(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】接合体の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/322 20140101AFI20220106BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20220106BHJP
【FI】
B23K26/322
B23K26/21 G
(21)【出願番号】P 2017167216
(22)【出願日】2017-08-31
【審査請求日】2019-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 憲一
(72)【発明者】
【氏名】木村 高行
(72)【発明者】
【氏名】陳 亮
(72)【発明者】
【氏名】秦野 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 励一
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-258391(JP,A)
【文献】特開2004-025219(JP,A)
【文献】特開2010-005632(JP,A)
【文献】特開2001-276990(JP,A)
【文献】特開2004-322205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料がめっきされた第1金属部材の上に、金属材料がめっきされた第2金属部材を重ね、前記第2金属部材の表面にレーザ発振系からレーザ光を照射して、前記第1金属部材と前記第2金属部材とが接合された線状の溶接部により構成された接合部を形成し、前記第1金属部材と前記第2金属部材とが接合された接合体を製造する方法であって、
前記第1金属部材を保持する支持台を準備し、
前記第1金属部材の面内方向において相対移動が無い状態で、前記支持台上の前記第1金属部材に対して所定の角度をもって前記第2金属部材を押し付けつつ供給し、
前記第1金属部材と前記第2金属部材との間
の隙間が存在する位置において、前記第2金属部材にレーザを照射し、前記第1金属部材と前記第2金属部材をレーザ溶接する
ことを含み、
前記レーザ光の照射は、照射位置よりも前記第2金属部材の供給手前側を抑えた状態で行われる、接合体の製造方法。
【請求項2】
前記第2金属部材は前記第1金属部材との間にスペーサを介在させた状態で供給され、
前記スペーサによってレーザ照射箇所において前記第1金属部材と前記第2金属部材との間に前記
隙間が確保された状態で、前記第2金属部材にレーザを照射する、請求項1に記載の接合体の製造方法。
【請求項3】
金属材料がめっきされた第1金属部材の上に、金属材料がめっきされた第2金属部材を重ね、前記第2金属部材の表面にレーザ発振系からレーザ光を照射して、前記第1金属部材と前記第2金属部材とが接合された線状の溶接部により構成された接合部を形成し、前記第1金属部材と前記第2金属部材とが接合された接合体の製造装置であって、
前記第1金属部材を保持する支持台と、
前記第1金属部材の面内方向において相対移動が無い状態で、前記支持台上の前記第1金属部材に対して所定の角度をもって前記第2金属部材を押し付けつつ供給する供給部と、
前記第1金属部材と前記第2金属部材とを溶接するレーザを出射する前記レーザ発振系と、
前記第1金属部材と前記第2金属部材との間に隙間が形成されている位置において、前記レーザ発振系から前記第2金属部材にレーザを照射する照射位置移動部と
を備え、
前記レーザ光の照射位置よりも前記第2金属部材の供給手前側を抑える抑えローラをさらに備える、接合体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合体の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
亜鉛めっき鋼板などのように金属板の表面にめっき処理を施した金属部材は、様々な構造体に使用されている。例えば、自動車などの構造体では、防水性を有する亜鉛めっき鋼板が外板等によく使用される。
【0003】
めっき処理が施された金属部材は、様々な用途に使用されるが、構造体の一部として使用される際には、溶接などによって他の構造部材と接合される必要がある。めっき処理が施された金属部材を他の構造部材に溶接しようとすると、溶接熱によりめっき層の成分が溶けて蒸発し、この成分蒸発ガスが溶接部に閉じ込められることがある。このような場合、閉じ込められた成分蒸発ガスが溶接部から外部に噴出し、その際に溶接部にブローホールと称される欠陥孔が発生する。
【0004】
特許文献1には、2枚のめっき鋼板の重ねレーザ溶接構造であって、2枚のめっき鋼板の少なくとも一方を離間させてガス排出路を設けた状態でレーザ溶接したレーザ溶接構造が開示されている。この構成では、めっき鋼板にエンボス加工を施すことで、2枚のめっき鋼板を離間させて溶接線に近接する部位にガス排出路を設けている。従って、レーザ溶接の際、接合面のめっき層から発生した成分蒸発ガスを、このガス排出路を通じて外部へ放出し、ブローホールの発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のレーザ溶接構造では、めっき鋼板にエンボス加工を施す必要があるため、加工工程が通常の溶接に比べて多くなる。また、めっき鋼板に予めエンボス加工を施す必要があるため、連続状の板材を連続的に溶接するには不向きである。
【0007】
本発明は、めっき処理が施された金属部材を接合した接合体の製造方法および製造装置において、加工工程を増やすことなく簡易な方法でブローホールの発生を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、金属材料がめっきされた第1金属部材の上に、金属材料がめっきされた第2金属部材を重ね、前記第2金属部材の表面にレーザ発振系からレーザ光を照射して、前記第1金属部材と前記第2金属部材とが接合された線状の溶接部により構成された接合部を形成し、前記第1金属部材と前記第2金属部材とが接合された接合体を製造する方法であって、前記第1金属部材に載置するように、かつ、前記第1金属部材との間に所定の隙間が形成されるように前記第2金属部材を供給し、前記第1金属部材と前記第2金属部材との間に前記所定の隙間が存在する位置において、前記第2金属部材にレーザを照射し、前記第1金属部材と前記第2金属部材をレーザ溶接することを含む、接合体の製造方法を提供する。
【0009】
この方法によれば、第1金属部材と第2金属部材とを厚み方向に所定の隙間を設けた状態でレーザ溶接することで、めっき層から発生した成分蒸発ガスをこの隙間から逃がすことができる。このとき、第1金属部材と第2金属部材との間に所定の隙間を形成するように第1金属部材を供給するため、従来のように第1金属部材と第2金属部材とを重ねた際に隙間が形成されるようにエンボス加工を施すような特別な加工を施す必要がない。つまり、第1金属部材と第2金属部材がともに平坦な板材であっても、成分蒸発ガスを逃がすことができる。なお、この所定の隙間を形成するような第1金属部材の供給の具体的な態様は、後述する。従って、加工工程を増やすことなく簡易な方法でブローホールの発生を防止でき、接合体の欠陥を防止できる。ここで、所定の隙間とは、成分蒸発ガスを逃がしつつ、レーザ溶接によって第1金属部材と第2金属部材とを接合できる程度の距離の隙間をいう。即ち、この隙間が小さすぎると成分蒸発ガスを逃がすことができず、この隙間が大きすぎると第1金属部材と第2金属部材とを溶接できないおそれがある。
【0010】
本発明の第2の態様は、金属材料がめっきされた第1金属部材の上に、金属材料がめっきされた第2金属部材を重ね、前記第2金属部材の表面にレーザ発振系からレーザ光を照射して、前記第1金属部材と前記第2金属部材とが接合された線状の溶接部により構成された接合部を形成し、前記第1金属部材と前記第2金属部材とが接合された接合体の製造装置であって、前記第1金属部材を保持する支持台と、前記第1金属部材の面内方向において相対移動が無い状態で、前記支持台上の前記第1金属部材に対して所定の角度をもって前記第2金属部材を押し付けつつ供給する供給部と、前記第1金属部材と前記第2金属部材とを溶接するレーザを出射する前記レーザ発振系と、前記第1金属部材と前記第2金属部材との間に隙間が形成されている位置において、前記レーザ発振系から前記第2金属部材にレーザを照射する照射位置移動部とを備える、接合体の製造装置を提供する。
【0011】
本発明の第3の態様は、金属材料がめっきされた第1金属部材の上に、金属材料がめっきされた第2金属部材を重ね、前記第2金属部材の表面にレーザ発振系からレーザ光を照射して、前記第1金属部材と前記第2金属部材とが接合された線状の溶接部により構成された接合部を形成し、前記第1金属部材と前記第2金属部材とが接合された接合体の製造装置であって、前記第1金属部材を保持する支持台と、前記第1金属部材の面内方向において相対移動が無い状態で、前記支持台上の前記第1金属部材上に前記第2金属部材を供給する供給部と、前記第2金属部材を前記第1金属部材との間にスペーサを介在させた状態で供給させる介在装置と、前記第1金属部材と前記第2金属部材とを溶接するレーザを出射する前記レーザ発振系と、前記第1金属部材と前記第2金属部材との間に隙間が形成されている位置において、前記レーザ発振系から前記第2金属部材にレーザを照射する照射位置移動部とを備える、接合体の製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、めっき板材を接合した接合体の製造方法および製造装置において、第1金属部材と第2金属部材との間に所定の隙間を形成するように第1金属部材を供給するため、第1金属部材と第2金属部材とを厚み方向に所定の隙間を設けた状態でレーザ溶接できる。従って、第1金属部材と第2金属部材がともに平坦な板材であっても、めっき層から発生した成分蒸発ガスをこの隙間から逃がすことができ、加工工程を増やすことなく簡易な方法でブローホールの発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る製造装置により製造した接合体の一例の斜視図。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る製造装置により製造した接合体の一例の平面図。
【
図3A】接合体をホットスタンプで加工して製造したBピラーの斜視図。
【
図3B】接合体をホットスタンプで加工して製造したBピラーの他の例の斜視図。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る接合体の製造装置の模式的な斜視図。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る接合体の製造装置の模式的な側面図。
【
図6A】レーザ光の照射パターンの一例を示す模式的な平面図。
【
図6B】
図6Aの照射パターンで得られる接合部の一例を示す模式的な平面図。
【
図8A】レーザ光の照射パターンの第1の代案を示す模式的な平面図。
【
図8B】
図8Aの照射パターンで得られる接合部の一例を示す模式的な平面図。
【
図9A】レーザ光の照射パターンの第2の代案を示す模式的な平面図。
【
図9B】
図9Aの照射パターンで得られる接合部の一例を示す模式的な平面図。
【
図10A】レーザ光の照射パターンの第3の代案を示す模式的な平面図。
【
図11A】レーザ光の照射パターンの第4の代案を示す模式的な平面図。
【
図12A】レーザ光の照射パターンの第5の代案を示す模式的な平面図。
【
図13A】レーザ光の照射パターンの第6の代案を示す模式的な平面図。
【
図14A】レーザ光の照射パターンの第7の代案を示す模式的な平面図。
【
図15A】レーザ光の照射パターンの第8の代案を示す模式的な平面図。
【
図16A】レーザ光の照射パターンの第9の代案を示す模式的な平面図。
【
図17】
図5の製造装置の変形例を示す模式的な側面図。
【
図18】本発明の第2実施形態に係る接合体の製造装置の模式的な斜視図。
【
図19】本発明の第3実施形態に係る接合体の製造装置の模式的な斜視図。
【
図20】本発明の第3実施形態に係る製造装置により製造した接合体の一例の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、
図1から
図16Bを参照して、本発明の第1実施形態を説明する。
【0015】
(接合体)
図1及び
図2は、本発明の第1実施形態に係る製造装置(
図4及び
図5)によって製造した接合体1を示す。
【0016】
図1及び
図2に示す接合体1は、亜鉛めっき鋼板の一例であるブランク材2(第1金属部材)と、同様に亜鉛めっき鋼板の一例である補強材3(第2金属部材)とを備える。本実施形態では、補強材3はブランク材2よりも幅狭であり、厚さはともに例えば2mm程度である。ただし、ブランク材2および補強材3は、必ずしも亜鉛めっき鋼板である必要はなく、金属材料がめっきされた金属部材であればよい。例えば、めっきする金属材料はアルミ、金、銀、銅、錫、ニッケル、またはクロム等であり得る。また、例えば、めっきされる金属部材は、アルミ合金またはチタン合金等であってもよい。
【0017】
補強材3は、ブランク材2に重ねられ、ブランク材2に対してレーザ溶接によって固定されている。接合体1は、連続する1本の線状の溶接痕ないし溶接部4によって構成され、ブランク材2と補強材3とが接合されている接合部5を備える。
図1及び
図2に図示した接合部5は一例に過ぎず、後に
図8Aから
図16Bを参照して説明するように、接合部5の具体的な形態には種々の代案がある。
【0018】
接合部5は、本体6と、終端部7とを備える。
【0019】
本実施形態では、接合部5の本体6における溶接部4は、周期的な繰り返しパターンを有する曲線の形態を有しており、第1長手部8と、第2長手部9と、複数の湾曲した連結部10とを備える。第1長手部8では、溶接部4が交差した部分である複数の交差部8a(第1交差部)が、平面視において一つの方向A(第1方向)に沿って並んでおり、第1長手部8自体はこの方向Aに沿って延びている。方向Aは、後述する溶接方向(例えば
図4の符号WD参照)並びにその逆向きの方向と一致している。第2長手部9は、平面視において、第1長手部8に対して方向Aと直交する方向Bに間隔をあけて位置している。第2長手部9では、第1長手部8と同様に、溶接部4が交差した部分である複数の交差部9a(第2交差部)が、平面視において方向Aに沿って並んでおり、第2長手部9自体は方向Aに沿って延びている。複数の連結部10は方向Aに間隔をあけて並べられており、個々の連結部10は方向Bに沿って延びるとともに両端が第1長手部8と第2長手部9とに連結されている。本実施形態では、第1長手部8と、第2長手部9と、複数の連結部10とは、平面視において、梯子状構造を構成している。
【0020】
接合部5の終端部7では、溶接部4は第1長手部8と第2長手部9との間を密な間隔で往復するジクザグ状ないしは折れ線状の形態を有する。
図20を参照して後述するように、接合部5が終端部7を有さず、本体6のみから構成される場合もある。
【0021】
接合部5の本体6では、平面視において、直交する2方向、つまり方向A,Bの両方で、線状の溶接部4が連続している。言い換えれば、接合部5の本体6では、線状の溶接部4が、2次元的な広がりを有する形態で、つまり面状に設けられている。かかる形態により、接合部5の本体6では、平面視において、ある程度の面積の領域内に必ず1本の溶接部4が存在するように設けられている。特に、第1長手部8の交差部8aの近傍、並びに第2長手部9の交差部9aの近傍には、狭い領域内に複数本の溶接部4が存在している。このような態様の接合部5の本体6によって、ブランク材2と補強材3の接合強度を十分に向上させることができる。例えば、スポット溶接によって2つの部材を接合した場合、溶接部は離散的に配置された複数の点の形態を有する。また、レーザ溶接であっても、溶接部が一対又は複数対の互いに平行な直線である場合や、レーザ溶接による溶接部が連続して隣接配置された複数のC字状部の場合がある。これらのいずれの場合と比較しても、線状の溶接部4が方向A,Bの両方に連続している
図1及び
図2の接合部5の本体6によって、ブランク材2と補強材3をより高い接合強度で接合できる。
【0022】
ブランク材2と補強材3が十分な接合強度で接合されているので、接合体1はホットスタンプによる加工に適し、得られた車体構造部品について衝突事故時の部材強度向上を図ることができる。例えば、
図3Aは、接合体1をホットスタンプで加工して製造したBピラー12(車体構造部品の一例)の一例を示す。この例では、1枚の補強材3がブランク材2に接合されている。このBピラー12は、ブランク材2の補強必要部位(破線斜線部参照)にのみ、
図1及び
図2に示す接合部5が得られるように補強材3を溶接した後、ホットスタンプで一体成形して得たものである。
図3Bは、接合体1をホットスタンプで加工して製造したBピラー12の他の例を示す。この例では、2枚の補強部材3がブランク材2の接合されており、個々の補強材3はホットスタンプによって形成される稜線部に接合されている。
【0023】
ブランク材2と補強材3の接合強度を十分に向上させるためには、接合部5の本体6において、例えば1辺が2cmの正方形領域を少なくとも1本の溶接部4が通過していることが好ましい。
【0024】
(接合体の製造装置及び製造方法)
図4及び
図5は、
図1及び
図2に示す接合体1の製造装置21を示す。
図8Aから
図16Bを参照して後述するように、この製造装置21は、
図1及び
図2に示す接合体1とは接合部5の態様が異なる接合体1も製造できる。
【0025】
製造装置21は、ブランク材2が金具22aによって取り外し可能に保持されるテーブル(支持台)22を備える。ブランク搬送装置23は、テーブル22とそれに保持されたブランク材2を、溶接方向WDとは逆向きの搬送方向CDに一定速度で移動させる。
【0026】
製造装置21は、フープ供給装置24を備える。このフープ供給装置24(供給部)は供給ロール対24aを備える。フープ供給装置24は、コイル状に巻回されたフープ材20(接合体1の完成時には補強材3となる)を供給ロール対24aで巻き出し、テーブル22上に保持されたブランク材2上に供給する。より具体的には、フープ供給装置24は、巻き出したフープ材20をブランク材2に対して所定の角度をもって斜め上方から押し付けつつ、ブランク材2の搬送方向CDと同じ方向である供給方向SDに連続的に供給する。ここで、所定の角度については後述する。このとき、後述するように、フープ材20は、ブランク材2に載置されるように、かつ、フープ材20との間に所定の隙間dが形成されるように供給される。つまり、フープ材20は、ブランク材2に供給前方側(
図5において左側)から手前側(
図5において右側)へと順次接触するように供給され、接触点Pcより供給前方側ではフープ材20はブランク材2と接触しており、接触点Pcより供給手前側ではフープ材20はブランク材2と接触していない。ここで、所定の隙間dとは、成分蒸発ガスを逃がしつつ、レーザ溶接によってブランク材2とフープ材20とを接合できる程度の距離の隙間をいう。即ち、この隙間が小さすぎると成分蒸発ガスを逃がすことができず、この隙間が大きすぎるとブランク材2とフープ材20とを溶接できないおそれがある。好ましくは、これらの条件をみたす所定の隙間dは、0.1mmから0.4mm程度である。本実施形態のように、ともに厚さ2mm程度の亜鉛めっき鋼板であるブランク材2と、同厚みで同材質のフープ材20とをレーザ溶接する場合、この所定の隙間dは例えば0.2mm程度である。フープ供給装置24によるブランク材2の供給速度は、ブランク搬送装置23によるブランク材2の搬送速度と同期している。そのため、フープ材20は、ブランク材2上で、ブランク材2の面内方向においてブランク材2に対して相対移動が無い状態となっている。また、フープ状やコイル状に巻回された連続体に限らず、補強材3(第2金属部材)の長さに予め切断された帯材を供給することもできる。
【0027】
製造装置21は、レーザ発振系25を備える。レーザ発振系25は、レーザ発振素子、駆動回路、及び光学系等のレーザ光の生成に必要な要素を備える。レーザ発振系25から下向きに出射されるレーザ光26は、フープ供給装置24によってブランク材2に押し付けられる直前の位置において(特に
図5を参照)、フープ材20の上面に照射される。換言すれば、レーザ光26は、ブランク材2とフープ材20との間に所定の隙間dが存在する位置において、フープ材20に照射される。詳細には、レーザ光26は、ブランク材2に対してフープ材20が接触することとなる手前(供給手前)側で、即ち接触点Pcよりも
図5において右側で、フープ材20に照射される。
図4および
図5において符号P0はレーザ光26の照射位置を示す。本実施形態では、レーザ発振系25の水平方向及び鉛直方向の位置は固定されている。
【0028】
製造装置21は、旋回装置27(照射向き変更部)を備える。旋回装置27は、レーザ発振系25から出射されるレーザ光26の照射向きを、周期的に変化させる。後に詳述するように、旋回装置27は、レーザ発振系25がブランク材2及びフープ材20に対して溶接方向WDに移動していないと仮定した場合の仮想照射位置P1(
図6A参照)が閉図形(本実施形態では後述するように円形)を描くように、レーザ光26の照射向きを周期的に変更させる。本実施形態では、ブランク搬送装置23及び旋回装置27は、本発明における照射位置移動部を構成する。
【0029】
製造装置21は、切断駆動装置28を備える。切断駆動装置28は、後に詳述するように、ブランク材2に対するフープ材20の溶接が完了後、フープ供給装置24を矢印Cで示すように溶接方向WDに移動させることで、フープ材20に張力を付与して切断する。なお、前述のように、補強材3(第2金属部材)の長さに予め切断された帯材を用いる場合、切断駆動装置28は不要である。
【0030】
制御装置29は、ブランク搬送装置23、フープ供給装置24、レーザ発振系25、旋回装置27、及び切断駆動装置28を含む、製造装置21の種々の要素の動作を統括的に制御する。
【0031】
以下、製造装置21の動作、つまり製造装置21によって実行される接合体1の製造方法を説明する。
【0032】
レーザ発振系25から出射されるレーザ光26の照射向きは、旋回装置27によって周期的に変化する。また、ブランク材2はブランク搬送装置23により搬送方向CDに移動し、それと同方向の供給方向SDに、フープ材20がフープ供給装置24から連続的に供給される。このブランク材2とフープ材20の移動により、レーザ発振系25はブランク材2とフープ材20とに対して溶接方向WD(搬送方向CD及び供給方向SDとは逆向き)に相対的に移動する。レーザ光26の照射向きの周期的に変化と、レーザ発振系25のブランク材2とフープ材20とに対する溶接方向WDへの相対的な移動とによって、フープ材20の上面でレーザ光26の照射位置P0が変化する。その結果、前述のように第1長手部8、第2長手部9、及び複数の連結部10を有している、接合部5の本体6が得られる。
【0033】
図6Aは、本実施形態におけるレーザ光26の照射パターン31を示す。照射パターン31は、レーザ発振系25がブランク材2及びフープ材20に対して溶接方向WDに相対的に移動していないと仮定した場合の、レーザ光26の仮想照射位置P1が描く閉図形である。本実施形態における照射パターン31は円形である。照射パターン31は、旋回装置27によってレーザ発振系25から出射されるレーザ光26の照射向きを周期的に変化することによって得られる。
図6Aにおいて符号MDは、本実施形態において、照射パターン31上を仮想照射位置P1が移動する向きを示す。
【0034】
図6Bは、
図6Aの円形の照射パターン31により得られる接合部5の本体6を示す。一般に、接合部5の本体6の形状は、照射パターン31の幾何学的形状、レーザ発振系25がブランク材2とフープ材20に対して溶接方向WDに相対的に移動する速度Vw、及び後述する照射パターン31上を仮想照射位置P1が移動する速度Vp1によって決まる。
【0035】
本実施形態では、照射パターン31上を仮想照射位置P1が移動する速度Vp1は一定ではない。具体的には、照射パターン31のうち、溶接方向WDに対して概ね直交して延びる領域AR1,AR2では、速度Vp1は基準速度Vp1_stに設定されている(Vp1=Vp1_st)。基準速度Vp1_stとしては、例えば照射パターン31上を仮想照射位置P1が移動する速度Vp1の平均値を使用できる。照射パターン31のうち、仮想照射位置P1が溶接方向WDと概ね逆向きに進む領域AR3では、仮想照射位置P1が移動する速度Vp1は、基準速度Vp1_stに補正α(αの符号は正)を加えた速度に設定される(Vp1=Vp1_st+α)。一方、照射パターン31のうち、仮想照射位置P1が概ね溶接方向WDに進む領域AR4では、仮想照射位置P1が移動する速度Vp1は、基準速度Vp1_stから補正αを減じた速度に設定される(Vp1=Vp1_st-α)。以上のように、照射パターン31上を仮想照射位置P1が移動する速度Vp1を制御することで、接合部5の本体6を照射位置P0が移動する速度Vrを良好な速度範囲内に維持できる。つまり、接合部5の本体6上を照射位置P0が移動する速度Vrが均一化される。その結果、深さや幅等が均一化された良好な接合部5の本体6が得られる。
【0036】
フープ供給装置24は、巻き出したフープ材20をブランク材2に対して斜め上方から押し付けるように供給している。フープ供給装置24からのフープ材20の供給方向SDはブランク材2の搬送方向CDと同一であり、フープ材20の供給速度はブランク材2の搬送速度と同一である。つまり、ブランク材2とフープ材20の相対位置は動かない。これらにより、金具等を用いたクランプによって仮固定することなく、レーザ発振系25からのレーザ光26によって、フープ材20をブランク材2に固定できる。また、金具等が不要であるので、フープ材20の全面にレーザ光26を照射できる。つまり、フープ材20の全面に接合部5の本体6を形成できる。
【0037】
図7に示すように、必要な長さの接合部5の本体6が得られた後、連続したフープ材20がブランク材2は切断される。この切断時には、ブランク材2の搬送とフープ材20の供給とを継続しつつ、仮想照射位置P1を溶接方向WDと直交する方向に繰り返して往復移動させる。これにより、レーザ光26の照射位置P0はフープ材20の幅方向(溶接方向WDと直交する方向)に密な間隔で折れ線状に往復移動し、接合部5の終端部7が形成される。終端部7では溶接部4が密な折れ線状に配置されているので、固化する前の溶融地はブランク材2の下面付近まで達している。レーザ光26の照射を停止した直後に、切断駆動装置28がフープ供給装置24を矢印Cに示す方向(溶接方向WDと同じ方向)に移動させ、フープ材20に張力を作用させる。この張力によって、終端部7でフープ材20が切断される。切断されたフープ材20のうち、接合部5によってブランク材2に接合された部分が補強材3となる。
【0038】
フープ材20を用いて連続的に補強材3を溶接するには、1枚の補強材3について接合部5の形成が完了する度に、フープ材20を切断する必要がある。本実施形態では、溶接部4が密に配置された終端部7の形成後に、切断駆動装置28で張力を付与することでフープ材20を切断しているので、例えば大型のカッターのような機械的な切断装置を設ける必要がなく、製造装置21の小型化を図ることができる。なお、フープ材20に張力を付与する手段は、特に限定されず、錘、ばね等の手段を採用してもよい。
【0039】
【0040】
これら代案の照射パターン31のいずれについても、
図6Aを参照して説明した、照射パターン31上を仮想照射位置P1が移動する速度Vp1の制御を実行できる。この制御を実行する場合、照射パターン31のうち、溶接方向WDに対して概ね直交して延びる領域では、速度Vp1は基準速度Vp1_stに設定する。また、照射パターン31のうち、仮想照射位置P1が溶接方向WDと概ね逆向きに進む領域では、速度Vp1は、基準速度Vp1_stに補正αを加えた速度に設定する(Vp1=Vp1_st+α)。また、照射パターン31のうち、仮想照射位置P1が概ね溶接方向WDに進む領域では、速度Vp1は、基準速度Vp1_stから補正αを減じた速度に設定する(Vp1=Vp1_st-α)。
【0041】
図8Aの照射パターン31は円形であり、半径が漸増する。
図8Bに示すように、この照射パターン31で得られる接合部5の本体6は、隣接する連結部10を構成する溶接部4が交差する交差部10aが形成されている。つまり、この代案では、複数の連結部10が網状構造を構成している。この照射パターン31により、板幅が長手方向に変化する補強材3の場合も、全面にレーザ光26を照射して溶接部4を形成することが可能である。
図8Aの場合とは逆に、円形の照射パターン31の半径を漸減させることも可能である。さらに、
図9A、
図10A、
図11A、
図12A、
図13A、
図14A、
図15A、及び
図16Aのような他の照射パターン31の場合も外形寸法を漸増又は漸減することで、同様に板幅が長手方向に変化する補強材3の場合に全面にレーザ光26を照射することが可能となる。
【0042】
図9Aの照射パターン31は、溶接方向WDに延びる長軸を有する楕円である。
図9Bに示すように、この照射パターン31で得られる接合部5の本体6も、隣接する連結部10を構成する溶接部4が交差する交差部10aが形成されている。つまり、この代案では、複数の連結部10が網状構造を構成している。
【0043】
図10Aの照射パターン31は、溶接方向WDに延びる短軸を有する楕円である。
図10Bに示すように、この照射パターン31で得られる接合部5の本体6では、照射パターン31は同じ楕円であるが、
図9Aの照射パターン31の場合よりも、複数の連結部10が溶接方向WDにより密に配置されている。
【0044】
図11Aの照射パターン31は、溶接方向WDに延びる短辺を有する長方形状である。
図11Bに示すように、この照射パターン31で得られる接合部5の本体6では、例えば
図6Aの照射パターン31(円形)の場合と比較して、第1及び第2長手部8,9がより幾何学的な直線に近い形状を有する。また、個々の連結部10は直線状である。さらに、隣接する連結部10を構成する溶接部4が交差する交差部10aが形成されている。つまり、この代案でも、複数の連結部10が網状構造を構成している。
【0045】
図12Aの照射パターン31は、溶接方向WDに延びる上底と下底を有する等脚台形状である。
図12Bに示すように、この代案では、レーザ発振系25がブランク材2とフープ材20に対して溶接方向WDに相対的に移動する速度Vwと、照射パターン31上を仮想照射位置P1が移動する速度Vp1とを適切に設定することで、第1及び第2長手部8,9を溶接方向WDに延びる直線状としている。また、連結部10を溶接方向WDに概ね直交する方向に延びる直線状としている。連結部10を構成する溶接部4は交差しておらず、接合部5の本体6は梯子状構造を構成している。
【0046】
図13Aの照射パターン31は、溶接方向WDに延びる上底と下底を有する等脚台形状であるが、上下姿勢が
図12Aの場合と逆である。
図13Bに示すように、この照射パターン31で得られる接合部5の本体6では、例えば
図6Aの照射パターン31(円形)の場合と比較して、第1及び第2長手部8,9がより直線に近い形状を有する。また、個々の連結部10は直線状である。さらに、隣接する連結部10を構成する溶接部4が交差する交差部10aが形成されている。つまり、この代案でも、複数の連結部10が網状構造を構成している。
【0047】
図14Aの照射パターン31は、上底と下底が溶接方向WDに対して直交する方向に延び、かつ上底が溶接方向WDの下流側に向いた等脚台形状である。
図14Bに示すように、この照射パターン31で得られる接合部5の本体6では、個々の連結部10が概ね逆C字状を呈している。また、隣接する連結部10を構成する溶接部4が交差する交差部10aが形成されている。つまり、この代案でも、複数の連結部10が網状構造を構成している。
【0048】
図15Aの照射パターン31は、上底と下底が溶接方向WDに対して直交する方向に延び、かつ仮定が溶接方向WDの下流側に向いた等脚台形状である。
図15Bに示すように、この照射パターン31で得られる接合部5の本体6では、個々の連結部10が概ねC字状を呈している。また、隣接する連結部10を構成する溶接部4が交差する交差部10aが形成されている。つまり、この代案でも、複数の連結部10が網状構造を構成している。
【0049】
図16Aの照射パターン31は、8の字状である。
図16Bに示すように、この照射パターン31で得られる接合部5の本体6では、個々の連結部10は第1及び第2長手部8,9と連結された両端が曲線で構成され、中央部分が概ね直線状である。また、隣接する連結部10を構成する溶接部4が交差する交差部10aが形成されている。つまり、この代案でも、複数の連結部10が網状構造を構成している。8の字状の外側の円周部は楕円形状であってもよい。
【0050】
以上までの接合体1の製造方法の効果を説明する。
【0051】
上記の接合体1の製造方法によれば、ブランク材2とフープ材20とを厚み方向に所定の隙間d(
図5参照)を設けた状態でレーザ溶接することで、めっき層から発生した成分蒸発ガスをこの隙間dから逃がすことができる。このとき、ブランク材2とフープ材20との間に所定の隙間dを形成するようにブランク材2を供給するため、従来のようにブランク材2とフープ材20とを重ねた際に隙間が形成されるようにエンボス加工を施すような特別な加工を施す必要がない。従って、加工工程を増やすことなく簡易な方法でブローホールの発生を防止でき、接合体1の欠陥を防止できる。
【0052】
また、上記の接合体1の製造方法によれば、フープ材20をブランク材2の斜め上から所定の角度で押し付けるように供給するため、フープ材20が溶接熱によって歪む場合でも所定の平面度を確保した状態で溶接できる。また、ブランク材2とフープ材20との接触点Pcよりフープ材20の供給手前側(
図5において右側)では、ブランク材2とフープ材20とが当接していないため、必然的にブランク材2とフープ材20との間に隙間が設けられる。従って、ブランク材2とフープ材20との接触点Pcよりフープ材20の供給手前側にレーザを照射することで、前述のようにブランク材2とフープ材20とを厚み方向に所定の隙間dを設けた状態でレーザ溶接できる。ここで、所定の角度は、フープ材20をブランク材2の斜め上から押し付けて所定の平面度を確保できる程度の角度であり、また所定の隙間dを確保するのが困難でない程度の角度をいう。好ましくは、これらの条件をみたす所定の角度は、2度から20度程度である。また、この所定の角度は所定の隙間dに依存して決定され、独立して決定されるものではない。つまり、点P0と点Pcを結ぶ線分を斜辺とし、隙間dの線分を高さとする三角形の形状を、上記条件を達成できるものとすることが必要である。例えば、本実施形態のように、所定の隙間dが0.2mm程度である場合、この所定の角度は、5度程度である。
【0053】
図17は、
図5に対応する本実施形態の製造装置21の変形例を示す。
【0054】
本変形例では、前述の製造装置21(
図5参照)の構成に加え、抑えローラ24bと、介在装置30とを備える。
【0055】
抑えローラ24bは、フープ供給装置24の一部であり、レーザ照射位置P0よりもフープ材20の供給手前側(
図17において右側)に配置されている。本変形例では、2個の抑えローラ24bが配置されている。抑えローラ24bは、ブランク材2とフープ材20と後述するスペーサ13とを下方に抑えており、製造される接合体1の平面度を確保することに寄与する。
【0056】
本変形例では、レーザ光26は、ブランク材2に対してフープ材20が接触することとなる前方(供給前方)側で、即ち接触点Pcよりも
図5において左側で、フープ材20に照射される。ここでの接触点Pcは、ブランク材2とフープ材20とスペーサ13とが接触する点である。
【0057】
介在装置30は、ブランク材2とフープ材20との間にスペーサ13を介在させ、レーザ照射位置P0においてブランク材2とフープ材20との間に所定の隙間dを形成するものである。スペーサ13は、所定の隙間dと同程度の厚みである。スペーサ13の材質は特に限定されないが、レーザ溶接の熱に耐え得る材質である。従って、本実施形態では、スペーサ13は、例えば厚さ0.2mm程度の鋼板である。詳細には、介在装置30は、スペーサ13の位置を固定する装置である。ブランク材2とフープ材20は、前述のように搬送方向CDに移動されるため、仮にスペーサ13を固定しない場合、ブランク材2とフープ材20に挟まれたスペーサ13も搬送方向CDに移動される。スペーサ13が搬送方向CDに移動されると、レーザ照射位置P0に到達し、レーザ照射位置P0における所定の隙間dが確保されなくなる。従って、本変形例では、これを防止するため、介在装置30によって、スペーサ13の位置を固定している。このように、スペーサ13によってレーザ照射位置P0においてブランク材2とフープ材20の間に所定の隙間dが確保された状態で、フープ材20にレーザを照射する。レーザ照射位置P0よりも前方側においては、溶接池が固化することによってスペーサ13によって形成されたブランク材2とフープ材20との間の僅かな隙間が埋められ、ブランク材2とフープ材20は接合される。
【0058】
本変形例によれば、スペーサ13によってレーザ照射位置P0においてブランク材2とフープ材20との間に所定の隙間を設けることができ、即ち成分蒸発ガスを逃がす隙間(ガス排出路)を設けることができる。さらに言えば、成分蒸発ガスを逃がすガス排出路をスペーサ13が塞がないように、スペーサ13はフープ材20に対して幅狭であってもよいし、スペーサ13に搬送方向CDに延びるスリット(図示せず)を設け、ガス排出路をスペーサ13内に設けてもよい。また、介在装置30はスペーサ13を必要に応じて搬送方向CDとは反対方向に引き抜くことで、ガス排出路を形成してもよい。
【0059】
以下に説明する第2及び第3実施形態に係る製造装置21について、特に言及しない構造ないし機能は、第1実施形態と同様である。これらの実施形態に関する図面において、同一又は同様の要素には、同一の符号を付している。
【0060】
(第2実施形態)
図18は、本発明の第2実施形態に係る接合体の製造装置21を示す。
【0061】
製造装置21は、ブランク搬送装置23(
図1及び
図2参照)を備えず、テーブル22及びそれに保持されたブランク材2の位置は固定されている。製造装置21は、レーザ発振系25を溶接方向WDと同じ方向(矢印LMD1で示す)に直進移動させる直進移動装置41と、同様に、フープ供給装置24を溶接方向WDと同じ方向(矢印LMD2で示す)に直進移動させる直進移動装置42とを備える。本実施形態では、直進移動装置41,42及び旋回装置27が、本発明における照射位置移動部を構成する。
【0062】
【0063】
特にレーザ照射位置P0については、第1実施形態と同様に、ブランク材2とフープ材20との接触点Pc(
図5参照)よりフープ材20の供給手前側にレーザを照射することで、前述のようにブランク材2とフープ材20とを厚み方向に所定の隙間dを設けた状態でレーザ溶接できる。
【0064】
また、第1実施形態の変形例(
図17参照)のように、介在装置30によってスペーサ13をブランク材2とフープ材30との間に介在させる場合、介在装置30によってスペーサ13も、レーザ発振系25とフープ供給装置24と同速度で溶接方向WDへ移動される。これにより、レーザ照射位置P0におけるブランク材2とフープ材20との間の所定の隙間が確保される。
【0065】
(第3実施形態)
図19は、本発明の第3実施形態に係る接合体の製造装置21を示す。
【0066】
製造装置21はブランク搬送装置23(
図1及び
図2参照)を備えず、テーブル22及びそれに保持されたブランク材2の位置は固定されている。また、製造装置21はフープ供給装置24(
図1及び
図2参照)を備えず、切断済みの補強材3が金具51によってブランク材2が仮固定されている。切断済みの補強材3は、スポット溶接又はレーザ点溶接等でブランク材2に仮固定されてもよい。レーザ発振系25は、ロボット52が備えるロボットアーム52aによりレーザ光26が下向きとなる姿勢で固定的に保持されている。特に、本実施形態では、製造装置21は旋回装置27(
図1及び
図2参照)を備えておらず、レーザ光26の照射向きは一定である。本実施形態では、ロボットアーム52aが、本発明における照射位置移動部を構成する。
【0067】
【0068】
本実施形態では、切断済みの補強材3が金具51によってブランク材2が仮固定されているため、第1および第2実施形態のようにフープ材20をブランク材2の斜め上から所定の角度で押し付けるように供給していない。そのため、レーザ照射位置P0においてブランク材2とフープ材20との間に所定の隙間を設けるためには、第1実施形態の変形例(
図17参照)のようにブランク材2とフープ材20との間にスペーサ13を介在させる。スペーサ13は、介在装置30によって、レーザ発振系25のX方向の移動と合わせて移動される。従って、レーザ照射位置P0において、所定の隙間が確保される。
【0069】
図20は、本実施形態の製造装置21で製造された、接合体1を示す。フープ材20に張力を付与して切断するのではなく、切断済の補強材3を使用するので、接合体1の接合部5は本体6のみを有し、終端部7は有していない。同様に、第1実施形態の製造装置21(
図4及び
図5)、及び第2実施形態の製造装置(
図18)で接合体1を製造する場合でも、フープ材20を連続的に供給するのではなく、切断済の補強材3をブランク材2に接合するので有れば、接合部5は本体6のみを有し、終端部7は有さない。
【0070】
図21は、接合体1の代案を示す。この代案では、補強材3の両端部では、
図12Aの照射パターン31によって接合部5が形成され、補強材3の両端部以外の部分では
図9Aの照射パターン31によって接合部5が形成されている。そのため、接合部5は、補強材3の両端部では、
図12Bと同様の形状を有し、補強材3の両端部以外の部分では
図9Bと同様の形状を有する。補強材3の両端部では、
図12Aの照射パターン31を採用することで、補強材3の隅部にも溶接部4が設けられるので、補強材3のブランク材2に対する接合強度をさらに向上できる。
図6A、
図8A、
図9A、
図10A、
図11A、
図12A、
図13A、
図14A、
図15A、及び
図16Aのうちの任意の2個以上の照射パターン31を組み合わせて使用できる。
【符号の説明】
【0071】
1 接合体
2 ブランク材(第1金属部材)
3 補強材(第2金属部材)
4 溶接部
5 接合部
6 本体
7 終端部
8 第1長手部
8a 交差部
9 第2長手部
9a 交差部
10 連結部
10a 交差部
12 Bピラー
13 スペーサ
20 フープ材(第2金属部材)
21 製造装置
22 テーブル(支持台)
22a 金具
23 ブランク搬送装置(照射位置移動部)
24 フープ供給装置(供給部)
24a 供給ロール対
24b 抑えローラ
25 レーザ発振系
26 レーザ光
27 旋回装置(照射向き変更部)(照射位置移動部)
28 切断駆動装置
29 制御装置
30 介在装置
31 照射パターン
41,42 直進移動装置(照射位置移動部)
51 金具
52 ロボット
52a ロボットアーム(照射位置移動部)
P0 照射位置
P1 仮想照射位置
A 方向(第1方向)
B 方向(第2方向)
C 方向
WD 溶接方向
CD 搬送方向
SD 供給方向
MD 移動向き
LMD1 直進移動方向
LMD2 直進移動方向
AR1,AR2,AR3,AR4 領域