(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】電線引留用補助具
(51)【国際特許分類】
H02G 7/02 20060101AFI20220106BHJP
H01B 17/12 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
H02G7/02
H01B17/12 A
(21)【出願番号】P 2018031929
(22)【出願日】2018-02-26
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000139573
【氏名又は名称】株式会社愛洋産業
(73)【特許権者】
【識別番号】000243939
【氏名又は名称】名伸電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岸 泰至
(72)【発明者】
【氏名】市河 祐樹
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-56065(JP,A)
【文献】特開2008-141884(JP,A)
【文献】特開2014-23220(JP,A)
【文献】実公昭50-25494(JP,Y1)
【文献】特開2006-187141(JP,A)
【文献】特開2012-143119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 7/02
H01B 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の大径部と、前記一対の大径部の間に設けられ、前記一対の大径部のいずれよりも小径の小径部と、を備え、前記小径部は電線引留用の可撓性の線状体を巻き付け可能に構成された碍子に対して使用可能な電線引留用補助具であって、
前記小径部に内周面が係合可能に構成された少なくとも1つの係合部と、
前記係合部の一部に形成され、前記係合部の外周と前記内周面とを連通することにより、前記係合部の外周側から前記内周面と係合する位置まで前記小径部を挿入可能に構成された開口部と、
前記線状体を、前記係合部の前記内周面に沿って巻き付いた状態に支持するように構成された少なくとも1つの支持部と、
前記碍子に近接するように移動する前記係合部を、前記内周面が前記小径部に係合する位置へ案内するように構成された少なくとも1つの案内部と、
を備えた電線引留用補助具。
【請求項2】
請求項1に記載の電線引留用補助具であって、
前記案内部は、
前記係合部における前記開口部側の端部に設けられ、前記碍子の少なくとも一方の前記大径部に当接して滑ることにより、前記開口部を前記碍子の前記小径部に向けて案内するように構成された斜面を、
備えた電線引留用補助具。
【請求項3】
請求項1に記載の電線引留用補助具であって、
前記案内部は、
前記係合部における、前記内周面が前記小径部に係合したときに前記碍子の軸方向と平行となる方向を所定方向として、前記係合部から前記所定方向に突出して設けられ、ボルトを介して前記碍子を支持する金具に当接したとき、前記係合部が前記金具に近接するのを抑制することによって前記開口部が前記小径部との対向位置からずれるのを抑制するように構成された、電線引留用補助具。
【請求項4】
請求項3に記載の電線引留用補助具であって、
前記所定方向に突出して設けられた案内部は、前記内周面が前記小径部に係合したとき、前記碍子における少なくとも一方の前記大径部に係合するように構成された電線引留用補助具。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の電線引留用補助具であって、
前記支持部は、
前記線状体を前記係合部の内周側から支持するように構成された少なくとも1つの内周支持部と、
前記線状体を前記係合部の外周側から支持するように構成された少なくとも1つの外周支持部と、
を備えた電線引留用補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電線引留用の可撓性の線状体を碍子に巻き付ける作業を補助する電線引留用補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電柱の腕金にボルト等を介して取り付けられた碍子に、例えば特許文献1に記載のような引留具を用いて電線を引き留め、当該電線を電柱間に所望の張力を与えた状態で架設することが考えられている。特許文献1に記載の引留具では、U字状に構成された引留ループの両端に、それぞれ螺旋状の素線束を連接している。このため、電線の被覆を剥いだ導体部分の外周に2つの素線束を絡めて、前記導体部分を絡まった素線束の内側に保持すれば、引留具に当該電線を引き留めることができる。引留ループを碍子の小径部に巻き付けて、電線に張力がかかる状態で、素線束により電線を保持すれば、碍子に電線を引き留めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、引留ループは、碍子を支持する金具等に接すると、当該金具から漏電が発生する可能性がある。このため、引留ループを碍子の小径部に巻き付ける作業は、引留ループが碍子の小径部から外れて金具等に当接しないように、また、碍子の小径部から外れたまま施工することが無いように慎重に行う必要がある。
【0005】
本開示の1つの局面は、引留ループ等の可撓性の線状体を碍子の小径部に巻き付ける作業の作業性を、一層向上させることのできる電線引留用補助具を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様としての電線引留用補助具は、一対の大径部と、前記一対の大径部の間に設けられ、前記一対の大径部のいずれよりも小径の小径部と、を備え、前記小径部は電線引留用の可撓性の線状体を巻き付け可能に構成された碍子に対して使用可能である。また、当該電線引留用補助具は、少なくとも1つの係合部と、開口部と、少なくとも1つの支持部と、少なくとも1つの案内部と、を備える。
【0007】
係合部は、前記小径部に内周面が係合可能に構成されている。開口部は、前記係合部の一部に形成され、前記係合部の外周と前記内周面とを連通することにより、前記係合部の外周側から前記内周面と係合する位置まで前記小径部を挿入可能に構成されている。支持部は、前記線状体を、前記係合部の前記内周面に沿って巻き付いた状態に支持するように構成されている。案内部は、前記碍子に近接するように移動する前記係合部を、前記内周面が前記小径部に係合する位置へ案内するように構成されている。
【0008】
このような構成によれば、碍子の小径部を開口部から挿入することにより、係合部の内周面に当該小径部を係合させることができる。作業者は、このように小径部を開口部から挿入する際に、線状体を、係合部の内周面に沿って巻き付いた状態に支持部を介して支持しておくことができる。そうすることにより、係合部の内周面に碍子の小径部が係合すると、線状体は碍子の小径部に巻き付いたのと同様の状態となる。また、そのように小径部を開口部から挿入するために、作業者が、小径部の半径方向外側から碍子に近接するように係合部を移動させると、案内部は、係合部の内周面が小径部に係合する位置へ、当該移動する係合部を案内する。
【0009】
このため、作業者は、それほど正確に係合部を移動させなくても、案内部によって係合部が案内されることにより、係合部の内周面を碍子の小径部に係合させることができる。そして、係合部の内周面に碍子の小径部が係合すると、前述のように、線状体は碍子の小径部に巻き付いたのと同様の状態となる。従って、可撓性の線状体を碍子の小径部に巻き付ける作業の作業性を、一層向上させることができる場合がある。
【0010】
なお、本開示の電線引留用補助具において、前記案内部は、前記係合部における前記開口部側の端部に設けられ、前記碍子の少なくとも一方の前記大径部に当接して滑ることにより、前記開口部を前記碍子の前記小径部に向けて案内するように構成された斜面を、備えてもよい。このような構成では、碍子に近接するように係合部を移動させたときに、斜面が碍子の大径部に当接すると、当該当接によって斜面に加わる応力の斜面に沿った分力に応じて斜面が大径部に対して滑ることにより、案内部は開口部を碍子の小径部に向けて案内する。このため、係合部の内周面が小径部に係合する位置へ、当該係合部を良好に案内することができる。従って、可撓性の線状体を碍子の小径部に巻き付ける作業の作業性を、一層向上させることができる場合がある。
【0011】
また、本開示の電線引留用補助具において、前記案内部は、前記係合部における、前記内周面が前記小径部に係合したときに前記碍子の軸方向と平行となる方向を所定方向として、前記係合部から前記所定方向に突出して設けられ、ボルトを介して前記碍子を支持する金具に当接したとき、前記係合部が前記金具に近接するのを抑制することによって前記開口部が前記小径部との対向位置からずれるのを抑制するように構成されてもよい。このような構成では、碍子に近接するように係合部を移動させたときに、係合部が傾くなどして、前記所定方向に突出して設けられた案内部が金具に当接すると、当該案内部は、係合部が金具に近接するのを抑制することによって開口部が小径部との対向位置からずれるのを抑制する。このため、係合部の内周面が小径部に係合する位置へ、当該係合部を良好に案内することができる。従って、可撓性の線状体を碍子の小径部に巻き付ける作業の作業性を、一層向上させることができる場合がある。
【0012】
そして、その場合更に、前記所定方向に突出して設けられた案内部は、前記内周面が前記小径部に係合したとき、前記碍子における少なくとも一方の前記大径部に係合するように構成されてもよい。このような構成では、係合部の内周面が碍子の小径部に係合したとき、前記所定方向に突出して設けられた案内部は、碍子における少なくとも一方の大径部に係合する。このため、係合部の内周面が碍子の小径部に係合した状態を、一層安定して維持することができる。従って、可撓性の線状体が碍子の小径部に巻き付いた状態を、一層安定して維持することができる。
【0013】
また、本開示の電線引留用補助具において、前記支持部は、前記線状体を前記係合部の内周側から支持するように構成された少なくとも1つの内周支持部と、前記線状体を前記係合部の外周側から支持するように構成された少なくとも1つの外周支持部と、を備えてもよい。このような構成では、内周支持部と外周支持部とによって、線状体は、係合部の内周側と外周側との双方から支持される。このため、線状体は、係合部の内周面に沿って巻き付いた状態に一層良好に支持される。従って、前述のように、支持部を介して線状体を係合部の内周面に沿って支持した状態で、係合部の内周面に碍子の小径部を係合させる作業中に、線状体が係合部から外れるのを抑制することができる。よって、当該作業の作業性を一層向上させることができる。また、係合部の内周面に碍子の小径部を係合させた後も、支持部によって線状体が係合部から外れるのを一層良好に抑制することができる。従って、線状体を碍子の小径部に巻き付いた状態に一層良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態の電線引留用補助具を表す斜視図である。
【
図2】前記電線引留用補助具を他の角度から表す斜視図である。
【
図3】前記電線引留用補助具が引留碍子に係合した状態を表す斜視図である。
【
図4】前記電線引留用補助具に用いられる線状体を表す平面図である。
【
図5】前記線状体を前記引留碍子に係合させた状態を表す側面図である。
【
図6】前記電線引留用補助具の案内部の効果を表す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.実施形態]
[1-1.構成]
図1及び
図2に示すように、実施形態の電線引留用補助具(以下、補助具)1は、係合部3と、係合部5と、2つの第1案内部7と、2つの第2案内部9と、2つの第1支持部11と、第2支持部13と、2つの第3支持部15と、第3案内部17と、第4案内部19とを備えるように、黒色の樹脂にて一体成型されている。
【0016】
係合部3及び係合部5は、いずれも、馬蹄形の板状に構成され、当該板厚方向の間隔が支持部11~15によって規定されることによって平行配置されている。なお、以下の説明で、前記板厚方向に係合部5から係合部3に向かう方向を+Z方向とし、前記馬蹄形が開口した方向を+X方向とした右手系直交座標を用いて、各部の位置関係を示す場合がある。但し、このような座標は、各部の位置関係を説明するために便宜的に設定したもので、実際に使用される際の姿勢及び位置関係とは無関係である。例えば、補助具1は、+Z方向を上にして使用されてもよく、+Y方向を上にして使用されてもよく、その他の姿勢で使用されてもよい。
【0017】
係合部3の2つの端部3A,3Aの間隔は、係合部3の内周面3Bの直径(すなわち、内径)よりも若干小さく形成されている。同様に、係合部5の2つの端部5A,5Aの間隔は、係合部5の内周面5Bの直径よりも若干小さく形成されている。また、係合部3の内周面3Bと、係合部5の内周面5Bとは、
図3に示す引留碍子85の小径部85Aに密着して係合するように、内径が設定されている。このため、係合部3の端部3A,3Aと係合部5の端部5A,5Aとで四隅を規定された開口部20から、引留碍子85の小径部85Aを挿入すると、小径部85Aは、係合部3,5を弾性変形させて進入した後、内周面3B,5Bに係合する。この係合によって、補助具1は、少なくとも自重によって引留碍子85から落下しない程度に引留碍子85に接続される。
【0018】
また、係合部3のそれぞれの端部3A,3Aには、+Z方向突出した第1案内部7がそれぞれ形成されている。それぞれの第1案内部7の+X側端面は、端部3Aから+Z方向へ行くほど+X側へ行くように傾斜した斜面7Aを構成している。また、係合部5のそれぞれの端部5A,5Aには、-Z方向突出した第2案内部9がそれぞれ形成されている。それぞれの第2案内部9の+X側端面は、端部5Aから-Z方向へ行くほど+X側へ行くように傾斜した斜面9Aを構成している。すなわち、斜面7A,9Aは、全体として、開口部20を挟んで+X側に開いた形状をしている。
【0019】
このため、引留碍子85における2つの大径部85B(詳細には、大径部85Bにおける引留碍子85の軸方向外側面)に斜面7A又は9Aが当接すると、当該当接によって斜面7A又は9A加わる応力の斜面7A又は9Aに沿った分力に応じて斜面7A又は9Aが大径部85Bに対して滑る。これによって、開口部20が引留碍子85の小径部85Aとの対向位置に向けて案内される。従って、作業者が係合部3,5を小径部85Aに係合させようとして開口部20を引留碍子85の小径部85Aに押し付けたときに、補助具1の位置が若干±Z方向にずれていたとしても、斜面7A及び斜面9Aの前記作用によって、係合部3,5を小径部85Aに良好に係合させることができる。
【0020】
また、±Z方向に重畳して配置された2組の端部3A,5Aの間は、開口部20の中心方向に凸に湾曲した第1支持部11(内周支持部の一例)によってそれぞれ接続されている。係合部3の内周面3Bにおける-X側端部と、係合部5の内周面5Bにおける-X側端部とは、開口部20方向に凸に湾曲した第2支持部13(内周支持部の一例)を介して接続されている。また、係合部3におけるそれぞれの端部3Aよりも-X側の位置で、第1案内部7の-X側端部が配設される部分の外周と、係合部5におけるそれぞれの端部5Aよりも-X側の位置で、第2案内部9の-X側端部が配設される部分の外周との間は、第3支持部15(外周支持部の一例)によってそれぞれ直線状に連結されている。このため、支持部11~15によって、
図4に示すような線状体87を係合部3,5の内周面3B,5Bに沿って支持することができる。
【0021】
図4に示すように、線状体87は、捩った素線束によってU字状に構成されて表面を樹脂で被覆された引留ループ87Bと、引留ループ87Bの両端にそれぞれ連接された螺旋状の素線束87A,87Aとを備えている。このような線状体87の引留ループ87Bを、第1支持部11及び第2支持部13の外側を通って、かつ、第3支持部15の内側を通るように巻き付ければ、引留ループ87Bを係合部3,5の内周面3B,5Bに沿って支持することができる。
【0022】
しかも、第1支持部11における+Z側内周面及び-Z側内周面には引留ループ87Bの外周に係合する可撓性の薄片11Aが突出して形成されている。また、係合部3,5の互いに対向する面における第3支持部15の近傍にも、引留ループ87Bの外周に係合する可撓性の薄片15Aが突出して形成されている。従って、引留ループ87Bを内周面3B,5Bに沿って支持することが、一層安定して実行できる。
【0023】
引留碍子85は、例えば
図5に示すように、図示省略した腕金に取り付けられた長尺平板状の一対の金具80,80の間に、ボルト83を介して取り付けられている場合がある。その場合、前述のように補助具1が取り付けられた線状体87は、金具80,80の長尺方向側方から、素線束87A,87Aの間に引留碍子85を挟むようにして挿入される。そして、2つの素線束87A,87Aを作業者が自身の手前に引くと、前述のように斜面7A,9Aによって補助具1が案内されて、係合部3,5が引留碍子85に係合する。その後、電線81の被覆81Bを剥がして芯線81Aが露出した部分に、電線81に所望の張力を加えた状態で素線束87A,87Aを巻き付けることにより、前記所望の張力で電柱間に電線81を架設することができる。
【0024】
更に、補助具1は、次のような第3案内部17及び第4案内部19(いずれも、所定方向に突出して設けられた案内部の一例)を備えている。第3案内部は、係合部3の-X側端部から+Z方向に突出した後、+X方向に屈曲した断面L字状に構成されている。第4案内部は、係合部5の-X側端部から-Z方向に突出した後、+X方向に屈曲した断面L字状に構成されている。
【0025】
図6に例示するように、第4案内部19は、補助具1が傾くなどして当該第4案内部19が-Z側の金具80に当接すると、係合部3,5が-Z側の金具80に近接するのを抑制することによって開口部20が小径部85Aとの対向位置からずれるのを抑制する。同様に、第3案内部17は、補助具1が傾くなどして当該第3案内部17が+Z側の金具80に当接すると、係合部3,5が+Z側の金具80に近接するのを抑制することによって開口部20が小径部85Aとの対向位置からずれるのを抑制する。
【0026】
また、第3案内部17及び第4案内部19は、前述のように断面L字状に構成されているので、係合部3,5の内周面3B,5Bが引留碍子85の小径部85Aに係合したとき、引留碍子85の大径部85Bに外周側から係合する。更に、第3案内部17及び第4案内部19は、第1案内部7,7及び第2案内部9,9とは十分に(例えば、引留碍子85の軸回りに45°以上)間隔を開けて設けられている。このため、電柱に取り付けられた引留碍子85に補助具1が取り付けられた後からでも、地上から引留碍子85の色を目視で確認することができる。
【0027】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1A)引留碍子85の小径部85Aを補助具1の開口部20から挿入することにより、係合部3,5の内周面3B,5Bに当該小径部85Aを係合させることができる。作業者は、このように小径部85Aを開口部20から挿入する際に、引留ループ87Bを、内周面3B,5Bに沿って巻き付いた状態に支持部11~15を介して支持しておくことができる。そうすることにより、係合部3,5の内周面3B,5Bに引留碍子85の小径部85Aが係合すると、引留ループ87Bは引留碍子85の小径部85Aに巻き付いたのと同様の状態となる。しかも、本実施形態では、第1支持部11及び第2支持部13が引留碍子85の中心方向に凸に湾曲しているので、引留ループ87Bは小径部85Aに直接巻き付いたのと極めて近い状態に支持される。
【0028】
また、そのように小径部85Aを開口部20から挿入するために、作業者が、小径部85Aの半径方向外側から引留碍子85に近接するように補助具1を移動させると、当該補助具1に設けられた案内部7,9,17,19は、内周面3B,5Bが小径部85Aに係合する位置へ、係合部3,5を案内する。
【0029】
このため、作業者は、それほど正確に補助具1を移動させなくても、案内部7,9,17,19によって係合部3,5が案内されることにより、内周面3B,5Bを小径部85Aに係合させることができる。従って、引留ループ87Bを小径部85Aに巻き付ける作業の作業性を、一層向上させることができる場合がある。
【0030】
(B)また、第1案内部7及び第2案内部9は、斜面7A又は9Aを引留碍子85の大径部85Bに当接させることによって、開口部20を引留碍子85の小径部85Aとの対向位置に向けて案内する。このため、係合部3,5の内周面3B,5Bが小径部85Aに係合する位置へ、当該係合部3,5を良好に案内することができる。従って、引留ループ87Bを引留碍子85の小径部85Aに巻き付ける作業の作業性を、一層向上させることができる場合がある。
【0031】
(C)更に、第3案内部17及び第4案内部19は、補助具1が傾くなどして当該第3案内部17又は第4案内部19が金具80に当接すると、係合部3,5が金具80にそれ以上近接するのを抑制する。このため、開口部20が小径部85Aとの対向位置からずれるのを抑制して、係合部3,5の内周面3B,5Bが小径部85Aに係合する位置へ、当該係合部3,5を良好に案内することができる。従って、引留ループ87Bを引留碍子85の小径部85Aに巻き付ける作業の作業性を、一層向上させることができる場合がある。
【0032】
(D)また、第3案内部17及び第4案内部19は、係合部3,5の内周面3B,5Bが引留碍子85の小径部85Aに係合したとき、引留碍子85の大径部85Bに外周側から係合する。このため、係合部3,5の内周面3B,5Bが引留碍子85の小径部85Aに係合した状態を、一層安定して維持することができる。従って、引留ループ87Bが引留碍子85の小径部85Aに巻き付いた状態を、一層安定して維持することができる。
【0033】
(E)第1支持部11及び第2支持部13は、引留ループ87Bを係合部3,5の内側から支持し、第3支持部15は引留ループ87Bを係合部3,5の外側から支持する。このため、引留ループ87Bは、係合部3,5の内周面3B,5Bに沿って巻き付いた状態に一層良好に支持される。従って、引留ループ87Bを内周面3B,5Bに沿って支持した状態で、当該内周面3B,5Bに引留碍子85の小径部85Aを係合させる作業中に、引留ループ87Bが係合部3,5から外れるのを抑制することができる。よって、当該作業の作業性を一層向上させることができる。
【0034】
また、係合部3,5の内周面3B,5Bに引留碍子85の小径部85Aを係合させた後も、引留ループ87Bが係合部3,5から外れるのを一層良好に抑制することができる。従って、引留ループ87Bを引留碍子85の小径部85Aに巻き付いた状態に一層良好に維持することができる。
【0035】
(F)また、斜面7A,9Aは、引留碍子85に挿入される側に±Z双方向に開いた形状を有するので、4mm、5mm、60mm2 などの種々の太さの引留ループ87Bを良好に引留碍子85に巻き付けることができる。
【0036】
(G)また、第3案内部17及び第4案内部19と、第1案内部7,7及び第2案内部9,9との間からは、電柱に取り付けられた引留碍子85に補助具1が取り付けられた後からでも、地上から引留碍子85の色を目視で確認することができる。このため、引留碍子85の種類を地上から確認する作業も容易になる。
【0037】
[2.他の実施形態]
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0038】
(2A)可撓性を有する線状体は、前述の線状体87に限定されるものではなく、電線引留用の線状体であれば種々の線状体に本開示は適用することができる。例えば特開2011-223838号公報に記載の低圧引留クランプハンガー等にも、本開示は適用することができる。
【0039】
(2B)各案内部7,9,17,19の形状及び数量や、各支持部11,13,15の形状及び数量は、
図1~6に示したものに限定されるものではなく、種々に変更することができる。例えば、前記実施形態では、内周支持部としての第1支持部11及び第2支持部13の方が外周支持部としての第3支持部15よりも多く設けられているが、両者は同数であってもよく、外周支持部の方が多く設けられてもよい。また、各案内部7,9,17,19及び各支持部11,13,15は、いずれも少なくとも1つずつあればよく、一定の効果は生じる。すなわち、各案内部7,9,17,19又は各支持部11,13,15のいずれか1つ又は複数を省略することもできる。
【0040】
(2C)また、前記実施形態では、補助具1を黒色の樹脂にて成形したが、これに限定されるものではなく、種々の色が使用可能である。但し、例えば黒色のように、引留碍子85の色(白と緑と茶色とがある)とは明確に見分けられる色に、補助具1の少なくとも外周面を構成した方が好ましい。
【0041】
(2D)前記実施形態では、板状の係合部3,5を2層に設けたが、これに限定されるものではない。たとえば、係合部は、3層以上に設けられてもよく、1層だけ設けられてもよく、より肉厚な係合部が利用されてもよい。
【0042】
(2E)また、前記実施形態では、補助具1を一体成形により作成しているが、これに限定されるものではない。例えば、補助具1と同様の構成を、複数のパーツを接続又は接着して作成してもよく、その他の方法で作成してもよい。
【0043】
(2F)前記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、前記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、前記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の前記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言のみによって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0044】
1…電線引留用補助具 3,5…係合部 3A,5A…端部
3B,5B…内周面 7…第1案内部 7A,9A…斜面
9…第2案内部 11…第1支持部 11A,15A…薄片
13…第2支持部 15…第3支持部 17…第3案内部
19…第4案内部 20…開口部 80…金具
81…電線 85…引留碍子 85A…小径部
85B…大径部 87…線状体 87A…素線束
87B…引留ループ