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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】工作機械システム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20220106BHJP
   B23Q 3/155 20060101ALI20220106BHJP
   B23Q 7/04 20060101ALI20220106BHJP
   B23Q 7/10 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B23Q11/00 D
B23Q3/155 A
B23Q7/04 A
B23Q7/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018035679
(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2019150894
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】一木 洋介
【審査官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-198762(JP,A)
【文献】特開2017-013191(JP,A)
【文献】特開2016-135522(JP,A)
【文献】特開2018-001308(JP,A)
【文献】特開2018-020427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00
B23Q 3/155
B23Q 7/04
B23Q 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバーで囲まれた加工室と、前記カバーに設けられた開口部を開閉自在に覆うドアと、を有する工作機械と、
前記工作機械に対して着脱自在で、前記加工室の外部に保管スペースを提供するストッカと、
前記ストッカが前記工作機械に装着された際に、前記保管スペースと前記加工室とに跨った可動範囲を有するロボットと、
前記ロボットの駆動を制御するロボット制御部と、
前記ドアの開閉状態を検知するドアセンサと、
前記ストッカの前記工作機械への着脱状態を検知するストッカセンサと、
を備え、
前記ストッカは、前記工作機械に装着された際に、前記工作機械の外表面と協同して、前記保管スペースを収容する防護空間を画定する、柵または壁である防護部材を備え
前記ロボット制御部は、前記ドアセンサの検知結果および前記ストッカセンサの検知結果に基づいて、前記ロボットの動作制限の有無を決定する、
ことを特徴とする工作機械システム。
【請求項2】
請求項1に記載の工作機械システムであって、
前記開口部は、前記工作機械の前面に設けられており、
前記工作機械に装着された際、前記開口部の前方に前記防護空間が画定され、
前記防護部材は、少なくとも、前記防護空間の前面および左右両側面を覆う、
ことを特徴とする工作機械システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の工作機械システムであって、
前記工作機械は、さらに、少なくとも前記ロボットの駆動指示を受け付ける入力装置を備え、
前記入力装置は、前記加工室の外部かつ前記防護空間の外部に設けられている、
ことを特徴とする工作機械システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の工作機械システムであって、さらに、
前記ロボットは、前記加工室内に設置されている、ことを特徴とする工作機械システム。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載の工作機械システムであって、
前記ロボットは、前記ストッカに設置されている、ことを特徴とする工作機械システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、加工室の外部に保管スペースを提供するストッカ、および、当該ストッカと工作機械とロボットとを有した工作機械システムを開示する。
【背景技術】
【0002】
工作機械には、通常、加工室が設けられており、この加工室は、カバーにより覆われている。こうした加工室のスペースは、限られているため、工作機械の外部に、余剰の保管スペースを提供するストッカを設けることがある。かかるストッカには、例えば、加工前のワーク、加工後のワーク、交換用の工具、ジグなどが保管される。
【0003】
ここで、工作機械では、従来から、さらなる自動化、省人化が求められている。そこで、工作機械、または、その周辺に、ロボットを設け、当該ロボットで各種処理を行うことが提案されている。例えば、特許文献1には、工作機械の加工室内に、多関節ロボットを設け、当該多関節ロボットで種々の処理を行う工作機械が開示されている。この特許文献1では、多関節ロボットによる処理の一つとして、ワークを加工室の外部に搬送することが挙げられている。
【0004】
特許文献1のように、ロボットを加工室の外部まで動かせるようにすれば、さらなる自動化、省人化が可能になる。特に、ロボットを、加工室とストッカの保管スペースとに跨って動かせるようにすれば、ワーク、工具、ジグなどを、加工室の内外に搬送でき、さらなる自動化、省人化が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-202548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、産業用ロボットは、法令や規格で、協働ロボットであるか、柵または囲いにより人と物理的に分離されていることが、定められている。協働ロボットとは、人と協働して作業可能なロボットであり、例えば、速度および人との間隔の監視が可能であったり、力と圧力の制限が行なえたりするロボットである。
【0007】
そのため、上述したとおり、ロボットを、加工室の外部に設けられたストッカまで移動させる場合、当該ロボットの可動範囲が、柵または囲いにより人から分離されているか、当該ロボットが協働ロボットであることが要求される。しかし、協働ロボットとするためには、人との距離を検知できるレーザーレンジファインダーや、力を検知できる力センサ等の高価なセンサが必要であった。また、柵および囲いを、工作機械の周辺に常時設置しておくと、当該工作機械の内部(加工室内部)へのアクセスが制限され、オペレータによる作業性が悪化する。
【0008】
そこで、本明細書では、ストッカと工作機械とロボットとを有した工作機械システムであって、安価でありながら、作業性の悪化を防止できる工作機械システム、および、当該工作機械ストッカに用いられるストッカを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書で開示する工作機械システムは、カバーで囲まれた加工室と、前記カバーに設けられた開口部を開閉自在に覆うドアと、を有する工作機械と、前記工作機械に対して着脱自在で、前記加工室の外部に保管スペースを提供するストッカと、前記ストッカが前記工作機械に装着された際に、前記保管スペースと前記加工室とに跨った可動範囲を有するロボットと、前記ロボットの駆動を制御するロボット制御部と、前記ドアの開閉状態を検知するドアセンサと、前記ストッカの前記工作機械への着脱状態を検知するストッカセンサと、を備え、前記ストッカは、前記工作機械に装着された際に、前記工作機械の外表面と協同して、前記保管スペースを収容する防護空間を画定する、柵または壁である防護部材を備え、前記ロボット制御部は、前記ドアセンサの検知結果および前記ストッカセンサの検知結果に基づいて、前記ロボットの動作制限の有無を決定する、ことを特徴とする。
【0010】
かかる構成とすることで、ロボットを協働ロボットにする必要がなく、安価な構成とすることができる。また、ストッカを工作機械に対して着脱自在とすることで、防護空間が不要な場合、ロボットを加工室の外部で駆動する必要がない場合には、ストッカを取り外すことができ、作業性の悪化を防止できる。
【0011】
この場合、前記開口部は、前記工作機械の前面に設けられており、前記工作機械に装着された際、前記開口部の前方に前記防護空間が画定され、前記防護部材は、少なくとも、前記防護空間の前面および左右両側面を覆ってもよい。
【0012】
かかる構成とすることで、工作機械に設けられている既存の開口部を利用することができ、工作機械の設計変更を少なく抑えることができる。
【0013】
また、前記工作機械は、さらに、少なくとも前記ロボットの駆動指示を受け付ける入力装置を備え、前記入力装置は、前記加工室の外部かつ前記防護空間の外部に設けられていてもよい。
【0014】
かかる構成とすることで、オペレータの安全性を確保した状態で、ロボットの駆動指示を入力できる。
【0017】
また、前記ロボットは、前記加工室内に設置されていてもよい。
【0018】
かかる構成とすることで、ストッカが装着されていない場合でも、工作機械のドアを閉鎖することで、ロボットを駆動することが可能となる。
【0019】
また、前記ロボットは、前記ストッカに設置されていてもよい。
【0020】
かかる構成とすることで、ロボットを搭載していない工作機械に、後付けでロボットを取り付けることができる。
【発明の効果】
【0023】
本明細書に開示の技術によれば、ロボットを協働ロボットにする必要がなく、安価な構成とすることができる。また、ストッカを工作機械に対して着脱自在とすることで、防護空間が不要な場合、ロボットを加工室の外部で駆動する必要がない場合には、ストッカを取り外すことができ、作業性の悪化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】工作機械システムの斜視図である。
図2】前面ドアを開放した状態の工作機械の斜視図である。
図3】前面ドアを閉鎖した状態の工作機械の斜視図である。
図4】ストッカの斜視図である。
図5】安全柵の図示を一部省略したストッカの斜視図である。
図6】工作機械の機能ブロック図である。
図7】ドアセンサおよびストッカセンサの検知結果と、工作機械およびロボットの動作制限の有無と、の関係を示す図である。
図8】他の工作機械システムの斜視図である。
図9図8の工作機械システムの機能ブロック図である。
図10図8の工作機械システムにおける、ドアセンサおよびストッカセンサの検知結果と、工作機械およびロボットの動作制限の有無と、の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、工作機械システム10について図面を参照して説明する。図1は、工作機械システム10の斜視図である。また、図2図3は、工作機械12の斜視図であり、図4図5は、ストッカ16の斜視図である。さらに、図6は、工作機械システム10の機能ブロック図である。なお、図1図4では、ストッカ16の前面に設けられた安全柵58の一部を図示省略している。
【0026】
工作機械システム10は、工作機械12と、ロボット14と、ストッカ16と、を有している。工作機械12は、ワーク100を所要の形状または寸法に加工する機械である。この工作機械12としては、切削加工機(例えば旋盤、フライス盤等)、研削加工機(例えば、研削盤、表面仕上げ盤等)、鍛造加工機、特殊加工機(放電加工機、超音波加工機)等の加工機、および、これら加工機を組み合わせた複合加工機が該当する。本例では、工作機械12をターニングセンタとして説明する。
【0027】
ロボット14は、三軸以上がプログラム可能で、自動制御され、再プログラム可能な多用途マニピュレータのことである。このロボット14は、工作機械12による加工処理の補助や、センシング、部材の搬送などを行う。このロボット14は、人の侵入が禁止された空間内でのみ駆動が許容される。
【0028】
ストッカ16は、工作機械12に保管スペースを提供する構造物であり、工作機械12に着脱自在に装着される。このストッカ16は、後述するように安全柵58を有しており、工作機械12に装着されることで、工作機械12の外部に、人の侵入が禁止された防護空間を形成する。そして、かかる防護空間が形成されることで、ロボット14の可動範囲を、工作機械12の外部まで(防護空間内まで)広げることができる。
【0029】
以下、この工作機械システム10の各部について詳説する。工作機械12は、ワーク100に対して所要の加工を施す加工機構20(図6参照)を有している。加工機構20は、例えば、ワーク100を回転保持するワーク主軸や、旋削工具を保持する刃物台、刃物台を直線移動させる移動機構、切削油を吐出する吐出機構(いずれも図示せず)などを含む。後述する工作機械12のメイン制御部38は、オペレータからの指示(例えば加工プログラム等)に応じて、加工機構20を駆動させ、ワーク100に対する加工を実行させる。
【0030】
ワーク100に対する加工は、加工室22内において実行される。この加工室22の周囲は、カバー23で覆われている。また、カバー23の一部には、開口部が設けられている。図示例では、工作機械12の前面から天面にかけて広がる開口部が、工作機械12の幅方向略中央に設けられている。
【0031】
工作機械12には、この開口部を開閉自在に覆う前面ドア24が設けられている。本例で、前面ドア24は、開口部全体を覆えるように、工作機械12の前面から天面にかけて延びる略L字形状となっている。また、前面ドア24は、幅方向片側にスライドするスライドドアである。ただし、前面ドア24は、開口部を開閉できるのであれば、スライドドアに限らず、ヒンジ軸周りに回転する回転ドアや、一部が折り畳まれる折り戸などでもよい。この前面ドア24を閉鎖することで加工室22が外部から閉鎖され、オペレータの安全性が確保される。この前面ドア24は、オペレータによって手動で開閉される他、メイン制御部38によって自動でも開閉される。
【0032】
工作機械12には、この前面ドア24の開閉状態を検知するドアセンサ28(例えば安全スイッチ)と、前面ドア24の開放を禁止するドアロック26と、が設けられている(図6参照)。ドアセンサ28の検知結果は、後述するメイン制御部38に送られる。
【0033】
工作機械12の前面には、操作パネル30も設けられている。操作パネル30は、オペレータからの操作指示を受け付ける入力装置として機能するもので、例えば、複数のボタンや、キーボード、タッチパネルなどを有している。この操作パネル30は、前面ドア24や、ストッカ16と干渉しない位置に設けられており、前面ドア24を閉鎖し、かつ、ストッカ16を工作機械12に取り付けた状態でも、当該操作パネル30の操作が可能となっている。なお、ここでは、工作機械12に取り付けられた操作パネル30を例示したが、操作パネル30の一部または全部は、工作機械12から分離されていてもよい。例えば、工作機械12と無線通信可能な情報端末(例えばスマートフォン、タブレットなど)を、操作パネル30として使用してもよい。操作パネル30を介して入力されたオペレータの指示は、メイン制御部38に送られる。メイン制御部38およびロボット制御部40は、このオペレータ指示に応じて、加工機構20およびロボット14の駆動を制御する。
【0034】
また、工作機械12の前面下部には、後述するストッカ16が装着される被装着部32が設けられている。被装着部32には、ストッカ16の着脱を検知するストッカセンサ34(例えば安全スイッチ)と、ストッカ16の離脱を禁止するストッカロック36も、設けられている(図6参照)。ストッカセンサ34およびストッカロック36は、互いに別部品でもよいし、同一部位品であってもよい。例えば、ストッカセンサ34およびストッカロック36として、ソレノイド付き安全スイッチを用いてもよい。ストッカセンサ34の検知結果は、メイン制御部38に送られる。
【0035】
加工室22内には、ロボット14が設けられている。ロボット14には、さらに、1以上のエンドエフェクタ42が取り付けられている。エンドエフェクタ42は、所定のタスクを行なえるようにロボット14に取り付けられる装置であって、例えば、ハンド機構や、各種センサ、流体吐出機構等である。
【0036】
本例では、ロボット14は、互いに平行な軸周りに回転する複数の関節を有した多関節ロボットである。この多関節ロボットは、加工室22の壁面に取り付けられている。また、ロボット14は、エンドエフェクタ42として、各種部材を把持可能なハンド機構を有している。このロボット14は、加工室22の内外に跨る可動範囲を有しており、図1図2に示すように、ロボット14の一部を、加工室22の外部に位置させることが可能である。こうしたロボット14(エンドエフェクタ42含む)は、後述するロボット制御部40により駆動制御される。
【0037】
工作機械12は、さらに、メイン制御部38と、ロボット制御部40と、を有する(図6参照)。メイン制御部38およびロボット制御部40は、単一の制御装置で構成されてもよいし、複数の制御装置で構成されてもよい。いずれにしても、メイン制御部38およびロボット制御部40を構成する制御装置は、各種演算を行なうCPUと、各種プログラムやデータを記憶するメモリと、を有している。メイン制御部38は、オペレータからの指示に応じて、加工機構20の駆動を制御する。具体的には、メイン制御部38は、加工プログラムに従ってワーク100を加工するべく、ワーク主軸の回転動作や、刃物台の移動動作、切削油の吐出動作等を制御する。また、メイン制御部38は、ドアセンサ28により前面ドア24の開放が検知された場合、加工機構20を動作制限する。加工機構20を動作制限した場合、加工機構20の自動駆動が禁止され、速度が制限された状態での手動駆動のみが許容される。また、加工機構20が自動駆動している期間中、メイン制御部38は、ドアロック26を駆動して、前面ドア24の開放を禁止する。さらに、メイン制御部38は、必要に応じて、前面ドア24を自動で開閉する。
【0038】
ロボット制御部40は、メイン制御部38からの指示に応じてロボット14の駆動を制御する。また、ロボット制御部40は、メイン制御部38を介して通知されるストッカセンサ34およびドアセンサ28の検知結果に応じてロボット14の動作を制限する。具体的には、ロボット制御部40は、ロボット14が配された空間が外部から隔離されている場合、すなわち、前面ドア24が閉鎖されている場合、あるいは、前面ドア24が開放かつストッカ16が装着されている場合、ロボット14を動作制限することなく、自動駆動する。一方、ロボット14が配された空間が外部から隔離されていない場合、すなわち、前面ドア24が開放かつストッカ16が装着されていない場合、ロボット制御部40は、ロボット14の動作を制限する。ロボット14の動作制限とは、原則として、ロボット14の駆動禁止を意味している。ただし、速度あるいは出力トルクを十分に制限できるのであれば、ロボット14の動作制限中であっても、ロボット14を手動で駆動することを許容してもよい。
【0039】
また、メイン制御部38は、ロボット14を自動駆動させている期間中は、ドアロック26およびストッカロック36を駆動して、現在の空間状態を維持する。すなわち、前面ドア24が閉鎖した状態でロボット14が自動駆動している場合、メイン制御部38は、ドアロック26を有効化して、前面ドア24の開放を禁止する。また、前面ドア24が開放かつストッカ16が装着した状態でロボット14が自動駆動している場合、メイン制御部38は、ストッカロック36を有効化して、ストッカ16の離脱を禁止する。
【0040】
ストッカ16は、上述したとおり、工作機械12に着脱自在で、加工室22の外部に、余剰の保管スペース60を提供する構造物である。このストッカ16は、移動可能な台座50と、当該台座50の上部空間の三方を囲う安全柵58と、を備えている。台座50の上部空間は、各種部材(ワーク100や、工具、交換用チャック、交換用エンドエフェクタなど)が保管される保管スペース60となる。図4図5では、台座50の上面にワーク100が保管されるストッカ16を図示している。台座50の前面には、当該ストッカ16を移動させる際に把持される取っ手52が設けられ、台座50の底面には、当該ストッカ16の移動を補助するキャスター54が設けられている。
【0041】
さらに、台座50には、工作機械12の被装着部32に着脱自在に装着される装着部56が設けられている。装着部56を、工作機械12の被装着部32に装着することで、ストッカ16が工作機械12に対して位置決めされる。ここで、ストッカ16は、工作機械12に装着された際、工作機械12の開口部の前面に位置する。したがって、工作機械12の前面ドア24を開放すると、加工室22と、ストッカ16内の保管スペース60とが、連通することになる。
【0042】
台座50の上部空間である保管スペース60は、その三方が、安全柵58によって囲われている。安全柵58は、保管スペース60の前面および左右側面に設けられている。一方で、保管スペース60の後面および天面には、安全柵58はなく、外部に開口している。安全柵58は、工作機械12の天面とほぼ同じ高さ位置まで延びている。
【0043】
ストッカ16を工作機械12に装着すると、安全柵58の後端は工作機械12の前面(カバー23)に近接し、安全柵58の後端と工作機械12の前面との間の隙間は、人の腕を通さない程度に十分に小さくなる。換言すれば、ストッカ16を工作機械12に装着すると、安全柵58は、工作機械12の外表面と協働して、外部と隔てられた防護空間を形成する。そして、この防護空間内に、ストッカ16の保管スペース60が位置することになる。そして、工作機械12の外部に防護空間が形成されることで、ロボット14の可動範囲を、工作機械12の外部(ストッカ16の保管スペース60)まで広げることができる。なお、本例では、保管スペース60を囲う防護部材として、隙間のある「柵」を用いているが、人の侵入を禁止できるのであれば、「柵」に替えて、隙間のない「壁」を用いてもよい。
【0044】
このように安全柵58を有したストッカ16を設ける理由について説明する。工作機械12では、従来から、さらなる自動化、省人化が求められている。この要望を満たすために、加工室22内にロボット14を設け、当該ロボット14で、各種部材(ワーク100、工具など)を搬送することが一部で提案されている。具体的にでは、ロボット14を用いて加工済みのワーク100あるいは使用済みの工具を加工室22の外部に搬送したり、新たなワーク100あるいは工具を外部から加工室22内に搬送したりすることが提案されている。
【0045】
ここで、ロボット14は、法令や規格で、柵または囲いにより人と物理的に分離されているか、協働ロボットであることが、定められている。協働ロボットとは、人と協働して作業可能なロボット14であり、例えば、速度および人との間隔の監視が可能であったり、力と圧力の制限が行なえたりするロボット14である。
【0046】
そのため、ワーク100や工具を搬送するために、ロボット14を、加工室22の外部まで自動で動かす場合、当該ロボット14の周囲に柵または囲いを設けるか、当該ロボット14を協働ロボットにすることが必要となる。しかし、協働ロボットとするためには、人との距離を検知できるレーザーレンジファインダーや、力を検知できる力センサ等の高価なセンサが必要であった。
【0047】
そこで、本明細書で開示する工作機械システム10では、安全柵58を有するストッカ16を設け、工作機械12の外部に、ロボット14と人が分離された防護空間を形成できるようにしている。かかる構成とすれば、高価な協働ロボットを用いなくても、ロボット14が、加工室22の外部に自動でアクセスできる。結果として、ロボット14を協働ロボットにする必要がなく、ロボット14を安価に構成できる。
【0048】
また、本例では、こうしたストッカ16を、工作機械12に対して着脱自在としているため、必要な場合だけ、工作機械12の外部に防護空間を形成できる。その結果、工作機械12は、ストッカ16を取り付けた場合には、ワーク100等を自動で交換する自動機となり、ストッカ16を取り外した場合には、ワーク100等が手動で交換される汎用機となる。これは、例えば、夜間は無人で量産部品を生産し、日中は、有人で少量部品を作成するなどの使用形態を可能にする。
【0049】
ここで、これまで説明で明らかなとおり、本例では、ストッカ16と加工室22とを、既存の開口部を介して連通させている。その結果、専用の開口部、ドアを別途設ける必要がなく、工作機械システム10のコストを低減できる。また、本例では、ストッカ16を工作機械12に装着した場合において、操作パネル30は、加工室22の外部、かつ、防護空間の外部に位置している。そのため、加工機構20やロボット14が自動駆動されている期間中であっても、オペレータは、安全に、操作パネル30を操作できる。
【0050】
図7は、ドアセンサ28およびストッカセンサ34の検知結果と、加工機構20およびロボット14の動作制限の有無と、の関係を示す図である。図7に示す通り、加工機構20は、ストッカ16の装着状態に関わらず、前面ドア24が開状態であれば、動作制限が生じる。
【0051】
ロボット14は、前面ドア24が閉状態であれば、ストッカ16の着脱状態に関わらず、動作制限なしで駆動する。ただし、当然ながら、この場合、ロボット14の可動範囲は、加工室22内に限定される。また、前面ドア24が開状態かつストッカ16が装着状態の場合も、ロボット14は、動作制限なしで駆動する。また、この場合、ロボット14の可動範囲は、加工室22の外側にあるストッカ16の保管スペース60まで広がる。前面ドア24が開状態かつストッカ16が離脱状態の場合、ロボット14は、動作制限(駆動停止)される。
【0052】
なお、夜間などに、無人で量産部品を加工する場合は、前面ドア24を閉鎖した状態でワーク100加工と、前面ドア24を開放した状態でのワーク100交換と、を交互に繰り返す。このとき、前面ドア24は、メイン制御部38により自動的に開閉される。
【0053】
次に、他の工作機械システム10の一例について図8図10を参照して説明する。図8は、他の工作機械システム10の斜視図であり、図9は、他の工作機械システム10の機能ブロック図である。さらに、図10は、他の工作機械システム10におけるドアセンサ28およびストッカセンサ34の検知結果と、加工機構20およびロボット14の動作制限の有無と、の関係を示す図である。
【0054】
この工作機械システム10は、ロボット14、ロボット制御部40、ストッカセンサ34、ストッカロック36が、工作機械12ではなく、ストッカ16に設けられている。ストッカ16が工作機械12に装着された場合、ロボット制御部40は、工作機械12のメイン制御部38に、有線または無線で通信可能となっている。そして、ロボット制御部40は、メイン制御部38からの指示に応じて、ロボット14を駆動する。また、ロボット制御部40は、ストッカセンサ34での検知結果に応じて、ロボット14の動作制限の有無を決定する。
【0055】
本例では、ロボット14は、加工室22の外部に設けられているため、前面ドア24が閉鎖していても、ストッカ16が工作機械12から離脱している場合、ロボット14を動作制限する。このように、ロボット14をストッカ16に取り付ける構成とすることで、ロボット14を搭載していない工作機械12に、後付けでロボット14を取り付けることができる。なお、この場合、ストッカ16に、ロボット14の操作指示を受け付ける入力部(例えば操作パネル、操作ボタンなど)を設けてもよい。
【0056】
また、別の形態として、ロボット14を工作機械12の前に設置し、そのロボット14をストッカ16の安全柵58で囲うようにしてもよい。すなわち、ロボット14が、ストッカ16および工作機械12の双方と分離した構成としてもよい。
【0057】
いずれにしても、工作機械12に対して着脱自在で、工作機械12に装着された際に、工作機械12の外表面と協同して、保管スペース60を収容する防護空間を画定する、防護部材(柵または壁)を有したストッカ16を備えるのであれば、その他の構成は、適宜、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 工作機械システム、12 工作機械、14 ロボット、16 ストッカ、20 加工機構、22 加工室、23 カバー、24 前面ドア、26 ドアロック、28 ドアセンサ、30 操作パネル、32 被装着部、34 ストッカセンサ、36 ストッカロック、38 メイン制御部、40 ロボット制御部、42 エンドエフェクタ、50 台座、52 取っ手、54 キャスター、56 装着部、58 安全柵、60 保管スペース、100 ワーク。
図1
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図5
図6
図7
図8
図9
図10