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特許6994299フルオレン骨格を有するジヒドロキシ化合物の精製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】フルオレン骨格を有するジヒドロキシ化合物の精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 41/40 20060101AFI20220106BHJP
   C07C 43/205 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
C07C41/40
C07C43/205 D
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2016252335
(22)【出願日】2016-12-27
(65)【公開番号】P2018104343
(43)【公開日】2018-07-05
【審査請求日】2019-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000216243
【氏名又は名称】田岡化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橋本 龍一郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 弘行
(72)【発明者】
【氏名】西田 有児
【審査官】▲高▼岡 裕美
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106242955(CN,A)
【文献】特開2017-141182(JP,A)
【文献】特開昭58-085835(JP,A)
【文献】特開平05-194510(JP,A)
【文献】特開2009-256342(JP,A)
【文献】特開2001-206863(JP,A)
【文献】工業有機化学実験,第4版,1975年,42-43ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物をホスト分子とする包接体の結晶と、メタノールとを混合した後、ろ過することなくメタノールを気化させながら除去する工程を含む、下記式 (1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学レンズや光学フィルムに代表される光学部材を構成する樹脂(光学樹脂)を形成するモノマーとして好適で、加工性、生産性に優れた新規なフルオレン骨格を有するジヒドロキシ化合物の精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオレン骨格を有するジヒドロキシ化合物を原料モノマーとするポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタン、エポキシなどの樹脂材料は、光学特性、耐熱性等に優れることから、近年、光学レンズや光学シートなどの新たな光学材料として注目されている。この中でも下記式(1)
【0003】
【化1】
で表される構造を有するジヒドロキシ化合物は、該ジヒドロキシ化合物から製造される樹脂が屈折率等の光学特性、耐熱性、耐水性、耐薬品性、電気特性、機械特性、溶解性等の諸特性に優れることから、特に光学樹脂の原材料として着目されている(例えば特許文献1~4)。
【0004】
上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の製造方法としては、塩基触媒存在下、下記式(2)
【0005】
【化2】
で表されるフェノール化合物とエチレンオキサイドとを反応させる方法が知られている(特許文献2)。しかしながら、該方法で得られる上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物はその純度が低く、エチレンオキサイドが3分子以上付加した化合物(以下、多量体と称することもある)が多量に副生し、目的とする上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を高純度で得ることは困難である。
【0006】
一方、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の改良製法として、酸触媒及びチオール類存在下、下記式(3)
【0007】
【化3】
で表されるアルコールと9-フルオレノンとを反応させ上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を得る方法が提案され(特許文献3)、また、該製法による着色の問題を改善する手法として、酸触媒及び9―フルオレノン類100重量部に対して3重量部以上のチオール類存在下、上記式(3)で表されるアルコールと9―フルオレノンとを反応させ上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を得る方法が提案されている(特許文献4)。
【0008】
しかしながら、該方法でもその着色改善は十分ではなく、また、反応時に多量のチオール類を必要とすることから、生成物からチオール類を完全に除去することが困難であり、該ジヒドロキシ化合物から樹脂を製造する際、チオール類に由来する硫黄分が樹脂の更なる着色を引き起こすといった問題がある。
【0009】
また、本願発明者らが上記特許文献2~4に記載される方法を追試したところ、特許文献3記載の方法では反応が進行しないか、あるいは反応が進行したとしても、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を含むオイル状物が得られるのみで、結晶状の上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物は得られなかった。また、特許文献2及び4の追試では、得られる上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶は、反応や反応後の取り出し操作(晶析操作)で使用した溶媒(芳香族炭化水素類)を取り込み、包接体となることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平07―149881号公報
【文献】特開2001-122828号公報
【文献】特開2001-206863号公報
【文献】特開2009-256342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物をホスト分子とする包接体の結晶から、包接された化合物(ゲスト分子)を除去又は低減させる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物をホスト分子とする包接体の結晶と、メタノールとを接触させることによって、包接された化合物(ゲスト分子)を除去又は低減させることが可能であることを見出した。具体的には以下の発明を含む。
【0013】
〔1〕
下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物をホスト分子とする包接体の結晶と、メタノールとを接触させる工程を含む、下記式 (1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶の精製方法。

【0014】
〔2〕
接触後、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶とメタノールとを分離する工程を含む、〔1〕に記載のジヒドロキシ化合物の結晶の精製方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物をホスト分子とする包接体の結晶からゲスト分子を除去又は低減させることが可能となる。上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物をホスト分子とする包接体の結晶を樹脂原料として使用すると、該結晶の溶融中に包接されていたゲスト分子が放出されるため、放出されたゲスト分子を安全に系外へと除去する必要があったり、包接されているゲスト分子の影響で、得られる樹脂の品質が一定とならない等の問題を引き起こすことがある。更には、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物をホスト分子とする包接体の結晶を保管や輸送する際、ゲスト分子に起因する引火可能性等を考慮する必要があり、より厳密な防災上の対策も必要となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の精製方法に供することができる、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物をホスト分子とする包接体の結晶(以下、包接体の結晶と称することがある)は、包接可能な化合物をゲスト分子として有していても良い。ゲスト分子になり得る化合物として例えば、芳香族炭化水素類(具体的に例えばトルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等)、環状ケトン類(具体的に例えばシクロヘキサノン、シクロペンタノン、シクロオクタノン等)、エステル類(具体的に例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等)が挙げられる。
【0017】
結晶が包接体であるか否かは、例えば、TG-DTA(熱重量・示差熱同時測定)分析、X線回折、NMR分析といった方法の他、得られた結晶を、ゲスト分子の沸点以上となる条件で重量変化がない程度に十分に乾燥させた後、得られた結晶を溶媒に溶解させ、ガスクロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィーを用いて分析し、ゲスト分子に相当するピークが残存するか否かで判断することができる。また、前記TG-DTA分析を用いる方法では、測定サンプルを一定の速度で昇温した際の重量変化と、それに伴う吸熱・発熱挙動を測定でき、重量変化と吸熱(又は発熱)とが同時に観測された時点で、ゲスト分子が放出されたことを判断することもできる。
【0018】
本発明における、「上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物をホスト分子とする包接体の結晶とメタノールとを接触させる」操作とは、包接体の結晶と、液体、または気体のメタノールとが接触することを言い、具体的に例えば、包接体の結晶と、メタノールとを容器に入れ、メタノール中で包接体の結晶を撹拌混合させる操作や、包接体の結晶にメタノールを混合した後乾燥機に入れ、メタノールを気化させながら除去する操作等が挙げられる。
【0019】
本発明の精製方法に供されるメタノールにはメタノール以外の有機化合物を含んでいてもよい。他の有機化合物を含む場合、全有機化合物(メタノール+他の有機化合物)中のメタノール濃度は通常60重量%以上、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上である。他の有機化合物を用いる場合、本発明の精製方法を実施する際、他の有機化合物とメタノールとを予め混合したものを包接体の結晶と接触させてもよく、また、包接体の結晶と他の有機化合物とを含む混合液や懸濁体にメタノールを添加することで、包接体の結晶とメタノールとを接触させてもよい。
【0020】
なお、本発明の精製方法を実施する際、メタノール中に(他の有機化合物を含む場合、メタノール+他の有機化合物の合計量に対し)水分が10重量%より多く含まれていると、包接体でない上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を得るために長時間を要する場合があることから、効率よく本発明の精製工程を実施するためには、メタノール中の水分を好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下とする。
【0021】
本発明におけるメタノールの使用量は、包接体の結晶がメタノールと接触することが可能であれば良く、具体的に例えば、包接体の結晶1重量部に対し0.2重量部以上、好ましくは0.5重量部以上、更に好ましくは1重量部以上であり、また上限量は上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の前記有機化合物に対する溶解度によっても異なるが、通常30重量部以下、好ましくは20重量部以下、更に好ましくは10重量部以下である。
【0022】
前述した本発明の精製方法を実施した後、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶とメタノールとを分離しても良い。分離する方法として例えば、ろ過等の固液分離操作や、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶とメタノールとの混合物を、メタノールの沸点以上の温度とすることで、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶からメタノールを除去する方法等が挙げられる。
【0023】
上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶とメタノールとを分離した後、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶にメタノールが付着している場合、得られた結晶を更に乾燥しても良い。具体的に例えば、分離して得られた上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶を風乾したり、該結晶をメタノールの沸点以上の温度で一定時間乾燥させる方法が挙げられる。
【0024】
本発明の精製工程を実施することによって得られた、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶は必要に応じ、吸着、水蒸気蒸留、再結晶などの操作を繰り返し実施して更に精製しても良い。
【0025】
本発明の精製工程を実施することによって得られた、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶は、包接された化合物(ゲスト分子)を有さないか、有していても微量であることから、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタン、エポキシなどの樹脂材料として好適に用いられることは勿論のこと、包接しているゲスト分子が問題となる分野、例えば医農薬用の原料(中間体)としても好適に用いることができる。
【実施例
【0026】
以下に実施例等を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに何ら限定されるものではない。例中、各種測定は下記の方法で実施した。
【0027】
(1)HPLC純度
上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物をホスト分子とする包接体の結晶に含まれる、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物のHPLC純度は下記条件に基づく液体クロマトグラフィーの面積百分率である(但し、ゲスト分子由来のピークを除いた修正面百値に基づく)。
装置 :島津製作所製 LC-2010A、
カラム:SUMIPAX ODS A-211(5μm、4.6mmφ×250mm)、
移動相:純水/アセトニトリル(アセトニトリル30%→100%)、
流量 :1.0ml/min、カラム温度:40℃、検出波長:UV 254nm。
【0028】
(2)ゲスト分子の含量及びメタノール(又は他の有機化合物)含量の分析
ゲスト分子の含量、及びメタノール(又は他の有機化合物)の含量については下記条件に基づくガスクロマトグラフィーにより定量を行った。
装置 :島津製作所製 GC-2014、
カラム:DB-1(0.25μm、0.25mmID×30m)、
昇温:40℃(10分保持)→20℃/min→300℃(20分保持)、
Inj温度:200℃、Det温度:300℃、スプリット比 1:10、
キャリアー:窒素55.0kPa(一定)、
サンプル調製方法:各製造例、実施例、または比較例で得られた包接体あるいは非包接体の結晶100mgを10mlメスフラスコに量り取り、そこへあらかじめ調製していた1,2-ジメトキシエタンのアセトニトリル溶液(1,2-ジメトキシエタン400mgをアセトニトリル200mlに溶解したもの)をホールピペットで5ml加え、アセトニトリルでメスアップさせ溶解したものを試料溶液とした。
一方、含量を測定したい有機化合物10mgを10mlメスフラスコに量り取り、上述と同量の1,2-ジメトキシエタンのアセトニトリル溶液を加え、アセトニトリルでメスアップさせ溶解したものを標準溶液とした。
試料溶液及び標準溶液を上述の条件にて分析し、得られた各成分のピーク面積をデータ処理装置で求め、各成分の含量(重量%、以下、断りのない限り%と表す。)を算出した(内部標準法)。
なお、精製を実施する際に有機化合物としてエタノールを用いた場合、上記の試料溶液および標準溶液の作成の際にアセトニトリルの代わりにトリエチレングリコールジメチルエーテルを用いた。
【0029】
<製造例1>
攪拌器、加熱冷却器、および温度計を備えたガラス製反応器に、9,9’-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン120.0g(0.240mol)、エチレンカーボネート48.3g(0.549mol)、炭酸カリウム2.4g(0.018mol)およびトルエン120.0gを仕込み、110℃で11時間撹拌し反応液を得た。
得られた反応液を85℃まで冷却した後、水204gを加え、80~85℃で30分撹拌し、静置後、水層を分離した。同じ操作を3回繰り返した後、得られた有機溶媒層をディーンスターク装置を用いて還流下で脱水することで晶析溶液を得た。
得られた晶析溶液を冷却した所、65℃で結晶が析出し、結晶析出後、同温度で2時間撹拌した。更に26℃まで冷却した後、濾過し、結晶を得た。得られた結晶を、12時間、内圧1.1kPaの減圧下、110℃~112℃で乾燥した。
【0030】
乾燥後、得られた結晶を上述した方法により分析した所、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物をホスト分子とし、トルエンをゲスト分子とする包接体(包接体の結晶)であることを確認した。以下に分析結果を示す。
得られた結晶の重さ:118.2g
HPLC純度:97.2%
トルエン(ゲスト分子)含量:4.83%
【0031】
<製造例2>
攪拌器、加熱冷却器、および温度計を備えたガラス製反応器に、9,9’-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン90.0g(0.180mol)、エチレンカーボネート36.0g(0.408mol)、炭酸カリウム2.1g(0.015mol)、およびシクロヘキサノン90.0gを仕込み、140℃で7時間撹拌し反応液を得た。
得られた反応液を90℃まで冷却した後、シクロヘキサノン69g、ノルマルヘプタン81gを加え、有機溶媒層を90℃に保ちながら洗浄水が中性となるまで水洗を行った。水洗後、得られた有機溶媒層をディーンスターク装置を用いて還流下で脱水することで、晶析溶液を得た。
その後、得られた晶析溶液を70℃まで冷却し、70℃で1時間保温することで結晶を析出させた後、同温度で2時間撹拌した。撹拌後、更に19℃まで冷却した後、濾過し、結晶を得た。得られた結晶を内圧1.1kPaの減圧下、90℃で3時間乾燥した。
【0032】
得られた結晶を上述した方法により分析した所、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物をホスト分子とし、シクロヘキサノンをゲスト分子とする包接体(包接体の結晶)であることを確認した。以下に分析結果を示す。
得られた結晶の重さ:99.6g
HPLC純度:97.5%
シクロヘキサノン(ゲスト分子)含量:15.3%
【0033】
<実施例1>
攪拌器、加熱冷却器、および温度計を備えたガラス製反応器に、製造例1で得られた包接体の結晶10g、メタノール70gを仕込んだ後、25℃で1時間撹拌を行った。撹拌中、結晶は完全に溶解していなかった。
撹拌後、25℃でろ過し、結晶を得た。得られた結晶を内圧1.3kPaの減圧下、
90℃で3時間乾燥し、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶を得た。
【0034】
得られた上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶の各分析値は以下の通り。
得られた結晶の重さ:9.2g
トルエン(ゲスト分子)含量:0.01%
メタノール(精製で用いた有機化合物)含量:0.10%
【0035】
<比較例1>
メタノールをエタノールに変え、実施例1と同様に実施して上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶を得た。得られた上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶の各分析値は以下の通り。
得られた結晶の重さ:7.2g
トルエン(ゲスト分子)含量:3.41%
エタノール(精製で用いた有機化合物)含量:0.15%
【0036】
<比較例2>
製造例1で得られた包接体の結晶1g、ジイソブチルケトン5gを撹拌子を入れた試験管に入れ、25℃で1時間撹拌を行った。撹拌後、結晶をろ別し、乾燥した後、得られた結晶を上述した分析法により分析を行った。結果を表1に示す。
<比較例3~7>
撹拌温度、撹拌時間及び包接体の結晶と共に使用する有機化合物(又は水)を表1に示すものに変更した以外は比較例2と同様の方法にて実施した後、得られた結晶を上述した分析法により分析を行った。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
<実施例2>
比較例7で得られた、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物をホスト分子とし、トルエン及び酢酸イソブチルをゲスト分子とする結晶0.9g、メタノール4.5gを、撹拌子を入れた試験管に入れ、25℃で1時間撹拌を行った。撹拌後、結晶をろ別し、乾燥した後、得られた結晶を上述した分析法により分析を行った。結果を以下に示す。
トルエン(ゲスト分子)含量:0.19%
酢酸イソブチル(ゲスト分子)含量:0.05%
メタノール含量:0.21%
【0039】
<実施例3>
製造例1で得られた、包接体の結晶1g、トルエン0.4g、メタノール1.6gを、撹拌子を入れた試験管に入れ、25℃で3時間撹拌を行った。撹拌中、結晶は完全に溶解していなかった。
撹拌後、結晶をろ別し、乾燥し、得られた結晶を上述した分析法により分析を行った。結果を以下に示す。
トルエン(ゲスト分子)含量:0.11%
メタノール含量:0.27%
【0040】
<実施例4>
製造例1で得られた、包接体の結晶1g、メタノール4.4g、水0.6を、撹拌子を入れた試験管に入れ、25℃で12時間撹拌を行った。撹拌後、結晶をろ別し、乾燥した後、得られた結晶を上述した分析法により分析を行った。結果を以下に示す。
トルエン(ゲスト分子)含量:2.43%
メタノール含量:0.12%
上記結晶0.9g、メタノール3.96g、水0.54gを、撹拌子を入れた試験管に入れ、25℃で48時間撹拌を行った。撹拌後、結晶をろ別し、乾燥した後、得られた結晶を上述した分析法により分析を行った。結果を以下に示す。
トルエン(ゲスト分子)含量:0.12%
メタノール含量:0.12%
【0041】
<実施例5>
製造例1で得られた、包接体の結晶1g、メタノール4.6g、水0.4gを、撹拌子を入れた試験管に入れ、25℃で8時間撹拌を行った。撹拌後、結晶をろ別し、乾燥した後、得られた結晶を上述した分析法により分析を行った。結果を以下に示す。
トルエン(ゲスト分子)含量:0.11%
メタノール含量:0.13%
【0042】
<実施例6>
製造例1で得られた、包接体の結晶10gの上からメタノール5gを振りかけた後、攪拌器、加熱冷却器、減圧器を備えたガラス製反応器に該包接体を入れ、加熱冷却器温度を90℃、内圧1.1kPaとして1時間撹拌しながらメタノールを系外へ除去した。その後、得られた結晶を上述した分析法により分析を行った。結果を以下に示す。
トルエン(ゲスト分子)含量:0.01%
メタノール含量:検出されず
【0043】
<比較例8~10>
製造例1で得られた、包接体の結晶に振りかけた有機化合物を表2に示すものに変更した以外は実施例6と同様の方法にて実施し、得られた結晶を上述した分析法により分析を行った。結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
<実施例7>
攪拌器、加熱冷却器、および温度計を備えたガラス製反応器に、製造例2で得られた、包接体の結晶10g、メタノール50gを仕込んだ後、25℃で3時間撹拌を行った。
撹拌後、25℃でろ過し、結晶を得た。得られた結晶を内圧1.1kPaの減圧下、90℃で3時間乾燥し、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶を得た。
【0046】
得られた上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶の各分析値は以下の通り。
得られた結晶の重さ:8.1g
シクロヘキサノン(ゲスト分子)含量:1.56重量%
メタノール含量:0.10重量%
【0047】
<実施例8>
撹拌温度を70℃とする以外は実施例7と同様に実施し、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶を得た。得られた上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶の各分析値は以下の通り。
得られた結晶の重さ:8.0g
シクロヘキサノン(ゲスト分子)含量:0.21%
メタノール含量:0.15%
【0048】
<比較例11>
メタノールをエタノールに変更する以外は実施例7と同様に実施し、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶を得た。得られた上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶の各分析値は以下の通り。
得られた結晶の重さ:6.4g
シクロヘキサノン(ゲスト分子)含量:13.3%
エタノール含量:0.15%
【0049】
<比較例12>
製造例2で得られた、包接体の結晶1g、ジイソブチルケトン5gを撹拌子を入れた試験管に入れ、25℃で1時間撹拌を行った。撹拌後、結晶をろ別し、乾燥した後、得られた結晶を上述した分析法により分析を行った。結果を表3に示す。
<比較例13~14>
包接体の結晶と共に使用する有機化合物を表3に示すものに変更した以外は比較例12と同様の方法にて実施した後、得られた結晶を上述した分析法により分析を行った。結果を表3に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
<参考例1>
スケールを10分の1とする以外は特開2001-206863号の実施例6に記載されている方法で仕込・反応を行い、65℃で1時間撹拌した段階で反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析したが、上記式(1)で表されジヒドロキシ化合物は殆ど生成しておらず、原料の9-フルオレノンが98%残存していた。そこで更に同温度で7時間撹拌を継続し、反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析したが、やはり反応は殆ど進行しておらず、原料の9-フルオレノンが97%残存していた。
そこで特開2001-206863号〔0019〕の記載に基づき、反応温度を65℃から100℃へと変更し同温度で撹拌を継続したところ、原料である9-フルオレノンの消失までに73時間必要であった。
該文献記載に基づく後処理を実施するため、得られた反応液を2分割し、一方にメタノール10g、もう一方にイソプロピルアルコール10gを加え60℃まで加温し、1時間撹拌を継続した後、それぞれ純水30gを加え、30℃まで冷却したが、いずれも結晶は析出せず、それぞれ水と分離したタール状の液体が得られた。