(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60W 10/04 20060101AFI20220106BHJP
B60W 10/18 20120101ALI20220106BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20220106BHJP
B60L 15/00 20060101ALI20220106BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20220106BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20220106BHJP
H02J 50/90 20160101ALI20220106BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20220106BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20220106BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B60W10/00 120
B60W10/08
B60W10/18
B60L15/00 J
B60L15/20 J
B60L5/00 B
H02J50/90
H02J50/80
H02J50/10
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
(21)【出願番号】P 2017192342
(22)【出願日】2017-10-02
【審査請求日】2020-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】守屋 史之
(72)【発明者】
【氏名】岡本 智史
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 裕太
【審査官】菅家 裕輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-228119(JP,A)
【文献】特開2017-165172(JP,A)
【文献】特開2017-165151(JP,A)
【文献】特開2013-215063(JP,A)
【文献】国際公開第2016/121022(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
B60L 1/00-58/40
B60M 1/00- 7/00
H02J 7/00- 7/36
H02J 50/00-50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ペダルの操作により車両の駆動力と制動力との両方を制御可能とするワンペダルモードと、前記第1ペダルと第2ペダルとが開放された場合にクリープ駆動を発生させるクリープモードとの切替えが可能なモード制御部と、
地上設備の給電コイルから非接触に電力を受ける受電コイルと、
を備え、
前記モード制御部は、前記給電コイルに前記受電コイルの位置を合わせる位置合わせの際に、車両の操作モードを前記ワンペダルモードから前記クリープモードへ
自動的に切り替えることを特徴とする車両。
【請求項2】
前記地上設備と無線通信を行う通信部を更に備え、
前記モード制御部は、
前記位置合わせの開始を示す所定条件を満たし、かつ、前記通信部が前記地上設備と通信を確立している場合に、前記ワンペダルモードを前記クリープモードに切り替えることを特徴とする請求項1記載の車両。
【請求項3】
前記地上設備に前記給電コイルの弱励磁を要求する弱励磁要求部を更に備え、
前記位置合わせの際、前記モード制御部は、前記操作モードを切り替えるタイミングを、前記給電コイルと前記受電コイルとの距離に応じて、前記弱励磁要求部の弱励磁の要求よりも前又は後に切り替えることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両。
【請求項4】
前記位置合わせの際に前記モード制御部が前記クリープモードへ切り替えた場合に、前記クリープ駆動のトルクを
通常時のクリープトルクよりも低いトルクから前記通常時のクリープトルクへ向けて徐々に大きくするクリープ制御部を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両。
【請求項5】
前記給電コイルと前記受電コイルとの結合強度を判定する判定部を更に備え、
前記モード制御部は、前記判定部の結合強度の判定結果に基づいて、前記操作モードを前記クリープモードから前記ワンペダルモードへ切り替えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワンペダルモードへの切替えが可能な車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、EV(Electric Vehicle)又はHEV(Hybrid Electric Vehicle)等の車両において、高電圧バッテリを充電する方法として非接触充電が検討されている。非接触充電を行うには、先ず、地上設備の給電コイルに車両の受電コイルの位置が合うように車両を正確に移動させる必要がある。
【0003】
近年、車両の駆動力と制動力とを1つのペダルで操作可能なワンペダルモードの機能が実用化されている。この機能を搭載した車両では、例えばドライバーがモード切替用のスイッチを操作してワンペダルモードに切り替えることができる。ワンペダルモードになると、1つのペダル(例えばアクセルペダル)を踏めば車両が駆動する一方、同一のペダルを開放することで車両に制動力が働く。ワンペダルモードにより、駐車時又は駐車後の発進時などにアクセルペダルとブレーキペダルとの踏み間違えが抑制できると考えられている。
【0004】
特許文献1には、本発明に関連する技術として、非接触充電前の運転操作時に、クリープトルク特性を大から小へ或いはその逆に切り替える技術、並びに、ブレーキペダルの踏み込み量に対する制動力を大から小へ或いはその逆に切り替える技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
給電コイルに受電コイルの位置を合わせる運転操作の際、ワンペダルモードが選択されていると、クリープ駆動で車両をゆっくり動かすことができないため、位置合わせにドライバーの負担が増すという課題がある。
【0007】
また、ワンペダルモードへ切り替え可能な車両に、特許文献1の技術を組み合わせた場合、位置合わせの際に通常モードが選択されていれば、クリープトルクの大きさが変更されてドライバーの負担が軽減されると考えられる。しかし、ワンペダルモードが選択されていると、そもそもクリープトルクを発生させるペダルの操作状態が存在しないので、クリープトルクの大きさが変更されても、運転に影響はなく、ドライバーの負担は軽減されない。
【0008】
本発明は、ワンペダルモードへの切替えが可能な車両において、非接触充電前の車両の位置合わせの際、ドライバーの運転操作に大きな負担が生じることを抑制できる車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、
第1ペダルの操作により車両の駆動力と制動力との両方を制御可能とするワンペダルモードと、前記第1ペダルと第2ペダルとが開放された場合にクリープ駆動を発生させるクリープモードとの切替えが可能なモード制御部と、
地上設備の給電コイルから非接触に電力を受ける受電コイルと、
を備え、
前記モード制御部は、前記給電コイルに前記受電コイルの位置を合わせる位置合わせの際に、車両の操作モードを前記ワンペダルモードから前記クリープモードへ自動的に切り替えることを特徴とする車両である。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の車両において、
前記地上設備と無線通信を行う通信部を更に備え、
前記モード制御部は、
前記位置合わせの開始を示す所定条件を満たし、かつ、前記通信部が前記地上設備と通信を確立している場合に、前記ワンペダルモードを前記クリープモードに切り替えることを特徴とする。
【0011】
ここで、位置合わせの開始を示す所定条件としては、例えば、非接触充電を実施するために車両の位置合わせを開始することを示す非接触充電移行スイッチがオン操作されたこと、或いは、車両が非接触充電を行う領域に浸入したことなどが含まれる。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の車両において、
前記地上設備に前記給電コイルの弱励磁を要求する弱励磁要求部を更に備え、
前記位置合わせの際、前記モード制御部は、前記操作モードを切り替えるタイミングを、前記給電コイルと前記受電コイルとの距離に応じて、前記弱励磁要求部の弱励磁の要求よりも前又は後に切り替えることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両において、
前記位置合わせの際に前記モード制御部が前記クリープモードへ切り替えた場合に、前記クリープ駆動のトルクを通常時のクリープトルクよりも低いトルクから前記通常時のクリープトルクへ向けて徐々に大きくするクリープ制御部を更に備えることを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車両において、
前記給電コイルと前記受電コイルとの結合強度を判定する判定部を更に備え、
前記モード制御部は、前記判定部の結合強度の判定結果に基づいて、前記操作モードを前記クリープモードから前記ワンペダルモードへ切り替えることを特徴とする。
【0015】
具体的には、モード制御部は、結合強度が結合完了を示す閾値を超えた場合に、ワンペダルモードへ切り替えるようにすればよい。或いは、モード制御部は、結合強度が結合完了を示す閾値よりも少し低い値となった場合に、ワンペダルモードへ切り替えるようにしてもよい。少し低い値とすることで、ワンペダルモードに切り替わってから車両が停止するまでのタイムラグの期間、車両が少し移動して結合強度が結合完了を示す閾値以上となったときに、車両を停止させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、非接触充電を行うための位置合わせがワンペダルモードで開始された場合でも、位置合わせの際、モード制御部が車両の操作モードをワンペダルモードからクリープモードに切り替える。従って、ドライバーはクリープ駆動により車両をゆっくりと動かして、給電コイルに受電コイルの位置を正確に合せることができ、運転操作に大きな負担が生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態の車両と地上設備との構成を示すブロック図である。
【
図2】車両コントローラにより実行される非接触充電移行処理の手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図2のステップS4で判別される3つの車両配置の一例を示す説明図である。
【
図4】
図2のステップS4で実行される車両配置の判別方法の別の例を示す説明図である。
【
図5】車両コントローラにより実行されるクリープモード切替時処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態の車両と地上設備との構成を示すブロック図である。
【0019】
本発明の実施形態に係る車両1は、非接触充電機能とワンペダルモード機能とを備えた、EV又はHEVなどの自動車である。車両1は、
図1に示すように、走行用モータ10、走行用モータ10を駆動するインバータ11、及び、走行用の電力を供給する高電圧バッテリ12を備える。また、車両1は、非接触充電ユニット15と、ドライバーの運転操作等が入力される操作部30と、車両1の制御を行う車両コントローラ20とを備える。車両コントローラ20は、本発明に係るモード制御部、クリープ制御部、弱励磁要求部及び判定部の一例に相当する。また、車両1には、駐車時等に車両1の周囲の状況を確認するためのレーダ21、カメラ22及び駐車支援システム23が設けられている。駐車支援システム23には、ティスプレイが設けられ、ドライバーはカメラ22で撮影された周囲の状況をディスプレイで確認できる。また、駐車支援システム23には、駐車完了をドライバーに知らせる表示機能又は音声出力機能が設けられている。
【0020】
非接触充電ユニット15は、非接触に電力を受ける受電コイル16と、受電コイル16に流れる交流電流を整流して高電圧バッテリ12に充電電流を供給する整流器17とを備える。また、非接触充電ユニット15は、電力の供給元である地上設備と無線通信(例えばwi-fi通信)するための通信部19と、非接触の電力伝送の制御を行う整流器内コントローラ18とを備える。受電コイル16は、車両1の下部に設けられる。
【0021】
操作部30は、ブレーキペダル31及びその操作量センサ34、アクセルペダル32及びその操作量センサ35、SBW(Shift By Wire)33、モード切替スイッチ36、並びに、非接触充電移行スイッチ37を備える。その他、図示は省略するが、操作部30には、操舵用のハンドルも設けられる。アクセルペダル32は本発明に係る第1ペダルの一例に相当する。ブレーキペダル31は本発明に係る第2ペダルの一例に相当する。
【0022】
SBW33は、ドライバーがギアのシフト操作を電子的に入力できるシステムであり、SBW33から車両コントローラ20へシフトポジションの信号が送られる。
【0023】
モード切替スイッチ36は、ドライバーが操作可能なスイッチであり、車両1の操作モードをワンペダルモードからクリープモード(通常モードと呼んでも良い)へ、或いはその逆へ切替えるためのスイッチである。モード切替スイッチ36の切替え信号は車両コントローラ20へ出力され、車両コントローラ20が切替操作に応じて操作モードを切り替える制御を行う。例えば、ワンペダルモードのときには、車両コントローラ20は、アクセルペダル32の踏み込みに応じて駆動力(走行トルク)を発生させ、アクセルペダル32が開放された場合に制動力(制動トルク)を発生させる。一方、クリープモードのときには、車両コントローラ20は、ブレーキペダルの踏み込みに応じて制動力(制動トルク)を発生させ、アクセルペダル32が開放された状態でブレーキペダルが開放された場合にクリープ駆動力(クリープトルク)を発生させる。
【0024】
非接触充電移行スイッチ37は、ドライバーが操作可能なスイッチであり、非接触充電を行うために車両1の位置合わせを開始することをドライバーが車両1へ通知するためのスイッチである。
【0025】
地上設備は、非接触に電力を送る給電コイル103、並びに、電力系統から電力を入力して給電コイル103に電流を流すPFC(Power Factor Correction)101及びインバータ102等を備える。また、地上設備には、非接触充電の際に車両1と無線通信を行う通信部106と、車両1と連携しながらインバータ102を駆動して給電コイル103を励磁する地上設備コントローラ105とが設けられている。
【0026】
<非接触充電移行処理>
図2は、車両コントローラにより実行される非接触充電移行処理の手順を示すフローチャートである。
図3は、
図2のステップS4で判別される3つの車両配置の一例を示す説明図である。
図4は、
図2のステップS4で判別される3つの車両配置のその他の例を示す説明図である。
【0027】
非接触充電移行処理は、ドライバーが非接触充電移行スイッチ37をオン操作することで、車両コントローラ20により開始される。通常、ドライバーは、高電圧バッテリ12を充電するため、車両1を地上設備に近づけたときに、非接触充電移行スイッチ37をオン操作する。
【0028】
非接触充電移行処理が開始されると、車両コントローラ20は、通信部19に通信開始を指令し、整流器内コントローラ18に通信開始を指令し、これにより通信部19に通信を開始させる(ステップS1)。通信部19は、先ず、地上設備の通信部106と通信を確立して、通信を実行する。
【0029】
続いて、車両コントローラ20は、所定時間内に通信部19が地上設備の通信部106と通信確立したか判別し(ステップS2)、通信確立していれば続くステップに進むが、タイムアウトになればエラーとして非接触充電移行処理を終了する。通常、車両1の近傍に地上設備があれば通信が確立されるが、地上設備が離れていれば通信が確立されずにタイムアウトとなる。
【0030】
通信が確立したら、次に、車両コントローラ20は、地上設備の給電コイル103の位置を検出する(ステップS3)。給電コイル103の位置は、例えばカメラ22の映像から検出したり、通信部106の無線電波を利用して地上設備との大まかな距離を計測することで検出することができる。
【0031】
そして、車両コントローラ20は、給電コイル103に対する車両1の配置に応じた分岐処理を行う(ステップS4)。具体的には、
図3(A)に示すように、給電コイル103と受電コイル16との距離L1が遠く、給電コイル103と車両1とが重ならない配置であれば、車両コントローラ20は処理をステップS5へ移行する。また、
図3(B)に示すように、給電コイル103と受電コイル16との距離L2が比較的に近く、給電コイル103と車両1とが重なりかつ給電コイル103と受電コイル16とが重ならない配置であれば、車両コントローラ20は処理をステップS8へ移行する。また、
図3(C)に示すように、給電コイル103と受電コイル16との距離L3が短く、給電コイル103と受電コイル16とが重なる配置であれば、車両コントローラ20は処理をステップS10へ移行する。
【0032】
なお、上述したステップS4で車両コントローラ20が判別する車両配置の3パターンは一例に過ぎない。ステップS4では、受電コイル16と給電コイル103との距離が、詳細な位置合わせを行う段階にあるか、大まかな位置合わせを行う段階にあるが、或いは、これらの中間の段階にあるかを判別できればよい。例えば、
図4に示すように、車両1の特定位置P1(例えば受電コイル16の中心点)が、小中大の3つの領域W1、W2、W3のいずれに位置するか否かによって、上記の位置合わせの3つの段階を判別するようにしてもよい。領域W1、W2、W3は、例えば、地上設備の給電コイル103に対応して小中大の領域に設定すればよい。特定位置P1が最小の領域W1に重なる配置には、給電コイル103と受電コイル16とが重なっていない配置が含まれていてもよいし、特定位置P1が中間の領域W2に重なる配置には、車両1が給電コイル103に重ならない配置が含まれていてもよい。
【0033】
ステップS4の判別の結果、大まかな位置合わせの段階であるとして、ステップS5へ処理を移行すると、車両コントローラ20は、先ず、車両1の操作モードを切り替える(ステップS5)。すなわち、現在、ワンペダルモードが選択されていれば、車両コントローラ20は、これをクリープモードに切り替える。また、現在、クリープモードが選択されていれば、車両コントローラ20は、操作モードの切替えを行わない。このような操作モードの切替え制御により、ドライバーは、クリープ駆動を利用して車両1の位置合わせの運転操作を進める。
【0034】
次に、車両コントローラ20は、車両の位置合わせの運転操作中、給電コイル103と車両1とが重なったか判別処理(ステップS6)を繰り返し、重なったら無線通信により地上設備に弱励磁要求を行う(ステップS7)。具体的には、車両コントローラ20は、整流器内コントローラ18に弱励磁要求の指令を出力し、整流器内コントローラ18が通信部19の無線通信により地上設備コントローラ105へ弱励磁要求を発行する。
【0035】
弱励磁要求とは、地上設備の給電コイル103に位置合わせ用の弱い励磁を行わせるための要求である。この弱い励磁により、整流器内コントローラ18は、給電コイル103と受電コイル16との結合強度を検出し、結合強度が所定の閾値を超えた場合に、結合完了として、受電コイル16と給電コイル103とが正確に位置合わせされたことを判定できる。給電コイル103を弱励磁させて受電コイル16の位置を詳細に合せるタイミングは、受電コイル16と給電コイル103とが比較的に近い距離になってからが好ましい。受電コイル16と給電コイル103とが大きく離れている段階から給電コイル103を弱励磁させるのは無駄な電力消費が生じて好ましくないためである。そこで、ステップS5へ処理が移行して大まかな位置合わせが行われる場合には、ステップS6の判定により、車両1の位置合わせが一段進んでから弱励磁要求を行っている。
【0036】
一方、ステップS4の判別の結果、中間の位置合わせの段階であるとして、ステップS8へ処理を移行すると、車両コントローラ20は、先ず、車両の操作モードを切り替える(ステップS8)。すなわち、現在、ワンペダルモードが選択されていれば、車両コントローラ20は、これをクリープモードに切り替える。また、現在、クリープモードが選択されていれば操作モードの切替えを行わない。次に、車両コントローラ20は、無線通信により地上設備に弱励磁要求を行う(ステップS9)。
【0037】
また、ステップS4の判別の結果、詳細な位置合わせの段階であるとして、ステップS10へ処理を移行すると、車両コントローラ20は、先ず、無線通信により地上設備に弱励磁要求を行う(ステップS10)。そして、所定時間待機(ステップS11)した後、車両の操作モードとして、現在、ワンペダルモードが選択されていれば、車両コントローラ20は、これをクリープモードに切り替える(ステップS12)。現在、クリープモードが選択されていれば、車両コントローラ20は、操作モードの切替えを行わない。ステップS11の所定時間には、例えば弱励磁要求を出力してから、実際に給電コイル103が弱励磁されるまでのタイムラグに相当する時間が適用される。このようにタイムラグが存在するため、クリープモードに切り替えてから弱励磁要求を出力すると、実際に給電コイル103が弱励磁される前に、クリープ駆動によって車両1が進み、受電コイル16が給電コイル103から遠ざかってしまうことが懸念される。そこで、ステップS10に移行した場合には、車両コントローラ20は、弱励磁要求を先ず行い、所定時間を開けて操作モードを切り替えている。
【0038】
ステップS4~S12の処理のうち、ステップS7、S9、S10が本発明に係る弱励磁要求部の処理に相当し、ステップS5、S8、S12が本発明に係るモード切替部の処理(クリープモードへの切替え処理)に相当する。
【0039】
ステップS5、S8、S10の何れかに処理を分岐した後、ステップS7、S9、S10で弱励磁要求がなされた頃には、ドライバーは受電コイル16を給電コイル103に詳細に近づける運転操作を行っている。従って、その後、車両コントローラ20は、受電コイル16と給電コイル103との結合が完了したか判別し(ステップS13)、結合が完了でなければ所定時間が経過してタイムアウトになったか判別する(ステップS14)。そして、車両コントローラ20は、結合が完了するか或いはタイムアウトになるまで、ステップS13、S14のループ処理を繰り返す。結合の完了の判定は、具体的には、整流器内コントローラ18が給電コイル103の弱励磁に基づく整流器17の電流を検出し、この電流値が結合完了を示す閾値を超えた場合に、これを車両コントローラ20へ通知することで達成される。ステップS13の処理が、本発明に係る判定部の処理に相当する。
【0040】
その結果、結合の完了と判別される前にタイムアウトになれば、車両コントローラ20は、無線通信により地上設備に弱励磁停止要求を出力し(ステップS15)、非接触充電移行処理を終了する。
【0041】
一方、結合の完了と判別されたら、車両コントローラ20は、先ず、車両1の操作モードをクリープモードからワンペダルモードへ切り替える(ステップS16)。ここで、車両コントローラ20は、表示又は音声により位置が合ったことをドライバーに通知するように構成してもよい。このとき、通常、ドライバーは、クリープ駆動により車両1をゆっくり動かして位置合わせを行っているので、ワンペダルモードへ切り替わることで、自動的に車両1に制動力が働き、車両1が自動的に停止する。ステップS16は本発明に係るモード切替部の処理(ワンペダルモードへ切替え処理)に相当する。
【0042】
なお、ステップS13の結合の完了の判別の代わりに、車両コントローラ20は、結合完了となる結合強度よりも少し低い強度となったことを判定するようにしてもよい。具体的には、整流器内コントローラ18が、整流器17の電流の検出により、受電コイル16と給電コイル103の結合強度が、結合完了を示す閾値よりも少し低い値となった場合に、これを車両コントローラ20に通知するように構成すればよい。つまり、車両コントローラ20に通知する閾値を少し低い値に設定すればよい。そして、ステップS13では、車両コントローラ20がこの通知の有無を判定すればよい。このような制御処理により、ステップS16でワンペダルモードに切り替わって車両1が自動的に停止したときに、受電コイル16と給電コイル103の結合強度を、結合完了を示すより高い値に近づけることができる。なぜなら、ワンペダルモードに切り替わってから車両1が実際に自動的に停止するまでにはタイムラグが生じる。そのため、結合強度が最も高いときに、ワンペダルモードに切り替えると、結合強度が最も高いところよりも少し進んだ位置で、車両1が停止してしまう。しかし、上記のような判定処理により、タイムラグ中に車両1が移動することで、結合強度がより高いところで車両1を停止することができる。
【0043】
次に、車両コントローラ20は、非接触充電ユニット15を介して高電圧バッテリ12の充電を開始する(ステップS17)。具体的には、車両コントローラ20は、車両1が停止していることを確認し、整流器内コントローラ18に充電開始の指令を出力する。整流器内コントローラ18は、この指令に基づき、地上設備コントローラ105へ無線通信により送電要求を行い、地上設備コントローラ105がインバータ102を通常駆動して給電コイル103から送電を行う。この送電により受電コイル16から整流器17に電流が送られ、これにより高電圧バッテリ12が充電される。充電が開始されたら、非接触充電移行処理が終了する。
【0044】
<クリープモード切替時処理>
続いて、
図2のステップS5、S8、S12で操作モードがクリープモードに切り換えられたときの処理について説明する。
図5は、車両コントローラ20により実行されるクリープモード切替時処理の手順を示すフローチャートである。
【0045】
図5のクリープモード切替時処理は、
図2のステップS5、S8、S12で操作モードがクリープモードに切り換えられたときに開始される。クリープモードに切り替えられると、先ず、車両コントローラ20は、クリープトルクを通常時の30%などの小さい値に変更する(ステップS21)。そして、車両コントローラ20は、短い時間毎にクリープトルクの設定値を10%ずつ増加させて(ステップS22、S23)、通常時の100%となったか判別し(ステップS24)、100%になったらクリープモード切替時処理を終了する。クリープモード切替時処理は、本発明に係るクリープ制御部の処理に相当する。
【0046】
図2のステップS5、S8、S12においてクリープモードに自動的に切り替わる際には、ドライバーがブレーキペダル31とアクセルペダル32との両方を踏み込んでいない状況も想定される。そして、このような状況では、ドライバーに車両1を進める意思がなくても車両1がクリープ駆動により前進してしまう。このため、車両1が大きく前進してしまわないよう、クリープ駆動に切り替わった当初には車両1の移動量は少ない方がよい。上記のクリープモード切替時処理によれば、クリープモードに自動的に切り替わった際に、車両1のクリープトルクが徐々に大きくなるように制御される。これにより、ドライバーは、車両1が大きく移動してしまう前に、ブレーキペダル31に足を移して、クリープ駆動を利用した車両1の位置合わせの運転操作に移行することができる。
【0047】
以上のように、本実施形態の車両1によれば、非接触充電移行時の受電コイル16の位置合わせの際に、自動的に車両1の操作モードがワンペダルモードからクリープモードに切り替わる。これにより、ドライバーはワンペダルモードのまま詳細な位置合わせを行うといった運転操作に大きな負担が生じる状況を回避できる。
【0048】
また、本実施形態の車両1によれば、非接触充電の開始を示す所定条件を満たし、かつ、車両1と地上設備とで通信が確立されている場合に、自動的なクリープモードへの切替えが行われる。非接触充電の開始を示す所定条件としては、非接触充電移行スイッチ37のオン操作という条件が採用される。これにより、非接触充電前に受電コイル16を位置合わせする際に、毎回、自動的なクリープモードへの切り替えが行われることとなり、ドライバーは、操作モードの自動的な切り替えを予期することができる。従って、ドライバーは、違和感なくクリープモードへの切り替わりを認識し、クリープ駆動を利用した車両1の詳細な位置合わせの運転操作へ移行することができる。
【0049】
また、本実施形態の車両1によれば、車両コントローラ20は、給電コイル103と受電コイル16との距離に応じて、弱励磁要求とクリープモードへの切替えとの順番を逆にする(
図2のステップS10~S12、ステップS8、S9の処理を参照)。これにより、受電コイル16と給電コイル103とが近い場合に、給電コイル103が弱励磁されるより前に、クリープモードへの切替えがなされて、給電コイル103と受電コイル16との距離が却って開いてしまうといった不都合を抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態の車両1によれば、非接触充電前の位置合わせの際に自動的にクリープモードへ切り替わる場合、クリープトルクが徐々に大きくなるように制御される。従って、操作モードの切り替わり時に、ドライバーは余裕を持ってブレーキペダル31へ足を移し、クリープ駆動を利用した運転操作へ移行することができる。
【0051】
また、本実施形態の車両1によれば、給電コイル103と受電コイル16との位置が合ったときに、車両1の操作モードが自動的にワンペダルモードに切り替わり、これにより、受電コイル16の位置が合った状態で、自動的に車両1が停止することになる。従って、車両コントローラ20は、既存の操作モードの切替えの制御を行うだけで、受電コイル16の位置合わせを開始から停止まで車両1を自動操縦するかのように遂行できるという効果が得られる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、非接触充電移行スイッチ37がオン操作され、かつ、車両1と地上設備とで通信が確立された場合に、自動的にクリープモードへの切替えを行う構成を示した。しかし、本発明に係る車両は、非接触充電のために給電コイル103に受電コイル16の位置を合わせる際に、自動的にクリープモードへの切替えが行われればよい。例えば、非接触充電移行スイッチ37がオン操作され、かつ、車両1が地上設備の近傍領域にある場合に、操作モードが自動的に切り替わるようにしてもよい。或いは、車両1からドライバーへ表示又は音声出力により、非接触充電用の車両の位置合わせの実行中であることが示された場合に、操作モードが自動的に切り替わるようにしてもよい。
【0053】
また、本発明に係る車両は、非接触充電の開始を示す所定条件を満たし、かつ、車両と地上設備との通信が確立された場合に、クリープモードへの切替えが自動的に行われるように構成してもよい。非接触充電の開始を示す所定条件としては、非接触充電移行スイッチのオン操作の他に、例えば車両1が非接触充電可能な地上設備の領域に入った場合を適用してもよい。領域に入ったか否かの判定は、例えば車両の制御部がGPS(Global Positioning System)等により車両1の位置を測定し、予め登録されている地上設備の位置データと照合することで遂行すればよい。或いは、カメラで車両1の周囲を撮影し、画像認識により地上設備を認識することで、領域に入ったことを判定してもよい。領域に入ったと判定されたら、車両コントローラ20は、この判定に基づき
図2の非接触充電移行処理を開始すればよい。
【0054】
また、上記実施形態では、車両コントローラ20が、車両1の操作モードの切替え制御と、クリープ駆動のトルク制御とを実行する構成を示した。また、上記実施形態では、車両コントローラ20と整流器内コントローラ18との連携により、弱励磁要求と、給電コイル103及び受電コイル16の結合完了の検出とを行う構成を示した。しかし、これらの処理は、1つのECU(Electronic Control Unit)が統括的に行ってもよいし、2個以上のECUが別々に行ったり、2個以上のECUが連携して行ったりしてもよい。その他、実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 車両
10 走行用モータ
11 インバータ
12 高電圧バッテリ
16 受電コイル
17 整流器
18 整流器内コントローラ
19 通信部
20 車両コントローラ(モード制御部、クリープ制御部、弱励磁要求部、判定部)
21 レーダ
22 カメラ
23 駐車支援システム
31 ブレーキペダル
32 アクセルペダル
36 モード切替スイッチ
37 非接触充電移行スイッチ
103 給電コイル
105 地上設備コントローラ
106 通信部