(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】蓄電池充電装置
(51)【国際特許分類】
B60L 58/22 20190101AFI20220106BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220106BHJP
H02M 3/28 20060101ALI20220106BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20220106BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20220106BHJP
【FI】
B60L58/22
H02J7/00 P
H02M3/28 M
H02M3/28 P
H01M10/44 Q
H02J7/02 H
(21)【出願番号】P 2018085555
(22)【出願日】2018-04-26
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【氏名又は名称】河合 典子
(74)【代理人】
【識別番号】100146950
【氏名又は名称】南 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】羽田 正二
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-38390(JP,A)
【文献】特開平9-19072(JP,A)
【文献】特開平9-261956(JP,A)
【文献】特開平9-261958(JP,A)
【文献】特開2001-128387(JP,A)
【文献】特開2002-125325(JP,A)
【文献】特開2005-80469(JP,A)
【文献】特開2012-253999(JP,A)
【文献】特開2013-51856(JP,A)
【文献】特開2013-51857(JP,A)
【文献】特表2008-504797(JP,A)
【文献】特表2009-540792(JP,A)
【文献】特表2009-540793(JP,A)
【文献】特表2009-540794(JP,A)
【文献】特表2009-540795(JP,A)
【文献】特表2010-529818(JP,A)
【文献】特表2013-514055(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106655409(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第102008043590(DE,A1)
【文献】仏国特許出願公開第2977083(FR,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0090649(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0118916(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0300342(US,A1)
【文献】国際公開第2009/121575(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 58/22
H01M 10/44
H02J 7/00
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電池モジュールが直列に接続されている蓄電池を充電する蓄電池充電装置であって、
一次コイルと二次コイルと三次コイルとを有するトランスと、アノードが当該二次コイルの一端に接続されたダイオードとを含み、当該ダイオードのカソードと前記二次コイルの他端との間に前記各蓄電池モジュールが接続される複数の充電回路と、
スイッチング素子と、
前記スイッチング素子のオンとオフを制御するPWM信号を出力する駆動回路と、
を備え、
前記各充電回路に含まれるトランスの一次コイルの巻き数が同一であって、当該複数の一次コイルと前記スイッチング素子の電流路とが直列に接続されており、前記スイッチング素子がオンしている間に前記各充電回路に含まれるトランスの一次コイルに同一の電流が流れ、
前記スイッチング素子がオフしたときに、前記各充電回路において、前記トランスの二次コイルから前記ダイオードのカソードと二次コイルの他端との間に接続される蓄電池モジュールに電流が流れ、
前記スイッチング素子がオフしたときに前記各充電回路に含まれるトランスの三次コイルを並列に接続する並列接続回路を、前記各充電回路が備える、
ことを特徴とする蓄電池充電装置。
【請求項2】
前記並列接続回路が、前記各充電回路に含まれるトランスの三次コイルにおいて前記スイッチング素子がオフしたときに負極となる側の一端にドレインが接続されており、ボディダイオードを有するNMOSトランジスタと、当該三次コイルにおいて前記スイッチング素子がオフしたとき正極となる側の他端に一端が接続されており、他端に前記NMOSトランジスタのゲートが接続された抵抗と、当該抵抗の他端にカソードが接続され、前記NMOSトランジスタのソースにアノードが接続されたチェナーダイオードとを有しており、
チェナーダイオードのアノードとNMOSトランジスタのソースとの接続部分において他の充電回路に含まれる並列接続回路と接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の蓄電池充電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池を充電する蓄電池充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電気自動車等に搭載される組電池を充電するための充電装置が記載されている。
特許文献1に記載されている充電装置2を
図4に示す。組電池20は、直列に接続された3個の蓄電池モジュール21を有する。各蓄電池モジュール21は、直列に接続された複数の蓄電池セルを有する。各蓄電池モジュール21に対してそれぞれフライバックトランスT2とダイオードD2とコンデンサC2が設けられている。各フライバックトランスT2の二次コイルはダイオードD2を介して各蓄電池モジュール21の正極と負極に接続されている。なお、コンデンサC2が蓄電池モジュール21と並列に接続されているのは、フライバックトランスT2の二次コイルから出力される電流を平滑化するためであり、コンデンサC2は必ずしも必要ではない。
【0003】
各フライバックトランスT2の一次コイルは、スイッチング素子(NMOSトランジスタ)22の一端(ドレイン)と電流の入力端子の一方IN1とに並列に接続されている。スイッチング素子22の他端(ソース)は電流の入力端子の他方IN2に接続されている。入力端子IN1と入力端子IN2には、直流電源が接続される。
駆動回路23はスイッチング素子22のオンとオフを制御するPWM(Pulse Width Modulatin)信号を出力する。スイッチング素子22の制御入力(ソース)には、駆動回路23によって出力されるPWM信号が入力される。
【0004】
スイッチング素子22のオン時に各フライバックトランスT2の一次コイルに励磁電流i1~i3が流れ、各フライバックトランスT2のコアにエネルギーが蓄積される。
そして、スイッチング素子22がオフになると、二次コイルから電流が流れて各蓄電池モジュール21が充電される。このとき、複数の蓄電池モジュール21の電圧に差がある場合、電圧の高い蓄電池モジュール21を充電するフライバックトランスT2の一次コイルから電圧の低い蓄電池モジュール21を充電するフライバックトランスT2の一次コイルに励磁電流が回り込む。電圧の低い蓄電池モジュール21を充電するフライバックトランスT2のコアに蓄えられたエネルギーとともに回り込んだ励磁電流も電圧の低い蓄電池モジュール21の充電に使用される。このため、電圧が低い蓄電池モジュール21の充電が促進される。やがては、全ての蓄電池モジュール21は同一の電圧まで充電される。この励磁電流の回り込みは、主に各蓄電池モジュール21の電圧によって生じるので、各フライバックトランス21の特性が不揃いであっても同様の効果を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の充電装置2では、各フライバックトランス21の特性が不揃いである場合、スイッチング素子22のオン時に各フライバックトランスT2の一次コイルに流れる励磁電流i1~i3の大きさが異なる。このため、各フライバックトランス21のコアに蓄積されるエネルギーが異なる。その結果、全ての蓄電池モジュール21の電圧が同一である場合でも、スイッチング素子22がオフしたときに各フライバックトランス21の間で励磁電流の回り込みが生じる。フライバックトランス21のコアに蓄積されたエネルギーが励磁電流の形で別のフライバックトランス21のコアに移動すると、エネルギーの損失を生じる。
【0007】
本発明の目的は、複数の蓄電池モジュールを同一の電圧に充電することができ、エネルギーの損失が少ない蓄電池充電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の蓄電池充電装置は、
複数の蓄電池モジュールが直列に接続されている蓄電池を充電する蓄電池充電装置であって、
一次コイルと二次コイルと三次コイルとを有するトランスと、アノードが当該二次コイルの一端に接続されたダイオードとを含み、当該ダイオードのカソードと前記二次コイルの他端との間に前記各蓄電池モジュールが接続される複数の充電回路と、
スイッチング素子と、
前記スイッチング素子のオンとオフを制御するPWM信号を出力する駆動回路と、
を備え、
前記各充電回路に含まれるトランスの一次コイルの巻き数が同一であって、当該複数の一次コイルと前記スイッチング素子の電流路とが直列に接続されており、前記スイッチング素子がオンしている間に前記各充電回路に含まれるトランスの一次コイルに同一の電流が流れ、
前記各充電回路において、前記スイッチング素子がオフしたときに前記トランスの二次コイルから前記ダイオードのカソードと二次コイルの他端との間に接続される蓄電池モジュールに電流が流れ、
前記スイッチング素子がオフしたときに前記各充電回路に含まれるトランスの三次コイルを並列に接続する並列接続回路を、前記各充電回路が備える、
ことを特徴とする。
【0009】
好ましくは、本発明の蓄電池充電装置は、
前記並列接続回路が、前記各充電回路に含まれるトランスの三次コイルにおいて前記スイッチング素子がオフしたときに負極となる側の一端にドレインが接続されており、ボディダイオードを有するNMOSトランジスタと、当該三次コイルにおいて前記スイッチング素子がオフしたとき正極となる側の他端に一端が接続されており、他端に前記NMOSトランジスタのゲートが接続された抵抗と、当該抵抗の他端にカソードが接続され、前記NMOSトランジスタのソースにアノードが接続されたチェナーダイオードとを有しており、
チェナーダイオードのアノードとNMOSトランジスタのソースとの接続部分において他の充電回路に含まれる並列接続回路と接続されている、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の蓄電池モジュールを充電するときにエネルギーの損失を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る蓄電池充電装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図1の蓄電池充電装置においてスイッチング素子がオンである間に流れる励磁電流の一例を示す図である。
【
図3】
図1の蓄電池充電装置においてスイッチング素子がオフになったときに流れる電流の一例を示す図である。
【
図4】特許文献1に記載されている充電装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る蓄電池充電装置について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施形態を説明する全図において、共通の構成要素には同一の符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る蓄電池充電装置1の構成の一例を示す。
蓄電池10は、直列に接続された3個の蓄電池モジュール11を有する。各蓄電池モジュール11は、直列に接続された複数の蓄電池セルを有する。
蓄電池充電装置1では、各蓄電池モジュール11に対してそれぞれトランスT1とダイオードD1とコンデンサC1と並列接続回路14とを有する充電回路が設けられている。
トランスT1は、一次コイルと二次コイルと三次コイルとを有する。ダイオードD1は、アノードがトランスT1の二次コイルの一端に接続され、カソードが蓄電池モジュール11の正極に接続されている。トランスT1の二次コイルの他端は、蓄電池モジュール11の負極に接続されている。なお、コンデンサC1が蓄電池モジュール11と並列に接続されているのは、トランスT1の二次コイルから出力される電流を平滑化するためであり、コンデンサC1は必ずしも必要ではない。
また、蓄電池充電装置1はスイッチング素子12と、駆動回路13とを有する。駆動回路13は、スイッチング素子12のオンとオフを制御するPWM信号を出力する。スイッチング素子12は、例えば、NMOSトランジスタである。スイッチング素子12の制御入力(ソース)には、駆動回路13によって出力されるPWM信号が入力される。
【0014】
各充電回路に含まれるトランスT1の一次コイルの巻き数は同一である。また、蓄電池充電装置1に含まれる複数のトランスT1の一次コイルとスイッチング素子12の電流路(ドレイン・ソース間)とは直列に接続されている。複数のトランスT1の一次コイルとスイッチング素子12の電流路とが直列に接続された回路の両端は、電流の入力端子IN1と入力端子IN2に接続される。入力端子IN1と入力端子IN2には、直流電源が接続される。
【0015】
図2に示すように、スイッチング素子12がオンしている間に各充電回路に含まれるトランスT1の一次コイルには全て同一の電流iが流れる。従って、スイッチング素子12がオンしている間にそれらの一次コイルに生じる起磁力(電流i×一次コイルの巻き数)は同一となり、複数のトランスT1のコアには同一のエネルギーが蓄えられる。なお、それらの一次コイルのインダクタンスが異なっている場合であっても、複数のトランスT1のコアには同一のエネルギーが蓄えられる。
【0016】
図3に示すように、スイッチング素子12がオフしたときに、各充電回路において、トランスT1の二次コイルからダイオードD1のカソードと二次コイルの他端との間に接続された蓄電池モジュール11に電流icが流れる。
【0017】
スイッチング素子12がオフしたときに、並列接続回路14は各充電回路に含まれるトランスT1の三次コイルを並列に接続する。
並列接続回路14は、NMOSトランジスタ15と、抵抗R1と、チェナーダイオードZD1とを有する。NMOSトランジスタ15は、ボディダイオードを有する。NMOSトランジスタ15は、各充電回路に含まれるトランスT1の三次コイルにおいてスイッチング素子12がオフしたときに負極となる側の一端にドレインが接続されている。抵抗R1は、各充電回路に含まれるトランスT1の三次コイルにおいてスイッチング素子12がオフしたとき正極となる側の他端に一端が接続されており、他端にNMOSトランジスタ15のゲートが接続されている。チェナーダイオードZD1は、抵抗R1の他端にカソードが接続され、前記NMOSトランジスタのソースにアノードが接続されている。
並列接続回路14は、チェナーダイオードZD1のアノードとNMOSトランジスタ15のソースとの接続部分において他の充電回路に含まれる並列接続回路14と接続されている。
【0018】
スイッチング素子12がオンしている間、各NMOSトランジスタ15はオフであるため、各充電回路に含まれるトランスT1の三次コイルはお互いに分離されている。
スイッチング素子12がオフすると、三次コイルに逆起電力が生じ、各NMOSトランジスタ15のドレインの電位が負となる。このとき、各NMOSトランジスタ15のボディダイオードを経由して各NMOSトランジスタ15のソースも負となる。一方、各NMOSトランジスタ15のゲートには、抵抗R1を介して正の電圧が印加される。このため、NMOSトランジスタ15は、オンとなり、双方向に導通する。従って、各充電回路に含まれるトランスT1の三次コイルは全て並列に結合された状態となる。
なお、抵抗R1の抵抗値は、チェナーダイオードZD1を通って電流ie2が流れない程度に十分に大きい。
【0019】
例えば、
図3に示すように、電圧の低い蓄電池モジュール11(
図3における上側の蓄電池モジュール11)と電圧の高い蓄電池モジュール11(
図3における真ん中の蓄電池モジュール11)がある場合、スイッチング素子12がオフしたとき、電圧の高い真ん中の蓄電池モジュール11を充電するトランスT1の三次コイルから電圧の低い上側の蓄電池モジュール11を充電するトランスT1の三次コイルに励磁電流ie1が回り込む。電圧の低い上側の蓄電池モジュール11では、その蓄電池モジュール11を充電するトランスT1のコアに蓄えられたエネルギーとともに回り込んだ励磁電流ie1も充電に使用される。このため、電圧が低い上側の蓄電池モジュール11には大きな充電電流icが流れ、その充電が促進される。やがては、全ての蓄電池モジュール11は同じ電圧まで充電される。
【0020】
なお、蓄電池10は、電気自動車等に搭載される組電池であってもよいし、蓄電池10の両端が外部の組電池に接続され、それを蓄電池10により充電する構成であってもよい。
【0021】
以上説明したように、スイッチング素子12がオンしている間に複数のトランスT1のコアには同一のエネルギーが蓄えられる。このため、本発明によれば、複数の蓄電池モジュールを充電するときにエネルギーの損失を減少させることができる。
【0022】
以上、本発明の実施形態について説明したが、設計または製造上の都合やその他の要因によって必要となる様々な修正や組み合わせは、請求項に記載されている発明や発明の実施形態に記載されている具体例に対応する発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0023】
1…蓄電池充電装置、10…蓄電池、11…蓄電池モジュール、12…スイッチン素子、13…駆動回路、14…並列接続回路、15…NMOSトランジスタ、C1…コンデンサ、D1…ダイオード、T1…トランス、R1…抵抗、チェナーダイオード…ZD1