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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】作業車輌
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/439 20100101AFI20220106BHJP
   B60K 20/02 20060101ALI20220106BHJP
   B60K 20/00 20060101ALI20220106BHJP
   F16H 47/04 20060101ALI20220106BHJP
   A01D 69/06 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
F16H61/439
B60K20/02 D
B60K20/00 F
B60K20/02 H
F16H47/04 C
A01D69/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017219961
(22)【出願日】2017-11-15
(65)【公開番号】P2019090485
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000125853
【氏名又は名称】株式会社 神崎高級工機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】特許業務法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】清岡 晃司
(72)【発明者】
【氏名】辻 智之
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-190069(JP,A)
【文献】特開2002-347463(JP,A)
【文献】特開2008-039087(JP,A)
【文献】実開昭58-112637(JP,U)
【文献】特開2002-168320(JP,A)
【文献】特開2005-125857(JP,A)
【文献】実開昭63-180378(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/439
B60K 20/00-20/02
F16H 47/00-47/12
A01D 69/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、前記駆動源から入力される回転動力を無段変速して出力するHSTと、前記駆動源からの回転動力及び前記HSTからの回転動力をそれぞれ第1及び第2要素に入力し、前記第1及び第2要素の回転動力を合成して第3要素から出力する遊星歯車機構と、前記遊星歯車機構から出力される回転動力によって作動的に駆動される走行部材と、前記HSTを変速操作する変速操作レバーとを備えた作業車輌であって、
前記遊星歯車機構の第3要素に選択的に制動力を付加し得るブレーキ機構と、
前記HSTにおける一対の作動油ラインの間の遮断及び連通を切替可能なバイパス機構とを備え、
前記変速操作レバーは、ゼロ速位置を挟んで前進側及び後進側へ第1操作方向に沿っ変速操作に加えて、ゼロ速位置から前記第1操作方向とは異なる第2操作方向に沿ってブレーキ位置への操作及びブレーキ位置から第1操作方向に沿ってバイパス位置への操作が可能とされ、
前記HST及び前記遊星歯車機構は、前記変速操作レバーがゼロ速位置に位置されると前記遊星歯車機構から出力される回転動力がゼロ速となり、前記変速操作レバーがゼロ速位置から前進側及び後進側へ操作されるに従って、前記遊星歯車機構から出力される回転動力が前進側及び後進側へそれぞれ増速されるように、構成されており
記変速操作レバーが前記第1操作方向に沿っ変速操作されている際には、前記ブレーキ機構は前記第3要素への制動力を解除し、且つ、前記バイパス機構は前記一対の作動油ラインの間を遮断し
前記変速操作レバーがブレーキ位置へ操作されると、前記ブレーキ機構は前記第3要素に制動力を付加し、且つ、前記バイパス機構は前記一対の作動油ラインの間を連通させ、
前記変速操作レバーがバイパス位置へ操作されると、前記バイパス機構による前記一対の作動油ラインの間の連通は維持されたままで、前記ブレーキ機構による前記第3要素への制動力が解除されるように構成されていることを特徴とする作業車輌。
【請求項2】
駆動源と、前記駆動源から入力される回転動力を無段変速して出力するHSTと、前記駆動源からの回転動力及び前記HSTからの回転動力をそれぞれ第1及び第2要素に入力し、前記第1及び第2要素の回転動力を合成して第3要素から出力する遊星歯車機構と、前記遊星歯車機構から出力される回転動力によって作動的に駆動される走行部材と、前記HSTを変速操作する変速操作レバーとを備えた作業車輌であって、
前記遊星歯車機構の第3要素に選択的に制動力を付加し得るブレーキ機構と、
前記HSTにおける一対の作動油ラインの間の遮断及び連通を切替可能なバイパス機構を備え、
前記変速操作レバーは、ゼロ速位置を挟んで前進側及び後進側へ第1操作方向に沿った変速操作に加えて、ゼロ速位置から前記第1操作方向とは異なる第2操作方向に沿ってブレーキ位置への操作及びゼロ速位置から第2操作方向に沿ってブレーキ位置とは反対側のバイパス位置へ操作可能とされており、
前記HST及び前記遊星歯車機構は、前記変速操作レバーがゼロ速位置に位置されると前記遊星歯車機構から出力される回転動力がゼロ速となり、前記変速操作レバーがゼロ速位置から前進側及び後進側へ操作されるに従って、前記遊星歯車機構から出力される回転動力が前進側及び後進側へそれぞれ増速されるように、構成されており、
前記ブレーキ機構は、前記変速操作レバーが前記第1操作方向に沿って変速操作されている際には前記第3要素への制動力を解除しつつ、前記変速操作レバーがブレーキ位置へ操作されると前記第3要素に制動力を付加するように構成され、
前記変速操作レバーが第1操作方向に沿って変速操作されている際には、前記ブレーキ機構は前記第3要素への制動力を解除し、且つ、前記バイパス機構は前記一対の作動油ラインの間を遮断し、
前記変速操作レバーがブレーキ位置へ操作されると、前記ブレーキ機構は前記第3要素に制動力を付加し、且つ、前記バイパス機構は前記一対の作動油ラインの間を連通させ、
前記変速操作レバーがバイパス位置へ操作されると、前記ブレーキ機構は前記第3要素への制動力を解除し、且つ、前記バイパス機構が前記一対の作動油ラインの間を連通することを特徴とする作業車輌。
【請求項3】
駆動源と、前記駆動源から入力される回転動力を無段変速して出力するHSTと、前記駆動源からの回転動力及び前記HSTからの回転動力をそれぞれ第1及び第2要素に入力し、前記第1及び第2要素の回転動力を合成して第3要素から出力する遊星歯車機構と、前記遊星歯車機構から出力される回転動力によって作動的に駆動される走行部材と、前記HSTを変速操作する変速操作レバーとを備えた作業車輌であって、
前記HSTにおける一対の作動油ラインの間の遮断及び連通を切替可能なバイパス機構と、
前記遊星歯車機構の第3要素に選択的に制動力を付加するブレーキ機構とを備え、
前記変速操作レバーは、ゼロ速位置を挟んで前進側及び後進側へ第1操作方向に沿っ変速操作に加えて、ゼロ速位置から前記第1操作方向とは異なる第2操作方向に沿ってバイパス位置への操作及びバイパス位置からゼロ速位置とは異なる方向のブレーキ位置への操作が可能とされ、
前記HST及び前記遊星歯車機構は、前記変速操作レバーがゼロ速位置に位置されると前記遊星歯車機構から出力される回転動力がゼロ速となり、前記変速操作レバーがゼロ速位置から前進側及び後進側へ操作されるに従って、前記遊星歯車機構から出力される回転動力が前進側及び後進側へそれぞれ増速されるように、構成されており
記変速操作レバーが前記第1操作方向に沿っ変速操作されている際には、前記バイパス機構は前記一対の作動油ラインの間を遮断し、且つ、前記ブレーキ機構は前記第3要素への制動力を解除し
前記変速操作レバーがバイパス位置へ操作されると、前記バイパス機構は前記一対の作動油ラインの間を連通し、且つ、前記ブレーキ機構は前記第3要素への制動力を解除し、
前記変速操作レバーがブレーキ位置に位置されると、前記バイパス機構による前記一対の作動油ラインの間の連通を維持しつつ、前記ブレーキ機構が前記第3要素に制動力を付加するように構成されていることを特徴とする作業車輌。
【請求項4】
前記変速操作レバーは、軸線回り回転自在に支持された第1操作軸と、前記第1操作軸に直交状態で支持された第2操作軸と、人為操作されるレバー本体と、前記レバー本体の基端部を前記第2操作軸に連結させる接続部材とを有し、前記レバー本体、前記接続部材、前記第2操作軸及び前記第1操作軸が一体的に前記第1操作軸の軸線回りに回動されることで前記第1操作方向に沿った変速操作が行われる一方で、前記レバー本体及び前記接続部材が前記第2操作軸の軸線回りに回動されることで前記第2操作方向に沿った操作が行われることを特徴とする請求項1からの何れかに記載の作業車輌。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静油圧式無段変速機構(HST)及び遊星歯車機構を有する静油圧・機械式無段変速構造(HMT構造)を備えた作業車輌に関する。
【背景技術】
【0002】
HST及び遊星歯車機構を組み合わせてなるHMT構造は、コンバインやトラクタ等の作業車輌の走行系伝動経路に利用されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、HSTが逆転側最高速及び中立速の間の設定中間速に変速されることにより遊星歯車機構の出力回転動力がゼロ速とされ、前記HSTが設定中間速から逆転側最高速へ変速されるに従って前記遊星歯車機構の出力回転動力が後進側に増速され且つ前記HSTが設定中間速から中立速を介して正転側最高速へ変速されるに従って前記遊星歯車機構の出力が前進側に増速されるように構成されたHMT構造が、走行系伝動経路に介挿されたコンバインが開示されている。
【0004】
前記特許文献1に記載のコンバインは、別途に前後進切換機構を備えることなく、前記HSTの変速操作によって前後進双方向に走行できる点において有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5822761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来のコンバインには、前記HMT構造の出力をゼロ速状態(前記遊星歯車機構の出力回転動力がゼロ速状態)として、走行停止状態を現出させるのが困難であるという問題があった。
【0007】
即ち、前記従来のコンバインにおいて前記HMT構造の出力をゼロ速状態とする為には、前記HSTを変速操作する為の変速操作レバーを、前記HSTの設定中間速に対応した設定中間速位置に位置させた際に、前記HSTの出力回転動力が正確に設定中間速となるように、前記HST並びに前記HST及び前記変速操作レバーのリンク機構を製造する必要があり、さらに、前記HSTから設定中間速の出力回転動力を入力した際に前記遊星歯車機構の出力回転動力がゼロ速となるように、前記HST及び前記遊星歯車機構を厳密に製造し、組み立てる必要がある。
【0008】
また、前記従来のコンバインのように、走行部材が前記HMT構造の出力回転動力によって作動的に回転駆動される作業車輌においては、故障時等において前記作業車輌を牽引することが困難であるという問題もあった。
【0009】
即ち、前記HMT構造を備えた作業車輌を牽引すると、前記走行部材の回転によって前記走行部材に作動連結されている前記HSTの油圧モータが強制的に回転される。ここで、前記油圧モータが一対の作動油ラインを介して流体接続されている前記HSTの油圧ポンプは、エンジン等の駆動源に作動連結されており、自由には回転できない状態となっている。
【0010】
従って、前記作業車輌の牽引時に前記走行部材の回転に伴って前記油圧モータが強制回転されると、前記駆動源との作動連結によって前記油圧ポンプが回転不能とされている状態で、前記一対の作動油ラインの一方に前記油圧モータからの吐出油が流れ込むことになり、前記一方の作動油ラインの油圧によって前記油圧モータの回転が阻害されることになる。
【0011】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、HST及び遊星歯車機構を含むHMT構造の出力回転動力によって走行部材が作動的に回転駆動される作業車輌であって、前記HMT構造の出力によって前記走行部材を前後進双方向に回転駆動することができ、さらに、前記作業車輌が意に反してクリープ速で移動することを確実に防止することができる作業車輌の提供を目的とする。
【0012】
また、本発明は、HST及び遊星歯車機構を含むHMT構造の出力回転動力によって走行部材が作動的に回転駆動される作業車輌であって、前記HMT構造の出力によって前記走行部材を前後進双方向に回転駆動することができ、さらに、故障時等における牽引を容易に行うことができる作業車輌の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1態様は、前記目的を達成する為に、駆動源と、前記駆動源から入力される回転動力を無段変速して出力するHSTと、前記駆動源からの回転動力及び前記HSTからの回転動力をそれぞれ第1及び第2要素に入力し、前記第1及び第2要素の回転動力を合成して第3要素から出力する遊星歯車機構と、前記遊星歯車機構から出力される回転動力によって作動的に駆動される走行部材と、前記HSTを変速操作する変速操作レバーとを備えた作業車輌であって、前記遊星歯車機構の第3要素に選択的に制動力を付加し得るブレーキ機構と、前記HSTにおける一対の作動油ラインの間の遮断及び連通を切替可能なバイパス機構とを備え、前記変速操作レバーは、ゼロ速位置を挟んで前進側及び後進側へ第1操作方向に沿っ変速操作に加えて、ゼロ速位置から前記第1操作方向とは異なる第2操作方向に沿ってブレーキ位置への操作及びブレーキ位置から第1操作方向に沿ってバイパス位置への操作が可能とされ、前記HST及び前記遊星歯車機構は、前記変速操作レバーがゼロ速位置に位置されると前記遊星歯車機構から出力される回転動力がゼロ速となり、前記変速操作レバーがゼロ速位置から前進側及び後進側へ操作されるに従って、前記遊星歯車機構から出力される回転動力が前進側及び後進側へそれぞれ増速されるように、構成されており、前記変速操作レバーが前記第1操作方向に沿っ変速操作されている際には、前記ブレーキ機構は前記第3要素への制動力を解除し、且つ、前記バイパス機構は前記一対の作動油ラインの間を遮断し、前記変速操作レバーがブレーキ位置へ操作されると、前記ブレーキ機構は前記第3要素に制動力を付加し、且つ、前記バイパス機構は前記一対の作動油ラインの間を連通させ、前記変速操作レバーがバイパス位置へ操作されると、前記バイパス機構による前記一対の作動油ラインの間の連通は維持されたままで、前記ブレーキ機構による前記第3要素への制動力が解除されるように構成されている作業車輌を提供する。
【0014】
また、本発明の第2態様は、駆動源と、前記駆動源から入力される回転動力を無段変速して出力するHSTと、前記駆動源からの回転動力及び前記HSTからの回転動力をそれぞれ第1及び第2要素に入力し、前記第1及び第2要素の回転動力を合成して第3要素から出力する遊星歯車機構と、前記遊星歯車機構から出力される回転動力によって作動的に駆動される走行部材と、前記HSTを変速操作する変速操作レバーとを備えた作業車輌であって、前記遊星歯車機構の第3要素に選択的に制動力を付加し得るブレーキ機構と、前記HSTにおける一対の作動油ラインの間の遮断及び連通を切替可能なバイパス機構とを備え、前記変速操作レバーは、ゼロ速位置を挟んで前進側及び後進側へ第1操作方向に沿った変速操作に加えて、ゼロ速位置から前記第1操作方向とは異なる第2操作方向に沿ってブレーキ位置への操作及びゼロ速位置から第2操作方向に沿ってブレーキ位置とは反対側のバイパス位置への操作が可能とされており、前記HST及び前記遊星歯車機構は、前記変速操作レバーがゼロ速位置に位置されると前記遊星歯車機構から出力される回転動力がゼロ速となり、前記変速操作レバーがゼロ速位置から前進側及び後進側へ操作されるに従って、前記遊星歯車機構から出力される回転動力が前進側及び後進側へそれぞれ増速されるように、構成されており、前記ブレーキ機構は、前記変速操作レバーが前記第1操作方向に沿って変速操作されている際には前記第3要素への制動力を解除しつつ、前記変速操作レバーがブレーキ位置へ操作されると前記第3要素に制動力を付加するように構成され、前記変速操作レバーが前記第1操作方向に沿って変速操作されている際には、前記ブレーキ機構は前記第3要素への制動力を解除し、且つ、前記バイパス機構は前記一対の作動油ラインの間を遮断し、前記変速操作レバーがブレーキ位置へ操作されると、前記ブレーキ機構は前記第3要素に制動力を付加し、且つ、前記バイパス機構は前記一対の作動油ラインの間を連通させ、前記変速操作レバーがバイパス位置へ操作されると、前記ブレーキ機構は前記第3要素への制動力を解除し、且つ、前記バイパス機構が前記一対の作動油ラインの間を連通する作業車輌を提供する。
【0015】
また、本発明の第3態様は、駆動源と、前記駆動源から入力される回転動力を無段変速して出力するHSTと、前記駆動源からの回転動力及び前記HSTからの回転動力をそれぞれ第1及び第2要素に入力し、前記第1及び第2要素の回転動力を合成して第3要素から出力する遊星歯車機構と、前記遊星歯車機構から出力される回転動力によって作動的に駆動される走行部材と、前記HSTを変速操作する変速操作レバーとを備えた作業車輌であって、前記HSTにおける一対の作動油ラインの間の遮断及び連通を切替可能なバイパス機構と、前記遊星歯車機構の第3要素に選択的に制動力を付加するブレーキ機構とを備え、前記変速操作レバーは、ゼロ速位置を挟んで前進側及び後進側へ第1操作方向に沿った変速操作に加えて、ゼロ速位置から前記第1操作方向とは異なる第2操作方向に沿ってバイパス位置への操作及びバイパス位置からゼロ速位置とは異なる方向のブレーキ位置への操作が可能とされ、前記HST及び前記遊星歯車機構は、前記変速操作レバーがゼロ速位置に位置されると前記遊星歯車機構から出力される回転動力がゼロ速となり、前記変速操作レバーがゼロ速位置から前進側及び後進側へ操作されるに従って、前記遊星歯車機構から出力される回転動力が前進側及び後進側へそれぞれ増速されるように、構成されており、前記変速操作レバーが前記第1操作方向に沿って変速操作されている際には、前記バイパス機構は前記一対の作動油ラインの間を遮断し、且つ、前記ブレーキ機構は前記第3要素への制動力を解除し、前記変速操作レバーがバイパス位置へ操作されると、前記バイパス機構は前記一対の作動油ラインの間を連通し、且つ、前記ブレーキ機構は前記第3要素への制動力を解除し、前記変速操作レバーがブレーキ位置に位置されると、前記バイパス機構による前記一対の作動油ラインの間の連通を維持しつつ、前記ブレーキ機構が前記第3要素に制動力を付加するように構成されている作業車輌を提供する。
【0016】
記種々の構成に係る作業車輌において、好ましくは、前記変速操作レバーは、軸線回り回転自在に支持された第1操作軸と、前記第1操作軸に直交状態で支持された第2操作軸と、人為操作されるレバー本体と、前記レバー本体の基端部を前記第2操作軸に連結させる接続部材とを有するものとされ、前記レバー本体、前記接続部材、前記第2操作軸及び前記第1操作軸が一体的に前記第1操作軸の軸線回りに回動されることで前記第1操作方向に沿った変速操作が行われる一方で、前記レバー本体及び前記接続部材が前記第2操作軸の軸線回りに回動されることで前記第2操作方向に沿った操作が行われるように構成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1態様に係る作業車輌によれば、遊星歯車機構の出力要素である第3要素に選択的に制動力を付加可能なブレーキ機構と、HSTにおける一対の作動油ラインの間の遮断及び連通を切替可能なバイパス機構とが備えられ、変速操作レバーがゼロ速位置を挟んで前進側及び後進側へ第1操作方向に沿っ変速操作に加えて、ゼロ速位置から第1操作方向とは異なる第2操作方向に沿ってブレーキ位置へ操作及びブレーキ位置から第1操作方向に沿ってバイパス位置への操作が可能とされており、HST及び遊星歯車機構によって形成されるHMT構造は、前記変速操作レバーがゼロ速位置に位置されると出力がゼロ速となり、前記変速操作レバーがゼロ速位置から前進側及び後進側へそれぞれ操作されるに従って出力が前進側及び後進側へ増速するように構成されており、前記変速操作レバーが第1操作方向に沿って変速操作されている際には、前記ブレーキ機構は制動力を解除し、且つ、前記バイパス機構は前記一対の作動油ラインの間を遮断し、前記変速操作レバーがブレーキ位置へ操作されると、前記ブレーキ機構は制動力を付加し、且つ、前記バイパス機構は前記一対の作動油ラインの間を連通させ、前記変速操作レバーがバイパス位置へ操作されると、前記バイパス機構による前記一対の作動油ラインの間の連通は維持されたままで、前記ブレーキ機構は制動力を解除するように構成されているので、前記作業車輌が操縦者の意に反してクリープ速で移動することを確実に防止することができる。
【0018】
本発明の第2態様に係る作業車輌によれば、遊星歯車機構の出力要素である第3要素に選択的に制動力を付加可能なブレーキ機構と、HSTにおける一対の作動油ラインの間の遮断及び連通を切替可能なバイパス機構とが備えられ、遊星歯車機構の出力要素である第3要素に選択的に制動力を付加可能なブレーキ機構と、HSTにおける一対の作動油ラインの間の遮断及び連通を切替可能なバイパス機構とが備えられ、変速操作レバーがゼロ速位置を挟んで前進側及び後進側へ第1操作方向に沿った変速操作に加えて、ゼロ速位置から第1操作方向とは異なる第2操作方向に沿ってブレーキ位置への操作及びゼロ速位置から第2操作方向に沿ってブレーキ位置とは反対側のバイパス位置への操作が可能とされており、HST及び遊星歯車機構によって形成されるHMT構造は、前記変速操作レバーがゼロ速位置に位置されると出力がゼロ速となり、前記変速操作レバーがゼロ速位置から前進側及び後進側へそれぞれ操作されるに従って出力が前進側及び後進側へ増速するように構成されており、前記変速操作レバーが第1操作方向に沿って変速操作されている際には、前記ブレーキ機構は制動力を解除し、且つ、前記バイパス機構は前記一対の作動油ラインの間を遮断し、前記変速操作レバーがブレーキ位置へ操作されると、前記ブレーキ機構は制動力を付加し、且つ、前記バイパス機構は前記一対の作動油ラインの間を連通させ、前記変速操作レバーがバイパス位置へ操作されると、前記ブレーキ機構は制動力を解除し、且つ、前記バイパス機構は前記一対の作動油ラインの間を連通するように構成されているので、前記作業車輌が操縦者の意に反してクリープ速で移動することを確実に防止することができる。
【0019】
本発明の第態様に係る作業車輌によれば、HSTにおける一対の作動油ラインの間の遮断及び連通を切替可能なバイパス機構と、遊星歯車機構の第3要素に選択的に制動力を付加するブレーキ機構とが備えられ、変速操作レバーがゼロ速位置を挟んで前進側及び後進側へ第1操作方向に沿っ変速操作に加えて、ゼロ速位置から第1操作方向とは異なる第2操作方向に沿ってバイパス位置へ操作及びバイパス位置からゼロ速位置とは異なる方向のブレーキ位置への操作が可能とされており、HST及び遊星歯車機構によって形成されるHMT構造は、前記変速操作レバーがゼロ速位置に位置されると出力がゼロ速となり、前記変速操作レバーがゼロ速位置から前進側及び後進側へそれぞれ操作されるに従って出力が前進側及び後進側へ増速するように構成されており、前記変速操作レバーが第1操作方向に沿った変速操作されている際には、前記バイパス機構は前記一対の作動油ラインの間を遮断し、且つ、前記ブレーキ機構は制動力を解除し、前記変速操作レバーがバイパス位置へ操作されると、前記バイパス機構は前記一対の作動油ラインの間を連通し、且つ、前記ブレーキ機構は前記第3要素への制動力を解除し、前記変速操作レバーがブレーキ位置に位置されると、前記バイパス機構による前記一対の作動油ラインの間の連通を維持しつつ、前記ブレーキ機構は制動力を付加するように構成されているので、前記作業車輌の走行部材に作動連結されている前記遊星歯車機構を回転自在なフリー状態とすることによって、前記作業車輌の強制牽引可能状態を容易に現出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係る作業車輌の伝動模式図である。
図2図2は、図1に示す前記作業車輌に備えられたHMT構造の横断面図である。
図3図3は、図2におけるIII-III線に沿った断面図である。
図4図4は、前記作業車輌の油圧回路図である。
図5図5(a)及び(b)は、それぞれ、前記作業車輌に備えられた変速操作レバーの正面図及び側面図である。
図6図6は、前記変速操作レバーの平面図である。
図7図7は、前記実施の形態の第1変形例に係る作業車輌に備えられた変速操作レバーの平面図である。
図8図8は、前記実施の形態の第2変形例に係る作業車輌に備えられた変速操作レバーの平面図である。
図9図9は、本発明の他の実施の形態に係る作業車輌に備えられた変速操作レバーの平面図である。
図10図10は、前記実施の形態におけるブレーキ機構の変形例を備えたHMT構造の部分横断面図である。
図11図11は、図10におけるXI-XI線に沿った断面図である。
図12図12は、前記実施の形態におけるブレーキ機構の他の変形例を備えたHMT構造の部分横断面図である。
図13図13は、図12におけるXIII-XIII線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施の形態1
以下、本発明に係る作業車輌の一実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施の形態に係る作業車輌1の伝動模式図を示す。
【0022】
図1に示すように、本実施の形態に係る前記作業車輌1は、駆動源5と、前記駆動源5から入力される回転動力を無段変速して出力するHST(静油圧式無段変速機構)10と、前記HST10と共働してHMT構造(構造静油圧・機械式無段変速構造)200を形成する遊星歯車機構100と、前記遊星歯車機構100から出力される回転動力によって作動的に駆動される走行部材6とを備えている。
【0023】
図2に、前記HMT構造200の横断面図を示す。
また、図3に、図2におけるIII-III線に沿った断面図を示す。
さらに、図4に、前記作業車輌1の油圧回路図を示す。
【0024】
図1図2及び図4に示すように、前記HST10は、前記駆動源5によって作動的に回転駆動されるポンプ軸20と、前記ポンプ軸20に相対回転不能に支持された油圧ポンプ25と、前記油圧ポンプ25に一対の作動油ライン601、602を介して流体接続されて前記油圧ポンプ25によって油圧的に回転駆動される油圧モータ35と、前記油圧モータ35を相対回転不能に支持するモータ軸30と、前記油圧ポンプ25及び前記油圧モータ35の少なくとも一方の容積を変更させて、前記ポンプ軸20に入力される回転動力の回転速度に対する、前記モータ軸30から出力されるHST出力の回転速度の割合(即ち、HST10の変速比)を無段変化させる出力調整部材40とを有している。
【0025】
前記出力調整部材40は、前記作業車輌1に人為操作可能に備えられる変速操作レバー700Aへの人為操作に応じて、前記モータ軸30から出力されるHST出力を正逆双方向に亘る変速範囲内にて無段変速させるように構成されている。
【0026】
本実施の形態においては、前記HST10は、前記出力調整部材40として、揺動軸回りに揺動されることで前記油圧ポンプ25の容積を変更する可動斜板であって、前記油圧ポンプ25から吐出される吐出量をゼロとする中立位置を挟んで揺動軸回り一方側及び他方側へ揺動可能とされた可動斜板を有している。
【0027】
前記可動斜板が中立位置に位置されると、前記油圧ポンプ25からの圧油の吐出が無くなり、前記油圧モータ35は出力ゼロ速状態となる。
そして、前記可動斜板が中立位置から揺動軸回り一方側の正転側へ揺動されると、前記油圧ポンプ25から前記一対の作動油ライン601、602のうちの対応する作動油ライン(例えば、作動油ライン601)へ圧油が供給され、当該対応する作動油ライン601が高圧側となり、他方の作動ライン602が低圧側となる。
これにより、前記油圧モータ35が正転側へ回転駆動される。
【0028】
逆に、前記可動斜板が中立位置から揺動軸回り他方側の逆転側へ揺動されると、前記油圧ポンプ25から前記一対の作動油ライン601、602のうちの対応する作動油ライン(例えば、作動油ライン602)へ圧油が供給され、当該対応する作動油ライン602が高圧側となり、他方の作動油ライン601が低圧側となる。
これにより、前記油圧モータ35が逆転側へ回転駆動される。
【0029】
なお、前記HST10においては、前記油圧モータ35は固定斜板によって容積が固定されている。
【0030】
本実施の形態においては、前記HST10は、さらに、前記駆動源5によって作動的に回転駆動される補助ポンプ81を含む補助ポンプユニット80と、前記補助ポンプ81からの圧油を前記一対の作動油ライン601、602に供給するチャージ機構610と、前記変速操作レバー700Aへの人為操作に応じて前記出力調整部材40を作動させるHST変速作動機構750とを有している。
【0031】
図4に示すように、前記補助ポンプ81は、油タンク(図示せず)から吸入ライン(図示せず)を介して油を吸引し且つ圧油供給ライン605に圧油を吐出する。
前記圧油供給ライン605は、前記補助ポンプ81を囲繞する補助ポンプケース83に形成された補助ポンプケース側油路と、前記補助ポンプケース83が着脱自在に連結される下記HMTハウジング210の下記第1蓋部材240に形成され、一端部が前記補助ポンプケース側油路に流体接続され且つ他端部が外表面に開口して出力ポート607を形成するHMTハウジング側油路と、前記出力ポート607に流体接続される圧油供給配管605aとを有しており、リリーフ弁606によって所定油圧に設定されている。本実施の形態においては、図3に示すように、前記リリーフ弁606は、前記第1蓋部材240に装着されて、前記HMTハウジング側油路に作用している。
【0032】
図4に示すように、前記チャージ機構610は、上流側が前記圧油供給ライン605に流体接続され且つ下流側が前記一対の作動油ライン601、602にそれぞれ流体接続された一対のチャージライン611、612と、前記圧油供給ライン605から前記作動油ライン601、602への圧油の流入を許容しつつ逆向きの流れを防止するように前記一対のチャージライン611、612にそれぞれ介挿された一対のチェック弁615、616とを有している。
【0033】
本実施の形態においては、図4に示すように、前記HST変速作動機構750は、前記補助ポンプ81からの圧油を作動油として用い、前記出力調整部材40を作動させる油圧サーボ機構760を有している。
【0034】
前記油圧サーボ機構760は、シリンダ761と、前記シリンダ761の内部空間を正転室761F及び逆転室761Rに液密に画しつつ前記シリンダ761の内部空間に摺動自在に収容されたピストン763と、前記正転室761F及び前記逆転室761Rに対する圧油の給排を切り替える切替弁765とを有している。
【0035】
前記切替弁765は、前記圧油供給ライン605を前記正転室761Fに流体接続させ且つ前記逆転室761Rをドレンライン609に流体接続させる正転位置と、前記正転室761F及び前記逆転室761Rをそれぞれ閉塞する保持位置と、前記圧油供給ライン605を前記逆転室761Rに流体接続させ且つ前記正転室761Fを前記ドレンライン609に流体接続させる逆転位置とを選択的に取り得るようになっている。
【0036】
前記ピストン763は前記出力調整部材40に作動連結されている。
詳しくは、前記正転室761Fに圧油が供給され且つ前記逆転室761Rから圧油が排出されると、前記ピストン763は前記正転室761Fを拡張する方向へ移動される。逆に、前記逆転室761Rに圧油が供給され且つ前記正転室761Fから圧油が排出されると、前記ピストン763は前記逆転室761Rを拡張する方向へ移動される。そして、前記正転室761F及び前記逆転室761Rが閉塞されると、前記ピストン763はその時点での位置に保持される。
【0037】
ここで、前記ピストン763は、前記正転室761Fを拡張させる方向へ移動される際には前記出力調整部材40を正転側へ移動させ、前記逆転室761Rを拡張させる方向へ移動される際には前記出力調整部材40を逆転側へ移動させ、その時点での位置に保持される場合には前記出力調整部材40をその時点での位置に保持するように、前記出力調整部材40に作動連結されている。
【0038】
なお、前記出力調整部材40が正転側へ移動されると、前記HST10の出力は正転側に増速され、前記出力調整部材40が逆転側へ移動されると、前記HST10の出力は逆転側に増速される。
【0039】
前記切替弁765は、前記変速操作レバー700Aへの人為操作に応じて、位置制御されるようになっている。
【0040】
図5(a)及び(b)に、それぞれ、前記変速操作レバー700Aの正面図及び側面図を示す。
また、図6に、前記変速操作レバー700Aの平面図を示す。
【0041】
図4及び図5(a)に示すように、前記変速作動機構750には、前記切替弁765を移動させるように前記切替弁765に連結されたHST変速アーム770が備えられており、前記HST変速アーム770は前記変速操作レバー700Aへの人為操作に応じて作動されるようになっている。
【0042】
図5(a)に示すように、本実施の形態においては、前記変速操作レバー700Aは、機械リンク780を介して前記HST変速アーム770に作動連結されている。
【0043】
これに代えて、前記HST変速作動機構750に、前記HST変速アーム770を作動させる電動モータ等のHSTシフトモータを備え、前記変速操作レバー700Aへの人為操作に応じて前記HST変速アーム770が作動されるように、前記HSTシフトモータの作動制御を行うことも可能である。
【0044】
図5及び図6に示すように、前記変速操作レバー700Aは、ゼロ速位置0を挟んで前進側F及び後進側Rへ第1操作方向D1に沿って変速操作可能とされている。
【0045】
本実施の形態においては、図5に示すように、前記変速操作レバー700Aは、操作ボックス等の支持体705に軸線回り回転可能に支持された第1操作軸710と、前記第1操作軸710に対して軸線回り相対回転不能となるように基端部が前記第1操作軸710に直接又は間接的に支持されたレバー本体730とを備え、前記レバー本体730を前記第1操作軸710の軸線回りに揺動させることによって第1操作方向D1に沿って移動し得るようになっている。
【0046】
本実施の形態においては、前記変速操作レバー700Aは、さらに、前記レバー本体730の先端部に設けられた把持部735を有している。
【0047】
本実施の形態に係る作業車輌1は、前記変速操作レバー700Aを第1操作方向D1に関し所望操作位置に係止する操作位置保持機構790を有している。
図5に示すように、前記操作位置保持機構790は、前記第1操作軸710に軸線回り相対回転不能に支持されたディスク792と、前記ディスク792を挟んで対向配置された一対のパッド794と、前記一対のパッド794を挟圧方向に付勢するコイルスプリング等の付勢部材796とを有している。
【0048】
前記操作位置保持機構790は、前記付勢部材796の付勢力によって前記第1操作軸710を任意の軸線回り位置に係止する一方で、前記付勢部材796の付勢力を越える操作力が前記変速操作レバー700Aに付加されると前記第1操作軸710の軸線回りの回転を許容する。
【0049】
前記HMT構造200は、前記変速操作レバー700Aがゼロ速位置0に位置されると前記HMT構造200の出力(即ち、前記遊星歯車機構100から出力される合成回転動力)がゼロ速となり、前記変速操作レバー700Aがゼロ速位置0から前進側F及び後進側Rへ操作されるに従って、前記遊星歯車機構100から出力される回転動力が前進側及び後進側へそれぞれ増速されるように、構成されている。
【0050】
即ち、前記HST変速作動機構750は、前記変速操作レバー700Aがゼロ速位置0に位置されると、前記HMT構造200の出力をゼロ速とさせる所定回転速度の動力を前記HST10が出力するように、構成されている。
【0051】
本実施の形態においては、前記HMT構造200の出力をゼロ速とさせる前記HST出力の回転速度は、中立速及び逆転側最高速の間の逆転側所定回転速度とされる。
【0052】
前記HST変速作動機構750は、さらに、前記変速操作レバー700Aがゼロ速位置0から第1操作方向D1に沿って前進側へ操作されるに従ってHST出力が逆転側所定回転速度から中立状態を挟んで正転方向へ増速され、且つ、前記変速操作レバー700Aがゼロ速位置0から第1操作方向D1に沿って後進側へ操作されるに従ってHST出力が逆転側所定回転速度から逆転側へ増速されるように、構成される。
【0053】
そして、前記HST10及び前記遊星歯車機構100は、前記HST出力が逆転側所定回転速度から中立状態を挟んで正転方向へ増速されるに従って前記HMT構造200の出力がゼロ速から前進側へ増速され、且つ、前記HST出力が逆転側所定回転速度から逆転方向へ増速されるに従って前記HMT構造200の出力がゼロ速から後進側へ増速されるように、構成される。
【0054】
前記変速操作レバー700Aは、第1操作方向D1に沿った変速操作に加えて、ゼロ速位置0から第1操作方向D1とは異なる第2操作方向D2に沿ってブレーキ位置へ操作可能とされている。
この点については後述する。
【0055】
前記遊星歯車機構100は、前記駆動源5からの回転動力を第1要素に入力し且つ前記HST10からの回転動力を第2要素に入力し、これらの回転動力を合成して第3要素からHMT出力軸350へ出力する。
【0056】
具体的には、前記遊星歯車機構100は、サンギヤ110と、前記サンギヤ110と噛合する遊星ギヤ120と、前記遊星ギヤ120と噛合するインターナルギヤ130と、前記遊星ギヤ120を軸線回り回転自在に支持し且つ前記遊星ギヤ120の前記サンギヤ110回りの公転に連動して前記サンギヤ110の軸線回りに回転するキャリヤ150とを有している。
【0057】
本実施の形態においては、前記インターナルギヤ130及び前記サンギヤ110がそれぞれ前記第1及び第2要素として作用し、前記キャリヤ150が前記第3要素として作用している。
【0058】
前記サンギヤ110は、前記モータ軸30と同軸上において前記モータ軸30に軸線回り相対回転不能に連結されている。
【0059】
前記キャリヤ150は、前記遊星ギヤ120を軸線回り回転自在に支持するキャリヤピン160と、前記遊星ギヤ120の前記サンギヤ110回りの公転と共に前記サンギヤ110の軸線回りに回転するように前記キャリヤピン160を支持するキャリヤ本体170とを有している。
【0060】
本実施の形態においては、前記キャリヤ本体170は、互いに対して分離可能に連結された第1及び第2キャリヤ本体171、172を有している。
【0061】
前記第1及び第2キャリヤ本体171、172は、連結状態において、前記サンギヤ110を囲繞する空間を画しつつ、前記キャリヤピン160の軸線方向一方側の端部及び軸線方向他方側の端部をそれぞれ支持している。
【0062】
詳しくは、前記HST10に近接する側の前記第1キャリヤ本体171は、下記HMTハウジング210に設けられた隔壁235に軸受部材を介して相対回転自在に支持され、且つ、前記モータ軸30が挿通される軸線孔が設けられた基端部と、前記基端部から径方向外方へ延び、前記キャリヤピン160の軸線方向一端側を支持する支持孔が設けられた径方向延在部とを有している。
【0063】
前記HST10とは反対側の前記第2キャリヤ本体172は、前記HMT出力軸350に相対回転不能に作動連結されている。
本実施の形態においては、前記第2キャリヤ本体172は、前記HMT出力軸350が軸線回り相対回転不能に連結される基端部と、前記基端部から径方向外方へ延び、前記キャリヤピン160の軸線方向他端側を支持する支持孔が設けられた径方向延在部とを有している。
【0064】
本実施の形態においては、前記駆動源5から前記ポンプ軸20への伝動経路から取り出した回転動力を前記インターナルギヤ130に伝達している。
【0065】
詳しくは、図1及び図2に示すように、前記HMT構造200は、前記ポンプ軸20と同軸上に配置され、伝動方向上流側が前記駆動源5に作動連結され且つ伝動方向下流側が前記ポンプ軸20に相対回転不能に連結されたHMT入力軸310を有している。
【0066】
本実施の形態においては、前記HMT入力軸310は中空軸とされており、伝動方向上流側には前記駆動源5に作動連結された入力側伝動軸305がスプライン連結され、且つ、伝動方向下流側には前記ポンプ軸20がスプライン連結されている。
【0067】
前記HMT入力軸310は、さらに、伝動方向上流側及び下流側の間の中間に駆動側伝動ギヤ312が相対回転不能に設けられている。
なお、本実施の形態においては、前記駆動側伝動ギヤ312は前記HMT入力軸310に一体形成されているが、当然ながら、前記駆動側伝動ギヤ312を前記HMT入力軸310とは別体とし、前記HMT入力軸310の軸線方向中間に相対回転不能に支持させることも可能である。
【0068】
前記インターナルギヤ130は、前記駆動側伝動ギヤ312と噛合する従動側伝動ギヤ135を有しており、前記HMT入力軸310、前記駆動側伝動ギヤ312及び前記従動側伝動ギヤ135を介して、前記駆動源5からの回転動力が前記インターナルギヤ130に入力されるようになっている。
【0069】
本実施の形態においては、前記インターナルギヤ130は、前記第2キャリヤ本体171の基端部の外周面に軸受部材を介して相対回転自在に支持される基端部と、前記基端部から径方向外方へ延在する延在部と、前記延在部から延び、前記遊星ギヤ120に噛合するギヤ及び前記従動側伝動ギヤ135が設けられた外端部とを有している。
【0070】
図1及び図2に示すように、本実施の形態に係る作業車輌1は、前記HST10及び前記遊星歯車機構100を収容し且つ前記HMT入力軸310及び前記HMT出力軸350を支持するHMTハウジング210を有している。
【0071】
前記HMTハウジング210は、取付箇所(本実施の形態においてはトランスミッション500)に着脱自在に連結される。
【0072】
図2に示すように、前記HMTハウジング210は、前記HST10を収容する第1空間211と、前記遊星歯車機構100を収容する第2空間212とを有している。
【0073】
本実施の形態においては、前記HMTハウジング210は、ハウジング本体220と、前記ハウジング本体220に着脱自在に連結される第1蓋部材240及び第2蓋部材260とを有している。
【0074】
前記ハウジング本体220は、軸線方向一方側及び他方側がそれぞれ第1及び第2開口231、232とされた中空の周壁230と、前記周壁230の軸線中間位置において前記周壁230の内部空間を前記第1空間211及び前記第2空間222に仕切る隔壁235とを有している。
【0075】
前記第1蓋部材240は、前記第1開口231を閉塞するように前記ハウジング本体220に着脱自在に連結される。
図3に示すように、前記第1蓋部材240は、前記一対の作動油ライン601、602が形成されたポートブロックとしても作用する。
【0076】
前記第2蓋部材260は、前記第2開口232を閉塞するように前記ハウジング本体220に着脱自在に連結される。
前記第2蓋部材260は、前記HMTハウジング210の取付箇所(本実施の形態においては前記トランスミッション500のミッションケース510)に対する装着面としても作用する。
【0077】
前記HMT入力軸310は、前記第2空間212内において前記第2蓋部材260及び前記隔壁235によって軸線回り回転自在に支持されている。
【0078】
前記HMT入力軸310の伝動方向上流側は、前記第2蓋部材260に形成されたアクセス孔を介して前記入力側伝動軸305に連結されている。
【0079】
前記ポンプ軸20は、伝動方向上流側端部が前記隔壁235を貫通して前記HMT入力軸310の伝動方向下流側に連結されている。
【0080】
なお、本実施の形態においては、図2に示すように、前記ポンプ軸20の伝動方向下流側端部は前記第1蓋部材240を貫通して外方へ延在されており、この外方延在部に前記補助ポンプ81が支持されている。
前記補助ポンプ81は、前記ポンプ軸20に支持された状態で、前記HMTハウジング210(前記第1蓋部材240)に着脱自在に連結される前記補助ポンプケース83によって囲繞されている。
【0081】
前記モータ軸30は、伝動方向下流側端部が前記隔壁235を貫通して前記第2空間212に突入された状態で、前記第1蓋部材240及び前記隔壁235によって軸線回り回転自在に支持されている。
【0082】
前記HMT出力軸350は、伝動方向上流側が前記キャリヤ150に連結され且つ伝動方向下流側が前記第2蓋部材260に形成されたアクセス孔を介して外部からアクセス可能な状態で、前記第2蓋部材260によって軸線回り回転自在に支持されている。
【0083】
図1に示すように、本実施の形態に係る作業車輌1は、さらに、前記HMT構造200からの回転動力を変速して、前記走行部材6に向けて出力する前記トランスミッション500を有している。
【0084】
前記トランスミッション500は、前記ミッションケース510と、前記ミッションケース510に支持されたトランスミッション入力軸515、副変速駆動軸520及び副変速従動軸530と、前記副変速駆動軸520及び前記副変速従動軸530の間で多段変速を行う副変速機構525とを有している。
【0085】
本実施の形態に係る作業車輌1においては、前記走行部材6は、左右一対とされている。
従って、前記トランスミッション500は、さらに、前記一対の走行部材6、6に向けてそれぞれ駆動力を出力する一対の駆動車軸545、545と、前記副変速従動軸530の回転動力を前記一対の駆動車軸545、545に差動伝達するディファレンシャル機構540とを有している。
【0086】
なお、図1中の符号535は前記副変速従動軸530に選択的に制動力を付加するパーキングブレーキ機構であり、符号550は前記一対の駆動車軸545、545にそれぞれ選択的に制動力を付加する一対の走行ブレーキ機構である。
【0087】
図1図2及び図4等に示すように、本実施の形態に係る作業車輌1は、さらに、前記遊星歯車機構100の出力要素である第3要素(本実施の形態においては前記キャリヤ150)に選択的に制動力を付加し得るブレーキ機構400Aを備えている。
【0088】
前記ブレーキ機構400Aは、前記変速操作レバー700Aのブレーキ位置への操作に応じて、前記第3要素に制動力を付加するように構成されている。
【0089】
図5及び図6に示すように、前記変速操作レバー700Aは、第1操作方向D1に沿った変速操作に加えて、ゼロ速位置0から第1操作方向D1とは異なる第2操作方向D2に沿ってブレーキ位置へ操作可能とされている。
【0090】
本実施の形態においては、図5及び図6に示すように、前記変速操作レバー700Aは、前記第1操作軸710及び前記レバー本体730に加えて、前記第1操作軸710に略直交姿勢で支持された第2操作軸720と、前記第2操作軸720に支持された接続部材740とを有している。
【0091】
前記接続部材740は、前記レバー本体730、前記接続部材740、前記第2操作軸720及び前記第1操作軸710が一体的に前記第1操作軸710の軸線回りに揺動し、且つ、前記レバー本体730及び前記接続部材740が前記第2操作軸720の軸線回りに揺動するように、前記レバー本体730の基端部と前記第2操作軸720とを連結している。
【0092】
斯かる構成によって、前記レバー本体730、前記接続部材740、前記第2操作軸720及び前記第1操作軸710が一体的に前記第1操作軸710の軸線回りに揺動することで前記変速操作レバー700Aの第1操作方向D1に沿った変速操作を可能としつつ、前記レバー本体730及び前記接続部材740が一体的に前記第2操作軸720の軸線回りに揺動することで前記変速操作レバー700Aの第2操作方向D2に沿った操作を可能としている。
【0093】
図5に示すように、本実施の形態においては、前記第2操作軸720は、一端部及び他端部が外方へ延在するように前記第1操作軸710を貫通した状態で前記第1操作軸710に支持されている。
【0094】
前記接続部材740は、前記第2操作軸720の一端部及び他端部にそれぞれ支持される一対の支持片742と、前記第1操作軸710との間に間隙を存しつつ、前記一対の支持片742を連結する連結片742とを有しており、前記レバー本体730の基端部が前記連結片744に連結されている。
【0095】
前記第1操作軸710が軸線回り回転自在に前記支持体705に支持されており、前記レバー本体730、前記接続部材740、前記第2操作軸720及び前記第1操作軸710が一体的に前記第1操作軸710の軸線回りに回動可能となっている。
【0096】
さらに、前記第2操作軸720が前記第1操作軸710に軸線回り回転自在、及び/又は、前記一対の支持片742が前記第2操作軸720に軸線回り回転自在とされており、前記間隙が存する範囲内で前記レバー本体730及び前記接続部材740が前記第2操作軸720の軸線回りに揺動可能となっている。
【0097】
図6に示すように、前記変速操作レバー700Aは、さらに、前記レバー本体730が挿通されるガイド溝810Aを有するガイド板800を有している。
【0098】
前記ガイド溝810Aは、第1操作方向D1に沿って前記レバー本体730を案内する第1溝811と、前記変速操作レバー700Aの変速操作位置のうちゼロ速位置0からのみ前記変速操作レバー700Aの第2操作方向D2への移動を許容する第2溝812とを有している。
【0099】
本実施の形態においては、前記ブレーキ機構400Aは油圧作動型の摩擦板式とされている。
詳しくは、図2に示すように、前記ブレーキ機構400Aは、前記第3要素と共に回転する回転側摩擦板及び回転不能とされた固定側摩擦板を含む摩擦板群405と、前記第3要素の軸線方向に沿って移動可能とされ、前記軸線方向一方側のブレーキ作動方向へ押動されることによって前記摩擦板群405を摩擦接触させるピストン410と、前記ピストン410を前記摩擦板群405から離間するブレーキ解除方向へ付勢する戻しバネ415とを有している。
【0100】
前記固定側摩擦板は、前記第3要素の軸線回り回転不能且つ前記第3要素の軸線方一方側へは移動端が画された状態で前記HMTハウジング210に支持されている。
前記回転側摩擦板は、前記固定側摩擦板と対向状態で前記第3要素に軸線回り相対回転不能(一体回転状態)且つ軸線方向移動可能に支持されている。
【0101】
前記ピストン410は、前記変速操作レバー700Aのゼロ速位置0からブレーキ位置への操作に応じてブレーキ作動方向へ押動されて、前記摩擦板群405を摩擦接触させ、これにより、前記第3要素に制動力を付加する一方で、前記変速操作レバー700Aがブレーキ位置から他の操作位置へ操作されると、前記戻しバネ415の付勢力によってブレーキ解除方向へ移動される。
【0102】
本実施の形態においては、前記ピストン410は、前記変速操作レバー700Aのゼロ速位置0からブレーキ位置への操作に応じて、油圧の作用によってブレーキ作動方向へ押動されるように構成されている。
【0103】
詳しくは、図4に示すように、前記ブレーキ機構400Aは、さらに、油圧源(本実施の形態においては前記圧油供給ライン605を形成する圧油供給配管605a)から供給される圧油によって前記ピストン410をブレーキ作動方向へ押動し得るように前記HMTハウジング210に形成されたブレーキ油室418と、前記ブレーキ油室418に流体接続された作動油給排ライン420と、前記油圧源及び前記作動油給排ライン420の間に介挿されたブレーキ弁425と、前記変速操作レバー700Aのブレーキ位置への操作を検出するブレーキ操作検出センサ430とを備えている。
【0104】
前記ブレーキ弁425は、油圧源を前記作動油給排ライン420に流体接続するブレーキ作動位置と、前記作動油給排ライン420をドレンライン422に流体接続させるブレーキ解除位置とを選択的に取るように構成されている。
【0105】
本実施の形態においては、前記ブレーキ弁425は電磁弁とされており、前記作業車輌1に備えられる制御装置900によって位置制御されるようになっている。
【0106】
即ち、前記制御装置900は、通常時においては前記ブレーキ弁425をブレーキ解除位置に位置させつつ、前記ブレーキ操作検出センサ430からの信号によって前記変速操作レバー700Aがブレーキ位置へ操作されたことを認識すると、前記ブレーキ弁425をブレーキ作動位置に位置させる。
【0107】
前記ブレーキ操作検出センサ430は、種々の形式のセンサを用いることができる。
本実施の形態においては、図5及び図6に示すように、前記変速操作レバー700Aのレバー本体730にブレーキ用被検出体731が設けられており、前記ブレーキ操作検出センサ430は、前記変速操作レバー700Aがブレーキ位置に位置された際に前記ブレーキ用被検出体731に接触する接触式センサとされている。
【0108】
このように、本実施の形態に係る作業車輌1においては、前記変速操作レバー700Aをゼロ速位置0に位置させると、前記遊星歯車機構100の第3要素の回転動力がゼロ速となり、前記変速操作レバー700Aをゼロ速位置0から前進側F及び後進側Rへ操作すると、前記遊星歯車機構100の第3要素の回転動力が、それぞれ、前記走行部材6を前進側へ回転駆動する前進側回転動力及び後進側へ回転駆動する後進側回転動力となる。
従って、別途に前後進切換機構を備えること無く、前進走行及び後進走行を行うことができる。
【0109】
ところで、本実施の形態に係る作業車輌1におけるようにHMT構造200の出力が前後進方向切替可能とされた作業車輌においては、前記HMT構造200の出力をゼロ速状態とさせることが実際上は困難である。
【0110】
即ち、前記タイプの作業車輌においては、HST出力が予め設定された所定回転速度とされた際に、HMT構造の出力がゼロ速状態となるように、HST及び遊星歯車機構が構成される。本実施の形態においては、前述の通り、前記HST10が逆転側所定回転速度とされた際に、前記HMT構造200の出力がゼロ速状態となるように、前記HST10及び前記遊星歯車機構100が構成されている。
【0111】
つまり、前記タイプの作業車輌においてHMT構造の出力ゼロ速状態を現出する為には、変速操作レバーが所定回転速度に対応した操作位置(本実施の形態においてはゼロ速位置0)に位置された際に、HST出力が所定回転速度(本実施の形態においては逆転側所定回転速度)となるように、前記HSTの製造及び前記HSTと前記変速操作レバーとの間の動作関係の構築を正確に行う必要があり、さらには、HSTが所定回転速度の回転速度を出力した際にHMT構造の出力がゼロ速となるように、HMT構造の製造を正確に行う必要がある。
【0112】
例えば、HSTや遊星歯車機構に製造誤差及び/又は組立誤差が生じると、変速操作レバーを所定回転速度に対応した操作位置に位置させているにも拘わらず、HMT構造が低速の回転動力を出力して作業車輌がクリープ速で移動するという問題が生じ得る。
【0113】
この点に関し、本実施の形態に係る作業車輌1は、前述の通り、前記変速操作レバー700Aをゼロ速位置0から第1操作方向D1に関しては移動させない状態で第2操作方向D2に沿ってブレーキ位置へ操作させると、前記ブレーキ機構400Aが前記遊星歯車機構100の出力要素である第3要素(本実施の形態においては前記キャリヤ150)に制動力を付加するように、構成されている。
従って、前記作業車輌1が意に反してクリープ速で移動することを確実に防止することができる。
【0114】
本実施の形態に係る作業車輌1は、さらに、通常時においては前記一対の作動油ライン601、602の間を遮断しつつ、前記変速操作レバー700Aがブレーキ位置へ操作されると前記一対の作動油ライン601、602の間を連通させるバイパス機構450を備えている。
前記バイパス機構450を備えることにより、前記ブレーキ機構400Aの小容量化を図ることができる。
【0115】
即ち、前記一対の作動油ライン601、602の間が連通されると、前記油圧ポンプ25による前記油圧モータ35の油圧駆動が不能となり、前記油圧モータ35は実質的に回転自在な状態となる。
【0116】
この状態においては、前記遊星歯車機構100の第3要素も軸線回りに回転自在なフリー状態となる。
従って、小さい制動力で前記第3要素の回転を停止させることができ、前記ブレーキ機構400Aの小容量化が可能となる。
【0117】
本実施の形態に係る作業車輌1においては、図3及び図4に示すように、前記バイパス機構450は、前記一対の作動油ライン601、602を連通するバイパスライン455と、前記バイパスライン455に介挿されたバイパス弁460とを備えている。
【0118】
前記バイパス弁460は、前記バイパスライン450を連通状態とさせて前記一対の作動油ライン601、602の間を連通させるバイパス位置と、前記バイパスライン455を遮断状態とさせて前記一対の作動油ライン601、602の間を遮断させる遮断位置とを選択的に取り得るように構成されている。
【0119】
本実施の形態においては、前記バイパス弁460は前記制御装置900によって位置制御される電磁弁とされている。
【0120】
即ち、前記制御装置900は、通常時においては前記バイパス弁460を遮断位置に位置させつつ、前記ブレーキ操作検出センサ430からの信号によって前記変速操作レバー700Aがブレーキ位置へ操作されたことを認識すると、前記バイパス弁460を連通位置に位置させる。
【0121】
なお、本実施の形態においては、前記バイパス弁460を前記制御装置900によって電気的に位置制御される電磁弁としたが、これに代えて、前記バイパス弁460を、前記変速操作レバー700Aのゼロ速位置0からブレーキ位置への動きを利用して機械式リンクによって位置変更させるように変形することも可能である。
【0122】
図7に、本実施の形態の第1変形例に係る作業車輌に備えられた変速操作レバー700Bの平面図を示す。
なお、図7中、本実施の形態におけると同一部材には同一符号を付している。
【0123】
前記第1変形例は、前記ガイド溝810Aがガイド溝810Bに変更されている点、前記変速操作レバー700Aが前記変速操作レバー700Bに変更されている点、及び、前記変速操作レバー700Bのバイパス位置への操作を検出するバイパス操作検出センサ432が備えられている点において、本実施の形態と相違している。
【0124】
図7に示すように、前記変速操作レバー700Bは、前記変速操作レバー700Aの動きに加えて、ブレーキ位置から第1操作方向D1に沿ってバイパス位置へ操作可能とされている。
【0125】
前記ガイド溝810Bは、前記第1溝811及び前記第2溝812に加えて、前記変速操作レバー700Bを前記ブレーキ位置から第1操作方向D1に沿ってバイパス位置へ移動させることを許容する第3溝813を有している。
【0126】
前記変速操作レバー700Bは、前記変速操作レバー700Aに比して、さらに、前記バイパス操作検出センサ432によって検出されるバイパス用被検出体732を有している。
【0127】
前記第1変形例は、前記変速操作レバー700Bがブレーキ位置からバイパス位置へ操作されると、前記バイパス機構450による前記一対の作動油ライン601、602の間の連通状態を維持したままで、前記ブレーキ機構450Aによる前記第3要素への制動力を解除するように、構成されている。
【0128】
具体的には、前記ブレーキ用被検出体731は、前記変速操作レバー700Bがブレーキ位置に位置されている際には前記ブレーキ操作検出センサ430によって検出される一方で、前記変速操作レバー700Bがブレーキ位置からバイパス位置へ操作されると前記ブレーキ操作検出センサ430から離間するような大きさとされている。
【0129】
斯かる第1変形例によれば、前記バイパス機構450によって前記油圧モータ35から前記遊星歯車機構100への動力伝達を遮断しつつ前記ブレーキ機構400Aによって前記第3要素に制動力を付加して前記作業車輌の意に反したクリープ速での移動を防止する状態に加えて、前記ブレーキ機構400Aによる前記第3要素への制動力を解除しつつ前記第3要素を回転自在なフリー状態とした、HMT回転フリー状態を現出させることができる。
【0130】
前記遊星歯車機構の第3要素をフリー状態として、HMT回転フリー状態を現出させることによって、前記作業車輌の強制牽引が可能となる。
【0131】
即ち、走行系伝動経路にHMT構造200を備えた作業車輌を強制牽引すると、走行部材6の強制回転によって前記走行部材6に作動連結されているHST10の油圧モータ35が強制的に回転されることになる。
【0132】
一方、前記油圧モータ35が一対の作動油ライン601、602を介して流体接続されている前記HST10の油圧ポンプ25は、エンジン等の駆動源5に作動連結されており、自由には回転できない状態となっている。
【0133】
従って、前記作業車輌の牽引時に前記走行部材6の回転に伴って前記油圧モータ35が強制回転されると、前記駆動源5との作動連結によって前記油圧ポンプ25が自由に回転できない状態で、前記一対の作動油ライン601、602の一方に前記油圧モータ35からの吐出油が流れ込むことになり、前記一方の作動油ライン601、602の油圧によって前記油圧モータ35の回転が阻害されることになる。
【0134】
この点に関し、前記第1変形例においては、前記変速操作レバー700Bをバイパス位置へ操作することによって、前記遊星歯車機構100の第3要素への制動力は解除された状態で、前記バイパス機構450によって前記一対の作動油ライン601、602間が連通されているHMT回転フリー状態が現出される。
【0135】
この状態においては、前記走行部材6に作動連結されている前記第3要素は軸線回りに自由に回転可能となっており、従って、前記作業車輌を強制牽引することが可能となる。
【0136】
図8に、本実施の形態の第2変形例に係る作業車輌に備えられた変速操作レバー700Cの平面図を示す。
なお、図8中、本実施の形態及び第1変形例におけると同一部材には同一符号を付している。
【0137】
前記第2変形例は、前記ガイド溝810Aがガイド溝810Cに変更されている点、前記変速操作レバー700Aが前記変速操作レバー700Cに変更されている点、及び、前記変速操作レバーのバイパス位置への操作を検出するバイパス操作検出センサが備えられている点において、本実施の形態と相違している。
【0138】
図8に示すように、前記変速操作レバー700Cは、前記変速操作レバー700Aの動きに加えて、ゼロ速位置から第2操作方向D2他方側のバイパス位置へ操作可能とされている。
【0139】
前記ガイド溝810Cは、前記第1溝811及び前記第2溝812に加えて、前記変速操作レバー700Cをゼロ速位置0からバイパス位置へ移動させることを許容する第3溝814を有している。
【0140】
前記変速操作レバー700Cは、前記変速操作レバー700Aに比して、さらに、前記バイパス操作検出センサ432によって検出されるバイパス用被検出体732を有している。
【0141】
前記第2変形例においては、前記変速操作レバー700Cがゼロ速位置0から第2操作方向一方側のブレーキ位置へ操作されると、本実施の形態及び第1変形例と同様に、前記バイパス機構450によって前記第3要素を回転自在なフリー状態としつつ前記ブレーキ機構400Aによって前記第3要素に制動力を付加して前記作業車輌の意に反したクリープ速での移動を防止する状態が現出され、さらに、前記変速操作レバーがゼロ速位置から第2操作方向他方側のバイパス位置へ操作されると、前記ブレーキ機構400Aによる前記第3要素への制動力は解除された状態で前記バイパス機構450によって前記第3要素が回転自在とされた、HMT回転フリー状態が現出される。
【0142】
実施の形態2
以下、本発明に係る作業車輌の他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図9に、本実施の形態に係る作業車輌に備えられた変速操作レバー700Dの平面図を示す。
なお、図中、前記実施の形態1におけると同一部材には同一符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0143】
本実施の形態に係る作業車輌は、前記実施の形態1に係る作業車輌に比して、前記変速操作レバー700Aに代えて変速操作レバー700Dを有している。
【0144】
図9に示すように、前記変速操作レバー700Dは、第1操作方向D1に沿って移動する変速操作と、ゼロ速位置0から第2操作方向D2に沿ってバイパス位置へ移動するバイパス操作とを行えるように構成されている。
【0145】
前記作業車輌は、前記変速操作レバー700Dのバイパス位置への操作に応じて、前記バイパス機構450による前記一対の作動油ライン601、602間の連通のみを行うように構成されている。
【0146】
斯かる構成の前記作業車輌によれば、前記変速操作レバー700Dをバイパス位置へ操作することによって、当該作業車輌を牽引され得る状態とすることができる。
【0147】
図9に示すように、本実施の形態に係る作業車輌においては、前記バイパス操作検出センサ432は、前記変速操作レバー700Dがゼロ速位置から第2操作方向D2に沿ってバイパス位置へ操作された際に前記変速操作レバー700Dに設けられたバイパス用被検出体732Dを検出し得るように、配置されている。
【0148】
そして、前記制御装置900が、前記バイパス操作検出センサ432からの検出信号に応じて、前記バイパス弁460を連通位置に位置させるようになっている。
【0149】
前記変速操作レバー700Dは、さらに、前記バイパス位置から第1操作方向D1に沿ってブレーキ位置へ移動するブレーキ操作を行えるように構成されている。
【0150】
前記作業車輌は、前記変速操作レバー700Dのブレーキ位置への操作に応じて、前記バイパス機構450による前記一対の作動油ライン601、602間の連通を維持したままで、前記ブレーキ機構400Aによる前記第3要素への制動力の付加を行うように構成されている。
【0151】
斯かる構成を備えることにより、前記変速操作レバー700Dのバイパス位置からブレーキ位置への操作によって、前記ブレーキ機構400Aの小容量化を図りつつ、意に反したクリープ速での前記作業車輌の移動を確実に防止することができる。
【0152】
図9に示すように、本実施の形態に係る作業車輌においては、前記ブレーキ操作検出センサ430は、前記変速操作レバー700Dがバイパス位置から第1操作方向D1に沿ってブレーキ位置へ操作された際に前記変速操作レバー700Dに設けられたブレーキ用被検出体731を検出し得るように、配置されている。
【0153】
ここで、前記バイパス用被検出体732Dは、前記変速操作レバー700Dがバイパス位置から第1操作方向D1に沿ってブレーキ位置へ移動されても前記バイパス操作検出センサ432による検出状態が維持されるような大きさを有している。
【0154】
なお、前記各実施の形態においては、前記ブレーキ機構400Aは油圧作動型の摩擦板式とされているが、当然ながら、本発明は斯かる形態に限定されるものでは無い。
【0155】
図10に、変形例に係るブレーキ機構400Bを備えたHMT構造200Bの部分横断面図を示す。
また、図11に、図10におけるXI-XI線に沿った断面図を示す。
なお、図中、前記実施の形態におけると同一部材には同一符号を付している。
【0156】
前記ブレーキ機構400Bは、前記摩擦板群405と、前記第3要素の軸線方向一方側であるブレーキ作動方向へ押動されることによって前記摩擦板群405を摩擦接触させるピストン410Bと、前記戻しバネ415と、前記ピストン410Bを前記戻しバネ415の付勢力に抗してブレーキ作動方向へ押動する押動部材850とを有している。
【0157】
前記ピストン410Bは、前記第3要素の軸線回り回転可能且つ軸線方向移動可能となるように前記遊星歯車機構100を収容するHMTハウジング210に収容されており、前記摩擦板群405と当接する先端側端面411と、前記摩擦板群405とは反対側を向く基端側端面412とを有している。
【0158】
前記押動部材850は、先端側が前記ピストン410Bに係合され且つ基端側が外部からアクセス可能な状態で前記第3要素の軸線方向に沿った軸線回り回転自在に前記HMTハウジング210に支持されており、軸線回りに回転されることによって前記ピストン410Bを前記第3要素の軸線回りに回転させるように構成されている。
【0159】
詳しくは、前記押動部材850は、前記HMTハウジング210に軸線回り回転自在に支持された軸部851と、先端側に設けられた断面非円形の係合部852とを有している。
【0160】
前記ピストン410Bには前記係合部852に係合される受圧面413が設けられており、前記押動部材850が前記軸部851の軸線回りに回転されると、前記係合部852が前記受圧面413を介して前記ピストン410Bを前記第3要素の軸線回りに回転させるようになっている。
【0161】
前記ピストン410Bの基端側端面には、周方向に沿った係入溝414が形成されている。
前記係入溝414は、最深部414aと、前記最深部414aから周方向一方側へ行くに従って浅くなる傾斜部414bとを有している。
【0162】
前記HMTハウジング210には、前記基端側端面412と対向する内壁面に、前記係入溝414に係入される凸体855が前記第3要素の軸線回り移動不能に設けられている。
本実施の形態においては、前記凸体855は、前記HMTハウジング210の内壁面に形成された凹部に、自身の中心回り転動可能に収容された転動体とされている。
【0163】
前記ブレーキ機構410Bは以下のように作動する。
前記押動部材850が、前記軸部851の軸線回りに回動されると、前記係合部852を介して前記ピストン410Bが軸線回りに回転される。前記ピストン410Bが軸線回りに回転されると、前記凸体855が前記係入溝414内において前記最深部414aから前記傾斜部414bへ相対的に周方向へ移動する。
これにより、前記ピストン410Bが前記戻しバネ415の付勢力に抗してブレーキ押動方向へ移動され、前記摩擦板群405を摩擦接触させる。
なお、図10及び図11中の符号860は、前記押動部材850の基端側に固着されたブレーキ操作アームである。
【0164】
図12に、他の変形例に係るブレーキ機構400Cを備えたHMT構造200Cの横断面図を示す。
また、図13に、図12におけるXIII-XIII線に沿った断面図を示す。
図中、前記実施の形態及び前記変形例におけると同一部材には同一符号を付している。
【0165】
前記ブレーキ機構400Cはバンド式とされている。
詳しくは、前記ブレーキ機構400Cは、一端部が固定端871とされ且つ他端部が可動端872とされた状態で前記第3要素の外周を囲繞するように配置されたバンド体870と、前記第3要素の軸線方向に沿い、先端側がHMTハウジング210の内部空間に突入され且つ基端側が外部からアクセス可能な状態で軸線回り回転自在にHMTハウジング210に支持された回動軸875と、基端部が前記回動軸875の先端側に相対回転不能に連結され且つ先端部が前記バンド体870の可動端872に連結されたブレーキアーム880とを有している。
【0166】
前記回動軸875が軸線回り一方側のブレーキ作動方向に回転されると、前記ブレーキアーム880を介して前記バンド体870が縮径され、これにより、前記第3要素の外周面との間の摩擦力によって前記第3要素に制動力が付加される。
【0167】
前記回動軸875が軸線回り他方側のブレーキ解除方向に回転されると、前記ブレーキアーム880を介して前記バンド体870が拡径され、前記第3要素に対する制動力が解除される。
【0168】
前記押動部材850及び前記回動軸875の軸線回りの回転は、前記制御装置900によって作動制御される電動モータ等の電動アクチュエータによって行うことも可能であるし、前記変速操作レバー700A~700Dのブレーキ位置への動きを機械リンクを介して伝達することによって行うことも可能である。
【符号の説明】
【0169】
1 作業車輌
5 駆動源
6 走行部材
10 HST
100 遊星歯車機構
400A~400C ブレーキ機構
450 バイパス機構
601、602 作動油ライン
700A~700D 変速操作レバー
710 第1操作軸
720 第2操作軸
730 レバー本体
740 接続部材
D1 第1操作方向
D2 第2操作方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13