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特許6994190インサート装置、インサート装置が埋設されたサンドイッチパネル、蓄熱ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】インサート装置、インサート装置が埋設されたサンドイッチパネル、蓄熱ユニット
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/02 20060101AFI20220106BHJP
   F28F 3/04 20060101ALI20220106BHJP
   F28F 3/12 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
F28D20/02 D
F28F3/04 Z
F28F3/12 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017137072
(22)【出願日】2017-07-13
(65)【公開番号】P2019020017
(43)【公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000236920
【氏名又は名称】富山県
(73)【特許権者】
【識別番号】511003235
【氏名又は名称】有限会社オービタルエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100151987
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 信行
(72)【発明者】
【氏名】畠中 龍太
(72)【発明者】
【氏名】神谷 友裕
(72)【発明者】
【氏名】北本 和也
(72)【発明者】
【氏名】金城 富宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 貴文
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 雅規
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-184701(JP,A)
【文献】特開2012-192916(JP,A)
【文献】特開2008-194876(JP,A)
【文献】特開平04-163298(JP,A)
【文献】国際公開第2017/053184(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/02
F28F 3/04
F28F 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2つの表皮とコアとインサート装置を備えるサンドイッチパネルであって、
前記コア内に切欠部が設けられ、
前記切欠部に前記インサート装置が埋設され
前記インサート装置
インサート部と、
前記インサート部に連結され、前記表皮の少なくとも一方と接するように配置された蓄熱ユニット部と、
を備え
前記切欠部の形状は、前記インサート装置と相補的な形状を有するサンドイッチパネル
【請求項2】
前記蓄熱ユニット部は、
密閉容器と、
前記密閉容器に封入される相変化蓄熱材と、
前記相変化蓄熱材に接触する複数の第1の熱伝導部と、
を含み、
前記密閉容器の内壁部は、熱伝導性を有し、
前記複数の第1の熱伝導部の一端が、前記密閉容器の前記表皮に接する第1の内壁部分
に連結され、前記複数の第1の熱伝導部のうちの少なくとも一部の他端が、前記第1の内
壁部分に対して前記相変化蓄熱材を挟んだ位置にある第2の内壁部分に連結されている請
求項1に記載のサンドイッチパネル
【請求項3】
前記蓄熱ユニット部は、少なくとも1つの第2の熱伝導部を更に含み、
前記少なくとも1つの第2の熱伝導部の各々は、前記複数の第1の熱伝導部のうちの少
なくとも一部と交点を有し、該交点で連結されている請求項2に記載のサンドイッチパネル
【請求項4】
前記第1の内壁部分の少なくとも一部は平面状の部分を有し、
前記複数の第1の熱伝導部及び前記少なくとも1つの第2の熱伝導部と、前記平面状の
部分とのなす角度は、45°以下である請求項3に記載のサンドイッチパネル
【請求項5】
前記複数の第1の熱伝導部及び前記少なくとも1つの第2の熱伝導部は、柱状又は線状
の熱伝導部であり、3次元網目構造体を形成している請求項3又は4に記載のサンドイッチパネル
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インサート装置、インサート装置が埋設されたサンドイッチパネル、蓄熱ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般産業用のエレベータや大型映像機器の筐体パネル、駅ホーム柵、車両などの輸送・運搬用機器の構造部材、人工衛星や航空機等に用いられる構造部材として、アルミのハニカムコアにアルミやCFRP(炭素繊維強化プラスチック)の表皮を接着したハニカムパネルがある。このハニカムパネルに様々な搭載機器を直接又はブラケット類を介して取り付ける際には、ハニカムコアの空胴部分に直接ボルト等を用いて締結することは強度的に困難である。そのため、ハニカムパネルに、雌ねじ部を有するインサートを埋設し、樹脂等の充填剤を用いてインサートを固定し、そのインサートに対して、様々な搭載機器を締結して取り付けることによって、締め付け軸力に抗すると共に、荷重を分散支持させる(下記特許文献1)。
【0003】
ここで、人工衛星においては、熱制御が重要な課題となるが、搭載機器から発生した熱は、搭載機器からボルトや搭載機器が接触しているインサート又は表皮を介して熱制御デバイスに伝えられる。
【0004】
一方、本発明者らは、互いに垂直な3つの方向に所定の間隔で配置された線状の熱伝導部が互いにその交点で連結された3次元網目構造が、相変化蓄熱材が封入された密閉容器の内壁に一体化して連結された蓄熱ユニットを提案した(下記特許文献2)。このような蓄熱ユニットの構成により、熱源からの熱を相変化蓄熱材に効率的に伝達し、伝熱性能や蓄熱密度を向上させると共に、構造強度も向上させることができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-198259号公報
【文献】特開2017-075773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、発熱源である搭載機器の近傍に熱制御デバイスを設置できるスペースがなかったり、またスペースがあったとしても、サンドイッチパネルは面内熱伝導が小さく、搭載機器の受熱面と熱制御デバイスの受熱面の間に大きな熱の損失(温度差)が生じる。
【0007】
一方、上記蓄熱ユニットにおいて、更なる伝熱性能や蓄熱密度の向上という課題がある。また、上記の蓄熱ユニットにおいては、線状の熱伝導部は互いに垂直な3つの方向に配置されているので、この蓄熱ユニットを、金属粉末焼結方式等の三次元積層造形方式で造形する際には、水平方向に浮いている構造はサポート構造無しでは造形できず、蓄熱ユニットのような閉容器の場合は造形後にサポート構造の除去ができないという造形方式の制約により、造形時に容器全体を傾けて造形する必要があり、特に大面積の蓄熱ユニットを造形する際に大きさの制約が生じたり、造形費用が高くなるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、サンドイッチパネル外部からの熱を効率よく熱交換することを可能とする装置及びサンドイッチパネルを提供することを目的の1つとする。
【0009】
また、本発明は、蓄熱ユニットの伝熱性能や蓄熱密度を向上させることを目的の1つとする。
【0010】
また、本発明は、三次元積層造形方式による製造が容易な蓄熱ユニットを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1つの態様は、対向する2つの表皮とコアを備えるサンドイッチパネルの前記コア内に埋設されるインサート装置であって、インサート部と、前記インサート部に連結され、前記表皮の少なくとも一方と接するように配置された蓄熱ユニット部とを備えるインサート装置を提供するものである。
【0012】
前記蓄熱ユニット部は、密閉容器と、前記密閉容器に封入される相変化蓄熱材と、前記相変化蓄熱材に接触する複数の第1の熱伝導部とを含み、前記密閉容器の内壁部は、熱伝導性を有し、前記複数の第1の熱伝導部の一端が、前記密閉容器の前記表皮に接する第1の内壁部分に連結され、前記複数の第1の熱伝導部のうちの少なくとも一部の他端が、前記第1の内壁部分に対して前記相変化蓄熱材を挟んだ位置にある第2の内壁部分に連結されているものとすることができる。
【0013】
前記蓄熱ユニット部は、少なくとも1つの第2の熱伝導部を更に含み、前記少なくとも1つの第2の熱伝導部の各々は、前記複数の第1の熱伝導部のうちの少なくとも一部と交点を有し、該交点で連結されているものとすることができる。
【0014】
前記第1の内壁部分の少なくとも一部は平面状の部分を有し、前記複数の第1の熱伝導部及び前記少なくとも1つの第2の熱伝導部と、前記平面状の部分とのなす角度は、45°以下であるものとすることができる。
【0015】
前記複数の第1の熱伝導部及び前記少なくとも1つの第2の熱伝導部は、柱状又は線状の熱伝導部であり、3次元網目構造体を形成しているものとすることができる。
【0016】
本発明の1つの態様は、対向する2つの表皮とコアを備えるサンドイッチパネルの前記コア内に埋設されるインサート装置であって、インサート部と、前記表皮と接するように配置され、前記インサート部を冷却する流体冷却部とを備えるインサート装置を提供するものである。
【0017】
前記流体冷却部は、筐体と、少なくとも1つの仕切り部と、流体注入部と、流体排出部とを備え、前記筐体は、前記表皮と接する第1の壁部と、前記第1の壁部に対向する第2の壁部とを備え、前記少なくとも1つの仕切り部は、前記第1の壁部及び前記第2の壁部に接続され、前記流体注入部から注入された流体が、前記流体排出部から排出されるような流路を形成するように配置されているものとすることができる。
【0018】
前記流体冷却部は、複数の第1の熱伝導部を更に含み、前記複数の第1の熱伝導部の一端が、前記第1の壁部に連結され、前記複数の第1の熱伝導部のうちの少なくとも一部の他端が、前記第2の壁部に連結されているものとすることができる。
【0019】
前記流体冷却部は、少なくとも1つの第2の熱伝導部を更に含み、前記少なくとも1つの第2の熱伝導部の各々は、前記複数の第1の熱伝導部のうちの少なくとも一部と交点を有し、該交点で連結されているものとすることができる。
【0020】
前記第1の内壁部分の少なくとも一部は平面状の部分を有し、前記複数の第1の熱伝導部及び前記少なくとも1つの第2の熱伝導部と、前記平面状の部分とのなす角度は、45°以下であるものとすることができる。
【0021】
前記複数の第1の熱伝導部及び前記少なくとも1つの第2の熱伝導部は、柱状又は線状の熱伝導部であり、3次元網目構造体を形成しているものとすることができる。
【0022】
本発明の1つの態様は、前記インサート装置が前記コア内に埋設されたサンドイッチパネルを提供するものである。
【0023】
本発明の1つの態様は、密閉容器と、前記密閉容器に封入される相変化蓄熱材と、前記相変化蓄熱材に接触する複数の第1の熱伝導部と、少なくとも1つの第2の熱伝導部とを含み、前記密閉容器の内壁部は、熱伝導性を有し、前記複数の第1の熱伝導部の一端が、前記密閉容器の熱源に接する第1の内壁部分に連結され、前記複数の第1の熱伝導部のうちの少なくとも一部の他端が、前記第1の内壁部分に対して前記相変化蓄熱材を挟んだ位置にある第2の内壁部分に連結され、前記少なくとも1つの第2の熱伝導部の各々は、前記複数の第1の熱伝導部のうちの少なくとも一部と交点を有し、該交点で連結され、前記少なくとも1つの第2の熱伝導部は、前記第1の内壁部分側から前記第2の内壁部分側の方向に延びている蓄熱ユニットを提供するものである。
【0024】
本明細書及び特許請求の範囲において、直線と平面のなす角度は、直線と平面の法線のなす角度を意味する。また、曲線と曲面のなす角度は、曲線と曲面の交点における接線と接平面のなす角度を意味する。
【発明の効果】
【0025】
上記構成を有する本発明によれば、サンドイッチパネル外部からの熱を効率よく熱制御することを可能とする装置及びサンドイッチパネルを提供することができる。
【0026】
また、上記構成を有する本発明によれば、蓄熱ユニットの伝熱性能や蓄熱密度を向上させることができる。
【0027】
また、上記構成を有する本発明によれば、三次元積層造形方式による製造が容易な蓄熱ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1の実施形態に係るサンドイッチパネルの一部切欠斜視図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係るインサート装置の斜視図である。
図4図2のIV-IV断面図である。
図5図2のV-V断面図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係るインサート装置の斜視図である。
図7図6のVII-VII断面図である。
図8図6のVIII-VIII面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0030】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るサンドイッチパネルの一部切欠斜視図である。図2は、図1のII-II断面図である。図3は、本発明の第1の実施形態に係るインサート装置の斜視図である。図4は、図3のIV-IV断面図であり、図5は、図3のV-V断面図である。この図1図5を参照して、本発明の第1の実施形態の構成及び動作原理を説明する。
【0031】
本実施形態に係るサンドイッチパネル1は、ハニカムコア14、ハニカムコア14の厚さ方向の両面に接着層13を介して接着された表皮11、12、インサート装置3を備える。ハニカムコア14の材質としては、例えば、アルミ、ノーメックス、紙、CFRP、GFRP、チタン、ステンレス、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、塩化ビニルを用いることができるが、これに限定されるものではなく、他の適切な任意の材質を用いることができる。また、表皮11、12の材質としては、例えば、アルミ、CFRP、GFRP、チタン、ステンレス、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、塩化ビニルを用いることができるが、これに限定されるものではなく、他の適切な任意の材質を用いることができる。本実施形態においては、サンドイッチパネルは、コアがハニカムコアであるハニカムサンドイッチパネルであるが、これに限定されるものではなく、コアが発泡体等の他の適切な任意のサンドイッチパネルとすることができる。
【0032】
表皮11には、取付穴111が設けられ、取付穴111を介して搭載機器(図示しない)が、ボルトによって、すなわち、後述のインサート部31の雌ねじ部311にボルトが螺合されて締結される。また、表皮11には、ハニカムコア14に埋設されたインサート装置3から突出するポート343を通すためのポート用開口部113が設けられている。
【0033】
ハニカムコア14の中央部には切欠部141が設けられ、切欠部141にインサート装置3が、樹脂等の充填剤7を用いて固定される。インサート装置3は、インサート部31の第1の壁34aが表皮11と接するように、ハニカムコア14の切欠部141に埋設固定される。また、後述のインサート装置3の密閉容器34の中空部341には、相補的な形状のハニカムコア14が充填剤7を用いて固定される。その後、インサート装置31が埋設固定されたハニカムコア14の両面に表皮11、12が、接着剤や接着シート等により接着されて、サンドイッチパネル1が形成される。
【0034】
インサート装置3は、インサート部31と蓄熱ユニット部33を備える。
【0035】
インサート部31は、搭載機器を締結するためのボルトと螺合する雌ねじ部311を備える。インサート部31は、その高さがハニカムコア14の厚さとほぼ同じの円柱形状を有する。インサート部31は、後述の蓄熱ユニット部33と同じ熱伝導性を有する材料で構成され、蓄熱ユニット部33の密閉容器34の四隅に配置され、インサート部31の表皮11側の面と後述の蓄熱ユニット部の第1の壁が面一となるように、蓄熱ユニット部33と一体的に形成されている。
【0036】
蓄熱ユニット部33は、密閉容器34、相変化蓄熱材35、3次元網目構造体36を含む。
【0037】
密閉容器34は、四隅を面取りした略直方体の形状を有し、中央部に略直方体状の中空部341が形成されている。密閉容器34は、その高さがハニカムコア14の厚さとほぼ同じであり、熱伝導性を有する材料で構成されている。密閉容器34の形状はこのような形状に限定されるものではなく、サンドイッチパネルに埋設された際にコア内に配置されるように、コアの厚さ方向の寸法がコアの厚さ以下の任意の形状とすることができる。また、この密閉容器34を構成する熱伝導性を有する材料としては、例えば、アルミ、銅、マグネシウム、タングステン、およびそれらの合金を用いることができるが、これに限定されるものではなく、他の適切な任意の材料を用いることができる。密閉容器34には、相変化蓄熱材35が真空状態で封入されている。相変化蓄熱材35の充填を行う際の密閉容器34内部の圧力は、用途に応じて高真空から高圧まで任意の値に設定することができる。また、内部のガス種を任意のガス種に置換することができる。置換に用いるガス種としては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、炭酸ガスを使用することができる。
【0038】
相変化蓄熱材35としては、例えば、n-エイコサン、n-ウンデカン、n-ドデカン、n-トリデカン、n-テトラデカン、n-ペンタデカン、n-ヘキサデカン、n-ヘプタデカン、n-オクタデカン、n-ノナデカン、n-ドコサン、n-オクタコサン等のパラフィン、混合ワックス、エリスリトール、ペンタエリスリトール、高密度ポリエチレン、硝酸リチウム、水、水に添加剤を加えて諸物性を調整した水溶液、重水、液体金属(ガリウムなど)、融解塩(水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の混合物など)を用いることができるが、これに限定されるものではなく、他の適切な任意の材料を用いることができる。また、相変化蓄熱材35と密閉容器34および三次元網目構造体35の化学的適合性を改善するために、密閉容器34および三次元網目構造体35に各種の表面処理を行うことができる。表面処理としては、例えば、ニッケルめっき、金めっきなどを用いることができる。
【0039】
密閉容器34の表皮11と接する第1の壁34aには、真空排気や相変化蓄熱材35を密閉容器34に充填するための中空の円筒状のポート343が設けられており、真空排気や相変化蓄熱材35の充填後、封止される。ポートの形状、個数、配置は、これに限定されるものではなく、任意の適切な位置に配置することができる。ポートの配置としては、例えば、サンドイッチパネル1内部に全て収まるように密閉容器34の側壁34c、34dのいずれかに設けることができる。この場合、サンドイッチパネル1の造形前に相変化蓄熱材35を充填しておく必要があり、サンドイッチパネル1の造形時温度(例えば120℃)に耐えられるように充填量などを調整しておく必要があるが、サンドイッチパネル1の外部に突起する部分を一切無くすことができる。
【0040】
3次元網目構造体36は、断面が正方形の複数の線状の第1の熱伝導部361、第2の熱伝導部362、第3の熱伝導部363が互いに連結されることにより形成されている。具体的には、第1の壁34aに垂直な方向(z方向)に延び、x方向及びy方向に互いに所定の間隔で配置された線状の第1の熱伝導部361に対して±30°の角度をなし、xz平面及びyz平面に平行な平面のそれぞれにおいて延びる線状の第2の熱伝導部362及び第3の熱伝導部363が互いにその交点366で連結され、また第2の熱伝導部362と第3の熱伝導部363が互いにその交点367で連結されて3次元網目構造体36が形成されている。各線状の熱伝導部の方向は、このような3つの方向に限定されるものではなく、3次元網目構造体を形成するものであれば、他の適切な任意の方向とすることができ、また線状の第1の熱伝導部361、第2の熱伝導部362、及び第3の熱伝導部363そのそれぞれの間の間隔は、一定の間隔に限定されるものではなく、変動するものであってもよい。ここで、後述のように、すべての線状の第1の熱伝導部と、主面である第1の壁部とのなす角度を±45°以下とすると三次元積層造形方式による製造に有利である。また、線状の第1の熱伝導部361、第2の熱伝導部362、及び第3の熱伝導部363の断面形状は、正方形に限定されるものではなく、円形、正方形以外の矩形、多角形、星形等の他の適切な任意の形状とすることができる。また、線状の第1の熱伝導部361、第2の熱伝導部362、及び第3の熱伝導部363の太さ(断面の寸法)は、一定の太さに限定されるものではなく、変動するものであってもよい。第1の熱伝導部361、第2の熱伝導部362、及び第3の熱伝導部363は、線状、柱状、板状等の適切な任意の形状とすることができる。また、第1の熱伝導部361、第2の熱伝導部362、及び第3の熱伝導部363は、異なる形状の熱伝導部の組合せ(例えば、異なる太さの線状の熱伝導部と異なる厚さの板状の熱伝導部の組合せ)で構成してもよい。
【0041】
線状の第1の熱伝導部361、第2の熱伝導部362、及び第3の熱伝導部363のうちの大部分は、相変化蓄熱材35に接触している。線状の第1の熱伝導部361、第2の熱伝導部362、及び第3の熱伝導部363は、ポート343の開口部に相当する部分を除いて、密閉容器34の内壁部342に連結される連結部368を備えている。具体的には、線状の第1の熱伝導部361は、ポート343の開口部に相当する部分を除いて、その一端が、密閉容器34の表皮11に接する部分である第1の壁34aに対応する内壁部342である第1の内壁部分342aに連結され、その他端が、第1の内壁部分342aに対して相変化蓄熱材35を挟んで対向する第2の壁34bに対応する内壁部342である第2の内壁部分342bに連結されている。
【0042】
また、第2の熱伝導部362及び第3の熱伝導部363は、ポート343の開口部に相当する部分を除いて、その一端が、第1の内壁部分342a又は第2の内壁部分342bに連結され、その他端が、第2の内壁部分342b若しくは密閉容器34の側壁34cに対応する第3の内壁部分342cかインサート部31の側壁31a、又は第1の内壁部分342a若しくは密閉容器34の側壁34dに対応する第4の内壁部分342dかインサート部31の側壁31aに連結されている。
【0043】
ここで、複数の線状の第1の熱伝導部361のうちの一部を、その一端が第1の内壁部分342aに連結され、その他端は第2の内壁部分342bに連結されていないものとしてもよい。この場合、他端が第2の内壁部分342bに連結しているものと、連結していないものの数やその比は、任意に決定することができる。また、同様に、線状の第2の熱伝導部362の一端及び/又は両端、線状の第3の熱伝導部363の一端及び/又は両端も、第1の内壁部分342a及び/又は第2の内壁部分342bに連結されていなくてもよい。この線状の第1の熱伝導部361、第2の熱伝導部362、及び第3の熱伝導部363を構成する熱伝導性を有する材料としては、例えば、アルミ、銅、マグネシウム、タングステン、およびそれらの合金を用いることができるが、これに限定されるものではなく、他の適切な任意の材料を用いることができる。
【0044】
密閉容器34、3次元網目構造体36、ポート343とインサート部31は一体的に形成されており、この一体的な構成は、金属粉末焼結方式等の三次元積層造形方式(3Dプリンタ)を用いて製造することができる。
【0045】
上述の従来の蓄熱ユニットにおいては、蓄熱ユニットが真空環境下にある場合の相変化蓄熱材から発生するガス層の圧力や、蓄熱ユニットが大気圧下にある場合や蓄熱ユニットにその他の荷重がかかっている場合の大気圧や荷重に対して、熱源側の壁である第1の壁から対向する第2の壁側の方向について、線状の第1の熱伝導部のみで支持していた。これに対して、本実施形態においては、線状の第1の熱伝導部のうちの少なくとも一部と交点を有する、つまり線上の第1の熱伝導部と所定の角度をなす線状の第2の熱伝導部362及び第3の熱伝導部363が第1の壁や第2の壁と連結する連結部368を有し、該連結部368が支持点となり、支持点が増加する。また、座屈の観点からは、線状の第1の熱伝導部361、第2の熱伝導部362、第3の熱伝導部363が交点366で連結されているので、従来の蓄熱ユニットと同様に、線状の第1の熱伝導部361の柱の長さが、各交点366間の間隔まで減少するので、座屈が生じにくい。
【0046】
また、本実施形態によれば、線状の第2の熱伝導部362及び線状の第3の熱伝導部363は、線状の第1の熱伝導部361と共に、熱源側の壁である第1の壁から対向する第2の壁側の方向に延びているので、第1の壁から第2の壁側に延びる線状の熱伝導部の数が大幅に増加し、また、線状の第2の熱伝導部362及び線状の第3の熱伝導部363は、線状の第1の熱伝導部361との連結部を有しながら、熱源側の壁である第1の壁から対向する第2の壁側の方向に延びているので、上述のような構造強度の向上を実現すると同時に、熱源側の壁である第1の壁から対向する第2の壁側の方向に対する伝熱性能を大きく向上させることができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、線状の第2の熱伝導部362及び線状の第3の熱伝導部363と、主面である第1の壁部とのなす角度が45°以下である、すなわちすべての線状の熱伝導部と、主面である第1の壁部とのなす角度が45°以下であるので、金属粉末焼結方式等の水平方向に浮いている構造が造形困難な三次元積層造形方式を用いる場合でも、造形時に容器全体を傾けて造形する必要がなく、製造が容易となる。
【0048】
また、本実施形態によれば、インサート装置が、ハニカムコア内に埋設され、蓄熱ユニット部が、インサート部に連結され、表皮と接するように配置されているので、蓄熱ユニット部を配置するための余分なスペースを必要とすることがなく、且つ、蓄熱ユニット部が、搭載機器から発生した熱等のサンドイッチパネルの外部からの熱の流れの経路であるインサートや表皮に接しているので、サンドイッチパネルの外部からの熱を効率よく熱交換することができる。
【0049】
また、従来のインサートは、1つずつ別個に、充填剤を用いてコアに設けられた穴に固定されていたため、正確な位置決めが困難であった。本実施形態によれば、複数のインサート部が蓄熱ユニット部と連結されているので、インサート間の距離の位置決め精度を向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、表皮に形成される開口が、インサート部の雌ねじ部に対応する取付穴と、ポートに対応するポート用開口部のみであるので、サンドイッチパネルの剛性にほとんど影響を与えることなく、剛性を維持することができる。
【0051】
本実施形態においては、線状の熱伝導部は、ポートの断面に相当する部分を除いて、密閉容器の内壁部に連結される連結部を備えているが、線状の熱伝導部の一部が、密閉容器の内壁部に連結される連結部を備えていれば、熱源からの熱が伝達され、また支持点も増加するので、そのように構成することもできる。
【0052】
上記実施形態においては、インサート部は4つ設けられていたが、インサート部の数、形状、配置は、取付けられる物品の形状や取付ボルトの数量等に応じて任意に選択することができる。
【0053】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態に係るインサート装置の斜視図である。図7は、図6のVII-VII断面図であり、図8は、図6のVIII-VIII断面図である。この図6図8を参照して、本発明の第2の実施形態の構成及び動作原理を説明する。図6~8において図1~5に対応する部分には同一の符号を付し、第1の実施形態と重複する説明は省略する。
【0054】
本実施形態に係るインサート装置3は、熱制御機構を、蓄熱ユニット部に換えて、流体冷却部としたものである。よって、インサート装置3のハニカムコア14への埋設固定は、第1の実施形態と同様である。ただし、後述のように流体冷却部53の筐体54の高さは、ハニカムコア14の厚さよりも小さいので、サンドイッチパネルの剛性維持のために、流体冷却部53と表皮12との間の空間を埋めるように別のハニカムコアが配置され、それらは接着材を用いて相互に固定される。
【0055】
インサート装置3は、インサート部31と流体冷却部53を備える。
【0056】
インサート部31は、後述の流体冷却部53と同じ熱伝導性を有する材料で構成され、流体冷却部53の筐体54の四隅に配置され、インサート部31の表皮11側の面と後述の流体冷却部53の第1の壁部54aが面一となるように、流体冷却部53と一体的に形成されている。
【0057】
流体冷却部53は、筐体54、仕切り部544、第1の熱伝導部561、流体注入管57、流体排出管58を含む。
【0058】
筐体54は、面取りした略直方体の形状を有し、その高さがハニカムコア14の厚さよりも小さい。筐体54の高さは、必要な流路断面積と伝熱面積から決定することができる。筐体54は、熱伝導性を有する材料で構成されている。筐体54の形状はこのような形状に限定されるものではなく、サンドイッチパネルに埋設された際に、コアの厚さ方向の寸法がハニカムコア14の厚さ以下の任意の形状とすることができる。また、この筐体54を構成する熱伝導性を有する材料としては、例えば、アルミ、銅、マグネシウム、タングステン、およびそれらの合金を用いることができるが、これに限定されるものではなく、他の適切な任意の材料を用いることができる。
【0059】
筐体54は、表皮11と接する略矩形の板状の第1の壁部54aと、第1の壁部54aに対向する略矩形の板状の第2の壁部54b、互いに対向する長手方向に延びる矩形の板状の第1の側壁部54c、互いに対向する、長手方向と直交する方向に延びる矩形の板状の第2の側壁部54dとを備える。また、第2の側壁部54dには、流体注入口546と側壁部流体排出口547が設けられ、そのそれぞれに流体注入管57と流体排出管58が接続され、流体注入口546から流体が筐体54内に注入され、流体排出口547から筐体54内に注入された流体が排出される。流体としては、例えば、水、各種のフロン系冷媒(CFC系、HCFC系、HFC系、PFC系)、エチレングリコール、プロピレングリコール、アンモニアを用いることができるが、これに限定されるものではなく、他の適切な任意の流体を用いることができる。
【0060】
仕切り部544は、5つ設けられ、それぞれ矩形の板状の形状を有し、互いに平行に且つ第1の壁部54a及び第1の側壁部54cに対して垂直に配置されている。仕切り部544の対向する長辺部は、それぞれ第1の壁部54a、第2の壁部54bに接続されている。また、仕切り部544の対向する短辺部の一方は、インサート部31の側壁31a又は筐体の第1の側壁部54cに接続され、短辺部の他方は、いずれにも接続されず、流体注入口546から注入された流体が、流体排出口547から排出されるような流路を形成するように、5つの仕切り部544が配置されている。仕切り部544は、流路を形成する機能だけでなく、熱伝導や構造支持の機能も有する。仕切り部の数や配置は、上記のようなものに限定されるものではなく、流体注入口から注入された流体が、インサート部を冷却し、流体排出口から排出されるような流路を形成するような、任意の数や配置とすることができる。また、流体の流路は、仕切り部を設けることなく管で構成し、例えば各インサート部を通過するようなコの字状の管や又は上記実施形態のような経路で蛇行する管とすることもできる。
【0061】
筐体54の第1の壁部54aと第2の壁部54bとの間には、断面が正方形の複数の線状の第1の熱伝導部561が設けられている。具体的には、複数の線状の第1の熱伝導部561は、第1の壁部54aに垂直な方向に、互いに所定の間隔で配置され、その一端が第1の壁部54aに対応する内壁部542である第1の内壁部分542aに連結され、その他端が、第2の壁部54bに対応する内壁部542である第2の内壁部分542bに連結されている。複数の線状の第1の熱伝導部561は、熱伝導の機能だけでなく、構造支持の機能も有する。第1の壁部と第2の壁部との間に設けられる複数の熱伝導部は、第1の実施形態において説明したような三次元構造体のような構成としてもよく、この場合、第1の実施形態において説明したような作用効果を奏する。
【0062】
また、本実施形態によれば、インサート装置が、ハニカムコア内に埋設され、流体冷却部が、インサート部に連結され、表皮と接するように配置されているので、流体冷却部を配置するための余分なスペースを必要とすることがなく、且つ、流体冷却部が、搭載機器から発生した熱等のサンドイッチパネルの外部からの熱の流れの経路であるインサートや表皮に接しているので、サンドイッチパネルの外部からの熱を効率よく熱交換することができる。
【0063】
上記実施形態は、サンドイッチパネルに、蓄熱ユニット部又は流体冷却部のいずれかが設けられるものであったが、例えば、ハニカムコア内の流体以外の空間の一部又は全部に蓄熱ユニット部を設ける等、冷却部蓄熱ユニット部及び流体冷却部の両方を備える構成としてもよい。
【0064】
以上、本発明について、例示のためにいくつかの実施形態に関して説明してきたが、本発明はこれに限定されるものでなく、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、形態及び詳細について、様々な変形及び修正を行うことができることは、当業者に明らかであろう。
【符号の説明】
【0065】
1 サンドイッチパネル
11、12 表皮
111 取付穴
113 ポート用開口部
14 ハニカムコア
141 切欠部
3 インサート装置
31 インサート部
31a 側壁
311 雌ねじ部
33 蓄熱ユニット部
34 密閉容器
34a 第1の壁
34b 第2の壁
34c 側壁
341 中空部
343 ポート
342 内壁部
342a 第1の内壁部分
342b 第2の内壁部分
342c 第3の内壁部分
342d 第4の内壁部分
35 相変化蓄熱材
36 3次元網目構造体
361 第1の熱伝導部
362 第2の熱伝導部
363 第3の熱伝導部
366 交点
367 交点
368 連結部
53 流体冷却部
54 筐体
54a 第1の壁部
54b 第2の壁部
54c 第1の側壁部
54d 第2の側壁部
542 内壁部
542a 第1の内壁部分
542b 第2の内壁部分544 仕切り部
546 流体注入口
547 流体排出口
561 第1の熱伝導部
57 流体注入管
58 流体排出管
7 充填剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8