(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】無人航空機、及びこれを用いる方法
(51)【国際特許分類】
B64C 39/02 20060101AFI20220106BHJP
B64C 13/18 20060101ALI20220106BHJP
B64C 25/36 20060101ALI20220106BHJP
B64D 47/08 20060101ALI20220106BHJP
E03F 7/00 20060101ALI20220106BHJP
E03F 3/04 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B64C39/02
B64C13/18 Z
B64C25/36
B64D47/08
E03F7/00
E03F3/04 Z
(21)【出願番号】P 2020108908
(22)【出願日】2020-06-24
(62)【分割の表示】P 2017076237の分割
【原出願日】2017-04-06
【審査請求日】2020-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】515100042
【氏名又は名称】株式会社ACSL
(73)【特許権者】
【識別番号】501054551
【氏名又は名称】株式会社NJS
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100158469
【氏名又は名称】大浦 博司
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 賢司
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 裕亮
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 航平
(72)【発明者】
【氏名】大西 明和
(72)【発明者】
【氏名】勝岡 聡
(72)【発明者】
【氏名】増屋 征訓
(72)【発明者】
【氏名】岡田 一郎
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0321503(US,A1)
【文献】特開2005-349556(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0286128(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 39/02
B64C 13/18
B64C 27/08
B64D 47/08
E03F 7/12
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方向に沿って伸長した形状を有するフレームと、
前記フレームの前方側に位置する2つの回転翼の組である、第1の回転翼の組と、該フレームの後方側に位置する2つの回転翼の組である、第2の回転翼の組と、から構成される、前記フレームの内側に配置された4つの回転翼と、
前記4つの回転翼を駆動する駆動装置と、
前記第1の回転翼の組と前記第2の回転翼の組との間に位置し、前記駆動装置に前記4つの回転翼を駆動させるための制御信号を生成する制御信号生成回路と、
撮影カメラと
を備え、
前記撮影カメラにより閉鎖性空間の内部で撮影をしつつ、前記4つの回転翼を駆動して該閉鎖性空間の内部を飛行する、
無人航空機であって、
前記フレームの上面において、前記4つの回転翼の各々に対応する位置に開口部が形成されており、該開口部の各々は該フレームによって部分的に塞がれており、
前記4つの回転翼と、前記駆動装置と、前記制御信号生成回路と、前記撮影カメラとは、前記フレームを用いて統合されている、
無人航空機。
【請求項2】
前記無人航空機が前記閉鎖性空間の境界面に衝突する時に先行して該境界面に衝突させるための先行衝突部材を更に備えた、
請求項1に記載の無人航空機。
【請求項3】
前記先行衝突部材が前記無人航空機の一端側に位置し、
前記無人航空機が前記一端側を前方側として前記閉鎖性空間の内部を飛行中に前記境界面に衝突するとき、該無人航空機の重心位置よりも前方側において前記先行衝突部材が該境界面に衝突するよう構成された、
請求項2に記載の無人航空機。
【請求項4】
前記制御信号が姿勢制御信号を含み、
前記姿勢制御信号により前記駆動装置に前記回転翼を駆動させ、前記無人航空機が傾斜した時に該回転翼の一部の回転数を減らすことにより該無人航空機の姿勢を制御するよう構成された、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の無人航空機。
【請求項5】
進行方向撮影カメラと、進行方向撮影データ送信器とを更に備え、
前記進行方向撮影カメラにより前記閉鎖性空間の内部の進行方向を撮影し、得られた進行方向撮影データを前記進行方向撮影データ送信器から外部に送信しつつ、該閉鎖性空間の内部を飛行するよう構成された、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の無人航空機。
【請求項6】
前方向に沿って伸長した形状を有するフレームと、
前記フレームの前方側に位置する2つの回転翼の組である、第1の回転翼の組と、該フレームの後方側に位置する2つの回転翼の組である、第2の回転翼の組と、から構成される、前記フレームの内側に配置された4つの回転翼と、
前記4つの回転翼を駆動する駆動装置と、
前記第1の回転翼の組と前記第2の回転翼の組との間に位置し、前記駆動装置に前記4つの回転翼を駆動させるための制御信号を生成する制御信号生成回路と、
撮影カメラと
を備え、
前記フレームの上面において、前記4つの回転翼の各々に対応する位置に開口部が形成されており、該開口部の各々は該フレームによって部分的に塞がれており、
前記4つの回転翼と、前記駆動装置と、前記制御信号生成回路と、前記撮影カメラとは、前記フレームを用いて統合されている、
無人航空機に、
前記撮影カメラにより閉鎖性空間の内部で撮影をさせつつ、前記4つの回転翼を駆動させて該閉鎖性空間の内部を飛行させる、
無人航空機による撮影飛行方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人航空機、及びこれを用いる方法に関する。より詳細には、本発明は、管状空間内部、矩形状空間内部等、閉鎖性空間内部での撮影飛行用の無人航空機、及びこれを用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水道管路の耐用年数はおよそ50年とされており、今後、耐用年数を迎える施設が飛躍的に増加すると想定されている。効率的な維持管理のためには、下水道管路状態の把握が不可欠である。
【0003】
従来、下水道管路状態の調査方法は、調査員が管内に潜行して直接目視により調査する方法、地上とケーブル接続されたテレビカメラを管内に配置して撮影する方法、地上とケーブル接続されたテレビカメラを自走式車両に搭載して管内に配置し、走行しつつ撮影する方法等が用いられていた。しかしながら、調査員の直接目視による方法においては、下水道管路内に有毒ガスが発生して人体に影響を及ぼす危険性や急な降雨時の浸水による危険性等、さまざまな問題があり、またテレビカメラを管内に配置する方法においても、十分な調査速度が得られなかったり、下水道管路内の水位が上昇した時に車両の制御が困難になったりする等の問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、調査員による直接目視を必要とせず効率性にも優れた暗渠(あんきょ。地下に設けられた水路。)をはじめとする閉鎖性空間内部での撮影手法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するべく、本発明は、少なくとも4つの回転翼と、回転翼を駆動する駆動装置と、駆動装置に回転翼を駆動させるための制御信号を生成する制御信号生成回路と、撮影カメラとを備え、撮影カメラにより閉鎖性空間の内部で撮影をしつつ、回転翼を駆動して閉鎖性空間の内部を飛行するよう構成された、無人航空機を提供する。
【0006】
無人航空機が閉鎖性空間の境界面に衝突する時に先行して境界面に衝突させるための先行衝突部材を、上記無人航空機に更に備えることができる。
【0007】
先行衝突部材が無人航空機の一端側に位置し、無人航空機が一端側を前方側として閉鎖性空間の内部を飛行中に境界面に衝突するとき、無人航空機の重心位置よりも前方側において先行衝突部材が境界面に衝突するよう、上記無人航空機を更に構成することができる。
【0008】
制御信号が姿勢制御信号を含み、姿勢制御信号により駆動装置に回転翼を駆動させ、無人航空機が傾斜した時に回転翼の一部の回転数を減らすことにより無人航空機の姿勢を制御するよう、上記無人航空機を更に構成することができる。
【0009】
駆動装置が、各々の回転翼に各々が動力を与える少なくとも4つのモータを備え、各々のモータが、自己により動力を与えられる回転翼よりも重力ポテンシャルの高い位置において回転翼に動力を与えるよう、上記無人航空機を更に構成することができる。
【0010】
推力発生回転翼を更に備え、少なくとも4つの回転翼の回転により浮きつつ推力発生回転翼の回転により推進するよう、上記無人航空機を更に構成することができる。
【0011】
進行方向撮影カメラと、進行方向撮影データ送信器とを更に備え、進行方向撮影カメラにより閉鎖性空間の内部の進行方向を撮影し、得られた進行方向撮影データを進行方向撮影データ送信器から外部に送信しつつ、閉鎖性空間の内部を飛行するよう、上記無人航空機を更に構成することができる。
【0012】
また本発明は、少なくとも4つの回転翼と、回転翼を駆動する駆動装置と、駆動装置に回転翼を駆動させるための制御信号を生成する制御信号生成回路と、撮影カメラとを備えた無人航空機に、撮影カメラにより閉鎖性空間の内部で撮影をさせつつ、回転翼を駆動させて閉鎖性空間の内部を飛行させる方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、調査員の潜行を必要とせず安全性の高い閉鎖性空間内部での撮影が可能となる。また自走式車両に比べて無人航空機は閉鎖性空間内部に水が存在する場合でも移動性が損なわれにくく、したがってより効率的な撮影が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1a】本発明の一実施形態である無人航空機の斜視図。
【
図1b】
図1aの無人航空機をzの正方向から見た図。
【
図1c】
図1aの無人航空機をyの正方向から見た図。
【
図1d】
図1aの無人航空機を進行方向の後方側から見た斜視図。
【
図2a】比較例におけるロータとモータ部材の位置関係を示す斜視図。
【
図2b】
図2aのロータとモータ部材をxの正方向から見た図。
【
図2c】
図2a中のモータ部材を
図2b中のA-A面で切断した断面、及び各々のモータ部材を示す図。
【
図3】本実施形態におけるロータとモータ部材の位置関係を示す斜視図。
【
図4】
図1aの無人航空機の機能構成を示すブロック図。
【
図5】
図1aの無人航空機を飛行させることができる下水道管路施設の構造を示す図。
【
図6】
図5の下水道管路施設内の管状空間の内部を飛行する、
図1aの無人航空機を示す図。
【
図7】
図6で示す飛行中に無人航空機が下水道管路の内壁に衝突する様子を示す図。
【
図8】
図1aの無人航空機がx軸周りに回転(ロール回転)して傾斜した様子を示す図。
【
図9】前方カメラにより撮影される下水道管路内の画像の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態である無人航空機、及びこれを用いる方法を、図面を参照しつつ説明する。ただし本発明による無人航空機、及びこれを用いる方法が以下に説明する具体的態様に限定されるわけではなく、本発明の範囲内で適宜変更可能であることに留意する。例えば、本発明に係る無人航空機は自律飛行型の無人航空機である必要はなく、無人航空機の機能構成も、
図4に示されるものに限らず同様の動作が可能であれば任意であり、例えば通信回路の機能を主演算回路に統合する等、複数の構成要素が実行すべき動作を単独の構成要素により実行してもよいし、あるいは主演算回路の機能を複数の演算回路に分散する等、図示される単独の構成要素の実行すべき動作を複数の構成要素により実行してもよい。無人航空機の自律制御プログラムは、ハードディスクドライブ等の記録デバイスに記録されて主演算回路により読み出されて実行されるものであってもよいし(図示される自律制御プログラムが複数のプログラムモジュールに分解されてもよいし、その他の任意のプログラムが主演算回路等により実行されてもよい。)、マイコン等を用いた組み込み型のシステムによって同様の動作が実行されてもよい。以下の実施形態で示される全ての構成要素を本発明に係る無人航空機が備える必要はなく(例えば、
図1b中のロータ9~12の制御により無人航空機の推進を制御する場合、推力発生プロペラ21を備える必要はないし、自律制御を行わずに完全に外部からの制御で無人航空機を飛行させるならば自律制御プログラムや各種データベースを備える必要もない。)、また示される方法ステップの全てを本発明に係る方法が備える必要もない。無人航空機を浮揚させるための回転翼も、
図1b等で示されるような4つのロータ9~12に限らず4以上の任意の回転翼であってよい。推力を発生させるための回転翼も、
図1d等に示す推力発生プロペラ21に限らず任意の回転翼であってよい。無人航空機の機体サイズも任意である。なお、閉鎖性空間が完全に閉鎖されている必要はなく、少なくとも部分的に閉鎖された、無人航空機の飛行が少なくとも一部制約される空間であればよい。例えば、以下の実施形態に示すようにマンホールを介して外部と接続されている下水道管路内の管状空間も閉鎖性空間である。
【0016】
無人航空機の構成
図1aから
図1dに、本発明の一実施形態である無人航空機の外観を示す。
図1aは斜視図であり、
図1bは
図1aのzの正方向から見た図であり、
図1cはyの正方向から見た図であり、
図1dは進行方向の後方側から見た斜視図である。無人航空機1は、口径400mm程度の閉鎖性空間内を飛行できるよう、全幅(
図1a中、y方向の幅)約250mm、全長(
図1a中、x方向の幅)約550mmのサイズで設計されており、本体部2(防水ケース3に収納されている。)と、本体部2からの制御信号により駆動する5つのモータ13~17(モータ14,16については
図4参照。)と、モータ13~16の各々の駆動により回転して無人航空機1を浮揚させる4つのロータ(回転翼)9~12と(ロータ9,12はzの正方向から見て時計回りに回転し、ロータ10,11はzの正方向から見て反時計回りに回転する等、隣り合うロータ同士は逆向きに回転する。)、モータ17の駆動により回転して無人航空機1の推力を発生させる推力発生プロペラ(回転翼)21と、調査カメラ18と、前方カメラ19と、超音波センサ20とを備えている。各構成要素はフレーム4を用いて統合されており、フレーム4には4つの先行衝突部材5~8が取り付けられている。
【0017】
先行衝突部材5~8は車輪として構成されており、これらは無人航空機1が下水道管路の壁面等、閉鎖性空間の境界面に衝突する時に先行して衝突させるための部材である。
図1aから
図1cに示すとおり、先行衝突部材5~8は無人航空機1の重心22よりも前方(
図1aのxの正方向)側に設置することが好ましい。そのように設置することにより、先行衝突部材5~8が重心22よりも前方側で閉鎖性空間の境界面に衝突するため、この際の無人航空機1の進行方向を前方側に安定させることができる。先行衝突部材は車輪以外の部材として構成されていてもよく、例えば球状の先行衝突部材を無人航空機1の前方側上部に固定する等してもよい。
【0018】
調査カメラ18は、無人航空機1による閉鎖性空間の内部の飛行中に静止画、又は動画を撮影するためのカメラであり、一例においてはGoPro session(タジマモーターコーポレーション)等の市販カメラを用いることができる。前方カメラ19は、無人航空機1による閉鎖性空間の内部の飛行中に進行方向の静止画、又は動画を撮影するためのカメラであり、撮影された静止画又は動画のデータは随時外部装置(ディスプレイを備えたコンピュータ等)に送信され、操縦者はこれを確認しながら無人航空機1を操縦することができる。超音波センサ20は前方の障害物等を検出するためのセンサであり、無人航空機1による閉鎖性空間の内部の飛行中に進行方向へ超音波を発信し、反射波を受信することで障害物等との距離を測定することができる。
【0019】
図1cに示すとおり、モータ13,15はそれぞれロータ9,11の上に位置して(重力ポテンシャルの高い位置において)、ロータ9,11をそれぞれ駆動するよう構成されている。モータ14,16(
図4参照。)も、同様にそれぞれロータ10,12の上に位置してこれらロータをそれぞれ駆動するよう構成されている。このような構成を採る利点を、
図2a~
図2cに示す、モータがロータの下に位置する比較例と比較しつつ説明する。ただし、本発明に係る無人航空機、及びこれを用いる方法は当該比較例のようなロータとモータの位置関係を採っても実施可能であることに留意する。
【0020】
図2aは比較例におけるロータとモータ部材の位置関係を示す斜視図であり、
図2bは
図2aのロータとモータ部材を
図2a中のxの正方向から見た図であり、
図2cは
図2a中のモータ部材を
図2b中のA-A面で切断した断面、及び各々のモータ部材を示す図である。ロータ9,10,11,12はモータ部材23Aの棒状突起部(
図2c参照。)に固定され(
図2b参照。)、棒状突起部を回転軸として回転する。ロータ9,10,11,12は、回転することにより
図2a中の矢印方向(zの正方向)に力を受け、モータ部材23Aを同方向に引っ張る。
図2cに示すとおり、モータ部材23Aとモータ部材23Bとは互いに嵌め合わされており、両者が接着されているわけではない。したがって、モータ部材23Aがzの正方向に引っ張られた場合、モータ部材23Bから脱離する恐れがある。この脱離を防止するため、比較例の構成においては留め具としてモータ部材23Cが用いられる(
図2b,
図2c参照。)。
図2cに示すとおり、モータ部材23Aに設けられた溝部23A-1に(モータ部材23Aとモータ部材23Bとを嵌め合せた後に)モータ部材23Cを嵌めることで、モータ部材23Aがモータ部材23Bから脱離することを防止できるが、モータのメンテナンスの際にはモータ部材23Cを外す必要がある。
【0021】
本実施形態におけるロータとモータ部材の位置関係を、
図3の斜視図に示す。ロータ9,10,11,12がモータ部材23A,23Bの下に位置している点と、モータ部材23Cを用いていない点とが比較例と異なり、それ以外の構成は比較例と同様である。ロータ9,10,11,12はモータ部材23Aの棒状突起部(
図2c参照。)に固定され(
図2b参照。)、棒状突起部を回転軸として回転する。ロータ9,10,11,12は、回転することにより
図3中の矢印方向(zの正方向)に力を受け、モータ部材23Aを同方向に押す。これによりモータ部材23Aはモータ部材23Bに押し付けられるため、モータ部材23Aがモータ部材23Bから脱離することを防止する必要はない。したがって
図3の構成においてはモータ部材23Cが不要となり、モータのメンテナンスが容易となる。
【0022】
図4は、
図1aの無人航空機の機能構成を示すブロック図である。無人航空機1の本体部2は、プロセッサ、一時メモリ等から構成されて各種演算を行う主演算回路24aと、主演算回路24aによる演算で得られた制御指令値データをモータ13~17へのパルス信号に変換する等の処理を担う、プロセッサ、一時メモリ等から構成される信号変換回路24bと(主演算回路24a、信号変換回路24bを含む演算回路を制御信号生成回路25と称する。)、制御信号生成回路25により生成されたパルス信号をモータ13~17への駆動電流へと変換するスピードコントローラ(ESC:Electric Speed Controller)26~30と、外部との各種データ信号の送受信を担う通信アンテナ31及び通信回路32と、GPS(Global Positioning System)センサ、姿勢センサ、高度センサ、方位センサ等の各種センサを含むセンサ部33と、自律飛行プログラム34a、各種データベース34b等を記録するハードディスクドライブ等の記録デバイスから構成される記録装置35と、リチウムポリマーバッテリやリチウムイオンバッテリ等のバッテリデバイスや各要素への配電系を含む電源系36とを備えている。
【0023】
その他に、無人航空機1は機能用途に応じて任意の機能部、情報等を備えていてよい。一例として、無人航空機1が飛行計画に従って自律飛行する場合には、飛行の開始位置、目的位置、開始位置から出発して目的位置に到達するまでに経由すべきチェックポイント位置(緯度、経度、高度)の集合である飛行計画経路や、速度制限、高度制限等、飛行中に従うべき何らかの規則である飛行計画を示すデータである飛行計画情報が記録装置35に記録され、主演算回路24aが飛行計画情報を読み込んで自律制御プログラム34aを実行することにより、飛行計画に従って無人航空機1が飛行する。具体的には、センサ部33の各種センサから得られる情報により無人航空機1の現在位置、速度等を決定し、飛行計画で定められた飛行計画経路、速度制限、高度制限等の目標値と比較することにより主演算回路24aでロータ9~12、推力発生プロペラ21に対する制御指令値を演算し、制御指令値を示すデータを信号変換回路24bでパルス信号に変換して(制御信号の生成)スピードコントローラ26~30に送信し、スピードコントローラ26~30がそれぞれパルス信号を駆動電流へと変換してモータ13~17にそれぞれ出力し、モータ13~17の駆動を制御してロータ9~12,推力発生プロペラ21の回転速度等を制御することにより無人航空機1の飛行が制御される。一例として、無人航空機1の高度を上げる制御指令に対してはロータ9~12の回転数が増加し(高度を下げる場合には減少)、無人航空機1を前進方向(
図1aのxの正方向)に加速する制御指令に対しては推力発生プロペラ21の回転数が増加し(減速の場合には減少)、無人航空機1に
図1aのx軸周りのロール回転(xの正方向から見て反時計回り)による傾斜をさせる制御指令に対しては、ロータ10,12の回転数を減らしてロータ9,11の回転数を維持する等の制御が行われる。なお、無人航空機1の前進方向の加速(減速)は、ロータ9,10の回転数を減らしてロータ11,12の回転数を増やす(減速であれば逆の制御)等、ロータ9~12の回転数を制御することでも可能であり、推力発生プロペラ21を用いずに無人航空機1を飛行させることも可能である。なお、後述のとおり閉鎖性空間の内部で飛行させる用途で無人航空機1を用いる場合は、ロータ9~12の回転数を全て等しくして(4つのロータ9~12全ての回転数を等しく増減させるのみの制御を行う)無人航空機1を浮揚、着陸(あるいは着水)させ、推力発生プロペラ21の回転数や回転方向を制御することにより前進方向(
図1aのxの正方向)の速度を制御する等、単純化された制御も可能である。無人航空機1が実際に飛行した飛行経路(各時刻における無人航空機1の機体位置等)や各種センサデータ等の飛行記録情報は、飛行中に随時各種データベース34bに記録される。
【0024】
自律飛行型無人航空機の一例としては、ミニサーベイヤーMS-06LA(株式会社自律制御システム研究所)、Snap(Vantage Robotics社)、AR.Drone2.0(Parrot社)、Bebop Drone(Parrot社)等が市販されている。
【0025】
なお、無人航空機1が外部からの制御で飛行する場合、無人航空機1は、操縦者のコントローラ装置等から受信される、制御指令値を示すデータを通信アンテナ31及び通信回路32により受信し、このデータを信号変換回路24bでパルス信号に変換して(制御信号の生成)、以下同様に、スピードコントローラ26~30、モータ13~17を用いてロータ9~12、推力発生プロペラ21の回転速度を制御して飛行制御を行う。この場合であっても、センサ部33の各種センサ中、姿勢センサ(ジャイロセンサ、磁気センサ)から得られる無人航空機1の姿勢情報を示すデータを主演算回路24aが読み込んで自律制御プログラム34aを実行することにより、姿勢センサからのデータと姿勢の目標値を比較する等して姿勢制御の指令値を演算して姿勢制御を行う等(この場合、外部コントローラ装置等から受信された制御指令値を示すデータと、姿勢制御の指令値を示すデータとから、主演算回路24aが自律制御プログラム34aを実行することにより最終的な制御指令値を演算する。制御指令値を示すデータを信号変換回路24bでパルス信号に変換することで、姿勢制御信号を含む制御信号が生成される。)、部分的な自律制御と外部からの制御とを組み合わせることもできる。以下に説明する撮影飛行において無人航空機1は基本的に外部コントローラ装置等からの制御信号により飛行し、姿勢のみが自律制御されるものとするが、完全自律制御飛行や完全外部制御飛行をする無人航空機1によっても同様の撮影飛行が可能である。
【0026】
無人航空機による閉鎖性空間内部での撮影飛行
以下、無人航空機1による閉鎖性空間内部での撮影飛行の一例として、下水道管路内の撮影飛行を
図5から
図9を用いて説明する。
【0027】
図1aの無人航空機を飛行させることができる下水道管路施設の構造を
図5に示す。地表面37に設けられたマンホール38aは下水道管路39に通じており、下水道管路39を
図5中の右方向に進むことで別のマンホール38bに到達する(
図5中では下水道管路39が途中の2箇所で切断されて描かれているが、これは便宜上の表現であり実際には図示されるよりも長い連続した下水道管路39として形成されている。)。下水道管路39の内壁40により閉鎖性空間の境界面が規定されており、また下水道管路39内には
図5中の右方向、所定距離ごとに接続部41が存在する。
【0028】
無人航空機1により下水道管路39の撮影飛行を行うにあたり、まずは無人航空機1をマンホール38aに進入させて下水道管路39の深さまで降下させる。一例においては、マンホール38a,39bの深さと同程度の長さを有するポールの先端に保持台を設け、保持台に無人航空機1を載せてポールをマンホール38aに差し込むことにより無人航空機1を降下させる。自律飛行型の無人航空機1を用いる場合、あらかじめ飛行計画経路としてマンホール38aの位置や下水道管路39の深さ等を記録装置35に記録しておき、主演算回路24aが飛行計画経路のデータを含む飛行計画情報を読み込んで自律制御プログラム34aを実行することにより無人航空機1を自律飛行させて下水道管路39の一端(
図5中、下水道管路39における左側の端。以下、撮影飛行の開始位置S。)に導いてもよいし、あるいは外部コントローラ装置から無人航空機1に制御信号を送信して操縦することにより無人航空機1を撮影飛行の開始位置Sに導いてもよい。
【0029】
無人航空機1は、撮影飛行の開始位置から
図5中の右方向に向かって(当該方向を
図1a中のxの正方向、すなわち進行方向として)撮影飛行を開始する(
図6)。外部コントローラからの操縦者によるマニュアル制御の場合、無人航空機1は前進を指示する制御信号を受信して進行方向に飛行しつつ、調査カメラ18と前方カメラ19により下水道管路39内で静止画又は動画を撮影する。なお、下水道管路39内には通常は水42が存在し、その水位は随時変動しているが、ロータ9~12の回転に伴う水面効果により浮揚力を得ることも可能である(水42がない場合でも、内壁40から同様の効果を得ることは可能。)。
【0030】
調査カメラ18により撮影された静止画又は動画のデータは調査カメラ18の内蔵メモリに記録され、前方カメラ19により撮影された静止画又は動画のデータは、前方カメラ19の内蔵メモリに記録された上で通信回路32により通信アンテナ31から操縦者の外部コンピュータに随時送信される。操縦者は、受信したデータを用いて外部コンピュータの備えるディスプレイに前方カメラ19の撮影した静止画又は動画を表示し、これを確認しながら外部コントローラによる無人航空機1の操縦を行う。一例においては、表示された静止画又は動画に映っている接続部41を目印として、無人航空機1の進行した距離を把握しつつ操縦を行う。
【0031】
撮影飛行中、外部コントローラによるマニュアル制御の精度上の問題や、姿勢の自律制御の精度上の問題等、何らかの理由により無人航空機1が下水道管路39の内壁40に衝突することがある。このときの様子を
図7に示す。無人航空機1は何らかの理由により姿勢を崩しており、機体の前方側上部において内壁40と衝突するが、先行衝突部材5(
図1a等参照),先行衝突部材6が先行して内壁40に衝突し、前方側(
図7中の矢印方向)に進行を続ける。本実施形態においては先行衝突部材5~8が車輪として構成されているため、
図7の矢印Aで示すとおり、先行衝突部材5,6が内壁40に接触した状態で回転し、無人航空機1は内壁40上面を沿うように進行する。別の例として、先行衝突部材が球状の部材として無人航空機1の前方側上部に固定されている場合、無人航空機1の先行衝突部材が内壁40上面に衝突した後、無人航空機1は
図7中の矢印Bで示す方向に弾かれる。いずれにしても無人航空機1は前方側への飛行を続けることができる。無人航空機1が内壁40の側面に衝突する場合も、同様に先行衝突部材7又は8が先行して衝突することにより、無人航空機1は前方側への飛行を続けることができる。
【0032】
撮影飛行中、同様にマニュアル制御や姿勢の自律制御の精度の問題等、何らかの理由により無人航空機1が傾斜することがある。一例として、無人航空機1が
図1aのx軸周りに回転(ロール回転)して傾斜した様子を
図8に示す。機体の姿勢を水平へと回復させるためには、ロータ9,11の回転数を増やすことにより機体の低い側(yの正方向側)を上昇させることが考えられるが、この場合には機体が上昇して無人航空機1が内壁40上面に衝突する恐れがある。したがって、ロータ10,12の回転数を減らすことにより機体の高い側(yの負方向側)を下降させて姿勢を水平へと回復させることが好ましい。このような姿勢制御は、典型的には上述のとおり姿勢センサから得られる無人航空機1の姿勢情報を示すデータを主演算回路24aが読み込んで自律制御プログラム34aを実行することにより行われるが、外部コントローラ装置から姿勢の制御指令値を示す制御信号(
図8の傾斜とは逆方向のロール回転を指示する制御信号)を送信し、当該制御信号を無人航空機1が受信し、主演算回路24aで自律制御プログラム34aを実行することにより行ってもよい。y軸周り(ピッチ)、z軸周り(ヨー)の回転等、任意の回転による無人航空機1の傾斜に対しても、同様に一部のロータの回転数を減らすことにより姿勢を回復させることが好ましい。
【0033】
無人航空機1が下水道管路39の他端(
図5中、下水道管路39における右側の端。以下、撮影飛行の終了位置G。)に到達することで撮影飛行は終了する。先端に保持台を設けたポールをマンホール38bに差し込み、保持台に無人航空機1を載せて引き揚げる等して無人航空機1を回収する。撮影飛行の開始位置Sへの導入と同様に自律飛行により無人航空機1を終了位置Gから引き揚げてもよい。回収された無人航空機1から調査カメラ18を取り外し、そのメモリに記録された静止画、又は動画を見ることにより、下水道管路39や内壁40等の状態を確認することができる。
【0034】
図9に、前方カメラで撮影される下水道管路内の画像の一例を示す。前方カメラ19を搭載した無人航空機1の撮影飛行により同様の画像が得られると考えられる。操縦者は、
図9に示すような前方カメラ19が撮影した一人称視点での静止画、又は動画を見ながら外部コントローラ装置により無人航空機1を操縦することができる。撮影飛行後、回収された無人航空機1から調査カメラ18を取り外して、メモリに記録された静止画、又は動画を見ることにより、内壁40のクラックや接続部41におけるパッキンのずれ等、下水道管路39の状態を確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、上水道管路内、下水道管路内、排水路内、洞道内、ダクト内、パイプシャフト内、ガス管路内等、任意の閉鎖性空間における撮影調査に利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 無人航空機
2 本体部
3 防水ケース
4 フレーム
5~8 先行衝突部材
9~12 ロータ
13~17 モータ
18 調査カメラ
19 前方カメラ
20 超音波センサ
21 推力発生プロペラ
22 重心
23A モータ部材
23B モータ部材
23C モータ部材
23A-1 溝
24a 主演算回路
24b 信号変換回路
25 制御信号生成回路
26~30 スピードコントローラ
31 通信アンテナ
32 通信回路
33 各種センサ
34a 自律制御プログラム
34b 各種データベース
35 記録装置
36 電源系
37 地表面
38a,b マンホール
39 下水道管路
40 内壁
41 接続部
42 水