(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】空調システム及び空調方法
(51)【国際特許分類】
F24F 11/54 20180101AFI20220128BHJP
F24F 11/46 20180101ALI20220128BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20220128BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20220128BHJP
F24F 11/80 20180101ALI20220128BHJP
F24F 11/81 20180101ALI20220128BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20220128BHJP
【FI】
F24F11/54
F24F11/46
F24F11/64
F24F11/74
F24F11/80
F24F11/81
F24F110:10
(21)【出願番号】P 2017203707
(22)【出願日】2017-10-20
【審査請求日】2020-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000152424
【氏名又は名称】株式会社日建設計
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390018706
【氏名又は名称】ジョンソンコントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【氏名又は名称】今堀 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175190
【氏名又は名称】大竹 裕明
(72)【発明者】
【氏名】小澤 諭
(72)【発明者】
【氏名】菊地 秀毅
(72)【発明者】
【氏名】福田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】林 一宏
(72)【発明者】
【氏名】庄司 貴朋
(72)【発明者】
【氏名】柴田 康平
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 正徳
【審査官】飯星 潤耶
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-220036(JP,A)
【文献】実開平05-066428(JP,U)
【文献】特開2013-064519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00-13/32
F25B 1/00-49/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の室内を空調可能な空調システムであって、
中央制御装置と、
第一のパッケージ型空調機と、
系外から空気を吸込み、前記第一のパッケージ型空調機が吸込む空気を吹出す第二のパッケージ型空調機と、を備え、
前記中央制御装置は、前記第一のパッケージ型空調機の吹出し空気の温度を設定し、前記第一のパッケージ型空調機へ前記吹出し空気の設定温度に関する制御信号を送信し、
前記第一のパッケージ型空調機は、前記中央制御装置から前記吹出し空気の設定温度に関する制御信号を受信した場合に、前記吹出し空気の設定温度に関する制御信号の要求に応じて前記吹出し空気の温度を制御
し、
前記第二のパッケージ型空調機によって前記系外から吸込まれる空気量と前記第二のパッケージ型空調機から吹出されて前記第一のパッケージ型空調機へ送られる空気量とは、前記中央制御装置によって制御される、
空調システム。
【請求項2】
所定の室内を空調可能な空調システムであって、
中央制御装置と、
第一のパッケージ型空調機と、
第三のパッケージ型空調機と、を備え、
前記中央制御装置は、前記第一のパッケージ型空調機の吹出し空気の温度を設定し、前記第一のパッケージ型空調機へ前記吹出し空気の設定温度に関する制御信号を送信し、
前記中央制御装置は、前記第一のパッケージ型空調機の前記吹出し空気の設定温度が所定の温度に達した際に前記第三のパッケージ型空調機へ起動に関する制御信号を送信し、
前記第一のパッケージ型空調機は、前記中央制御装置から前記吹出し空気の設定温度に関する制御信号を受信した場合に、前記吹出し空気の設定温度に関する制御信号の要求に応じて前記吹出し空気の温度を制御し、
前記第三のパッケージ型空調機は、前記中央制御装置から前記起動に関する制御信号を受信した場合に、前記起動に関する制御信号の要求に応じて起動し、
前記第三のパッケージ型空調機によって吹出される吹出し空気は、前記第一のパッケージ型空調機によって吹出される前記吹出し空気が前記室内へ入る前に、前記第一のパッケージ型空調機によって吹出される前記吹出し空気と混ざる、
空調システム。
【請求項3】
前記第一のパッケージ型空調機によって吹出される前記吹出し空気は、室内に送り込まれ、
前記空調システムは、前記吹出し空気が前記室内へ入る前に、前記吹出し空気と混ざる空気を、前記室内から引き込む還気ファンを備え、
前記還気ファンの回転数は、前記中央制御装置によって制御される、
請求項1
又は2に記載の空調システム。
【請求項4】
中央制御装置が、第一のパッケージ型空調機の吹出し空気の温度を設定し、前記第一のパッケージ型空調機へ前記吹出し空気の設定温度に関する制御信号を送信する送信工程と、
前記第一のパッケージ型空調機が、前記中央制御装置から前記吹出し空気の設定温度に関する制御信号を受信した場合に、前記吹出し空気の設定温度に関する制御信号の要求に応じて前記吹出し空気の温度を制御する
第1制御工程と、
前記中央制御装置が、系外から空気を吸込み、前記第一のパッケージ型空調機が吸込む空気を吹出す第二のパッケージ型空調機によって前記系外から吸込まれる空気量と前記第二のパッケージ型空調機から吹出されて前記第一のパッケージ型空調機へ送られる空気量とを制御する第2制御工程と、を含む、
空調方法。
【請求項5】
中央制御装置が、第一のパッケージ型空調機の吹出し空気の温度を設定し、前記第一のパッケージ型空調機へ前記吹出し空気の設定温度に関する制御信号を送信する第1送信工程と、
前記中央制御装置が、前記第一のパッケージ型空調機の前記吹出し空気の設定温度が所定の温度に達した際に第三のパッケージ型空調機へ起動に関する制御信号を送信する第2送信工程と、
前記第一のパッケージ型空調機が、前記中央制御装置から前記吹出し空気の設定温度に関する制御信号を受信した場合に、前記吹出し空気の設定温度に関する制御信号の要求に応じて前記吹出し空気の温度を制御する制御工程と、
前記第三のパッケージ型空調機が、前記中央制御装置から前記起動に関する制御信号を受信した場合に、前記起動に関する制御信号の要求に応じて起動する起動工程と、
前記第三のパッケージ型空調機によって吹出される吹出し空気が、前記第一のパッケージ型空調機によって吹出される前記吹出し空気が室内へ入る前に、前記第一のパッケージ型空調機によって吹出される前記吹出し空気と混ざる混合工程と、を含む、
空調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システム及び空調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のビルや商用施設等の空調システムの方式は、特許文献1のように、1箇所に熱源設備を設置し、熱源設備から熱媒体を各室内機へ送るセントラル方式が主流であった。一方で、近年は、特許文献2のように、管理が容易であり、利便性に優れるパッケージ型空調機の利用が増えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-206519号公報
【文献】特開2014-196857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セントラル方式の空調システムでは、1箇所に設けられた熱源設備によって作られた熱媒体が室内機へ送られ、その送られた熱媒体と空気とが熱交換することによって室内機からの吹出し空気の温度は調節される。つまり、セントラル方式の空調システムは、1箇所に設けられた熱源設備によって複数の室内機の吹出し空気の温度を柔軟に変化させることができ、またその吹出し空気の温度を集中的に管理することができるため、快適性や省エネルギー性に対して高い拡張性を有する。しかしながら、セントラル方式の空調システムは、その熱源設備の保守を専門に行う人材が必要であり、管理コストが高い。そこで、セントラル方式の空調システムに代わり、管理コストが低く、利便性に優れたパッケージ型空調機を用いた空調システムが考えられる。パッケージ型空調機は、熱源を備え、吸込み空気の温度を計測し、温度調節された空気を吹出す。しかしながら、冷房時は室内温度設定値に対して一定温度低い冷風、暖房時は室内温度設定値に対して一定温度高い暖風を吹出すものであり、その結果として室内温度はハンチングする。
【0005】
そこで本願は快適性と省エネルギー性に対する拡張性が高く、且つ管理コストが低く、利便性に優れた空調システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、吹出し空気の温度を変化させることのできるパッケージ型空調機を備えることとした。
【0007】
詳細には、本発明は、中央制御装置と、第一のパッケージ型空調機と、を備え、中央制御装置は、第一のパッケージ型空調機の吹出し空気の温度を設定し、第一のパッケージ型空調機へ吹出し空気の設定温度に関する制御信号を送信し、第一のパッケージ型空調機は、中央制御装置から吹出し空気の設定温度に関する制御信号を受信した場合に、吹出し空気の設定温度に関する制御信号の要求に応じて吹出し空気の温度を制御する。
【0008】
ここで、パッケージ型空調機とは、冷凍サイクルを実現する圧縮機、蒸発器、凝縮器、膨張弁を備える空調機のことであり、例えば、設備用パッケージエアコン、店舗オフィス用パッケージエアコン、ルームエアコンといった空調機である。
【0009】
このような空調システムであれば、第一のパッケージ型空調機の吹出し空気の温度調節
は柔軟に行われ、快適性を提供することができる。また、パッケージ型空調機を用いているため、管理コストは低い。
【0010】
また、第一のパッケージ型空調機によって吹出される吹出し空気は、室内に送り込まれ、空調システムは、吹出し空気が室内へ入る前に、吹出し空気と混ざる空気を、室内から引き込む還気ファンを備え、還気ファンの回転数は、中央制御装置によって制御されてもよい。このような空調システムであれば、第一のパッケージ型空調機から吹出される空気が低温である場合、還気ファンの回転数を高めることによって室内への給気温度の急激な低下を防ぐことができ、室内温度を徐々に設定温度へ近づけることができる。従って、このような空調システムは、快適性を提供することができる。
【0011】
また、空調システムは、系外から空気を吸込み、第一のパッケージ型空調機が吸込む空気を吹出す第二のパッケージ型空調機を備え、第二のパッケージ型空調機によって系外から吸込まれる空気量と第二のパッケージ型空調機から吹出されて第一のパッケージ型空調機へ送られる空気量とは、中央制御装置によって制御されてもよい。このような空調システムであれば、柔軟に系外の空気を空調システムに用いることができ、利便性に優れ、省エネルギー化を実現することができる。
【0012】
また、空調システムは、第三のパッケージ型空調機を備え、中央制御装置は、第一のパッケージ型空調機の吹出し空気の設定温度が所定の温度に達した際に第三のパッケージ型空調機へ起動に関する制御信号を送信し、第三のパッケージ型空調機は、中央制御装置から起動に関する制御信号を受信した場合に、起動に関する制御信号の要求に応じて起動し、第三のパッケージ型空調機によって吹出される吹出し空気は、第一のパッケージ型空調機によって吹出される吹出し空気が室内へ入る前に、第一のパッケージ型空調機によって吹出される吹出し空気と混ざってもよい。
【0013】
ここで、所定の温度とは、室内を冷房する際には、第一のパッケージ型空調機が吹出すことのできる下限温度のことであり、室内を暖房する際には、第一のパッケージ型空調機が吹出すことのできる上限温度のことである。
【0014】
このような空調システムであれば、第一のパッケージ型空調機のみでは空調能力に不足がある場合に、第三のパッケージ型空調機を用いることによって空調能力を補充することができる。従って、このような空調システムは、利便性に優れる。
【0015】
また、上記のような空調システムであれば、吹出し空気の温度を変化させることのできる第一のパッケージ型空調機、系外から空気を吸込む第二のパッケージ型空調機、第一のパッケージ型空調機の空調能力を補充する第三のパッケージ型空調機、及び室内の空気を還気させる還気ファンという、機能の異なる装置が中央制御装置によって制御されている。従って、これらの装置を連動させ、快適な室内環境や省エネルギー化を実現する多様な空調モードを提供することができる。従って、このような空調システムは、快適性や省エネルギー性に対して高い拡張性を有する。
【0016】
また、本発明は、方法の側面から捉えることもできる。すなわち、本発明は、例えば、中央制御装置が、第一のパッケージ型空調機の吹出し空気の温度を設定し、第一のパッケージ型空調機へ吹出し空気の設定温度に関する制御信号を送信する送信工程と、第一のパッケージ型空調機が、中央制御装置から吹出し空気の設定温度に関する制御信号を受信した場合に、吹出し空気の設定温度に関する制御信号の要求に応じて吹出し空気の温度を制御する制御工程と、を備える、空調方法であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
上記空調システム及び空調方法は、快適性と省エネルギー性に対する拡張性が高く、且つ管理コストが低く、利便性に優れた空調システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】
図2は、空調システムのシステム構成図である。
【
図3】
図3は、ベース冷房モード時の空調システムの説明図である。
【
図4】
図4は、冷房モード時のシステムフロー図である。
【
図5】
図5は、空調システムの吹出し空気の温度の変化を表した説明図である。
【
図6】
図6は、ピーク冷房モード時の空調システムの説明図である。
【
図7】
図7は、従来の空調システムを用いた場合の室内温度の経時変化を示した図である。
【
図8】
図8は、本発明の空調システムを用いた場合の室内温度の経時変化を示した図である。
【
図9】
図9は、還気ファンの回転数の変化を表した図である。
【
図10】
図10は、除湿冷房モード弱時の空調システムの説明図である。
【
図11】
図11は、除湿冷房モード強時の空調システムの説明図である。
【
図12】
図12は、外気冷房モード時の空調システムの説明図である。
【
図13】
図13は、外気冷房モードへの切り替え条件の範囲を空気線図で表した図である。
【
図14】
図14は、自然換気モード時の空調システムの説明図である。
【
図15】
図15は、自然換気モードへの切り替え条件の範囲を空気線図で表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の技術的範囲を以下の態様に限定するものではない。
【0020】
図1は、本発明の実施形態にかかる空調システムの概要図である。
図1に示される空調システム100は、例えばビルや商用施設等の室内1A、1Bを空調するために温度調節された空気を吹出すベース空調機2A、2Bと、ベース空調機2A、2Bの空調能力を補充するピーク空調機3と、外気を吸込む外気処理空調機4と、外気処理空調機4からベース空調機2A、2Bへ送られる空気を加湿する加湿器5と、ベース空調機2A、2Bが室内1A、1Bへ送り込む空気へ室内の空気を混合させる還気ファン6A、6Bと、を備える。また、空調システム100は、ベース空調機2A、2Bから吹出された空気を各室内1A、1Bの床下へ送る配管と、各室内1A、1Bからの還気をベース空調機2A、2Bへ送る配管と、各室内1A、1Bからの還気をピーク空調機3へ送る配管と、ピーク空調機3から吹出された空気を、ベース空調機2A、2Bから吹出されて室内1A、1Bへ送り込まれる空気へ混合させる配管と、その混合させる配管途中にモータダンパ(MD)7A、7Bと、その混合後の空気の温度(給気温度)を計測する温度センサ8A、8Bと、各室内1A、1Bの上部から還気ファン6A、6Bによって吸込まれた空気を、ベース空調機2A、2Bから吹出されて室内1A、1Bへ送り込まれる空気へ混合させる配管と、系外から外気処理空調機4へ空気を取り込む配管と、その取り込む配管途中にMD7Cと、外気処理空調機4から吹出された空気を加湿器5へ送る配管と、加湿器5を通過した空気をベース空調機2A、2Bへ送る配管と、その送る配管途中に定風量装置(CAV)9A、9Bと、室内1A、1B内にそれぞれ温湿度センサ10A、10Bと、外気処理空調機4から吹出された空気を再び外気処理空調機4へ送る循環配管と、その循環配管途中にMD7Dとを備える。また、ベース空調機2A、2B、ピーク空調機3、及び外気処理空調機4は、パッケージ型空調機である。ここで、パッケージ型空調機とは、冷凍サイクルを実現する圧縮機、蒸発器、凝縮器、膨張弁を備える空調機のことであり、例えば、設備
用パッケージエアコン、店舗オフィス用パッケージエアコン、ルームエアコンといった空調機である。上述のようにパッケージ型空調機を用いて空調システム100を構築することによって、管理コストを抑えることができる。
【0021】
図2は、本発明の実施形態に係る空調システム100のシステム構成図である。
図2に示されるように空調システム100は、空調システム100の運転の起動・停止を指示するマルチリモートコントローラ(以下、MUR)11と、加湿器5、MD7、温度センサ8、CAV9、温湿度センサ10と制御信号で接続し、ベース空調機2A、2Bの吹出し空気の設定温度を演算し、又還気ファン6A、6Bの回転数を演算する中央監視部12と、中央監視部12からベース空調機2A、2Bの吹出し空気の設定温度に関するアナログ信号を受信するコントローラ13と、コントローラ13からアナログ信号を受信し、アナログ信号をデジタル信号へ変換する入力モジュール14と、入力モジュール14からベース空調機2A、2Bの吹出し空気の設定温度に関するデジタル信号を受信し、ベース空調機2A、2Bへ吹出し空気の設定温度に関するデジタル信号を送信する集中リモートコントローラ15と、還気ファン6A、6Bと接続し、コントローラ13から還気ファン6A、6Bのインバータ回転数に関するアナログ信号を受信し、その信号に基づいて還気ファン6A、6Bへ動力を提供して還気ファン6A、6Bを通過する風量を調節する動力盤16と、を備える。また、コントローラ13内でベース空調機2A、2Bの吹出し空気の設定温度を演算し、演算した結果をアナログ信号で集中リモートコントローラ15へ出力してもよい。そして、集中リモートコントローラ15内で受信したアナログ信号をデジタル信号へ変換してもよい。
【0022】
また、ベース空調機2A、2Bは、室内温度と吸込み空気の温度に基づいて温度制御を実行していた従来のパッケージ型空調機の基板の一部を改装し、新たに吹出し空気の設定温度に関するデジタル信号を受信することのできる受信部17A、17Bをそれぞれ備え、そしてそのデジタル信号に基づいて冷媒流量を制御し、吹出し空気の温度を変化させる。また、ピーク空調機3及び外気処理空調機4も、上述のように従来のパッケージ型空調機の基板の一部を改装し、新たに吹出し空気の設定温度に関するデジタル信号を受信することのできる受信部をそれぞれ備え、そのデジタル信号に基づいて冷媒流量を制御し、吹出し空気の温度を変化させる空調機であってもよい。また、ベース空調機2A、2Bと同じ空調機をピーク空調機3及び外気処理空調機4に用いてもよい。
【0023】
空調システム100は、事前に定められた中央監視スケジュールに基づいて起動・停止される。
図3は、空調システム100が冷房運転を行う場合のシステムの説明図である。
図3のようにベース空調機2A、2B、外気処理空調機4、加湿器5、還気ファン6A、6Bが起動され、CAV9A、9B及びMD7C、7Dによって空気の流量は制御される(以下、ベース冷房モードという)。そして、ピーク空調機3からの吹出し空気の流量を制御するMD7A、MD7Bは全閉されている。また、外気処理空調機4の吹出し空気の温度の設定値は、外気負荷とバイパス熱量を考慮した所定設定温度である。
【0024】
図4は、冷房時のシステムフローを示している。まず空調システム100は、温湿度センサ10によって室内温度を計測し(S101)、中央監視部12において計測温度と室内温度設定値とを比較する(S102)。そして、計測温度が室内温度設定値よりも低い場合、ベース空調機2A、2Bの吹出し空気の設定温度はプラスにリセットされ、その制御信号がベース空調機2A、2Bに設けられた受信部17A、17Bへ送られる(S103)。一方で、計測温度が室内温度設定値よりも高い場合、ベース空調機2A、2Bの吹出し空気の設定温度はマイナスにリセットされる(S104)。
図5は、吹出し空気の設定温度のリセット値の変化を表した図である。吹出し空気の設定温度のリセット値は、
図5に示されるように線形に変化し、リセット値には上限、下限を設ける。リセット値の上限は、例えば冷房時には、室内温度設定値とする。そして、ロードリセット後の吹出し空
気の設定温度と、ベース空調機2A、2Bが提供できる下限温度(例えば13度)とを比較する(S105)。そして、ロードリセット後の吹出し空気の設定温度が13度である場合、中央監視部12よりピーク空調機3へ起動に関する制御信号が送信され、その制御信号を受信したピーク空調機3が起動する(S106)。そして、同じく中央監視部12によって制御されたMD7A、7Bが開口し、ピーク空調機3の吹出し空気は、ベース空調機2A、2Bから吹出されて室内1A、1Bへ送り込まれる空気に混合される(以下、ピーク冷房モードという)。
図6は、ピーク冷房モード時の空調システム100の説明図である。ピーク空調機3の吹出し空気の温度は、提供できる下限温度(例えば13度)でもよい。ただし、ピーク冷房モードであっても、ベース空調機2A、2Bの吹出し温度の設定値は、ロードリセット制御され、空調性能は確実に確保されてもよい。また、ピーク空調機3の運転時間はオフタイマーによって制御される(S107)が、ピーク空調機3の運転時間は一定でも可変でもよい。ピーク空調機3が運転されている最中に再度室内の温度を計測し(S108)、その計測温度と室内温度設定値とを比較し(S109)、計測温度が室内温度設定値よりも低ければ、ピーク空調機3は停止される(S110)。
【0025】
図7は、従来のパッケージ型空調機を用いた空調システムの場合の室内温度の経時変化を表す。従来のパッケージ型空調機を用いた空調システムは、各パッケージ型空調機が連動せず、また各パッケージ型空調機自体はある一定温度の吹出し空気を吹出すことしかできない。従って、
図7のように、室内温度は、室内温度設定値に対してハンチングする。一方で、上述の空調システム100に用いられるベース空調機2A、2Bは、その吹出し空気の設定温度が計測温度に応じてロードリセット制御されるため、空調システム100は、従来のパッケージ型空調機では実現できなかった、室内温度設定値に対する室内温度の収束を実現することができる。この収束の様子を表した図が
図8である。また、ベース冷房モードとピーク冷房モードの2種類のモードを実行できるため、大きな空調能力が必要な室内環境の場合であっても、早期に室内温度を室内温度設定値へ収束させることができる。従って、空調システム100は、快適性を提供でき、利便性に優れる。また、ベース空調機2A、2B及びピーク空調機3は中央監視部12によって制御されて無駄なく連動するため、省エネルギー化も実現することができる。
【0026】
なお、還気ファン6A、6Bは、室内1A、1Bの上部から空気を吸込み、ベース空調機2A、2Bから吹出されて室内1A、1Bへ送り込まれる空気へ、その吸込んだ空気を混合させてもよい。そしてその際、還気ファン6A、6Bのファン回転数は、混合された空気の温度(室内1A、1Bへの給気温度)が設定値となるように、温度センサ8A、8Bによって給気温度を計測し、中央監視部12によってインバータ制御されてもよい。
図9は、還気ファン6A、6Bの回転数の変化を示した図である。ただし、還気ファン6A、6Bのインバータ回転周波数は、例えば最低周波数を15Hzとし、それ以下の要求の際には0Hzの休止状態としてもよい。従って、例えばピーク冷房モード時のようにベース空調機2A、2Bが高負荷となり、低温空気が吹出されたとしても、還気ファン6A、6Bを適切に制御することにより、室内1A、1Bへの給気温度の極端な低下を防ぐことができる。従って、室内へ送り込む空気の温度はほぼ一定のまま、室内温度を室内温度設定値へ徐々に近づけることができ、快適性を提供することができる。また、例えば冷房時、還気ファン6A、6Bが設けられている室内1A、1Bの上部は、熱だまりとなっている場合が多い。よって、冷房時には還気ファン6A、6Bの回転数を低く制御し、暖房時には、還気ファン6A、6Bの回転数を上げることによって熱だまりの熱を無駄なく用い、省エネルギー化を実現することもできる。
【0027】
また、空調システム100は、室内湿度が上昇した際に、例えば外気処理空調機4の吹出し空気の温度を、外気処理空調機4の下限温度(例えば13度)に制御し、ベース空調機2A、2Bへ送られる空気の過冷却除湿を行ってもよい(以下、除湿冷房モード弱という)。
図10は、除湿冷房モード弱時の空調システム100の説明図である。ただし、ベ
ース空調機2A、2Bから吹出される空気の温度は、室内1A、1Bの室内温度が過冷却となることを防止するために適切に調整されてもよい。
【0028】
また、空調システム100は、除湿冷房モード弱で運転しても室内湿度除去能力が不足する場合、例えばベース空調機2A、2B及びピーク空調機3の吹出し空気の温度を下限の13度とし、吹出し空気の直接的な過冷却除湿を行ってもよい(以下、除湿冷房モード強という)。
図11は、除湿冷房モード強時の空調システム100の説明図である。また、この際、室内1A、1Bへの給気温度が下がりすぎないよう、例えば給気温度を20度と設定し、還気ファン6A、6Bを最大風量近傍で運転してもよい。また、この際、ベース空調機2A、2Bのロードリセット制御は停止されてもよい。また、室内の過冷却による快適性の低下を防止するため、室内温度がある設定温度を下回った場合には、除湿冷房モードは解除されてもよい。上記のような空調システム100は、除湿を行いつつも、室内への給気温度を適切に調節するため、室内にいる人間の快適性は維持される。従って、空調システム100は、利便性に優れたシステムである。
【0029】
また、空調システム100は、例えば外気が冷涼な期間において、ベース空調機2A、2B及び外気処理空調機4が冷房モードであって、室内温度が室内温度下限値よりも高い場合、外気冷房運転を行ってもよい(以下、外気冷房モードという)。
図12は、外気冷房モード時の空調システム100の説明図である。外気冷房モード時、系外から空気を取り込む外気処理空調機4は100%定格風量で送風運転されてもよい。また、外気処理空調機4の吹出し空気を吸込み空気へ循環させる配管に設けられたMD7Dは中央監視部12によって全閉に制御され、加湿器5とベース空調機2A、2Bとを接続する配管に設けられたCAV9A、9Bは中央監視部12によって全開に制御されてもよい。従って、外気冷房モードでは、外気は最大限利用される。
【0030】
ここで、外気冷房モードへの切り替えは、まず外気温湿度計測値、室内温湿度計測値から外気エンタルピー、室内エンタルピーの演算を行う。そして、中央監視で外気冷房が許可されている場合に、外気処理空調機及びベース空調機2A、2Bが冷房モードであり、室内温度が室内温度下限設定値以上であり、(a)外気温度が室内温度以下である、(b)外気エンタルピーが室内エンタルピー以下である、(c)外気温度が外気下限温度設定値以上である、(d)外気相対湿度が外気下限相対湿度設定値以上である、(e)外気相対湿度が外気上限相対湿度設定値以下である、という条件をすべて満たせば切り替えは実行されてもよい。ただし、外気温度下限値、外気相対湿度上限値、外気相対湿度下限値の設定は、中央監視部12によって変更されてもよい。この切り替え条件を図示すると
図13のような空気線図となる。ただし、外気冷房モードであっても、ベース空調機2A、2Bの吹出し空気の設定温度はロードリセット制御され、空調性能は確実に確保されてもよい。上記の空調システム100であれば、快適性は維持されつつも、柔軟に系外の空気を空調システムに用いることができ、利便性に優れ、省エネルギー化を実現することができる。
【0031】
また、空調システム100は、例えば外気処理空調機4が停止され、ビルや商用施設等の建物の外周面に設けられた自動開閉パネルによって自然換気が行われてもよい(以下、自然換気モードという)。
図14は、自然換気モード時の空調システム100の説明図である。自然換気モードへの切り替えは、まず外気温湿度計測値、室内温湿度計測値から外気エンタルピー、室内エンタルピーの演算を行う。そして、(a)自然換気有効時間内である、(b)外気温度が室内温度以下である、(c)外気エンタルピーが室内エンタルピー以下である、(d)外気温度が外気下限温度設定値以上である、(e)外気相対湿度が外気下限相対湿度設定値以上である、(f)外気相対湿度が外気上限相対湿度設定値以下である、(g)降雨ではない、(h)風速有効範囲内である、という条件を全て満たす場合に実施されてもよい。上記の切り替え条件を図示すると、
図15のような空気線図とな
る。
【0032】
また、空調システム100が建物内のフロア毎に設けられている場合、自然換気モードへの切り替えは、フロア毎に実施されてもよい。また、自然換気有効時間、外気下限温度、及び相対湿度の設定値は、中央監視部12によって変更されてもよい。上記のような空調システム100は、空気搬送動力が低減される。また、トイレ等に設定されている換気ファンによる第3種換気によって室内が陰圧となり、より多くの外気導入が促される。ただし、この際、室内1A、1Bは、自然換気による熱除去と平行して、ベース空調機2A、2Bによって温度制御された吹出し空気が継続的に供給されてもよい。従って、自然換気モードでは、快適性は維持されつつも省エネルギー化が実現される。
【0033】
上記のような空調システム100は、中央監視部12やコントローラ13によってベース空調機2A、2B、ピーク空調機3、外気処理空調機4、還気ファン6A、6B等が制御される。そして、それらの装置が連動することによってベース冷房モード、ピーク冷房モード、除湿冷房モード弱、除湿冷房モード強、外気冷房モード、自然換気モードの6つのモードでの運転を可能にし、快適性や省エネルギー性を実現している。また、冬季においては、冷房モードだけではなく上記の装置を連動させて暖房モードでの運転を行い、快適性や省エネルギー性を実現してもよい。つまり、空調システム100は、快適性、省エネルギー性に対して拡張性が高く、且つ管理コストが低く利便性に優れた空調システムである。
【符号の説明】
【0034】
1A、1B・・ビルや商用施設等の室内;2A、2B・・ベース空調機;3・・ピーク空調機;4・・外気処理空調機;5・・加湿器;6A、6B・・還気ファン;7,7A、7B、7C、7D・・モータダンパ;8・・温度センサ;9,9A、9B・・定風量装置;10、10A、10B・・温湿度センサ;11・・マルチリモートコントローラ;12・・中央監視部;13・・コントローラ;14・・入力モジュール;15・・集中リモートコントローラ;16・・動力盤;17A、17B・・受信部;100・・空調システム