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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】生産プロセスの解析方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20220106BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20220106BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017221524
(22)【出願日】2017-11-17
(65)【公開番号】P2019091372
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000176763
【氏名又は名称】三菱ケミカルエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】河野 浩司
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特許第5956094(JP,B1)
【文献】特開2009-021348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品又はサービスを生産する生産プロセスの解析方法であって、
前記生産プロセスの状態を示す状態量及び前記製品又はサービスの品質を示す品質項目を少なくとも含むデータを前記生産プロセスのロット毎に収集する工程と、
前記状態量に応じて前記ロットを複数のグループに区分する工程と、
前記グループに含まれるロットの品質項目毎にグループ間の優劣を判定する工程と、
前記グループ毎の前記状態量の平均値を表示部にグラフで可視表示する工程と、
前記グラフ上において、前記優と判定されたグループが他のグループと比べて特徴的な傾向を示す状態量を優と判定されたグループの特徴を表す特徴因子と特定する工程と、
を含み、
前記可視表示する工程において、前記グループ毎の状態量の平均値を横軸に設定したバーグラフ上に前記グループ毎の状態量を表示することを特徴とする生産プロセスの解析方法。
【請求項2】
前記特徴因子を特定する工程において、前記バーグラフ上で前記優と判定されたグループが他のグループと比べて横軸からの乖離幅が大きい状態量を前記特徴因子と特定することを特徴とする請求項記載の生産プロセスの解析方法。
【請求項3】
前記特徴因子を特定する工程において、前記バーグラフ上で前記優と判定されたグループが他のグループの少なくとも一つと比べて正負が反転している状態量を前記特徴因子と特定することを特徴とする請求項記載の生産プロセスの解析方法。
【請求項4】
前記可視表示される状態量の平均値は、標準化された状態量の平均値であることを特徴とする請求項1からの何れか1項記載の生産プロセスの解析方法。
【請求項5】
前記グループの優劣は、前記グループ内の品質項目の平均値に応じて判定されることを特徴とする請求項1記載の生産プロセスの解析方法。
【請求項6】
前記グループの優劣は、前記グループ内の品質項目のうち最も優先順位が高い品質項目の平均値に応じて判定されることを特徴とする請求項1記載の生産プロセスの解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品やサービスを生産する生産プロセスの解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製品を製造する生産プロセスでは、自動化された製造設備による工程や作業者による手作業の工程を含む。また、パーツ洗浄や医薬品開発における治験結果の解析等のサービスを提供する生産プロセスでは、洗浄装置や解析装置による工程や作業者による手作業の工程を含む。
【0003】
このような製品製造やサービス提供を行う生産プロセスでは、設備の運転状況、作業員の作業状況、原料や製品のハンドリングの仕方等によってロット間で製品やサービスの品質にバラつきが生じる。
【0004】
製品の品質のばらつきを抑制するために、製品の製造プロセスに関するプロダクトデータ及びプロセスデータに主成分分析及びクラスター分析を適用して製造プロセスのロットを複数のグループに区分し、グループ間の優劣に寄与するデータである阻害要因を特定するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このような製造プロセスの解析方法では、グループ間の優劣に寄与する阻害要因を特定することにより、製造プロセスが効率的良く改善されるため、ロット間の品質のバラつきを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5956094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したような解析方法では、グループ間の優劣に寄与する因子を直感的に認識しにくいという問題があった。
【0008】
そこで、グループ間の優劣に寄与する因子を直感的に認識するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明は、この課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る生産プロセスの解析方法は、製品又はサービスを生産する生産プロセスの解析方法であって、前記生産プロセスの状態を示す状態量及び前記製品又はサービスの品質を示す品質項目を少なくとも含むデータを前記生産プロセスのロット毎に収集する工程と、前記状態量に応じて前記ロットを複数のグループに区分する工程と、前記グループに含まれるロットの品質項目毎にグループ間の優劣を判定する工程と、前記グループ毎の前記状態量の平均値を表示部にグラフで可視表示する工程と、前記グラフ上において、前記優と判定されたグループが他のグループと比べて特徴的な傾向を示す状態量を優と判定されたグループの特徴を表す特徴因子と特定する工程と、を含み、前記可視表示する工程において、前記グループ毎の状態量の平均値を横軸に設定したバーグラフ上に前記グループ毎の状態量を表示する
【0010】
この構成によれば、グループ毎の状態量の平均値がグラフに可視表示された状態で、優と判定されたグループが他のグループと比べて特徴的な傾向を示す状態量を優と判定されたグループの特徴を表す特徴因子と特定することにより、特徴因子を直感的に認識することができる。
【0012】
また、優と判定されたグループは、他のグループの大小関係が容易に比較できるため、特徴因子を直感的に認識することができる。
【0013】
また、本発明に係る生産プロセスの解析方法は、前記特徴因子を特定する工程において、前記バーグラフ上で前記優と判定されたグループが他のグループと比べて横軸からの乖離幅が大きい状態量を前記特徴因子と特定することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、優と判定されたグループは、他のグループと比較して横軸からの乖離幅が大きいため、特徴因子を直感的に認識することができる。
【0015】
また、本発明に係る生産プロセスの解析方法は、前記特徴因子を特定する工程において、前記バーグラフ上で前記優と判定されたグループが他のグループの少なくとも一つと比べて正負が反転している状態量を前記特徴因子と特定することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、優と判定されたグループは、他のグループと比較して横軸を境に正負が逆転するため、特徴因子を直感的に認識することができる。
【0017】
また、本発明に係る生産プロセスの解析方法は、前記可視表示される状態量の平均値は、標準化された状態量の平均値であることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、複数の状態量はスケールが統一された状態で可視表示されるため、状態量同士の比較が容易になり、特徴因子を直感的に認識することができる。
【0019】
また、本発明に係る生産プロセスの解析方法は、前記グループの優劣は、前記グループ内の品質項目の平均値に応じて判定されることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、グループ内におけるロット間での品質項目のばらつきを考慮して、グループ間の品質項目の優劣の傾向を大局的に把握することができる。
【0021】
また、本発明に係る生産プロセスの解析方法は、前記グループの優劣は、前記グループ内の品質項目のうち最も優先順位が高い品質項目の平均値に応じて判定されることが好ましい。
【0022】
この構成によれば、グループ内におけるロット間での品質項目のばらつきを考慮して、グループ間の品質項目の優劣の傾向を大局的に把握することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、グループ毎の状態量の平均値がグラフに可視表示された状態で、優と判定されたグループが他のグループと比べて特徴的な傾向を示す状態量を優と判定されたグループの特徴を表す特徴因子と特定することにより、特徴因子を直感的に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る生産プロセスの解析方法を示すフローチャート。
図2】ロット毎の主成分得点及びグループを示すグラフ。
図3】3つのプロセスデータの標準化前後のグループ毎の平均値を示す表。
図4図3中のプロセスデータpara1について、横軸に平均値を設定したグループ毎の状態量を示すバーグラフ。
図5図3中のプロセスデータpara2について、横軸に平均値を設定したグループ毎の状態量を示すバーグラフ。
図6図3中のプロセスデータpara3について、横軸に平均値を設定したグループ毎の状態量を示すバーグラフ。
図7図3中のプロセスデータpara2について、各ロットのプロセスデータのバラつきを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。また、本実施形態を構成する各ステップは、特に明示した場合及び原理的に明らかな場合を除き、先後順序は以下の順序に限定されるものではなく、また、複数のステップが並列に実行されても構わない。
【0026】
本実施形態に係る解析方法は、製品(物)を製造するプロセス又はサービスを提供するプロセス(以下、総称して「生産プロセス」と称す)に適用される。生産プロセスには、機械設備のみで構成されて全ての工程が自動化されたプロセス、作業者の手作業による作業工程を含むプロセス、並びに機械設備によって自動化された製造工程及び作業者の手作業による作業工程を含むプロセスが含まれる。
【0027】
以下では、生産プロセスの一例である繊維の製造ラインに本解析方法を適用した場合を例に説明する。なお、本発明を適用する生産プロセスは、繊維の製造ラインに限定して解釈されるものではなく、その他の製造ライン及びサービスを提供するプロセスも含まれることは言うまでもない。
【0028】
なお、製造ラインを構成する各機器には、種々の値を測定する図示しないセンサが設けられている。センサの測定対象は、原料の投入量、加熱等の各種処理を行う処理装置内の温度、単位時間当たりの処理量等である。センサは、製造ラインを構成する製造設備を整除する制御装置に測定値を送る。
【0029】
制御装置は、センサが測定した製品の生産条件を示すプロセスデータ、製品の品質項目を示すプロダクトデータ(品質データ)に基づいて、後述する処理を行う。プロセスデータは、製品の品質に影響し得る因子であり、生産プロセスの状態を示す状態量であって、例えば、生産プロセスの生産条件(製造設備の運転条件等)、原料の条件(原料の物性、組成等)等を含む。また、制御装置には、液晶ディスプレイ等の表示部が接続されている。
【0030】
図2は、本実施形態に係る生産プロセスの解析方法の手順を示すフローチャートである。
【0031】
まず、動作済みの生産プロセスについて、制御装置は、センサが測定したプロセスデータとプロダクトデータとを収集する(ステップS1)。このステップS1では、ロット毎のプロセスデータ及びプロダクトデータを制御装置に記憶する。
【0032】
次に、ステップS1で収集したプロセスデータ及びプロダクトデータを標準化して中間関数に変換する(ステップS2)。
【0033】
ステップS2で行うプロセスデータの標準化処理は、公知のものであり、具体的には、数式1に基づいて制御装置が演算する。
【数1】
【0034】
次に、ステップS2で求めた中間変数に基づいて主成分負荷量及び主成分得点を求める(ステップS3)。ステップ3では、まず、中間変数における相関係数行列を作成し、相関係数行列の固有値と固有ベクトルを導出する。相関係数行列は、中間変数がx1、x2、x3・・のときに、第1主成分PC1は、数式2で示すように表される。また、第N主成分PCnは、数式3で示すように表される。そして、係数a11、a12、a13・・を1行目の要素、係数an1、an2、an3・・をn行目の要素に用いることにより、相関係数行列が形成される。
【数2】

【数3】
【0035】
次に、相関係数行列の固有ベクトルから主成分得点を求める。また、相関係数行列の固有値から各主成分の寄与率を求める。主成分の寄与率は、固有値を固有値の総和で割ることで得られる。ここで、固有値の大きい方から、第1主成分、第2主成分・・第N主成分を決定する。
【0036】
具体的には、制御装置が、各ロットの中間変数x1、x2、x3と相関係数行列の各係数とに基づいて、第1主成分PC1、第2主成分PC2・・の値、即ち、主成分得点を算出とする。図2は、第1主成分を横軸、第3主成分を縦軸とする座標系に主成分得点をプロットしたグラフである。
【0037】
次に、制御装置は、図2に示す主成分得点にクラスター分析を適用して、各ロットを複数のグループに区分する(ステップS4)。「クラスター分析」とは、解析対象データ(クラスター)を類似性に着目して複数のグループに分類する方法であり、階層的クラスタリングや分類最適化クラスタリング等が知られている。本実施形態におけるクラスター分析が着目する「類似性」とは、各ロットの主成分得点同士の距離をいう。本実施形態では、階層的クラスタリングの一つである凝集型階層的クラスタリングを用いた。また、クラスター間の距離算出方法として、安定して解を得られるウォード法を用いた。「ウォード法」とは、2つのクラスターを併合した際の偏差平方和の増加量が最小になるクラスターを選択するものである。例えば、クラスターA、Bを併合してクラスターCを生成する場合、クラスターA、B、C内の偏差平方和Sa、Sb、Scは、それぞれ数式4~6のように表される。
【数4】

【数5】

【数6】
【0038】
数式4~6により、クラスターC内の偏差平方和Scは、以下のようになる。
【数7】
【0039】
数式7のΔSabは、クラスターA、Bを併合してクラスターCを生成した際の偏差平方和の増分であることを意味する。したがって、各併合段階でΔSabが最小になるようにクラスターを選択して併合することにより、クラスタリングを進めていく。
【0040】
本実施形態では、図2に示すように、第1~第6の固有ベクトルまでの6次元空間で6つのグループ1~6に区分した。なお、グループ1~6は、図2中のクラスター1~6にそれぞれ対応する。また、グループの数は、6つに限定されるものではなく、ハンドリングし易い数であれば5つ以下でも7つ以上であっても構わない。
【0041】
次に、プロダクトデータに応じて、グループ毎の優劣を判定する(ステップS5)。このステップS5では、制御装置が、プロダクトデータ(外観検査不良率等)から得られる中間変数をロット毎に呼び出し、これらプロダクトデータの優劣を判定する。本実施形態では、外観検査不良率が優れているグループ5を最も優れたグループと判定した。
【0042】
なお、プロダクトデータの優劣は、グループ毎に区分された複数のロット(ロット群)内の平均値に基づいて行うのが好ましい。これにより、グループ内のロット群のプロダクトデータのばらつきが平準化され、グループ間のプロダクトデータの良否の傾向を大局的に把握することができる。
【0043】
また、プロダクトデータの優劣は、グループ内におけるプロダクトデータの偏差の大小や最大値及び最小値の差(範囲)の大小に基づいて判定しても構わないし、平均値、偏差又はR値等を2つ以上組み合わせて判定しても構わない。平均値と偏差とを組み合わせてプロダクトデータの優劣を判定するものとして、例えば、グループ内の平均値が同一の場合には、グループ内の偏差が小さいものを優と判断することが考えられる。これにより、グループ内でのプロダクトデータのばらつきを考慮したグループ間のプロダクトデータの優劣の傾向を大局的に把握することができる。
【0044】
複数のプロダクトデータが存在する場合に、最も優先すべきプロダクトデータが予め設定されているときには、そのような最優先プロダクトデータに関するグループ内のロット群の平均値に応じて、グループ間の優劣を判定しても構わない。
【0045】
複数のプロダクトデータ間で特に優先順位が存在しない場合には、各プロダクトデータについてグループ毎の平均値を比較し、好適なプロダクトデータの組み合わせを有するグループを優と判定しても構わない。
【0046】
なお、プロダクトデータ間にトレードオフの関係が存在する場合には、必ずしも1つのプロダクトデータを優先してグループ毎の優劣を判定するのは好ましくなく、各プロダクトデータについてグループ毎の平均値を俯瞰的に比較し、好適なプロダクトデータの組み合わせを有するグループを優と判定するのが好ましい。
【0047】
次に、制御装置が、グループ毎のプロセスデータの平均値を表示部に可視表示する(ステップS6)。以下、3つのプロセスデータ(para1、para2、para3)を例にステップS6の具体的内容について説明する。
【0048】
図3は、3つのプロセスデータpara1~3についてグループ毎の平均値を示す表であり、「raw」の列が標準化前のデータであり、「scalling」の列が標準化後のデータに対応する。このステップS6では、制御装置が、図3に示すようなグループ毎にプロセスデータpara1~3の標準化後の平均値を算出し、その結果を表示部に可視表示する。
【0049】
表示部に表示されるデータは、直感的に視認し易いグラフ形式が好ましい。選択されるグラフ形式は特に限定されないが、例えば、横軸を全ロットの平均値に設定したバーグラフであれば、各グループの傾向を大局的に把握することができる。
【0050】
なお、グラフ表示されるプロセスデータは、標準化後の数値が好ましい。これにより、スケールが統一された状態で複数の状態量が可視表示されるため、プロセスデータ同士の比較が容易になり、特徴因子を直感的に認識することができる。
【0051】
図4は、標準化後のプロセスデータ(para1)について、横軸に全ロットの平均値を設定したグループ毎のプロセスデータの平均値を示すバーグラフである。図5は、標準化後のプロセスデータ(para2)について、横軸に全ロットの平均値を設定したグループ毎のプロセスデータの平均値を示すバーグラフである。図6は、標準化後のプロセスデータ(para3)について、横軸に全ロットの平均値を設定したグループ毎のプロセスデータの平均値を示すバーグラフである。図4~6中の符号1~6は、グループ1~6を示す。
【0052】
次に、優と判定されたグループの特徴を表す特徴因子を特定する(ステップS7)。このステップS7では、制御装置が、ステップS6で可視表示したバーグラフにおいて、グループ5と他のグループ1~4、6とを比較して、グループ5が特徴的な傾向を示すプロセスデータを特定して、優と判定されたグループ5の特徴を表す特徴因子を特定する。
【0053】
ここで、「特徴的な傾向」とは、グラフ上において優と判定されたグループが他のグループと比べて著しく長い(すなわち、全ロットの平均値からの乖離幅が大きい)場合、グラフ上において優と判定されたグループが他のグループと比べて著しく短い(すなわち、全ロットの平均値に略一致する)場合、又はグラフ上において優と判定されたグループが他のグループの少なくとも一つと比べて正負が反転している(すなわち、グラフ上において優と判定されたグループのバーが正負の一方に位置し、他のグループが正負の他方に位置している)場合等を意味する。
【0054】
図4に示すグラフによれば、プロセスデータpara1について、グループ5が全ロットの平均値より低く、且つ横軸からの乖離幅が著しく大きいことが分かる。また、グループ5の値が負であって全ロットのプロセスデータの平均値を下回っているのに対して、グループ1、2の値が正であって全ロットのプロセスデータの平均値を上回っている。
【0055】
図5に示すグラフによれば、プロセスデータpara2について、グループ5が全ロットの平均値より高く、且つ横軸からの乖離幅が著しく大きいことが分かる。また、グループ5の値が正であって全ロットのプロセスデータの平均値を上回っているのに対して、グループ2~4、6の値が負であって全ロットのプロセスデータの平均値を下回っている。
【0056】
図6に示すグラフによれば、プロセスデータpara3について、グループ5は、横軸からの乖離幅は小さく、特に、グループ5、6はいずれも負の値であるが、グループ5は、グループ6よりも横軸からの乖離幅が著しく小さい。
【0057】
このようにして、本実施形態では、図4、5に示すバーグラフ上の特徴的な傾向に基づき、グループ5の特徴因子とは、全ロットの平均値より低めに設定されたプロセスデータpara1と、全ロットの平均値より高めに設定されたプロセスデータpara2に特定される。一方、プロセスデータpara3については、他のグループと比較して特徴的な傾向を示すとは言えないため、特徴因子から除外する。
【0058】
なお、特徴因子をバーグラフの特徴的な傾向から特定する際に、図7に示すようにロット群のバラつきを考慮するのが好ましい。図7は、図3中のプロセスデータpara2について、各ロットのプロセスデータのバラつきを示すグラフである。図7中の符号1~6は、グループ1~6を示す。図7によれば、グループ5に含まれるロット間のバラつきが相対的に小さいのに対して、例えばグループ1、6に含まれるロット間のバラつきが相対的に大きいことが分かる。このような事情と図5とを総合すると、グループ1、6の中央値は、図5中のバーグラフよりも負の方向に存在すると推測されるため、グループ5の特徴的な傾向が一層際立つことが分かる。
【0059】
ステップS7で選定された特徴因子に基づいて、処理装置等の製造条件を設定する場合には、図2に示したグループ5のプロセスデータの平均値(para1:25、para2:1534)を製造条件の初期値に設定し、このときのプロダクトデータの良否を確認しながら製造条件を微調整するのが好ましい。プロセスデータの平均値を初期値に設定することにより、過去の状態を逸脱することなく、すなわち製造設備等に過度な負荷をかけることなく、優と判定されたグループ5の状態を再現することができる。
【0060】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【0061】
本発明における「生産プロセス」とは、製品(物)を製造するプロセス又はサービスを提供するプロセスを含むものである。すなわち、生産プロセスとは、物を製造するプロセスに限定されない。生産プロセスで提供されるサービスとは、例えば、パーツ洗浄や医薬品開発における治験結果の解析等のサービスが含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7