(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】組電池用伝熱装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6554 20140101AFI20220106BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20220106BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20220106BHJP
H01M 10/653 20140101ALI20220106BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20220106BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20220106BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20220106BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20220106BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20220106BHJP
【FI】
H01M10/6554
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/653
H01M10/647
H01M10/6556
H01M10/651
H01M50/204 401H
H01M50/209
(21)【出願番号】P 2017038892
(22)【出願日】2017-03-02
【審査請求日】2019-12-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】田村 忍
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-519189(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0006086(US,A1)
【文献】特開2013-246990(JP,A)
【文献】特開2015-158976(JP,A)
【文献】特開2008-124033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J10/52-10/667
H01M50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に平坦な伝熱面を有するとともに、内部に伝熱媒体が流通する伝熱媒体流通路を有する金属製伝熱器を備えており、伝熱器に取り付けられる組電池が、伝熱器の伝熱媒体流通路を流れる伝熱媒体から冷熱または温熱を受熱するようになっている組電池用伝熱装置において、
伝熱器の伝熱面に金属製熱伝導部材が配置され、伝熱媒体の有する冷熱または温熱が、熱伝導部材を介して組電池における伝熱器の伝熱面を向いた受熱面に伝わるようになされており、熱伝導部材が、組電池の受熱面の形状に追従して変形しうるようになっており、 前記熱伝導部材の高さは前記伝熱器の高さよりも低
く、
熱伝導部材が波状板材であって、伝熱器の伝熱面側に開口しかつ波の波長方向に間隔をおいて配置された複数のU形部分と、隣り合うU形部分の近接したフランジ部の開口端部どうしを連結する連結部分とを備え、U形部分の両フランジ部どうしを連結するウェブ部の少なくとも一部が、組電池の受熱面に面接触しうるように平坦状となり、連結部分の少なくとも一部が、伝熱器の伝熱面に面接触しうるように平坦状となり、U形部分の両フランジ部およびウェブ部に、前記波長方向と直交する方向に間隔をおいて複数の切り欠き部が形成されてい
る組電池用伝熱装置。
【請求項2】
伝熱器が、頂壁および底壁を有するケーシングを備えており、ケーシングの頂壁および底壁のうち少なくともいずれか一方の外面が伝熱面となるとともに、ケーシング内部に、伝熱媒体が一方向に流れる伝熱媒体流通路が設けられ、ケーシングの頂壁および底壁のうち外面が伝熱面となった壁の内面に、伝熱媒体の流れ方向に延びる複数のフィンが、伝熱媒体の流れ方向と直交する方向に間隔をおいて設けられ、熱伝導部材が、連結部分がフィンと対応する位置に来るように配置されている
請求項1記載の組電池用伝熱装置。
【請求項3】
外部に平坦な伝熱面を有するとともに、内部に伝熱媒体が流通する伝熱媒体流通路を有する金属製伝熱器を備えており、伝熱器に取り付けられる組電池が、伝熱器の伝熱媒体流通路を流れる伝熱媒体から冷熱または温熱を受熱するようになっている組電池用伝熱装置において、
伝熱器の伝熱面に金属製熱伝導部材が配置され、伝熱媒体の有する冷熱または温熱が、熱伝導部材を介して組電池における伝熱器の伝熱面を向いた受熱面に伝わるようになされており、熱伝導部材が、組電池の受熱面の形状に追従して変形しうるようになっており、 前記熱伝導部材の高さは前記伝熱器の高さよりも低
く、
熱伝導部材が、ベース板およびベース板の片面に設けられかつ先端が伝熱器の伝熱面に接触した複数の凸部からなり、ベース板に複数の方形貫通穴が形成され、凸部が、方形貫通穴の縁部の対向する2辺に連なって一体に設けられ、かつ伝熱器側に向かって方形貫通穴の内方に斜めに突出した2つの突出片と、両突出片の先端どうしを一体に連結し、かつ伝熱器の伝熱面に面接触する接触片とより
なり、
伝熱器が、頂壁、底壁および周壁を有するケーシングを備えており、ケーシングの頂壁および底壁のうち少なくともいずれか一方の外面が伝熱面となるとともに、ケーシング内部に、伝熱媒体が一方向に流れる伝熱媒体流通路が設けられ、ケーシングの頂壁および底壁のうち外面が伝熱面となった壁の内面に、伝熱媒体の流れ方向に延びる複数のフィンが、伝熱媒体の流れ方向と直交する方向に間隔をおいて設けられ、熱伝導部材が、凸部がフィンと対応する位置に来るように配置されてい
る組電池用伝熱装置。
【請求項4】
熱伝導部材の凸部が千鳥配置状に設けられている
請求項3記載の組電池用伝熱装置。
【請求項5】
熱伝導部材が、組電池の受熱面に直接的に接触するようになされている
請求項1~4のうちのいずれかに記載の組電池用伝熱装置。
【請求項6】
熱伝導部材における組電池の受熱面側を向く部分が、高分子からなる熱伝導シートまたは熱伝導グリースにより覆われており、熱伝導部材が、組電池の受熱面に間接的に接触するようになされている
請求項1~4のうちのいずれかに記載の組電池用伝熱装置。
【請求項7】
熱伝導部材における熱伝導シートまたは熱伝導グリースとの接触面積が、伝熱器の伝熱面との接触面積よりも大きくなっている
請求項6記載の組電池用伝熱装置。
【請求項8】
熱伝導部材が、伝熱器の伝熱面に金属接合されている
請求項1~7のうちのいずれかに記載の組電池用伝熱装置。
【請求項9】
熱伝導部材が、アルミニウム、リン青銅またはばね鋼からなる
請求項1~8のうちのいずれかに記載の組電池用伝熱装置。
【請求項10】
熱伝導部材が、厚み方向にばね弾性を有している
請求項1~9のうちのいずれかに記載の組電池用伝熱装置。
【請求項11】
請求項1~10のうちのいずれかに記載の組電池用伝熱装置と、当該組電池用伝熱装置の熱伝導部材に直接的または間接的に接触するように配置された組電池とを備えており、組電池用伝熱装置の伝熱器の伝熱面と、組電池における伝熱器の伝熱面を向いた受熱面との間に熱伝導グリースが充填されている組電池装置。
【請求項12】
外部に平坦な伝熱面を有するとともに、内部に伝熱媒体が流通する伝熱媒体流通路を有する金属製伝熱器を備えており、伝熱器に取り付けられる組電池が、伝熱器の伝熱媒体流通路を流れる伝熱媒体から冷熱または温熱を受熱するようになっている組電池用伝熱装置において、
伝熱器の伝熱面に金属製熱伝導部材が配置され、伝熱媒体の有する冷熱または温熱が、熱伝導部材を介して組電池における伝熱器の伝熱面を向いた受熱面に伝わるようになされており、熱伝導部材が、凹凸を有する板材により形成されており、組電池の受熱面の形状に追従して変形しうるようになっており、
前記伝熱器が、頂壁、底壁および周壁を有するケーシングを備えており、ケーシングの頂壁および底壁のうち少なくともいずれか一方の外面が伝熱面となるとともに、ケーシング内部に、伝熱媒体が一方向に流れる伝熱媒体流通路が設けられ、ケーシングの頂壁および底壁のうち外面が伝熱面となった壁の内面に、伝熱媒体の流れ方向に延びる複数のフィンが、伝熱媒体の流れ方向と直交する方向に間隔をおいて設けられ、
前記熱伝導部材の凸部と前記伝熱器のフィンが設けられた位置とが接している組電池用伝熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、組電池に冷熱を伝えて冷却したり、温熱を伝えて加熱したりする組電池用伝熱装置に関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0003】
また、この明細書において、
図1に矢印Xで示す伝熱器の伝熱媒体流通路内における伝熱媒体の流れ方向下流側を前、これと反対側を後というものとし、前方から後方を見た際の上下、左右(
図4、
図6および
図8の上下、左右)を上下、左右というものとする。
【背景技術】
【0004】
たとえばハイブリッド自動車、電気自動車等の電動機駆動用バッテリー装置として、たとえばリチウムイオン二次電池などの各種の二次電池からなる複数個の小型単電池を直列または並列に接続して組電池の形態としたものが用いられている。特に、電気自動車においては航続距離の延長のニーズから組電池の大容量化が求められるので、複数の組電池が直列または並列に接続されるように組み合わされている。
【0005】
ところで、二次電池は、使用温度によって性能や寿命が変化するので、長時間にわたって効率良く使用するためには適正な温度で使用する必要がある。
【0006】
そこで、上述したような組電池におけるすべての単電池の温度差を小さくすることを目的として、頂壁外面が平坦な伝熱面となっているとともに、内部に冷媒が流通する冷媒通路を有する金属製冷却部材を備えている冷却装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1記載の冷却装置においては、組電池が冷却部材の伝熱面上に、シリコン樹脂などの合成樹脂からなる熱伝導シートを介して載置され、冷却部材の冷媒通路を流れる冷媒から冷却部材の頂壁および熱伝導シートを介して組電池に伝わる冷熱によって組電池が冷却されるようになっており、組電池の冷却効率をあげるには、冷却部材の伝熱面と熱伝導シートとの密着性および組電池の受熱面と熱伝導シートとの密着性を向上させる必要がある。
【0008】
ところで、上述した組電池においては、各単電池が変形したり、少なくとも一部の単電池が上下方向にずれて受熱面に段差が生じたりすることがある。したがって、これらの変形や段差を吸収して組電池の受熱面と熱伝導シートとの密着性を向上させるためには、熱伝導シートの肉厚を比較的厚くする必要がある。しかしながら、合成樹脂からなる熱伝導シートの熱伝導率は比較的低いので、熱伝導シートの肉厚を厚くすると、組電池の受熱面と冷却部材の伝熱面との間の熱伝導性が低下し、組電池の単電池を効率良く冷却することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明の目的は、上記問題を解消し、組電池を構成する全単電池を効率良く冷却または加熱しうる組電池用伝熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0012】
1)外部に平坦な伝熱面を有するとともに、内部に伝熱媒体が流通する伝熱媒体流通路を有する金属製伝熱器を備えており、伝熱器に取り付けられる組電池が、伝熱器の伝熱媒体流通路を流れる伝熱媒体から冷熱または温熱を受熱するようになっている組電池用伝熱装置において、
伝熱器の伝熱面に金属製熱伝導部材が配置され、伝熱媒体の有する冷熱または温熱が、熱伝導部材を介して組電池における伝熱器の伝熱面を向いた受熱面に伝わるようになされており、熱伝導部材が、組電池の受熱面の形状に追従して変形しうるようになっている組電池用伝熱装置。
【0013】
2)熱伝導部材が、組電池の受熱面に直接的に接触するようになされている上記1)記載の組電池用伝熱装置。
【0014】
3)熱伝導部材における組電池の受熱面側を向く部分が、高分子からなる熱伝導シートまたは熱伝導グリースにより覆われており、熱伝導部材が、組電池の受熱面に間接的に接触するようになされている上記1)記載の組電池用伝熱装置。
【0015】
4)熱伝導部材における熱伝導シートまたは熱伝導グリースとの接触面積が、伝熱器の伝熱面との接触面積よりも大きくなっている上記3)記載の組電池用伝熱装置。
【0016】
5)熱伝導部材が、伝熱器の伝熱面に金属接合されている上記1)~4)のうちのいずれかに記載の組電池用伝熱装置。
【0017】
6)熱伝導部材が、アルミニウム、リン青銅またはばね鋼からなる上記1)~5)のうちのいずれかに記載の組電池用伝熱装置。
【0018】
7)熱伝導部材が、厚み方向にばね弾性を有している上記1)~6)のうちのいずれかに記載の組電池用伝熱装置。
【0019】
8)熱伝導部材が波状板材であって、伝熱器の伝熱面側に開口しかつ波の波長方向に間隔をおいて配置された複数のU形部分と、隣り合うU形部分の近接したフランジ部の開口端部どうしを連結する連結部分とを備え、U形部分の両フランジ部どうしを連結するウェブ部の少なくとも一部が、組電池の受熱面に面接触しうるように平坦状となり、連結部分の少なくとも一部が、伝熱器の伝熱面に面接触しうるように平坦状となり、U形部分の両フランジ部およびウェブ部に、前記波長方向と直交する方向に間隔をおいて複数の切り欠き部が形成されている上記1)~7)のうちのいずれかに記載の組電池用伝熱装置。
【0020】
9)伝熱器が、頂壁および底壁を有するケーシングを備えており、ケーシングの頂壁および底壁のうち少なくともいずれか一方の外面が伝熱面となるとともに、ケーシング内部に、伝熱媒体が一方向に流れる伝熱媒体流通路が設けられ、ケーシングの頂壁および底壁のうち外面が伝熱面となった壁の内面に、伝熱媒体の流れ方向に延びる複数のフィンが、伝熱媒体の流れ方向と直交する方向に間隔をおいて設けられ、熱伝導部材が、連結部分がフィンと対応する位置に来るように配置されている上記8)記載の組電池用伝熱装置。
【0021】
10)熱伝導部材が、ベース板およびベース板の片面に設けられかつ先端が伝熱器の伝熱面に接触した複数の凸部からなり、ベース板に複数の方形貫通穴が複数の形成され、凸部が、方形貫通穴の縁部の対向する2辺に連なって一体に設けられ、かつ伝熱器側に向かって方形貫通穴の内方に斜めに突出した2つの突出片と、両突出片の先端どうしを一体に連結し、かつ伝熱器の伝熱面に面接触する接触片とよりなる上記1)~7)のうちのいずれかに記載の組電池用伝熱装置。
【0022】
11)熱伝導部材の凸部が千鳥配置状に設けられている上記10)記載の組電池用伝熱装置。
【0023】
12)伝熱器が、頂壁、底壁および周壁を有するケーシングを備えており、ケーシングの頂壁および底壁のうち少なくともいずれか一方の外面が伝熱面となるとともに、ケーシング内部に、伝熱媒体が一方向に流れる伝熱媒体流通路が設けられ、ケーシングの頂壁および底壁のうち外面が伝熱面となった壁の内面に、伝熱媒体の流れ方向に延びる複数のフィンが、伝熱媒体の流れ方向と直交する方向に間隔をおいて設けられ、熱伝導部材が、凸部がフィンと対応する位置に来るように配置されている上記10)または11)記載の組電池用伝熱装置。
【0024】
13)上記1)~12)のうちのいずれかに記載の組電池用伝熱装置と、当該組電池用伝熱装置の熱伝導部材に直接的または間接的に接触するように配置された組電池とを備えており、組電池用伝熱装置の伝熱器の伝熱面と、組電池における伝熱器の伝熱面を向いた受熱面との間に熱伝導グリースが充填されている組電池装置。
【発明の効果】
【0025】
上記1)~12)の組電池用伝熱装置によれば、組電池が熱伝導部材に直接的または間接的に接触させられた状態で伝熱器の伝熱媒体流通路に伝熱媒体を流すことによって、伝熱媒体の有する冷熱または温熱が組電池の単電池に伝えられ、単電池が冷却される。そして、組電池の各単電池が変形したり、少なくとも一部の単電池が上下方向にずれて受熱面に段差が生じたりしたとしても、金属製熱伝導部材が、組電池における伝熱器の伝熱面を向いた受熱面の形状に追従して変形するので、組電池の受熱面と、伝熱器の伝熱面との間の熱伝導部材を介しての熱伝導性の低下が抑制される。したがって、組電池を構成する全単電池を効率良く冷却または加熱することが可能になる。しかも、熱伝導部材が金属製であり、特許文献1記載の合成樹脂からなる熱伝導シートに比べて熱伝導率が極めて高いので、熱伝導部材の厚みを大きくすることにより組電池の受熱面の形状に追従して変形する性能を上げた場合であっても、熱伝導性の低下を抑制することができる。
【0026】
上記2)の組電池用伝熱装置によれば、組電池の受熱面と熱伝導部材との熱伝導性が優れたものになる。
【0027】
上記3)の組電池用伝熱装置によれば、単電池における組電池の受熱面を構成する面および熱伝導部材における組電池の受熱面側を向く部分に微小な凹凸や変形が存在している場合であっても、高分子からなる熱伝導シートまたは熱伝導グリースが、上述した微小な凹凸や変形を吸収するので、組電池の受熱面と、伝熱器の伝熱面との間の熱伝導部材を介しての熱伝導性の低下が抑制される。
【0028】
上記4)の組電池用伝熱装置によれば、熱伝導部材に比較して熱伝導率の低い熱伝導シートまたは熱伝導グリースと、熱伝導部材との間の熱伝導性の低下を抑制することができる。
【0029】
上記5)の組電池用伝熱装置によれば、熱伝導部材と伝熱器の伝熱面との間の熱伝導性が優れたものになる。
【0030】
上記6)の組電池用伝熱装置によれば、組電池の受熱面と、伝熱器の伝熱面との間の熱伝導部材を介しての熱伝導性が優れたものになる。
【0031】
上記7)の組電池用伝熱装置によれば、熱伝導部材における組電池の受熱面の形状に追従して変形する性能が向上する。
【0032】
上記8)の組電池用伝熱装置によれば、熱伝導部材の各U形部分がばね弾性を有することになるので、組電池の各単電池が変形したり、少なくとも一部の単電池が上下方向にずれて受熱面に段差が生じたりした場合において、熱伝導部材における組電池の受熱面に追従した変形が効果的に行われる。また、各U形部分のウェブ部を平坦状とすることにより、組電池の受熱面への接触面積を大きくすることができる。しかも、熱伝導部材を1枚の金属板から加工することができ、製作が容易になる。
【0033】
上記9)の組電池用伝熱装置によれば、伝熱器の伝熱媒体流通路内を流れる伝熱媒体と、熱伝導部材との間の熱伝導性が優れたものになる。
【0034】
上記10)の組電池用伝熱装置によれば、熱伝導部材のばね弾性を有する凸部の数を少なくすることにより、加工箇所を減らすことができるとともに加工時間を短縮することができ、熱伝導部材の製造コストを低減することができる。凸部の数を少なくした場合には,伝熱器の伝熱面との接触面積は減少するが、ベース板の組電池の受熱面への接触面積が増大するので、伝熱性能の低下を抑制することができる。
【0035】
上記11)の組電池用伝熱装置によれば、熱伝導部材の凸部が千鳥配置状に設けられているので、凸部間の距離を短くすることができる。その結果、組電池の各単電池が変形したり、少なくとも一部の単電池が上下方向にずれて受熱面に段差が生じたりした場合における熱伝導部材の撓みを抑制することができ、熱伝導部材を組電池の受熱面および伝熱器の伝熱面に安定的に接触させることが可能になる。
【0036】
上記12)の組電池用伝熱装置によれば、伝熱器の伝熱媒体流通路内を流れる伝熱媒体と、熱伝導部材との間の熱伝導性が優れたものになる。
【0037】
上記13)の組電池装置によれば、伝熱器と組電池の受熱面との間の熱伝導性が優れたものになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】この発明による組電池用伝熱装置を用いた組電池装置を示す斜視図である。
【
図3】
図1の組電池装置の一部分を拡大して示す側面図である。
【
図4】
図1の組電池装置における組電池用伝熱装置の一部分を拡大して示す伝熱媒体の流れ方向下流側から見た正面図である。
【
図5】
図1の組電池装置の熱伝導部材の一部分を拡大して示す斜視図である。
【
図6】この発明による組電池用伝熱装置の他の使用例を示す
図4相当の図である。
【
図7】この発明による組電池用伝熱装置の熱伝導部材の変形例を示す
図3相当の図である。
【
図8】
図7の組電池用伝熱装置の熱伝導部材を示す
図4相当の図である。
【
図9】
図7の組電池用伝熱装置の熱伝導部材を示す斜視図である。
【
図10】
図7の組電池用伝熱装置の熱伝導部材の一部分を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。この実施形態は、この発明による組電池用伝熱装置が、複数の直方体状の角形単電池からなる組電池を備えた組電池装置において、組電池を冷却するために用いられるものであり、冷熱を伝える伝熱媒体として冷却液が用いられる。
【0040】
全図面を通じて同一物および同一部分には同一符号を付す。
【0041】
図1および
図2はこの発明による組電池用伝熱装置を用いた組電池装置の全体構成を示し、
図3~
図5はその一部分の構成を示す。
【0042】
図1~
図4において、組電池装置は、たとえば複数の角形リチウムイオン二次電池の扁平状角形単電池(2)からなる組電池(1)と、組電池(1)の全単電池(2)に冷熱を与えて冷却する組電池用伝熱装置(10)とよりなる。
【0043】
組電池(1)は、複数の単電池(2)を、厚み方向が前後方向を向いた状態で前後方向に並べることにより構成されている。各単電池(2)の前面は横長方形であり、長辺が左右方向を向くとともに短辺が上下方向を向いている。各単電池(2)に1対の端子(3)が突出状に設けられており、端子(3)を利用して全ての単電池(2)が直列状または並列状に接続されることにより組電池(1)が構成されている。組電池(1)の下面が、冷熱または温熱を受ける受熱面(4)となっている。受熱面(4)は全単電池(2)の下面からなる。
【0044】
組電池用伝熱装置(10)は、外部に平坦な伝熱面(12)を有するとともに、内部に伝熱媒体が流通する伝熱媒体流通路(13)を有する金属製伝熱器(11)と、伝熱器(11)の伝熱面(12)に配置された金属製熱伝導部材(14)とを備えており、伝熱媒体流通路(13)を流れる伝熱媒体の有する冷熱が、熱伝導部材(14)を介して組電池(1)における伝熱器(11)の伝熱面(12)を向いた受熱面(4)に伝わるようになされている。
【0045】
伝熱器(11)は、たとえばアルミニウム製であり、頂壁、底壁および左右両側壁を有するケーシング(15)を備えており、ケーシング(15)の頂壁および底壁のうち少なくともいずれか一方、ここでは頂壁の外面が伝熱面(12)となるとともに、ケーシング(15)内部に、伝熱媒体が一方向に流れる伝熱媒体流通路(13)が設けられている。ケーシング(15)の頂壁の内面に、伝熱媒体の流れ方向(前後方向)に延びる複数のフィン(16)が、伝熱媒体の流れ方向と直交する方向(左右方向)に間隔をおいて垂下状に一体に設けられている。フィン(16)の下端はケーシング(15)の底壁に一体化されており、伝熱媒体流通路(13)が複数の小流路(13a)に分割されている。ケーシング(15)は、たとえばアルミニウム押出形材を用いてつくられる。図示は省略したが、伝熱器(11)の伝熱媒体流通路(13)の後端は1つの伝熱媒体分流部に通じさせられるとともに、同じく前端は1つの伝熱媒体合流部に通じさせられており、伝熱媒体分流部に供給された伝熱媒体が分流されて伝熱媒体流通路(13)のすべての小流路(13a)に流入し、小流路(13a)を前方に流れて伝熱媒体合流部で合流した後に送り出されるようになっている。
【0046】
図4および
図5に示すように、熱伝導部材(14)は波の波長方向が左右方向を向いた波状板材であって、前後方向に延びるとともに下方(伝熱器(11)の伝熱面(12)側)に開口し、かつ波の波長方向に間隔をおいて配置された複数のU形部分(17)と、隣り合うU形部分(17)の近接したフランジ部(17a)の開口端部(下端部)どうしを連結する連結部分(18)とを備えている。U形部分(17)の両フランジ部(17a)は、上下方向の中間部分が左右方向外方に突出するように湾曲している。また、U形部分(17)の両フランジ部(17a)の上端どうしを連結するウェブ部(17b)の少なくとも一部、ここでは全部が、組電池(1)の受熱面(4)に面接触しうるように平坦状となっている。U形部分(17)を連結する連結部分(18)の少なくとも一部、ここでは全部が、伝熱器(11)の伝熱面(12)に面接触しうるように平坦状となっている。熱伝導部材(14)は、連結部分(18)が伝熱器(11)のフィン(16)と対応する位置に来るように配置されている。そして、U形部分(17)の両フランジ部(17a)およびウェブ部(17b)に、前記波長方向と直交する方向(前後方向)に間隔をおいて複数の切り欠き部(19)が形成されており、これにより熱伝導部材(14)は、組電池(1)の受熱面(4)の形状に追従して変形しうるようになっている。熱伝導部材(14)の左右両端のU形部分(17)の外側フランジ部(17a)の下端には、熱伝導部材(14)の前後方向の全長にわたって水平壁(20)が一体に設けられている。熱伝導部材(14)の連結部分(18)および水平壁(20)は、ろう材を用いた接合(ろう付)、はんだを用いた接合(はんだ付)、拡散接合、超音波接合などの方法によって、伝熱器(11)の伝熱面(12)に金属接合されていることが好ましい。また、熱伝導部材(14)は、アルミニウム、リン青銅、ばね鋼などにより形成されており、厚み方向(上下方向)にばね弾性を有していることが好ましい。なお、熱伝導部材(14)の上下方向の寸法は2~3mm程度である。
【0047】
熱伝導部材(14)における組電池(1)の受熱面(4)側を向く部分は熱伝導シート(21)により覆われており、熱伝導部材(14)のU形部分(17)のウェブ部(17b)と、組電池(1)の受熱面(4)との間に熱伝導シート(21)が介在させられている。したがって、熱伝導部材(14)のU形部分(17)のウェブ部(17b)は、熱伝導シート(21)を介して間接的に組電池(1)の受熱面(4)に接触している。熱伝導部材(14)における熱伝導シート(21)との接触面積、すなわち全ウェブ部(17b)の合計面積は、伝熱器(11)の伝熱面(12)との接触面積、すなわち全連結部分(18)および水平壁(20)の合計面積よりも大きくなっていることが好ましい。熱伝導シート(21)の厚みは熱伝導部材(14)の厚み以下とすることが好ましい。熱伝導シート(21)は、シリコーンゴム、シリコーンゲル、熱伝導性アクリルなどの高分子により形成されており、熱伝導部材(14)のU形部分(17)のウェブ部(17b)上面や、組電池(1)を構成する単電池(2)の下面に微小な凹凸や変形があったとしてもウェブ部(17b)上面および単電池(2)下面に密着し、ウェブ部(17b)上面と単電池(2)下面との間の熱伝導面積の減少を防止している。
【0048】
なお、熱伝導シート(21)に代えて、熱伝導部材(14)のU形部分(17)のウェブ部(17b)上面と、組電池(1)を構成する単電池(2)の下面との間に熱伝導グリースが介在させられていてもよい。
【0049】
また、
図6に示すように、組電池用伝熱装置(10)の伝熱器(11)の伝熱面(12)と、熱伝導シート(21)の下面との間に熱伝導グリース(25)が充填されていることが好ましい。
【0050】
上述した組電池(1)装置において、組電池(1)を構成するすべての単電池(2)を冷却する場合、伝熱媒体分流部に冷却液を供給する。すると、冷却液が分流されて伝熱媒体流通路(13)のすべての小流路(13a)に流入し、小流路(13a)内を前方に流れて伝熱媒体合流部で合流した後に送り出される。冷却液が伝熱器(11)の伝熱媒体流通路(13)を流れている間に、冷却液の有する冷熱が、熱伝導部材(14)の連結部分(18)、U形部分(17)の両フランジ部(17a)およびウェブ部(17b)、ならびに熱伝導シート(21)を介して組電池(1)の受熱面(4)に伝えられ、組電池(1)のすべての単電池(2)が冷却される。
【0051】
寒冷地において、使用開始前に単電池(2)を適正温度まで加熱する必要がある場合には、伝熱媒体分流部に温熱を供給しうる伝熱媒体である高温の加熱液を供給する。すると、加熱液の有する温熱が、冷却の場合と同様にして組電池(1)の受熱面(4)に伝えられ、組電池(1)のすべての単電池(2)が適正温度に加熱される。
【0052】
図3に示すように、少なくとも一部の単電池(2)が上下方向にずれて受熱面(4)に段差が発生している場合、熱伝導部材(14)が組電池(1)の受熱面(4)の形状に追従して変形するとともに、熱伝導シート(21)が熱伝導部材(14)のU形部分(17)のウェブ部(17b)上面および組電池(1)を構成する単電池(2)の下面に密着するので、組電池(1)の受熱面(4)と、伝熱器(11)の伝熱面(12)との間の熱伝導部材(14)および熱伝導シート(21)を介しての熱伝導性の低下が抑制される。したがって、組電池(1)を構成する全単電池(2)を効率良く冷却または加熱することが可能になる。
【0053】
上述した実施形態においては、熱伝導部材(14)における組電池(1)の受熱面(4)側を向く部分が熱伝導シート(21)や熱伝導グリースにより覆われているが、熱伝導シート(21)および熱伝導グリースは必ずしも必要とせず、熱伝導部材(14)のU形部分(17)のウェブ部(17b)が直接的に組電池(1)の受熱面に接触するようになっていてもよい。
【0054】
図7~
図10は、この発明による組電池用伝熱装置の熱伝導部材の変形例を示す。
【0055】
図7~
図10に示すように、組電池用伝熱装置(10)の熱伝導部材(30)は、ベース板(31)およびベース板(31)の伝熱器(11)側を向いた面(下面)に千鳥配置状に設けられかつ先端が伝熱器(11)の伝熱面(12)に接触した複数の凸部(32)からなる。左右方向の同一位置にある複数の凸部(32)はそれぞれ前後方向に延びる一直線上に並んでいるとともに、前後方向の同一位置にある複数の凸部(32)はそれぞれ左右方向に延びる一直線上に並んでおり、左右方向に隣り合う一直線上に位置する凸部(32)は前後方向にずれて設けられている。なお、
図9に示す熱伝導部材(30)は、組電池(1)構成する1つの単電池(2)の下面の大きさと同じ大きさを有している。
【0056】
凸部(32)は、熱伝導部材(30)のベース板(31)に形成された左右方向に長い方形貫通穴(33)の縁部の対向する左右2辺に連なって一体に設けられ、かつ下方(伝熱器(11)側)に向かって方形貫通穴(33)の内方に斜めに突出した2つの突出片(34)と、両突出片(34)の先端(下端)どうしを一体に連結し、かつ伝熱器(11)の伝熱面(12)に面接触する平坦状の接触片(35)とよりなり、熱伝導部材(30)は、組電池(1)の受熱面(4)の形状に追従して変形しうるようになっている。熱伝導部材(30)は、すべての凸部(32)が伝熱器(11)のフィン(16)と対応する位置に来るように配置されている。熱伝導部材(30)の凸部(32)の接触片(35)は、ろう材を用いた接合(ろう付)、はんだを用いた接合(はんだ付)、拡散接合、超音波接合などの方法によって、伝熱器(11)の伝熱面(12)に金属接合されていることが好ましい。また、熱伝導部材(30)は、アルミニウム、リン青銅、ばね鋼などにより形成されており、厚み方向(上下方向)にばね弾性を有していることが好ましい。なお、熱伝導部材(30)の上下方向の寸法は2~3mm程度である。
【0057】
熱伝導部材(30)のベース板(31)における組電池(1)の受熱面(4)側を向く部分(上面)が熱伝導シート(21)により覆われており、熱伝導部材(30)のベース板(31)と、組電池(1)の受熱面(4)との間に介在させられている。
【0058】
なお、熱伝導シートに代えて、熱伝導部材(30)のベース板(31)の上面と、組電池(1)を構成する単電池(2)の下面との間に熱伝導グリースが介在させられていてもよい。
【0059】
また、図示は省略したが、
図6に示す場合と同様に、組電池用伝熱装置(10)の伝熱器(11)の伝熱面(12)と、熱伝導シート(21)の下面との間に熱伝導グリース(22)が充填されていることが好ましい。
【0060】
上述した熱伝導部材(30)を有する組電池用伝熱装置(10)を用いた組電池装置において、組電池(1)を構成するすべての単電池(2)を冷却する場合、冷却液が伝熱器(11)の伝熱媒体流通路(13)を流れている間に、冷却液の有する冷熱が、熱伝導部材(30)の凸部(32)の接触片(35)および突出片(34)、熱伝導部材(30)のベース板(31)、ならびに熱伝導シート(21)を介して組電池(1)の受熱面(4)に伝えられ、組電池(1)のすべての単電池(2)が冷却される。
【0061】
寒冷地における使用開始前の単電池(2)の加熱は、伝熱媒体分流部に温熱を供給しうる伝熱媒体である高温の加熱液を供給する。すると、加熱液の有する温熱が、冷却の場合と同様にして組電池(1)の受熱面に伝えられ、組電池(1)のすべての単電池(2)が適正温度に加熱される。
【0062】
図7に示すように、少なくとも一部の単電池(2)が上下方向にずれて受熱面(4)に段差が発生している場合、熱伝導部材(30)が組電池(1)の受熱面(4)の形状に追従して変形するとともに、熱伝導シート(21)が熱伝導部材(30)のベース板(31)の上面および組電池(1)を構成する単電池(2)の下面に密着するので、組電池(1)の受熱面(4)と、伝熱器(11)の伝熱面(12)との間の熱伝導部材(30)および熱伝導シート(21)を介しての熱伝導性の低下が抑制される。したがって、組電池(1)を構成する全単電池(2)を効率良く冷却または加熱することが可能になる。
【0063】
上述した変形例の熱伝導部材(30)を有する組電池用伝熱装置(10)においても、熱伝導部材(30)のベース板(31)における組電池(1)の受熱面(4)側を向く部分が熱伝導シート(21)や熱伝導グリースにより覆われているが、熱伝導シートおよび熱伝導グリースは必ずしも必要とせず、熱伝導部材(30)のベース板(31)が直接的に組電池(1)の受熱面(4)に接触するようになっていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
この発明による組電池用伝熱装置は、たとえば複数のLiイオン二次電池の単電池からなる組電池を備えた電気自動車において、単電池の冷却に用いられる。
【符号の説明】
【0065】
(1):組電池
(4):受熱面
(10):組電池用伝熱装置
(11):伝熱器
(12):伝熱面
(13):伝熱媒体流通路
(14):熱伝導部材
(15):ケーシング
(16):フィン
(17):U形部分
(17a):フランジ部
(17b):ウェブ部
(18):連結部分
(19):切り欠き部
(21):熱伝導シート
(25):熱伝導グリース
(30):熱伝導部材
(31):ベース板
(32):凸部
(33):貫通穴
(34):突出片
(35):接触片