(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】吊り下げ具と操作具ならびにこれらを備えた取り付け装置
(51)【国際特許分類】
E04G 21/32 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
E04G21/32 A
(21)【出願番号】P 2017115057
(22)【出願日】2017-06-12
【審査請求日】2020-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】500510261
【氏名又は名称】JR東日本ビルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】志村 千秋
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 敦史
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 修平
(72)【発明者】
【氏名】柴田 秀爾
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅善
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-174267(JP,A)
【文献】実開平05-021045(JP,U)
【文献】特開平08-013811(JP,A)
【文献】特開平10-280675(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0047712(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0052180(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、この基体上部に設けられ引っ掛け部が形成された吊り下げ部材と、前記基体に上下動可能かつ回動可能に設けられ、屈曲スリットが形成された可動体と、この可動体の上端部に揺動可能に枢支され前記吊り下げ部材を開閉する揺動部材と、前記基体と前記可動体とを貫通し、前記屈曲スリットに嵌通される棒材と、この棒材と前記可動体上端部との間に設けられたばねと、前記可動体に連結され、孔が穿設された動作部材とを備え、
前記動作部材を押し下げ、前記揺動部材を起立させて前記吊り下げ部材を閉じ、その閉位置で前記動作部材をロック方向に回して前記揺動部材をロックすることを特徴とする吊り下げ具。
【請求項2】
前記動作部材には、操作杆が着脱自在に設けられることを特徴とする請求項1に記載の吊り下げ具。
【請求項3】
請求項1に記載の吊り下げ具を操作する操作具であって、
前記動作部材に係脱自在に係合する板材と、この板材に脱着可能に連結される操作杆とを備えたことを特徴とする操作具。
【請求項4】
基体と、この基体上部に設けられ引っ掛け部が形成された吊り下げ部材と、前記基体に上下動可能かつ回動可能に設けられ、屈曲スリットが形成された可動体と、この可動体の上端部に揺動可能に枢支され前記吊り下げ部材を開閉する揺動部材と、前記基体と前記可動体とを貫通し、前記屈曲スリットに嵌通される棒材と、この棒材と前記可動体上端部との間に設けられたばねと、前記可動体に連結され、孔が穿設された動作部材とを備え、前記動作部材を押し下げ、前記揺動部材を起立させて前記吊り下げ部材を閉じ、その閉位置で前記動作部材をロック方向に回して前記揺動部材をロックする吊り下げ具と、
前記吊り下げ具を操作する操作具であって、前記動作部材に係脱自在に係合する板材と、この板材に脱着可能に連結される操作杆とを備えた操作具とを備え、
前記操作杆を持ち上げて前記吊り下げ部材を被吊り下げ材に掛け、前記操作杆を押し下げ、前記揺動部材を起立させて前記吊り下げ部材を閉じ、その閉位置で前記操作杆をロック方向に回して前記揺動部材をロックすることを特徴とする取り付け装置。
【請求項5】
前記吊り下げ部材の開放端には、鉤部が、前記揺動部材の揺動端には、前記鉤部に係合可能な係合部がそれぞれ形成され、
前記揺動部材は、前記ばねにより前記可動体上端が前記基体の上部に付勢されると、横臥して前記吊り下げ部材を開き、前記動作部材が前記ばねに抗して下方に押圧されて前記可動体が降下すると、起立して前記係合部が前記鉤部に係止されることを特徴とする請求項
4に記載の取り付け装置。
【請求項6】
前記基体と前記可動体とはそれぞれ、外筒体とこの外筒体内に摺動可能かつ回動可能に収容された内筒体とにより構成され、
前記屈曲スリットは、前記棒材の上下方向の変位を許容する縦スリット部と、この縦スリット部の上端から横方向に形成され、前記棒材の回動方向の変位を許容する横スリット部と、前記横スリット部の行き止まり端から下方に前記棒材の上下寸法に応じて延び、前記棒材の回動方向の変位を規制する規制溝部とを有して構成されることを特徴とする請求項
4に記載の取り付け装置。
【請求項8】
前記板材の切り欠き部上部には、前記吊り下げ部の一部を受け入れる凹部が形成されることを特徴とする請求項7に記載の取り付け装置。
【請求項9】
前記動作部材は、下端が水平に形成されるとともに、両端に互いに臨んで同一形状の受け入れ部が形成された孔を有する動作プレートを備え、
前記板材は、上部に前記外筒体を受け入れる凹陥部が形成されるとともに、前記板材の前記凹陥部上部には、前記吊り下げ部に当接可能な一対の当接部が互いに臨んで前記板材と直角に設けられ、
前記板材の一面には、前記動作プレートの前記受け入れ部に嵌合する第1のアームが、前記板材の他面には、前記動作プレートの前記受け入れ部に嵌合する第2のアームと前記凹陥部の下側に前記動作プレートの前記孔上縁を支持する支持部とがそれぞれ設けられることを特徴とする請求項
6に記載の取り付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の屋根または天井等の下側に設けられた高所の横材に安全ネット等を取り付ける吊り下げ具と操作具ならびにこれらを備えた取り付け装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、駅舎のプラットホーム等の構造物の屋根は、支持材(横材、梁)を介して支柱により支持される。支持材としては山形鋼(アングル)が用いられる。屋根の経年劣化の検査やひび割れや破損による雨漏り修理など、保守管理の際には、屋根に上って作業することがある。屋根には、スレート材が用いられることが多く、作業時、屋根を誤って踏み抜く恐れがあるので、作業前に作業領域のプラットホーム上で、高所の横材に安全ネット(吊下物)を吊してから作業を始めるようになっている。高所の横材に安全ネットを吊す際には、まず、作業足場を組んだり、脚立を用いて、作業員が安全ネットの吊り下げ紐を持って作業足場や脚立に上り、横材に結びつけるようにしている。
【0003】
しかしながら、係る吊り下げ作業では、高所に上るため、安全面に配慮する必要があるだけでなく、作業に時間がかかるという問題がある。このため、従来、まず、クランプ操作棒で、取り付け具としての逆L字型クランプを梁にセットし、その状態でカム操作棒を操作して、クランプを梁に把持するようにしたものが知られている。こうして、複数のクランプを梁に沿って所望の間隔で所望の数取り付け、その後、安全ネットの端部ロープを各クランプのフックに引っ掛けて、安全ネットを張設するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記クランプでは、床側から上方の形鋼からなる横梁に、外れ防止部を正確に合致させてセットしなければならず、見づらい上に、正確に掛止されているかどうか見極めにくく、クランプ操作棒の操作が難しいという問題がある。また、上部材の下部に、カムとリンクアームとばねとカム切替操作棒とにより構成されるストッパ機構を備えているため、装置が複雑化、長大化するという問題がある。さらに、複数のクランプをセットした後、安全ネットの端部ロープを各クランプのフックに引っ掛けるようにしているので、手間がかかるという問題がある。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、簡素な構成で容易に吊下物を高所の被吊り下げ材に吊り上げ、吊り降ろしすることができ、作業性を向上させることができる取り付け具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る吊り下げ具は、基体と、この基体上部に設けられ引っ掛け部が形成された吊り下げ部材と、前記基体に上下動可能かつ回動可能に設けられ、屈曲スリットが形成された可動体と、この可動体の上端部に揺動可能に枢支され前記吊り下げ部材を開閉する揺動部材と、前記基体と前記可動体とを貫通し、前記屈曲スリットに嵌通される棒材と、この棒材と前記可動体上端部との間に設けられたばねと、前記可動体に連結され、孔が穿設された動作部材とを備え、前記動作部材を押し下げ、前記揺動部材を起立させて前記吊り下げ部材を閉じ、その閉位置で前記動作部材をロック方向に回して前記揺動部材をロックすることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項1に係る吊り下げ具では、基体と、この基体上部に設けられ引っ掛け部が形成された吊り下げ部材と、前記基体に上下動可能かつ回動可能に設けられ、屈曲スリットが形成された可動体と、この可動体の上端部に揺動可能に枢支され前記吊り下げ部材を開閉する揺動部材と、前記基体と前記可動体とを貫通し、前記屈曲スリットに嵌通される棒材と、この棒材と前記可動体上端部との間に設けられたばねと、前記可動体に連結され、孔が穿設された動作部材とを備え、前記動作部材を押し下げ、前記揺動部材を起立させて前記吊り下げ部材を閉じ、その閉位置で前記動作部材をロック方向に回して前記揺動部材をロックするようにしたので、床で引っ掛け部に吊下物を引っ掛け、動作部材を変位させて吊り下げ部材を開き、動作部材により基体を持ち上げて吊り下げ部材を被吊り下げ材に吊り下げ、動作部材を変位させて吊り下げ部材を閉じ、動作部材をロック方向に回動させると、吊り下げ部材を閉状態でロックする。吊り降ろし時には、動作部材を逆に回動させて、ロックを解除し、動作部材を元の位置に変位させて吊り下げ部材を開き、動作部材により基体を移動させて吊り下げ部材を被吊り下げ材から離脱させ、基体を降ろすと、吊下物は床に降ろされる。このため、吊り上げ、吊り降ろし作業が簡素化、効率化される。
【0009】
また、上記発明に係る吊り下げ具は、動作部材には、操作杆が着脱自在に設けられることが好ましい。係る構成により、床側から高所の被吊り下げ材に吊すことができる。
【0010】
本発明の請求項3に係る操作具は、請求項1に記載の吊り下げ具を操作する操作具であって、前記動作部材に係脱自在に係合する板材と、この板材に脱着可能に連結される操作杆とを備えたことを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項3に係る操作具は、請求項1に記載の吊り下げ具を操作する操作具であって、前記動作部材に係脱自在に係合する板材と、この板材に脱着可能に連結される操作杆とを備えるようにしたので、操作具により吊り下げ具を被吊り下げ材に吊り下げて、下方から動作部材を操作してロック、ロック解除を行うことができる。
【0012】
本発明の請求項4に係る取り付け装置は、請求項1に記載の吊り下げ具と、請求項3に記載の操作具とを備え、前記操作杆を持ち上げて前記吊り下げ部材を被吊り下げ材に掛け、前記操作杆を押し下げ、前記揺動部材を起立させて前記吊り下げ部材を閉じ、その閉位置で前記操作杆をロック方向に回して前記揺動部材をロックすることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の請求項4に係る取り付け装置では、請求項1に記載の吊り下げ具と、請求項3に記載の操作具とを備え、前記操作杆を持ち上げて前記吊り下げ部材を被吊り下げ材に掛け、前記操作杆を押し下げ、前記揺動部材を起立させて前記吊り下げ部を閉じ、その閉位置で前記操作杆をロック方向に回して前記揺動部材をロックするようにしたので、床で引っ掛け部に吊下物を引っ掛け、動作部材を変位させて吊り下げ部材を開き、動作部材により基体を持ち上げて吊り下げ部材を被吊り下げ材に吊り下げ、動作部材を変位させて吊り下げ部材を閉じ、動作部材をロック方向に回動させると、吊り下げ部材を閉状態でロックする。吊り降ろし時には、動作部材を逆に回動させて、ロックを解除し、動作部材を元の位置に変位させて吊り下げ部材を開き、動作部材により基体を移動させて吊り下げ部材を被吊り下げ材から離脱させ、基体を降ろすと、吊下物は床に降ろされる。このため、吊り上げ、吊り降ろし作業が簡素化、効率化される。
【0014】
また、上記発明に係る取り付け装置は、前記吊り下げ部材の開放端には、鉤部が、前記揺動部材の揺動端には、前記鉤部に係合可能な係合部がそれぞれ形成され、前記揺動部材は、前記ばねにより前記可動体上端が前記基体の上部に付勢されると、横臥して前記吊り下げ部材を開き、前記動作部材が前記ばねに抗して下方に押圧されて前記可動体が降下すると、起立して前記係合部が前記鉤部に係止されることが好ましい。さらに、前記基体と前記可動体とはそれぞれ、外筒体とこの外筒体内に摺動可能かつ回動可能に収容された内筒体とにより構成され、前記屈曲スリットは、前記棒材の上下方向の変位を許容する縦スリット部と、この縦スリット部の上端から横方向に形成され、前記棒材の回動方向の変位を許容する横スリット部と、前記横スリット部の行き止まり端から下方に前記棒材の上下寸法に応じて延び、前記棒材の回動方向の変位を規制する規制溝部とを有して構成されることが好ましい。
【0015】
また、上記発明に係る取り付け装置は、前記動作部材は、下端が水平に形成されるとともに、両端に互いに臨んで同一形状の受け入れ部が形成された孔を有する動作プレートを備え、前記板材は、上部に前記外筒体を受け入れる切り欠き部が形成されるとともに、前記板材の一面には、前記動作プレートの下端を受け入れて支持し、前記動作プレートと前記板材との横方向の相対変位を許容するガイドと、前記動作プレートと前記板材との横方向の相対変位を所定位置で規制する規制突部と、前記屈曲スリットに対応した屈曲溝部が形成された案内部材と、前記棒材の突出部の脱落を阻止する脱落防止部材とが設けられ、前記屈曲溝部は、前記動作プレートが前記ガイドに導かれると、前記突出部を受け入れて横方向の変位を許容する横溝部と、この横溝部の行き止まり端から上方に延びる縦溝部と、この縦溝部の上端から前記横溝部と平行に延びる逃げ溝部とをそれぞれ有して構成され、前記板材の他面には、前記動作プレートの前記受け入れ部に嵌合するアームと、前記切り欠き部の下側に前記動作プレートの前記孔上縁を支持する支持部とが設けられることが好ましい。さらに、前記板材の切り欠き部上部には、前記吊り下げ部の一部を受け入れる凹部が形成されるようにしてもよい。
【0016】
また、上記発明に係る取り付け装置は、前記動作部材は、下端が水平に形成されるとともに、両端に互いに臨んで同一形状の受け入れ部が形成された孔を有する動作プレートを備え、前記板材は、上部に前記外筒体を受け入れる凹陥部が形成されるとともに、前記板材の前記凹陥部上部には、前記吊り下げ部に当接可能な一対の当接部が互いに臨んで前記板材と直角に設けられ、前記板材の一面には、前記動作プレートの前記受け入れ部に嵌合する第1のアームが、前記板材の他面には、前記動作プレートの前記受け入れ部に嵌合する第2のアームと前記凹陥部の下側に前記動作プレートの前記孔上縁を支持する支持部とがそれぞれ設けられることが好ましい。
【0017】
本発明の請求項10に係る吊り下げ具は、吊下物が引っ掛けられる引っ掛け部と被吊り下げ材に吊り下げられる吊り下げ部とを有する吊り下げ部材と、吊り下げ部を開閉する揺動部材と、上下に変位して前記揺動部材を揺動させて前記吊り下げ部を開状態と閉状態とに切り替える切り替え機構と、前記切り替え機構の回動により前記吊り下げ部を閉位置でロックするロック機構とを備えたことを特徴とするものである。
【0018】
本発明の請求項10に係る吊り下げ具では、吊下物が引っ掛けられる引っ掛け部と被吊り下げ材に吊り下げられる吊り下げ部とを有する吊り下げ部材と、吊り下げ部を開閉する揺動部材と、上下に変位して前記揺動部材を揺動させて前記吊り下げ部を開状態と閉状態とに切り替える切り替え機構と、前記切り替え機構の回動により前記吊り下げ部を閉位置でロックするロック機構とを備えるようにしたので、引っ掛け部に吊下物を引っ掛け、吊り下げ部を開いて被吊り下げ材に掛け、切り替え機構を上下に変位させて吊り下げ部を閉じ、この閉位置で切り替え機構を回動させると、吊り下げ部は閉じられたままロックされる。ロックを解除して吊り降ろす際には、切り替え機構をロック方向と逆に回してロックを解除し、切り替え機構を閉方向と逆に変位させて吊り下げ部を開き、被吊り下げ材から吊り降ろすことができる。
【0019】
本発明の請求項11に係る操作具は、請求項10に記載の吊り下げ具を操作する操作具であって、前記切り替え機構に係脱自在に係合し、前記切り替え機構を上下に変位させるとともに閉位置で前記切り替え機構を回動させる操作機構を備えたことを特徴とするものである。
【0020】
本発明の請求項11に係る操作具では、請求項10に記載の吊り下げ具を操作する操作具であって、前記切り替え機構に係脱自在に係合し、前記切り替え機構を上下に変位させるとともに閉位置で前記切り替え機構を回動させる操作機構を備えるようにしたので、吊り下げ具の引っ掛け部に吊下物を引っ掛け、操作機構を切り替え機構に係合させて、操作機構により切り替え機構を操作して吊り下げ部を開いて被吊り下げ材に掛け、操作機構により切り替え機構を上下に変位させて吊り下げ部を閉じ、この閉位置で操作機構により切り替え機構を回動させると、吊り下げ部は閉じられたままロックされる。ロックを解除して吊り降ろす際には、操作機構により切り替え機構をロック方向と逆に回してロックを解除し、切り替え機構を閉方向と逆に変位させて吊り下げ部を開き、被吊り下げ材から吊り降ろすことができる。
【0021】
本発明の請求項12に係る取り付け装置は、請求項10に記載の吊り下げ具と請求項11に記載の操作具とを備えたことを特徴とするものである。
【0022】
本発明の請求項12に係る取り付け装置では、請求項10に記載の吊り下げ具と請求項11に記載の操作具とを備えるようにしたので吊り下げ具の引っ掛け部に吊下物を引っ掛け、操作機構を切り替え機構に係合させて、操作機構により切り替え機構を操作して吊り下げ部を開いて被吊り下げ材に掛け、操作機構により切り替え機構を上下に変位させて吊り下げ部を閉じ、この閉位置で操作機構により切り替え機構を回動させると、吊り下げ部は閉じられたままロックされる。ロックを解除して吊り降ろす際には、操作機構により切り替え機構をロック方向と逆に回してロックを解除し、切り替え機構を閉方向と逆に変位させて吊り下げ部を開き、被吊り下げ材から吊り降ろすことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の請求項1に係る吊り下げ具は、基体と、この基体上部に設けられ引っ掛け部が形成された吊り下げ部材と、前記基体に上下動可能かつ回動可能に設けられ、屈曲スリットが形成された可動体と、この可動体の上端部に揺動可能に枢支され前記吊り下げ部材を開閉する揺動部材と、前記基体と前記可動体とを貫通し、前記屈曲スリットに嵌通される棒材と、この棒材と前記可動体上端部との間に設けられたばねと、前記可動体に連結され、孔が穿設された動作部材とを備え、前記動作部材を押し下げ、前記揺動部材を起立させて前記吊り下げ部を閉じ、その閉位置で前記動作部材をロック方向に回して前記揺動部材をロックするようにしたので、吊り下げ部材を開いて被吊り下げ材に吊り下げ、吊り降ろしすることができ、閉じると回すだけでロックすることができ、吊り上げ、吊り降ろし作業が簡素化、効率化され、作業効率が向上する効果がある。
【0024】
また、本発明の請求項3に係る操作具は、請求項1に記載の吊り下げ具を操作する操作具であって、前記動作部材に係脱自在に係合する板材と、この板材に脱着可能に連結される操作杆とを備えるようにしたので、操作杆により吊り下げ具を被吊り下げ材に吊り下げ、吊り降ろしすることができるとともに、下方から動作部材を操作してロック、ロック解除を行うことができ、作業効率が向上する効果がある。
【0025】
さらに、本発明の請求項4に係る取り付け装置は、請求項1に記載の吊り下げ具と、請求項3に記載の操作具とを備え、前記操作杆を持ち上げて前記吊り下げ部材を被吊り下げ材に掛け、前記操作杆を押し下げ、前記揺動部材を起立させて前記吊り下げ部を閉じ、その閉位置で前記操作杆をロック方向に回して前記揺動部材をロックするようにしたので、操作杆により吊り下げ部材を開いて吊り下げ具を被吊り下げ材に吊り下げ、吊り降ろしすることができるとともに、下方から操作杆を操作してロック、ロック解除を行うことができ、吊り上げ、吊り降ろし作業が簡素化、効率化され、作業効率が向上する効果がある。
【0026】
また、本発明の請求項10に係る吊り下げ具は、吊下物が引っ掛けられる引っ掛け部と被吊り下げ材に吊り下げられる吊り下げ部とを有する吊り下げ部材と、吊り下げ部を開閉する揺動部材と、上下に変位して前記揺動部材を揺動させて前記吊り下げ部を開状態と閉状態とに切り替える切り替え機構と、前記切り替え機構の回動により前記吊り下げ部を閉位置でロックするロック機構とを備えたので、吊り上げ、吊り降ろし作業が簡素化、効率化され、作業効率が向上する効果がある。
【0027】
さらに、本発明の請求項11に係る操作具は、請求項10に記載の吊り下げ具を操作する操作具であって、前記切り替え機構に係脱自在に係合し、前記切り替え機構を上下に変位させるとともに閉位置で前記切り替え機構を回動させる操作機構を備えたので、吊り上げ、吊り降ろし作業が簡素化、効率化され、作業効率が向上する効果がある。
【0028】
また、本発明の請求項12に係る取り付け装置は、請求項10に記載の吊り下げ具と請求項11に記載の操作具とを備えたので、吊り上げ、吊り降ろし作業が簡素化、効率化され、作業効率が向上するとともに、作業員の数を減らしてコストダウンを図る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る取り付け具を用いて横材に吊す状態を示す説明図である。
【
図2】
図2の(A)ないし(F)はそれぞれ、本発明の一実施形態に係る取り付け具の吊り下げ具を示す説明図で、(A)は吊り下げ部が開いた状態を示す一部破断側面図、(B)は吊り下げ部が起立し揺動部材が当接した状態を示す一部破断側面図、(C)は吊り下げ部が閉じた状態で吊り下げ部に揺動部材がロックされた下方のロック位置にあるときの状態を示す一部破断側面図、(D)は、ロック位置にあるときの正面図、(E)は、内筒体の屈曲スリットの形状を示す説明図および(F)は屈曲スリットにおける棒材の位置を示す説明図である。
【
図4】
図4の(A)ないし(D)はそれぞれ、本発明の一実施形態に係る取り付け具の操作具を示す説明図で、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は正面図および(D)は案内部材の屈曲溝部を示す説明図である。
【
図5】
図5の(A)、(B)はそれぞれ、
図2の吊り下げ具に
図4の操作具を係止する状態を示す説明図である。
【
図6】
図6の(A)ないし(C)はそれぞれ、
図4の操作具の変形例を示す平面図、側面図および正面図である。
【
図7】
図7の(A)、(B)はそれぞれ、本発明の他の実施形態に係る吊り下げ具(取り付け装置)を示す説明図およびその変形例の吊り下げ具(取り付け装置)を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面に示す一実施形態により本発明を説明する。本実施形態に係る取り付け装置2は、例えば、
図1に示すように、駅舎のプラットホーム等の構造物8の屋根(天井)7の下側に設けられた桁材(被吊り下げ材、以下横材という)4または梁材(被吊り下げ材、以下横材という)5に安全ネットを取り付ける取り付け具である。一般に、駅舎のプラットホーム等の構造物8は、支柱3上端を桁材4が繋ぎ、これら桁材4上に直角に梁材5が連結される。構造物8の屋根7は、桁材4および梁材5を介して支柱3により支持される。これら支持材としての桁材4や梁材5等の横材には、山形鋼(アングル)が用いられる。屋根材7には、波形や山形の、山谷が周期的に繰り返す断面形状を有するスレート材が用いられる。屋根7の保守管理の際、スレート材からなる屋根7に上って作業する場合、作業時、屋根を踏み抜く恐れがあるので、作業前に作業領域のプラットホーム上で、高所の横材4、5に安全ネット(吊下物)6を吊してから作業を始めるようになっている。
【0031】
取り付け装置2は、
図5の(A)、(B)に示すように、それぞれ金具からなる吊り下げ具10と操作具11とを備えて構成される。吊り下げ具10は、
図2の(A)ないし(D)に示すように、上下が開口した円筒状外筒体(基体)12と、外筒体12の上部に設けられ、横材4、5に吊り下げられる半円状の吊り下げ部材(吊り下げ部)13と、この吊り下げ部材13に形成され、安全ネット(吊下物)6の持ち上げ部9が引っ掛けられる引っ掛け部14とを備えて構成される。引っ掛け部14は、吊り下げ部材13の内側に入り口14Aを狭めて凹陥して形成される。この狭められた入り口14Aから持ち上げ部(ロープ)9が差し入れられるようになっている。
【0032】
また、吊り下げ具10は、外筒体12内に摺動可能に収容され、上下動可能かつ回動可能に設けられた角筒状内筒体(可動体)21と、この内筒体21の上端蓋部(上端部)22に一端が枢支され、他端が吊り下げ部材13の開放端鉤部15に離脱可能に係止される揺動部材23と、外筒体12側と内筒体21の上端蓋部22との間に設けられ、常時、上端蓋部22を外筒体12の上部に付勢し、揺動部材23を横臥させて吊り下げ部材13との間に隙間を形成するばね24と、内筒体21の下端部25に連結されて下方に延び、外力により内筒体21の上端蓋部22を外筒体12の上部より降下させると、揺動部材23を起立させて揺動部材23の揺動端(係合部)26を吊り下げ部材13の開放端鉤部15に係止させる動作部材27とを備えて構成される。開放端鉤部15は端部が湾曲して上方に向くようになっている。揺動部材23の揺動端26は長円の環状に形成され、揺動部材23が起立すると自動的に鉤部15の内側に当接するようになっている。そして、環状揺動端26は当接した状態で下方に押し下げられると、鉤部15に圧接されるようになっている。動作部材27は、内筒体21の下端に連結され下端縁28Aが水平に形成された動作プレート28を備えて構成される。動作プレート28には、両端に互いに臨んで同一形状の受け入れ部29A、29Bが形成された孔29が穿設される。また、動作部材27は、動作プレート28の連結部27Aの両端にそれぞれ凹陥した係止用凹部30A、30Bが形成される。
【0033】
さらに、吊り下げ具10は、外筒体12と内筒体21とを貫通し、一端が外筒体12の外部に突出し、大径の頭部が内筒体21の内周面に臨む棒材31を備えている。突出端には、ナット(突出部)32が螺着されている。棒材(外筒体側)31の大径頭部と内筒体21の上端蓋部22との間にばね24が配設される。ところで、この棒材31は棒状部が、
図2の(E)、(F)および
図3に示すように、内筒体21に形成された屈曲スリット33に嵌通される。屈曲スリット33は、内筒体21が外筒体12に対して下方に変位するのに応じて、棒材31の通過を許容し内筒体21の変位を許容する縦スリット部33Aを有している。また、この屈曲スリット33は、この縦スリット部33Aの上端33Bから横方向に連続して形成され、棒材31が上端33Bの位置で一方に回動されると、棒材31の通過を許容し、内筒体21の回動方向の変位を許容し、ばね24による上方への付勢力を規制する横スリット部33Cを有している。さらに、屈曲スリット33は、横スリット部33Cの行き止まり端33Dから下方に棒材31の上下寸法に応じて延び、棒材31の回動方向の変位を規制する規制溝部33Eを有している。なお、棒材31の大径頭部にばね24の下部を支持するばね座を設けるようにしてもよい。
【0034】
吊り下げ部材は、外筒体12と吊り下げ部材13と引っ掛け部14とにより構成される。切り替え機構は、外筒体12と屈曲スリット33の形成された内筒体21とばね24と動作部材27と棒材31とにより構成される。ロック機構は、ばね24と動作部材27と棒材31と屈曲スリット33の形成された内筒体21とにより構成される。
【0035】
このため、吊り下げ具10は、常時、ばね24により、内筒体21の上端蓋部22を外筒体12の上部に付勢している状態では、揺動部材23の自重により揺動部材23を横臥させて吊り下げ部材13との間に隙間を形成するようになっている。そして、動作部材27が外力により下方に押し下げられると、棒材31が縦スリット部33Aを通過して内筒体21は下方に変位し、揺動部材23を起立させて、環状揺動端26は鉤部15の内側に当接するようになっている。さらに動作部材27が押し下げられて、棒材31が屈曲スリット33の上端33Bに達すると、環状揺動端26は当接した状態で下方に押し下げられ、鉤部15に圧接される。この状態で、動作部材27が一方向に回動されると、棒材31は屈曲スリット33の上端33Bから横スリット部33Cを通過して内筒体21が外筒体12に対して相対回動するのを許容する。このとき、内筒体21は、ばね24の付勢力に抗して上方への弾発復帰が規制される。そして、内筒体21が回動端に至り、棒材31が行き止まり端33Dに達して、動作部材27から外力が失われると、内筒体21はばね24の付勢力により上方に押し上げられ、棒材31は規制溝部33Eに嵌め入れられる。この状態で、内筒体21は回動方向の変位が規制され、棒材31はばね24により規制溝部33Eの下面に圧接され、内筒体21はロックされた状態となる。このため、揺動部材23も環状揺動端26が鉤部15に圧接されてロック状態となる。このロック状態では、吊り下げ部材13と揺動部材23とで閉空間を形成して横材4、5に吊り下げられるので、たとえ、引っ掛け部14を通じて吊されている安全ネットに衝撃が加わっても吊り下げ具10は外れることがない。
【0036】
ロックの解除は、動作部材27を外力によりばね24の付勢力に抗して押し下げ、棒材31が行き止まり端33Dに達すると、そのまま、動作部材27をロック時とは逆の方向に回し、棒材31が屈曲スリット33の上端33Bに達し、それ以上の回動が阻止されると、動作部材27から外力を失わせる。すると、ばね24の弾発付勢力により内筒体21は上方に変位し、内筒体21の上端蓋部22が外筒体12の上部に達すると、揺動部材23は横臥されて吊り下げ部材13との間に再び隙間を形成する。このため、吊り下げ具10を持ち上げて操作すると、横材4、5から外すことができるようになっている。
【0037】
操作具11は、
図4の(A)ないし(C)に示すように、上部に外筒体12を受け入れる切り欠き部41が形成された板材40と、この板材40の下部に設けられ、長寸の操作棒(操作杆)42が差し入れられる操作棒着脱部44とを備えている。操作棒着脱部44には、操作棒42先端の突部(図示せず)が係合する係合溝43が形成される。切り欠き部41の上部には、吊り下げ部材13の下側一部13Aを受け入れる凹部41A(
図5参照)が形成される。また、操作具11は、板材40の一面(持ち上げ側の吊り上げ用面)40Aには、操作棒着脱部44の上方に動作プレート28の下端縁28Aを受け入れて支持し、動作プレート28と板材40との横方向の相対変位を許容するガイド46と、動作プレート28と板材40との横方向の相対変位を所定位置で規制する規制突部47と、動作プレート28が規制突部47に当接して規制された際、動作プレート28の係止用凹部30A、30Bに嵌る係止ねじ48とを備えている。係止ねじ48は、高さを調整可能に板材40の一面に螺入される。これら、ガイド46と規制突部47と係止ねじ48により、動作プレート28は、板材40に確実に係止されるようになっている。
【0038】
さらに、板材40の一面40Aには、切り欠き部41の上部に、外筒体12から突出したナット32を導く案内部材50が設けられる。案内部材50には、屈曲スリット33にほぼ対応し、動作プレート28がガイド46に導かれると、棒材31のナット32を受け入れて横方向の変位を許容する横溝部51と、この横溝部51の行き止まり端51Aから上方に延びる縦溝部52と、縦溝部52の上端52Aから横溝部52と平行に延びる逃げ溝部53とをそれぞれ有する屈曲溝部51~53が形成される。この案内部材50の横溝部入り口部51Bには、横溝部51に突出してナット32の脱落を阻止する蝶ねじ(脱落防止部材)54が設けられる。この蝶ねじ54は、入り口部51Bの上方に形成されたスリット55に嵌め入れられ、常時、上方の位置で保持され、ナット32の脱落を阻止する際に降下されて入り口部51Bを塞ぐようになっている。操作具11の操作機構は、板材40、操作棒42、ガイド46、規制突部47、係止ねじ48および案内部材50を備えて構成される。
【0039】
このため、操作具11の吊り上げ用面40Aを用いて、吊り下げ具10を横材4、5に吊り上げる際には、まず、床上で、吊り下げ具10の動作プレート28を、操作具11のガイド46に差し入れ、規制突部47に向けて移動させる(
図5の(B)参照)。移動に応じてナット32が横溝部入り口部51Bから横溝部51内を移動し、動作プレート28が規制突部47に当接すると、ナット32は、横溝部51の行き止まり端51Aに達する。そして、蝶ねじ54を降ろして入り口部51Bを塞ぐ。これで、ナット32は外方に離脱することがないので、吊り下げ具10と操作具11とは、係合して上下に相対変位可能となっている。この状態で、揺動部材23は、横臥状態で、吊り下げ部材13と揺動部材23との間には空隙が形成されている。引っ掛け部14に安全ネット6の持ち上げ部9を引っ掛け、操作棒42を操作して操作具11と係合された吊り下げ具10を上方に持ち上げ、横材4、5に開いた状態の吊り下げ部材13を掛ける。そして、操作棒42を下方に引くと、ナット32は縦溝部52を、棒材31は屈曲スリット33の縦スリット部33Aをそれぞれ上方に変位し、ナット32が縦溝部上端52Aに、棒材31が縦スリット部33Aの上端33Bにそれぞれ達すると、それ以上の変位が規制される。このとき、内筒体21は外筒体12に対して最下方位置に達し、揺動部材23が起立し、吊り下げ部材13の鉤部15に揺動部材23の環状揺動端26が圧接される。この状態で、操作棒42を操作して操作具11をロック方向に回すと、ナット32は、逃げ溝部53を、棒材31は横スリット部33Cをそれぞれ通過し、回動の規制端に達すると、棒材31は行き止まり端33Dに、ナット32は逃げ溝部53の開放端53Aにそれぞれ至る。そこで、操作棒42を操作して、操作具11を差し入れ方向と逆方向に直線状に移動させると、ガイド46から動作プレート28が離脱するとともに、ナット32も開放端53Aから離脱し、操作具11は吊り下げ具10との係合が解かれると、棒材31はばね24により規制溝部33Eの下面に圧接されロック状態となる。このため、横材4、5には、引っ掛け部14で持ち上げ部9を持ち上げた吊り下げ具10がロックされた状態で残ったままとなる。
【0040】
また、板材40の他面(降ろし側の吊り降ろし用面)40Bには、動作プレート28の孔29の受け入れ部29A、29Bに嵌合する分岐アーム(アーム)60と、切り欠き部41の下側に動作プレート28の孔29の上縁29Cを支持する支持部61とが設けられる。V字状の分岐アーム60は、拡開両端部60A、60Bが他面40Bに溶接により固定されるとともに、突出した先細り側は下方に傾斜して設けられる。先端には、上方に起立する直立部60Cが形成される。拡開両端部60A、60Bは下部が凹陥して形成される。操作具11の分岐アーム60は、ロック状態で横材4、5に吊り下げられている吊り下げ具10を、ロック解除する際、分岐アーム60を動作プレート28の孔29に差し入れると、拡開両端部60A、60Bが受け入れ部29A、29Bに嵌合するようになっている。支持部61は、分岐アーム60の拡開両端部60A、60Bが受け入れ部29A、29Bに嵌合すると、孔29の上縁29Cを支持するようになっている。
【0041】
このため、操作具11の吊り降ろし用面40Bを用いて、吊り下げ具10を横材4、5から降ろす際には、操作具11の操作棒42を操作して、分岐アーム60を、上方の吊り下げ具10の動作プレート28の孔29に差し入れて支持部61で孔上縁29Cを支持し、その状態で操作具11を外力によりわずかに引き下げると、棒材31は規制溝部33Eから上方に変位し、内筒体21は回動方向の変位が許容される。そこで、ロック時と逆方向に操作棒42を回し回動規制端に達すると、棒材31は縦スリット部33Aの上端33Bに至り内筒体21は、外筒体12に対し上下動可能となる。この状態で、操作棒42を押し上げると、揺動部材23はロック時の起立状態から横臥状態となり、吊り下げ部材13と揺動部材23との間に空隙が形成される。このため、操作棒42を操作して、吊り下げ部材13を横材4、5から外して、吊り下げ部材13とともに安全ネット6の持ち上げ部9を降ろすようになっている。
【0042】
次に、上記一実施形態に係る取り付け装置2の作用について説明する。本実施形態に係る取り付け装置2は、安全ネット6の吊り上げ時には、まず、吊り下げ具10の引っ掛け部14に安全ネット6の持ち上げ部9を引っ掛けて保持する。そして、吊り下げ具10の動作プレート28を、板材40の一面40A側のガイド46に差し入れ、ナット32を案内部材50の横溝部51に導き、動作プレート28が規制突部47に当接し、係止ねじ48に係止されると、蝶ねじ54を下方に降ろしてねじ止めし、ナット32の脱落を阻止を行う。こうして、板材40を吊り下げ具10に確実に係止して、操作棒着脱部44に操作棒42を取り付け、操作具11を組み立てる。次に、操作棒42を操作して吊り下げ具10を上方に引き上げると、ばね24により内筒体21は上端蓋部22が外筒体12の上部に押し上げられているので、揺動部材23が横臥して吊り下げ部材13が開いた状態で持ち上げ、高所の横材4、5に吊り下げ部材13を掛ける。次に、操作棒42を押し下げ、揺動部材23を起立させて吊り下げ部材13を閉じ、その状態で操作棒42をロック方向に回すと、吊り下げ部材13は一体に回って横材4、5に当接し、吊り下げ部材13はそれ以上の回動が阻止される。そして、さらにロック方向に押し回すと、吊り下げ部材13は横材4、5に当接した状態で保持されたまま、動作部材27と内筒体21が一体に押し回され、内筒体21は外筒体12に対しロック方向に変位する。棒材21は、行き止まり端33Dに、ナット32は逃げ溝部53の開放端53Aに達すると、回動が規制される。そこで、操作棒42から手を離し、外力を失わせると、棒材21は規制溝部33Eに嵌りばね24により上方への付勢力を受けて圧接され、揺動部材23がロックされる。次に、操作棒42を操作して、操作具11をロック方向と逆に回すと、吊り下げ部材13は一体に回って横材4、5に当接し、吊り下げ部材13はそれ以上の回動が阻止される。そして、吊り下げ部材13を横材4、5に当接した状態で保持したまま、操作具11を差し入れ方向と逆方向に移動させると、ガイド46から動作プレート28が離脱するとともに、ナット32も開放端53Aから離脱し、操作具11は吊り下げ具10との係合が解かれ、横材4、5には、引っ掛け部14で持ち上げ部9を持ち上げた吊り下げ具10が残ったままとなる。こうして、安全ネット6を吊り下げることができる。
【0043】
安全ネット6の吊り降ろし時には、操作具11の操作棒42を操作して、板材40の他面40Bを吊り下げ具10に近づけ、分岐アーム60を、動作プレート28の孔29に差し入れて支持部61で孔上縁29Cを支持させる。操作棒42をロック時と逆方向に回すと、吊り下げ部材13は一体に回って横材4、5に当接し、吊り下げ部材13はそれ以上の回動が阻止される。その状態で、操作棒42をわずかに引き下げ、操作棒42をロック時と逆方向に回すと、棒材31は規制溝部33Eから上方に変位して横スリット部33を通過し、縦スリット部33Aの上端33Bに達する。このとき、操作棒42から手を離すと、操作棒42の自重がばね24の付勢力に打ち勝って、内筒体21は外筒体12より下方に位置したままである。次に、操作棒42を持ち上げると、分岐アーム60と支持部61により内筒体21が持ち上げられ、上端蓋部22が外筒体12の上部に達すると、揺動部材23は起立状態から横臥状態となり、吊り下げ部材13は開かれる。この状態で、操作棒42を操作して、吊り下げ部材13を横材4、5から外して、吊り下げ具10とともに安全ネット6の持ち上げ部9を降ろすようになっている。
【0044】
このように、本実施形態に係る取り付け装置2では、安全ネット6の吊り上げ時、安全ネット6の持ち上げ部9を引っ掛け部14に引っ掛け、操作具11を吊り下げ具10に係合させ、操作棒42を持ち上げると、揺動部材23が倒れて吊り下げ部材13が開かれる。この状態で、吊り下げ部材13を横材4、5に吊るし掛け、操作棒42を引き下げて吊り下げ部材13を閉じ、この下方の回動が規制されるまでロック方向に回し、規制位置で操作具11を吊り下げ具10から外すと、揺動部材23がロック状態で吊り下げ部材13が確実に閉じられて吊り下げ具10が横材4、5に吊り下げられる。取り外し時には、操作棒42を操作して、操作具11の分岐アーム60と支持部61を動作プレート28の孔29に差し入れて逆方向に回してロックを解除し、操作棒42を持ち上げると、揺動部材23が倒れて吊り下げ部材13が開かれる。この状態で操作棒42を操作して横材4、5から外し、吊り下げ具10を引き下ろすようになっている。このように、本実施形態に係る取り付け装置2では、簡素な構成で容易に安全ネットを高所の横材に吊り上げ、吊り降ろしすることができ、作業性を向上させることができる。
【0045】
次に、上記実施形態に係る操作具11の変形例について、
図6の(A)ないし(C)に基づいて説明する。この変形例に係る操作具111は、上記実施形態に係る取り付け装置2の操作具11が、吊り上げ用面40Aに係合部材としてガイド46と規制突部47と係止ねじ48を設けているのに対し、板材140の吊り上げ用面140Aに、上方に傾斜して設けられた持ち上げ側分岐アーム(第1のアーム)160が設けられた点、板材140の上部中央に外筒体12を受け入れる凹陥部141が形成された点、この凹陥部141の上部に、板材140に対して直角にかつ互いに向き合って形成され吊り下げ部材13に当接する当接部150、151を設けた点が異なっている。すなわち、この操作具111には、吊り上げ用面140Aに、V字状分岐アーム160の拡開両端部160A、160Bが溶接により固定されるとともに、突出した先細り側は上方に傾斜して設けられる。先端には、上方に起立する直立部160Cが形成される。操作具111は、動作プレート28の孔29に持ち上げ側分岐アーム160が差し入れられ、拡開両端部160A、160Bが受け入れ部29A、29Bに嵌合されると、取り下げ具10と係合するようになっている。操作具111が操作棒42の操作により押し下げられて内筒体21が下方の閉位置に達し、ロック方向に回されると、吊り下げ部材13は一体に回って横材4、5に当接し、回動が阻止される。そして、さらにロック方向に押し回されると、吊り下げ部材13は横材4、5に当接した状態で保持されたまま、当接部150または151が吊り下げ部材13に当接し、さらに押し回されると、動作部材27と内筒体21が一体に押し回され、内筒体21は外筒体12に対し変位してロック位置に達すると、吊り下げ部材13が閉じられるようになっている。
【0046】
図7の(A)は、本発明の他の実施形態に係る取り付け装置202を示す説明図で、本実施形態に係る取り付け装置202は、上記一実施形態に係る取り付け装置2が、吊り下げ具10と操作具11、111とにより構成しているのに対し、吊り下げ具210のみから構成した点が異なっている。すなわち、本実施形態に係る取り付け装置202は、上記一実施形態に係る取り付け装置2と同様に、外筒体12と、この外筒体12の上部に設けられた吊り下げ部材13と、外筒体12に収容された内筒体21と、これら筒体12、21を貫通して設けられ内筒体21に形成された屈曲スリット33に嵌通される棒材31と、棒材31と内筒体21との間に設けられたばね24とを備えている。この取り付け装置202は、内筒体21の下部に動作部材227が連結され、動作部材227の動作プレート228には、手で握ることができる孔229が穿設される。すなわち、吊り下げ具210のみを単独で取り付け具として使用するようになっている。その場合、高所の横材4、5に掛けなくとも、作業員の手の届く高さの横材に掛け吊るし、動作部材227の孔229に手を差し入れて、内筒体21の下方への変位と回動操作を手で操作するようにしている。また、この他の実施形態に係る取り付け装置202の変形例である取り付け装置302も、
図7の(B)に示すように、吊り下げ具310のみを単独で取り付け装置として使用するようになっている。すなわち、吊り下げ具210の動作部材227に、操作棒42先端の、図示しない突部が係合する係合溝343が形成された操作棒着脱部344を設け、動作部材227に長寸の操作棒42を連結するようにしている。この場合、この吊り下げ具310は、横材4、5に吊り下げられた状態で、操作棒42も吊り下げ具310と一体に吊り下げられるようになっている。さらに、取り付け装置302では、短寸の操作杆342を用いて動作部材227を操作するようにしてもよい。係る構成とした場合でも、押し下げる動作と回動させる動作のみで吊り下げ部材を開閉し、閉時、確実にロックすることができる。
【0047】
なお、上記各実施形態では、吊下物として安全ネットを例示しているがこれに限られるものではなく、店内に展示するPOPやポスター、装飾物であってもよいし、旗が並んだロープなどを吊り下げるようにしてもよい。また、上記各実施形態では、被吊り下げ材として横材を例示しているがこれに限られるものではなく、構造物や屋外に設置された鉤部や環状部材、手摺り等、吊り下げられるものとしての機能を果たすものであればよい。さらに、被吊り下げ材は、高所に限らず、作業員の手の届く高さにあってもよいし、低所にあって、吊り下げ具が吊り下げられた状態で上方に昇降される昇降装置の昇降棒のようなものであってもよい。また、上記実施形態では、内筒体21に屈曲スリット33を1つ形成しているが、これに限られるものではなく、ばね力が大きい場合、内筒体に屈曲スリットを一対それぞれ対応させて設け、長寸の棒材を一対の屈曲スリットに嵌通させて、棒材の大径頭部と他端部をそれぞれ外筒体から突出させ、他端部にナットを螺着するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
10 吊り下げ具
11 操作具
12 外筒体(基体)
13 吊り下げ部材
14 引っ掛け部
21 内筒体(可動体)
22 内筒体上端部
23 揺動部材
24 ばね
27 動作部材
29 孔
31 棒材
33 屈曲スリット
40 板材
42 操作棒(操作杆)