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特許6994263塗装用ローラおよびブラシ部が巻かれたパイプの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】塗装用ローラおよびブラシ部が巻かれたパイプの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 17/02 20060101AFI20220106BHJP
   A46B 7/10 20060101ALI20220106BHJP
   A46D 3/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B05C17/02
A46B7/10 Z
A46D3/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020034690
(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公開番号】P2021137675
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2020-07-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイトの掲載日:令和1年12月16日、ウェブサイトのアドレス:http://www.taiho.co/demo、http://www.taiho.co/demo/news.html、http://www.taiho.co/demo/go_r.html、http://www.taiho.co/demo/newslist.html、http://www.taiho.co/demo/news086.html、http://www.taiho.co/demo/news/hohoemi_roller1912.pdf ウェブサイトの掲載日:令和1年12月17日、ウェブサイトのアドレス:http://www.taiho.co、http://www.taiho.co/news.html、http://www.taiho.co/go_r.html、http://www.taiho.co/newslist.html、http://www.taiho.co/news086.html、http://www.taiho.co/news/hohoemi_roller1912.pdf ウェブサイトの掲載日:令和2年1月8日、ウェブサイトのアドレス:http://www.taiho.co/demo、http://www.taiho.co/demo/go_r.html、http://www.taiho.co/demo/newslist.html、http://www.taiho.co/demo/news086.html、http://www.taiho.co/demo/news/hohoemi_roller1912.pdf ウェブサイトの掲載日:令和2年1月9日、ウェブサイトのアドレス:http://www.taiho.co、http://www.taiho.co/go_r.html、http://www.taiho.co/newslist.html、http://www.taiho.co/news086.html、http://www.taiho.co/news/hohoemi_roller1912.pdf
(73)【特許権者】
【識別番号】513036125
【氏名又は名称】株式会社タイホウ
(74)【代理人】
【識別番号】100154025
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 聡
(72)【発明者】
【氏名】豊川 剛司
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-062512(JP,A)
【文献】特開平07-124515(JP,A)
【文献】特開2005-74347(JP,A)
【文献】特開2014-237068(JP,A)
【文献】登録実用新案第3194800(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00-21/00
B05D 1/00-7/26
A46B 1/00-17/08
A46D 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシ部で覆われた筒体と、
前記筒体に挿入され前記筒体の長手方向の一方側に配置され、塗装用ハンドルから延びるシャフトを挿入するための挿入口を有する挿入部と、
前記筒体の内部であって、前記筒体の長手方向の他方付近に配置され、前記シャフトの一部を受ける軸受け部と、
前記筒体の内部であって、前記挿入部と前記軸受け部との間に配置され、前記シャフトの一部を保持する保持部とを備え、
前記筒体の他方が、前記筒体の一部により形成された第1部材により塞がれ
前記第1部材と前記軸受け部が当接している塗装用ローラ。
【請求項2】
前記軸受け部が、前記シャフトが入ってくる側の一方と、前記第1部材と当接する他方を有し、前記他方付近において、その外周に少なくとも1つの外リングを有し、前記外リングの外径は前記筒体の内径より大きい、請求項に記載の塗装用ローラ。
【請求項3】
前記軸受け部が、前記シャフトが入ってくる側の一方と、前記第1部材と当接する他方を有し、前記他方付近において、その内周に少なくとも1つの内リングを有している、請求項1または2に記載の塗装用ローラ。
【請求項4】
前記第1部材の外面がブラシ部で覆われている、請求項1~3のうちの1つに記載の塗装用ローラ。
【請求項5】
前記筒体と前記ブラシ部が熱溶着により接着されている、請求項1~3のうちの1つに記載の塗装用ローラ。
【請求項6】
前記筒体の外径が約1cmからその半分である、請求項1~5のうちの1つに記載の塗装用ローラ。
【請求項7】
樹脂でできているパイプに帯状のブラシ部を螺旋状に巻きつけながら前記パイプと接着する接着工程と、
前記ブラシ部が接着されたパイプを所定の長さで切断する切断工程と、
前記切断された一方と他方を有するパイプの他方を熱により融かすまたは変形させる工程と、
前記パイプの融かされた部分または変形した部分を前記パイプの中に配置し、第1部材を形成する形成工程と、
前記パイプの中にある前記第1部材まで、シャフトの一部を受けるための軸受け部を挿入する工程を包含する、ブラシ部が巻かれたパイプの製造方法。
【請求項8】
樹脂でできているパイプに帯状のブラシ部を螺旋状に巻きつけながら前記パイプと接着する接着工程と、
前記ブラシ部が接着されたパイプを所定の長さで切断する切断工程と、
前記切断された一方と他方を有するパイプの他方を熱により融かすまたは変形させる工程と、
前記パイプの融かされた部分または変形した部分を前記パイプの中に配置し、第1部材を形成する形成工程と、
前記第1部材を形成する工程よりも前に、シャフトの一部を受けるための軸受け部を前記パイプからその内に挿入する工程と、
前記シャフトの一部を保持する保持部を前記パイプに挿入し、その後、前記シャフトを挿入するための挿入部を圧入する工程を包含する、ブラシが巻かれたパイプの製造方法。
【請求項9】
樹脂でできているパイプに帯状のブラシ部を螺旋状に巻きつけながら前記パイプと接着する接着工程と、
前記ブラシ部が接着されたパイプを所定の長さで切断する切断工程と、
前記切断された一方と他方を有するパイプの他方を熱により融かすまたは変形させる工程と、
前記パイプの融かされた部分または変形した部分を前記パイプの中に配置し、第1部材を形成する形成工程とを包含し、
前記形成工程では、前記パイプをヒータに押しつけつつ回転させることにより、前記第1部材が形成され、
前記パイプの回転方向が、前記接着工程において前記パイプが回転する方向と同じである、ブラシが巻かれたパイプの製造方法。
【請求項10】
前記シャフトの一部を保持する保持部を前記パイプに挿入し、その後、前記シャフトを挿入するための挿入部を圧入する工程をさらに包含する、請求項7に記載のブラシが巻かれたパイプの製造方法。
【請求項11】
前記形成工程では、前記パイプをヒータに押しつけつつ回転させることにより、前記第1部材が形成され、
前記パイプの回転方向が、前記接着工程において前記パイプが回転する方向と同じである、請求項7、8または10に記載のブラシが巻かれたパイプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面や床面などを塗装するための塗装用ローラおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗装用ローラでは、筒体の外側にブラシ部などが設けられているものが多数存在する。そのような筒体の長手方向の一方には、ローラハンドルから延びる金属製のシャフトを挿入する入り口が設けられている。また、その筒体の長手方向の他方には、それに塗料が入り込まないようにキャップが配置され、それにより覆われているものもあり、そのような塗装用ローラとして、例えば、特許文献1および2に記載された塗装用ローラが知られている。
【0003】
特許文献1は、紙管内に塗料が侵入しないように紙管にキャップを嵌着させることを開示している(第5欄第18行~第20行)。
【0004】
特許文献2は、管状体の外面にブラシ部が接着され、先端が管状体の先端縁より外方に突出し、突出したブラシ部の一部がキャップ内へ押し込まれた状態で、キャップの内壁に接着されていることを開示している(段落[0009])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公平8-2434号公報
【文献】特許第3467232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の塗装用ローラでは、側面がブラシ部に覆われていないキャップであるため、キャップ部に表面張力等でへばりついている塗料が塗装中にたれ、塗りむらが生じる可能性がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の塗装用ローラでは、ブラシ部が筒体の中に折り込まれているが、例えば、筒体の内径が1cmの半分であり、ブラシ部の毛丈が4mmの場合、筒体の内部にブラシ部を折り込むことは非常に困難となる。
【0008】
実際に、従来、目隠しフェンスの隙間や、ルーバーの隙間や、ウッドデッキの隙間を塗装するような筒体の外径が小さい塗装用ローラは本発明がなされる前に存在しなかった。つまり、すでに設置された、目隠しフェンスの隙間や、ルーバーの隙間や、ウッドデッキの隙間を塗装することが従来できなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の塗装用ローラは、ブラシ部で覆われた筒体と、前記筒体に挿入され前記筒体の長手方向の一方側に配置され、塗装用ハンドルから延びるシャフトを挿入するための挿入口を有する挿入部と、前記筒体の内部であって、前記筒体の長手方向の他方付近に配置され、前記シャフトの一部を受ける軸受け部と、前記筒体の内部であって、前記挿入部と前記軸受け部との間に配置され、前記シャフトの一部を保持する保持部とを備え、前記筒体の他方が、前記筒体の一部により形成された第1部材により塞がれている。
【0010】
本発明のある実施形態では、前記軸受け部が、前記シャフトが入ってくる側の一方と、前記第1部材と当接する他方を有し、前記他方付近において、その外周に少なくとも1つの外リングを有し、前記外リングの外径は前記筒体の内径より大きい。
【0011】
本発明の別の実施形態では、前記軸受け部が、前記シャフトが入ってくる側の一方と、前記第1部材と当接する他方を有し、前記他方付近において、その内周に少なくとも1つの内リングを有している。
【0012】
本発明の他の実施形態では、前記第1部材の外面がブラシ部で覆われていてもよい。
【0013】
本発明のさらに他の実施形態では、前記筒体と前記ブラシ部が熱溶着により接着されていてもよい。
【0014】
本発明のある実施形態では、前記筒体の外径が約1cmからその半分であってもよい。
【0015】
本発明のブラシ部が巻かれたパイプの製造方法は、樹脂でできているパイプに帯状のブラシ部を螺旋状に巻きつけながら前記パイプと接着する接着工程と、前記ブラシ部が接着されたパイプを所定の長さで切断する切断工程と、前記切断された、一方と他方を有するパイプの他方を熱により融かすまたは変形させる工程と、前記パイプの融かされた部分または変形した部分を前記パイプの中に配置し、第1部材を形成する工程とを包含する。
【0016】
本発明のある実施形態では、前記パイプの中にある前記第1部材まで、シャフトの一部を受けるための軸受け部を挿入する工程をさらに包含してもよい。
【0017】
本発明の別の実施形態では、前記第1部材を形成する工程よりも前に、シャフトの一部を受けるための軸受け部を前記パイプからその内に挿入する工程をさらに包含してもよい。その場合、前記第1部材を形成する工程よりも前に、シャフトの一部を受けるための軸受け部が前記パイプの他方からその内に挿入されることが好ましい。
【0018】
本発明のさらに別の実施形態では、前記シャフトの一部を保持する保持部を前記パイプに挿入し、その後、前記シャフトを挿入するための挿入部を圧入する工程をさらに包含してもよい。
【0019】
本発明の他の実施形態では、前記形成工程では、前記パイプをヒータに押しつけつつ回転させることにより、前記第1部材が形成され、前記パイプの回転方向が、前記接着工程において前記パイプが回転する方向と同じであることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の塗装用ローラでは、シャフトが入ってくる側とは反対の筒体の他方が、その一部により形成された第1部材により塞がれている。これにより、本発明の塗装用ローラを塗料に浸したとき、筒体の他方から塗料が筒体の中に侵入することを防ぐことができる。筒体の一部により第1部材が形成されるため、特許文献1および2のように、筒体を塞ぐキャップを別に用意する必要がなく、余分な在庫を持つ必要もなくなる。
【0021】
本発明のある実施形態では、軸受け部と第1部材が当接している。シャフトまたはシャフトを保持する保持部により軸受け部は押されるが、予め軸受け部が第1部材と当接していれば、それ以上軸受け部が押され位置が変わることがない。
【0022】
本発明のある実施形態では、軸受け部が、他方付近において、その外周に少なくとも1つの外リングを有し、前記外リングの外径は前記筒体の内径より大きい。このため、軸受け部を筒体の中に固定することができる。
【0023】
本発明の別の実施形態では、軸受け部が、他方付近において、その内周に少なくとも1つの内リングを有している。このため、軸受け部と第1部材とを安定した状態で当接させることができる。また、内リングの補強により、筒体が軸受け部の外リングを押し返す力に対抗することができる。
【0024】
本発明の他の実施形態では、第1部材の外面がブラシ部で覆われており、そこに玉となるような塗料が付着することがない。このため、本発明の他の実施形態の塗装用ローラでは、第1部材の外面がブラシ部で覆われていないものに比べて、塗料の飛散を少なくすることができる。さらに、本発明の他の実施形態の塗装用ローラでは、第1部材の外面がブラシ部で覆われていないものに比べて、見栄えがよい。
【0025】
本発明のさらに他の実施形態では、筒体とブラシ部が熱溶着により接着され、有機溶剤系の塗料であっても、ブラシ部がめくれたり、剥がれたりすることがない。
【0026】
本発明のある実施形態では、前記筒体の外径が約1cmからその半分であるため、目隠しフェンスの隙間や、ルーバーの隙間や、ウッドデッキの隙間を塗装することができる。さらに、本発明のある実施形態では、雨樋と鼻隠しの間の狭い隙間や、縦樋と壁の間の狭い隙間を綺麗に塗装することができる。
【0027】
本発明のブラシ部が巻かれたパイプの製造方法では、パイプの融かされた部分または変形した部分をパイプの中に配置するため、パイプの他方を塞ぐキャップを用意する必要がない。これによ、キャップの、挿入、保管、管理、発注、および支払い等の手間を省くことができる。
【0028】
本発明のある実施形態では、パイプの中にある第1部材まで軸受け部を挿入するため、シャフトまたはシャフトを保持する保持部により軸受け部は押されるが、予め軸受け部が第1部材と当接していれば、それ以上軸受け部が押され位置が変わることがない。
【0029】
本発明の別の実施形態では、第1部材を形成する工程よりも前に、軸受け部をパイプの他方からその内に挿入するため、パイプの一方から軸受け部を挿入するようも移動させる距離および時間を短くすることができる。
【0030】
本発明のさらに別の実施形態では、シャフトの一部を保持する保持部がパイプに挿入され、その後、前記シャフトを挿入するための挿入部が圧入されるため、筒体の一部により第1部材が形成される塗装用ローラを製造することができる。
【0031】
本発明の他の実施形態では、形成工程において前記パイプをヒータに押しつけつつ回転させることにより第1部材が形成される。パイプの回転方向が、接着工程においてパイプが回転する方向と同じであるため、ブラシ部がほどけ落ちることがない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本発明の第1実施形態における塗装用ローラを構成する部品の切断部端面を示す概略図である。
図2】(a)は長筒体にマイクロファイバーを植毛した帯状の布が螺旋状に巻かれ、それらが接着されるところを示している概略図であり、(b)は筒体の他方にヒータが押しつけられているところを示している概略図であり、(c)は筒体の他方に整形器が押しつけられているところ示している概略図である。
図3図3は、本発明の第2実施形態における塗装用ローラの製造工程のフローを示した図である。
図4図4は、本発明の第3実施形態における塗装用ローラの製造工程のフローを示した図である。
図5】(a)は本実施形態のローラにて塗られた跡を示している図であり、(b)は従来のローラにて塗られた跡を示している図である。
図6】(a)は本実施形態のローラにて塗られた跡を示している図であり、(b)は従来のローラにて塗られた跡を示している図である。
図7】本実施形態のローラが目隠しフェンスの隙間を塗装することができることを示している図である。
図8】本実施形態のローラがルーバーの隙間を塗装することができることを示している図である。
図9】本実施形態のローラがウッドデッキの隙間を塗装することができることを示している図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0034】
図1は、本発明の第1実施形態における塗装用ローラ1を構成する部品の切断部端面を示す概略図である。
【0035】
塗装用ローラ1は、筒体10と挿入部20と保持部30と軸受け部40とを備えている。
【0036】
筒体10は、その長手方向Xにおいて一方11と他方12を有する中空の中空体13である。筒体10の一方11は、塗装用ハンドル(図示せず)から延びるシャフト(図示せず)を挿入口となるため中空のままである。しかし、筒体10の他方12は、塗料が筒体10の内部に流入することを防ぐため第1部材14により塞がれている。
【0037】
筒体10の素材は、樹脂であり、例えば、ポリプロピレンであってもよい。筒体10の素材が熱可塑性の樹脂である場合、第1部材14は、筒体10の他方の一部により形成される。具体的には、第1部材14は、もともと中空で塞がれていない筒体10の他方の一部を融かすまたは変形させることにより形成される。筒体10の外径は約1cmからその半分であってもよいし、筒体10の内径は、その外径より小さい条件で1cmの半分から数ミリメートルの間であってもよい。
【0038】
筒体10の外部はブラシ部(図示せず)で覆われている。ブラシ部はマイクロファイバーを植毛した布であることが好ましい。塗料の飛散などを抑えることができるからである。マイクロファイバーの毛丈は、2~5mmであってもよい。ブラシ部の素材は、筒体10の融点または軟化点よりも高いことが好ましい。ブラシ部の素材はポリエステルであってもよい。ポリエステルは、ポリプロピレンよりも融点および軟化点が高いからである。
【0039】
挿入部20は、その長手方向Xにおいて一方21と他方22を持つ中空体23と、筒体10の一方の端と当接する当接面24および塗装用ハンドルのシャフトを挿入部20に導くガイド面25を持つフランジ26と、中空体23の外面に複数の外リング27、28、29とを有している。フランジ26は塗装用ハンドルのシャフトを挿入するための挿入口として働く。外リング27、28、29外径は、筒体10の内径よりも大きく、挿入部20の当接面24が筒体10の一方の端11に接触するまで挿入部20を筒体10内に圧入することにより、挿入部20を筒体10の所定の位置に固定することができる。
【0040】
保持部30は、一方31と他方32を持つ中空体33を有している。中空体33の外径は筒体10の内径より小さいため、挿入部20が筒体10に圧入される前に、保持部30を筒体10の内部に容易に挿入することができる。
【0041】
中空体33の内径は塗装用ハンドルのシャフトの外径より小さいが、中空体33は長手方向に切れているため、塗装用ハンドルのシャフトを中空体33の内部に容易に挿入することができる。
【0042】
また、保持部30の外径は、挿入部20の内径より大きい。このため、塗装用ハンドルのシャフトを保持している保持部30がそのシャフトとともに挿入部20側に動かされたとしても、保持部30が挿入部20の中に潜り込むことはない。
【0043】
軸受け部40は、一方41と他方42を持つ中空体43と、中空体43の他方42付近であってその外面に複数の外リング44、45、46と、中空体43の他方42付近であってその内面に少なくとも1つの内リング47とを有している。
【0044】
また、軸受け部40は筒体10の内部であってその他方付近に配置されている。具体的には、軸受け部40は、筒体10の中で第1部材と当接している。
【0045】
外リング44、45、46の外径は、筒体10の内径よりも大きい。このたため、軸受け部の他方が筒体10からの力により例え歪んだとしても、外リング44、45、46が他方付近にあるため、軸受け部の一方は影響をうけにくい。
【0046】
複数の外リング44、45、46のそれぞれの長手方向Xの幅は、内リング47の長手方向Xの幅よりも短い。外リング44、45、46は、筒体10の内側に食い込むスパイクのような働きをするのに対して、内リング47は、外リング44、45、46を介して筒体10から受ける力に耐えるために、軸受け部を補強する働きをするからである。また、外リング44、45、46のうちの少なくとも1つの下に内リング47が配置されることが好ましい。
【0047】
また、中空体43の端と内リング47の端がともに軸受け部40の他方の端を形成していることが好ましい。軸受け部と第1部材とを安定した状態で当接させることができるからである。また、強度的に弱い端部を補強することができるからである。
【0048】
また、外リング46の端と中空体43の端と内リング47の端がともに軸受け部40の他方の端を形成していてもよい。強度的に弱い端部をさらに補強することができるからである。
【0049】
また、軸受け部40の内径は、保持部30の外径よりも小さい。このため、塗装用ハンドルのシャフトを保持している保持部30をそのシャフトとともに軸受け部40側に動かしたとしても、保持部30が軸受け部40の中に潜り込むことはない。なお、保持部30の外径は、挿入部20の外径よりも小さい。
【0050】
軸受け部40の外リング44、45、46を除いた部分の軸受け部40外径は、筒体10の内径と略同じである。なお、軸受け部40の外リング44、45、46の外径は、挿入部20の外リング27、28、29の外径よりも小さくてもよい。軸受け部40が第1部材まで押し込まれた後、軸受け部40が引き出される方向に力が加わらないからである。
【0051】
以下に、図2および図3を用いて本発明の第2実施形態である塗装用ローラの製造方法を説明する。図2は、本発明のある塗装用ローラの製造工程の一部を示した図であり、図3は、その製造工程のフローを示した図である。
【0052】
筒体10のもととなる長筒体100が用意される(ステップS10)。図2(a)に示すように、長筒体100にマイクロファイバーを植毛した帯状の布90が螺旋状に巻かれ、それらが接着される(ステップS20)。
【0053】
接着方法としては、長筒体100および布90の少なくとも一方に接着剤を塗布することにより行われてもよい。接着剤としては、ホットメルトが使用されてもよい。接着剤を塗布する装置としては、コーターが用いられてもよい。
【0054】
また、接着剤により接着するのではなく、高周波や超音波を用いて長筒体100および布90の少なくとも一方を融かすことにより、それらが接着されてもよい。溶剤系の塗料を塗る場合、高周波や超音波にて布90が接着された筒体110は、接着剤にて布90が接着された筒体110に比べて耐久性が高いからである。
【0055】
布90が螺旋状に巻かれた長筒体100は所定の長さ(位置95)で切断され(ステップS30)、上述した筒体110が形成される。
【0056】
布90を螺旋状に長筒体100に巻くために、例えば、布90が長筒体100の周りを回転しながら、長筒体100の長手方向Yであって布90の張力がたるまない方向に移動してもよい(第1の巻き方)。
【0057】
または、布90を螺旋状に長筒体100に巻くために、長筒体100が回転しながら、長筒体100の長手方向Yであって布90の張力がたるまない方向に移動してもよい(第2の巻き方)。
【0058】
第2の巻き方は、第1の巻き方に比べて布90が回転しないため、布90がなくなったときに新しい布90を接ぐのに適している。また、第2の巻き方は、第1の巻き方に比べて布90が回転しないため、布90の張力を一定にするダンサーロールなどのテンションコントローラを配置しやすい。また、第2の巻き方は、第1の巻き方に比べて、布90が長手方向Yに移動しないため、次の長筒体100を巻くのに初期位置に帰る必要がない。さらに、第2の巻き方では、例えば、布90が巻かれていない長筒体100を左から供給し、布90が巻かれた長筒体100を右に排出することにより、効率よく布が巻かれた長筒体100を生産することができる。
【0059】
図2(b)は、筒体110の他方112にヒータ160、162が押しつけられているところを示している概略図である。
【0060】
筒体110の一方111から回転棒(図示せず)が挿入され、それにより筒体110が回転させられつつ筒体110の他方112にヒータ160、162が押しつけられている。ヒータ160、162がその内側に移動することにより、筒体110の一部が融かされまたは変形させられ、それらが筒体110の他方の孔の中に押し込まれる(ステップS40)。
【0061】
具体的には、ヒータ160、162により筒体110の他方の部分が融けまたは変形し、その部分がヒータ160とヒータ162の内側への移動により筒体110の中心部分に集まろうとするが、筒体110が中空のため、中空部分に落ちていき、その後、筒体110の他方の孔を埋めていく。ここで、内側とは、図2(b)に矢印Zで示すように、筒体110の中心軸に向かう方向である。
【0062】
図2(b)に示される形状のヒータ160、162では、ヒータ160と、ヒータ162をその内側に移動させたが、ヒータの形状によっては、図2(b)を平面とした場合その法線方向にヒータを動かすことにより、筒体110の融けたまたは変形した部分を筒体の中空部分に押し込んでもよい。そのようなヒータの形状としては、例えば、図2(b)の紙面から飛び出す方向にヒータを動かした場合、端面の一片は、図2(b)に示されるヒータが筒体110と接する三角形の斜辺のように傾いているが、奥に行くほど、2つのヒータと筒体110が接する部分の距離が狭まるような形状である。
【0063】
また、ヒータ160、162の温度は、布90が融けるまたは変形する温度より低いことが好ましい。布90が融けたり変形すると、塗装用ローラの外見上の見栄えがよくないからである。
【0064】
図2(c)は、筒体110の他方に整形器170が押しつけられているところ示している概略図である。整形器170が、融けまたは変形している筒体110の他方の部分に押しつけられることにより、その他方の部分の形状が整形される(ステップS50)。これにより筒体110に他端には、第1部材が形成される。
【0065】
次に、軸受け部は、筒体110の一方にある入り口から筒体110の内部に挿入され、第1部材に当接するまで押し込まれる(ステップS60)。軸受け部は、ローラハンドルのシャフトを受ける部分であるため、筒体110にしっかり固定される必要があり、軸受け部の少なくとも一部の外径は、筒体110の内径よりも大きい。このため、軸受け部を筒体110の一方から他方付近まで押し込むことは、筒体110の他方の入り口が塞がれる前に、他方の入り口から他方付近に軸受け部を挿入することよりも難しい。しかし、軸受け部と筒体110の材質が同じまたは融点が近い場合、筒体110の他方の入り口が塞がれる前に、軸受け部を挿入したのでは、ヒータ160、162の熱により、軸受け部が変形してしまうことも考えられ、それを避けるために、第1部材が形成された後に、第2実施形態では、軸受け部が筒体110の中に挿入される。
【0066】
また、第1部材が当接している付近において、軸受け部の内周に内リングを有していることが好ましい。第1部材の形状は、筒体110の一方にある入り口からみた場合、中心部付近が出っ張った略半球状のような形状をしているが真球を切ったような理想的な形状ではない。このため、内リングが無いような筒が第1部材に当接した場合、その筒の縁が第1部材と当接する部分とそうでない部分が生じる可能性がある。一方、軸受け部の他方を平らなもので塞いだものである場合、第1部材の中心部分が出っ張っているため、軸受け部を偏りなく配置できるように思われるが、空気が邪魔になり、軸受け部を第1部材に当接するまで押し込むことはできない。軸受け部が内リングを有している場合、空気を逃がしつつ、第1部材の中心部分付近に軸受け部を当接させることができる。
【0067】
さらに、第1部材が当接している付近において、軸受け部がその外周に少なくとも1つの外リングを有している場合、その外周のリングがある付近で、且つ、軸受け部の内周に内リングを有していることが好ましい。筒体110の内径よりも外リングの外径が大きいため、軸受け部を筒部110に挿入する際に軸受け部の円筒の中心に向かって大きな力がかかるがそれを受け止めるためである。
【0068】
その後、筒体110の中には、シャフトを保持する保持部が、筒体110の一方にある入り口から筒体110の内部に挿入され(ステップS70)、その後、シャフトが挿入しやすいように挿入口がラッパ状になっている挿入部が筒体110に圧入され、挿入部のフランジの当接面が筒体110の一方の端部と当接する(ステップS80)。
【0069】
ところで、図2(b)および図2(c)では、筒体110、ヒータ160、162および整形器170が横を向いて記載されているが、筒体110は鉛直方向に立っていて、ヒータ160、162および整形器170もそれに適合するように配置されていることが好ましい。筒体110が横を向いていても、筒体110は回転することにより、筒体110の融けたまたは変形した部分の平準化は図れる。しかし、重力の影響のため、その形状がいびつになる可能性がある。筒体が鉛直方向に立って回転している場合、その形状がいびつになる可能性が低くなるからである。
【0070】
また、ステップS40にて筒体110が回転する方向は、ステップS20にて長筒体100が回転する場合、長筒体100が回転する方向と同じであることが好ましい。長筒体100が回転する方向と異なる方向に筒体110を回転させると、布90が筒体110から剥がれる恐れがあるからである。また、同様の理由で、ステップS40にて筒体110が回転する方向は、ステップS20にて布90が回転する場合、布90が回転する方向と同じであることが好ましい。
【0071】
また、ステップS50にて、ステップS40と同様に筒体110が回転してもよい。
【0072】
以下に、図2および図4を用いて本発明の第3実施形態である塗装用ローラの製造方法を説明する。図4は、その製造工程のフローを示した図であり、図2と同じステップ番号が振られたステップについてはその説明を省略する。
【0073】
第2実施形態では、筒体の他端を整形するステップS50と筒体の中に保持部を挿入するステップS70の間で軸受け部を筒体に挿入していたが、第3実施形態では長筒体を切断するステップS30と筒体の他端を加熱しながら融けた部分または変形した部分を筒体の中に押し込むステップS40の間で軸受け部を筒体に挿入する点が第2実施形態とは異なる。
【0074】
具体的には、筒体110の所定の位置まで軸受け部が挿入される(ステップS35)。ここで、第2実施形態と同じように、一方の入り口から他方の入り口まで軸受け部を押し込むことも考えられるが、他方の入り口から軸受け部を挿入して、他方の入り口付近で所定の位置まで軸受け部を押し込むことが好ましい。軸受け部が、筒体110の中を移動する距離が短くなるからである。この場合、軸受け部の融点は、筒体110の融点よりも高いことが好ましい。ヒータ160、162の熱により、軸受け部が融けたり、変形したりすることを避けることができるからである。
【0075】
なお、軸受け部と筒体110の材質が同じまたはそれぞれの融点が近い場合であっても、ヒータ160、162の温度およびヒータ160、162と筒体110との接触時間を調整することにより、軸受け部が融けたり、変形したりすることを避けることは可能である。
【0076】
軸受け部はその内周で他方付近に内リングを有していることが好ましい。軸受け部の内径が大きければ、第1部材が軸受け部内に入ってくる可能性があるが、軸受け部の内径が小さければ、第1部材が軸受け部内に入ってくる可能性が小さくなるからである。また、第2実施形態と同様に、軸受け部を筒部110に挿入する際に軸受け部の円筒の中心に向かって大きな力がかかるがそれを受け止めることができるからである。
【0077】
第1実施形態の塗装用ローラ並びに第2実施形態および第3実施形態にて製造された塗装用ローラは、筒体の他方を塞ぐ第1部材が筒体の一部でできているため、第2実施形態および第3実施形態は、筒体の外径が大きくないもの、例えば、筒体の外径が約1cm以下の塗装用ローラを製造することに向いている(なお、筒体の外径の下限値は1cmの半分ぐらいである)。
【0078】
以下に、筒体の外径が約6mmであり筒体の内径が1cmの半分以下である第1実施形態における塗装用ローラ(以下、本実施形態のローラと称する)(なお、筒体の内径の下限値は数ミリメートルである)と、筒体の外径が15mmである従来の塗装用ローラ(以下、従来のローラと称する)との塗装実験およびその結果について説明する。なお、本実施形態のローラと従来のローラのブラシ部はともに、マイクロファイバーが植毛されており、それぞれの毛丈は4mmである。
【0079】
実験1
図5は、壁と床に紙を貼り、本実施形態のローラと従来のローラにて、壁から壁と床の境まで塗った場合、どれぐらい床に塗料がつくのかを示した図である。図5(a)が本実施形態のローラにて塗られた跡であり、図5(b)が従来のローラにて塗られた跡である。図5(a)および図5(b)とも、中央の線を境にして、左側が壁側であり右側が床側である。
【0080】
本実施形態のローラと従来のローラとも、床に塗料が付着するが、本実施形態のローラは、従来のローラに比べ若干床への付着量が少ない。さらに、本実施形態のローラは、従来のローラに比べ、壁と床の境まで綺麗に塗られている。
【0081】
つまり、壁から壁と床の境まで塗った場合、本実施形態のローラの性能は、従来のローラのものよりも優れている。
【0082】
実験2
図6は、壁と床に紙を貼り、本実施形態のローラと従来のローラにて、床に塗料を付けることなく、壁からどれだけ壁と床の境の近くまで塗ることができるかを示した図である。図6(a)が本実施形態のローラにて塗られた跡であり、図6(b)が従来のローラにて塗られた跡である。図6(a)および図6(b)とも、中央の線を境にして、左側が壁側であり右側が床側である。本実施形態のローラは、従来のローラに比べて塗料が若干壁と床の境まで塗られている。つまり、壁から壁と床の境まで塗ろうとした場合、本実施形態のローラの性能は、従来のローラのものよりも優れている。
【0083】
また、本実施形態のローラであれば、すでに組み立てられた、図7に示される目隠しフェンスの隙間や、図8に示されるルーバーの隙間や、図9に示されるウッドデッキの隙間についてそれらをばらばらにすることなく塗装することができる。また、本実施形態のローラであれば、雨樋と鼻隠しの間の狭い隙間や、縦樋と壁の間の狭い隙間であっても、綺麗に塗装を行うことができる。
【符号の説明】
【0084】
1 塗装用ローラ
10 筒体
11 筒体の一方
12 筒体の他方
14 第1部材
20 挿入部
21 挿入部の一方
22 挿入部の他方
23 中空体
24 当接面
25 ガイド面
26 フランジ
27、27、29 外リング
30 保持部
33 中空体
40 軸受け部
41 軸受け部の一方
42 軸受け部の他方
43 中空体
44、45、46 外リング
47 内リング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9