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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】注射器廃棄用ボックス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/50 20060101AFI20220106BHJP
   A61G 12/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A61M5/50
A61G12/00 W
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017057579
(22)【出願日】2017-03-23
(65)【公開番号】P2018158002
(43)【公開日】2018-10-11
【審査請求日】2020-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】豊田 瑠美
(72)【発明者】
【氏名】北田 亮
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-005923(JP,A)
【文献】特開2015-231852(JP,A)
【文献】特開2014-191871(JP,A)
【文献】特開平05-310288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/50
A61G 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と蓋を備えた注射器廃棄用ボックスであって、
前記本体の内側に一又は複数の区画が設けられ、各区画には収容部が設けられ、
前記収容部は、開口端、中空部及び閉口端を有する筒状に形成され、
前記収容部の閉口端側に設けられた回転軸のまわりに、前記収容部の開口端側が回転するように構成され、
前記中空部は、注射針が前記閉口端側に向いた状態で使用済み注射器を収容するよう構成されており、
前記収容部の閉口端側の上面に傾斜面が形成され、
前記収容部の開口端側を持ち上げた際に、前記傾斜面は、前記閉口端側の前記区画の内壁と当接し、前記傾斜面と前記内壁との間の摩擦力により前記収容部が持ち上がった位置にてロックされる、前記注射器廃棄用ボックス。
【請求項2】
前記収容部の開口端側の下面には、突起部を備えた弾性掛止部が設けられ、
前記突起部は、前記開口端側の前記区の底面に固定された突起受け部と掛かり合うことで、前記収容部が前記本体に掛止される、請求項1に記載の注射器廃棄用ボックス。
【請求項3】
前記収容部が前記本体に掛止されると、前記収容部に収容された使用済み注射器の押し子と前記開口端側の前記区の内壁との間には、前記使用済み注射器の取り出しを可能にするスペースは存在しない、請求項2に記載の注射器廃棄用ボックス。
【請求項4】
使用済み注射器を収容した前記収容部が前記本体に掛止されると、前記弾性掛止部は、上下方向において前記使用済み注射器と前記底面との間に位置する、請求項2又は3に記載の注射器廃棄用ボックス。
【請求項5】
本体と蓋を備えた注射器廃棄用ボックスであって、
前記本体の内側に一又は複数の区画が設けられ、各区画には収容部が設けられ、
前記収容部は、開口端、中空部及び閉口端を有する筒状に形成され、
前記収容部の閉口端側に設けられた回転軸のまわりに、前記収容部の開口端側が回転するように構成され、
前記中空部は、注射針が前記閉口端側に向いた状態で使用済み注射器を収容するよう構成されており、
前記収容部の開口端側の下面には、突起部を備えた弾性掛止部が設けられ、
前記突起部が前記開口端側の前記区の底面に固定された突起受け部と掛かり合うことで、前記収容部は前記本体に掛止され、
前記弾性掛止部と前記回転軸との間に位置する前記区画の底面の一部は、片持ち梁状に形成され、上に凸状の突起部を有し、
前記収容部に外力が加わらない状態では、前記凸状の突起部が前記収容部の下面を上方に押し上げ、前記収容部は前記本体に掛止されないよう構成されている、前記注射器廃棄用ボックス。
【請求項6】
前記注射器廃棄用ボックスの前面には、前記蓋の開閉をロックするスライドロック機構が設けられている、請求項1~5のいずれか1項に記載の注射器廃棄用ボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み注射器を収容する注射器廃棄用ボックスに関する。注射器廃棄用ボックスは、使用済み注射器を廃棄場所へ運ぶ際に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
病院等の医療現場において医師や看護師等の医療従事者が使用済み注射器を廃棄処理する際に、医療従事者が使用済み注射器の注射針を自身又は他者の手や腕等に誤って刺してしまう事故(針刺し事故)が発生することがある。針刺し事故は、様々な感染症の発生の原因となることがある。
【0003】
一般的に、使用済み注射器を廃棄用箱に入れる前に、耐貫通性のプラスチック製キャップを注射針に被せて、注射針がむき出しにならないようにすることで、針刺し事故への対策が行われる。しかしながら、プラスチック製キャップを使用済み注射器の針に被せる際に、針刺し事故が発生することがある。
【0004】
普段から医療行為に接する医療従事者でさえ使用済み注射器による針刺し事故が発生してしまうが、医療従事者ではない一般の患者が自宅等にて自ら注射器を用いた治療を行う場合には、いっそう針刺し事故の発生のおそれがある。
【0005】
乾癬患者は、乾癬の治療のために、自宅等にて乾癬治療薬液が入った注射器(注射針付き皮下注シリンジ)を自ら大腿部や上腕部等に注射することがある。使用済みの注射器を廃棄するためには、患者は、自宅でゴミとして廃棄することはできず、医療機関等の所定の廃棄場所に使用済み注射器を運び廃棄する必要がある。使用済み注射器の運搬は何らかの容器に収容して行う必要があるが、使用済み注射器を容器に収容する際又は該容器を医療機関に運ぶ際に、針刺し事故が発生するおそれがある。自宅でインシュリン注射を行う糖尿病患者等についても同様に針刺し事故が発生するおそれがある。
【0006】
特許文献1には、医療現場や訪問介護による在宅看護時に発生する使用済み注射器による針刺し事故を防ぐために、注射器等の鋭利な医療廃棄物を使用後に安全に廃棄できる、設置用又は携帯用の医療廃棄物容器が開示される。該医療廃棄物容器は、使用後の注射器を収容するための密閉可能な本体と、該本体内に収容された、注射器の注射針を刺して係止させるための針刺し体を備えた容器である。該医療廃棄物容器を用いることで、医療従事者及び患者は、使用済み注射器の針にキャップを被せる必要がないので、針にキャップを被せる際に生じる針刺し事故の発生が低減される。
【0007】
特許文献2には、使用済みのペン型注射器を安定収容可能な注射器の廃棄容器が開示される。該廃棄容器は、容器本体と、容器本体に嵌着される蓋とを備え、該蓋には、注射器を挿通可能な大きさの複数の挿入孔と、注射器を離脱不可能に保持する抜止め部とが設けられる。使用済み注射器は、その全体が該挿入孔から容器本体内部に挿入され、該抜止め部にて抜けないように固定される。該廃棄容器を用いることで、廃棄するペン型注射器が安定的に収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-176445号公報
【文献】特開2016-96965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の医療廃棄物容器は、注射針の先端を針刺し体に刺して収容するものであるが、注射針の針先以外は露出した状態にあり、該医療廃棄物容器を動かした際に、針刺し体から注射針が外れるおそれがある。特許文献2に記載の廃棄容器は、注射器の挿入口が蓋上面にあり、使用済み注射器を該挿入口に挿入することはやや難しく、また抜止め部が緩むことで注射器が抜けてしまうおそれもある。
【0010】
本発明は、使用済み注射器の廃棄に際し、針刺し事故の発生を防ぐ又は低減する注射器廃棄用ボックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明には、以下の態様が含まれる。
[1]
本体と蓋を備えた注射器廃棄用ボックスであって、
前記本体の内側に一又は複数の区画が設けられ、各区画には収容部が設けられ、
前記収容部は、開口端、中空部及び閉口端を有する筒状に形成され、
前記収容部の閉口端側に設けられた回転軸のまわりに、前記収容部の開口端側が回転するように構成され、
前記中空部は、注射針が前記閉口端側に向いた状態で使用済み注射器を収容するよう構成されている、前記注射器廃棄用ボックス。
[2]
前記収容部の閉口端側の上面に傾斜面が形成され、
前記収容部の開口端側を持ち上げた際に、前記傾斜面は、前記閉口端側の前記区画の内壁と当接し、前記傾斜面と前記内壁との間の摩擦力により前記収容部が持ち上がった位置にてロックされる、上記[1]に記載の注射器廃棄用ボックス。
[3]
前記収容部の開口端側の下面には、突起部を備えた弾性掛止部が設けられ、
前記突起部は、前記開口端側の前記区の底面に固定された突起受け部と掛かり合うことで、前記収容部が前記本体に掛止される、上記[1]又は[2]に記載の注射器廃棄用ボックス。
[4]
前記収容部が前記本体に掛止されると、前記収容部に収容された使用済み注射器の押し子と前記開口端側の前記区の内壁との間には、前記使用済み注射器の取り出しを可能にするスペースは存在しない、上記[3]に記載の注射器廃棄用ボックス。
[5]
使用済み注射器を収容した前記収容部が前記本体に掛止されると、前記弾性掛止部は、上下方向において前記使用済み注射器と前記底面との間に位置する、上記[3]又は[4]に記載の注射器廃棄用ボックス。
[6]
前記弾性掛止部と前記回転軸との間に位置する前記区画の底面の一部は、片持ち梁状に形成され、上に凸状の突起部を有し、
前記収容部に外力が加わらない状態では、前記凸状の突起部が前記収容部の下面を上方に押し上げ、前記収容部は前記本体に掛止されないよう構成されている、上記[3]~[5]のいずれかに記載の注射器廃棄用ボックス。
[7]
前記注射器廃棄用ボックスの前面には、前記蓋の開閉をロックするスライドロック機構が設けられている、上記[1]~[6]のいずれかに記載の注射器廃棄用ボックス。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態に係る注射器廃棄用ボックスを用いることで、針刺し事故の発生が防止又は低減される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)注射器廃棄用ボックスの斜視図、及び(b)蓋が開いた状態の注射器廃棄用ボックスの斜視図である。
図2】(a)注射器廃棄用ボックスの正面図、(b)平面図、及び(c)右側面図である。
図3】注射器廃棄用ボックスの収容部の斜視図である。
図4】注射器廃棄用ボックスのA-A線断面図である。
図5】注射器廃棄用ボックスのA-A線断面図である。
図6】注射器廃棄用ボックスのA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で用いる用語の意義は、特にことわりがなければ次のとおりである。「注射器」は注射針付きシリンジを指す。「使用者」には、注射器及び注射器廃棄用ボックスを用いる医療従事者や、一般の患者(医療従事者ではない者)も含まれる。「使用済み注射器」には、注射に用いた注射器や、新品の状態から封を開けただけの注射器も含まれ、注射器内に薬剤が残っていてもよい。方向として、「前」は、注射器廃棄用ボックスの蓋を開閉する側(スライドロック機構が設けられた側)を指し、「後」は、注射器廃棄用ボックスの蓋が回転自在に連結された側(ヒンジ部側)を指す。また、「上」は、注射器廃棄用ボックスの蓋側を指し、「下」は注射器廃棄用ボックスの本体側を指す。「右」又は「左」は、注射器廃棄用ボックスの蓋が開閉する側(正面)から見て右側又は左側を指す。
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る注射器廃棄用ボックスについて図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る注射器廃棄用ボックス10の斜視図であり、図1(b)は、注射器廃棄用ボックス10の蓋12が開いた状態を表す斜視図である。図2(a)は、注射器廃棄用ボックス10の正面図、図2(b)は注射器廃棄用ボックス10の平面図、そして図2(c)は注射器廃棄用ボックス10の右側面図である。図3は収容部20の斜視図である。
【0017】
注射器廃棄用ボックス10は、箱状に形成された本体11と蓋12を備え、蓋12は、ヒンジ部13において本体11に対して回転自在に連結されている。本体11及び蓋12は、合成樹脂材料から作られたものであってもよいし、金属材料から作られたものであってもよい。
【0018】
ヒンジ部13として、本体11の後端に一体的に設けられた円筒状部材の両端開口に、蓋12に一体的に設けられ、該円筒状部材を挟むように構成された凸状部材を嵌め込んだ構成を用いてもよい。蓋12は、ヒンジ部13の該筒状部材のまわりに回転自在に連結される。また、ヒンジ部13として、本体11及び蓋12が一体的に接続されたリビングヒンジ状の構成を採用してもよいし、本体11及び蓋12を接続する蝶番状の部材を取り付けて、蓋12が本体11に回転自在に連結された構成を用いてもよい。
【0019】
注射器廃棄用ボックス10の前面には、蓋12が開かないようにロックするためのスライドロック機構14が設けられている。スライドロック機構14は、本体11の前面に設けられたガイド14A、ガイド14Aにスライド移動自在に支持されるロック部14B、及び蓋12の前面に設けられたガイド14Cを含む。使用者は、ロック部14Bがガイド14A及び14Cの両方を掴むようにスライド移動させ係止させることで、蓋12が開かないようにロックすることができる。スライドロック機構14を採用することにより、使用者は、片手が塞がっていたり、指先が不自由な状態にあったとしても、ロック部14Bの単純なスライド操作により、蓋12のロック及びロック解除を容易に行うことができる。スライドロック機構14は、注射器廃棄用ボックス10の前面に1箇所設けていてもよいし、複数箇所以上設けていてもよい。
【0020】
図1(b)に示すように、本体11の内側は複数の区画30に分けられ、各区画30には、使用済み注射器を収容する収容部20が取り付けられている。各区画30は、収容部20及び収容部20に収容された注射器を収容できるサイズに構成されている。各区画30の前後方向のサイズについては、詳細には後述するが、注射器を収容した収容部20が本体11に掛止されている間は、注射器を収容部20から取り出すことができないように、注射器の押し子(プランジャ)と収容部20の開口端側にある区画30の内壁との間には、使用済み注射器の取り出しを可能にするスペースが存在しないように構成されている。
【0021】
本体11の各区画30は、平面視して、幅狭部分30Aと幅広部分30Bからなる凸の字状に形成されている。幅狭部分30Aの幅w1は、収容部20の幅w2より大きく、幅広部分30Bの幅w3は、幅狭部分30Aの幅w1より大きい。区画30に幅広部分30Bを設けることにより、使用者は、収容部20の開口端を持ち上げる際に区画30に指を入れやすくなり、操作しやすくなる。
【0022】
隣接する区画30どうしの幅広部分30Bが隣り合わないように、区画30は、幅広部分30Bの位置が前後方向に交互になるように設けられている。この構成により、幅広部分30Bを設けつつ、本体11内のスペースを無駄なく使うことができ、より多くの使用済み注射器を収容することが可能となる。区画30の数は、注射器廃棄用ボックス10のサイズ、注射器の形状、注射器の使用頻度、又は廃棄場所への運ぶ頻度等を考慮して適宜調整してもよい。区画30の数は、限定されないが、1~10個、好ましくは2~8個、さらに好ましくは4~6個である。
【0023】
図4は、図1(b)及び図2(a)に示すA-A線で切断した、蓋12が閉じた状態にある注射器廃棄用ボックス10のA-A線断面図である。図5(a)は、蓋12が開き、収容部20の開口端側を最大限に持ち上げた状態にある注射器廃棄用ボックス10のA-A線断面図であり、図5(b)は、収容部20に注射器40が収容された状態にある注射器廃棄用ボックス10のA-A線断面図を表す。
【0024】
収容部20は、筒状(角筒若しくは円筒又はこれらを組み合わせた形状)に形成され、一方の端部が開口し(開口端21A)、他方の端部が閉口している(閉口端21C)。収容部20内部の中空部21Bは、注射針が閉口端20C側に向いた状態で、使用済み注射器40を収容できるように構成されている。収容部20の中空部21Bは、少なくとも注射器40の注射針及び針もと部分を覆うように構成されている。また、収容部20は、注射器40を収容部20の閉口端側最奥まで挿入させたときに、注射器40の押し子41が収容部20の弾性掛止部24を越えて位置し、注射器40の一部が弾性掛止部24と上下方向にて重なるように構成されている。
【0025】
区画30の底面35は、幅広部分30Bにおける底面35Bの位置が、幅狭部分30Aにおける底面35Aよりも、少なくとも弾性掛止部24のサイズの分だけ下方に位置するように構成されている。
【0026】
収容部20は、注射器の注射針に対して耐貫通性の合成樹脂材料又は金属材料から作られる。収容部20の材料は、本体11及び/又は蓋12の材料と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0027】
収容部20の閉口端側の下面には、区画30の幅狭部分30Aにおける底面35Aに設けられた軸受け32に回転自在に嵌め込まれた回転軸23が設けられている。使用者が収容部20の開口端側を持ち上げると、収容部20は、回転軸23のまわりで回転する。
【0028】
収容部20の閉口端側の上面には、傾斜面22が設けられており、傾斜面22が、収容部20の閉口端側にある区画30(幅狭部分30A)の内壁31に当接するまで、使用者は、収容部20を回転させて持ち上げることができる。図5に示すように、収容部20の長手方向と水平面(又は注射器廃棄用ボックス10が置かれた平面)との間の角度θは、内壁31と収容部20との間の配置関係及び傾斜面22の角度を変えることで調整することができる。使用者が収容部20に注射器を入れやすいと感じる角度θは、限定されないが、30~60度、好ましくは40~50度、最も好ましくは45度である。
【0029】
傾斜面22が内壁31に当接するまで収容部20の開口端側を持ち上げると、傾斜面22と内壁31との間に生じる摩擦力により、収容部20は持ち上がった位置で支持(簡易ロック)される。該簡易ロックにより、使用者は手で収容部20を押さえておかなくても、収容部20を持ち上げたまま留めておくことができる。また、該簡易ロックは、傾斜面22と内壁31との間の摩擦力により生じるものであるため、使用者は、比較的弱い力で該簡易ロックを解除することも可能である。傾斜面22と内壁31との間の摩擦力を利用した簡易ロック機構により、使用者は、使用済み注射器を収容部20へ収容する際に、注射器を持っていない方の手で収容部20を押さえておく必要がない。そのため、収容部20を手で押さえた場合に、その手に誤って注射針を刺してしまう針刺し事故の発生が防止又は低減される。
【0030】
収容部20の閉口端側における区画30の内壁31と傾斜面22との間に、収容部20の開口端側が持ち上がった位置で支持するための十分な摩擦力が生じていればよいので、傾斜面22は、平面状若しくは曲面状であってもよく、又は摩擦力を増加させるように複数の細かい凹凸を設けた構成であってもよい。
【0031】
収容部20の開口端側の下面には、注射器の挿入を妨げないように下に凸状に弾性掛止部24が設けられ、弾性掛止部24には、突起部25が設けられている。突起部25は、区画30の幅広部分30Bの底面35Bに固定された突起受け部36と掛かり合うことで、収容部20は本体11に掛止され、収容部20は回転できない状態になる。
【0032】
注射器廃棄用ボックス10の前後方向において弾性掛止部24と回転軸23との間に位置する区画30の底面の一部34は、片持ち梁状に形成され、片持ち梁状底面34は、上に(蓋12側に)凸状の突起部33を有している。図4に示すように、収容部20に外力が加わらない状態では、突起部33が収容部20の下面を上方に押し上げるので、収容部20は本体11に掛止されない。つまり、注射器廃棄用ボックス10は、使用者が収容部20を押し下げなければ、収容部20は本体11に掛止されない構成をとる。このような構成により、使用者は、使用済み注射器を収容する際に、注射器廃棄用ボックス10の蓋12を開けた後に、収容部20の掛止を解除する操作を要求されない。そのため、使用者は、片手が塞がっていたり、指先が不自由な状態にあったとしても、注射器を入れやすい角度に収容部20を容易に持ち上げることができる。
【0033】
図6は、注射器40を収容した収容部20が本体11に掛止され、蓋12が閉められた状態にある注射器廃棄用ボックス10のA-A線断面図である。
【0034】
使用者は、注射器40を収容部20に収容し、収容部20の開口端側を下方に押し下げることで、弾性掛止部24の突起部25が、本体11の区画30の幅広部分35Bにおける底面35Bに固定された突起受け部36と掛かり合い、収容部20が本体11に掛止される。収容部20が本体11に掛止されると、注射器40の押し子41と、収容部20の開口端側にある区画30の内壁37との間に、注射器40を取り出すための十分なスペースが存在しないため、収容部20と本体11との掛止を解除しない限り、注射器40は収容部20から抜け出ないように構成されている。
【0035】
収容部20の掛止の解除は、使用者が弾性掛止部24を操作して、突起受け部36から突起部25を外すことにより可能である。しかしながら、注射器40を収容した収容部20が本体11に掛止されると、弾性掛止部24が注射器40の下方(高さ方向において注射器40と区画30の底面35Bとの間)に位置する構成となるので、使用者が注射器40の裏側にある弾性掛止部24を操作することは困難である。つまり、注射器廃棄用ボックス10は、注射器40を収容する収容部20が本体11に掛止されると、使用者が注射器40を容易には取り外せないように構成されている。この構成により、注射器の使用者に限らず、他者(例えば幼児等)が興味本位で注射器廃棄用ボックス10をさわったとしても、注射器40を取り出すことは難しく、ひいては針刺し事故の発生を防ぐ又は低減することができる。
【0036】
使用済み注射器の廃棄に際し、本発明の一実施形態に係る注射器廃棄用ボックスを用いることで、使用者は、
(i)使用済み注射器の注射針にキャップを被せる必要がなく、
(ii)片手が塞がっていたり、指が不自由な状態にあったとしても、スライドロック機構により、注射器廃棄用ボックスの蓋のロック及びロックの解除が容易となり、
(iii)注射器廃棄用ボックスの蓋を開けても収容部は本体に掛止(ロック)されていないので、収容部の掛止を解除する動作が要求されず、また収容部を持ち上げやすくなり、
(iv)収容部の開口端側を上まで持ち上げると、収容部に簡易ロックがかかり、その位置で収容部が支持されるため、注射器を収容部に収容する際に、もう一方の手で収容部を押さえておく必要がなく、
(v)収容部が本体に掛止(ロック)されている間は、注射器の押し子と収容部の開口端側にある区画の内壁との間に注射器を取り出すためのスペースが存在しないため、使用済み注射器を取り出すことはできなくなり、且つ/又は
(vi)収容部の掛止を解除するための弾性掛止部が使用済み注射器の下側に隠れてしまうため、収容部の掛止を解除することが難しくなる。
このように、使用者は、使用済み注射器を容易且つ安全に注射器廃棄用ボックスへ収容することができ、収容後の使用済み注射器は安全に固定されるため、針刺し事故の発生が防止又は低減される。
【0037】
(その他)
本発明の一実施形態に係る注射器廃棄用ボックスは、使用済み注射器に限らず、使用前の注射器を収容する注射器収容ボックスとしても用いることができる。注射器廃棄用ボックスは、廃棄場所への運搬用に用いてもよいし、注射器の保管用に用いてもよい。
【0038】
上記実施形態で説明した寸法、材料、形状、構成要素の相対的な位置等は任意であり、本発明が適用される装置の構造又は様々な条件に応じて変更される。本発明は、具体的に記載された上記実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0039】
10 注射器廃棄用ボックス
11 本体
12 蓋
13 ヒンジ部
14 スライドロック機構
20 収容部
21A 開口端
21B 中空部
21C 閉口端
22 傾斜面
23 回転軸
24 弾性掛止部
25 突起部
30 区画
30A 幅狭部分
30B 幅広部分
31 収容部の閉口端側にある区の内壁
32 軸受け部
33 突起部
34 片持ち梁状底面
35A、35B 底面
37 収容部の開口端側にある区の内壁
40 注射器
41 押し子
図1
図2
図3
図4
図5
図6