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  • 特許-柱梁架構の補強構造 図1
  • 特許-柱梁架構の補強構造 図2
  • 特許-柱梁架構の補強構造 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】柱梁架構の補強構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20220106BHJP
   E04B 1/24 20060101ALI20220106BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
E04B1/58 B
E04B1/24 F
E04H9/02 311
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018208355
(22)【出願日】2018-11-05
(65)【公開番号】P2020076208
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 朋典
(72)【発明者】
【氏名】山下 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】中平 和人
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼原 真理子
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-102498(JP,A)
【文献】特開昭58-138872(JP,A)
【文献】特開2000-073604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00 - 1/61
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左柱の上部が、左接合部を介して上部梁に接合され、右柱の上部が、右接合部を介して前記上部梁に接合される柱梁架構において、前記左接合部に接合の第1左ブレースと前記上部梁に接合の第2左ブレースが、互いに端部接合された左端部接合部を有するV字状の左ブレース体を構成し、その左端部接合部に接合の左連結ブレースが、前記左柱の下端部に接合されるとともに、前記右接合部に接合の第1右ブレースと前記上部梁に接合の第2右ブレースが、互いに端部接合された右端部接合部を有するV字状の右ブレース体を構成し、その右端部接合部に接合の右連結ブレースが、前記右柱の下端部に接合される柱梁架構の補強構造であって、
前記左連結ブレースと右連結ブレースが、それぞれ座屈補剛ブレースで構成される柱梁架構の補強構造。
【請求項2】
前記左右の連結ブレースを構成する座屈補剛ブレースが、芯材としてのH形鋼とそのH形鋼を収納保持する補剛用の鋼管で構成される請求項1に記載の柱梁架構の補強構造。
【請求項3】
前記左端部接合部と右端部接合部とに亘って、繋ぎ材が接合される請求項1または2に記載の柱梁架構の補強構造。
【請求項4】
前記左端部接合部に接合の左補助ブレースと前記右端部接合部に接合の右補助ブレースが、それぞれ前記柱梁架構の構面外の同じ方向に向けて斜め上方に延出されて建物の躯体に接合される請求項1~3のいずれか1項に記載の柱梁架構の補強構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左柱の上部が、左接合部を介して上部梁に接合され、右柱の上部が、右接合部を介して前記上部梁に接合される柱梁架構において、前記左接合部に接合の第1左ブレースと前記上部梁に接合の第2左ブレースが、互いに端部接合された左端部接合部を有するV字状の左ブレース体を構成し、その左端部接合部に接合の左連結ブレースが、前記左柱の下端部に接合されるとともに、前記右接合部に接合の第1右ブレースと前記上部梁に接合の第2右ブレースが、互いに端部接合された右端部接合部を有するV字状の右ブレース体を構成し、その右端部接合部に接合の右連結ブレースが、前記右柱の下端部に接合される柱梁架構の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
このような構成からなる柱梁架構の補強構造は、柱梁架構の中央部に大きなスペースを確保することが可能となる。したがって、例えば、そのスペースを出入口に使用することができ、大きな倉庫などに適用する場合には、大型車両の出入口として使用することも可能であり、従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3197734号公報(特に、図7参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記公報に開示の従来技術では、左連結ブレースと右連結ブレースが、それぞれ左右のブレース体を構成するブレースと同じ材料、具体的には、同じ丸鋼で構成されているので、強度的に問題があり、この点に改良の余地がある。
すなわち、上述した柱梁架構の補強構造では、例えば、地震によって上部梁が左右に揺れると、上部梁の高さが低くなり、左右のブレース体や連結ブレースに大きな圧縮力が作用することになる。その際、左右のブレース体は、上部梁と伴に三角形に構成されるので比較的丈夫であり、その結果、左右の連結ブレースに大きな軸力が集中的に作用して座屈する可能性があり、この点に改良の余地がある。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に着目したもので、その目的は、たとえ地震によって左右の連結ブレースに大きな軸力が集中的に作用しても、左右の連結ブレースの座屈を回避することができ、補強構造全体としての強度向上も図り得る柱梁架構の補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、左柱の上部が、左接合部を介して上部梁に接合され、右柱の上部が、右接合部を介して前記上部梁に接合される柱梁架構において、前記左接合部に接合の第1左ブレースと前記上部梁に接合の第2左ブレースが、互いに端部接合された左端部接合部を有するV字状の左ブレース体を構成し、その左端部接合部に接合の左連結ブレースが、前記左柱の下端部に接合されるとともに、前記右接合部に接合の第1右ブレースと前記上部梁に接合の第2右ブレースが、互いに端部接合された右端部接合部を有するV字状の右ブレース体を構成し、その右端部接合部に接合の右連結ブレースが、前記右柱の下端部に接合される柱梁架構の補強構造であって、前記左連結ブレースと右連結ブレースが、それぞれ座屈補剛ブレースで構成される点にある。
【0007】
本構成によれば、従来と同様に、柱梁架構の中央部に大きなスペースを確保することができ、例えば、そのスペースを出入口として有効に使用することが可能となる。
それに加えて、左連結ブレースと右連結ブレースが、それぞれ座屈補剛ブレースで構成されるので、例えば、地震によって上部梁が左右に揺れて左右の連結ブレースに大きな軸力が集中的に作用しても、左右の連結ブレースが座屈することはなく、補強構造全体としての強度も大幅に向上する。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、前記左右の連結ブレースを構成する座屈補剛ブレースが、芯材としてのH形鋼とそのH形鋼を収納保持する補剛用の鋼管で構成される点にある。
【0009】
本構成によれば、左右の連結ブレースを構成する座屈補剛ブレースが、H形鋼と補剛用の鋼管で構成されるので、どちらの材料も比較的入手し易く、かつ、座屈補剛ブレースの作製も比較的容易となる。
【0010】
本発明の第3特徴構成は、前記左端部接合部と右端部接合部とに亘って、繋ぎ材が接合される点にある。
【0011】
本構成によれば、繋ぎ材が、左ブレース体の左端部接合部と右ブレース体の右端部接合部とに亘って接合されるので、繋ぎ材によって左端部接合部と右端部接合部が強化され、補強構造の更なる強化が可能となり、更に、その繋ぎ材をシャッターなどの扉を設置する際の下地材として使用することも可能となる。
【0012】
本発明の第4特徴構成は、前記左端部接合部に接合の左補助ブレースと前記右端部接合部に接合の右補助ブレースが、それぞれ前記柱梁架構の構面外の同じ方向に向けて斜め上方に延出されて建物の躯体に接合される点にある。
【0013】
本構成によれば、左端部接合部に接合の左補助ブレースと右端部接合部に接合の右補助ブレースが、それぞれ柱梁架構の構面外の同じ方向に向けて斜め上方に延出されて建物の躯体に接合されるので、これら左右の補助ブレースによって左端部接合部と右端部接合部の構面外方向への変形が抑制され、その結果、左端部接合部と右端部接合部の更なる強化が可能となり、補強構造全体が更に一層強化される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】柱梁架構の補強構造を示す正面図
図2】柱梁架構の補強構造を示す側面図
図3】左右連結ブレースの断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による柱梁架構の補強構造の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明の柱梁架構の補強構造は、図1に示すように、正面視において、角形鋼管からなる左柱1と右柱2が、図外の建物の床面FLより下方において支持地盤Gに設置支持され、H形鋼からなる上部梁3により互いに接合されて、これら左右の柱1、2と上部梁3で構成される門型の柱梁架構4を備えている。言い換えると、門型の柱梁架構4は、左柱1の上部が、左接合部5を介して上部梁3に接合され、右柱2の上部が、右接合部6を介して上部梁3に接合されて構成される。
この柱梁架構4において、左接合部5と右接合部6における角形鋼管とH形鋼との接合は、従来から知られているように、ダイアフラムを使用した溶接による剛接合で、それによって、ラーメン構造の門型の柱梁架構4が構成される。
【0016】
柱梁架構4の左接合部5には、複数枚の鋼板で構成される第1左接合部材7を介してH形鋼からなる第1左ブレース8が溶接により剛接合され、上部梁3には、同じく第2左接合部材9を介して、例えば、第1左ブレース8のH形鋼よりも断面積や断面係数の大きなH形鋼からなる第2左ブレース10が溶接により剛接合される。第1左ブレース8と第2左ブレース10は、その端部どうしが左端部接合部11において互いに溶接により剛接合され、その結果、左端部接合部11を有するV字状の左ブレース体12を構成する。
同様に、柱梁架構4の右接合部6には、第1右接合部材13を介してH形鋼からなる第1右ブレース14が溶接により剛接合され、上部梁3には、第2左接合部材9に隣接する第2右接合部材15を介して、第1右ブレース14のH形鋼よりも断面積や断面係数の大きなH形鋼からなる第2右ブレース16が溶接により剛接合され、第1右ブレース14と第2右ブレース16の端部が互いに溶接により剛接合されて、右端部接合部17を有するV字状の右ブレース体18を構成する。
【0017】
左ブレース体12の左端部接合部11には、左連結ブレース19が接合され、その左連結ブレース19の下端部が、斜め下方に延出されて、左下接合部材20を介して左柱1の下端部に接合される。同様に、右ブレース体18の右端部接合部17には、右連結ブレース21が接合され、その右連結ブレース21の下端部が、斜め下方に延出されて、右下接合部材22を介して右柱2の下端部に接合される。
左連結ブレース19と右連結ブレース21は、図3に示すように、それぞれ芯材としてのH形鋼23とそのH形鋼23を収納保持する補剛用の角形の鋼管24で構成される座屈補剛ブレースにより構成され、H形鋼23としては、例えば、第2左ブレース10や第2右ブレース16よりも断面積や断面係数の小さなH形鋼が使用される。そのH形鋼23と鋼管24との間には、図示はしないが、鋼管24内におけるH形鋼23の不要な動きを規制する複数のリブが介在され、各連結ブレースを構成するH形鋼23が、左端部接合部11、左下接合部材20、右端部接合部17、および、右下接合部材22に対してそれぞれ溶接により剛接合される。
【0018】
左ブレース体12の左端部接合部11と右ブレース体18の右端部接合部17とに亘っては、図1に示すように、例えば、第1左ブレース8や第1右ブレース14のH形鋼よりも断面積や断面係数の小さなH形鋼からなる繋ぎ材25が溶接により剛接合され、仮想線で示すように、シャッターなどの扉を設置する際には、その繋ぎ材25が扉の下地材として使用される
更に、左ブレース体12の左端部接合部11には、図2に示すように、H形鋼からなる左補助ブレース26が溶接により剛接合され、同様に、右ブレース体18の右端部接合部17には、H形鋼からなる右補助ブレース27が溶接により剛接合される。
これら左右の補助ブレース26、27は、それぞれ柱梁架構4の構面外の同じ方向に向けて、かつ、互いに平行に斜め上方に延出されて、それぞれ建物の小梁や大梁などの各種の躯体28に溶接により剛接合される。
なお、左右の補助ブレース26、27は、ブレースの接合に適した躯体28にそれぞれ別々に剛接合するものであるから、必ずしも互いに平行に配置できるとは限らず、場合によっては、非平行状態に延出して接合することもある。そして、左右の補助ブレース26、27を柱梁架構4の構面外の同じ方向に向けて延出した上で、更に別の補助ブレースを構面外の別の方向に向けて延出して接合することも可能である。
【0019】
〔別実施形態〕
(1)先の実施形態では、左柱1と右柱2が角形鋼管により構成された例を示したが、これら両柱1、2を丸形鋼管や各種形状の形鋼で構成することもできる。
同様に、上部梁3、左ブレース8、10、右ブレース14、16、繋ぎ材25などがH形鋼により構成された例を示したが、これらをH形以外の各種形状の形鋼で構成することも、また、各種形状の鋼管で構成することもできる。
【0020】
(2)先の実施形態では、左右の連結ブレース19、21がH形鋼23と鋼管24からなる座屈補剛ブレースで構成された例を示したが、左右の連結ブレース19、21を二重鋼管式の座屈補剛ブレースで構成することもできる。
また、繋ぎ材25や左右の補助ブレース26、27は、絶対に必要なものではなく、繋ぎ材25や左右の補助ブレース26、27を省略して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0021】
1 左柱
2 右柱
3 上部梁
4 柱梁架構
5 左接合部
6 右接合部
8 第1左ブレース
10 第2左ブレース
11 左端部接合部
12 左ブレース体
14 第1右ブレース
16 第2右ブレース
17 右端部接合部
18 右ブレース体
19 左連結ブレース
21 右連結ブレース
23 H形鋼
24 鋼管
25 繋ぎ材
26 左補助ブレース
27 右補助ブレース
28 躯体

図1
図2
図3