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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】往復動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20220106BHJP
   F04B 39/14 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
F04B39/00 107A
F04B39/00 104C
F04B39/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018013969
(22)【出願日】2018-01-30
(65)【公開番号】P2019132171
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100157808
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 耕平
(72)【発明者】
【氏名】大久野 孝史
(72)【発明者】
【氏名】瀬山 勝広
(72)【発明者】
【氏名】名倉 見治
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-003021(JP,A)
【文献】特開昭57-069172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
F04B 39/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内に収容されたピストンとクランク機構とに連結されたピストンロッドと、
前記ピストンロッドの外周面に摺接される内周縁を有し、前記シリンダ内のガスが前記ピストンロッドの前記外周面の周囲の空隙を通じて漏出することを防止する環状のロッドパッキンと、
前記ピストンロッドが貫通した状態で前記シリンダの下端に形成された開口部を閉じ、且つ、前記ロッドパッキンを収容する収容室が形成されたシリンダヘッドと、
前記ピストンロッドが貫通した状態で前記収容室を閉じるように前記シリンダヘッド上に配置されたフランジと、を備え、
前記ピストンロッドは、前記ロッドパッキンによって摺接される第1ロッド部と、前記第1ロッド部の先端から延設され、前記ピストンに形成された挿通穴に挿通された第2ロッド部と、を含み、
前記ピストンは、前記第2ロッド部から分離可能であり、
前記第2ロッド部の直径は、前記第1ロッド部の直径以下であり、
前記フランジは、前記収容室内の前記ロッドパッキンと連結されており、且つ、前記ピストンロッドが貫通した状態で、前記ロッドパッキンとともに前記シリンダヘッドから上方に分離可能である
往復動圧縮機。
【請求項2】
前記ピストンから突出した前記第2ロッド部の先端部に形成された雄ネジ部に螺合され、前記ピストンを前記第2ロッド部に固定するナットを更に備え、
前記第1ロッド部の前記先端は、前記第1ロッド部と前記第1ロッド部よりも細い前記第2ロッド部との間の直径差によって形成された環状の段差面を含み、
前記ピストンは、前記ピストンロッドの延設方向において前記段差面と前記ナットとによって挟まれる
請求項1に記載の往復動圧縮機。
【請求項3】
前記第2ロッド部の先端部に形成された雄ネジ部に螺合され、前記ピストンを前記第2ロッド部に固定するナットと、
前記ピストンロッドの延設方向において前記ナットと協働して前記ピストンを挟むように前記ピストンロッドに取り付けられたリング部材と、を更に備え、
前記リング部材は、前記第1ロッド部よりも直径において大きく、且つ、前記ピストンロッドから取り外し可能である
請求項1に記載の往復動圧縮機。
【請求項4】
前記シリンダの下方で前記ピストンロッドを取り囲み、且つ、前記シリンダヘッドに取り付けられた筒状部材と、
前記フランジを前記シリンダヘッドに締結するための締結具と、を更に備え、
前記締結具は、前記フランジと前記シリンダヘッドとの間の締結を解除するための操作を受ける頭部を含み、
前記頭部は、前記筒状部材の内部空間に臨み、且つ、前記筒状部材に形成された開口窓からアクセス可能である
請求項に記載の往復動圧縮機。
【請求項5】
前記シリンダヘッドと前記フランジとの間の境界からの前記ガスの漏出を防ぐ環状のガスケットを更に備え、
前記ガスケットは、前記フランジに取り付けられている
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の往復動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを圧縮する往復動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
往復動圧縮機(以下、「圧縮機」と称される)は、ピストンをシリンダ内で往復動させ、シリンダ内のガスを圧縮する。クランクシャフトの回転力を、ピストンを往復動させる力としてピストンへ伝達するピストンロッドは、シリンダの下端に形成された開口部を閉じるシリンダヘッドを貫通する。一般的に、ピストンロッドとシリンダヘッドとの間の境界空間を通じたガスの漏出は、環状のロッドパッキンによって防がれる(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-153637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロッドパッキンは、圧縮機の中で摩耗のリスクが最も高い部位のうちの1つである。特許文献1によれば、ロッドパッキンを交換する作業者は、クロスヘッドが収容されたヘッドケースから、ヘッドケースに固定された筒状のアダプタを分離し、その後、ピストンロッドの基端部をクロスヘッドから切り離す。その後、作業者は、クロスヘッド及びヘッドケースから分離された上部構造を分解し、摩耗したロッドパッキンを新しいロッドパッキンと交換する。すなわち、作業者は、従来の圧縮機の構造の下では、ロッドパッキンを交換するために圧縮機の様々な部位を分解しなければならない。このことは、ロッドパッキンの交換に長い期間が必要とされることを意味する。
【0005】
従来技術に係る他の圧縮機に関して、ロッドパッキンは圧縮機内で下側から固定されていることもある。この場合、ロッドパッキンを交換する作業者は圧縮機の外面に設けられたメンテナンス用の窓部から圧縮機内に入り、ロッドパッキンを取り外す作業をしなければならない。このとき、作業者はロッドパッキンの大きな重量を支えながらロッドパッキンを取り外す必要があるので、ロッドパッキンの取り外し作業は困難となる。
【0006】
本発明は、ロッドパッキンの交換を容易とする往復動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る往復動圧縮機は、シリンダ内に収容されたピストンとクランク機構とに連結されたピストンロッドと、前記ピストンロッドの外周面に摺接される内周縁を有し、前記シリンダ内のガスが前記ピストンロッドの前記外周面の周囲の空隙を通じて漏出することを防止する環状のロッドパッキンと、前記ピストンロッドが貫通した状態で前記シリンダの下端に形成された開口部を閉じ、且つ、前記ロッドパッキンを収容する収容室が形成されたシリンダヘッドと、前記ピストンロッドが貫通した状態で前記収容室を閉じるように前記シリンダヘッド上に配置されたフランジと、を備える。前記ピストンロッドは、前記ロッドパッキンによって摺接される第1ロッド部と、前記第1ロッド部の先端から延設され、前記ピストンに形成された挿通穴に挿通された第2ロッド部と、を含む。前記ピストンは、前記第2ロッド部から分離可能である。前記第2ロッド部の直径は、前記第1ロッド部の直径以下である。前記フランジは、前記収容室内の前記ロッドパッキンと連結されており、且つ、前記ピストンロッドが貫通した状態で、前記ロッドパッキンとともに前記シリンダヘッドから上方に分離可能である。
【0008】
上記の構成によれば、ピストンは、ピストンの挿通穴へ挿通された第2ロッド部から分離可能であり、且つ、第2ロッド部の直径は第1ロッド部の直径以下であるので、第2ロッド部からピストンを取り除いた後、作業者は、ロッドパッキンを第1ロッド部から第2ロッド部に向けて引き抜くことができる。このため、クランク機構とピストンロッドとの間の分解を必要とする従来の往復動圧縮機の構造とは異なり、作業者は、ピストンロッドとクランク機構との間の連結を維持したまま、摩耗したロッドパッキンを新しいロッドパッキンに交換することができる。ロッドパッキンは、シリンダヘッドに形成された収容室に配置されており、フランジは、ロッドパッキンが収容された収容室を閉じるようにシリンダヘッド上に配置されている。フランジは、ロッドパッキンと連結されているので、ロッドパッキンを交換する作業者は、フランジ及びロッドパッキンを一体的に取り扱うことができる。すなわち、フランジは、ピストンロッドが貫通した状態で、シリンダヘッドから上方に分離可能であるので、作業者は、フランジ及びロッドパッキンを一体的に引き上げ、ピストンが取り除かれた後の第2ロッド部から引き抜くことができる。このため、作業者は、フランジ及びロッドパッキンを下支えすることなく、フランジ及びロッドパッキンをピストンロッドから分離することができる。この間、ピストンロッドとクランク機構との間の連結は、維持されるので、上述の往復動圧縮機は、従来の往復動圧縮機よりも少ない部位の分解しか必要としない。この結果、作業者は、短時間でロッドパッキンを容易に交換することができる。
【0009】
上記の構成に関して往復動圧縮機は、前記ピストンから突出した前記第2ロッド部の先端部に形成された雄ネジ部に螺合され、前記ピストンを前記第2ロッド部に固定するナットを更に備えてもよい。前記第1ロッド部の前記先端は、前記第1ロッド部と前記第1ロッド部よりも細い前記第2ロッド部との間の直径差によって形成された環状の段差面を含んでもよい。前記ピストンは、前記ピストンロッドの延設方向において前記段差面と前記ナットとによって挟まれてもよい。
【0010】
上記の構成によれば、第2ロッド部は第1ロッド部よりも細いので、段差面が第1ロッド部と第2ロッド部との間の直径差によって第1ロッド部の先端に形成される。段差面はナットと協働してピストンロッドの延設方向においてピストンを挟むように形成されているので、作業者が第2ロッド部をピストンに挿通させると、ピストンは段差面に引っ掛かり、段差面によって支持されることができる。作業者が、その後、第2ロッド部の雄ネジ部にナットを螺合させると、ピストンは、ナットと段差面とによってピストンロッドの延設方向に挟まれ、ピストンロッドに安定的に固定されることができる。
【0011】
作業者がナットを緩めると、ピストンはピストンロッドから分離されることができる。第2ロッド部は第1ロッド部よりも細いので、第1ロッド部に摺接されるロッドパッキンは、その後、第2ロッド部に向けて引き抜かれることができる。この間、ピストンロッドとクランク機構との間の連結は維持されることができるので、上述の往復動圧縮機は、従来の往復動圧縮機よりも少ない部位の分解しか必要としない。この結果、作業者は、短時間でロッドパッキンを容易に交換することができる。
【0012】
上記の構成に関して往復動圧縮機は、前記第2ロッド部の先端部に形成された雄ネジ部に螺合され、前記ピストンを前記第2ロッド部に固定するナットと、前記ピストンロッドの延設方向において前記ナットと協働して前記ピストンを挟むように前記ピストンロッドに取り付けられたリング部材と、を更に備えてもよい。前記リング部材は、前記第1ロッド部よりも直径において大きく、且つ、前記ピストンロッドから取り外し可能であってもよい。
【0013】
上記の構成によれば、リング部材は、第1ロッド部よりも直径において大きいので、作業者が第2ロッド部をピストンの挿通孔に挿入すると、ピストンはリング部材に引っ掛かり、ピストンロッドの延設方向において位置決めされる。その後、作業者がナットをピストンから突出した第2ロッド部の先端部に形成された雄ネジ部に螺合すると、ピストンはナットとリング部材とによってピストンロッドの延設方向において挟まれ、ピストンロッドに安定的に固定されることができる。
【0014】
作業者がナットを緩めると、ピストンはピストンロッドから分離されることができる。作業者は、その後、リング部材をピストンロッドから取り外すことができる。第2ロッド部の直径は、第1ロッド部の直径以下であるので、ロッドパッキンは、その後、第2ロッド部に向けて引き抜かれることができる。この間、ピストンロッドとクランク機構との間の連結は維持されることができるので、上述の往復動圧縮機は、従来の往復動圧縮機よりも少ない部位の分解しか必要としない。この結果、作業者は、短時間でロッドパッキンを容易に交換することができる。
【0017】
上記の構成に関して往復動圧縮機は、前記シリンダの下方で前記ピストンロッドを取り囲み、且つ、前記シリンダヘッドに取り付けられた筒状部材と、前記フランジを前記シリンダヘッドに締結するための締結具と、を更に備えてもよい。前記締結具は、前記フランジと前記シリンダヘッドとの間の締結を解除するための操作を受ける頭部を含んでもよい。前記頭部は、前記筒状部材の内部空間に臨み、且つ、前記筒状部材に形成された開口窓からアクセス可能であってもよい。
【0018】
上記の構成によれば、作業者は、締結具を用いてフランジをシリンダヘッドに締結することができる。締結具の頭部は、シリンダの下方でピストンロッドを取り囲むとともにシリンダヘッドに取り付けられた筒状部材の内部空間に臨むので、作業者は、締結具の頭部に、筒状部材に形成された開口窓からアクセスし、フランジとシリンダヘッドとの間の締結を解除する操作をすることができる。上述の如く、その後、作業者は、フランジ及びロッドパッキンをピストンロッドに貫通されたままシリンダヘッドから上方に分離することができる。すなわち、作業者はフランジ及びロッドパッキンを下支えすることなくフランジ及びロッドパッキンをピストンロッドから分離することができる。この間、ピストンロッドとクランク機構との間の連結は維持されることができるので、上述の往復動圧縮機は、従来の往復動圧縮機よりも少ない部位の分解しか必要としない。この結果、作業者は、短時間でロッドパッキンを容易に交換することができる。
【0019】
上記の構成に関して往復動圧縮機は、前記シリンダヘッドと前記フランジとの間の境界からの前記ガスの漏出を防ぐ環状のガスケットを更に備えてもよい。前記ガスケットは、前記フランジに取り付けられていてもよい。
【0020】
上記の構成によれば、環状のガスケットはシリンダヘッドとフランジとの間の境界からのガスの漏出を防ぐので、ガスはシリンダヘッドとフランジとの間の境界から漏出することなくシリンダ内に閉じ込められることができる。ピストンはシリンダ内で往復動するので、シリンダ内に閉じ込められたガスはピストンによって圧縮される。
【0021】
ガスケットはフランジに取り付けられているので、フランジがピストンロッドによって貫通されたままシリンダヘッドから上方に分離されると、フランジと一体的にシリンダヘッドから上方に分離されることができる。ガスケットを往復動圧縮機から取り出すための専用の作業は必要とされないので、作業者は、短時間でガスケット及びロッドパッキンを容易に交換することができる。
【発明の効果】
【0022】
上述の往復動圧縮機は、ロッドパッキンの交換を容易とする構造を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態の往復動圧縮機の概略的な断面図である。
図2図1に示される往復動圧縮機のピストンロッドの概略的な正面図である。
図3A図1に示される往復動圧縮機のフランジの概略的な断面図である。
図3B図3Aに示されるフランジの概略的な底面図である。
図4】代替的なピストンロッドの概略的な正面図である(第2実施形態)。
図5】第3実施形態の圧縮機の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の往復動圧縮機(以下、「圧縮機100」と称される)の概略的な断面図である。図1を参照して、圧縮機100が説明される。
【0025】
圧縮機100は略円筒状のシリンダ110を備える。シリンダ110は略円筒状の部位である。図1に示される鉛直軸線VAXはシリンダ110の中心軸に略一致するように描かれている。鉛直軸線VAXはシリンダ110の上端及び下端に形成された開口部に直交する。
【0026】
シリンダ110の周壁には、ガスが流入する吸引口111及びシリンダ110内で圧縮されたガスが吐出される2つの吐出口112,113が形成される。吸引口111及び吐出口112,113は、シリンダ110の周壁に形成された流路を通じて、シリンダ110によって囲まれた内部空間に連通される。
【0027】
圧縮機100は2つのシリンダヘッド121,122を備える。シリンダヘッド121は、シリンダ110の上端に形成された開口部を閉じる。シリンダヘッド122は、シリンダ110の下端に形成された開口部を閉じる。シリンダ110及びシリンダヘッド121,122はガスが圧縮される内部空間を形成する。ガスは、吸引口111を通じてシリンダ110及びシリンダヘッド121,122によって囲まれた内部空間へ吸引され、内部空間で圧縮処理を受ける。その後、圧縮されたガスは吐出口112,113を通じて排出される。
【0028】
圧縮機100は、ピストン130と、ピストンロッド140と、クランク機構150と、フランジ146と、を含む。クランク機構150は、シリンダ110内に配置されたピストン130を鉛直軸線VAXに沿って往復動させるための駆動力を生成する。クランク機構150が生成した駆動力は、クランク機構150とピストン130とに連結されたピストンロッド140によってピストン130へ伝達される。この結果、ピストン130はシリンダ110内で鉛直軸線VAXに沿って往復動することができる。フランジ146は、ピストンロッド140をクランク機構150に連結するために用いられる。
【0029】
ピストン130は、鉛直軸線VAXに略一致する中心軸を有する略円柱状の部材である。シリンダ110及びシリンダヘッド121,122によって囲まれた内部空間は、ピストン130によって2つの圧縮室に分けられる。2つの圧縮室のうち一方は、ピストン130の上面と、上側のシリンダヘッド121の下面と、シリンダ110の内周面と、によって囲まれた空間である。図1に示されるピストン130は、上死点にあり、ピストン130の上面、上側のシリンダヘッド121の下面及びシリンダ110の内周面によって囲まれた空間は最小化されている。2つの圧縮室のうち他方は、ピストン130の下面と、下側のシリンダヘッド122の上面と、シリンダ110の内周面と、によって囲まれた空間である。図1に示されるピストン130は上述の如く上死点にあるので、ピストン130の下面、下側のシリンダヘッド122の上面及びシリンダ110の内周面によって囲まれた空間は最大化されている。このとき、ガスは吸引口111を通じて、ピストン130の下面、下側のシリンダヘッド122の上面及びシリンダ110の内周面によって囲まれた空間に吸引される。その後、ピストン130が下降すると、ピストン130の下面、下側のシリンダヘッド122の上面及びシリンダ110の内周面によって囲まれた空間は縮小され、ガスは圧縮される。圧縮されたガスは、吐出口112,113から吐出される。
【0030】
クランク機構150は、ピストン130の下方に配置されている。クランク機構150は、クランクシャフト151と、コネクティングロッド152と、クロスヘッド153と、中空のクランクケース154と、略円筒状のヘッドケース155と、を含むことができる。クランクシャフト151は、鉛直軸線VAXに直交する所定の回転軸RAXに沿って延設されたクランクケース154内に収容されている。クランクシャフト151は、クランクケース154によって両持ち支持され回転軸RAX周りに回転する。コネクティングロッド152の下端はクランクシャフト151に連結される。クランクシャフト151及びコネクティングロッド152の連結部位は回転軸RAX周りに周回する。ヘッドケース155は鉛直軸線VAXに略一致する中心軸を有する。ヘッドケース155はクランクケース154の上面に固定される。クロスヘッド153はヘッドケース155内に収容された略円柱状の部材であり、鉛直軸線VAXと略一致する中心軸を有する。クロスヘッド153はコネクティングロッド152の上端に連結される。クロスヘッド153の外周面はヘッドケース155の内周面に近接されるので、水平方向におけるクロスヘッド153の変位はクロスヘッド153によって規制される。一方、ヘッドケース155は、鉛直方向におけるクロスヘッド153の変位を許容する。クランクシャフト151が回転軸RAX周りに回転している間、コネクティングロッド152は水平方向の変位成分を吸収するように姿勢を変え、垂直方向の変位成分のみがクロスヘッド153に伝達される。この結果、クロスヘッド153はヘッドケース155内で鉛直軸線VAXに沿って往復動することができる。
【0031】
ピストンロッド140は鉛直軸線VAXに沿って延設された棒状の部材である。すなわち、ピストンロッド140は鉛直軸線VAXに略一致する中心軸を有する。ピストンロッド140の下端はクロスヘッド153の上面に固定される一方で、ピストンロッド140の上部はピストン130に連結される。したがって、鉛直軸線VAXに沿うクロスヘッド153の往復動はピストンロッド140によってピストン130に伝達される。この結果、ピストン130は、シリンダ110内で鉛直軸線VAXに沿って往復動することができる。
【0032】
圧縮機100は、下側のシリンダヘッド122とヘッドケース155との間でピストンロッド140を取り囲むように形成された筒状部材160を示す。シリンダヘッド122及びヘッドケース155は、筒状部材160に固定されている。筒状部材160は、シリンダ110の内部空間から意図せず漏出したガスを一時的に貯留する貯留空間を形成する。筒状部材160内に漏出したガスを排出するための不燃性のパージガス(たとえば、窒素ガス)が筒状部材160の貯留空間に供給されてもよい。この結果、シリンダ110の内部空間から意図せず漏出したガスは筒状部材160から排出されることができる。
【0033】
下側のシリンダヘッド122はピストン130とクロスヘッド153との間に配置されているので、ピストンロッド140によって貫通されるように形成される。圧縮機100は、シリンダヘッド122とピストンロッド140との間の隙間からのガスの漏出を防止するロッドパッキン部170を含む。
【0034】
ロッドパッキン部170は環状に形成されており、シリンダヘッド122に取り付けられている。ロッドパッキン部170の内周縁がシリンダ122に取り付けられたピストンロッド140の外周面に摺接されるように、ロッドパッキン部170はピストンロッド140によって貫通されるので、圧縮機100の中で最も摩耗しやすい部位のうちの1つである。したがって、ロッドパッキン部170は他の部位よりも高い頻度で交換される必要がある。
【0035】
図2は、ピストンロッド140の概略的な正面図である。図1及び図2を参照して、ピストンロッド140が説明される。
【0036】
ピストンロッド140は、第1ロッド部141と、第1ロッド部141の先端(すなわち、上端)から上方に延びる第2ロッド部142と、を含む。第1ロッド部141は、ロッドパッキン部170の内周縁によって摺接される部位である。第1ロッド部141は、クロスヘッド153の往復動を第2ロッド部142及びピストン130へ伝達する。第2ロッド部142は、ピストン130をピストンロッド140に連結するために用いられる部位である。
【0037】
第1ロッド部141は、ロッドパッキン部170の内周縁によって摺接される外周面を有する。第1ロッド部141の長さは、ピストン130及びピストンロッド140のストローク長(すなわち、これらが上死点にあるときの位置とこれらが下死点にあるときの位置との差)よりも大きな値に設定されることができる。ピストン130及びピストンロッド140が上死点と下死点との間で往復動している間、第1ロッド部141の外周面はロッドパッキン部170の内周面によって摺接され続ける。この結果、ピストン130及びピストンロッド140が上死点と下死点との間で往復動している間、シリンダ110からのガスの漏出は防止される。
【0038】
第1ロッド部141の先端部はピストン130の下面において上方に凹設された凹部に挿入される。この結果、ピストン130の下部は第1ロッド部141に連結される。
【0039】
第1ロッド部141の先端部とは反対の基端部(すなわち、下端部)には、フランジ146が取り付けられている。第1ロッド部141は、フランジ146を介してクロスヘッド153に連結されている。
【0040】
第2ロッド部142は、第1ロッド部141の先端面(すなわち、上端)から上方に突出し、鉛直軸線VAXに沿ってピストン130を貫通する挿通孔に挿通された棒状の部位である。第1ロッド部141とは異なり、第2ロッド部142はピストン130に全体的に収められている。
【0041】
第2ロッド部142は、第1ロッド部141よりも直径において小さい。したがって、第2ロッド部142の基端(すなわち、第1ロッド部141に連結された第2ロッド部142の端部)を取り囲む環状の段差面145が、第1ロッド部141と第2ロッド部142との間の直径差によって第1ロッド部141の先端面(すなわち、上端面)として形成される。ピストン130は、段差面145に引っ掛かり、鉛直軸線VAXの延設方向において位置決めされる。
【0042】
圧縮機100は、第2ロッド部142の先端部に取り付けられたナット131を備える。ナット131は、ピストン130の上面に形成された凹部に埋設され、第2ロッド部142の先端部(すなわち、上端部)の外周面に形成された雄ネジ部144に螺合されている。雄ネジ部144は、段差面145から上方に離れた位置に形成されている。
【0043】
ナット131が雄ネジ部144に締め付けられると、引張応力が第2ロッド部142に生ずる。第2ロッド部142の引張応力は、ナット131と段差面145との間の圧縮力としてピストン130に作用する。すなわち、ピストン130は、鉛直軸線VAXの延設方向において、ナット131と段差面145とによって強く挟持されることになる。この結果、ピストン130はピストンロッド140にしっかりと連結されることができる。
【0044】
図1に示されるように、ロッドパッキン部170は、下側のシリンダヘッド122内に形成された収容室に収容されている。収容室より直径において大きく、且つ、収容室の上端に連なる凹部が、シリンダヘッド122内に形成されている。圧縮機100は、シリンダヘッド122に形成された凹部に嵌め込まれ、ロッドパッキン部170がシリンダヘッド122から上方に飛び出すことを防ぐように収容室を閉じる環状のフランジ124を備える。
【0045】
フランジ124はロッドパッキン部170よりも直径において大きな環状の板部材である。フランジ124及びフランジ124の下方に連なるロッドパッキン部170の形状は、シリンダヘッド122に形成された凹部及び凹部から下方に凹設された上述の収容室の形状と相補的である。フランジ124が嵌め込まれた凹部とロッドパッキン部170が収容された収容室との間の直径差の結果、段差面が、フランジ124が嵌め込まれた凹部とロッドパッキン部170が収容された収容室との間に形成される。フランジ124の外周部は、凹部と収容室との間の直径差によって凹部と収容室との間の境界に形成された段差面に引っ掛かり、フランジ124は凹部内で保持されることができる。
【0046】
ロッドパッキン部170は複数のロッドパッキン171を含む。これらのロッドパッキン171は、フランジ124から鉛直軸線VAXに沿って下方に連設される。
【0047】
圧縮機100は、ロッドパッキン部170の複数のロッドパッキン171を一体的に連結する複数の連結ネジ172を備える(図1を参照)。これらの連結ネジ172は、複数のロッドパッキン171を鉛直軸線VAXに略平行に貫通し、フランジ124に形成された雌ネジ孔に螺合される。この結果、複数のロッドパッキン171はフランジ124と一体化される。
【0048】
圧縮機100は、複数の連結ネジ172に加えて、ロッドパッキン部170の外周縁の傍で鉛直軸線VAXに略平行に延設された複数の締結具125を備える。複数の締結具125は、シリンダヘッド122を貫通し、ロッドパッキン部170の外周縁から外方に突出した部位においてフランジ124に形成された複数の雌ネジ孔にそれぞれ螺合される。この結果、フランジ124はシリンダヘッド122に締結される。一般的なネジ部材が複数の締結具125として用いられることができる。
【0049】
複数の締結具125それぞれは、フランジ124とシリンダヘッド122との間の締結を解除するための操作を受ける頭部223を含む。複数の締結具125それぞれの頭部223は、上述の筒状部材160の内部空間に現れる。これらの締結具125の頭部223へのアクセスを可能にする開口窓161が、筒状部材160の周壁に形成されている。
【0050】
(フランジ)
図1に示されるように、フランジ124は鉛直軸線VAX周りにおいてシリンダヘッド122の上面に形成された凹部に嵌め込まれるので、ガスの漏出を引き起こし得る境界がフランジ124とシリンダヘッド122との間に形成される。圧縮機100はフランジ124とシリンダヘッド122との間の境界を通じたガスの漏出を防ぐ構造を有することが好ましい。
【0051】
図3Aは、フランジ124の概略的な断面図である。図3Bは、フランジ124の概略的な底面図である。図1図3A及び図3Bを参照して、フランジ124とシリンダヘッド122との間の境界を通じたガスの漏出を防ぐための構造が説明される。
【0052】
フランジ124は、上部126と下部127と中間部128とに大別される。上部126は、シリンダヘッド122の上面に形成された凹部に嵌め込まれ、シリンダ110の内部空間に臨む上面を形成する。下部127は、上部126の下方に位置する薄い円板状の部位である。下部127は、直径において上部126より小さい。下部127は、ロッドパッキン部170の上面に圧接される下面を形成する。下部127には複数の連結ネジ172が螺合される複数の雌ネジ孔129が下部127から上方に穿設されている。中間部128は、上部126と下部127との間に位置する薄い円板状の部位である。中間部128は、直径において、下部127よりも大きく、上部126よりも小さい。中間部128から径方向において外方にはみ出した上部126の外周部には、複数の締結具125がそれぞれ螺合される複数の雌ネジ孔221が形成されている。
【0053】
フランジ124の下部127は、中間部128に連結される薄い上円板部位225と、上円板部位225の下方に下円板部位226とに大別される。上円板部位225は下円板部位226より直径において小さい。この結果、下円板部位226と中間部128との下面との間には、環状の溝部222が形成される。
【0054】
図3A及び図3Bは、フランジ124とシリンダヘッド122との間に形成された境界からのガスの漏出を防ぐ環状のガスケット180を示す。ガスケット180は、環状のシールリング部181と複数の突出片182とを含む。シールリング部181は、フランジ124とシリンダヘッド122との間に形成された境界からのガスの漏出を防ぐ部位である。複数の突出片182は、フランジ124が上方に変位されているとき、ガスケット180及びフランジ124の接続状態を維持するために用いられる。
【0055】
シールリング部181は略円環状の平板である。図3Bに示されるように、シールリング部181は、径方向において下部127の外方に現れる中間部128の環状の下面に沿って配設される。シールリング部181は、中間部128の環状の下面と、ロッドパッキン部170が収容される収容室及びフランジ124が嵌め込まれる凹部との間の直径差によって形成された段差面224と、によって挟まれる。複数の締結具125が複数の雌ネジ孔221に螺合されると、シールリング部181は、中間部128の環状の下面とシリンダヘッド122の段差面224とによって圧縮され、フランジ124とシリンダヘッド122との間に形成された境界からのガスの漏出が防止される。
【0056】
複数の突出片182それぞれは、シールリング部181の内周縁から鉛直軸線VAXに向けて突出する。複数の突出片182は、溝部222に嵌め込まれ、ガスケット180はフランジ124に係合される。図3Bに示される点線円は、溝部222の底を形成する上円板部位225の外周輪郭を表している。
【0057】
図3Bに示されるように、複数の突出片182に相補的な複数の切欠部が、下円板部位226に形成されている。作業者は、複数の突出片182が複数の切欠部に位置的に一致するように、ガスケット180を中間部128の下面に当接させる。その後、作業者は、ガスケット180を鉛直軸線VAX周りに回転させる。この結果、突出片182は溝部222に嵌め込まれる。
【0058】
ロッドパッキン部170の取り出し方法が以下に説明される。
【0059】
工具を持った作業者は、開口窓161を通じて締結具125の頭部223にアクセスし、締結具125を緩めることができる。複数の締結具125がシリンダヘッド122から取り外された後、作業者は、シリンダヘッド121をシリンダ110の上端(すなわち、シリンダ110の端部のうちクランク機構150から遠い端部)から取り外す。その後、作業者は、ピストンロッド140の上端に取り付けられたナット131を緩め、ピストン130をピストンロッド140から分離することができる。ピストン130が取り除かれた後、作業者は、フランジ124をピストンロッド140に沿って上方に引き上げることができる。上述の如く、ロッドパッキン部170は複数の連結ネジ172によってフランジ124と一体化されているので、フランジ124が上方に引き上げられると、ロッドパッキン部170もフランジ124とともに上方に引き上げられることができる。上述の如く、フランジ124にはガスケット180が係合されているので、ガスケット180もフランジ124とともに引き上げられることになる。ピストンロッド140の第2ロッド部142は、第1ロッド部141よりも細く、且つ、シリンダヘッド121、ナット131及びピストン130が除去されているので、第1ロッド部141より上方の部位は、フランジ124、ロッドパッキン部170及びガスケット180の内径を上回る直径を有さない。したがって、フランジ124、ロッドパッキン部170及びガスケット180は、円滑に引き上げられ、第2ロッド部142の上端から引き抜かれることができる。
【0060】
圧縮機100では、ロッドパッキン部170が少ない分解工程の下で取り出されるので、作業者は、ロッドパッキン部170を短時間で交換することができる。加えて、ロッドパッキン部170が連結されたフランジ124にはガスケット180が取り付けられているので、作業者は、フランジ124と同時にガスケット180も取り出すことができる。ガスケット180を取り出すための専用の作業は必要とされないので、ロッドパッキン部170の交換は効率的に行われることができる。
【0061】
上述の如く、フランジ124はシリンダヘッド122に引っ掛かり、複数の締結具125が除去された後も、シリンダヘッド122から落下しない。したがって、作業者は、ロッドパッキン部170を交換するための分解作業を安全に遂行することができる。
【0062】
本実施形態のガスケット180の取付に関して、作業者はフランジ124に形成された切欠部にガスケット180の突出片182を合わせた後にガスケット180を鉛直軸線VAX周りに回転させ、突出片182をフランジ124に形成された溝部222に嵌め込む。しかしながら、作業者はフランジ124に形成された切欠部に突出片182を合わせることなく、突出片182をスナップフィット式に溝部222に嵌め込んでもよい。したがって、切欠部はガスケット180に形成されていなくてもよい。
【0063】
本実施形態のガスケット180の取付に関して、突出片182は扇形である。しかしながら、突出片は他の形状を有していてもよい。たとえば、突出片はシリンダヘッド121とフランジ124とによって挟まれたシールリング部181から内方にはみ出た環状部位であってもよい。この場合、ガスケット180は全体的に環状に形成されることができる。
【0064】
本実施形態のガスケット180の取付に関して、ガスケット180の突出片182が嵌め込まれる溝部222がフランジ124に形成されている。しかしながら、溝部がガスケットの周縁に形成される一方で溝部に相補的な突部がフランジに形成されてもよい。ガスケットは溝部と突部との係合によってフランジと一体化され、フランジとともにピストンロッド140,140Aから引き抜かれることができる。
【0065】
<第2実施形態>
第1実施形態では、ピストンは第1ロッド部と第2ロッド部との直径差によって形成された段差面によってピストンロッドの延設方向において位置決めされる。しかしながら、ピストンはピストンロッドに取り付けられた位置決め部材によってピストンロッドの延設方向において位置決めされてもよい。第2実施形態において、ピストンロッドに取り付けられた位置決め部材を有する往復動圧縮機が説明される。
【0066】
図4は、ピストンロッド140Aの概略的な正面図である。ピストンロッド140Aは、図1を参照して説明されたピストンロッド140に代替されることができる。図1及び図4を参照して、ピストンロッド140Aが説明される。
【0067】
図4は、ピストンロッド140Aに加えて、ロッドパッキン部170、フランジ124,146及びナット131を示す。第1実施形態の説明は、これらの要素に援用される。
【0068】
ピストンロッド140Aは、第1ロッド部141Aと第1ロッド部141Aの先端(すなわち、上端)から鉛直軸線VAXに沿って上方に延びる第2ロッド部142Aとを含む。第1実施形態と同様に、第1ロッド部141Aはロッドパッキン部170によって摺接される。第1ロッド部141Aの直径は全長に亘って略一定である。この点において、直径において大きな上部分と直径において小さな下部分とを有する第1ロッド141(図1を参照)とは相違する。第1実施形態と同様に、第2ロッド部142Aは第1ロッド部よりも細く、環状の段差面145が、第1ロッド部141Aと第2ロッド部142Aとの直径差によって第1ロッド部141Aの先端面として形成される。第2ロッド部142Aの先端部の外周面には雄ネジ部144が形成されている。第1実施形態とは異なり、追加的な雄ネジ部147が第2ロッド部142Aの基端部の外周面に形成されている。
【0069】
図4は、上述の位置決め部材として機能するリング部材190を示す。リング部材190は第2ロッド部142Aによって挿通され、第2ロッド部142Aの基端部の雄ネジ部147に螺合される。
【0070】
リング部材190の下面には、上方に凹設された凹部が形成されている。リング部材190が第2ロッド部142Aの雄ネジ部147に完全に螺合されると、第1ロッド部141Aの上端はリング部材190の下面に形成された凹部に嵌め込まれる。この結果、ピストンロッド140Aは段差面145の下方の位置から段差面145の上方の雄ネジ部147の上端までの区間に亘ってリング部材190によって補強される。リング部材190はピストン130Aからの力を受け止めることができるので、ピストンロッド140Aは段差面145の周囲において過度に大きな力を受けない。
【0071】
図4は、第1実施形態のピストン130に代替されるピストン130Aを示す。第1実施形態と同様に、鉛直軸線VAXに沿って延びる挿通孔がピストン130Aに形成されている。第2ロッド部142Aが、ピストン130Aの挿通孔に挿通されると、ピストン130Aは第2ロッド部142Aの基端部の雄ネジ部147に螺合されたリング部材190に引っ掛かり、鉛直軸線VAXの延設方向において位置決めされる。このとき、リング部材190は、ピストンロッド130Aの下面に形成された凹部(リング部材190と相補的な凹部)に部分的に没入される。作業者は、その後、第2ロッド部142Aの先端部に形成された雄ネジ部144に取り付けられたナット131を締め、ピストン130Aを第2ロッド部142Aに取り付けることができる。
【0072】
ピストン130Aがピストンロッド140Aに取り付けられる前、ナット131は第2ロッド部142Aの先端部の雄ネジ部144から取り外される一方で、リング部材190は第2ロッド部142Aの基端部の雄ネジ部147に螺合される。その後、作業者は、第2ロッド部142Aをピストン130Aの挿通孔に挿通させる。この結果、リング部材190の上端面はピストン130Aの凹部の天面に当接され、ピストン130Aは鉛直軸線VAXの延設方向において位置決めされる。作業者は、その後、雄ネジ部144にナット131を螺合させる。ナット131がリング部材190から上方に離れた位置に形成された雄ネジ部144に締め付けられると、引張応力が第2ロッド部142Aに生ずる。第2ロッド部142Aの引張応力は、ナット131とリング部材190との間の圧縮力としてピストン130Aに作用する。すなわち、ピストン130Aは、鉛直軸線VAXの延設方向において、ナット131とリング部材190とによって強く挟持されることになる。この結果、ピストン130Aはピストンロッド140Aにしっかりと連結されることができる。
【0073】
ロッドパッキン部170の取り外しに関して、工具を持った作業者は、第1実施形態と同様に、筒状部材160の開口窓161を通じて締結具125の頭部223にアクセスし、締結具125を緩めることができる。複数の締結具125がシリンダヘッド121から取り外された後、作業者は、上側のシリンダヘッド121をシリンダ110の上端から取り外してもよい。その後、作業者は、ピストンロッド140Aの上端に取り付けられたナット131を緩め、ピストン130Aをピストンロッド140Aから分離することができる。ピストン130Aが取り除かれた後、作業者は、リング部材190を緩め、第2ロッド部142Aから引き抜くことができる。リング部材190が第2ロッド部142Aから取り除かれた後、作業者は、フランジ124をピストンロッド140Aに沿って上方に引き上げることができる。上述の如く、ロッドパッキン部170は複数の連結ネジ172によってフランジ124と一体化されているので、フランジ124が上方に引き上げられると、ロッドパッキン部170もフランジ124とともに上方に引き上げられることができる。ピストンロッド140Aの第2ロッド部142Aは、第1ロッド部141Aよりも細く、且つ、シリンダヘッド121、ナット131、ピストン130A及びリング部材190が除去されているので、第1ロッド部141Aより上方の部位は、フランジ124及びロッドパッキン部170の内径を上回る直径を有さない。したがって、フランジ124及びロッドパッキン部170は、円滑に引き上げられ、第2ロッド部142Aの上端から引き抜かれることができる。
【0074】
本実施形態に関して、第1ロッド部141A及び第2ロッド部142Aの間に段差面145が形成される。しかしながら、第1ロッド部141A及び第2ロッド部142Aの間の境は、第1ロッド部141Aから第2ロッド部142Aに向けて狭まるテーパ形状を有してもよい。リング部材は、第1ロッド部141Aと第2ロッド部142Aとの間のテーパ形状に嵌め込まれるように形成されてもよい。したがって、上述の実施形態では第1ロッド部と第2ロッド部との間の境の特定の形状に限定されない。
【0075】
本実施形態に関して、リング部材190はピストン130Aの下面に形成された凹部に没入されている。この結果、ピストン130Aの下面に現れる挿通孔の開口縁はリング部材190の周面に接触するので、リング部材190は挿通孔の開口縁からの強い力を受け止めることができる一方で、ピストンロッド140Aは、挿通孔の開口縁からの強い力を直接的には受けない。すなわち、ピストンロッド140Aは、リング部材190によってピストン130Aから保護されることができる。しかしながら、ピストンロッド140Aが十分な機械的強度を有するならば、挿通孔の開口縁はピストンロッド140Aに直接的に接触してもよい。リング部材の上面が段差面145に面一となるようにリング部材がピストンロッド140Aに取り付けられるならば、挿通孔の開口縁は第2ロッド部142Aの基端部に接触する。この場合、ピストン130Aは段差面145とリング部材190の上面とによって支持されることができる。
【0076】
本実施形態に関して、リング部材190の下面はピストン130Aの下面と略面一である。しかしながら、リング部材190の下面は、ピストン130Aの下面よりも上方に位置してもよい。この場合において、ピストン130Aの下面に現れる挿通孔の開口縁はリング部材190の周面から離されることができる。したがって、ピストンロッド140Aは、挿通孔の開口縁からの過度に大きな負荷を受けにくくなる。
【0077】
本実施形態に関して、リング部材190は、第2ロッド部142Aの基端部に形成された雄ネジ部147に螺合されている。しかしながら、リング部材は、第1ロッド部の先端部に形成された雄ネジ部に螺合されてもよい。
【0078】
<第3実施形態>
図5は第3実施形態の圧縮機100Bの概略的な断面図である。図1及び図5を参照して圧縮機100Bが説明される。
【0079】
圧縮機100Bは、第1実施形態の圧縮機100とはガスケットの配置位置においてのみ相違する。したがって、ガスケットを除いて第1実施形態の説明は圧縮機100Bに援用される。
【0080】
圧縮機100Bは、第1実施形態に関連して説明されたガスケット180とは異なる位置に配置されたガスケット180Bを備える。第1実施形態のガスケット180がフランジ124の下面とシリンダヘッド122に形成された凹部内のシリンダヘッド122の上面とによって圧縮されているのに対して、第3実施形態のガスケット180Bはロッドパッキン部170の下面とロッドパッキン部170が収容された収容室内のシリンダヘッド122の上面とによって圧縮されている。
【0081】
ガスケット180Bは、環状の薄板である。ガスケット180Bの中心の開口領域をピストンロッド140は貫通し、ガスケット180Bによって周方向において囲まれる。ガスケット180Bは、フランジ124とシリンダヘッド122との間に形成された境界を通じてロッドパッキン部170が収容された収容室内に流入したガスがピストンロッド140の外周面とシリンダヘッド122の内周面との間の薄い環状空間並びにシリンダヘッド122の下方に配置された筒状部材160の内部空間へ流入することを防止する。
【0082】
上述の実施形態に関して、ピストンロッド140,140Aは、直径において異なる第1ロッド部141,141A及び第2ロッド部142,142Aを有する。しかしながら、第2ロッド部は第1ロッド部と同じ太さであってもよい。この場合、ピストン130,130Aを支持するためのリング部材は、ピストンロッドの中間位置に取り付けられる。リング部材の取付位置は、第1ロッド部と第2ロッド部との間の境となる。すなわち、リング部材より上方に位置するピストンロッドの部位は第2ロッド部に相当する。リング部材より下方に位置するピストンロッドの部位は第1ロッド部に相当する。第2実施形態に関連して説明されたリング部材190と同様に、第1ロッド部と第2ロッド部との間の境に配置されたリング部材は、ピストンロッドから取り外し可能に形成される。たとえば、リング部材は、第1ロッド部及び第2ロッド部の境に形成された雄ネジ部に螺合するように形成されることができる。作業者は、ピストン及びリング部材をピストンロッドから順に取り外し、第1ロッド部に取り付けられたロッドパッキンを第2ロッド部に向けて引き上げることができる。
【0083】
上述の実施形態に関して、シリンダ110は必ずしも鉛直線方向に伸びる必要はない。
【0084】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0085】
圧縮機100,100Bは、圧縮されたガスが必要とされる様々な技術分野に好適に利用される。たとえば、圧縮機は液化天然ガスを積載する船舶に搭載されてもよい。上述の如く、上述の実施形態に係る往復動圧縮機は、ロッドパッキン部の落下のリスクが低くなるような構造を有し、且つ、ロッドパッキン部は上方に引き上げられるように往復動圧縮機から分離されるので、作業者は大型の往復動圧縮機に組み込まれた重いロッドパッキン部を安全に交換することができる。
【符号の説明】
【0086】
100,100B・・・・・・・・・・圧縮機(往復動圧縮機)
110・・・・・・・・・・・・・・・シリンダ
122・・・・・・・・・・・・・・・シリンダヘッド
124・・・・・・・・・・・・・・・フランジ
125・・・・・・・・・・・・・・・締結具
130,130A・・・・・・・・・・ピストン
131・・・・・・・・・・・・・・・ナット
140,140A・・・・・・・・・・ピストンロッド
141,141A・・・・・・・・・・第1ロッド部
142,142A・・・・・・・・・・第2ロッド部
144・・・・・・・・・・・・・・・雄ネジ部
145・・・・・・・・・・・・・・・段差面
150・・・・・・・・・・・・・・・クランク機構
160・・・・・・・・・・・・・・・筒状部材
161・・・・・・・・・・・・・・・開口窓
171・・・・・・・・・・・・・・・ロッドパッキン
180・・・・・・・・・・・・・・・ガスケット
190・・・・・・・・・・・・・・・リング部材
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5