(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】車両のリフト搬送台車、縦列無人走行台車、車両縦列駐車システムおよび車両縦列駐車方法
(51)【国際特許分類】
E04H 6/36 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
E04H6/36
(21)【出願番号】P 2017206859
(22)【出願日】2017-10-26
【審査請求日】2020-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000191353
【氏名又は名称】新明工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】落合 浩之
(72)【発明者】
【氏名】吉塚 卓穂
【審査官】新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-019210(JP,A)
【文献】特開2004-262621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00 ー 6/42
B66F 9/06 ー 9/075
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの幅程度の長さを有する棒体からなり支持状態においてはタイヤの接地部の前後両側に各々当接してタイヤを支持可能とする一対のアーム部と、
これらのアーム部を前記支持状態およびタイヤから離間した解放状態を切り替え可能に支持するアーム支持部と、
車両の下部に挿入させた状態で各タイヤの内側の側近部に対応する位置にそれぞれ前記一対のアーム部を配置させるように各アーム支持部を支持する台車フレームと、
前記各アーム部の状態切り替えを連動させてタイヤの支持状態と解放状態を切り替える動力を供給するアーム駆動部と、
前記台車フレームに連結されて前記アーム部によって支持された車両を任意の方向に搬送可能とする複数の駆動輪ユニットおよびこれらの駆動輪ユニットの操舵方向および回転速度の制御を行なう搬送制御部を備えた台車本体と、
前記台車フレームの基端部を台車本体に対して昇降自在とする基端昇降部と、
前記台車フレームの先端部に設けて床面に当接するローラ車輪と、
このローラ車輪に対して先端部を昇降自在とする先端昇降部とを備えることを特徴とする車両のリフト搬送台車。
【請求項2】
前記アーム支持部は各アーム部をその基端部において縦軸中心に回動自在に支持する回動支持部であり、前記アーム駆動部は、ロッドの進退駆動によって前記回動支持部を支持状態から解放状態まで駆動する回動シリンダと、一端部が回動シリンダのロッドに連結し水平方向に回動自在に支持される第一支持リンクと、この第一支持リンクの回動中心に対する対称位置と前記回動支持部にそれぞれ連結された一対の第二支持リンクとを備える請求項1に記載の車両のリフト搬送台車。
【請求項3】
前記基端昇降部は、台車フレームを前記台車本体に対して上下方向にのみ摺動自在に連結支持する摺動連結部と、前記台車フレームおよび台車本体に連結し台車フレームを昇降駆動する基端部昇降シリンダとを備え、
前記先端昇降部は、ロッドの進退駆動によって台車フレームの先端部を床面から昇降させる動力を供給する先端部昇降シリンダと、この先端部昇降シリンダのロッドに一端側が連結されてロッドの進退移動を回転移動に変換する第一昇降リンクと、この第一昇降リンクの他端側が連結されて略水平方向の進退移動を伝達する第二昇降リンクと、中間部がこの第二昇降リンクに連結されると共に一端部が台車フレームの先端部に連結され他端部が前記ローラ車輪に連結される第三昇降リンクとを備える請求項1または請求項2に記載の車両のリフト搬送台車。
【請求項4】
前記ローラ車輪は、第三昇降リンクの他端部に回動可能に支持される車輪アームと、この車輪アームの前後両端部に回動自在に取付けられた前後のローラとを備える請求項3に記載の車両のリフト搬送台車。
【請求項5】
前記ローラは、その進行方向に対し横方向に並べて複数配置してある請求項4に記載の車両のリフト搬送台車。
【請求項6】
タイヤの幅程度の長さを有する棒体からなり支持状態においてはタイヤの接地部の前後両側に各々当接してタイヤを支持する一対のアーム部と、これらのアーム部を基端部において縦軸中心に回動自在に支持する一対の回動支持部と、一方の回動支持部に先端部が連結されたロッドの進退駆動によってアーム部を前記支持状態から90度回動させてタイヤから離間させた解放状態まで回動させる回動シリンダと、一方の回動支持部の回動を逆回転に変換して他方の回動支持部に伝達する回動伝達部と、前記アーム部を上下方向に昇降移動させる昇降シリンダとを備える車両のリフト装置を、請求項1~請求項5のいずれかに記載のリフト搬送台車によって搬送されて床面に降ろされた車両の各タイヤの外側の側近部にそれぞれ配置させる縦列台車フレーム、および、
この縦列台車フレームを少なくとも車両の前後方向に移動可能とする駆動輪ユニットとを備えることを特徴とする縦列無人走行台車。
【請求項7】
前記駆動輪ユニットは、外周にその回転軸が駆動輪ユニットの進行方向に対して斜め方向に配置された複数のローラを配置してなるメカナムホイールを備えてなり、
各駆動輪ユニットの回転速度を変えることにより移動方向を調節可能とする方向制御部を備える請求項6に記載の縦列無人走行台車。
【請求項8】
請求項1~請求項5の何れかに記載のリフト搬送台車を用いて
車両搬入部に待機する車両を車両待機部近傍に待機させた請求項6または請求項7に記載の縦列無人走行台車内まで搬送する搬送工程と、リフト搬送台車が縦列無人走行台車内に停止した状態で車両を降ろさせてリフト搬送台車を車両搬入部に移動させる帰還工程と、車両を持ち上げた縦列無人走行台車を車両待機部に並べて配置した状態で車両を降ろさせる配置工程と、車両を降ろした縦列無人走行台車を次の車両待機部近傍に移動させてリフト搬送台車が導入可能な導入空間をあけさせる待機位置変更工程とを実行させるシステム制御部とを備えることを特徴とする車両縦列駐車システム。
【請求項9】
請求項1~請求項5の何れかに記載のリフト搬送台車を用いて
車両搬入部に待機する車両を車両待機部近傍に待機させた請求項6または請求項7に記載の縦列無人走行台車内まで搬送させ、リフト搬送台車が縦列無人走行台車内に停止した状態で車両を降ろさせてリフト搬送台車を車両搬入部に移動させ、車両を持ち上げた縦列無人走行台車を車両待機部に並べて配置した状態で車両を降ろさせ、車両を降ろした縦列無人走行台車を次の車両待機部近傍に移動させてリフト搬送台車が導入可能な導入空間をあけさせることを特徴とする車両縦列駐車方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のリフト搬送台車、縦列無人走行台車、車両縦列駐車システムおよび車両縦列駐車方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両組み立て工場では、組み立てラインの最終工程において、完成車両に作業者一人一人が乗り込み、完成車両を運転することにより車両待機場に運搬していた。そのため、完成車両を運搬するために貴重な労働力となる作業者を用いる必要があった。
【0003】
そこで、近年では車両製造メーカにおいて完成した車両を作業者が運転して専用台車に搭載した後に、車両を搭載した専用台車を牽引する専用の牽引車両を用いることがあった。これによって、作業者が車両待機場まで運転して搬送する場合に比べて、必要とする労働力を削減することができる。
【0004】
また、特許文献1に示される車両を横方向に自動保管する自動保管装置では、空港やホテルの屋内の駐車場に車両を駐車する際に、無人走行台車で駐車スペースまで車両を搬送して、これを移動させることができる。ここで、無人走行台車で車両を車両待機場まで搬送する場合、搬送した車両を台車から降ろして車両待機場に移動させるためには、搬送した車両を床面に降ろすためのリフト構造を必要としていた。
【0005】
特許文献1の構成では、横方向の二つのタイヤを纏めて支持するように前後2対のフォーク対からなるフォークを配置し、これらのフォークを水平方向に移動させることにより、車両のタイヤの接地部前部と後部に当接させて車両を持ち上げることにより、車両を床面から浮かせた状態で搬送させ、車両待機場において降ろすことにより、車両の移動を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記構成の従来の自動保管装置は、車両の下に潜り込ませたフォークの全体を持ち上げることにより車両を支持して床面から持ち上げ、また、床面に降ろすものであるから、車両の全幅以上の長さのフォークを必要としており、それだけフォーク自身の重量が加わって、フォーク基端部に大きな回転方向の荷重がかかることは避けられなかった。
【0008】
横方向に離れた位置に配置された2つのタイヤを一対のフォークによって支持するためには、フォーク自体にこれを開かせる方向にかかる荷重に耐える構造上の強度を必要としているので、必然的にフォークの剛性が必要となるため、それだけフォークの重量が増し、駆動部にはより大きな動力を必要としていた。
【0009】
加えて、フォークの先端部にかかる車両の重量は搬送台車の全体的なバランスに影響を与えるため、このため、前記従来の自動保管装置ではフォークの先端部にかかる重量を支えることができるように、運搬手段に延接された支持部を設け、この支持部の長さをフォークと同程度の長さとしているが、これが装置の大型化を招いており、これに伴う駆動部の大型化の原因となっていた。
【0010】
本発明は上述の事柄を考慮に入れてなされたものであり、装置構成を可能な限り簡素に形成して、小容量のアクチュエータを用いて車両を支持し、昇降し、搬送することを可能とするリフト搬送台車、縦列無人走行台車、車両縦列駐車システムおよび車両縦列駐車方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、第1発明は、タイヤの幅程度の長さを有する棒体からなり支持状態においてはタイヤの接地部の前後両側に各々当接してタイヤを支持可能とする一対のアーム部と、これらのアーム部を前記支持状態およびタイヤから離間した解放状態を切り替え可能に支持するアーム支持部と、車両の下部に挿入させた状態で各タイヤの内側の側近部に対応する位置にそれぞれ前記一対のアーム部を配置させるように各アーム支持部を支持する台車フレームと、前記各アーム部の状態切り替えを連動させてタイヤの支持状態と解放状態を切り替える動力を供給するアーム駆動部と、前記台車フレームに連結されて前記アーム部によって支持された車両を任意の方向に搬送可能とする複数の駆動輪ユニットおよびこれらの駆動輪ユニットの操舵方向および回転速度の制御を行なう搬送制御部を備えた台車本体と、前記台車フレームの基端部を台車本体に対して昇降自在とする基端昇降部と、前記台車フレームの先端部に設けて床面に当接するローラ車輪に対して先端部を昇降自在とする先端昇降部とを備えることを特徴とする車両のリフト搬送台車を提供する(請求項1)。
【0012】
前記リフト搬送台車はアーム部を解放状態にした状態で台車フレームを車両の前方または後方から車両と床面の間に挿入し、アーム部をタイヤの内側の側近部に位置させて、アーム駆動部によってアーム部を支持状態に切り替えた後に、基端昇降部および先端昇降部を用いて台車フレームをその基端部および先端部において持ち上げることができる。前記アーム部、アーム支持部、台車フレームからなる車両のリフト装置の大部分が車両と床面の間の空間内に入り込むため、リフト搬送台車の小型化を達成することができ、狭い領域に容易に入り込んで車両を持ち上げて搬送することができる。
【0013】
アーム部によって車両のタイヤを持ち上げるとき、前記アーム部はタイヤの内側の側近部に配置されるものであるから、車両の重量のうち各タイヤに分散された重量のみがアーム部にかかることにより、各アーム部にかかる荷重を小さくすることができる。また、アーム部はタイヤの幅程度の長さを有する棒体からなるものであるから、アーム部の基端部にかかる回転トルクを必要最小限に抑えることができる。さらに、左右のタイヤにかかる荷重は左右のアーム部に均等にかかり、左右のアーム部に作用する回転トルクは互いに逆方向に働くために互いに打ち消しあい、アーム支持部と台車フレームに必要な剛性を持たせることにより荷重が均等に台車フレームにかかるため、フレーム搬送台車の安定性が向上する。
【0014】
前記先端昇降部を構成するローラ車輪は床面に当接することにより、台車フレームの先端部における荷重をローラ車輪で受けることができ、台車フレームの基端部に車両の重量による大きな回転トルクがかかることがない。ゆえに台車フレームは必要十分な剛性を得ることができると共に、より簡素かつ軽量に設計することができる。
【0015】
先端昇降部および基端昇降部によって引き上げられた台車フレーム、およびこの台車フレームによって支持されるアーム部により持ち上げられた車両は、そのタイヤを床面から離間させことにより、リフト搬送台車の移動に合せてその位置を容易に変えることができる。つまり、タイヤの方向を変えることも回転させることもなく、台車本体の移動に追従して車両の位置を変えることができる。また、前記搬送制御部は各駆動輪ユニットの回転速度および搬送方向を制御して、任意の方向に車両を搬送させることができる。
【0016】
他方、先端昇降部および基端昇降部によって台車フレームを降ろした状態ではタイヤが床面に当接し、車両を床面に載置できる。次いで、車両を床面に載置した後に、前記アーム部を解放状態に切り替えることにより、リフト搬送台車を車両から離間させて次の車両の搬送を行なうことができる。
【0017】
前記アーム部はそれ自体の重量を抑えるためにステンレスなど高い剛性を備える金属からなるパイプを用いることができる。また、前記アーム支持部は任意の形態が考えられるが、このアーム支持部は例えばアーム部を回動可能に支持するものであることが好ましい。あるいは、アーム支持部は各アーム部に連接されて進退方向に直線移動可能に支持させた直線運動ガイドであり、前記アーム駆動部は両アーム部に連接された両直線運動ガイドに連結されて両アーム部を同時に進退移動させることにより前記状態切り替えを行わせるものであってもよい。
【0018】
前記アーム支持部は各アーム部をその基端部において縦軸中心に回動自在に支持する回動支持部であり、前記アーム駆動部は、ロッドの進退駆動によって前記回動支持部を支持状態から解放状態まで駆動する回動シリンダと、一端部が回動シリンダのロッドに連結し水平方向に回動自在に支持される第一支持リンクと、この第一支持リンクの回動中心に対する対称位置と前記回動支持部にそれぞれ連結された一対の第二支持リンクとを備える場合(請求項2)には、一つの回動シリンダのロッドを進退駆動するときに、第一支持リンクを回動させ、一対の第二支持リンクとの連結部を点対称に移動させることができるので、両アーム部の回動支持部を互いに逆方向に90度(尚、この明細書ではほぼ90度の場合を含む)回転させることができる。
【0019】
つまり、一方のアーム部をタイヤの接地部の側面に当接させた支持状態からタイヤから完全に離間させた解放状態に変位させることができると同時に、多方の回転支持部を逆方向に回転させることができるので、多方のアーム部も支持状態から解放状態に変位させることができる。なお、前記第二支持リンクは水平面において縦軸と離れた位置において回動支持部に連結されたものであることにより、第二支持リンクの回動によって回動支持部を回動させることができる。
【0020】
上記構成によれば、アーム部をタイヤから離間させた状態において、前記アーム部は台車フレームの長手方向に直線状に収容できるので、車両のタイヤの位置に合せて台車フレームを車両の下に挿入することができる。次いで、アーム部をタイヤの内側の側近に位置させて、回動シリンダを駆動することにより、必要最小限の力でタイヤを挟み込んで車両を支持し、車両を昇降させることが可能となる。
【0021】
回動シリンダは大きな動力を容易に供給できる油圧シリンダであることにより、回動シリンダの進退方向の力の強さは、前後一対のアーム部によってタイヤを挟み込んで車両の支持を行なうことができる程度以上の力を容易に供給できるものであるゆえに好ましい。しかしながら、回動シリンダを電気的に制御可能であると共に堅牢性に優れた電動シリンダによって形成してあってもよいことはいうまでもない。
【0022】
なお、前記第一支持リンクから第三支持リンクによる両アーム部の連動機構に替えて、一方の回動支持部の回動を逆回転に変換して多方の回動支持部に伝達する回動伝達ギアを用いる変形も容易に考えられる。
【0023】
前記基端昇降部は、台車フレームを前記台車本体に対して上下方向にのみ摺動自在に連結支持する摺動連結部と、前記台車フレームおよび台車本体に連結し台車フレームを昇降駆動する基端部昇降シリンダとを備え、前記先端昇降部は、ロッドの進退駆動によって台車フレームの先端部を床面から昇降させる動力を供給する先端部昇降シリンダと、この先端部昇降シリンダのロッドに一端側が連結されてロッドの進退移動を回転移動に変換する第一昇降リンクと、この第一昇降リンクの他端側が連結されて略水平方向の進退移動を伝達する第二昇降リンクと、中間部がこの第二昇降リンクに連結されると共に一端部が台車フレームの先端部に連結され他端部が前記ローラ車輪に連結される第三昇降リンクとを備える場合(請求項3)には、摺動連結部が台車フレームをその基端部において台車本体に上下方向にのみ摺動自在に支持するので、台車本体と台車フレームの連結部を安定させることができる。
【0024】
前記基端部昇降シリンダのロッドの進退駆動によって台車フレームの基端部を昇降自在とすることができ、先端部昇降シリンダのロッドの進退駆動を第一昇降リンク、第二昇降リンク、第三昇降リンクによる一連のリンク機構によって伝達して、台車フレームの先端部に設けたローラ車輪に対して台車フレームの高さを調節することができる。このように先端部昇降シリンダによって供給される動力がリンク機構によって台車フレームの先端部に伝達されてローラ車輪に対する台車フレームの昇降を行なうので、先端部昇降シリンダは台車フレームの基端部側に取り付けられていてもよい。すなわち、基端部昇降シリンダと先端部昇降シリンダの両方を台車本体の近傍に位置する台車フレームの基端部側に配置することができるので、これらを駆動する動力の発生を容易とすることができる。
【0025】
先端部昇降シリンダおよび基端部昇降シリンダは例えば油圧シリンダを用いることにより、より大きな動力を容易に得ることができる。なお、先端部昇降シリンダおよび基端部昇降シリンダを電動シリンダとして、油圧ホースの配管をなくして構造を簡素にするとともに、粉塵などに対する堅牢性を向上してもよい。
【0026】
なお、前記台車フレームが例えば2本のフォーク状の形状である場合には、前記先端部昇降シリンダ、第一昇降リンク、第二昇降リンク、第三昇降リンクおよびローラ車輪はフォークの数に合わせて複数設けてあることが好ましい。
【0027】
前記ローラ車輪は、第三昇降リンクの他端部に回動可能に支持される車輪アームと、この車輪アームの前後両端部に回動自在に取付けられた前後のローラとを備える場合(請求項4)には、各ローラにかかる荷重を分散することができ、それだけ重量のある車両を運搬することができる。また、前後のローラは床面の凹凸に柔軟に対応して車輪アームが傾くことにより、前後のローラを床面に確実に当接させて、台車フレームの先端部における搬送方向を安定させることができる。
【0028】
前記ローラは、その進行方向に対し横方向に並べて複数配置してある場合(請求項5)には、ローラを並べた数だけ各ローラにかかる荷重を小さくすることができ、それだけ重量のある車両を搬送することができる。また、ローラの横方向の幅を広げることができるのでそれだけ横方向の安定性が向上する。
【0029】
第2発明は、タイヤの幅程度の長さを有する棒体からなり支持状態においてはタイヤの接地部の前後両側に各々当接してタイヤを支持する一対のアーム部と、これらのアーム部を基端部において縦軸中心に回動自在に支持する一対の回動支持部と、一方の回動支持部に先端部が連結されたロッドの進退駆動によってアーム部を前記支持状態から90度(尚、この明細書ではほぼ90度の場合を含む)回動させてタイヤから離間させた解放状態まで回動させる回動シリンダと、一方の回動支持部の回動を逆回転に変換して他方の回動支持部に伝達する回動伝達部と、前記アーム部を上下方向に昇降移動させる昇降シリンダとを備える車両のリフト装置を、請求項1~請求項5のいずれかに記載のリフト搬送台車によって搬送されて床面に降ろされた車両の各タイヤの外側の側近部にそれぞれ配置させる縦列台車フレーム、および、
この縦列台車フレームを少なくとも車両の前後方向に移動可能とする駆動輪ユニットとを備えることを特徴とする縦列無人走行台車を提供する(請求項6)。
【0030】
前記外枠フレームは車両のタイヤの数および配置に合せて複数のリフト装置を各タイヤの側近部にそれぞれ配置させることができ、駆動輪ユニットによって少なくとも車両の前後方向に移動可能に構成されているから、リフト装置のアーム部を解放状態に位置させた状態では、車両の側近部の僅かな隙間に入り込むように、車両の前または後ろから車両に接近して、車両を整列させることができる。
【0031】
また、前記リフト搬送台車によって車両が外枠フレーム内に搬送されることにより、この車両の各タイヤの側近部の対応する位置に各リフト装置を配置させることができる。リフト搬送台車によって外枠フレーム内に車両を降ろさせた後に、縦列無人走行台車のアーム部を解放状態から支持状態に変位させ、昇降シリンダによって車両を持ち上げることができる。そして、前記縦列無人走行台車によって車両を持ち上げた状態ではリフト搬送台車は外枠フレームから離脱させて搬送対象車両の待機位置まで移動させることができる。
【0032】
次いで、車両を持ち上げた状態で駆動輪ユニットを用いてフレームを移動させることにより、縦列無人走行台車を用いて、車両を移動させることができる。多方、車両を移動させた後に、リフト装置の昇降シリンダによって車両を降ろし、アーム部を支持状態から解放状態に変位させることにより、縦列無人走行台車から車両を離脱させることができ、車両を既に整列させている車両に並べて配置することができる。一方、縦列無人走行台車は次の搬送対象車両の待機位置まで移動させることができる。
【0033】
前記駆動輪ユニットは、外周にその回転軸が駆動輪ユニットの進行方向に対して斜め方向に配置された複数のローラを配置してなるメカナムホイールを備えてなり、各駆動輪ユニットの回転速度を変えることにより移動方向を調節可能とする方向制御部を備える場合(請求項7)には、駆動輪ユニットによる移動方向を任意に制御でき、車両をあらゆる方向に移動可能として、自由度が増すことになる。
【0034】
第3発明は、前記リフト搬送台車を用いて車両搬入部に待機する車両を車両待機部近傍に待機させた前記縦列無人走行台車内まで搬送する搬送工程と、リフト搬送台車が縦列無人走行台車内に停止した状態で車両を降ろさせてリフト搬送台車を車両搬入部に移動させる帰還工程と、車両を持ち上げた縦列無人走行台車を車両待機部に並べて配置した状態で車両を降ろさせる配置工程と、車両を降ろした縦列無人走行台車を次の車両待機部近傍に移動させてリフト搬送台車が導入可能な導入空間をあけさせる待機位置変更工程とを実行させるシステム制御部とを備えることを特徴とする車両縦列駐車システムを提供する(請求項8)。
【0035】
前記リフト搬送台車を用いて前記車両搬入部に待機する車両を車両待機部近傍に待機させた前記縦列無人走行台車内まで搬送させる(搬送工程)ことができる。また、リフト搬送台車が縦列無人走行台車内に停止した状態で車両を降ろさせてリフト搬送台車を車両搬入部に移動させる(帰還工程)により、次の車両の搬送に備えることができる。一方、縦列無人走行台車のアーム部によって車両を持ち上げさせることにより縦列無人走行台車の移動によって車両を任意の方向に移動させて、車両待機部の他の車両に整列して配置した状態で車両を下ろさせることができる(配置工程)。
【0036】
その後、車両を降ろした縦列無人走行台車を次の車両待機部近傍に移動させることにより、リフト搬送台車が導入可能な導入空間を空けさせること(待機位置変更工程)により、リフト搬送台車が次の車両を縦列無人走行台車内に搬送可能とすることができる。
【0037】
これらの工程はシステム制御部によって制御されているので、リフト搬送台車および縦列無人走行台車を適正に制御して、車両を車両搬入部から車両待機部に移動させることができる。なお、車両縦列駐車システムはより効率的な車両の搬送を行なうためには複数のリフト搬送台車を備えることが好ましい。
【0038】
前記縦列無人走行台車はタイヤの接地部の前後両端に当接することにより車両を支持するアーム部とこのアーム部によって支持された車両を昇降シリンダによって昇降するリフト装置を備えることにより、縦列無人走行台車内に移動された車両をアーム部によって持ち上げることができ、また、床面に載置することができる。縦列無人走行台車は車両の載置を完了するとアーム部をタイヤから離間させて、縦列無人走行台車のフレーム内に収め、この縦列無人台車を次の車両待機部近傍に移動させることにより、次の車両を待機するのみであるから、車両一台分程度のわずかな移動であって、その消費電力を必要最小限に抑えることができ、縦列無人走行台車の構成を簡略化することができる。可及的に簡略化した縦列無人台車は車両側近の僅かな隙間に入ることが可能であるから、大きな作業空間を不要とし、車両待機部の領域を有効活用することができる。また、車両縦列駐車システムはより効率的な車両の搬送を行なうために複数の縦列無人走行台車を備えることが好ましい。
【0039】
システム制御部は車両縦列駐車システムを構成する全てのリフト搬送台車および縦列無人走行台車を制御するものであるから、リフト搬送台車および縦列無人走行台車に対して通信可能な通信部を備えるものであることが好ましく、車両縦列駐車システムを構成するシステム制御部は中央監視装置の演算処理部によって形成されるものであってもよい。
【0040】
第4発明は、前記リフト搬送台車を用いて車両搬入部に待機する車両を車両待機部近傍に待機させた前記縦列無人走行台車内まで搬送させ、リフト搬送台車が縦列無人走行台車内に停止した状態で車両を降ろさせてリフト搬送台車を車両搬入部に移動させ、車両を持ち上げた縦列無人走行台車を車両待機部に並べて配置した状態で車両を降ろさせ、車両を降ろした縦列無人走行台車を次の車両待機部近傍に移動させてリフト搬送台車が導入可能な導入空間をあけさせることを特徴とする車両縦列駐車方法を提供する(請求項9)。
【0041】
前記車両縦列駐車方法によれば、車両搬入部に搬送された車両を所定の車両待機部に順次搬送することができる。このとき、リフト搬送台車は車両搬入部から車両待機部までの車両の搬送を行なうのに必要十分な構成を可能な限り簡素かつコンパクトに形成しているので、それだけ、リフト搬送台車の構成を簡素に形成することができる。
【0042】
同様に、縦列無人走行台車はそのリフト装置を用いて車両待機部に搬送された車両を搬送台車から持ち上げて床面に降ろす車両の積み卸しを行い、次の車両待機部に移動するものであるから、長距離を移動する必要は無く、それだけ、縦列無人走行台車の構成を簡略化することができるので、車両の側近における僅かな隙間において車両を縦列搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両縦列駐車システムの構成を示す図である。
【
図2】前記車両縦列駐車システムに組み込まれる車両のリフト搬送台車の構成を示す斜視図である。
【
図3】前記リフト搬送台車を別の角度から見た斜視図である。
【
図4】前記リフト搬送台車のアーム部の解放状態を示す平面図である。
【
図5】前記リフト搬送台車のアーム部の支持状態を示す平面図である。
【
図7】前記リフト搬送台車に車両を搭載しない状態を示す側面図である。
【
図8】車両を持ち上げた状態における前記リフト搬送台車の構成を示す側面図である。
【
図9】
図1の車両縦列駐車システムに組み込まれる縦列無人走行台車の構成を示す斜視図である。
【
図10】
図1の車両縦列駐車システムの全体的な動作を説明する図である。
【
図11】前記リフト搬送台車の変形例のアーム部の解放状態を示す平面図である。
【
図12】
図11に示すリフト搬送台車のアーム部の支持状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施形態について説明する、
図1に示すように、本発明の第1実施形態にかかる車両縦列駐車システム1は、車両搬入部2に待機する車両3を搭載するリフト装置4を備えたリフト搬送台車5と、車両待機部6近傍に位置しリフト搬送台車5によって搬送された車両3のタイヤ3Aに当接して車両3を持ち上げるリフト装置8を備えた縦列無人走行台車7と、これらのリフト搬送台車5および縦列無人走行台車7に通信可能に接続されてこれらを制御するシステム制御部9とを備える。
【0045】
前記システム制御部9は、リフト搬送台車5を用いて前記車両搬入部2に待機する車両を車両待機部6近傍に待機させた縦列無人走行台車7内まで搬送する搬送工程と、リフト搬送台車5が縦列無人走行台車7内に停止した状態で車両3を降ろさせてリフト搬送台車5を車両搬入部2に移動させる帰還工程と、車両3を持ち上げた縦列無人走行台車7を車両待機部6に並べて配置した状態で車両3を降ろさせる配置工程と、車両3を降ろした縦列無人走行台車7を次の車両待機部6近傍に移動させてリフト搬送台車5が導入可能な導入空間をあけさせる待機位置変更工程とを実行させるものである。
【0046】
このシステム制御部9は例えば演算処理部9Aと、この演算処理部9Aによって実行可能なプログラムが記録される記録部9Bと、各搬送台車5の位置情報および車両待機部6の状態情報などの時々刻々と変化する情報を記録する記憶部9Cと、リフト搬送台車5および縦列無人走行台車7との通信を行なう通信部9Dとを備える。
【0047】
上述のように構成された車両縦列駐車システム1において、縦列無人走行台車7に設けた車両3のリフト装置8は、車両3のタイヤ3Aに当接して車両3を支持した状態で、車両3を上下方向に移動させるものである。
【0048】
以下、
図2~
図8を用いて前記リフト搬送台車5の構成を説明する。
図2、
図3に示すように、本発明のリフト搬送台車5は、タイヤ3Aの幅程度の長さを有する棒体からなり支持状態においてはタイヤ3Aの接地部の前後両側に各々当接してタイヤ3Aを支持可能とする一対のアーム部10と、これらのアーム部10を前記支持状態およびタイヤ3Aから離間した解放状態を切り替え可能に支持するアーム支持部11と、車両3の下部に挿入させた状態で各タイヤ3Aの内側の側近部に対応する位置にそれぞれ前記一対のアーム部10を配置させるように各アーム支持部11を支持する台車フレーム12と、前記各アーム部10の状態切り替えを連動させてタイヤ3Aの支持状態と解放状態を切り替える動力を供給するアーム駆動部13と、前記台車フレーム12に連結されて前記アーム部10によって支持された車両3を任意の方向に搬送可能とする複数の駆動輪ユニット14およびこれらの駆動輪ユニット13の操舵方向および回転速度の制御を行なう搬送制御部15を備えた台車本体16と、前記台車フレーム12の基端部12Aを台車本体16に対して昇降自在とする基端昇降部17と、前記台車フレーム12の先端部12Bに設けて床面Fに当接するローラ車輪18に対して先端部12Bを昇降自在とする先端昇降部19とを備える。
【0049】
台車本体16の搬送制御部15には前記システム制御部9の通信部9Dに対して搬送台車16の位置情報や走行速度、操舵方向などのステータス情報を送信すると共に、前記通信部9Dからの搬送方向および搬送速度などの受信する通信部を備え、台車本体16にはリフト搬送台車5によって使われる電力を供給するバッテリ16Bと、後述する油圧シリンダに対して動力源となる油を循環供給する油圧ポンプ16P(
図7,
図8に図示)と、万一障害物に衝突した場合に備えて台車本体16の前方となる部分に取付けられてなるクッション材16Aとを備える
【0050】
また、本実施形態において台車フレーム12は左右に平行に並べて配置された骨材からなり、前記先端昇降部19はこの左右の骨材にそれぞれに配置してある。
【0051】
図4,
図5に示すように、前記アーム支持部11は各アーム部10をその基端部において縦軸中心に回動自在に支持する回動支持部20であり、前記アーム駆動部13は、ロッドの進退駆動によって前記回動支持部20を支持状態から解放状態まで駆動する回動シリンダ21と、一端部が回動シリンダ21のロッドに連結し水平方向に回動自在に支持される第一支持リンク22と、この第一支持リンク21の回動中心に対する対称位置と前記回動支持部20にそれぞれ連結された一対の第二支持リンク23とを備えることが好ましい。
【0052】
すなわち、一つの回動シリンダ21のロッドを進退駆動することにより、第一支持リンク22を回動させることができ、これに伴って第一支持リンク22の回動中心に対して点対称に位置する第二支持リンク23との連結部が点対称位置を保ったまま回動するので、前記第二支持リンク23によって連結された回動支持部20が互いに逆方向に回動する。つまり、一つの回動シリンダ21によって一対のアーム部10を支持状態(
図5参照)からほぼ90°回転させた解放状態(
図4)まで変位させることができる。
【0053】
図4に示すように、上記構成のアーム部10を解放状態に位置させた状態では、アーム部10がリフト搬送台車5の長手方向に沿うように配置されるので、リフト搬送台車5を車両3のタイヤ3Aの内側に挿入するときに、アーム部10が邪魔になることがない。
【0054】
多方、
図5に示すように、アーム部10を支持状態に位置させた状態では、アーム部10がタイヤ3Aの接地面の前後両側にタイヤ3Aの回転軸に対して平行に配置される。すなわち、アーム部10を支持状態にした状態で台車フレーム12ごと持ち上げることにより、アーム部10がタイヤ3Aに当接して車両3を支持することができる。このとき、アーム部10の長さがタイヤ3Aの幅と同程度であるから、基端部(回動支持部20)にかかる回転トルクを必要最小限に抑えることができる。加えて、左右の両側のタイヤ3Aによって左右のアーム部10かかる回転トルクは互いに逆方向にかかるため、互いに打ち消し合うことにより、車両3運搬時における安定性が向上する。
【0055】
図6に示すように、本実施形態の前記基端昇降部17は、台車フレーム12の基端部12Aに設けた立設フレーム12Cを、前記台車本体16に対して上下方向にのみ摺動自在に連結支持する摺動連結部25と、前記台車フレーム12の上部分と台車本体16の下部分との間に連結して台車フレーム12を昇降駆動する基端部昇降シリンダ26とを備え、前記先端昇降部19は、一端が前記立設フレーム12Cの上部に傾倒可能に連結してロッドの進退駆動によって台車フレーム12の先端部12Bを床面Fから昇降させる動力を供給する先端部昇降シリンダ27を備える。
【0056】
図7、
図8に示すように、前記先端昇降部19はさらに先端部昇降シリンダ27のロッドに一端側が連結されてロッドの進退移動を回転移動に変換する、側面視略L字形状の第一昇降リンク28と、この第一昇降リンク28の他端側が連結されて略水平方向の進退移動を伝達する第二昇降リンク29と、中間部がこの第二昇降リンク29に連結されると共に一端部が台車フレーム12の先端部12Bに連結され他端部が前記ローラ車輪18に連結される第三昇降リンク30とを備える。
【0057】
上記構成の摺動連結部25は台車フレーム12の基端部12Aにおける台車本体移動を上下方向に限定する摺動連結部25を有するので台車フレーム12の昇降動作が安定すると共に、基端部昇降シリンダ26によって加えられる進退駆動の力を効率よく用いて、台車フレーム12を昇降させることができる。なお、本実施形態では台車フレーム12が2本のフォーク状のフレームによって形成されているので、前記先端部昇降シリンダ27および各昇降リンク28~30をそれぞれ2セット設けてある。
【0058】
また、先端部昇降シリンダ27とローラ車輪18の間に複数の昇降リンク28~30を備えることにより、台車フレーム12の先端部12Bにおける昇降操作を基端部12A側に配置された先端部昇降シリンダ27によって行なうことができるので、この先端部昇降シリンダ27と前記基端部昇降シリンダ26を台車フレーム12の基端部12A側にまとめて設けることができる。すなわち、各昇降シリンダ26,27は油圧シリンダによって形成することにより、容易に大きな力で台車フレーム12を昇降駆動することが可能であるが、油圧シリンダの動力源としての油圧ホースを短く形成して、構成の簡略化を図ることができる。
【0059】
前記ローラ車輪18は、第三昇降リンク30の他端部に回動可能に支持される車輪アーム31と、この車輪アーム31の前後両端部に回動自在に取付けられた前後のローラ18A,18Bとを備える。なお、前記ローラ車輪18は前後一対のローラ18A,18Bを車輪アーム31によって連結したものであり、かつ、これらのローラ18A,18Bは、その進行方向に対して横方向に2個並べて配置してある。
【0060】
図7に示すように、基端部昇降シリンダ26のロッドを縮退させることにより、台車フレーム12の基端部12Aを降ろすことができる。同時に、先端部昇降シリンダ27のロッドを伸張させることにより、第一昇降リンク28を図示反時計回りに回動させ、第二リンク29を図示右方向に押させることにより、第三リンク30を図示反時計回りに回動させて、ローラ車輪18に対する台車フレーム12の先端部12Bの高さを床面Fに接触しない程度に低くすることができる。
【0061】
他方、
図8に示すように、基端部昇降シリンダ26のロッドを伸張させることにより、台車フレーム12の基端部12Aを持ち上げることができる。同時に、先端部昇降シリンダ27のロッドを縮退させた状態では、第一昇降リンク28を図示時計回りに回動させ、第二リンク29を図示左方向に引っ張ることにより、第三リンク30を図示時計回りに回動させて、ローラ車輪18に対して台車フレーム12の先端部12Bを持ち上げることができる。
【0062】
すなわち、本発明のリフト搬送台車5では、台車フレーム12の基端部12Aと先端部12Bの両方において台車フレーム12を持ち上げるように駆動することにより、従来のもののように無理な応力に耐え得る程度の強度を持たせる必要がなく、それだけ、各部の構成を小型化することが可能となり、それだけ軽量化を達成して、無駄なエネルギの浪費を防止できる。また、リフト搬送台車5のエネルギー消費が小さくなればなるほど、リフト搬送台車5に搭載する電源容量も小さくすることができるので好ましい。
【0063】
なお、前記ローラ車輪18は前後一対のローラ18A,18Bを車輪アーム31によって連結したものであるから、床面Fの凹凸面に合わせて車輪アーム31が傾動することにより両ローラ18A,18Bに荷重を分散してかけることができる。加えて、ローラ18A,18Bは横方向にも2個並べて配置されいるので、それだけ各ローラ18A,18Bに分散して荷重をかけることができる。
【0064】
したがって、前記アーム部10によってタイヤ3Aを支持した状態で前記基端昇降部17と先端昇降部19を用いて台車フレーム12をその基端部12Aおよび先端部12Bの両方において床面から持ち上げることにより、車両3を持ち上げて床面Fから浮かせることができるので、台車本体16の移動方向に従ってリフト搬送台車5を移動させることができる。つまり、車両3を運転すること無く移動させることができる。
【0065】
台車本体16を構成する駆動輪ユニット14は台車本体16の四隅近傍に設けられるものであり、操舵方向を自在に変更可能なタイヤと、搬送速度を自在に制御可能なモータがタイヤに連結されている。前記台車フレーム12の先端部12Bにはローラ車輪18が形成されて、床面Fに対して前後方向の移動のみ可能となる。従って、台車フレーム12およびこれに搭載された車両3は台車本体16の移動に伴って、自由に操舵されて移動可能な台車本体16に牽引されるように移動することができる。
【0066】
したがって、車両搬入部2に待機する車両3と床面Fの間に台車フレーム12の先端部12Bを差し込むようにして導入し、各タイヤ3Aの内側の側近部にリフト装置4となるアーム部10をそれぞれ位置させた状態で、アーム部10をタイヤ3Aの接地部の前後両側に位置させるように回動させて、各一対のアーム部10によってタイヤ3Aを支持可能とし、車両3を持ち上げることにより、車両3を床面Fから浮き上がらせてこれをリフト搬送台車5によって搬送し、車両待機部6近傍に移動させることができる。
【0067】
なお、リフト搬送台車5は車両3の前または後ろから台車フレーム12を挿入させて、車両3を支持するためには、車両3の前または後ろに車両3の全長程度あるいはこれよりも大きな作業領域(導入空間)を設ける必要がある。故に、車両搬入部2と車両待機部6における車両3の向きを逆にしても良い場合には、リフト搬送台車5を用いて直接的に車両待機部6への車両の搬送を行なうことが可能であるが、車両3の向きを同じにする場合には、車両待機部6近傍において、縦列無人走行台車7への車両3の載せ替えを行なって、車両待機部6への縦列駐車を縦列無人走行台車7を用いて行なう必要がある。
【0068】
図9はこの縦列無人走行台車7の構成を示す図である。
図9に示すように、本実施形態の縦列無人走行台車7は、タイヤ3Aの幅程度の長さを有する棒体からなり支持状態においてはタイヤ3Aの接地部の前後両側に各々当接してタイヤを支持する一対のアーム部40と、このアーム部40を基端部において縦軸中心に回動自在に支持する一対の回動支持部41と、一方の回動支持部41に先端部が連結されたロッドの進退駆動によってアーム部を前記支持状態から90度(尚、この明細書ではほぼ90度の場合を含む)回動させてタイヤから離間させた解放状態まで回動させる回動シリンダ42と、一方の回動支持部の回動を逆回転に変換して他方の回動支持部に伝達する回動伝達部43と、前記アーム部40を上下方向に昇降移動させる昇降シリンダ44とを備える車両のリフト装置8を、前記リフト搬送台車5によって搬送されて床面Fに降ろされた車両3の各タイヤ3Aの外側の側近部にそれぞれ配置させる縦列台車フレーム45、および、このフレーム45を少なくとも車両3の前後方向に移動可能とする駆動輪ユニット46a~46dとを備える。
【0069】
また、前記駆動輪ユニット46a~46dは、外周にその回転軸が駆動輪ユニット46a~46dの回転方向に対して斜め方向に配置された複数のローラを配置してなるメカナムホイール47を備えており、各駆動輪ユニット46a~46dの回転速度を変えることにより縦列無人走行台車7の移動方向を調節可能とする方向制御部48を備える。なお、49は縦列台車フレーム45の各部に配置し、駆動輪ユニット46a~46dに動力源となる電力を供給するバッテリである。なお、回動伝達部43は一対のアーム部40を支持する各回動支持部41に設けたギヤにそれぞれ嵌合する偶数個の回動伝達ギアであることが考えられる。しかしながら、回動伝達部43としてリフト搬送台車5のリフト装置4と同様なリンク機構を用いてもよいことはいうまでもない。
【0070】
これらの駆動輪ユニット46a~46dは縦列台車フレーム45の長手方向に沿ってその下面に取り付けられ、前後両端の駆動輪ユニット46a,46dはその駆動源となるモータを上向きに配置することにより、縦列無人走行台車7の全長を短くするように構成している。他方、縦列無人走行台車7の中間部に配置される駆動輪ユニット46b,46cはモータを水平方向に形成することにより、縦列台車フレーム45の下部空間に納められるように構成している。
【0071】
前記メカナムホイール47は例えば、駆動輪ユニット46a,46cの樽状のローラの角度を、駆動輪ユニット46b,46dの樽状のローラの角度と90度異ならせることにより、駆動輪ユニット46a,46cの回転数と駆動輪ユニット46b,46dの回転数を僅かに異ならせて、縦列無人走行台車7を斜め方向に移動させることができる。同様に、左右のメカナムホイール47の回転方向を逆にすることにより、縦列無人走行台車7の方向変換も行うことができる。つまり、メカナムホイール47を用いることにより、縦列無人走行台車7の搬送方向や移動方向の調整を容易に行なうことが可能である。
【0072】
前記縦列台車制御部48は例えば前記システム制御部9と通信可能に構成された通信部と、縦列無人走行台車7の位置、搬送台車4の収容状況などを検知するセンサとを備えることが好ましく、これによって、縦列無人走行台車7内にリフト搬送台車5が収容された後に、リフト搬送台車5が縦列無人走行台車7内の所定位置に降ろした車両3を、前記リフト装置8を用いて持ち上げるべく回動シリンダ42によってアーム部40を支持状態にし、さらに昇降シリンダ44によってアーム部11を上昇させて、車両3を浮き上がらせる車両リフト工程を実行し、リフト搬送台車5を帰還させる帰還工程を実行させた後に、車両3を既に車両待機部6に整列して配置してある車両3に所定の間隔をあけて縦列駐車させるべく移動させて昇降シリンダ44を用いて降ろさせる配置工程を実行し、さらに、車両3を降ろした縦列無人走行台車7の回動シリンダ42によってアーム部40を解放状態に移動させて、次の車両待機部6近傍に移動させて前記リフト搬送台車5が導入可能など導入空間を空けさせる待機位置変更工程を実行することができる。
【0073】
図10は車両縦列駐車システム1の全体的な動作を説明する図である。
図10に示すように、前記リフト搬送台車5を用いて前記車両搬入部2に待機する車両3を車両待機部6近傍に待機させた前記縦列無人走行台車7内まで搬送させる。(搬送工程Ph1)
【0074】
その後、リフト搬送台車5が縦列無人走行台車7内に停止した状態で車両3を降ろさせてリフト搬送台車5を車両搬入部2に移動(帰還)させる。(帰還工程Ph2)
【0075】
一方、前記リフト装置8を用いて車両3を持ち上げた縦列無人走行台車7を車両待機部6に既に並べて配置されている既存の車両3に並べて配置した状態で、降ろさせる。(配置工程Ph3)
【0076】
その後、車両3を降ろした縦列無人走行台車7を次に搬送される車両3の導入のために、車両待機部6近傍に移動させてリフト搬送台車5が導入可能な導入空間をあけさせる。(待機位置変更工程Ph4)この待機位置変更工程Ph4の次に再び前記搬送工程Ph1に戻って順次生産される車両3を車両搬入部6に並べて配置することができる。
【0077】
上述の4つの工程Ph1~Ph4は
図1に示すシステム制御部9によって統括的に管理されて、順次実行されることにより、車両搬入部2に搬送された完成車両3を順次車両待機部6に整列させるように搬送することができる。システム制御部9において統括管理されることにより、複数のリフト搬送台車5を用いて、前記搬送工程Ph1を実行中のリフト搬送台車5と帰還工程Ph2を実行中のリフト搬送台車5を別々に設けることもでき、車両3の搬送を途切れることなく行うことも可能である。
【0078】
なお、
図1~
図10を用いて説明した上記構成の車両縦列駐車システム1は本願発明の実施形態の一つにすぎず、様々な変形が考えられる。
【0079】
図11,
図12は
図4,
図5を用いて説明したアーム支持部11、台車フレーム12、アーム駆動部13等の変形例を示す図である。以下、この変形例の構成を説明する。なお、
図1~
図10と同じ符号を付した部材は同一又は同等の部材であるから、その詳細な説明を省略して、重複説明を避ける。
【0080】
本例に示すリフト搬送台車50において、台車フレーム51は板状の表面を有する箱形の基材であり、その内部に一対のアーム部10を連結体52によって一体的に連結した状態で直線移動可能に支持する各一対の直線運動ガイド53を、アーム支持部11として有する。つまり、各アーム部10は水平方向に直線的に突出可能に支持されることにより、タイヤ3Aを支持して車両3を昇降可能とするリフト機構4の要部を構成する。
【0081】
また、アーム駆動部13として、ロッドの進退駆動によって4対のアーム部10を進退駆動可能に構成された摺動駆動シリンダ54と、この摺動駆動シリンダ54のロッドに連結されると共に、連動リンク55によって連結されることにより、前後のタイヤ3Aに対応する位置において同じ角度で傾動する一対の第一摺動駆動リンク56と、これらの第一摺動駆動リンク56と一体的に取付けられて同じように傾動する一対の第二摺動駆動リンク57と、これらの第二摺動駆動リンク57の両先端部に一端が連結されると共に他端が前記連結体52に傾動可能に連結された第三摺動リンク58とを備える。また、台車フレーム51の先端部51Bには、その幅方向両端部にローラ18A,18Bを配置させるローラ車輪18を形成している。
【0082】
図11に示すように、本例のように構成されたリフト搬送台車50では、摺動駆動シリンダ54のロッドを縮退させることにより、第一摺動駆動リンク56および第二摺動駆動リンク57を反時計回りに回動させることができるので、第三摺動駆動リンク58によって連結体52を台車フレーム51の中心側に引っ張ることができ、アーム部10を台車フレーム51内に収容するように縮退させることができる。
【0083】
他方、
図12に示すように、リフト搬送台車50を車両3の下に潜り込ませて、各タイヤ3Aの内側の側近部にリフト機構4を配置させた状態で、摺動駆動シリンダ54のロッドを伸張させることにより、第一摺動駆動リンク56および第二摺動駆動リンク57を時計回りに回動させることができるので、第三摺動駆動リンク58によって連結体52を台車フレーム51の左右両側に押し出すことができ、アーム部10を台車フレーム51から突出させて、各タイヤ3Aの接地面の前後両側においてタイヤ3Aを支持可能とすることができる。
【0084】
アーム部10の進退駆動は水平方向の移動であるから、このアーム部10に車両3の荷重がかかったとしてもアーム部10を縮退させる方向に力が加わることがないため、前記摺動駆動シリンダ54によって大きな動力を与える必要は無く、それだけ、構成の簡素化を達成することが可能である。
【0085】
また、前記ローラ18A,18Bを台車フレーム51の幅方向両端部にも設けることにより、車両3を搭載した状態における先端部51Bの安定性を向上させることも可能となる。
【0086】
上述のように本発明には様々な変形が考えられるものであり、例えば油圧シリンダに替えて、油圧配管を不要とし堅牢性に優れた電動シリンダを用いるなどの変形や、リンク機構に替えて、ギヤやベルトによる連動によって各アーム部10の支持状態と解放状態を切り替えられるようにするなどの変形例も容易に考えられることはいうまでもない。
【0087】
また、前述の各実施形態において車両3のタイヤ3Aの位置(ホイルベース、トレッド)に合わせて、各リフト装置4,8の位置を調節可能としてもよい。すなわち、ホイルベースの長さに合わせてリフト装置4,8を前後方向に移動可能に支持させる構造を備えるものであることが考えられる。さらに、前記車輪3のトレッド幅に合わせて、アーム部を幅方向に伸縮移動可能に支持させる構造を備えるもの、または、アーム部10の長さを調節可能に支持するものであってもよい。
【0088】
上述のようにタイヤ3Aのホイルベースおよびまたはトレッドに合わせてリフト機構4,8の位置を変更可能とすることにより、リフト搬送台車5,50の汎用性を高めることができ、様々な車両3を搬送することが可能となる。
【符号の説明】
【0089】
1 車両縦列駐車システム
2 車両搬入部
3 車両
3A タイヤ
4,8 リフト装置
5,50 リフト搬送台車
6 車両待機部
7 縦列無人走行台車
9 システム制御部
10 アーム部
11 アーム支持部
12,51 台車フレーム
13 アーム駆動部
14 駆動輪ユニット
15 搬送制御部
16 台車本体
17 基端昇降部
18 ローラ車輪
18A,18B ローラ
19 先端昇降部
20 回動支持部
21 回動シリンダ
22 第一支持リンク
23 第二支持リンク
25 摺動連結部
26 基端部昇降シリンダ
27 先端部昇降シリンダ
28 第一昇降リンク
29 第二昇降リンク
30 第三昇降リンク
31 車輪アーム
40 アーム部
41 回動支持部
42 回動シリンダ
43 回動伝達部
44 昇降シリンダ
45 縦列台車フレーム
46a~46d 駆動輪ユニット
47 メカナムホイール