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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】流体センサチャンバー及びその結合体
(51)【国際特許分類】
   G01N 19/00 20060101AFI20220106BHJP
   G01N 5/02 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
G01N19/00 H
G01N5/02 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017193345
(22)【出願日】2017-10-03
(65)【公開番号】P2019066370
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】南 皓輔
(72)【発明者】
【氏名】吉川 元起
【審査官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/002907(WO,A1)
【文献】特開2016-061694(JP,A)
【文献】特開2008-002938(JP,A)
【文献】特開2015-172545(JP,A)
【文献】特開2012-112651(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0099729(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 19/00
G01N 5/02
G01N 27/00-27/49
G01N 35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
角柱状の形状を有するチャンバーブロックの各側面にそれぞれ設けられたセンサ収容部と、
前記チャンバーブロック内に形成され、前記センサ収容部を直列接続する流路と
を有する流体センサチャンバー。
【請求項2】
前記センサ収容部は前記面に設けられた凹部である、請求項1に記載の流体センサチャンバー。
【請求項3】
前記角柱状の形状を有するチャンバーブロックの底面の一方には前記流路の一端の開口が設けられ、
前記底面の他方には前記流路の他端の開口が設けられた、
請求項1または2に記載の流体センサチャンバー。
【請求項4】
前記底面は正多角形である、請求項3に記載の流体センサチャンバー。
【請求項5】
前記センサ収容部は互いに同一の形状及び同一のサイズを有する、請求項1から4の何れかに記載の流体センサチャンバー。
【請求項6】
任意の前記センサ収容部と前記流路上で当該センサ収容部に隣接している前記センサ収容部との間の部分流路は直線状または2本の直線が交差した折れ線状である、請求項1から5の何れかに記載の流体センサチャンバー。
【請求項7】
前記部分流路は前記センサ収容部から垂直に前記チャンバーブロック内部に延びている、請求項6に記載の流体センサチャンバー。
【請求項8】
前記センサ収容部を蓋で覆うことにより、前記流路がその端部以外では閉じているようにした、請求項1から7の何れかに記載の流体センサチャンバー。
【請求項9】
請求項1から8の何れかに記載の流体センサチャンバー複数設け、
それぞれの前記流体センサチャンバーの前記流路が互いに直列に接続されるように前記
流体センサチャンバーを結合した
流体センサチャンバー結合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数のセンサを収容して、これらのセンサに流体を供給する流体センサチャンバーに関し、特に小型化が可能であるとともにこれらのセンサに互いに同等な条件で流体を供給することができる流体センサチャンバーに関する。また、このような流体センサチャンバーを直列に連結した流体センサチャンバー結合体にも関する。ここで使用されるセンサとしては、検出すべき成分を感応膜が吸着することで感応膜に起こる収縮・膨張を表面応力の変化として検出したり、振動子の共振周波数の変化として検出したりするなど、多様な物理量の変化を検出する多様なセンサが挙げられるが、本発明とともに使用可能なセンサの種類は特に制限されない。
【背景技術】
【0002】
気体あるいは液体(以下、流体と総称することがある)が含有する成分等を測定するセンサを使用する場合には、そのセンサを測定システムに取り付け、またセンサに一定の条件で流体を供給する等の目的を達成するために、流体の経路が形成された器具にセンサを取り付けることがある。このような器具を本願では流体センサチャンバーと称する。
【0003】
この種の流体センサチャンバーとして、特許文献1に示す構造が提案されている。ここで図1として引用する特許文献1の図1にはセンサチャンバー(チャンバー)3を収容するセンサモジュール1の概念的な構造が図示されている。図示されているセンサモジュール1では、筐体5内に収容され、その内部にセンサ(感応部)2(図2)が取り付けられたセンサチャンバー3に2つの流路4(第1流路16、第2流路17)から2種類のガス(例えば測定対象ガス及び測定系から測定対象のガスをセンサに吸着した成分も含めて除去するためのパージガス)を切り替えて導入し、それを流路4(第3流路22)から排出する。このような2種類のガスの切り替え導入及び排出を行うため、第1流路16及び第2流路17にはそれぞれポンプ18が設置され、所要のシーケンスでその運転、停止などの動作が制御される。
【0004】
ここで使用されているセンサチャンバー3の概念的な構造は特許文献1の図3に示されているので、図2として本願図面中で引用する。図2に示すセンサチャンバー3には、図1に示す流路4(第1流路16、第2流路17)にそれぞれ接続されている導入部12(第1導入部14、第2導入部15)からそれぞれガスを導入してセンサ収容部(感応空間)11へ導き、ここに収容されているセンサ(感応部)2に接触させる。センサ収容部11に導かれたガスはその後導出部13から第3流路22(図1)を介して筐体1の外部へ送出される。
【0005】
良く知られているように、この種の流体の測定に当たって、検出対象の流体中に含まれる可能性のある複数の物質に対して互いに異なる態様で応答してシグナルを発生する複数のセンサにより同時測定を行うことがしばしば求められる。ところが、図3に示すセンサチャンバー3の構造では単一のセンサ収容部11内に一つのセンサが設置されるようになっており、上述のような複数のセンサを使用した同時測定については開示されていない。ここで使用されるタイプのセンサには一つのセンサとして動作するセンサ要素を単一の素子上の狭い領域内に複数個設置することができるものがすでに存在しているため、流体の測定を比較的少数のセンサ要素で同時測定を行う用途には使用可能である。しかしながら、この種の測定の適用対象をさらに広げまたその精度を向上するなど、測定への要求が更に高度化して行くことに対応するためには、益々多数のセンサで同時測定を行うことが求められる。単一のセンサ上に収容可能なセンサ要素の個数には当然上限があるため、この上限を超える同時測定を行う場合には、当然複数個のセンサに流体を供給しながら並列で測定を行う必要がある。
【0006】
この際、通常は静止した流体ではなく運動している流体を複数のセンサに供給しながら測定を行うため、センサ上での流体の流動の態様を複数のセンサ間で一致させないと、センサ間での測定条件が不均一となって正確な測定を行うことができなくなってしまう。図1及び図2に示した従来の構成をそのまま利用して複数のセンサによる同時測定を行おうとした場合、図2に示すセンサ収容部11を大きくして複数のセンサを収容することが考えられる。しかし、このような単一の領域中に複数のセンサを流体の経路に対して完全に同等の条件で配置することは困難であり、しかも流体が運動する際にしばしば発生する乱流により、センサ上での流体の運動の態様はセンサ間で益々不均一になってしまう。センサ収容部11のような単一領域中に配置された複数のセンサ間で流体の運動の態様をできるだけ均一にするために、センサ収容部を円形とし、当該空間に流体をその中心から導入するとともに、複数のセンサを同心円状に配置することを開示している文献が存在するが、このような構成でも上記問題を十分に解消するのは困難である。また、一つのセンサ収容部中に多数のセンサを収容しようとするとセンサ収容部の容積が大きくなるので、そこに導入する流体の流量や組成を急激に変化させても、センサ収容部内の流体がそれにすぐに追随できないという問題も顕在化する。
【0007】
あるいは一つのセンサチャンバー内に複数のセンサを収容する代わりに、単一のセンサを収容したセンサチャンバーを流体の流路に沿って直列に接続することによって、複数のセンサ上での流体の運動をできるだけそろえることも考えられる。しかし、このような構成では直列接続されたセンサチャンバー全体の体積が大きくなったり、あるいは流路方向の寸法が大きくなったりしてしまう。したがって、センサチャンバーを収容するセンサモジュールや更には測定システム全体の大型化という、好ましくない結果をもたらす。
【0008】
更には、センサチャンバーをどのように接続しても、接続されたチャンバー全体の流路等の総容積は接続段数に比例して増大する。測定対象の流体の流量が一定のままでは、当該容積が大きくなると、測定対象の流体を流し始めた時、流体の供給を打ち切ったとき、また測定対象の流体と基準となる流体を切り替える等の系中に流す流体を切り替えた時に、実際にセンサ素子が接触する流体の組成の切り替えが流路の先へ行くにつれて遅れるので、これらのセンサからのシグナルを解析する際には、各センサが流路上のどこに位置するかにより変わる時間遅れを考慮する必要がある。また、このような問題を解消/軽減するための精緻な構造のセンサチャンバーを設計できたとしても、複雑な立体形状となった場合には実際に製造することが困難となり、あるいは製造できたとしても生産性が低く、またコストが高くなりがちであるという問題もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、収容される複数のセンサとこれらのセンサの測定対象となる流体との間の接触・運動の態様を複数のセンサ間でできるだけ均一化することでこれらセンサ間の測定条件をできるだけ揃えるとともに、体積及び寸法の増大や内部の流路の容積の増大を抑えた流体センサチャンバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面によれば、多面体状の形状を有するチャンバーブロックの複数の面のうちの少なくとも2つの面にそれぞれ設けられたセンサ収容部と、前記チャンバーブロック内に形成され、前記センサ収容部を直列接続する流路とを有する流体センサチャンバーが与えられる。
ここで、前記センサ収容部は前記面に設けられた凹部であってよい。
また、前記チャンバーブロックは底面が任意の多角形である角柱状の形状を有し、前記角柱の側面の少なくとも2つにそれぞれセンサ収容部が設けられ、前記底面の一方には前記流路の一端の開口が設けられ、前記底面の他方には前記流路の他端の開口が設けられてよい。
また、前記多角形は正多角形であってよい。
また、前記センサ収容部は互いに同一の形状及び同一のサイズを有してよい。
また、任意の前記センサ収容部と前記流路上で当該センサ収容部に隣接している前記センサ収容部との間の部分流路は直線状または2本の直線が交差した折れ線状であってよい。
また、前記部分流路は前記センサ収容部から垂直に前記チャンバーブロック内部に延びてよい。
また、前記センサ収容部を蓋で覆うことにより、前記流路がその端部以外では閉じているようにしてよい。
本発明の他の側面によれば、前記何れかの流体センサチャンバー複数設け、それぞれの前記流体センサチャンバーの前記流路が互いに直列に接続されるように前記流体センサチャンバーを結合した流体センサチャンバー結合体が与えられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の流体センサチャンバーは、角柱等の多面体の各面に対応付けてセンサの収容部を設け、当該多面体内でこれら収容部間に順次流体を流すように流路を設けるため、センサチャンバーの体積や長さの増大を抑えつつ、多数のセンサを収容することができる。更に、本発明の流体センサチャンバーを2つあるいはもっと多数直列に連結して流体センサチャンバー結合体を構成することにより、収容できるセンサの個数を原理的には無制限とすることができる。また、小型化できることから、その内部の空所の容積を小さくできる。これによってセンサチャンバーに供給する流体を切り替え、あるいは流体の供給の開始・停止や流量の変化を与えた場合の、センサチャンバー内に収容されたセンサにおける流体の上記変化がセンサに伝搬する時間のセンサ間でのずれが小さくなる。更には、センサチャンバー内に設けられる流路等の空所を、直線を基本に構成することができるため、プラスチック等を使用してモールドによりセンサチャンバーを作製できる。これによりセンサチャンバーの製造が容易になる。例えば、ドリルなどで空所を個別に形成しなくて済むようにできるので、生産性の向上及び製造コストの低減を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】従来技術に係る流体センサチャンバーを使用した流体センサモジュールの構造を示す概略図。
図2図1中に示す流体センサモジュールに含まれる従来技術に係る流体センサチャンバーの内部構造を示す概略図。
図3】本発明の第1の実施例のセンサ両面取り付け型流体センサチャンバーの概略斜視図。
図4図3に示す本発明の第1の実施例の流体センサチャンバーのセンサ収容部に蓋を取り付けた状態を示す概略斜視図。
図5図4に示す、蓋を取り付けた状態の本発明の第1の実施例の流体センサチャンバーの概略側面図。
図6】本発明の第2の実施例のセンサ両面取り付け型流体センサチャンバーの概略斜視図。
図7】本発明の第3の実施例のセンサ4面取り付け型流体センサチャンバーの概略斜視図。
図8】本発明の第4の実施例のセンサ6面取り付け型流体センサチャンバーの概略斜視図。
図9図8に示す本発明の第4の実施例の流体センサチャンバーの概略正面図。
図10】本発明の第5の実施例のセンサ6面取り付け型流体センサチャンバーの概略斜視図。
図11図10に示す本発明の第5の実施例の流体センサチャンバーの概略正面図。
図12図10に示す本発明の第5の実施例の流体センサチャンバーの概略側面図。
図13】蓋付きの第1の実施例の流体センサチャンバーを2つ直列に連結した流体センサチャンバー結合体の斜視図。
図14】に示す流体センサチャンバー結合体の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一態様に係る流体センサチャンバーは、概略多面体形状のチャンバーブロックの面のうちの2つ以上の面にそれぞれセンサ収容部を設ける。更に、これらのセンサ収容部を直列接続して流体を順次与えるため、チャンバーブロック内部にセンサ収容部を直列に接続する流路を設ける。これにより、小さな3次元空間領域中に多数のセンサを収容することができる。また複数のセンサ収容部の形状およびサイズを互いに同じものとし、また一つのセンサ収容部中に一つのセンサを収容することで、これらのセンサ上の流体の運動の態様を互いに同一、あるいは非常に近いものとすることが容易になる。
【0014】
流体センサチャンバーを構成するチャンバーブロックは原理的には多面体一般としてよいが、これを角柱形状とし、その側面の全部あるいは2つ以上の面にそれぞれセンサ収容部を設けるようにすることもできる。この場合、角柱の2つの底面のうちの一方から流体をチャンバーブロック内に設けられた流路の一端に導入し、複数のセンサ収容部を巡回し終わったこの流体を他方の底面において流路の他端からチャンバーブロック外へ導出するようにできる。これにより、流体センサチャンバーを直列に連結することによって、占有する空間の体積の増大を小さなものに抑えながら、一本の流路上に直列接続されているセンサの個数を任意に増加させることができる。
【0015】
ここで、複数個設けられるセンサ収容部は互いに同一形状であることが望ましい。そのため、チャンバーブロックとして上述の角柱形状のものを採用する場合には、その底面が正多角形であることが望ましい。
【0016】
なお、図2に示す従来の流体センサチャンバーには第1流路16及び第2流路17にそれぞれ接続されている第1導入部14及び第2導入部15が設けられているのに対して、以下に示す本発明の実施例は何れも流体の入り口が一つしか設けられていない。しかしながら、本発明の流体センサチャンバーでも、その前段側に図3と同様に2つの流路を並列に接続するための手段を流体センサチャンバーの一部として設ける、あるいはそれとは別体の部材として接続するなどにより、この点についても図3に示す流体センサチャンバーと同じ動作を実現することができる。ただし、この動作は本発明にとって本質的なものではないので、これ以上の説明は省略する。
【0017】
また、以下の実施例では角柱の底面は四角形及び六角形の場合だけを示しているが、もちろんこれ以外の多角形でもよい。また、この多角形の辺の数は偶数に限定されるものではなく、三角形、五角形、七角形などの奇数であってもよい。
【0018】
以下実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、当然のことであるが、本発明をこれらの実施例に限定する意図はなく、実施例は本発明の理解を助けるための例示であることに注意する必要がある。
【実施例
【0019】
<第1の実施例-センサ両面取り付け型流体センサチャンバー(その1)>
図3はチャンバーブロック301の上面及303および下面305(以下、実施例の斜視図全体にわたって、上、下、水平、垂直等は図から理解できる通りの上、下、水平、垂直等を意味する)に一つずつセンサ収容部307-1、307-2を設けた本発明の第1の実施例のセンサ両面取り付け型流体センサチャンバー300の斜視図である。図3及びこれ以外の実施例の図面においては、図示されている物体の裏面や内部にあるために直接目視できない部分は、通常の図面の表記のように、隠れ線(破線)により示す。ここで、流体はチャンバーブロック301の左側手前側側面(以下、本発明の実施例の斜視図全体にわたって、この側面を正面309と呼び、正面の反対側の側面を背面311と呼ぶ)に設けられた開口を通して第1の流路313から流体が導入される。第1の流路は最初は正面から背面へ水平方向に延びるが、途中で垂直上方方向に向きを変えて、上面に設けられた第1のセンサ収容部307-1へ向かい、その底面に設けられた開口に接続される。第1のセンサ収容部307-1の底面には別の開口が設けられ、ここから第2の流路315が垂直下方に伸びて、チャンバーブロック301の下面に設けられた第2のセンサ収容部307-2の底面に設けられた開口に接続される。第2のセンサ収容部307-2の底面には、第1のセンサ収容部307-1の底面と同様に、もう一つの開口が設けられ、そこから最初は垂直上方に延び、途中で水平方向に向きを変えてチャンバーブロック301の背面311へ向かい、そこに設けられた開口に接続される第3の流路317が設けられている。
【0020】
このような流体センサチャンバー300の構造は多様な方法で実現できるが、例えばプラスチックを金型などによって成型することにより、容易に作成できる。センサ収容部307-1、307-2は多面体であるチャンバーブロック301の面にそれぞれ設けられた窪みとして形成できるから、そのための型を作成するのは容易である。チャンバーブロック301内を貫通する流路313、315、317についてはドリルなどを使用して作製することも可能であるが、型のうちで流路に対応する部分を取り外し可能なピン状物としておき、形成後にそのようなピンを引き抜くことで作製できる。なお、図3中の第1、第3の流路313、317のように途中で曲がっている場合には、この曲がりが曲線状ではなく2本の直線が交差する形の折れ曲がりであれば、2本の直線のピンにより容易に作成できる。また、図3からわかるように、各流路はそれが開口している面に垂直になっている。これにより、ピンを面に対して斜め方向に引き抜く場合に比べ、プラスチックなどの成型後のピンの引き抜きが容易になる。
【0021】
図示していないが、流体センサチャンバー300を実際に使用する前にセンサ収容部307-1、307-2にそれぞれセンサが収容される。チャンバーブロック301の正面309の開口から導入された流体は第1の流路313を通って第1のセンサ収容部307-1に入り、そこに収容されているセンサ(図示せず、以下同様)に与えられる。その後、この流体は第2の流路315を通して第2のセンサ収容部307-2のセンサに与えられる。次にこの流体は第3の流路317を通ってチャンバーブロック301の背面311から外部へ導出される。
【0022】
ここで、第1のセンサ収容部307-1と第2のセンサ収容部307-2とは同じ形状且つ同じサイズとなるように形成し、またこれらセンサ収容部に流体を導入しまた導出するための開口もこれらの収容部の底面上で同一位置に同一サイズで形成する。これにより、チャンバーブロックの正面から導入された流体はその全量が第1のセンサ収容部307-1と第2のセンサ収容部307-2とを順次通過し、またそこでの流体の運動の態様も両センサ収容部間でほとんど同じになる。更に、複数のセンサ収容部が多面体である単一のチャンバーブロック301の複数のすべてのまたは一部の面にそれぞれ対応付けて設置されるため、非常に小さい空間に複数のセンサを収容できる。また、図3に例示したように、チャンバーブロック301多面体の複数の面に設けられた複数のセンサ収容部307-1、307-2をチャンバーブロック内部に設けられた流路313、315、317によって直列に連結するという構造を有しているので、チャンバーブロック301を一体で形成できることと相俟って、流体がチャンバーブロックへ導入されてから導出されるまでの流体経路が短くなり、従って、チャンバーブロック内のセンサ1個当たりの流路容積を非常に小さく抑えることができる。更には、センサ両面取り付け型流体センサチャンバーの特徴として、第1のセンサ収容部307-1が設けられる面と第2のセンサ収容部307-2が設けられる面との間隔を非常に狭くできるので、薄型の流体センサチャンバー300を提供することができる。
【0023】
なお、センサ収容部にセンサを取り付けるに当たって、多くの場合にはそれだけでは気密(流体が液体の場合は液密。以下、気密で代表させる)にならないので、センサブロック全体を通る流路が気密、つまり途中で(特に、センサ収容部で)流体が漏出したり逆に空気などの外部の流体が入り込んだりしないようにする必要がある。本実施例では、図4の斜視図に示すように、各センサ収容部307-1、307-2に蓋401-1、401-2をかぶせることにより、この目的を達成する。蓋401-1、401-2をチャンバーブロック301に取り付けるには、ねじ止めでもよいし、チャンバーブロックや蓋の部材の弾性を利用した嵌め込みその他の任意の係止手段を使用することができる。係止手段自体は本発明の要部ではないため、これ以上の説明は省略する。もちろんセンサを設置するだけで気密状態にすることができるのであれば、このような追加の気密手段は省略できる。なお、図4では蓋401-1、401-2がセンサ収容部307-1、307-2のくぼみ全体を覆うように図示されているが、必ずしもこの構成には限られず、例えば、蓋のサイズをセンサ収容部よりも小さくしておき、センサ収容部内部にその一部あるいは全体が入り込むような形態でセンサ収容部内に取り付けるようにしてもよい。このようにすれば、センサ収容部がチャンバーブロック多面体の面上の占有面積がやや増大する代わりに、蓋によるセンサブロックが蓋の厚み方向に大きくなることを抑制できる。
【0024】
蓋401-1、401-2の裏面、つまりセンサ収容部307-1、307-2を向いた側にはセンサを任意の係止手段により取り付けることができる。こうすれば、センサ収容部307-1、307-2に設けられた開口から導入されてくる流体がセンサ表面上のセンス機能を有する部分(例えば受容体が塗布されている面)に直接あたるようになる。また、センサが動作するための電力を外部から供給したり、またセンサから得られるシグナルを外部に取り出したりするための電気的な接続を行うための導線や導体パターンを蓋401-1、401-2に設け、例えばコネクタを経由してセンサに接続を行うことが容易になる。もちろん、センサの取り付け位置は蓋の裏面に限定されるものではなく、例えばセンサ収容部307-1、307-2内にコネクタその他のセンサ取り付け部を設けておくこともできる。このようなセンサ取り付けの各種の手段については、素子を基板その他の部材に取り付ける際に広く使用される多様な手段を適宜応用することができるので、これについてもこれ以上の説明は省略する。
【0025】
図5に、図4に示す蓋を取り付けた状態の本実施例の横方向(図4の右手前方向の側面から見た方向)の側面図である。ここには、先に図3を参照して説明した、流体が導入される正面309の開口→途中の折れ曲がりを有する第1の流路313→第1のセンサ収容部307-1→真下へ向かって直線的に伸びる第2の流路315→第2のセンサ収容部307-2→途中で折れ曲がりを有する第3の流路317→流体が導出される背面311の開口、というチャンバーブロック301内の直列的な流体経路、及びその形状が更に詳細に図示されている。
【0026】
なお、以上説明した第1の実施例の構造によりもたらされる効果は同一あるいは類似した構造を持っている限り第2の実施例以降でもそのまま発揮されるものであるので、以降では特に必要のない限り、一々説明しない。また、蓋の設置や、センサの取り付け等についての上記説明も以降の実施例にそのまま当てはまるので、これについても以降は説明を省略する。
【0027】
<第2の実施例-センサ両面取り付け型流体センサチャンバー(その2)>
図3図5にセンサ両面取り付け型流体センサチャンバーの一つの実施例を第1の実施例として示したが、直方体(四角柱と呼んでもよいが、上述したようにセンサ両面取り付け型流体センサチャンバーはセンサ収容部を有していない側面を小さくすることにより薄型化を図ることができ、この場合はむしろマッチ箱状の形状となる)状の多面体の上側及び下側の側面にセンサ取り付け部を設けた流体センサチャンバーの構成はこれに限らない。そのような別構成を有する流体センサチャンバー600の第2の実施例の斜視図を図6に示す。図6からわかるように、第2の実施例の基本的な構成は第1の実施例とほぼ同じであるが、第1のセンサ収容部607-1において、そこへ流体を導入する第1の流路613の開口とそこから流体を導出して第2のセンサ収容部607-2へ送る第2の流路615の開口とが、第1の実施例ではチャンバーブロック301の正面309から背面311へ向かう方向に並んでいたのに対して、第2の実施例ではこれに直角な方向に並んでいる点で相違する。第2のセンサ収容部607-2に設けられている2つの開口の並ぶ向きについても同様である。
【0028】
<第3の実施例-センサ4面取り付け型流体センサチャンバー>
第3の実施例として、図7に第1及び第2の実施例と同じく直方体(四角柱)をチャンバーブロックとし、4つの則面にそれぞれセンサ収容部を一つずつ設けた第3の実施例の概略斜視図を示す。第1及び第2の実施例がその上下の側面(上面および下面)にそれぞれ1つずつセンサ収容部を設けていたのに対して、第3の実施例では上下の側面に加えてチャンバーブロック701の正面から見て左側及び右側の側面(すなわち図7において右手前の側面およびその反対側の面)にも1つずつセンサ収容部を設けている。この流体センサチャンバー700は、第1及び第2の実施例と同じく、正面709の開口から流体を導入し、最初は背面711に向かって伸びるが途中で垂直上方に折れ曲がる第1の流路713を経由して、先ず上面703に設けられた第1のセンサ収容部707-1の底面の開口を通してそこに流体を導入する。次に、この流体は第1のセンサ収容部707-1の底面に設けられている別の開口を通して第2の流路715へ入る。第2の流路715は先ず下へ向かって伸び、途中で折れ曲がって左側の側面に設けられている第2のセンサ収容部707-2へ向かい、その底面の開口を介してそこへ流体を導入する。以下同様に、この流体は第2のセンサ収容部707-2から第3の流路717を介してチャンバーブロック701の下面に設けられている第3のセンサ収容部へ導かれ、更にまたそこから第4の流路721を通ってチャンバーブロックの右側の側面に設けられている第4のセンサ収容部707-4に導入される。この段階で流体はチャンバーブロックに設けられている第1~第4のセンサ収容部をすべて巡回し終えたので、今度はこの流体は第5の流路723を通って背面に設けられた開口から外部へ導出される。すなわち、正面709の開口からチャンバーブロックに導入された流体は、正面709および背面711以外の4つの面に対応して設けられた4つのセンサ収容部を、その内部に配置された流路を通って、正面から見て反時計回りに巡回し(直列に通過し)、その後、やはりチャンバーブロック内部に設けられた流路を通って、背面711に設けられた開口から外部へ導出される。
【0029】
第3の実施例では第1及び第2の実施例に比べてチャンバーブロックのサイズをそれほど大きくしなくても2倍の個数のセンサを収容でき、従って、流体センサチャンバーの体積効率を向上させることができる。またこれにより正面と背面の開口間の流路の容積をセンサ個数で除算したセンサ1個当たりの流路容積を小さくすることができる。
【0030】
<第4の実施例-センサ6面取り付け型流体センサチャンバー(その1)>
図8に概略斜視図を示す第4の実施例の流体センサチャンバー800は、多面体であるチャンバーブロック801の具体的な形状を六角柱とし、図示されるようにその正面809及び背面811にそれぞれ流体導入用及び導出用の開口を形成するとともに、角柱の6つの側面にそれぞれセンサ収容部を一つずつ設けている。そしてこれらのセンサ収容部807-1~807-6に、正面側から見て反時計回りに巡回するように直列接続して正面809の開口から導入された流体を通し、最後に背面811の開口から外部へ流体を導出するように流路を形成している。正面809の開口から始まり、6つのセンサ収容部807-1~807-6を巡回して最後に背面811の開口に至る直列接続経路については、図9に示すところの、第3の実施例を正面側から見た概略正面図も参照されたい。
【0031】
<第5の実施例-センサ6面取り付け型流体センサチャンバー(その2)>
図10にその概略斜視図を示す第5の実施例は図8及び図9に示す第4の実施例とほぼ同じ構造を有するが、第4の実施例では各センサ収容部807-1~807-6の底面に設けられている2つの開口が正面809から背面811へ向かう方向と直角になった方向に並んでいるのに対して、第5の実施例の流体センサチャンバー1000ではこれら2つの開口が正面1009から背面1011へ向かう方向と並行に並んでいる点が異なる。これは第1の実施例と第2の実施例との相違点と同じである(第1の実施例と第6の実施例とが、また第2の実施例と第5の実施例とが対応する)。第5の実施例では各センサ収容部1007-1~1007-6の底面に設けられている2つの開口が正面1009から背面1011へ向かう方向と平行な向きに並んでいるため、隣接したセンサ収容部の位置は背面1011方向にわずかずつずれていき、それに伴ってこれらのセンサ収容部間を連結する流路の六角柱の中心軸に沿った位置も同じようにずれていく。このため、第5の実施例の流体センサチャンバーの方が第4の実施例に比べてその1009正面から背面1011までの長さが長くなる傾向にある。
【0032】
図11は第5の実施例の流体センサチャンバー1000を正面から見た概略正面図である。第5の実施例ではセンサ収容部底面に設けられた2つの開口が各側面を正面から背面に向かう方向に沿って2等分する直線上に並んでいるため、各側面から垂直にチャンバーブロック中に形成された流路は六角柱の中心軸1125に到達し、そこからこの軸に沿って直角に向きを変える。したがって、各流路のうちの正面から背面へ向かう方向に平行な部分は皆六角柱の中心軸1125を通る。しかし、上述したように6つのセンサ収容部の位置が正面から背面へ向かう方向(つまり六角柱の中心軸方向)に沿って少しずつずれているので、流路のうちの六角柱の中心軸方向に延びる部分が六角柱内で同じ空間を占めることで互いに直接接続されることはない。
【0033】
図12は第5の実施例を側面から見た概略側面図である。この図には、上述したところの、6つのセンサ収容部及びその間を接続する流路の位置が六角柱の中心軸1125に沿って前面1009から背面1011へ向かう方向に次第にずれていく様子が分かりやすく示されている。
【0034】
<第6の実施例-流体センサチャンバーを直列に連結した流体センサチャンバー結合体>
上で説明したような流体センサチャンバーにおいて、センサ収容部や流路の位置・サイズを適宜設定することで正面に設けられた開口と背面に設けられた開口との位置が揃うようにしておけば、同じ流体センサチャンバーを直列に連結したとき、これら2つの開口の位置を合わせるためのアダプタなどを使用することなく、流体センサチャンバーを一直線にそろった状態で連結して、それぞれの流体センサチャンバーに設けられた流路を連結することによって、これらの流路上のセンサ収容部を直列に接続することができる。
【0035】
図13及び図14はそれぞれ図4に示す蓋付きの第1の実施例の流体センサチャンバー300と300‘とを連結した流体センサチャンバー結合体の例である第6の実施例の斜視図及び側面図を示す。本実施例の流体センサチャンバー結合体1300では、前段側の流体センサチャンバー300の第3の流路317の出口の開口と後段側の流体センサチャンバー300’の第1の流路313‘の入り口の開口の位置を整列させて両流体センサチャンバーが連結されている。これにより、連結された結果構成される流体センサチャンバー結合体中では、左端の開口から送り込まれた流体が、4つのセンサ取り付け部307-1、307-2、307-1’、307-2‘を順番に通過して右端の開口から送り出されるので、4つのセンサ収容部を有する単一の流体センサチャンバーと等価な動作を行わせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【文献】国際公開2017/043562
図1
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図3
図4
図5
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図8
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図10
図11
図12
図13
図14