(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】軸付きパネル部材、壁パネル及び梁部構造
(51)【国際特許分類】
E04B 2/56 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
E04B2/56 605E
E04B2/56 622J
E04B2/56 621J
E04B2/56 611C
(21)【出願番号】P 2021111348
(22)【出願日】2021-07-05
【審査請求日】2021-08-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591000757
【氏名又は名称】株式会社アクト
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 出
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特許第5404007(JP,B2)
【文献】特開平10-245932(JP,A)
【文献】特開平07-305410(JP,A)
【文献】特開平11-200554(JP,A)
【文献】特開2001-303663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/56
E04C 2/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造軸組建築物の軸材に取り付けられるパネル部材であって、
方形をなす板材からなる芯板部と、
前記芯板部の表裏両面における4辺の縁部に固定されて前記芯板部を挟む角材からなる縁取り部で構成され、
前記芯板部の外周の端面が前記縁取り部の外周面と面一である
耐力付与パネル部材における平行な2辺に、前記軸材の横断面に相応する横断面を有した軸部材の側面が接合された
軸付きパネル部材。
【請求項2】
前記芯板部の表裏両面の前記縁取り部が、一方の前記角材を貫通し他方の前記角材に挿入される固定具で互いに結合され、
前記縁取り部の内側に、前記縁取り部の内周面を露出させる凹所が形成された
請求項1に記載の
軸付きパネル部材。
【請求項3】
前記芯板部と前記縁取り部を合わせた厚みが、取付け対象である前記軸材と同じ厚みである
請求項1または請求項2に記載の
軸付きパネル部材。
【請求項4】
前記耐力付与パネル部材が前記軸部材間において、前記軸材の横断面に相応する横断面を有した束材を介して並設された
請求項1
から請求項3のうちいずれか一項に記載の軸付きパネル部材。
【請求項5】
前記軸部材の少なくとも一部の端部に、前記軸材に接合するための接合金物を備えた
請求項1
から請求項4のうちいずれか一項に記載の軸付きパネル部材。
【請求項6】
請求項
1から請求項
5のうちいずれか一項に記載の軸付きパネル部材を組み込んだ
壁パネル。
【請求項7】
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の軸付きパネル部材を組み込んで、2本の前記軸部材として梁形成位置で横架される貫材と前記耐力付与パネル部材の上で横架される梁材を備えた
梁部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、木造軸組建築物の構築やリフォーム、補強などに好適に用いられるような耐力付与パネル部材に関する。
【背景技術】
【0002】
木造軸組建築物は、温かみや調湿作用があり、断熱性に優れ環境負荷が少なく、人にやさしい、間取りの自由度が高い、増改築やリフォームが行い易いといった数々のメリットがある。このような木造軸組建築物の耐震性を得るため、従来、耐力壁が利用されてきた。耐力壁は、その使用量や配置が計算されて、筋交いや耐力面材によって構成される。
【0003】
施工性を向上するため、下記特許文献1に開示されているように耐力壁をパネル化した耐力パネルが提案されている。この耐力パネルは、外周フレームの内側に水平補強部と垂直補強部を備えたものであり、これら補強部は、木造軸組建築物の軸組を構成する線部材の太さと同等の太さの横軸材又は縦軸材と、これらと外周フレームとの間に保持される面材で構成されている。
【0004】
このような構成の耐力パネルは、軸組に嵌め込むだけで高い耐力を有する耐力壁を構成でき、施工性が良好で、熟練工なしでも短期で構築が可能である点で、非常に有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の耐力パネルは、壁の大きさに形成されており、大きい。また、前述のように耐力壁は配置等をあらかじめ設計しなければならないので、増改築やリフォーム、補強を行う場合には、いささか使い勝手が悪い。
【0007】
これまで、耐力壁の形成のために壁よりも小さい一つ部材として使用できるパネル部材は存在しない。
【0008】
この発明は、木造軸組建築物の構築をはじめ、増改築やリフォーム、既存建物の補強、壁パネルの製造などに使用可能な耐力付与パネル部材を提供して、熟練工が減少する状況下でも数々の利点を有する木造軸組建築の利用を促進できるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのための手段は、木造軸組建築物の軸材に取り付けられるパネル部材であって、方形をなす板材からなる芯板部と、前記芯板部の表裏両面における4辺の縁部に固定されて前記芯板部を挟む角材からなる縁取り部で構成され、前記芯板部の外周の端面を前記縁取り部の外周面と面一である耐力付与パネル部材における平行な2辺に、前記軸材の横断面に相応する横断面を有した軸部材の側面が接合された軸付きパネル部材である。
【0010】
この構成では、角材からなる縁取り部が板材からなる芯板部の全周である4辺を表裏両面から挟んで固め、芯板部の全体を平らに維持する。芯板部の4辺の端面と、これらと面一の縁取り部の外周面は、平らであり、芯板部と縁取り部との相互間の位置ずれが防止される。耐力付与パネル部材は、木造軸組建築の軸材の側面に接して、接した軸材同士を拘束してそれらの位置関係を維持するとともに、軸材から掛かる荷重を主に面である芯板部で支える。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、これまでにない軸付きパネル部材によって木造軸組建築物の耐震性向上が容易にでき、多くの利点を有する木造軸組建築の利用を将来にわたって促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】
図1のA-A断面図と、耐力付与パネル部材の側面図。
【
図3】耐力付与パネル部材の使用態様の一例を示す斜視図。
【
図7】軸付きパネル部材要部の斜視図と接合金物の斜視図
【
図8】軸付きパネル部材要部の斜視図と接合金物の正面図。
【
図10】外壁パネルを内側から見た正面図と断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0014】
図1に、耐力付与パネル部材11の斜視図を示す。耐力付与パネル部材11は、木造軸組建築物の軸材、すなわち柱材や梁材、土台や大引きなど荷重を支える線状の部材に、添わせて取り付けられるものであって、面方向を立てて軸材に固定することによって、垂直構面の耐力を向上する。また耐力付与パネル部材11を、その面方向を水平に寝かせて軸材に固定した場合には、水平構面の耐力を向上するものとなる。
【0015】
このように耐力付与パネル部材11は軸材に添えて使用されるものであり、その面積は自ずと、軸材で囲まれる壁面などひとかたまりの部分(この発明では便宜上、「単位面」という)の面積よりも小さいものとなる。耐力付与パネル部材11の長さについては、単位面のいずれかの辺と同じ長さの場合がある。
【0016】
耐力付与パネル部材11は、方形をなす芯板部12と、芯板部12の表裏両面における4辺の縁部に固定されて芯板部12を挟む縁取り部13で構成されており、これらは一体に結合されている。芯板部12の外周の端面12aは縁取り部13の外周面13aと面一であり、耐力付与パネル部材11の4つの外側面11aは全体が平らである。
【0017】
芯板部12は一枚の板材21で構成されており、この例の芯板部12の形状は、4つの角がすべて直角の四角形であり、この例の芯板部12は長方形である。芯板部12の大きさは、単位面における使用する部位に応じて形成されるが、長手方向の長さは曲げモーメント等を考慮して長くなりすぎないように設定する。使用する部位の長手方向の長さが長くなる場合には、複数の耐力付与パネル部材が並べられる。
【0018】
芯板部12の厚みは必要な耐力を考慮して設定される。芯板部12に用いられる板材21には、構造用合板のような耐力面材からなる板材が好適に使用できる。
【0019】
表裏双方の縁取り部13は、それぞれ4本の角材31からなり、四角い枠状に組んで構成される。
図1のA-A断面図である
図2(a)に示したように、角材31は横断面形状が長方形であり、そのたてaとよこbの長さは、たてaの方が長く形成されている。なお、
図2(b)は、耐力付与パネル部材11の部分側面図である。
【0020】
ここで、たてaは、角材31の横断面における耐力付与パネル部材11の厚さtに対応する方向であり、よこbは、縁取り部13の幅wに対応する方向である。
【0021】
表裏両面の縁取り部13に使用される角材31の横断面形状はすべて同寸である。つまり、芯板部12の表裏に配設された縁取り部13における耐力付与パネル部材11の厚さt方向の厚さは互いに同じである。このため、この説明において「表」と「裏」の表現はしているものの、耐力付与パネル部材11は表裏の区別なく使用できる。
【0022】
また、芯板部12と縁取り部13を合わせた厚み、つまり耐力付与パネル部材11の厚さtは、取付け対象である軸材A、具体的には軸材Aにおける接合する側面の幅waと同じである。接合される軸材Aの横断面形状が正方形ではなく長方形である場合には、いずれか一方の側面の幅wa,wbと同じであればよい。また接合される複数の軸材Aの側面の幅が異なる場合には、いずれか一方の軸材の側面の幅と同じであるとよい。
【0023】
4本の角材31は、45度に切り落として形成した端面同士を接合してもよいが、この例の角材31は、端部を直角に切り落として、一の角材31の小口31a(端面)を、他の角材31の側面31bに突き合わせて他の角材31の小口31aを露出した状態で固定する。
【0024】
このような芯板部12と縁取り部13は、釘や木ねじのような固定具14で互いに固定される。すなわち、芯板部12の表裏両面の縁取り部13は、一方の角材31を貫通し他方の角材31に挿入される固定具14で互いに結合される。具体的には、
図2に示したように例えば木ねじ14a,14bで固定するとよい。
【0025】
木ねじ14a,14bは、長さが長い木ねじ14aとそれよりも短い木ねじ14bの2種類を用い、それぞれ縁取り部13を構成する角材31に略等間隔に複数本ずつ打たれている。
【0026】
図2(b)に示したように、長さの長い木ねじ14aは、角材31のたてaの長さと芯板部12の厚さを足したよりも長く、耐力付与パネル部材11の厚さtよりも短い長さである。一方、長さの短い木ねじ14bは、角材31のたてaの長さと芯板部12の厚さを足したよりも短く、芯板部12の厚さよりも長い長さである。
【0027】
短い方の木ねじ14bは、芯板部12から表裏のうち一方の縁取り部13の角材31に向けて打ち込まれる。長い方の長い木ねじ14aは、短い方の木ねじ14bが撃ち込まれた一方の縁取り部13の角材31に打ち込まれて、芯板部12を貫通して他方の縁取り部13の角材31に挿入される。このように長さの長い木ねじ14aと長さ短い木ねじ14bの挿入方向は相反する方向である。
【0028】
これらの木ねじ14a,14bのほか、直角をなす部分の一方の角材31の側面から他方の角材31の小口31aにかけて木ねじ14aは打たれる。また仕上げ釘(図示せず)を用いて角材31同士の接合部分などの結合を更に行ってもよい。
【0029】
このように木ねじ14aで一体化された芯板部12と縁取り部13からなる耐力付与パネル部材11は、互いに直角をなす一定幅の4つの外側面11aを有する。また耐力付与パネル部材11は、表裏両面の縁取り部13の内側に長方形をなす凹所11bを有することになる。凹所11bは縁取り部13の内周面13bを露出させる。
【0030】
長方形に裁断された芯板部12は、その4辺が前述の縁取り部13、つまり横断面長方形をなす製材された角材31で挟また状態で固められるので、波打つように歪みやすい板材21からなる芯板部12の4つの角部は正確な直角に規制される。これに加えて、縁取り部13を構成する角材31の端部は直角に切断され、その小口(端面)31aが他方の角材31の側面31bに当てられて角材31同士が接合しているので、縁取り部13の角部に正しい直角を出すことができる。
【0031】
しかも、縁取り部13を構成する角材31は、たてaの方がよこbよりも長い横断面形状であるので、より強固に芯板部12を固められる。
【0032】
この結果、耐力付与パネル部材11における互いに隣接する外側面11a同士はねじれがなくて正しい直角をなす平らな面となる。
【0033】
以上のように構成された耐力付与パネル部材11は、木造軸組建築物における強度を必要とする部位の軸材Aに固定される。
図3はその一例を示し、軸材Aである柱材41の上部間に固定する例である。柱材41間に、軸材Aである貫材42をかけ渡し、その上に耐力付与パネル部材11を固定するとともに、耐力付与パネル部材11を柱材41に対しても固定する。さらに、耐力付与パネル部材11の上に軸材Aである梁材43をかけ渡して梁材43を耐力付与パネル部材11に固定するとともに、梁材43を柱材41に対しても固定する。この例における軸材Aである柱材41、貫材42及び梁材43の横断面形状は正方形であり、それらの大きさは同じである。
【0034】
固定は、図示しない適宜の接合金物や固定具を用いて行われる。耐力付与パネル部材11を柱材41や貫材42、梁材43に固定する際に釘や木ねじのような固定具を用いる場合には、固定具は縁取り部13の内周面13bから柱材41等に向けて打ち込まれる。固定によって、耐力付与パネル部材11は柱材41と貫材42と梁材43によって全周が囲まれるとともに、これらに対して一体化する。
【0035】
固定状態において、耐力付与パネル部材11は左右の柱材41を平行に規制し、同時に、貫材42及び梁材43を柱材41に対して直角に拘束して、垂直構面を構成する。
【0036】
このとき、耐力付与パネル部材11の縁取り部13は芯板部12の縁部を固めつつ柱材41等との仲立ちをして柱材41等に対する固定状態を維持する。芯板部12は縁取り部13に補助された状態で荷重を面で支持し全体に分散しつつ耐力を発揮する。
【0037】
前述のように耐力付与パネル部材11の互いに隣接する外側面11a同士は正しい直角を出すことができるので、荷重の支持は極めて良好に行えるうえに、固定対象の軸材A同士の拘束も正しく行える。
【0038】
特に、芯板部12の表裏両面の縁取り部13が、一方の角材31を貫通し他方の角材31に挿入される固定具14で互いに結合されているので、一体性は高い。このため、縁取り部13が芯板部12の縁部を固める高い効果が期待できる。
【0039】
また、縁取り部13の内側に、縁取り部13の内周面13bを露出させる凹所11bが形成されているので、耐力付与パネル部材11を柱材41等に対して固定する作業が行い易い。
【0040】
しかも、芯板部12と縁取り部13を合わせた厚みが、取付け対象である軸材Aと同じ厚みであるので、耐力付与パネル部材11を必要箇所に当てて側面を面一に揃えるだけで、適正な位置関係が得られるので作業性が良い。
【0041】
つぎに、
図4~
図9を用いて、前述の耐力付与パネル部材11を用いた軸付きパネル部材51について説明する。
【0042】
軸付きパネル部材51は、耐力付与パネル部材11における平行な2辺に、軸材Aの横断面に相応する横断面を有した軸部材Sの側面を接合して構成されている。
【0043】
ここで「軸材Aの横断面に相応する横断面」とは、軸部材Sの横断面の形状と大きさが木造軸組建築物の躯体を構成する軸材Aの横断面のそれらと同じもの、同じようなもの、又はそれ以上の大きさのものであるほか、横断面のたてよこのいずれか一方の値が同じであって、軸材Aと同様に荷重を支持し得るものであることをいう。この例における軸材Aの横断面形状は正方形である。全部又は一部の軸材Aや軸部材Sがその他の横断面形状を有するものであってもよい。
【0044】
耐力付与パネル部材11と軸部材Sは、
図4のB-B断面図である
図5に示したように、木ねじ14a等の固定具14を耐力付与パネル部材11の縁取り部13の内周面13bから軸部材Sにかけて打ち込んで固定している。
【0045】
図6に例示した軸付きパネル部材51は、耐力付与パネル部材11が軸部材S間において、軸材Aの横断面に相応する横断面を有した束材52を介して並設されたものである。併設される耐力付与パネル部材11の長さや数は、使用する部位に応じて適宜設定される。
図6の軸付きパネル部材51は、同じ大きさの2枚の耐力付与パネル部材11を並設している。
【0046】
束材52の横断面は軸部材Sの横断面と同じ形状・大きさであり、軸部材Sの長手方向の中間位置にその小口52aが接合されている。束材52の長さは、耐力付与パネル部材11の短辺の長さと同じであり、束材52は耐力付与パネル部材11と共に2本の軸部材S間に固定されている。
【0047】
耐力付与パネル部材11の束材52に対する固定は、前述と同様に、木ねじ等の固定具を耐力付与パネル部材11の縁取り部13の内周面13bから束材52にかけて打ち込んで行う。
【0048】
これらのように構成された軸付きパネル部材51は、軸部材Sを横にして軸材A、例えば柱材や大引、梁材などの間に固定される。軸部材Sは軸材Aに対して適宜の接合金物を用いて固定される。軸付きパネル部材51の長手方向の両端における耐力付与パネル部材11の露出面は軸材Aに接し、押さえられる。
【0049】
このような軸付きパネル部材51は、軸部材Sを備えているので、
図3に示したように耐力付与パネル部材11を単独で使用する場合と比べて、部材点数を少なくでき、施工の簡素化をはかれる。
【0050】
軸付きパネル部材51は、
図7,
図8に示したように、軸部材Sの少なくとも一部の端部に、軸材Aに接合するための接合金物53を備えたものであるとよい。接合金物53を備える位置は、2本の軸部材Sのうち、2本の軸部材Sにおけるそれぞれの両端部であるほか、いずれか1本の軸部材Sの両端部である場合や、軸部材Sの一方側の端部のみである場合などがある。
【0051】
接合金物53には適宜の金具が使用でき、図示例の接合金物53は一例であるが、接合金物53には大きく分けて2つある。すなわち、ボルトが螺合するナット部を有する雌型の接合金物53aと、ナットに螺合するボルト部を有する雄型の接合金物53bである。
【0052】
図7(a)の軸付きパネル部材51は、上下2本の軸部材Sの端部に、雌型の接合金物53aを備えた例を示している。雌型の接合金物53aは金属製であり、
図7(b)に示したように、ナット部を有する本体部54と、本体部54に一体で軸部材Sに対してその長手方向に差し込まれる差し込み片55で構成されている。
【0053】
本体部54は平行な2枚の保持板54aと、保持板54a間に保持されて中心に雌ねじを有するナット部材54bを有している。差し込み片55は、長方形の平板状であり、ドリフトピン56を挿通して固定するための複数の貫通穴55aを有している。
【0054】
このような構成の軸付きパネル部材51は、その長手方向の端面を軸材Aの側面に突き合わせて、例えば軸材Aの反対側から挿入するボルト57の先端をナット部材54bに螺合して締め付けると、軸材Aに対して強固に固定できる。
【0055】
図8(a)の軸付きパネル部材51は、上下2本の軸部材Sの端部に、雄型の接合金物53bを備えた例を示している。雄型の接合金物53bは金属製であり、
図8(b)に示したように、ボルト部を有する本体部54と、本体部54に一体で軸部材Sに対してその長手方向に差し込まれる差し込み片55で構成されている。
【0056】
本体部54は軸部材Sの横断面に対応する大きさの直方体箱状に形成され、相反する2つの側面に開口54cを有している。本体部54内には、差し込み片55の長手方向と同じ方向に貫通するボルト部としてのボルト58が備えられている。つまりボルト58の先端は本体部54の先端面から突き出し、後端は差し込み片55に形成された切欠き55b内に存在している。ボルト58における本体部54内に対応する位置には、回転用ナット58aが相対回転不可に備えられている。また回転用ナット58aよりも差し込み片55側の部分には2個のナット58b,58cが相対回転可能に保持されている。ボルト58はその長手方向で移動可能である。
【0057】
差し込み片55は長方形の平板状であり、ドリフトピン56を挿通して固定するための複数の貫通穴55aを有している。
【0058】
このような構成の軸付きパネル部材51は、軸材Aの側面に突き合わせて、軸材Aに内蔵した例えば円筒形状の円筒芯部材59の雌ねじに対してボルト58の先端を螺合して締め付ける。締め付けは、開口54cから回転用ナット58aを回転して行う。このあと、他の2個のナット58b,58cを差し込み片55方向に移動させてから、いわゆるダブルナットのように操作すると、軸材Aに対して強固に固定できる。
【0059】
このように接合金物53を備えた軸付きパネル部材51は、軸材Aに対して接合されるべき軸部材Sの端部に接合金物53を備えているので、施工のさらなる簡素化をはかれる。
【0060】
しかも、接合金物53はボルトナットによって固定されるものであるので、いったん結合しても、必要に応じて分離することができる。すなわち、建築物を組み上げた後でも分解して再度組み立てたり、部材を再利用したり、一部の部材を交換したり、移築したりすることが比較的容易に行える。
【0061】
図9に示した軸付きパネル部材51は、両面に補強用面材60を備えた構成である。すなわち、耐力付与パネル部材11の凹所11bを隠蔽するように、軸付きパネル部材51の両面に対して長方形の補強用面材60を張り付けている。耐力付与パネル部材11の厚みが軸部材Sや取付け対象である軸材Aと同じ厚みであるので、補強用面材60は耐力付与パネル部材11を囲む部分に対して良好に固定できる。固定状態において補強用面材60は耐力付与パネル部材11の芯板部12と平行である。
【0062】
補強用面材60の張り付けには、木ねじなどの固定具が用いられる。補強用面材60には、例えば構造用合板のような耐力面材が好適に使用できる。
【0063】
このように補強用面材60を備えた軸付きパネル部材51は、曲げ耐力が著しく向上するので、例えば梁に使用すると、より改善された耐震性を有する木造軸組建築物が容易に得られる。
【0064】
補強用面材60は、軸付きパネル部材51にあらかじめ備えるほか、耐力付与パネル部材11を軸材Aに対して固定したのちに、耐力付与パネル部材11とその周辺部に対して張り付けてもよい。
【0065】
図10、
図11は、前述の耐力付与パネル部材11、又は前述の軸付きパネル部材51を組み込んで構成した壁パネル71の一例を示す正面図である。
【0066】
図10に示した壁パネル71は、木造軸組建築物の外側の壁を構成する外壁パネル71aであって、単位面よりも大きく、2階建ての建築物を構成できる大きさである。
図10(a)は外壁パネル71aを内側から見た正面図、(b)は(a)のC-C断面図である。
【0067】
外壁パネル71aは、外周を構成するフレーム部72と、フレーム部72内の梁部形成位置に横架される耐力付与パネル部材11又は軸付きパネル部材51と、フレーム部72の内側で縦横に延びる支持材73と、外側面に張り付けられる面材74で構成されている。梁部形成位置は、梁が存在すべき位置であり、この例では、フレーム部72における上端部と上下方向の中間部である。
【0068】
フレーム部72は、4辺すべてが軸材Aで構成され、4つの角は、軸材A同士を直角に連結する接合金物75で接合されている。この接合金物75には適宜のものが使用できる。
【0069】
フレーム部72のうち上端を構成する軸材Aの下に、耐力付与パネル部材11が固定され、耐力付与パネル部材11の下に、軸材Aの横断面に相応する横断面を有した貫材42が横架される。耐力付与パネル部材11は左右に2個、軸材Aの横断面に相応する横断面を有した束材52を介して並設される。換言すれば、フレーム部72のうち上端を構成する軸材Aと貫材42を軸付きパネル部材51の軸部材Sと考えれば、フレーム部72の上端部を軸付きパネル部材51で構成するともいえる。
【0070】
フレーム部72の上下方向の中間部には、軸付きパネル部材51が横架される。
【0071】
この軸付きパネル部材51における上の軸部材Sの内側面と、フレーム部72の下端の軸材Aにおける内側面には、床板(図示せず)を受ける角材からなる受け部76が固定されている。
【0072】
支持材73は、外壁パネル71aの厚み方向の長さが軸材Aのそれと同じで横断面長方形の薄い角材で構成され、上端の梁形成部と中間の梁形成部との間と、中間の梁形成部と下端の軸材Aとの間隔を保ち、所望の剛性を得られるように、また必要な窓等を形成できるように、適宜配設されている。
【0073】
面材74は、
図10(b)に示したように、梁部形成部、すなわち耐力付与パネル部材11を備えた部分を含めて外側面を全体的に覆うもので、釘や木ねじ等の固定具で固定される。面材74としては、例えば構造用合板のような耐力面材が好適に使用される。
【0074】
図11に示した壁パネル71は、木造軸組建築物の内側に建てられる仕切り壁を構成する間仕切りパネル71bである。間仕切りパネル71bは単位面と同等の大きさであり、その高さは、外壁パネル71aとは異なり、固定される階の高さに対応している。
【0075】
間仕切りパネル71bの構成部材は基本的に外壁パネル71aと同じであり、外周を構成するフレーム部72と、フレーム部72内の梁部形成位置である上端部に横架される耐力付与パネル部材11又は軸付きパネル部材51と、フレーム部72の内側で縦横に延びる支持材73である。間仕切りパネル71bにも構造用合板などからなる面材を備えてもよい。
【0076】
フレーム部72は、すべて軸材Aよりも薄い角材、すなわち前述した外壁パネル71aの支持材73と同じ材料で構成されている。フレーム部72の4つの角は直角であり、支持材73と共にドア取付け部など所望の開口を有する適宜の形状に形成されている。支持材73は前述した外壁パネル71aの支持材73と同じ材料で構成され、上端の梁形成部と下端との間隔を保ち、所望の剛性を得られるように、また必要な開口を形成できるように配設される。
【0077】
フレーム部72のうち上端を構成する材料の下に、耐力付与パネル部材11が固定され、耐力付与パネル部材11の下に、軸材Aの横断面に相応する横断面を有した貫材42が横架される。フレーム部72のうち上端を構成する材料を軸付きパネル部材51の軸部材Sで構成すれば、フレーム部72の上端部を軸付きパネル部材51で構成することになる。耐力付与パネル部材11は左右に2個、軸材Aの横断面に相応する横断面を有した束材52を介して並設されている。
【0078】
このような外壁パネル71aや間仕切りパネル71bを建てて木造軸組建築物の壁を構成すると、貫材42又は軸部材Sと、耐力付与パネル部材11と、梁材43又は軸部材Sを備える梁部構造が得られる。前述したように貫材42又は軸部材Sは、軸材Aとしての柱材41間における梁形成位置に横架され、軸材Aの横断面に相応する横断面を有するものである。耐力付与パネル部材11は貫材42の上に設けられる。梁材43又は軸部材Sは、耐力付与パネル部材11の上に設けられて柱材41間に横架され、軸材Aの横断面に相応する横断面を有するものである。
【0079】
図12は、複数の外壁パネル71aと間仕切りパネル71bを用いて構成した梁部構造であって、梁部構造を枠のように囲む態様で備えた木造軸組建築物の梁部を示す斜視図である。便宜上、
図12では面材74を省略して図示している。
【0080】
このようにして梁部を構成すると、耐力付与パネル部材11によって曲げ耐力が向上するので、従来のように梁せいの高い材料を梁に使用せずとも高耐力の梁部を構成できる。しかも、梁せいの高い材料が不要であるので、必要とする材料の種類を低減して、施工の効率化をはかることもできる。
【0081】
以上のように、耐力付与パネル部材11があれば、これを単独で使用できるほか、軸付きパネル部材51や壁パネル71として一つの部材を構成することもでき、状況に応じて多様な使い方ができる。
【0082】
しかも、耐力付与パネル部材11は壁パネルよりも小さいので、新築の建築物の場合はもちろん、既存の建築物の補強や増改築などでも使用することができ、利便性がよい。
【0083】
このような耐力付与パネル部材11を活用することで、熟練工が減る状況下においても木造軸組建築の利用を促進でき、木造軸組建築ならではの多くのメリットを享受することができる。
【0084】
以上の構成はこの発明を実施するための一形態であって、この発明は前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用することもできる。
【0085】
例えば、耐力付与パネル部材11は、前述の例では横長の姿勢にして使用する例を示したが、縦長の姿勢にして使用して、袖壁などを構成してもよい。
【0086】
耐力付与パネル部材11を並設する場合、耐力付与パネル部材11の数は3枚状であってもよい。
【0087】
耐力付与パネル部材11や軸付きパネル部材51は、使用する部位に応じた大きさに形成したり接合金物を備えたりして、例えば「梁パネル」などとすることもできる。
【0088】
耐力付与パネル部材11が軸材Aや軸部材S、前述した貫材42などのようなそれに相当する材料に対して取り付けられるとき、それらに対して直接接触して取り付けられるも、間接的に取り付けられるも、いずれでもよい。
【符号の説明】
【0089】
11…耐力付与パネル部材
11b…凹所
12…芯板部
12a…端面
13…縁取り部
13a…外周面
13b…内周面
14…固定具
21…板材
31…角材
41…柱材
42…貫材
43…梁材
51…軸付きパネル部材
52…束材
53…接合金物
71…壁パネル
A…軸材
S…軸部材
【要約】
【課題】木造軸組建築物の構築のほか、増改築やリフォーム、既存建築物の補強、壁パネルの製造などに使用可能な耐力付与パネル部材を提供して、熟練工が減少する状況下でも数々の利点を有する木造軸組建築の利活用を促進できるようにする。
【解決手段】長方形をなす板材21からなる芯板部12と、芯板部12の表裏両面における4辺の縁部に固定されて芯板部12を挟む角材31からなる縁取り部13で構成され、木造軸組建築物の柱材等の軸材に取り囲まれるように取り付けられるパネル部材11。芯板部12の外周の端面12aを縁取り部13の外周面13aと面一にして、4個の角部を精度の高い直角にするとともに、耐力付与パネル部材11の外側面11aを平らにする。
【選択図】
図1