IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日光ケミカルズ株式会社の特許一覧 ▶ 日本サーファクタント工業株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社コスモステクニカルセンターの特許一覧

特許6994192畜舎ダスト低減剤組成物、及び畜舎ダスト低減方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】畜舎ダスト低減剤組成物、及び畜舎ダスト低減方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 1/00 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
A01K1/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017166885
(22)【出願日】2017-08-31
(65)【公開番号】P2019000089
(43)【公開日】2019-01-10
【審査請求日】2020-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2017102226
(32)【優先日】2017-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017121127
(32)【優先日】2017-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開(1)日本農業新聞、1面見出し及び17面(平成29年3月2日発行、取材日:平成29年2月17日、日本農業新聞) 公開(2)一般財団法人 畜産環境整備機構のウェブサイト(平成29年3月31日掲載、http://www.chikusan-kankyo.jp/bmp/bmp.html、日本型悪臭防止最適管理手法(BMP)の手引き) 公開(3)養豚の友2017年7月号(平成29年7月1日発行、株式会社日本畜産振興会) 公開(4)平成29年度畜産環境シンポジウムによる口頭発表(平成29年7月25日開催)
(73)【特許権者】
【識別番号】000226437
【氏名又は名称】日光ケミカルズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000228729
【氏名又は名称】日本サーファクタント工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301068114
【氏名又は名称】株式会社コスモステクニカルセンター
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】小堤 悠平
(72)【発明者】
【氏名】田中 文人
(72)【発明者】
【氏名】山口 俊介
【審査官】佐藤 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-246710(JP,A)
【文献】特表平11-513566(JP,A)
【文献】国際公開第2006/035561(WO,A3)
【文献】米国特許出願公開第2003/0145800(US,A1)
【文献】超音波噴霧器を用いた無窓鶏舎内粉塵制御,畜産研究成果情報,2001年,14,27-28頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 1/00
J-STAGE
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)食用油(以下、(A)成分という)、(B)ソルビタン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(以下、(B)成分という)を含有する乳化液である、畜舎ダスト低減剤組成物。
【請求項2】
(A)成分を3~10質量%含有する、請求項1に記載の畜舎ダスト低減剤組成物。
【請求項3】
(B)成分の含有量が、(A)成分の含有量に対して、(A):(B)=1:1~10:1である、請求項1又は2に記載の畜舎ダスト低減剤組成物。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の畜舎ダスト低減剤組成物を、畜舎に散布する、畜舎ダスト低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畜舎内およびその近隣の環境改善に関するものであり、畜舎ダスト低減剤組成物及びそれを用いた畜舎ダスト低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
畜舎内には飼料や敷料から出るダスト(粉塵)が発生し、臭気や細菌が付着したダストは、家畜のみならず作業者の呼吸器系等の疾患の原因でもあり、労働環境の問題や、さらには悪臭物質を遠くに広げ、地域住民からの苦情が発生する原因ともなっている。畜舎付近のみならず、離れた場所においても悪臭を感じるのは、臭い物質がダストに付着して、遠くまで運ばれるためであり、ダスト飛散を抑えることが悪臭対策につながる。そのため、畜舎の環境改善および悪臭防止策の一環として、様々なダスト低減の方法が研究されている。
【0003】
従来のダストの低減方法としては、畜舎内で水を噴霧する方法があり、噴霧直後は空中のダスト含量は低減されるが、水分が乾くと再びダストが舞い上がるという問題があった。
また、重量比2%の植物油の水溶液を超音波噴霧器によって噴霧する方法(非特許文献1)が報告されているが、噴霧粒径を3~75μm又は7~150μmと非常に小さくする特殊な噴霧器が必要であり、また油で床が滑るといった問題もあった。
【0004】
また、1~2%希酢酸を動力噴霧装置や超音波噴霧器によって噴霧する方法(非特許文献2)が報告されているが、こちらも超音波噴霧器が必要であり、また超音波噴霧器の噴霧ノズルが、畜舎内の粉塵によるものとみられる詰りで噴霧量が低下するなどの問題もあった。
さらに、3d遷移金属のハロゲン化物塩を含有する水溶液を用いる方法(特許文献1)が報告されているが、消臭効果は発揮するものの、畜舎ダストの低減を図るものではないために、病原菌の拡散に対しては十分満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-085537号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】1998年度農業施設学会大会講演要旨、P.564-565、「超音波噴霧器を用いた無窓鶏舎内粉塵制御」
【文献】2002年度農業施設学会大会講演要旨、P.110-111、「酢酸噴霧による無窓鶏舎内アンモニア濃度の低減」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、畜舎内のダスト濃度を低減する作用に優れる畜舎ダスト低減剤組成物、及びそれを用いた畜舎ダスト低減方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、畜舎内ダストの低減方法について鋭意研究した結果、(A)食用油、及び(B)乳化剤を含有する乳化液が、畜舎ダストを低減する作用に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、(A)食用油、(B)乳化剤を含有する乳化液である、畜舎ダスト低減剤組成物に関する。
また本発明は、上記畜舎ダスト低減剤組成物を、畜舎に散布する、畜舎ダスト低減方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、畜舎内のダスト濃度を低減する作用に優れる畜舎ダスト低減剤組成物、及びそれを用いた畜舎ダスト低減方法を提供できる。
本発明の畜舎ダスト低減剤組成物を、畜舎内に散布することで、畜舎内ダストを大幅に低減し、またその効果が長時間維持されるため、病原菌の拡散抑制、労働環境の改善、悪臭の低減等の効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の構成を更に詳細に説明する。
[畜舎ダスト低減剤組成物]
本発明の畜舎ダスト低減剤組成物は、(A)食用油、(B)乳化剤を含有する乳化液である。本発明の畜産ダスト低減剤組成物は、畜舎内に散布して用いるため、家畜および人体に対して害のない成分を用いることが重要である。
【0011】
本発明に用いる(A)食用油としては、食用に用いられるものであれば特に制限はなく、植物油、動物油等を用いることができる。具体的には、サラダ油、亜麻仁油、アケビ油、アボカドオイル、アーモンドオイル、アルガンオイル、えごま油、オリーブ油、かや油、からし油、キャノーラ油、桐油、ククイナッツオイル、くるみ油、クランベリーシードオイル、グレープシードオイル、けし油、鯨油、小麦胚芽油、米ぬか油、コーン油、ごま油、山茶花油、サフラワー油、しそ油、ショートニング、白絞油、大豆油、茶油、月見草油、つばき油、ナタネ油、巴旦杏油、パーム油、パーム核油、パンプキンシードオイル、ひまし油、ヒマワリ油、ピスタチオオイル、ピーナッツオイル、ベニバナ油、ヘーゼルナッツオイル、マカダミアナッツオイル、綿実油、ヤシ油、及び落花生油等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0012】
(A)食用油としては、安価で、匂いが少なく、常温で液体のものがよく、具体的には、サラダ油、大豆油、キャノーラ油、ナタネ油、コーン油、及びサフラワー油から選ばれる1種以上が好ましい。また、消防法上、植物油は引火点が250℃未満である場合、2m3以上の保管が規制されるため、取り扱いの点で、引火点が250℃以上の食用油が好ましく、このような食用油としては、サラダ油(引火点254℃)、大豆油(引火点282℃)、及びナタネ油(引火点317℃)から選ばれる1種以上がより好ましい。
【0013】
本発明に用いる(B)乳化剤としては、食品や化粧料に用いられ、家畜や人体に対して安全性の高いものであれば特に制限はなく、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。
これらの内、(B)乳化剤は、常温で液状からペースト状のものが好ましく、具体的には、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルから選ばれる1種以上がより好ましく、さらにダスト低減の観点から、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種以上が更に好ましく、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びソルビタン脂肪酸エステルら選ばれる1種以上がより更に好ましく、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとソルビタン脂肪酸エステルの併用がより更に好ましい。
【0014】
より具体的には、ウンデシレン酸グリセリル、イソステアリン酸グリセリル、オレイン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、オレイン酸ポリグリセリル、イソステアリン酸ポリグリセリル、ラウリン酸ポリグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル、ラウリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン、ステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
(B)乳化剤は、市販品のものを用いることができる。市販品としては、例えば、日光ケミカルズ社製のNIKKOL SO-10V(モノオレイン酸ソルビタン)、SO-15V(セスキオレイン酸ソルビタン)、SO-30V(トリオレイン酸ソルビタン)、SI-10V(モノイソステアリン酸ソルビタン)、TO-10V(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン20E.O.)、TO-30V(トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン20E.O.)、TGI-20(トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル20E.O.)、MGIS(モノイソステアリン酸グリセリル)、MGO(モノオレイン酸グリセリル)、DGMS(モノステアリン酸ポリグリセリル)、DGMO-CV(モノオレイン酸ポリグリセリル)、DGMIS(モノイソステアリン酸ポリグリセリル)等が挙げられる。
【0016】
<組成等>
本発明の畜舎ダスト低減剤組成物は、(A)成分を、好ましくは1~20質量%、より好ましくは3~10質量%含有する。
本発明の畜舎ダスト低減剤組成物において、(B)乳化剤の含有量は、(A)食用油の含有量に対して、(A):(B)=1:1~10:1が好ましい。
本発明の畜舎ダスト低減剤組成物は、水を含有する。すなわち、(A)食用油、(B)乳化剤以外の残部が水である。
【0017】
本発明の畜舎ダスト低減剤組成物において、粘度は、市場で入手可能な噴霧器で散布できる程度の粘度であればよい。
【0018】
本発明の畜舎ダスト低減剤組成物の調製には、特殊な乳化設備等の必要はなく、あらかじめ(A)食用油と(B)乳化剤とを均一に混合した後、水の中に、撹拌しながら徐々に添加することで乳化液を得ることができる。
本発明の畜舎ダスト低減剤組成物は、畜舎ダストへの散布直前に調製してもよく、例えば(A)食用油と(B)乳化剤との混合物をあらかじめ購入し、畜舎ダストへの散布直前に水へ乳化させて調製してもよい。
【0019】
[畜舎ダスト低減方法]
本発明の畜舎ダスト低減方法は、上記した本発明の畜舎ダスト低減剤組成物を、畜舎に散布する、畜舎ダスト低減方法である。
本発明の畜舎ダスト低減方法は、本発明の畜舎ダスト低減剤組成物で述べた事項を適宜適用することができる。
【0020】
本発明の畜舎ダスト低減方法において、本発明の畜舎ダスト低減剤組成物を、畜舎内に散布する回数は、畜舎での作業負担の点から、1日1回が好ましい。
本発明の畜舎ダスト低減剤組成物は、噴霧器や天井スプリンクラー等を用いて150μm以上の粒子径で畜舎内に散布するのが好ましく、200~500μmの粒子径で畜舎内に散布するのがより好ましい。
本発明の畜舎ダスト低減剤組成物の散布量は、1平方メートル当たり5~200mL、好ましくは10~100mLであるが、畜舎の環境条件により異なる。
【0021】
本発明の畜舎ダスト低減方法は、特に限定されず、鶏舎、豚舎、牛舎等のいずれの畜舎においても用いることができ、また人体に影響を与える成分を使用していないため、無窓・有窓にも限定されずに用いることができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術範囲がこれらに限定されるものではない。
【実施例
【0022】
1.乳化液の検討
(1)乳化液の調製
表1に記載の配合で、乳化液を調製した。調製方法としては、(A)食用油と(B)乳化剤を40℃で均一に混合した後、水の中に、該混合物を、撹拌しながら徐々に添加することで乳化液を調製した。使用原料は以下のものを用いた。
【0023】
(2)使用原料
(A)成分
サラダ油:キャノーラサラダ油2046(理研農産化工株式会社製)
ナタネ油:菜種白絞油3040(理研農産化工株式会社製)
大豆油:大豆白絞油1040(理研農産化工株式会社製)
(B)成分
NIKKOL TO-30V:トリオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、日光ケミカルズ社製、( )内はオキシエチレン基の平均付加モル数を示す(以下、同様)。
NIKKOL SO-10V:モノオレイン酸ソルビタン、日光ケミカルズ社製
NIKKOL TGI-20:トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)グリセリル、日光ケミカルズ社製
NIKKOL DGMO-CV:モノオレイン酸ポリグリセリル、日光ケミカルズ社製
【0024】
(3)安定性試験
調製した乳化液について、調製直後、又は10℃もしくは30℃のそれぞれの温度の恒温槽に2週間静置した後の外観を目視で観察した。結果を表1に示す。
【0025】
(4)粘度測定
上記安定性試験後の乳化液を、ビコテスタVT-03F(リオン株式会社製、ローターNo.4、回転数62.5rpm)を用いて、10℃又は30℃の粘度を測定した。結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
(5)結果
発明品1~7の調製した乳化液は、調製直後は均一に分散した乳化液を得ることができた。10℃、30℃で静置したところ、(A)乳化液を10質量%以上配合した発明品2、3、7では、クリーミングが見られた。さらに、(A)乳化液が5質量%、10質量%の発明品1、2、4、5、6、7は粘度が低いため噴霧器で散布できたが、20質量%の発明品3は粘度が高いため、噴霧器では直噴状態で吐き出された。
【0028】
2.風洞試験
風洞装置を用いて、ダスト低減評価を行った。
(1)風洞装置
アルミトレー(0.005m)に、ベビーパウダー(粒子径約10μm)0.5gを薄くのせ、下記試験区の条件の通り、水、又は調製した発明品1、6、7の乳化液を散布し、一定時間静置(1時間、6時間、24時間)し、風速10m/sの条件で該パウダーを飛散させた。アルミトレーに残ったパウダー重量より、パウダー飛散率(%)を算出した。また比較対照として、何も散布しない場合のパウダー飛散率も算出した。結果を表2、表3に示す。表2、表3の測定はそれぞれ別の日に行ったものであるが、測定方法、測定条件は同じである。
【0029】
<試験区>
対照区:何も散布しない
水のみ区:水を100ml/m散布
乳化液区1:本発明品1を100ml/m散布
乳化液区2:本発明品6を100ml/m散布
乳化液区3:本発明品7を100ml/m散布
乳化液区4:本発明品1を10ml/m散布
【0030】
【表2】

【表3】
【0031】
(2)結果
乳化液(本発明品1、6、7)を散布した区は、対照区と水のみ区に比べて、パウダー飛散率が有意に低下した。水のみでもパウダーの飛散を防止することができるが、乳化液を散布する方が、パウダーの飛散を即効で抑制し、その効果が長くつづいた。
【0032】
3.畜舎でのダスト低減評価試験
I畜産とS畜産の2つの養豚場にて、乳化液の散布を行い、ダストの測定を行った。
(1)試験内容
養豚場の肥育豚舎(冬季、ウィンドレス状態、縦60m×横11m、20房)を、中央部分で2区画に仕切り、半分は乳化液散布装置を取り付けた試験区、残り半分は何も散布しない対照区とした。
試験区において、1日1回、朝8時に、地上から2mの高さに取り付けた配管より、発明品1の乳化液を、下記噴霧装置を用いて散布した。散布期間は1週間、散布量は100ml/m、散布時の粒子径は320μmとした。
試験区と対照区において、下記ダスト濃度の測定により、ダスト低減効果を評価した。
【0033】
(2)散布装置
主配管は、塩ビ管に1/8メスネジ加工し、天井の梁の上部に固定した。約2メートルの高さに設置された飼料用配管及び給水配管に、噴霧ノズルを固定し、主配管とノズル間はナイロンホースで接続した。
300Lローリータンクに乳化液を調製し、モーターセット噴霧器(MS171MC、3.5MPa、6.0L/min、AC100、給排水ホース付、丸山製作所)にて、散布を行った。
【0034】
(3)ダスト濃度の測定方法
分粒装置付きハイボリウムエアサンプラー(HV-500R、柴田科学株式会社製)に、110mmガラス繊維フィルターを装着し、ダスト濃度(mg/m)を測定した。装置設置は、床面より約1mの高さとし、吸引流量は500L/分で20分とした。各試験区の条件は以下の通りであり、I畜産試験のダスト濃度の結果を表4に、S畜産試験のダスト濃度の結果を表5に示す。
【0035】
<I畜産試験内容>
試験日程:2016年2月10日~16日
豚舎内平均温度:19.6℃(最高24.7℃、最低13.6℃)
豚舎内平均湿度:81.9%(最高99.0%、最低49.0%)
外気平均温度:4.9℃(最高17.7℃、最少-6.8℃)
外気平均湿度:62.1%
【0036】
【表4】
【0037】
<S畜産試験内容>
試験日程:2016年2月24日~3月1日
試験区
豚舎内平均温度:16.5℃(最高22.4℃、最低11.2℃)
豚舎内平均湿度:69.2%(最高99.0%、最低41.0%)
対照区
豚舎内平均温度:15.8℃(最高21.5℃、最低10.9℃)
豚舎内平均湿度:68.7%(最高89.0%、最低42.0%)
外気平均温度:2.7℃(最高11.6℃、最少-2.8℃)
外気平均湿度:66.6%(最高99.0%、最低15.0%)
【0038】
【表5】
【0039】
(4)結果
2農場とも、乳化液を散布すると、散布しない場合に比べてダスト濃度が1/3低下しており、乳化液散布区は、無散布区に比べて統計上有意にダスト濃度が低下した。この結果より、乳化液を散布すると、豚舎から飛散するダストも低下させることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の畜舎ダスト低減剤組成物により、病原菌の拡散抑制、労働環境の改善、悪臭低減の畜産環境の改善に利用できる。