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特許6994249台車、これに使用される台車本体および操作具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】台車、これに使用される台車本体および操作具
(51)【国際特許分類】
   B62B 1/04 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
B62B1/04
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018088960
(22)【出願日】2018-05-03
(62)【分割の表示】P 2017233980の分割
【原出願日】2017-12-06
(65)【公開番号】P2019099124
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】591176258
【氏名又は名称】株式会社飯塚鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】110002893
【氏名又は名称】特許業務法人KEN知財総合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100186750
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健司
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 肇
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-152767(JP,U)
【文献】実公昭36-000433(JP,Y1)
【文献】実開昭59-037170(JP,U)
【文献】特開2006-111067(JP,A)
【文献】特開平11-034880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 1/00- 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車本体と、当該台車本体に取り外し可能に連結される操作具と、を有し、
前記台車本体は、移動対象物を支える荷台部と、
前記荷台部の下面側に設けられた複数の車輪と、
床面に接触する下端部を有し、前記複数の車輪と協働して前記荷台部を支持する支持部と、を有し、
前記操作具は、操作竿部と、
前記操作竿部の下端側に設けられ、前記荷台部と連結可能に形成されたリフター部と、を有し、
前記リフター部は、前記操作竿部の両側において、回転自在に設けられた第1および第2の車輪を有し、
前記操作竿部が前記台車本体に連結される際には、
前記リフター部の一部が前記荷台部の一部に係止され、
前記操作竿部に作用する傾動モーメントが前記第1および第2の車輪を支点として前記荷台部を上方へ押し上げる力として作用しつつ、前記第1および第2の車輪が前記荷台部側へ向けて移動することにより、前記台車本体の支持部が前記床面から浮上し、
前記リフター部と前記台車本体との連結が完了することにより、前記複数の車輪および前記第1および第2の車輪が協働して前記荷台部を支持し
前記リフター部は、前記操作具が前記台車本体から取り外された状態で、前記操作竿部を起立させた自立状態に維持すべく、前記第1および第2の車輪と協働して前記操作竿部を支持する操作竿支持部をさらに有し、
前記操作竿支持部は、前記操作竿に対して前記操作具を操作する作業者の側とは反対側に向けて延在している、台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量物等を移動、保持、保管しておくための台車に関する。
【背景技術】
【0002】
重量物を運搬する従来の台車としては、荷台部の下面に複数の自在キャスタが設けられるとともに、荷台部の一側部に把手(操作具)を設けたものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-107665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、工作機械で加工される金属材料や加工後のワークは、比較的重量が重く、台車への積載や台車からの積み下ろしが頻繁に必要であると、工数も増大するし、作業者の負担も大きい。
したがって、可能な限り物品の台車への積載や台車からの積み下ろしを減らす必要がある。一つの方法としては、物品を台車へ積載したのちは、可能な限り当該物品を台車上で保管する方法が考えられる。
しかしながら、従来の台車は、外力が作用すると容易に移動してしまうため、ストッパ等を設ける必要がある。また、従来の台車では、作業者が操作するための把手を備えているため、多数の台車を整理する際に、把手が邪魔になるという問題もある。
【0005】
本発明は、上記点に鑑み鋭意なされたものであって、その目的の一つは、積載物の移動に加えて、積載物の保管、保存にも適し、かつ、整理も容易な台車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点に係る台車は、
台車本体と、当該台車本体に取り外し可能に連結される操作具と、を有し、
前記台車本体は、移動対象物を支える荷台部と、
前記荷台部の下面側に設けられた複数の車輪と、
床面に接触する下端部を有し、前記複数の車輪と協働して前記荷台部を支持する支持部と、を有し、
前記操作具は、操作竿部と、
前記操作竿部の下端側に設けられ、前記荷台部と連結可能に形成されたリフター部と、を有し、
前記リフター部は、前記操作竿部の両側において、回転自在に設けられた第1および第2の車輪を有し、
前記操作竿部が前記台車本体に連結される際には、
前記リフター部の一部が前記荷台部の一部に係止され、
前記操作竿部に作用する傾動モーメントが前記第1および第2の車輪を支点として前記荷台部を上方へ押し上げる力として作用しつつ、前記第1および第2の車輪が前記荷台部側へ向けて移動することにより、前記台車本体の支持部が前記床面から浮上し、
前記リフター部と前記台車本体との連結が完了することにより、前記複数の車輪および前記第1および第2の車輪が協働して前記荷台部を支持する。
【0007】
本発明の第2の観点に係る台車は、台車本体と、当該台車本体に取り外し可能に連結される操作具と、を有し、
前記台車本体は、移動対象物を支える荷台部と、
前記荷台部を支持し、共通軸線を中心に回転自在にかつ当該共通軸線の方向において互い離間するように設けられた複数の車輪と、
床面に接触する下端部を有し、前記複数の車輪と協働して前記荷台部を支持する支持部と、を有し、
前記操作具は、操作竿部と、
前記操作竿部の下端側に設けられたリフター部と、を有し、
前記リフター部は、
前記操作竿部の両側において、前記操作竿部の長手方向に略直交する方向に延びる軸線を中心に回転自在に設けられた第1および第2の車輪と、
前記荷台部に設けられた被連結部と連結可能な連結部と、を有し、
前記操作竿部が前記台車に連結される際には、前記リフター部の連結部が前記荷台部の被連結部の下方に位置するように前記操作竿部の姿勢および操作具の位置が操作され、
続いて、前記操作竿部の傾動操作により前記リフター部の連結部が前記荷台部の被連結部に係止し、
操作により前記操作竿部に作用する傾動モーメントが前記第1および第2の車輪を支点として前記連結部が係止する前記被連結部を上方へ押し上げる力として作用しつつ、前記第1および第2の車輪が前記被連結部の下方位置に向けて移動することにより、前記支持部が前記床面から浮上し、
前記被連結部と前記連結部の連結が完了することにより、前記複数の車輪および前記第1および第2の車輪が協働して前記荷台部を支持する。
【0008】
好適には、前記リフター部の連結部は、前記荷台部の被連結部に回転可能に連結され、両者が連結された状態において、前記操作竿部の方向操作により前記第1および第2の車輪の向きが自在に操作される、構成を採用できる。
さらに好適には、前記リフター部は、前記被連結部と前記連結部とが連結された状態で、前記荷台部の一部と係合することにより前記操作竿部のさらなる傾動を規制する規制部をさらに有する、構成を採用できる。
【0009】
また、前記リフター部は、前記操作具が前記台車本体から取り外された状態で、前記操作竿部を起立させた状態に維持すべく、前記第1および第2の車輪と協働して前記操作竿部を支持する支持部をさらに有する、構成も可能である。
【0010】
本発明の操作具は、上記構成の台車に使用される。
【0011】
本発明の台車本体は、上記構成の台車に使用される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、台車本体に床面に設置可能な支持部を備えたので、積載物の保管、保存にも適した台車が提供される。加えて、台車本体と操作具とを分離できるので、台車本体の整理も容易となる。さらに、本発明によれば、地震による積載物の倒壊の可能性も大幅に緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】本発明の一実施形態に係る台車の断面図であって、図1Bの1A-1Aに沿った断面図。
図1B図1Aの台車の側面図。
図2】台車本体の透視図。
図3】操作具の外観斜視図。
図4】台車本体と操作具とを連結する前の状態を示す断面図。
図5A】荷台部の被係合部と操作具のリフター部の連結部とが分離した状態を示す拡大図。
図5B】荷台部の被係合部の下方に操作具のリフター部の連結部が移動した状態を示す拡大図。
図5C】荷台部の被係合部にリフター部の連結部が係止した状態を示す拡大図。
図5D】荷台部の支持部が床面から上昇した状態を示す拡大図。
図5E】補助具の車輪が荷台部の被係合部の下方へ移動した状態を示す拡大図。
図5F】荷台部の被係合部とリフター部の連結部との連結が完了し、補助具の車輪に荷重がかかった状態を示す拡大図。
図6A】台車を前後方向に移動させるときの台車本体と操作具との関係を示す上面図。
図6B】台車の移動方向を変更させるときの台車本体と操作具との関係を示す上面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1A図3に本発明の一実施形態に係る台車の構造を示す。なお、図中、L1,L2は床面FLに平行な水平面内において台車1の長手方向を示し、M1,M2は当該水平面内において台車1の長手方向L1,L2の長手方向に直交する横方向を示す。
台車1は、台車本体10と、台車本体10に取り外し可能に連結される操作具30とで構成される。
【0015】
台車本体10は、図2等に示すように、矩形状の外形を有する荷台部11と、荷台部11の下面11bの長手方向のL1側の端部に設けられた2つの車輪13A,13Bと、荷台部11の下面11bの長手方向のL2側の端部に設けられた2つの支持部12A,12Bと、被連結部15とを有する。
荷台部11は、運搬すべき物品が積載されるが、金属材料等で形成された板材であってもよいし、フレーム部材を組み合わせものであってもよい。また、板材やフレーム以外にも、金属製の網かごを荷台部として採用し、その下面に車輪(キャスタ)を設けたものを採用することも可能である。重量物だけでなく、大容量の物品の運搬、保持も可能となる。
車輪13A,13Bは、荷台部11の下面11bの横方向M1,M2の両端部に設けられ、軸線K1を中心に回転自在となっており、車輪13A,13Bの向きは固定されている。
【0016】
支持部12A,12Bは、鋼材等で形成され、荷台部11の下面11bの車輪13A,13B側とは反対側の端部であって、横方向M1,M2の両端部に設けられている。支持部12A,12Bは、下端面12bが床面FLに接触する。支持部12A,12Bが床面FLに接触した状態では、2つの支持部12A,12Bと2つの車輪13A,13Bとは協働して荷台部11をほぼ水平に保持するとともに、荷台11からの荷重を支える。支持部12A,12Bの下端面12bが床面FLに接触していることにより、荷台部11に積載される物の重量が大きいほど、下端面12bと床面FLとの摩擦力が大きくなり、台車本体10が床面FL上を移動しにくくなる。
【0017】
被連結部15は、2つの支持部12A,12Bの間の略中間位置に設けられ、金属製の円筒部材からなり、貫通孔15aを有するとともに、円環状の下端面15bが後述する操作具30の連結部33と係合する。被連結部15は、溶接により、荷台11の下面11bに固定されている。
【0018】
操作具30は、図3に示すように、直線状に延びる操作竿部31と、操作竿部31の下端部側に設けられたリフター部32とを有する。
操作竿部31の上端部には、台車1を操作する作業者が把持するための把手部31aが操作竿部31に直交する向きに水平に延びるように設けられている。
【0019】
リフター部32は、操作竿部31の下端部に設けられており、操作竿部31の下端部に形成された連結部33と、この連結部33から操作竿部31の軸線S1に略直交する軸線T1方向に延びる車軸37に回転自在に支持された車輪35A,35Bと、連結部33から突出して形成される2つのアーム部36A,36B(以下、アーム部36とも言う。)と、を有する。
連結部33の上端面33aに、円柱状の突出部34が設けられている。突出部34は、台車本体10の被連結部15を構成する円筒部材の貫通孔15aに挿入可能に形成されている。
【0020】
操作具30の操作竿31は、車輪35A,35Bが回転自在に設けられていることから、支持がなければ起立した状態を維持することができない。しかしながら、図4等に示すように、アーム部36が床面FLに接触して操作竿31の傾動を規制することで、操作竿31は、若干傾斜した状態で起立状態が維持されている。
【0021】
次に、台車本体10と操作具30との連結動作について説明する。
台車本体10と操作具30とを連結するには、先ず、図4に示すように、操作具30を
リフター部32の連結部33が荷台部10の被連結部15の下方に位置するように操作竿部31の姿勢(傾斜)および操作具30の位置を調整する。
具体的には、床面FLに設置された荷台部11に対して、図5Aに示すように、操作具30を接近させていく。この時、連結部33の突出部34が被係合部15の下端面15よりも下方に位置するように、操作竿31の傾斜を調整する。なお、図4に示したように、操作竿31が車輪35とアーム36により支えられた状態では、連結部33の突出部34が被係合部15の下端面15よりも下方に配置されるように設計されている。
【0022】
次いで、図5Bに示すように、操作具30を台車本体10に近づけて、連結部33の突出部34が被係合部15の貫通孔15aの直下に来るように操作する。そして、図5Cに示すように、操作竿31を傾動方向A1に傾斜させていく。傾動方向A1は、図4図5Aに示した操作竿31の傾いた向きとは逆向きである。操作竿31を傾動方向A1に傾斜させると、連結部33の突出部34の位置が上方に移動し、突出部34の一部が被係合部15の貫通孔15a内に入り込み、突出部34が貫通孔15aの内周面に当接するとともに連結部33の上端面33aが被係合部15の下端面15bに当接する。すなわち、連結部33が被係合部15に係止する。
【0023】
操作竿31を傾動方向A1に傾斜させると、図5Dに示すように、作業者の操作による操作竿部31に作用する傾動モーメントが車輪37を支点として連結部33の上端面33aが係止する被連結部15の下端面15bを上方へ押し上げる力として作用する。これと同時に、支点としての車輪35は、貫通孔15aの下方位置に向かう方向B1に移動していく。この「梃作用」により、台車本体10の支持部12の下端面12bは、床面FLから上昇し、床面FLと支持部12の下端面12bとの間にわずかな間隙が形成される。
操作竿31を傾動方向A1にさらに傾斜させていくと、図5Eに示すように、車輪35が貫通孔15aの下方位置にさらに近づき、車輪35の支える荷台部11の荷重が増大していく。操作竿31に作用する傾動方向A1とは逆向きのモーメントも急激に減少していき、操作者は操作竿31から反力をほとんど感じなくなる。
図5Fに示すように、車輪35が貫通孔15aの下方位置に到達すると、連結部33の上端面33aに被連結部15の下端面15bが全面的に接触し、車輪35が車輪13と協働して荷台部11の荷重を支える。これにより、操作竿31には、傾動方向A1とは逆向きのモーメントが作用しなくなる。このとき、アーム部26が荷台部11の底面11bに当接し、操作竿31の傾動方向A1へのさらなる傾斜が規制される。この結果、台車1は、図1Aに示した状態となる。この状態においては、連結部33は、被連結部15に対して回転可能な状態となる。また、支持部12の下端面12bと床面FLとの間にはわずかな隙間が形成され、荷台部11もわずかに傾斜するが、この傾斜は、積載された荷物に影響ない範囲の傾斜である。
【0024】
台車本体10と操作具30とが互いに連結された台車1においては、図6Aに示すように、操作竿31を台車本体10の長手方向L1,L2に沿った方向に維持しながら、操作具を押すまたは引くことで、真っ直ぐに前進または後退させることができる。
台車1の移動方向を変更する、すなわち、台車の移動方向を右方向や左方向に変更するには、図6Bに示すように、操作竿31を長手方向L1,L2に対して一方に曲げる。連結部33は、被連結部15に対して回転可能であるので、簡単に移動方向を変えることができる。
台車本体10と操作具30とを分離するには、図5A図5Fとは逆の手順で操作具30を操作すればよい。
【0025】
本実施形態によれば、特に荷崩れに関しては、荷台部として網かごを用いるとさらに好ましい。
【0026】
複数台の台車本体10の各々に対して操作具30を用意してもよいが、複数台の台車本体10対して一台の操作具30を共用することも可能である。
【0027】
上記実施形態では、被連結部15を円筒部材で形成し、連結部33を円柱状部材で形成して場合を例示したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、連結部33側を円筒部材で形成し、被連結部15側を突状部材で形成することもでき、被連結部、連結部の構造は種々変更可能である。
上記実施形態では、支持部12A,12Bを設けた場合を例示したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、場所や形状や個数は適宜変更可能である。
上記実施形態では、荷台部の形態について種々の形態を例示したが、これらに限定されるわけではなく、丸棒鋼の運搬など、工場の資材運搬に関わるあらゆる積載物に応じて構成可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 台車
10 台車本体
11 荷台部
12A,12B 支持部
13,13A、13B 車輪
15 被係合部
15a 貫通孔
15b 下端面
30 操作具
30a 把手部
31 操作竿部
32 リフター部
33 連結部
33a 上端面
34 突出部
35,35A、35B 車輪
37 車軸
K1,S1,T1 軸線
FL 床面
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B