(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】めっき用チャック装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20220106BHJP
C25D 17/06 20060101ALI20220106BHJP
C25D 17/10 20060101ALI20220106BHJP
C25D 7/12 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
H01L21/68 N
C25D17/06 C
C25D17/10 A
C25D7/12
(21)【出願番号】P 2020513842
(86)(22)【出願日】2017-09-07
(86)【国際出願番号】 CN2017100814
(87)【国際公開番号】W WO2019047086
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】510005650
【氏名又は名称】エーシーエム リサーチ (シャンハイ) インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン フゥイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジィェン
(72)【発明者】
【氏名】ジャ ヂャオウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ホンチャオ
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-127069(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0305038(US,A1)
【文献】国際公開第2017/092029(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0362809(US,A1)
【文献】特開2013-166999(JP,A)
【文献】特開平11-195622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
C25D 17/06
C25D 17/10
C25D 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切欠領域と前記切欠領域に隣接するパターン領域とを有する基板を保持するための、めっき用チャック装置であって、
前記基板の前記切欠領域を覆い、前記基板がめっきされるときに前記切欠領域の電界をシールドするように構成された、カバープレート
と、
下壁と、
前記下壁から上方に延びる側壁と、
前記側壁の上部から外側に延びる上壁とを有するシールドと、を備え
、
前記下壁は、水平方向に突出し、前記カバープレートを形成し、
前記カバープレートに開口又は複数の穴が設けられている、めっき用チャック装置。
【請求項2】
切欠領域と前記切欠領域に隣接するパターン領域とを有する基板を保持するための、めっき用チャック装置であって、
前記基板の前記切欠領域を覆い、前記基板がめっきされるときに前記切欠領域の電界をシールドするように構成された、カバープレート
と、
下壁と外壁と内壁とを有するシールシェルと、を備え
、
前記内壁は、湾曲し、リップシール部を形成し、
前記内壁は、水平方向に突出し、前記カバープレートを形成し、
前記カバープレートに開口又は複数の穴が設けられている、めっき用チャック装置。
【請求項3】
前記カバープレートは、前記基板の前記切欠領域に隣接する前記パターン領域の一部を覆う、請求項1
又は2に記載のめっき用チャック装置。
【請求項4】
前記カバープレートの形状が、前記切欠領域の形状に応じて調整される、請求項1
又は2に記載のめっき用チャック装置。
【請求項5】
前記カバープレートにおける前記基板の前記切欠領域からより離隔した一方の側面は、直線状又はアーク線状であり、前記カバープレートにおける前記基板の前記切欠領域により近接した他方の側面は、直線状、多角線状又はアーク線状である、請求項1
又は2に記載のめっき用チャック装置。
【請求項6】
前記カバープレートは、前記基板の中心と前記基板の切欠きとを通る軸に対して、対称又は非対称である、請求項1
又は2に記載のめっき用チャック装置。
【請求項7】
前記カバープレートと前記基板との間に間隙があり、前記間隙が前記カバープレートの変形量よりも大きく、前記カバープレートと前記基板との接触が回避される、請求項1
又は2に記載のめっき用チャック装置。
【請求項8】
前記カバープレートの材料は、プラスチック、ゴム、又は、断熱材料で被覆された金属である、請求項1
又は2に記載のめっき用チャック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、基板上に金属膜をめっきするためのめっき装置に関し、より詳細には、めっき工程中に基板を保持するためのめっき用チャック装置であって、基板の切欠領域の近傍におけるめっき膜を一様にできるめっき用チャック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造の技術分野において、めっきは、基板上に金属膜を析出するのに一般的に用いられる方法である。特に、先進的な実装技術においては、チップ基板の接続部の形成に用いられる銅柱や半田バンプが、一般に電気めっきにより、基板に形成される。これは、電気めっきが、簡素な工程、低コスト、大量生産が容易である等の、利点を有するためである。
【0003】
ウエハレベルパッケージの大量生産において、生産された基板は、その縁部に切欠領域を有する。切欠領域は、フォトレジストで覆われたままのため、導電性がなく、めっき工程においてめっきされない。切欠領域がめっきされないこと自体は問題ないが、切欠領域におけるめっき欠損により、切欠領域に隣接するパターン領域のめっき厚が大きくなり、切欠領域に隣接するパターン領域におけるめっき柱の高さが目標値よりも高くなってしまう。
【0004】
図19A及び
図19Bは、切欠領域の2つの典型的な例を示す。特に、
図19Aは、アーチ状の切欠領域5131と、切欠領域5131に隣接するパターン領域5132とを有する、基板513を示す。
図19Bは、実質的に矩形状の切欠領域7131と、切欠領域7131に隣接するパターン領域7132とを有する、基板713を示す。めっき工程中、切欠領域5131,7131がめっきされないため、パターン領域5132,7132の電場が大きくなり、パターン領域5132,7132におけるめっき量が、基板513,713の他のパターン領域におけるめっき量よりも多くなる。これにより、パターン領域5132,7132におけるめっき柱の高さが、工程要件の範囲外となってしまう。
図20Aに示されているように、
図20Aは、切欠領域に隣接するパターン領域におけるめっきが過剰になる理由の基本理念を示す。切欠領域2031は導電性がないため、めっき工程中、切欠領域2031に対応する仮想陽極2001からの電力線が、切欠領域2031に隣接するパターン領域2032に伝達される。これにより、パターン領域2032に過剰なめっきが施されてしまう。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、めっき工程中に基板を保持するためのめっき用チャック装置を提供することである。基板は、切欠領域と、切欠領域に隣接するパターン領域とを有する。本発明に係るめっき用チャック装置は、基板の切欠領域を覆い、基板がめっきされるときに切欠領域の電界をシールドするように構成された、カバープレートを有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、めっき工程において、基板の切欠領域を覆うカバープレートを利用して、切欠領域に対応する仮想陽極からの電力線をシールドし、切欠領域に隣接するパターン領域への作用を抑制する。これにより、切欠領域に隣接するパターン領域におけるめっき膜の厚みを小さくし、基板上のめっき膜を一様にできる。好ましくは、カバープレートは、切欠領域に隣接するパターン領域の一部も覆うことで、切欠領域に隣接するパターン領域の電界を弱め、切欠領域に隣接するパターン領域におけるめっき膜の厚みを小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る基板を保持するための装置を示す斜視図である。
【
図6】当該装置のチャックカップ、コンタクトリング及びシールシェルを示す展開図である。
【
図7】当該装置のシールシェルを示す斜視図である。
【
図10】
図9で囲まれた部分Fの部分拡大図である。
【
図11】当該装置のコンタクトリングの断面図である。
【
図13】本発明の別の実施形態における、押圧プレート及び導電リングを示す斜視図である。
【
図14】押圧プレート及び導電リングを示す上面図である。
【
図17a-17f】様々な形状の基板を示す図である。
【
図19A-19B】切欠領域の2つの典型的な例を示す図である。
【
図20A】切欠領域に隣接するパターン領域におけるめっきが過剰になる理由の基本理念を示す図である。
【
図22】本発明の例示的な実施形態に係るめっき用チャック装置の下面図である。
【
図25】めっき用チャック装置のシールドを示す斜視図である。
【
図26】本発明の別の実施形態におけるシールドの斜視図である。
【
図27】本発明の別の実施形態におけるシールシェルの斜視図である。
【
図30】本発明の別の実施形態におけるシールシェルの斜視図である。
【
図33A-33H】本発明におけるカバープレートの様々な形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、基板がめっき用電解液への浸漬等の処理を施されるときに、基板を保持するための装置を提供する。基板の表面上に金属膜をめっきするため、基板を電解液に浸漬する際、基板の表面の縁部と基板の裏面とを、電解液に接触しないよう保護する必要がある。そのため、本発明に係る装置は、従来技術とは異なり、シールシェルを利用して、基板がめっき用電解液に浸漬されるときに、電解液が基板の表面の縁部と基板の裏面とに到達するのを防止し、かつ、シールシェルを交換可能としている。
【0009】
図1~
図6を参照すると、本発明に係る基板を保持するための装置100が示されている。装置100は、チャックカップ101と、チャックプレート102とを有する。チャックカップ101は、カップ状の基部1011を有する。基部1011は、貫通した受容空間1012を画定している。基部1011は、下面と、外面と、内面とを有する。基部1011の内面は、基板113の負荷に対して有利になるよう、傾斜している。基部1011の上端は、外側に延び、鍔1013を形成している。基部1011の下端の内面は、上方に向かって斜めに突出し、基板113が受容空間1012に配置されたときに基板113を支持するための支持部1014を形成している。基部1011の下端に、溝1015が形成されている。チャックカップ101は、金属又は炭素繊維(ステンレス鋼、チタン、タンタル、アルミニウム合金等)からなる。
【0010】
チャックプレート102は、ユニバーサルシャフト105を介して、鉛直駆動装置103に接続されている。鉛直駆動装置103は、チャックプレート102を上下に駆動させる。基板113が受容空間1012に配置されて支持部1014に支持されると、鉛直駆動装置103がチャックプレート102を下方に駆動させ、基板113の裏面を押圧する。これにより、基板113がチャックカップ101及びチャックプレート102によってチャックされる。基板113の表面は、処理のため露出されている。処理完了後、鉛直駆動装置103がチャックプレート102を上方に駆動させ、チャックプレート102が基板113の裏面から離隔する。その後、基板113が受容空間1012から取り出される。鉛直駆動装置103は、シリンダ又はモータであってよい。基板113の裏面に接触するチャックプレート102には、複数の細穴1021が設けられている。チャックプレート102が基板113の裏面から離隔するとき、複数の細穴1021から、チャックプレート102と基板113の裏面との間の空間に、空気が容易に入り込む。これにより、基板113をチャックプレート102から取り外し易くなる。基板113をチャックプレート102から取り外し易くするため、さらに、ユニバーサルシャフト105内に設けられたガス管107を介して、基板113の裏面に窒素ガスを供給してもよい。チャックプレート102は、ポリプロピレン(PP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン・テレフタレート(PET)等からなる。
【0011】
基板113をチャックするためチャックプレート102が下方に駆動されたときの衝撃を和らげるため、チャックプレート102とチャックカップ101との間に、Oリング108が設けられている。また、Oリング108は、基板113が電解液に浸漬されるときに、電解液が受容空間1012に入り込むのを防止する。様々な工程要件を満たすよう、装置100は、角度制御駆動装置104と、回転駆動装置106とを有する。角度制御駆動装置104は、チャックプレート102及びチャックカップ101が処理のため基板113を固定するときに、チャックプレート102及びチャックカップ101を駆動させ、斜めに傾ける。回転駆動装置106は、チャックプレート102及びチャックカップ101が処理のため基板113を固定するときに、チャックプレート102及びチャックカップ101を駆動させ、回転させる。
【0012】
図7~
図10を参照すると、装置100のシールシェル111が示されている。シールシェル111は、下壁1111と、外壁1112と、内壁1114とを有する。外壁1112の先端は、突出部1113を有する。内壁1114は、湾曲し、リップシール部1115を形成している。内壁1114におけるリップシール部1115に接続する先端は、水平方向に突出し、固定部1116を形成している。シールシェル111は、チャックカップ101を包み込んでいる。特に、
図4及び
図5を参照すると、シールシェル111の下壁1111は、チャックカップ101の基部1011の下面を包み込んでいる。シールシェル111の外壁1112は、チャックカップ101の基部1011の外面を包み込んでいる。リップシール部1115は、チャックカップ101の支持部1014を包み込んでいる。シールシェル111の固定部1116は、チャックカップ101の溝1015に配置されている。シールシェル111とチャックカップ101とを互いに固定するため、チャックカップ101の鍔1013の下部に、固定リング109が設けられている。固定リング109は、シールシェル111の突出部1113を押圧し、チャックカップ101の鍔1013の下部に複数のねじ110で固定されている。シールシェル111の厚みは、0.1~2mm(好ましくは0.3~1mm)である。湿式工程中、シールシェル111のリップシール部1115は、基板113の表面の縁部をシールし、基板113の表面の縁部及び基板113の裏面に化学溶液が到達しないようにする。したがって、湿式工程の完了後、基板113の表面の縁部及び基板113の裏面は乾いている。また、シールシェル111がチャックカップ101を包み込んでいるため、シールシェル111がチャックカップ101を保護し、チャックカップ101が化学溶液に接することが防止され、チャックカップ101が化学溶液によって腐食するのを回避できる。シールシェル111の保護により、装置100により保持される基板113は、めっき等の工程において、化学溶液中に浸漬できる。化学溶液の液面レベルは、化学溶液が固定リング109及びねじ110を腐食させないよう、固定リング109よりも下側にある。
【0013】
シールシェル111は、成形により形成される。シールシェル111の材料は、ゴム(フッ素ゴム、シリコンゴム、ニトリル・ブタジエン・ゴム等)である。シールシェル111の材料は、プラスチック(テフロン等)であってもよい。シールシェル111の材料は、柔軟で、かつ、ある程度の硬度を有する。当該材料の硬度は、硬度計での計測で20~70(好ましくは40~60)である。シールシェル111の材料は、疎水性で、かつ、材料表面粗さRaが8μm未満である。
図18を参照すると、液滴301と基板313との接触角φが90°よりも大きい場合、基板313は疎水性である。接触角φは、材料表面粗さに関連する。接触角φは、材料表面粗さが大きくなるほど、小さくなる。材料表面が粗すぎる(材料表面粗さが8μmよりも大きい)と、シール効果が低下する。したがって、良好なシール効果を得るには、材料表面粗さが5μm未満であることが好ましい。
【0014】
シールシェル111の内壁1114は、水平面に対して角度αだけ傾いている。角度αは、90°よりも小さい。めっきのため基板113を電解液中に浸漬する必要があるとき、装置100は、基板113を保持し、その後、ロード位置又はアンロード位置からプロセス位置へと移動する。基板113全体が、電解液中に浸漬される。めっき工程中、装置100は回転し、その回転速度は3~200rpmである。基板113の浸漬工程中、シールシェル111の内壁1114に沿って、空気が押し出される。一方、めっき工程中、基板113の表面上で、水素ガスが生成され得る。当該水素ガスの気泡も、押し出される。さもなければ、空気又は気泡により、析出金属内にボイドが生じ得る。
【0015】
基板113の表面に金属膜を電気めっきするのに装置100が用いられる場合は、電流伝導のためにコンタクトリング112が設けられる。
図11及び
図12に示されているように、コンタクトリング112は、本体部1121と、複数の第1フィンガー部1122と、複数の第2フィンガー部1123とを有する。コンタクトリング112を取り付けるため、チャックカップ101の基部1011の下端が取り外し可能となっている。分かりやすく表現すると、チャックカップ101の基部1011の下端は、台座と称される。台座の下面には、複数の第1ねじ穴1016が設けられている。コンタクトリング112の本体部1121には、複数の第2ねじ穴1124が設けられている。コンタクトリング112の本体部1121とチャックカップ101の台座とチャックカップ101の基部1011とを互いに固定するため、複数のねじ114が第1ねじ穴1016及び第2ねじ穴1124を貫通している。複数の第1フィンガー部1122は、基板113の表面の縁部上のシード層と接触する。当該接点は、基板113の縁部からの距離が2mm未満である。電気めっき工程中、基板113は電源電極と接触し、コンタクトリング112を介して電流が流れる。チャックカップ101は、導通のため、導電材料からなる。複数の第2フィンガー部1123は、シールシェル111の固定部1116を押圧し、シールシェル111の固定部1116がチャックカップ101の溝1015内に固定されて、シールシェル111がチャックカップ101から脱離しないようにする。第1フィンガー部1122及び第2フィンガー部1123は、交互に設けられている。300mmの基板に対し、第1フィンガー部1122の数は200以上必要である。第1フィンガー部1122の数が少なすぎると、基板113上における電流の分布が一様でなくなり、基板113上において析出速度にむらが生じてしまう。コンタクトリング112は、導電材料(銅、チタン、イリジウム、タンタル、金、銀、白金、これらの合金等)からなる。コンタクトリング112は、ステンレス鋼、チタン、タンタル、アルミニウム、及び、白金又は金で被覆された合金からなってもよい。コンタクトリング112は、その他、導電性の高い材料からなってよい。好ましくは、コンタクトリング112は、ステンレス鋼からなる。
【0016】
図17a~
図17fに示されているように、基板113の形状は、円形、楕円形、三角形、正方形、長方形、八角形等であってよいことが理解されるであろう。また、これに対応して、チャックカップ101及びチャックプレート102は、基板113を収容するように設計される。
【0017】
シールシェル111及びコンタクトリング112を組み立てる際は、先ず、チャックカップ101の基部1011から台座を取り外す。その後、シールシェル111のリップシール部1115がチャックカップ101の支持部1014を包み込み、シールシェル111の固定部1116がチャックカップ101の溝1015内に配置される。複数のねじを用い、コンタクトリング112の本体部1121を、チャックカップ101の台座に固定する。このとき、コンタクトリング112の複数の第2フィンガー部1123が、チャックカップ101の溝1015内にあるシールシェル111の固定部1116を押圧する。次に、チャックカップ101の第1ねじ穴1016とコンタクトリング112の第2ねじ穴1124とに複数のねじ114を貫通させ、チャックカップ101の基部1011に台座を固定する。次に、シールシェル111の下壁1111及び外壁1112が、それぞれ、チャックカップ101の基部1011の下面及び外面を包み込む。最後に、固定リング109が、複数のねじ110を介してチャックカップ101の鍔1013の下部に固定され、シールシェル111の突出部1113を押圧する。
【0018】
装置100を用いた電気めっき工程は、以下のステップを含む。
【0019】
ステップ1: 装置100がロード位置又はアンロード位置に移動する。
【0020】
ステップ2: 鉛直駆動装置103がチャックプレート102を上方に駆動させる。
【0021】
ステップ3: 基板113がシールシェル111のリップシール部1115上に配置され、基板113の表面が露出して下方を向く。
【0022】
ステップ4: 鉛直駆動装置103がチャックプレート102を下方に駆動させ、基板113をチャックする。このとき、シールシェル111のリップシール部1115が、基板113の表面の縁部をシールし、コンタクトリング112の複数の第1フィンガー部1122が、基板113の表面の縁部上のシード層と接触する。
【0023】
ステップ5: 角度制御駆動装置104がチャックプレート102及びチャックカップ101を駆動させ、斜めに傾ける。
【0024】
ステップ6: 回転駆動装置106がチャックプレート102及びチャックカップ101を駆動させ、所定の回転速度で回転させる。また、この間に、装置100がプロセス位置に移動する。プロセス位置は、基板113が電解液中に浸漬される位置である。
【0025】
ステップ7: 角度制御駆動装置104がチャックプレート102及びチャックカップ101を駆動させ、回転させて、鉛直状態とする。
【0026】
ステップ8: 基板113の表面に金属膜を電気めっきするため、電流を流す。
【0027】
ステップ9: 電気めっき処理の完了後、装置100がリンス位置に移動し、高速で回転する。これにより、基板113の表面から電解液が洗い流される。
【0028】
ステップ10: 装置100がアンロード位置に移動し、基板113の裏面に窒素ガスが供給される。鉛直駆動装置103がチャックプレート102を上方に駆動させ、シールシェル111のリップシール部1115から基板113を取り出す。
【0029】
以上に述べたように、本発明に係る装置100は、チャックカップ101を包み込むシールシェル111を利用して、装置100が基板113を保持するのに用いられて基板113がめっき用電解液に浸漬されるときに、シールシェル111が、基板113の表面の縁部と、基板113の裏面と、チャックカップ101内のコンタクトリング112とを保護し、基板113の表面の縁部と、基板113の裏面と、チャックカップ101内のコンタクトリング112とに電解液が接触するのを防止する。シールシェル111は柔軟であり、チャックカップ101はシールシェル111よりも硬度が高い材料からなる。シールシェル111がチャックカップ101を包み込むとき、チャックカップ101は変形しない。シールシェル111は、基板113のチャック後、基板113にダメージを与えることなく穏やかに基板113の表面をシールする。シールシェル111のシール効果は、非常に良好である。また、シールシェル111の厚みは大きく、シールシェル111の寿命は長い。装置100が一定期間使用された後、コンタクトリング112及びシールシェル111を交換するだけでよく、装置100の他の部品は交換する必要がないため、製造コストを低減できる。
【0030】
図13~
図16を参照すると、別の実施形態では、導電のための導電リング201と、シールシェル111を固定するための押圧プレート202とが設けられている。導電リング201と押圧プレート202との組立体の機能はコンタクトリング112の機能と同じであり、コンタクトリング112を導電リング201と押圧プレート202との組立体に置換できる。装置が無電解めっきに使用される場合、導電リング201を省略してよいことが理解される。導電リング201は、基板113の表面の縁部と接触する複数のフィンガー部2011を有する。押圧プレート202は、導電リング201のフィンガー部2011に対応した傾斜部2021を有する。シールシェル111を組み立てる際は、先ず、チャックカップ101の基部1011から台座を取り外す。その後、シールシェル111のリップシール部1115がチャックカップ101の支持部1014を包み込み、シールシェル111の固定部1116がチャックカップ101の溝1015内に配置される。第1ねじ群を用い、押圧プレート202をチャックカップ101の台座に固定する。このとき、押圧プレート202が、チャックカップ101の溝1015内にあるシールシェル111の固定部1116を押圧する。次に、第2ねじ群を用いてチャックカップ101の台座を固定し、押圧プレート202及び導電リング201をチャックカップ101の基部1011に固定する。次に、シールシェル111の下壁1111及び外壁1112が、それぞれ、チャックカップ101の基部1011の下面及び外面を包み込む。最後に、固定リング109が、複数のねじ110を介してチャックカップ101の鍔1013の下部に固定され、シールシェル111の突出部1113を押圧する。
【0031】
図20Bを参照すると、
図20Bは、本発明の基本理念を示している。基板の切欠領域の近傍におけるめっき膜を一様にするため、カバープレートは、基板の切欠領域を覆い、基板がめっきされるときに切欠領域の電界をシールドするように構成されている。
図20Bに示されているように、めっき工程中、カバープレート3033が基板の切欠領域3031を覆うように構成されているため、切欠領域3031に対応する仮想陽極3001からの電力線がシールドされ、切欠領域3031に隣接するパターン領域3032への作用が抑制される。これにより、パターン領域3032におけるめっき膜の厚みを小さくでき、基板上におけるめっき膜を一様にできる。好ましくは、カバープレート303は、基板の切欠領域3031に隣接するパターン領域3032の一部も覆う。これにより、パターン領域3032の電界を弱め、パターン領域3032におけるめっき膜の厚みを小さくできる。
図21を参照すると、
図21は、効果の対比図を示す。
図21において、ライン1は、切欠領域を有さず、めっき工程において基板全体にめっきが施される、基板に対応するめっきデータである。めっき柱の高さは、切欠領域を有さない基板全体において、一様である。ライン2は、切欠領域を有するが、カバープレートを有さず、めっき工程中に切欠領域がカバープレートで覆われない、基板に対応するめっきデータである。めっき柱の高さは、切欠領域に隣接するパターン領域において、漸進的に大きくなっている。ライン3は、切欠領域及びカバープレートを有し、めっき工程中に切欠領域がカバープレートで覆われる、基板に対応するめっきデータである。めっき柱の高さは、切欠領域に隣接するパターン領域において、低減され、ライン1に近い。
図21から、カバープレートがある場合、カバープレートがない場合に比べて、めっき効果が明らかに良好になることが理解されるであろう。
【0032】
図22~
図25を参照すると、本発明の例示的な実施形態に係るめっき用チャック装置が示されている。めっき用チャック装置200は、装置100と類似している。めっき用チャック装置200と装置100との主な相違点は、めっき用チャック装置200がシールド2040を有する点である。めっき用チャック装置200の構造において、装置100と同様の部分については、説明を省略する。以下、シールド2040について説明する。
【0033】
図25に示されているように、シールド2040は、下壁2041と、下壁2041から上方に延びる側壁2042と、側壁2042の上部から外側に延びる上壁2043とを有する。下壁2041は、水平方向に突出し、カバープレート2044を形成している。本実施形態では、カバープレート2044に1つの開口2045が設けられている。開口2045は、細長い切り口である。開口2045は、下壁2041に隣接している。シールド2040は、プラスチック、ゴム、又は、断熱材料で被覆された金属からなる。
【0034】
組立時において、シールド2040の下壁2041は、シールシェル111の下壁1111にしっかりと密着し、シールシェル111の下壁1111の一部(下壁1111の2/3程度)を包み込む。シールド2040の側壁2042は、シールシェル111の外壁1112にしっかりと密着する。シールド2040の上壁2043は、チャックカップ101の鍔1013にしっかりと密着し、ねじ等の固定部材によってチャックカップ101の鍔1013に固定される。このように、シールド2040の上壁2043は、固定リング109の代わりにシールシェル111の突出部1113を押圧し、さらにはシールシェル111を固定する。したがって、本実施形態では、固定リング109を省略できる。シールド2040のカバープレート2044は、めっき用チャック装置200により保持された基板213の切欠領域を覆うように構成されている。基板213とカバープレート2044との間には間隙があり、当該間隙はカバープレート2044の変形量よりも大きく、カバープレート2044と基板213との接触が回避される。上記間隙は、0.5~8mm(好ましくは、4mm)である。
【0035】
めっき中、シールド2040のカバープレート2044は、基板213の切欠領域を覆い、基板213の切欠領域に対応する仮想陽極からの電力線がシールドされるため、基板213の切欠領域に隣接するパターン領域への作用が抑制される。これにより、基板213の切欠領域に隣接するパターン領域におけるめっき膜の厚みを小さくでき、基板213上におけるめっき膜を一様にできる。好ましくは、シールド2040のカバープレート2044は、切欠領域に隣接するパターン領域の一部も覆う。これにより、パターン領域の電界を弱め、パターン領域におけるめっき膜の厚みを小さくできる。基板213とシールド2040のカバープレート2044との間の空間にある電解液は、シールド2040の開口2045を通って流れる。このようにして、電解液の流れが形成される。めっき用チャック装置200が、基板213の切欠領域を覆うカバープレート2044を有するため、めっき工程中、カバープレート2044を有するシールド2040は、めっき用チャック装置200と共に回転する。めっき用チャック装置200は、基板213がめっきされる間、基板213を保持した状態で、一定速度又は不定速度で回転可能である。めっき効果に影響はない。
【0036】
図26を参照すると、本発明の別の実施形態に係るシールド2640が示されている。シールド2640は、下壁2641と、下壁2641から上方に延びる側壁2642と、側壁2642の上部から外側に延びる上壁2643とを有する。下壁2641は、水平方向に突出し、カバープレート2644を形成している。本実施形態では、カバープレート2644に複数の開口2645が設けられている。めっき中、シールド2640のカバープレート2644は、基板213の切欠領域を覆う。好ましくは、シールド2640のカバープレート2644は、基板の切欠領域に隣接するパターン領域の一部も覆う。基板とシールド2640のカバープレート2644との間の空間にある電解液は、シールド2640の複数の開口2645を通って流れる。このようにして、電解液の流れが形成される。シールド2640は、プラスチック、ゴム、又は、断熱材料で被覆された金属からなってよい。
【0037】
本発明の別の実施形態を示す、
図27~
図29を参照されたい。めっき用チャック装置のシールシェル2711が示されている。シールシェル2711は、下壁27111と、外壁27112と、内壁27114とを有する。外壁27112の先端は、突出部27113を有する。内壁27114は、湾曲し、リップシール部27115を形成している。内壁27114におけるリップシール部27115に接続する先端は、水平方向に突出し、固定部27116を形成している。内壁27114は、水平方向に突出し、カバープレート27117を形成している。本実施形態では、カバープレート27117に1つの開口27118が設けられている。開口27118は、細長い切り口である。開口27118は、内壁27114に隣接している。別の方法により、カバープレート27117を形成してもよい。所望の形状のカバープレート27117が、接着剤等により、内壁27114に水平方向に固定される。めっき中、カバープレート27117は、基板の切欠領域を覆う。好ましくは、カバープレート27117は、基板の切欠領域に隣接するパターン領域の一部も覆う。基板とカバープレート27117との間の空間にある電解液は、開口27118を通って流れる。このようにして、電解液の流れが形成される。
【0038】
本発明の別の実施形態を示す、
図30~
図32を参照されたい。めっき用チャック装置のシールシェル3011が示されている。シールシェル3011は、下壁30111と、外壁30112と、内壁30114とを有する。外壁30112の先端は、突出部30113を有する。内壁30114は、湾曲し、リップシール部30115を形成している。内壁30114におけるリップシール部30115に接続する先端は、水平方向に突出し、固定部30116を形成している。内壁30114は、水平方向に突出し、カバープレート30117を形成している。本実施形態では、カバープレート30117に複数の開口30118が設けられている。めっき中、カバープレート30117は、基板の切欠領域を覆う。好ましくは、カバープレート30117は、基板の切欠領域に隣接するパターン領域の一部も覆う。基板とカバープレート30117との間の空間にある電解液は、複数の開口30118を通って流れる。このようにして、電解液の流れが形成される。
【0039】
図33A~
図33Hを参照すると、カバープレートの様々な形状が示されている。これらの図では、黒い部分がカバープレートを示す。これらの図から、カバープレートが、基板の中心と基板の切欠きとを通る軸に対して、対称又は非対称であってよいことが理解されるであろう。カバープレートにおける基板の切欠領域からより離隔した一方の側面は、直線状又はアーク線状であり、カバープレートにおける基板の切欠領域により近接した他方の側面は、直線状、多角線状又はアーク線状であってよい。カバープレートの形状は、切欠領域の形状に応じて調整される。
【0040】
本発明に係るめっき用チャック装置は、基板の切欠領域を覆うカバープレートを有するため、めっき工程中、カバープレートはめっき用チャック装置と共に回転する。めっき用チャック装置は、基板がめっきされる間、基板を保持した状態で、一定速度又は不定速度で回転可能である。めっき効果に影響はない。
【0041】
本発明に関する上述の説明は、例示及びの説明の目的で提示されたものである。網羅的であること、又は、上記の正確な形態に本発明を限定することは、意図されていない。上述した教示の観点から、多くの修正および変更が可能であることは、明らかである。当業者にとって明らかな修正および変更は、特許請求の範囲において定義される本発明の範囲に含まれる。