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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】トンネル用防水シートの展張装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/38 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
E21D11/38 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018005714
(22)【出願日】2018-01-17
(65)【公開番号】P2019124068
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2021-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518018779
【氏名又は名称】有限会社出雲鉄工所
(73)【特許権者】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】三上 英明
(72)【発明者】
【氏名】若竹 亮
(72)【発明者】
【氏名】北野 義則
(72)【発明者】
【氏名】桜井 宏
(72)【発明者】
【氏名】水上 貴雄
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-266596(JP,A)
【文献】特開2001-059398(JP,A)
【文献】特開昭60-016700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00-19/06
E21D 23/00-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル方向に沿って移動可能とされる作業架台に対して、支保工面に対して所定の離隔距離を有する状態で、トンネル方向に所定の離間を空けてトンネル周方向に沿って配設された複数本のレールと、このレールに沿って走行可能かつ走行に伴って防水シートの展張を行う防水シート展張装置本体とからなり、
前記防水シート展張装置本体は、前記レールに沿って走行可能とされた走行台車と、前記走行台車にトンネル方向に沿って配向された防水シートの保持軸と、前記走行台車上の左右の側にそれぞれ配置された、スライド用ジャッキによって走行台車の走行方向に移動可能とされた左右一対の移動台と、これら移動台の上面側に一端が軸支され傾動用ジャッキによって支保工面に向かって揺動自在とされた左右一対の傾動アームと、これら左右一対の傾動アームの先端同士を連結する防水シートの押え棒とからなることを特徴とするトンネル用防水シートの展張装置。
【請求項2】
前記走行台車は、レールのそれぞれの側に駆動部を備え、これらの駆動部が独立的に駆動可能となっている請求項1記載のトンネル用防水シートの展張装置。
【請求項3】
前記レールは溝型形綱をスペーサを介在させて背面合わせとし、かつ前記スペーサの上面にチェーンを配設し、前記走行台車に搭載された油圧モータによって駆動されるスプロケットを前記チェーンに歯合させることによりレールに沿って走行可能とされる請求項1、2いずれかに記載のトンネル用防水シートの展張装置。
【請求項4】
前記傾動アームと前記押え棒との連結部は上下方向軸周りの回転を許容するヒンジ継手とされ、前記押え棒の配向方向の変化に追従可能となっている請求項1~3いずれかに記載のトンネル用防水シートの展張装置。
【請求項5】
前記傾動アームの中間点に、支保工面側への屈曲のみを可能とする片側方向屈曲部を有する請求項1~4いずれかに記載のトンネル用防水シートの展張装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山岳トンネル工事において、覆工コンクリートの打設前に支保工面に対して防水シートを展張するためのトンネル用防水シートの展張装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、山岳トンネル工事においては、アイソレーションや地山からの湧水がトンネル内へ漏出するのを防止するために覆工コンクリートの打設前の支保工面に防水シートを敷設した後、覆工コンクリートの打設が行われている。従来よりこの防水シートの張設作業は、専ら作業架台を用いて吹付けコンクリートなどの支保工面に対して防水シートを人力によって展開し敷設していたが、近年は防水シートの大型化(幅×厚みの増大)に伴って、人力での作業が困難となるため、防水シートの敷設作業を機械的に行う展張装置の開発が行われている。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、 シートロールに巻き付けられた防水シートを巻き戻してトンネル内壁に張設する際に使用される防水シート張り装置であって、トンネル内壁に沿って略アーチ状に作業台車上に設けられた少なくとも一対のレール材と、これらレール材にそれぞれ移動可能に設けられる少なくとも一対の車輪部材と、これら車輪部材に取り付けられると共に、上記シートロールを回転可能に支持する軸部材とを備えた防水シート張り装置が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2では、トンネル断面と同程度の大きさの一対のガイド走行レールより構成される走行用レール部と、走行用レール部の端部よりもう一方の端部まで走行するよう構成されている駆動装置部と、駆動装置部で牽引されながら走行用レール部の端部よりもう一方の端部まで走行するように構成されていると共に、一対のガイド走行レール間の間隔に相当する幅に構成されたロール状の防水シートの両端を回転自在に支持するように構成されているシートホルダー部と、シートホルダー部より引出された防水シートを支保工面又は防水シートの一方の面に係り止め装置を任意に配置し、防水シートのトンネル中央側より支保工面に圧着させるように構成されているシート押えローラアーム部からなるトンネル用防水シート布設装置が開示されている。
【0005】
更に、下記特許文献3では、トンネルの吹付面に沿って湾曲する少なくとも一対のガイドレールと、該一対のガイドレールに沿って移動する一対のローラー部と、該一対のローラー部に架設されたシート保持部と着貼部を備え、該シート保持部は該トンネルの縦断方向に沿って配置され、該着貼部は該シート保持部の展張方向で後部に配置され、遊端に押圧ヘッドを回転自在に軸支したレバーを、揺動シリンダにより該押圧ヘッドが該吹付面に対し進退自在に、軸支しているトンネル用防水シートの展張装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-291392号公報
【文献】特開2001-59398号公報
【文献】特開2002-266596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
確かに、防水シートの展張作業が人手作業から機械化されたことによって、作業員の労務負担が著しく軽減されるようになった。しかしながら、上記各防水シートの展張装置の場合、防水シートの展張方向の修正を行うことができない構造であるため、トンネル周方向の中間地点で生じる溶着接合部などで防水シートの展張方向の修正を行うようにしていた。その際、図11に示されるように、防水シート50、50…の溶着接合部で幅方向に余長代が不均衡となり、その余長部分を切断する作業が新たに発生するようになった。
【0008】
そこで、本発明の主たる課題は、防水シートを機械的に張設することができる展張装置を提供するとともに、防水シートの展張方向の微調整を行えるようにすることで防水シートの施工精度を向上させ、トンネル周方向の溶着接合部におけるシート端部の切断作業を無くすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、トンネル方向に沿って移動可能とされる作業架台に対して、支保工面に対して所定の離隔距離を有する状態で、トンネル方向に所定の離間を空けてトンネル周方向に沿って配設された複数本のレールと、このレールに沿って走行可能かつ走行に伴って防水シートの展張を行う防水シート展張装置本体とからなり、
前記防水シート展張装置本体は、前記レールに沿って走行可能とされた走行台車と、前記走行台車にトンネル方向に沿って配向された防水シートの保持軸と、前記走行台車上の左右の側にそれぞれ配置された、スライド用ジャッキによって走行台車の走行方向に移動可能とされた左右一対の移動台と、これら移動台の上面側に一端が軸支され傾動用ジャッキによって支保工面に向かって揺動自在とされた左右一対の傾動アームと、これら左右一対の傾動アームの先端同士を連結する防水シートの押え棒とからなることを特徴とするトンネル用防水シートの展張装置が提供される。
【0010】
上記請求項1記載の発明では、作業架台に対して、トンネル方向に所定の離間を空けてトンネル周方向に沿って配設された複数本のレールと、このレールに沿って走行可能かつ走行に伴って防水シートの展張を行う防水シート展張装置本体とによって防水シートの展張装置が構成されている。前記防水シート展張装置本体は、前記レールに沿って走行可能とされた走行台車と、前記走行台車にトンネル方向に沿って配向された防水シートの保持軸と、前記走行台車上の左右の側にそれぞれ配置された、スライド用ジャッキによって走行台車の走行方向に移動可能とされた左右一対の移動台と、これら移動台の上面側に一端が軸支され傾動用ジャッキによって支保工面に向かって揺動自在とされた左右一対の傾動アームと、これら左右一対の傾動アームの先端同士を連結する防水シートの押え棒とを備えている。
【0011】
従って、前記保持軸に巻いた防水シートをセットしたならば、走行台車を走行させながら防水シートを徐々に展張していく際に、前記傾動用ジャッキを伸縮制御し傾動アームを傾動制御することにより、先端の押え棒によって防水シートを支保工面に対して圧着させて張設することが可能となる。
【0012】
また、本装置では防水シートの展張方向の微調整が行えるようになっている。すなわち、前記左右に配置された移動台のいずれかを走行台車の走行方向に移動制御することにより、前記押え棒の配向方向に対し平面的に見て傾斜角を持たせることが可能となり、展張させた防水シートの圧着線(押え棒のライン)を傾斜させることによって防水シートの展張方向に修正を加えることが可能となっている。従って、防水シートの展張方向に微妙なズレが生じた際には、前記移動台をスライド用ジャッキによって前後進させて前記押え棒に平面視で傾斜角を持たせ、防水シートの展張方向に微修正を加えることにより、防水シートの施工精度を向上させることができ、トンネル周方向の溶着接合部におけるシート端部の切断作業を無くすことが可能となる。
【0013】
請求項2に係る本発明として、前記走行台車は、レールのそれぞれの側に駆動部を備え、これらの駆動部が独立的に駆動可能となっている請求項1記載のトンネル用防水シートの展張装置が提供される。
【0014】
上記請求項2記載の発明では、前記走行台車は、レールのそれぞれの側に駆動部を備え、これらの駆動部が独立的に駆動可能となっている構造とするものである。すなわち、それぞれの駆動部が独立的に駆動することにより、平面視で走行台車全体をその遊び分だけでもヨー軸周りに僅かながら回転させることによって防水シートの展張方向を更に調整し易くできる。
【0015】
請求項3に係る本発明として、前記レールは溝型形綱をスペーサを介在させて背面合わせとし、かつ前記スペーサの上面にチェーンを配設し、前記走行台車に搭載された油圧モータによって駆動されるスプロケットを前記チェーンに歯合させることによりレールに沿って走行可能とされる請求項1、2いずれかに記載のトンネル用防水シートの展張装置が提供される。
【0016】
上記請求項3記載の発明は、走行台車におけるレール走行構造の一例を示したものである。本レールの場合は、トンネルの周回り方向の円弧面に沿って配設されるものであるため走行台車がレールに対してスリップしない構造とすることが重要である。そのために、レール面にチェーンを配設してこれに歯合するスプロケットを油圧モータによって駆動する構造とすることが望ましい。
【0017】
請求項4に係る本発明として、前記傾動アームと前記押え棒との連結部は上下方向軸周りの回転を許容するヒンジ継手とされ、前記押え棒の配向方向の変化に追従可能となっている請求項1~3いずれかに記載のトンネル用防水シートの展張装置が提供される。
【0018】
上記請求項4記載の発明では、本装置では平面視で前記押え棒に傾斜角を持たせることにより防水シートの展張方向に微調整を加えるものである。前記押え棒の配向方向の変化に対して弾性変形によって追従させることも可能であるが、前記傾動アームと前記押え棒との連結部を上下方向軸周りの回転を許容するヒンジ継手とすることにより、前記押え棒の配向方向変化に対して柔軟に無理なく追従させることが可能となる。
【0019】
請求項5に係る本発明として、前記傾動アームの中間点に、支保工面側への屈曲のみを可能とする片側方向屈曲部を有する請求項1~4いずれかに記載のトンネル用防水シートの展張装置が提供される。
【0020】
上記請求項5記載の発明では、前記傾動ジャッキを過度に収縮させた際に傾動アームが走行台車等に衝突して損傷するのを防ぐため、前記傾動アームの中間点に、支保工面側への屈曲のみを可能とする片側方向屈曲部を有するようにしたものである。
【発明の効果】
【0021】
以上詳説のとおり本発明によれば、防水シートを機械的に張設することができる展張装置を提供できるとともに、防水シートの展張方向の微調整を行えるようにすることで防水シートの施工精度を向上させ、トンネル周方向の溶着接合部におけるシート端部の切断作業を無くすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る防水シートの展張装置を示す横断面図である。
図2】防水シート展張装置本体3を示す、(A)は断面図、(B)は平面図である。
図3】防水シート展張装置本体3の傾動アーム9の動作及び移動台7の動作説明図である。
図4】押え棒10の配向方向に傾斜角±θを持たせた場合の動作説明図である。
図5】レール走行構造例を示す要部拡大断面図である。
図6】防水シート12の展張要領を示す施工手順図(その1)である。
図7】防水シート12の展張要領を示す施工手順図(その2)である。
図8】防水シート12の展張要領を示す施工手順図(その3)である。
図9】傾動アーム9の変形例を示す図(A)(B)である。
図10】傾動ジャッキ8を過度に収縮させた際の傾動アーム9の走行台車への衝突状態を示す図である。
図11】防水シート50、50…の溶着接合部で幅方向に余長代が不均衡となった状態を示す平面展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0024】
図1及び図2に示されるように、本発明に係るトンネル用防水シートの展張装置は、トンネル方向に沿って移動可能とされる作業架台1に対して、支保工面Sに対して所定の離隔距離を有する状態で、トンネル方向に所定の離間を空けてトンネル周方向に沿って配設された複数本の、図示では2本のレール2,2と、このレール2,2に沿って走行可能かつ走行に伴って防水シート12の展張を行う防水シート展張装置本体3とからなるものである。
【0025】
前記防水シート展張装置本体3は、前記レール2,2に沿って走行可能とされた走行台車4と、前記走行台車4にトンネル方向に沿って配向された防水シート(巻き状態)の保持軸5と、前記走行台車4上の左右の側にそれぞれ配置された、スライド用ジャッキ6によって走行台車4の走行方向に移動可能とされた左右一対の移動台7,7と、これら移動台7,7の上面側に一端が軸支され傾動用ジャッキ8によって支保工面に向かって揺動自在とされた左右一対の傾動アーム9,9と、これら左右一対の傾動アーム9,9の先端同士を連結する防水シート12の押え棒10とからなるものである。
【0026】
以下、更に図面に基づいて具体的に詳述する。
【0027】
作業架台1は、インバートHに対してトンネル方向に沿って敷設されたレール40、40に沿って移動可能とされる防水シート12の張設作業のための台車であり、中央にはトンネル内を往来する車両のための通過空間が形成されている。階段と踊り場とを組み合わせて配置することによりトンネルの内壁に近い場所に作業員が行けるようになっている。
【0028】
本装置では、前記作業架台1に対して、吹付けコンクリートなどの支保工面Sに対して所定の離隔距離を有する状態で、かつトンネル方向に所定の離間(概ね2~5m程度)を空けてトンネル周方向に沿って複数の、図示例では2条のレール2、2が設けられているとともに、これら2条のレール2、2に沿って走行可能かつ走行に伴って防水シート12の展張を行う防水シート展張装置本体3が設けられている。図示されるように、防水シート展張装置本体3は前後端部を除くトンネル周方向のほぼ全長に亘って走行可能となっている。
【0029】
さらに前記防水シート展張装置本体3について、図2図5に基づいて詳述する。
【0030】
前記走行台車4は、図2に示されるように、前後左右の4箇所にそれぞれレール2の上フランジを挟持するための上下対の組ローラ11が配設されている。走行台車4には、2条のレール2,2のそれぞれの側に駆動部(図示せず)を備え、これらの駆動部が独立的に駆動可能となっていることが望ましい。例えば、前記レール2としてH型形綱などを用い、前記組ローラ11の左右の側のいずれかのローラがモータによって駆動されることによって走行台車4の左右それぞれの側が独立的に駆動可能としても良いし、例えば図5に示されるように、溝型形綱15、15をスペーサ16を介在させて背面合わせとし、かつ前記スペーサ16の上面にチェーン17を配設し、前記走行台車4に搭載された油圧モータによって駆動されるスプロケット18を前記チェーン17に歯合させることによりレール2に沿って走行可能とされる構造としてもよい。
【0031】
前記走行台車4の防水シート12の展張時に進行方向前側となる位置に、トンネル方向に沿って配向された、防水シート12の保持軸5が配設されている。防水シート12はボイド管に巻かれた状態で現場に搬入され、ボイド管に前記保持軸5を通して、走行台車4の軸受13、13に横架させるようにしてセットされる。
【0032】
前記走行台車4の左右の側にはそれぞれ、スライド用ジャッキ6、6によって走行台車4の走行方向に移動可能とされた左右一対の移動台7、7が設けられている。前記移動台7はH型形鋼が使用されており、それを挟むように左右一対で配設された溝型形鋼20の前後部にそれぞれ上下対の組ローラ21が配設され、これら組ローラ21の間に移動台7(H型形鋼)の下フランジが挟持されることにより移動台7が走行台車4の走行方向に沿って移動可能とされている。そして、移動台7の前端に水平配向で配置されたスライド用ジャッキ6の先端が連結され、図3(B)に示されるように、前記スライド用ジャッキ6の伸縮操作によって移動台7が移動制御されるようになっている。
【0033】
前記移動台7の上面側には、第1支持板22が設けられ、この第1支持板22に一端がピン23により軸支され支保工面Sに向かって揺動自在とされた左右一対の傾動アーム9、9が設けられている。前記左右一対の傾動アーム9、9の基端部同士を連結するように連結材26が設けられるとともに、この連結材26から突出させた小アーム24が設けられ、シリンダ後端が第2支持板25に回転自在に軸支された傾動用ジャッキ8のピストンの先端が前記小アーム24の先端に軸支されている。従って、図3(B)に示されるように、前記傾動用ジャッキ8の伸縮操作により、前記傾動アーム9が支保工面Sに向かって揺動制御されるようになっている。
【0034】
前記傾動アーム9の先端には、左右一対の傾動アーム同士9,9を連結する防水シート12の押え棒10が設けられている。前記傾動アーム9と前記押え棒10との連結部は上下方向軸周りの回転を許容するヒンジ継手とされ、前記押え棒10の配向方向の変化(平面的に見ての傾き)に追従可能となっていることが望ましい。すなわち、図4(A)に示されるように、図示で下側の移動台7を矢印方向に移動させることによって押え棒10に平面視でθの傾斜角度(配向方向の角度変化)を持たせることが可能であり、図4(B)に示されるように、図示で上側の移動台7を矢印方向に移動させることによって押え棒10に平面視で-θの傾斜角度(配向方向の角度変化)を持たせることが可能となる。
【0035】
従って、図2に示されるように、通常は押え棒10は走行台車4の走行方向に対して垂直方向に配向され、前記保持軸5に巻かれた防水シート12が引き出され、走行台車4の進行によって前記防水シート12が繰り出され、前記押え棒10が傾動アーム9,9の揺動制御によって支保工面側に押し付けられることによって防水シート12が支保工面Sに圧着させるようになっている。
【0036】
前記防水シート12の展張方向に微妙なズレが生じた際には、前記移動台7のいずれかをスライド用ジャッキ6によって前後進させて前記押え棒10に平面視で傾斜角(±θ)を持たせ、防水シート12の展張方向に微修正を加えることにより、防水シート12の施工精度を向上させることができ、トンネル周方向の溶着接合部におけるシート端部の切断作業を無くすことが可能となる。
〔施工手順〕
次に、前記防水展張装置を用いた展張要領について図6図8に基づいて詳述する。
【0037】
前記作業架台1を防水シート12の展張位置に停止させたならば、防水シート展張装置本体3に対して保持軸5に巻かれた防水シート12をセットする。取付けは、図6に示されるように、防水シート展張装置本体3の軸受部13が下向きとなる図示でレール2の右端側まで移動させた後、重機類で吊り上げてセットする。次に、図7及び図8に示されるように、図示でレール2の左端側まで移動させた後、防水シート12を徐々に巻き出しながら防水シート展張装置本体3を移動させつつ、前記押え棒10によって防水シート12を支保工面Sに圧着させながら防水シート12の展張を行う。
【0038】
前記防水シート12の支保工面Sへの固定は、電磁誘導溶着、面ファスナー、接着剤等の種々の方法が実用化されているが、いずれの方法を用いてもよい。
【0039】
前記電磁誘導溶着による方法は、支保工面Sにコンクリート釘で不織布(裏面緩衝材)を固定しておき、更に電磁誘導溶着用の溶着材が貼られたディスク(プラスチック製の円盤)等を不織布(裏面緩衝材)の上からコンクリート釘で固定して、防水シート12を展張しながら防水シート12の表面側からディスクウエルダー(高周波電流発生コイル)により電磁誘導溶着で防水シート12を溶着材付きディスク(プラスチック製の円盤)と溶着固定していく方法と、あるいは支保工面Sに電磁誘導溶着用の溶着材が貼られたディスク(プラスチック製の円盤)をコンクリート釘で固定して、事前に(工場にて)貼り合わされた不織布(裏面緩衝材)付き防水シート12(積層シート材)を展張しながら防水シート12の表面側からディスクウエルダー(高周波電流発生コイル)により電磁誘導溶着で防水シート12を溶着材付きディスク(プラスチック製の円盤)と溶着固定していく方法である。
【0040】
前記面ファスナーによる方法は、支保工面Sにコンクリート釘で不織布(裏面緩衝材)を固定しておき、その不織布(裏面緩衝材)と機械的に掛留可能な面ファスナーを事前に(工場にて)裏面に貼り合せておいた防水シート12を展張しながら防水シート12の表面側から押さえ付けることにより防水シート12を内張りした不織布(裏面緩衝材)と接合していく方法と、あるいは支保工面Sに不織布(裏面緩衝材)と機械的に掛留可能な面ファスナーを事前にコンクリート釘で固定して、事前に(工場にて)貼り合わされた不織布(裏面緩衝材)付き防水シート12(積層シート材)を展張しながら防水シート12の表面側から押さえ付けることにより防水シート12を接合していく方法がある。
【0041】
前記接着剤による方法は支保工面Sにコンクリート釘で不織布(裏面緩衝材)を固定しておき、更に接着剤が塗られたディスク(プラスチックの円盤)等を不織布(裏面緩衝材)の上からコンクリート釘で固定して、防水シート12を展張しながら防水シート12の表面側から押さえ付けることにより防水シート12を接着剤付きディスク(プラスチックの円盤)と接着固定していく方法である。
【0042】
なお、トンネル周方向の中間地点で防水シート12を接合する場合は、前述した図6の要領によって防水シート展張装置本体3に対して新しい防水シート12をセットすることを繰り返しながら防水シート12をトンネル周方向に連続させるようにする。トンネル周方向の接合部は熱コテ式溶着機によって防水シート12同士を連続的に接合するようにすればよい。
【0043】
〔他の形態例〕
(1)前記傾動アーム9に対して、前記傾動ジャッキ8を過度に収縮させた際に傾動アーム9が走行台車4に衝突し損傷するのを防ぐための安全機構を付与することも可能である。具体的には、図9に示されるように、傾動アーム9の中間地点で、基端側アーム9Aと先端側アーム9Bとに分割して、これらをピン30で接合して屈曲可能とするとともに、これら基端側アーム9Aと先端側アーム9Bとの連結部において、先端側アーム9B側に屈曲ストッパー31を設け、これを基端側アーム9A側に延ばして、基端側アーム9Aと先端側アーム9Bとがほぼ直線状となる状態以上の屈曲を衝突によって防止する、支保工面側への屈曲のみを可能とする片側方向屈曲部を有するようにする。
【0044】
図9(A)に示されるように、基端側アーム9Aと先端側アーム9Bとが真っ直ぐ延びた状態では屈曲ストッパー31が先端側アーム9Bの反時計回り方向の回転を止めるため防水シート12の圧着には支障は出ない。しかし、図10に示されるように、傾動ジャッキ8を過度に収縮させてしまい傾動アーム9が走行台車4に衝突した際には、先端側アーム9Bの時計回り方向の回動は許容されるため、前記傾動アーム9が損傷するのを防止することができる。
【符号の説明】
【0045】
1…作業架台、2…レール、3…防水シート展張装置本体、4…走行台車、5…保持軸(防水シート用)、6…スライド用ジャッキ、7…移動台、8…傾動用ジャッキ、9…傾動アーム、10…押え棒、11・21…組ローラ、12…防水シート、13…軸受、S…支保工面、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11