組成物46質量%の実施例1のプリプレグを得た。このプリプレグ8枚を重ね、両面に12μm銅箔(3EC-M3-VLP、三井金属鉱業(株)製)を配置し、圧力40kg/cm2、温度220℃で80分間真空プレスを行い、厚さ0.8mmの実施例1の12μm銅張り積層板を得た。
【0086】
(比較例1)
合成例1のシアン酸エステル化合物(A)に代えて、ノボラック型シアン酸エステル化合物(Primaset PT-30、ロンザジャパン(株)製、シアネート基当量124g/eq.)を用いる以外は、実施例1と同様にして、比較例1のワニスを得た。
得られた比較例1のワニスを厚さ0.1mmのEガラスクロスに含浸塗工し、乾燥機(耐圧防爆型スチーム乾燥機、(株)高杉製作所製))を用いて165℃、5分加熱乾燥し、樹脂組成物46質量%の比較例1のプリプレグを得た。このプリプレグ8枚を重ね、両面に12μm銅箔(3EC-M3-VLP、三井金属鉱業(株)製)を配置し、圧力40kg/cm2、温度220℃で80分間真空プレスを行い、厚さ0.8mmの比較例1の12μm銅張り積層板を得た。
【0087】
〔銅張り積層板の評価〕
得られた銅張り積層板を用いて、以下の評価を行った。
(1)耐熱性評価
得られた絶縁層厚さ0.8mmの銅箔張積層板をダイシングソーでサイズ12.7×30mmに切断後、表面の銅箔をエッチングにより除去し、測定用サンプルを得た。この測定用サンプルを用い、JIS C6481に準拠して動的粘弾性分析装置(TAインスツルメント製)でDMA法により、貯蔵弾性率E'、損失弾性率E''を測定し、E''及びtanδ(=E''/E')のピークの値をそれぞれガラス転移温度として耐熱性を評価した。
【0088】
(2)熱伝導率
得られた絶縁層厚さ0.8mmの銅箔張積層板表面の銅箔をエッチングにより除去し、測定用サンプルを得た。得られたサンプルの密度を測定し、また、比熱をDSC(TA Instrumen Q100型)により測定し、さらに、キセノンフラッシュアナライザ(Bruker:LFA447 Nanoflash)により熱拡散率を測定した。次いで、厚み方向の熱伝導率を以下の式から算出した。
熱伝導率(W/m・K)=密度(kg/m3)×比熱(kJ/kg・K)×熱拡散率(m2/s)×1000
【0089】
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の樹脂組成物は、プリプレグ、金属箔張積層板、樹脂シート、プリント配線板等の材料として、産業上の利用可能性を有する。