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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】圧延接合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/04 20060101AFI20220106BHJP
   B32B 15/01 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B23K20/04 D
B23K20/04 C
B23K20/04 E
B32B15/01 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018215815
(22)【出願日】2018-11-16
(62)【分割の表示】P 2017246516の分割
【原出願日】2017-12-22
(65)【公開番号】P2019038038
(43)【公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-09-23
(31)【優先権主張番号】P 2017116161
(32)【優先日】2017-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390003193
【氏名又は名称】東洋鋼鈑株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】特許業務法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 裕介
(72)【発明者】
【氏名】黒川 哲平
(72)【発明者】
【氏名】神代 貴史
(72)【発明者】
【氏名】貞木 功太
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3092598(JP,U)
【文献】特開2014-223657(JP,A)
【文献】特開2006-266728(JP,A)
【文献】特表2011-521103(JP,A)
【文献】特開2004-306098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/04
B32B 15/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属層と第2金属層とが圧延接合された後に、少なくとも、複数のロールの間を通板させて所望のコイル径又は芯に巻き替える巻き替え工程、又は、複数のロールの間を通板させて切断する切断工程、のいずれかを有する通板工程を経た後の圧延接合体であって、
前記第1金属層の表面における算術平均うねり(Wa1)が0.01μm~0.96μm、最大高さうねり(Wz1)が0.2μm~5.0μmであり、
前記第1金属層および第2金属層がそれぞれ、Fe、Ti、Ni、Al、Mg、Cu又はこれらのいずれかを基とする合金からなり(ただし前記第1金属層および第2金属層が同一金属の場合を除く)、
前記算術平均うねり(Wa1)及び最大高さうねり(Wz1)は、周期が2.5mm未満の波長成分をカットオフしたうねり曲線に基づいて得られたものである、ことを特徴とする圧延接合体。
【請求項2】
第1金属層と第2金属層とが圧延接合された後に、少なくとも、複数のロールの間を通板させて所望のコイル径又は芯に巻き替える巻き替え工程、又は、複数のロールの間を通板させて切断する切断工程、のいずれかを有する通板工程を経た後の圧延接合体であって、
前記第1金属層の表面を、算術平均粗さ(Ra1)が1nm~30nmまで鏡面研磨した時の、算術平均うねり(Wa1)が0.01μm~0.96μmであり、最大高さうねり(Wz1)が0.2μm~5.0μmであり、
前記第1金属層および第2金属層がそれぞれ、Fe、Ti、Ni、Al、Mg、Cu又はこれらのいずれかを基とする合金からなり(ただし前記第1金属層および第2金属層が同一金属の場合を除く)、
前記算術平均うねり(Wa1)及び最大高さうねり(Wz1)は、周期が2.5mm未満の波長成分をカットオフしたうねり曲線に基づいて得られたものである、ことを特徴とする圧延接合体。
【請求項3】
第1金属層、第2金属層、及び前記第1金属層と第2金属層の間の中間金属層、とが圧延接合された後に、少なくとも、複数のロールの間を通板させて所望のコイル径又は芯に巻き替える巻き替え工程、又は、複数のロールの間を通板させて切断する切断工程、のいずれかを有する通板工程を経た後の圧延接合体であって、
前記第1金属層の表面における算術平均うねり(Wa1)が0.01μm~0.96μm、最大高さうねり(Wz1)が0.2μm~5.0μmであり、
前記算術平均うねり(Wa1)及び最大高さうねり(Wz1)は、周期が2.5mm未満の波長成分をカットオフしたうねり曲線に基づいて得られたものであり、
第1金属層および第2金属層がそれぞれ、Fe、Ti、Ni、Al、Mg、Cu又はこれらのいずれかを基とする合金からなり、
前記中間金属層は、Fe、Ti、Ni、Al、Mg、Cu又はこれらのいずれかを基とする合金からなる(ただし前記中間層が前記第1金属層又は第2金属層と同一金属の場合を除く)、
ことを特徴とする圧延接合体。
【請求項4】
前記第2金属層の表面における算術平均うねり(Wa2)が0.01μm~1.0μm、最大高さうねり(Wz2)が0.2μm~6.0μmである請求項1~3のいずれか一項に記載の圧延接合体。
【請求項5】
前記第1金属層の表面における算術平均うねり(Wa1)は、前記第2金属層の表面における算術平均うねり(Wa2)よりも小さい請求項1~4のいずれか一項に記載の圧延接合体。
【請求項6】
前記第1金属層の表面における最大高さうねり(Wz1)は、前記第2金属層の表面における最大高さうねり(Wz2)よりも小さい請求項1~5のいずれか一項に記載の圧延接合体。
【請求項7】
前記第1金属層が電子機器用筐体の外面側に用いられ、
前記第2金属層が前記電子機器用筐体の内面側に用いられる請求項1~6のいずれか一項に記載の圧延接合体。
【請求項8】
前記第1金属層が、SUS、又はTi、Ni若しくはこれらのいずれかを基とする合金からなる請求項1~7のいずれか一項に記載の圧延接合体。
【請求項9】
請求項1~8いずれか一項に記載の圧延接合体からなり、
前記第1金属層を外面側、
前記第2金属層を内面側とした電子機器用筐体。
【請求項10】
外面側表面の算術平均粗さ(Ra)が30nm以下である請求項9に記載の電子機器用筐体。
【請求項11】
第1金属層と、第2金属層とを圧延線荷重1.9tf/cm~4.0tf/cmの加圧力で接合した後に200℃~800℃に加熱する圧延接合工程と、
前記圧延接合工程の後、前記圧延接合工程において生じた異種金属間の違いに基づく反りを矯正用ロールを用いて形状修正する工程と、
前記形状修正後の通板工程として、少なくとも、複数のロールの間を通板させて所望のコイル径又は芯に巻き替える巻き替え工程、又は、複数のロールの間を通板させて切断する切断工程、のいずれかを有する通板工程を含み、
前記圧延接合工程において、前記第1金属層および第2金属層がそれぞれ、Fe、Ti、Ni、Al、Mg、Cu又はこれらのいずれかを基とする合金からなり(ただし前記第1金属層および第2金属層が同一金属の場合を除く)、
前記通板工程において、少なくとも工程終端側のロールの外径を200mm以上とすることを特徴とする、
前記第1金属層の表面における算術平均うねり(Wa1)が0.01μm~0.96μmで最大高さうねり(Wz1)が0.2μm~5.0μmである圧延接合体の製造方法。
【請求項12】
第1金属層と、第2金属層とを圧延線荷重1.9tf/cm~4.0tf/cmの加圧力で接合した後に200℃~800℃に加熱する圧延接合工程と、
前記圧延接合工程の後、前記圧延接合工程において生じた異種金属間の違いに基づく反りを矯正用ロールを用いて形状修正する工程と、
前記形状修正後の通板工程として、少なくとも、複数のロールの間を通板させて所望のコイル径又は芯に巻き替える巻き替え工程、又は、複数のロールの間を通板させて切断する切断工程、のいずれかを有する通板工程を含み、
前記圧延接合工程において、前記第1金属層および第2金属層がそれぞれ、Fe、Ti、Ni、Al、Mg、Cu又はこれらのいずれかを基とする合金からなり(ただし前記第1金属層および第2金属層が同一金属の場合を除く)、
前記通板工程において、外径200mm以上のロールを用いると共に、前記第2金属層の表面を最初にロールに接触させることを特徴とする、
前記第1金属層の表面における算術平均うねり(Wa1)が0.01μm~0.96μmで最大高さうねり(Wz1)が0.2μm~5.0μmである圧延接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延接合体に関し、より具体的には2枚の金属板が圧延によって接合された圧延接合体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の鋼材に代表される金属材料は、例えばスマートフォンなどのモバイル電子機器用のプレス成形部品として好適に用いられている。かような金属材料としては、単一の金属からなる金属材料に加えて、2種類以上の金属板や金属箔(板か箔かは厚みの違いによるものであることから、以下ではこれらをまとめて「板」として扱うものとする)を圧延によって積層した圧延接合体(金属積層材またはクラッド材とも適宜称する)が知られている。
これら金属材料がモバイル電子機器用途として用いられる場合、優れた外観性や光輝性が要求される。
【0003】
例えば特許文献1には、耐傷性があり、光沢面及び装飾性を兼ね備えた電子機器ケースを得るために、所定ピッチの周期的なうねりを有する鏡面を持つセラミックスが開示されている。
【0004】
一方で、例えば、モバイル電子機器用のプレス成形部品として、最も外側の筐体等に用いられる場合、特許文献1に開示されるセラミックスでは放熱性や光輝性に劣り、また金属光沢も得ることができないという問題がある。
これに対して例えば特許文献2には、放熱性に優れ、且つ良好な成形加工性等を有する金属積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4684099号公報
【文献】国際公開公報WO2017/057665
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、複数の金属板が圧延によって接合された圧延接合体は、以下の工程を経て製造される。まず、金属板を、例えば特開平1-224184号公報等に示される様な製造装置を使用して接合し、圧延接合体を製造する。
次に、圧延接合体の接合面の密着性を向上させるために、国際公開公報WO2017/057665の段落[0049]~[0051]等に開示されるような方法で、熱処理が行われる。
【0007】
続いて、上記熱処理までの工程によって生じた圧延接合体の反り等を除去するために、圧延接合体に張力を与えつつ、1又は複数の矯正用ロールに圧延接合体を通す。すなわち、テンションレベラーに圧延接合体を通板する。なお、以下この工程を「形状修正」とも称する。
【0008】
この形状修正の工程を経ると、圧延接合体からは大きな反りは消失する。
その後、形状修正後から出荷までの後工程において、巻き替え等の必要に応じて圧延接合体をロールに沿わせる「通板工程」を経ることで、圧延接合体の表面に上記反りよりは小さな波うち(以下、「うねり」とも称する。)が発生するという問題があった。
【0009】
このような圧延接合体の表面の「うねり」の発生原因は未だ完全に解明されていないが、以下のような要因によると推測されている。
【0010】
すなわち、上記の通板工程において、圧延接合体の進行方向及びその逆方向に与える張力が不足している場合、圧延接合体をロールへ通す際に、圧延接合体がロールに完全に沿わず、ロールから離れたり接触したりすることを繰り返すことがある。その結果、圧延接合体の表面には、ロールに接触した際にできる跡(「叩き模様」とも称する。)が残り、これがうねりの原因になると考えられている。
【0011】
また、上記の通板工程において複数のロールを使用する場合に、ロール間のピッチが長すぎると、上記と同様に、圧延接合体がロールに完全に沿わず、その結果、圧延接合体の表面に上記の「叩き模様」が発生するとも考えられている。
【0012】
昨今、モバイル電子機器用の筐体は、優れた外観性能が求められている。圧延接合体をモバイル電子機器用の筐体にプレス成形した際、上記した「うねり」が圧延接合体の表面に存在すると、筐体の外観を、優れた鏡面に仕上げることが困難になる。すなわち、写像性に優れた外観とすることが困難となる。
【0013】
また、もし圧延接合体の表面に「うねり」が発生したとしても、その製造の最終段階において、表面を削ったり研磨したりすることにより、「うねり」を低減できる可能性はある。しかし、研磨量が増加すると生産性の低下やコストの増加というデメリットが出てくる。このような状況下において、簡易に、且つ即時に、圧延接合体の表面に生じる「うねり」の問題を解決することが将来的に求められると想定できる。
【0014】
一方で、従来においては、かような圧延接合体の「うねり」についての課題は掲げられていなかった。
本発明者らはこれらの課題に着目し、より外観性能に優れ、また優れた鏡面(写像性)を有する成形品の製造に寄与するために、本発明を成し遂げた。
【0015】
すなわち、本発明は、上記したような課題を一例として解決することを鑑みてなされ、複数の金属板が圧延によって接合された圧延接合体を製造する際に、表面の「うねり」を抑制可能な圧延接合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明における圧延接合体は、(1)第1金属層と第2金属層とが圧延接合された後に、少なくとも、複数のロールの間を通板させて所望のコイル径又は芯に巻き替える巻き替え工程、又は、複数のロールの間を通板させて切断する切断工程、のいずれかを有する通板工程を経た後の圧延接合体であって、前記第1金属層の表面における算術平均うねり(Wa1)が0.01μm~0.96μm、最大高さうねり(Wz1)が0.2μm~5.0μmであり、前記第1金属層および第2金属層がそれぞれ、Fe、Ti、Ni、Al、Mg、Cu又はこれらのいずれかを基とする合金からなり(ただし前記第1金属層および第2金属層が同一金属の場合を除く)、前記算術平均うねり(Wa1)及び最大高さうねり(Wz1)は、周期が2.5mm未満の波長成分をカットオフしたうねり曲線に基づいて得られたものである、ことを特徴とする。
または、上記課題を解決するため、本発明における他の圧延接合体においては、(2)第1金属層と第2金属層とが圧延接合された後に、少なくとも、複数のロールの間を通板させて所望のコイル径又は芯に巻き替える巻き替え工程、又は、複数のロールの間を通板させて切断する切断工程、のいずれかを有する通板工程を経た後の圧延接合体であって、前記第1金属層の表面を、算術平均粗さ(Ra1)が1nm~30nmまで鏡面研磨した時の、算術平均うねり(Wa1)が0.01μm~0.96μmであり、最大高さうねり(Wz1)が0.2μm~5.0μmであり、前記第1金属層および第2金属層がそれぞれ、Fe、Ti、Ni、Al、Mg、Cu又はこれらのいずれかを基とする合金からなり(ただし前記第1金属層および第2金属層が同一金属の場合を除く)、前記算術平均うねり(Wa1)及び最大高さうねり(Wz1)は、周期が2.5mm未満の波長成分をカットオフしたうねり曲線に基づいて得られたものである、ことを特徴とする。
または、上記課題を解決するため、本発明における他の圧延接合体においては、(3)第1金属層、第2金属層、及び前記第1金属層と第2金属層の間の中間金属層、とが圧延接合された後に、少なくとも、複数のロールの間を通板させて所望のコイル径又は芯に巻き替える巻き替え工程、又は、複数のロールの間を通板させて切断する切断工程、のいずれかを有する通板工程を経た後の圧延接合体であって、前記第1金属層の表面における算術平均うねり(Wa1)が0.01μm~0.96μm、最大高さうねり(Wz1)が0.2μm~5.0μmであり、前記算術平均うねり(Wa1)及び最大高さうねり(Wz1)は、周期が2.5mm未満の波長成分をカットオフしたうねり曲線に基づいて得られたものであり、第1金属層および第2金属層がそれぞれ、Fe、Ti、Ni、Al、Mg、Cu又はこれらのいずれかを基とする合金からなり、前記中間金属層は、Fe、Ti、Ni、Al、Mg、Cu又はこれらのいずれかを基とする合金からなる(ただし前記中間層が前記第1金属層又は第2金属層と同一金属の場合を除く)、ことを特徴とする。
なお、上記した(1)~(3)のいずれかに記載の圧延接合体においては、(4)前記第2金属層の表面における算術平均うねり(Wa2)が0.01μm~1.0μm、最大高さうねり(Wz2)が0.2μm~6.0μmであることが好ましい。
また、上記した(1)~(4)のいずれかに記載の圧延接合体においては、(5)前記第1金属層の表面における算術平均うねり(Wa)は、前記第2金属層の表面における算術平均うねり(Wa)よりも小さいことが好ましい。
また、上記した(1)~(5)のいずれかに記載の圧延接合体においては、(6)前記第1金属層の表面における最大高さうねり(Wz1)は、前記第2金属層の表面における最大高さうねり(Wz2)よりも小さいことが好ましい。
また、上記した(1)~(6)のいずれかに記載の圧延接合体においては、(7)前記第1金属層が電子機器用筐体の外面側に用いられ、前記第2金属層が前記電子機器用筐体の内面側に用いられることが好ましい。
また、上記した(1)~(7)のいずれかに記載の圧延接合体においては、(8)前記第1金属層が、SUS、又はTi、Ni若しくはこれらのいずれかを基とする合金からなることが好ましい。
さらに上記課題を解決するため、本発明における電子機器筐体は、(9)上記した(1)~(8)のいずれかに記載の圧延接合体からなり、前記第1金属層を外面側、前記第2金属層を内面側としたことを特徴とする。
このとき、上記した(9)に記載の電子機器筐体においては、(10)外面側表面の算術平均粗さ(Ra)が30nm以下であることが好ましい。
さらに上記課題を解決するため、本発明における圧延接合体の製造方法は、(11)第1金属層と、第2金属層とを圧延接合する圧延接合工程と、前記圧延接合体を形状修正する工程と、前記形状修正後の通板工程として、少なくとも、複数のロールの間を通板させて所望のコイル径又は芯に巻き替える巻き替え工程、又は、複数のロールの間を通板させて切断する切断工程、のいずれかを有する通板工程を含み、前記圧延接合工程において、前記第1金属層および第2金属層がそれぞれ、Fe、Ti、Ni、Al、Mg、Cu又はこれらのいずれかを基とする合金からなり(ただし前記第1金属層および第2金属層が同一金属の場合を除く)、前記通板工程において、少なくとも工程終端側のロールの外径を200mm以上とすることを特徴とする、前記第1金属層の表面における算術平均うねり(Wa1)が0.01μm~0.96μmで最大高さうねり(Wz1)が0.2μm~5.0μmである圧延接合体の製造方法である。
また、上記課題を解決するため、本発明における他の圧延接合体の製造方法は、(12)第1金属層と、第2金属層とを圧延接合する圧延接合工程と、
前記圧延接合体を形状修正する工程と、前記形状修正後の通板工程として、少なくとも、複数のロールの間を通板させて所望のコイル径又は芯に巻き替える巻き替え工程、又は、複数のロールの間を通板させて切断する切断工程、のいずれかを有する通板工程を含み、前記圧延接合工程において、前記第1金属層および第2金属層がそれぞれ、Fe、Ti、Ni、Al、Mg、Cu又はこれらのいずれかを基とする合金からなり(ただし前記第1金属層および第2金属層が同一金属の場合を除く)、前記通板工程において、前記第2金属層の表面を最初にロールに接触させることを特徴とする、前記第1金属層の表面における算術平均うねり(Wa1)が0.01μm~0.96μmで最大高さうねり(Wz1)が0.2μm~5.0μmである圧延接合体の製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の圧延接合体及びその製造方法によれば、加工性と放熱性だけでなく、表面の「うねり」を抑制した圧延接合体を提供することができる。本発明の圧延接合体は、その優れた特性を利用して、例えば美しい金属光沢及び写像性を有するモバイル電子機器の筐体として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)は本実施形態における圧延接合体1が2層構成の場合の外観を示す模式図であり、(b)は本実施形態における圧延接合体1が3層構成の場合の外観を示す模式図である。
図2】本発明に係る電子機器用筐体の一実施形態を示す斜視図である。
図3】本実施形態において、うねりを抑制するための方法の一例を示す図である。
図4】本実施例において、うねり曲線を得る方法を示す図である。
図5(a)】本実施例において、鏡面研磨前のうねり曲線を示す図である。
図5(b)】本実施例において、鏡面研磨前のうねり曲線を示す図である。
図6】比較例において、鏡面研磨前のうねり曲線を示す図である。
図7】実施例及び比較例において、鏡面研磨前の曲率分布を示す図である。
図8(a)】本実施例において、鏡面研磨後のうねり曲線を示す図である。
図8(b)】本実施例及び比較例において、鏡面研磨後のうねり曲線を示す図である。
図9】実施例及び比較例において、鏡面研磨後の曲率分布を示す図である。
図10】写像性評価装置(測定面歪パターン測定装置)の測定光学系の外観を示す模式図である。
図11】実施例9及び実施例10にかかるうねり曲線を示す図である。
図12】実施例9及び実施例10にかかる曲率分布を示す図である。
図13】実施例11にかかるうねり曲線を示す図である。
図14】実施例12にかかるうねり曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図を参照しつつ、本発明を実施する一例としての実施形態を説明する。なお、図1及び図4中の「RD」は圧延方向を、「TD」は圧延直角方向を、「ND」は圧延面法線方向をそれぞれ示している。
【0020】
<圧延接合体>
本実施形態における圧延接合体は、その表面の「うねり」を抑制したことを特徴とする。ここで、本発明において「うねり」とは、JIS B 0601:2001に準拠して求められる算術平均うねり(Wa)及び最大高さうねり(Wz)を含む概念として定義する。
【0021】
図1(a)に示すとおり、本実施形態における圧延接合体1は、少なくとも第1金属層10と第2金属層20とが圧延接合されてなる。この圧延接合体1は、第1金属層10の表面(接合界面とは反対側の表面)における算術平均うねり(Wa)が0.01μm~0.96μm、最大高さうねり(Wz)が0.2μm~5.0μmであることを特徴とする。
【0022】
また、本実施形態では2層の金属層(第1金属層と第2金属層)が圧延接合された例を圧延接合体1として説明するが、本実施形態はこの態様に限られず3層以上の金属板が圧延接合されていてもよい。すなわち、例えば第1金属層、第2金属層及び第3金属層が接合された3層の圧延接合体でも良い。またその場合、第1金属層ないし第3金属層はそれぞれ異なる種類の金属板であっても良いし、第1金属層と第3金属層が同じ種類の金属板であっても良い。
【0023】
また、圧延接合体1の最外表面(圧延接合体1の界面とは反対側の面)には、必要に応じて、放熱性や外観性を損なわない限りで、耐食、酸化防止、変色防止などを目的として公知の保護層を設けてもよい。この保護層としては、化成処理皮膜やクロメート皮膜など公知の種々の表面処理皮膜を目的に応じて適用してもよい。この場合、第1金属層10側の表面だけ保護層を設けてもよいし、第2金属層20側の表面だけ保護層を設けてもよいし、双方の表面に保護層を設けてもよい。
【0024】
上記のような表面性状を実現する上で、本実施形態における圧延接合体1の圧下率は40%以下が好ましく、25%以下がより好ましく、さらには15%以下がより好ましい。
この圧延接合体1の厚みは、特に限定されず、例えば0.06mm~3.0mmなどが例示される。このうち圧延接合体1の厚みの上限としては、2.2mm以下がより好ましく、さらには1.5mm以下がより好ましい。一方で圧延接合体1の厚みの下限としては、電子機器の筐体として用いられる場合には0.3mm以上が好ましく、さらには0.4mm以上がより好ましい。
なお、本実施形態における「圧延接合体の厚み」とは、圧延接合体1上の任意の30点における厚みをマイクロメータなどで測定して得られた測定値の平均値をいう。
【0025】
<第1金属層>
第1金属層10となる金属板としては、例えばFe、Ti、Ni、Al、Mg、Cu又はこれらのいずれかを基とする合金などを好適に挙げることができる。そのうち、例えばステンレス(SUS)、又はTi、Ni若しくはこれらのいずれかを基とする合金が好ましく例示される。
第1金属層10がステンレスの場合、SUS304、304L、316、316L、430及び210などが好ましく例示される。本実施形態では、特に非磁性であることなどからオーステナイト系ステンレスが好適であり、例えばSUS304、304L、316及び316Lが第1金属層10としてより好ましい。また、絞り加工性の観点から、第1金属層10は焼鈍材(BA材)又は1/2H材であることが好ましい。
第1金属層10がチタン(Ti)の場合、純Tiの他に、Ti-Al系合金やTi-Ni系合金を好適に使用することができるが、これらに限られるものではない。
また、第1金属層10がアルミニウム(Al)の場合、純アルミニウム板又はアルミニウム合金板を好適に用いることができる。このうちアルミニウム合金板については、アルミニウム以外の金属元素として、Mg、Mn、Si、Zn及びCuから選ばれる少なくとも1種の添加金属元素を1重量%超で含有するアルミニウム合金の板材を用いることが好ましいが、これに限られるものではない。
【0026】
また、第1金属層10の厚みとしては、特に制限はないが、例えば0.01mm~0.6mm程度であれば好適である。このうち第1金属層10の厚みの下限としては、最終的な鏡面研磨を実施した後に第1金属層10の厚みを確保する観点から、0.045mm以上が好ましく、さらには0.05mm以上がより好ましい。一方で第1金属層10の厚みの上限としては、軽量化や放熱性の観点から0.5mm以下が好ましく、さらには0.4mm以下がより好ましい。
ここで、本実施形態及び後述する実施例における「鏡面研磨」とは、研磨対象の表面に対して算術平均粗さ(Ra)が1nm~30nmとなるまで、例えばバフ研磨に例示される公知の手法によってその表面を研磨する表面処理を言う。
【0027】
なお、本実施形態における「第1金属層10の厚み」とは、圧延接合体1の断面の光学顕微鏡写真を取得し、その光学顕微鏡写真において任意の10点における第1金属層10の厚みを計測して得られた値の平均値をいう。
【0028】
また、本実施形態の第1金属層10は、その表面(外観面)における算術平均うねり(Wa)が0.01μm~0.96μmであることが好ましい。より好ましくは0.6μm以下、さらに好ましくは0.55μm以下、特に好ましくは0.25μm以下である。第1金属層10の算術平均うねり(Wa)は、JIS B 0601:2001規格に基づいて算出される。具体的には、第1金属層10におけるTD方向の任意の位置での基準長さの断面曲線から微細な構造(高周波成分)を除去したうねり曲線の算術平均である。
【0029】
さらに、本実施形態の第1金属層10は、その表面(外観面)における最大高さうねり(Wz)が0.2μm~5.0μmであることが好ましい。より好ましくは3.5μm以下、さらに好ましくは2.8μm以下、特に好ましくは1.0μm以下である。第1金属層10の最大高さうねり(Wz)は、JIS B 0601:2001規格に基づいて算出される。具体的には、第1金属層10におけるTD方向の任意の位置において、RD方向に基準長さを取った際の断面曲線から微細な構造(高周波成分)を除去したうねり曲線において、山の高さと谷の深さを足し合わせた値である。
【0030】
本実施形態において、第1金属層10の算術平均うねり(Wa)及び最大高さうねり(Wz)を上記のように規定することにより、以下のような効果が得られる。
すなわち、本実施形態における圧延接合体1は、スマートフォンなどのモバイル電子機器用のプレス成形部品、筐体等に適用され得る。この場合、第1金属層10を筐体の外面側とすると優れた外観性が得られるが、特に筐体の外面に鏡面研磨を施した際に、優れた写像性を得ることができる。
【0031】
第1金属層10の算術平均うねり(Wa)が0.96μmを超える場合には、鏡面研磨を施した後の写像性が低下するため、好ましくない。
一方で、第1金属層10の算術平均うねり(Wa)が0.01μm未満であった場合には、写像性については申し分ない。
また、圧延接合体1を作製する前の原板としての第1金属層10の算術平均うねり(Wa)が0.04μm程度であり、圧延接合体1を作製した後に本算術平均うねり(Wa)を0.01μm未満にすることは技術的、あるいはコスト的に困難であることから、本実施形態においては第1金属層10の算術平均うねり(Wa)を0.01μm~0.96μmと規定することとした。
【0032】
さらに、本実施形態の第1金属層10の表面(外観面)における最大高さうねり(Wz)を0.2μm~5.0μmとした理由について、最大高さうねり(Wz)が0.2μm未満の場合、上記と同様、圧延接合体1を作製する前の原板の持つうねりとの関係から、技術的、コスト的に困難である。
一方で、最大高さうねり(Wz)が5.0μmを超えると、第1金属層10の表面(外観面)に鏡面研磨を施した場合に、写像性が低下するため、好ましくない。
【0033】
本実施形態の圧延接合体は、モバイル電子機器用の筐体等にプレス加工された後に、外面に鏡面研磨を施され得る。そして、鏡面研磨を施された筐体等において、表面のうねりが少ないことが好ましい状態であることは言うまでもない。
そこで、本実施形態では、圧延接合体の状態(筐体等にプレス加工する前の状態)において、試験的に鏡面研磨を施した。そして、鏡面研磨を施した後の圧延接合体の第1金属層10の表面のうねりを規定することにより、筐体等にプレス加工され鏡面研磨を施した後の表面のうねりの好ましい状態を模擬的に作り出すこととした。
【0034】
すなわち、本実施形態においては、前記第1金属層の表面を、算術平均粗さ(Ra)が1nm~30nmに鏡面研磨した場合において、算術平均うねり(Wa)が0.01μm~0.96μmであり、最大高さうねり(Wz)が0.2μm~5.0μmであることが好ましい。なお、算術平均粗さ(Ra)は、JIS B 0601:2001に準拠して求められる。
圧延接合体の状態で模擬的に鏡面研磨を施した場合において、その第1金属層の表面のうねりを上記の数値範囲とすることにより、好ましい写像性を得ることができる。
【0035】
ここで、圧延接合体の第1金属層10側に施す鏡面研磨の表面粗さ(算術表面粗さRa)を、1nm~30nmとした理由としては以下のとおりである。すなわち、筐体等にプレス加工された後に施す鏡面研磨の際の表面粗さ(算術表面粗さRa)に鑑みて、良好な鏡面外観を得られる数値を条件的に規定したものである。
なお、上記における鏡面研磨の方法としては、バフ研磨などの機械研磨、電解研磨、化学研磨、これらを組み合わせた複合研磨、いずれの方法を用いても構わない。
【0036】
<第2金属層>
上記した第1金属層10と圧延接合される第2金属層20は、第1金属層10とは種類の異なる金属材料で構成されていてもよいし、同じ種類の金属材料で構成されていてもよい。本実施形態において第2金属層20が第1金属層10と異なる種類の金属材料の場合、例えば、第1金属層10よりも高い熱伝導率を有する(もしくは第1金属層よりも比重の軽い)金属を第2金属層20とすることで、スマートフォンなどのモバイル電子機器の筐体に本実施形態の圧延接合体1を適用した場合、放熱性の良い(軽量な)筐体とすることが可能となる。
【0037】
本実施形態における第2金属層20となる金属板としては、例えばFe、又はTi、Ni、Al、Mg、Cu、若しくはこれらとFeのいずれかを基とする合金などが例示できる。このうち、軽量で且つ非磁性であることから、アルミニウム板又はアルミニウム合金板が第2金属層20として好適である。
【0038】
なお、第1金属層10の表面性状の要件を満たし得る材料であり、モバイル電子機器の筐体とした時に要求される外観特性を満たし得る材料であれば、第1金属層10となる金属板として例示した金属と、第2金属層20となる金属板として例示した金属とを、表裏を入れ換えて圧延接合体としてもよい(例えば、第1金属層10をアルミニウムとし、第2金属層20をステンレスとした圧延接合体とすることが可能である)。
【0039】
このうちアルミニウム合金板については、アルミニウム以外の金属元素として、Mg、Mn、Si、Zn及びCuから選ばれる少なくとも1種の添加金属元素を1重量%超で含有するアルミニウム合金の板材を用いることが好ましい。
【0040】
かようなアルミニウム合金としては、例えばJISに規定のAl-Cu系合金(2000系)、Al-Mn系合金(3000系)、Al-Si系合金(4000系)、Al-Mg系合金(5000系)、Al-Mg-Si系合金(6000系)及びAl-Zn-Mg系合金(7000系)を用いることができる。このうち、プレス成形性、強度、耐食性の観点から3000系、5000系、6000系及び7000系のアルミニウム合金が好ましく、更にコストを鑑みると5000系のアルミニウム合金がより好ましく、この場合にはMgを0.3重量%以上含有してもよい。
【0041】
本実施形態の第2金属層20は、その表面(接合界面とは反対側の表面)における算術平均うねり(Wa)が0.01μm~1.0μmであることが好ましい。さらに、本実施形態の第2金属層20は、その表面における最大高さうねり(Wz)が0.2μm~6.0μmであることが好ましい。なお、上記算術平均うねり(Wa)及び最大高さうねり(Wz)がJIS B 0601:2001規格に基づいて算出されることは、上記した第1金属層10の場合と同様である。
【0042】
本実施形態において、第2金属層20の算術平均うねり(Wa)及び最大高さうねり(Wz)を上記のように規定する理由は、以下のとおりである。
すなわち、本実施形態における圧延接合体1がモバイル電子機器用の筐体等に適用され、第2金属層20が筐体の内面であった場合、算術平均うねり(Wa)及び最大高さうねり(Wz)は直接的には外観面に関与しない。しかしながら、昨今のモバイル電子機器用の筐体の軽量化が要求される状況において、圧延接合体の厚みも薄くなりつつある。そして、圧延接合体が薄肉であり、且つそれをプレス成形して筐体とした場合、内面側となる第2金属層20のうねりが、外観面である第1金属層10の表面のうねりにも影響することがある。また圧延接合体1の製造工程においても、ロール面に沿わせる通板工程の際に、第2金属層20のうねりが、第1金属層10のうねりに影響する可能性がある。
このような理由で、本実施形態においては、第2金属層20の算術平均うねり(Wa)及び最大高さうねり(Wz)を上記のように規定することが好ましい。
【0043】
第2金属層20の算術平均うねり(Wa)及び最大高さうねり(Wz)を上記範囲としたのは、圧延接合体1を作製する前の原板としての第2金属層20の算術平均うねり(Wa)及び最大高さうねり(Wz)が上記の規定程度であり、圧延接合体1としたとき上記規定以下とすることは困難であるためである。
一方で、第2金属層20の算術平均うねり(Wa)及び最大高さうねり(Wz)が上記範囲を超えた場合、第2金属層20を成形品の内面側としても、外観面の写像性に影響を与え得るため好ましくない。
【0044】
なお、第1金属層10の表面における算術平均うねり(Wa)は、第2金属層20の表面における算術平均うねり(Wa)よりも小さいことが好ましい。
また同様に、第1金属層10の表面における最大高さうねり(Wz)は、第2金属層20の表面における最大高さうねり(Wz)よりも小さいことが好ましい。
【0045】
次に第2金属層20の厚みについて説明する。
本実施形態の圧延接合体1のうち第2金属層20の厚みは、第1金属層10と同じ厚さか第1金属層10よりも厚いことが好ましい。
この第2金属層20の厚みとしては、特に制限はないが、アルミニウム合金板の場合、例えば0.05mm~2.5mm程度であれば好適である。
このうち第2金属層20の厚みの下限としては、圧延接合体1の加工性の観点からは0.1mm以上が好ましく、機械的強度も鑑みると0.2mm以上がより好ましい。一方で、第2金属層20の厚みの上限としては、軽量化やコストの観点から1.7mm以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.1mm以下である。
なお、この第2金属層20の厚みは、上記した第1金属層10の厚みと同様な手法で計測した。
【0046】
<中間金属層>
図1(a)では、第1金属層と第2金属層とが直接接触されている例を示して本実施形態を説明したが、本実施形態では第1金属層と第2金属層とが直接接触していなくてもよく、第1金属層と第2金属層との間に別の層が形成されていてもよい。
すなわち、本実施形態の圧延接合体1は2層構成に限られず、3層以上の構成であってもよい。以下に、本実施形態の圧延接合体1が3層構成である例を、図1(b)を参照して説明する。
【0047】
図1(b)に示すように、本実施形態の圧延接合体は、3層構成の圧延接合体110であってもよい。この場合、圧延接合体110は、第1金属層111、中間金属層112、第2金属層113を有している。そして、圧延接合体110は中間金属層112の片面に第1金属層111が設けられ、中間金属層112の第1金属層111とは反対側の面に第2金属層113が形成されている。すなわち、中間金属層112を中心として、第1金属層111と第2金属層112が形成され、サンドイッチ状になっている。
【0048】
この場合、第1金属層111、中間金属層112、第2金属層113のそれぞれは同じ種類の金属であってもよいし、異なる種類の金属であってもよい。また、第1金属層111と第2金属層113が同じ種類の金属であり、中間金属層112が異なる種類の金属であってもよい。中間金属層112として適用可能な金属の種類としては、上述した第1金属層あるいは第2金属層として適用可能な金属の例と同様である。
【0049】
図1(b)に示す圧延接合体110の第1金属層111の算術平均うねり(Wa11)及び最大高さうねり(Wz11)は、図1(a)に示した2層構成の場合の算術平均うねり(Wa)及び最大高さうねり(Wz)と同様の値であることが好ましい。
また、図1(b)に示す圧延接合体110の第2金属層113における算術平均うねり(Wa13)及び最大高さうねり(Wz13)は、図1(a)に示した2層構成の場合の算術平均うねり(Wa)及び最大高さうねり(Wz)と同様の値であることが好ましい。
また、図1(b)に示す圧延接合体110において、第1金属層111と第2金属層113の厚みは、各々例えば0.01mm~0.6mm程度であれば好適である。このうち厚みの下限としては、0.045mm以上が好ましく、さらには0.05mm以上がより好ましい。一方で厚みの上限としては、0.5mm以下が好ましく、さらには0.4mm以下がより好ましい。
また、図1(b)に示す圧延接合体110において、中間金属層の厚みの下限としては、0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましい。一方で、厚みの上限としては、1.7mm以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.1mm以下である。
【0050】
<筐体>
本実施形態の圧延接合体1は、上記した第1金属層10が電子機器用筐体の外面側に用いられ、第2金属層20が電子機器用筐体の内面側に用いられることが望ましい。
より具体的には、圧延接合体1がスマートフォンなどのモバイル電子機器の筐体(外装ケース)として用いられる場合、回路や電源などを覆う内面側に第2金属層20が配置されるとともに、外観となる外面側に第1金属層10が配置される。
なお、本実施形態の圧延接合体110を用いて電子機器用筐体を作製した場合には、内面側に第2金属層113が配置されるとともに、外面側に第1金属層111が配置される。
【0051】
これにより、軽量且つ放熱性の高い第2金属層20によって、上記した回路や電源で発生する熱が効率的に拡散される。一方で、表面のうねりが抑制された第1金属層10によって、例えば鏡面研磨が施されたとしても美しい外観性を維持することが可能となる。
【0052】
<電子機器用筐体>
次に、本実施形態の圧延接合体1からなる電子機器用筐体について図を用いて説明する。
本実施形態の圧延接合体1を加工して製造される電子機器用筐体8の一例を図2に示す。図2に示す電子機器用筐体8は、圧延接合体1を第1金属層10が外面側となるように所望の形状にプレス成形した後で、その外面側を鏡面研磨して製造される。すなわち、第2金属層20は電子機器用筐体の内面側とされている。
【0053】
なお、図2に示す電子機器用筐体8は少なくとも背面80及び側面81に本実施形態の圧延接合体1が含まれるように加工した例である。しかしながら本実施形態の圧延接合体1を電子機器用筐体に加工する場合には、図2に示す構造だけに限定されるものではない。例えば、本実施形態の圧延接合体1を電子機器用筐体の外枠(側面、天面および底面もしくはその一部)に適用してもよいし、電子機器用筐体の内部のフレームに本実施形態の圧延接合体1を適用してもよい。この場合、電子機器用筐体の背面はガラスや樹脂であってもよい。
ここで背面80とは、電子機器の表示部(ティスプレイ)とは反対側の面を指す。なお、強度向上や電気的なグラウンドを取る目的等で、筐体背面の内側に圧延接合体とは別の金属材料やプラスチック材料等を積層していても良い。
【0054】
電子機器用筐体8について、図2に示すように、例えば筐体背面80となる平面部A(例えば50mm×100mm)のうねりは、電子機器用筐体ひいては電子機器全体の外観性に大きく影響を与える。つまり、平面部Aにおけるうねりが小さい程、電子機器の外観性は良好となる。
そのため、本実施形態の圧延接合体においては、上述したようにうねりを制御して、電子機器用筐体ひいては電子機器全体の外観性を向上させることを課題としている。
【0055】
なお、電子機器用筐体の外面側表面の鏡面研磨に関しては、算術平均粗さ(Ra)が30nm以下であることが好ましい。なお、算術平均粗さ(Ra)は、JIS B 0601:2001に準拠して求められる。
【0056】
かような鏡面研磨の方法としては、バフ研磨などの機械研磨、電解研磨、化学研磨、これらを組み合わせた複合研磨、いずれの方法を用いても構わない。なお、鏡面研磨は、その前工程として研削加工されることを妨げるものではない。
また内面側となる第2金属層20も、回路基板などを収容・固定することや、さらなる軽量化などを目的として、切削加工されることがある。
【0057】
本実施形態の圧延接合体1を成形加工して製造された電子機器用筐体の平坦部分の厚みは、0.2mm~1.7mmであり、好ましくは0.3mm~1.2mm、より好ましくは0.3mm~1mmである。
そのうち、第1金属層10の厚みは、例えばステンレスの場合、0.045mm~0.5mm、好ましくは0.045mm~0.4mm、より好ましくは0.045mm~0.3mmである。
一方で、第2金属層20の厚みは、例えばアルミニウム合金の場合、0.1mm~1.2mm、好ましくは0.1mm~0.8mm、より好ましくは0.2mm~0.8mmである。
【0058】
なお、本実施形態の圧延接合体1からなる電子機器用筐体は、その外面側を鏡面研磨されたものに限らず、外面側にサンドブラストやヘアラインなどの加飾加工を施したものであってもよい。
本実施形態の圧延接合体1は、上述した構成を有していることにより、意図したとおりの加飾効果を得ることができる。
なお、上記した加飾加工を施さず圧延接合体1の第1金属層の表面をそのまま生かしてもよい。
【0059】
また、かような電子機器用筐体の外面側の表面には、所望により、着色や指紋付着防止、あるいは傷付き防止などを目的として公知のコート層が設けられる。
なお、前記コート層が蒸着皮膜のようなナノレベルのごく薄い膜の場合、筐体表面のうねりを測定しても、上述した圧延接合体表面のうねりと実質的に同等の値となる。
【0060】
<圧延接合体の製造方法>
本実施形態の製造方法により製造された圧延接合体1は、上述した第1金属層10と第2金属層20が圧延接合されたものであって、このうち第1金属層10の表面における算術平均うねり(Wa)が0.01μm~0.96μm、最大高さうねり(Wz)が0.2μm~5.0μmであることを特徴とする。
【0061】
第1金属層10と第2金属層20を圧延接合する方法としては、以下のごとき公知の接合方法を採用することができる。
【0062】
まず、冷間圧延接合法は、第1金属層10と第2金属層20の接合面に対してブラシ研磨などを施し、両者を重ね合せて冷間圧延して接合した後、焼鈍処理を施して圧延接合体を得る方法である。冷間圧延の工程は多段階で行ってもよく、また焼鈍処理後に調質圧延を加えてもよい。この方法では、最終的な圧下率として20~90%の範囲で圧延接合される。
【0063】
なお、冷間圧延接合法で製造する場合、上記圧下率を考慮して、原板の厚みは以下のように設定することが好ましい。
すなわち、第1金属層10の厚みは、0.0125mm~6mm、好ましくは0.056mm~5mm、より好ましくは0.063mm~4mmである。
また、第2金属層20の厚みは、0.063mm~25mm、好ましくは0.13mm~17mm、より好ましくは0.25mm~11mmである。
【0064】
次に、温間圧延接合法では、同様に第1金属層10と第2金属層20の接合面にブラシ研磨などを施した後、両者を200~500℃に加熱して温間圧延し、接合する。この方法では、最終的な圧下率15~40%程度で圧延接合される。
【0065】
温間圧延接合法で製造する場合、上記圧下率を考慮して、原板の厚みは以下のように設定することが好ましい。
すなわち、第1金属層10の厚みは、0.012mm~1mm、好ましくは0.053mm~0.83mm、より好ましくは0.059mm~0.067mmである。
また、第2金属層20の厚みは、0.059mm~4.2mm、好ましくは0.19mm~2.8mm、より好ましくは0.24mm~1.8mmである。
【0066】
さらに、表面活性化接合法について説明する。なお、圧延接合体1の表面のうねりを抑制できる圧延接合方法としては、この表面活性化接合法がより好ましい。
以下、表面活性化接合法について、(A)上記した第1金属層10及び第2金属層20の互いの接合面を表面処理する工程、(B)表面処理した表面同士を所定の圧下率で圧接して接合する工程、(C)所定の温度環境下でバッチ焼鈍又は連続焼鈍を行う工程、の順に説明する。
【0067】
(A)上記した第1金属層10及び第2金属層20の互いの接合面を表面処理する工程としては、例えばスパッタエッチングが好適である。このスパッタエッチング処理は、例えば次のようにして行われる。
すなわち、まず幅100mm~600mm程度の長尺コイルとして第1金属層10となる第1金属板及び第2金属層20となる第2金属板を用意し、この第1金属板及び第2金属板をそれぞれアース接地した一方の電極とする。
【0068】
そして、絶縁支持された他の電極との間に1MHz~50MHzの交流を印加してグロー放電を発生させて、このグロー放電によって生じたプラズマ中に露出される電極の面積を他の電極の面積の1/3以下としてスパッタエッチング処理を行う。なおスパッタエッチング処理中は、アース接地した電極が冷却ロールの形をとっており部材の温度上昇を防いでいる。
【0069】
このスパッタエッチング処理では、真空下で金属板の接合する面を不活性ガスによりスパッタすることにより、表面の吸着物を除去するとともにこの表面の酸化物層の一部又は全部を除去する。この不活性ガスとしては、例えばアルゴン、ネオン、キセノン、クリプトン等や、これらを少なくとも1種類含む混合気体を適用してもよい。
【0070】
また、スパッタエッチングの処理条件は、金属板の種類等に応じて適宜調整可能であるが、例えば真空下で100W~10kWのプラズマ出力、ライン速度0.5m/分~30m/分程度で行ってもよい。このときの好ましい真空度としては、例えば1×10-5Pa~10Pa程度が例示できる。
【0071】
次に(B)表面処理した表面同士を所定の圧下率で圧延して接合する工程について説明する。
上記したようなスパッタエッチングを経た第1金属板及び第2金属板の表面同士の圧延は、例えばロール圧延によって行うことができる。このロール圧延の圧延線荷重は、特に限定されないが、例えば0.1tf/cm~10tf/cmの範囲に設定して行ってもよい。例えば圧延ロールのロール直径が100mm~250mmのとき、ロール圧延の圧延線荷重は、より好ましくは、0.1tf/cm~3tf/cmであり、さらに好ましくは0.3tf/cm~1.8tf/cmである。
なおロール圧延による接合は、板表面への酸素の再吸着を防止するなどの観点から、非酸化雰囲気中、例えば真空中やAr等の不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
【0072】
また、第1金属板及び第2金属板の表面同士の圧延における所定の圧下率としては、圧延接合体1の用途に応じて種々設定できるが、例えば本実施形態では、圧延接合体1の圧下率として25%以下、好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下、などの条件が例示できる。
表面活性化接合法によれば、圧延接合過程でのうねりの発生が少ないため、圧延接合体1の接合方法として好適である。
【0073】
また、他の圧下率の例としては、第2金属板の圧下率については、圧延接合体1の用途に応じて種々設定できるが、うねりを抑制するためには0%に近いほど好ましい。一方で、第1金属板と第2金属板の接合力と両立させる上で、例えば第2金属板がアルミニウム合金板の場合には5%以上18%以下であることが例示できる。
一方で第1金属板の圧下率の下限については、うねりを抑制するためには0%に近いほど好ましい。一方で、第1金属板と第2金属板の接合力を向上させる上では、好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは2%以上であることが例示できる。また、第1金属板の圧下率の上限については、好ましくは10%以下であり、より好ましくは8%以下であることが例示できる。
【0074】
上記圧下率を考慮して、表面活性化接合法における原板の厚みは、以下のように設定することが好ましい。
すなわち、第1金属層10の厚みは、0.01mm~0.8mm、好ましくは0.045mm~0.67mm、より好ましくは0.05mm~0.053mmである。
また、第2金属層20の厚みは、0.05mm~3.3mm、好ましくは0.1mm~2.3mm、より好ましくは0.2mm~1.5mmである。
【0075】
次に、(C)所定の温度環境下でバッチ焼鈍又は連続焼鈍を行う工程について説明する。
上記した圧延接合によって得られた圧延接合体1は、必要に応じて、さらに熱処理を行ってもよい。この熱処理によって、第1金属層10と第2金属層20との界面のひずみが除去され、そして界面の密着性をさらに向上させることができる。また、例えば第2金属層20がアルミニウム合金層である場合には焼鈍を兼ねることができるため、この熱処理を適宜「焼鈍」とも称している。
【0076】
かような熱処理(焼鈍)温度は、例えばステンレス層とアルミニウム合金層からなる場合、バッチ焼鈍の場合は例えば200℃~370℃、連続焼鈍の場合は例えば300~800℃に圧延接合体1の温度を加熱する条件などが例示できる。この熱処理では、第2金属層20がアルミニウム合金層の場合、第1金属層10(例えばステンレス層)に含まれる金属元素(例えばステンレス層の場合はFe、Cr、Ni)が第2金属層20に熱拡散する。なお、第1金属層10に含まれる金属元素と、第2金属層20に含まれる金属元素とを、相互に熱拡散させてもよい。
【0077】
なお、熱処理(焼鈍)の時間は、バッチか又は連続かといった形式や圧延接合体1のサイズに応じて適宜設定することができる。一例として、バッチ処理の場合には、圧延接合体1が上記した目的の温度になってから0.5~10時間だけ均熱保持してもよい。一方で連続処理の場合には、圧延接合体1が上記した目的の温度になってから20秒~5分間だけ均熱保持してもよい。
【0078】
以上においては、圧延接合体が第1金属層と第2金属層との2層構成である場合を例として本実施形態の圧延接合体の製造方法を説明した。なお、圧延接合体が第1金属層と第2金属層との間に中間金属層を有する3層構成であっても、上記と同様に製造することが可能である。その場合、まず第1金属層と中間金属層を接合した後に、第2金属層を接合してもよいし、まず中間金属層と第2金属層とを接合した後に、第1金属層を接合してもよい。また、第1金属層、中間金属層、第2金属層を同時に接合する方法であっても構わない。
【0079】
本実施形態の圧延接合体1の製造方法においては特に、第1金属板及び第2金属板を接合した後に、さらに以下の「形状修正工程」及び「通板工程」を経ることが好ましい。なお、この「形状修正工程」及び「通板工程」は、第1金属板及び第2金属板の接合方法が、冷間圧延接合法、温間圧延接合法、表面活性化接合法のいずれの場合であっても、好ましく適用できる。
【0080】
まず「形状修正工程」に関して説明する。上記した圧延接合によって得られた圧延接合体1は、異種金属間の特性の違いなどに起因して加工後で反りが発生することがある。よって、この反りを矯正するため、例えばテンションレベラーとも称されるラインを通板させることが行われる。
より具体的には、圧延接合によって得られた圧延接合体1を、例えばRD方向に関して所定の張力をかけながらRD方向に並んだ矯正用ロールと接触させながら通板させる。
【0081】
このとき、圧延接合体1が矯正用ロールと接触して通板する際には、上記圧延接合で発生した反りの向きとは反対向きに圧延接合体1が反るように矯正用ロール上を通板させ、さらに次のロールでは上記圧延接合で発生した反りの向きに圧延接合体1が反るように矯正用ロール上を通板させる。このように連続的に、圧延接合体1の反りを反転させることを繰り返すことで、上記した圧延接合体1の反りが矯正される。
なお、形状修正工程を経た圧延接合体は、通常はコイル状に巻き取られる。
【0082】
次に、「通板工程」について、図3を参照しつつ説明する。図3は、上記した形状修正の後に行われる、通板工程を含む工程の一例としての巻き替え工程を示す模式図である。
【0083】
形状修正後の圧延接合体は、上記のとおり、通常はコイル状に巻かれて保管される。そして出荷前に、搬入先の製造ラインに応じて、コイル状の圧延接合体を巻き替えたり、場合によっては圧延接合体を切断して切り出す必要などが生じる。また、搬入先の製造ラインに応じて、例えばコイルの芯の種類や径を変更する必要が生じることもある。
このような目的で行われる、形状修正工程に続く後工程では、図3に示した巻き替え工程のように、単数あるいは複数のロールの間を通板する「通板工程」を含んでいる。本実施形態においては以下、巻き替え工程を例に説明する。
【0084】
この巻き替え工程においては、図3に示すとおり、コイル状圧延接合体2から帯状の圧延接合体1が引き出され、1stロール31、2ndロール32および3rdロール33を備えた通板設備を介して所望のコイル径としたコイル状圧延接合体3に巻き替えられる。なお図3の模式図では、巻き替え工程のロール数は上記3本としたが、これに限られるものではなく、通板設備の大きさによってはロール数を変更してもよい。
【0085】
本実施形態の巻き替え工程において、少なくともコイル状圧延接合体3となる巻き取り直前のロール(図3においては3rdロール33)は、外径が200mm以上のものであることが好ましい。なお、前記の外径の上限は、通板設備の大きさやロール軸間距離で規定される。また好適には全てのロールの外径を200mm以上としてもよい。
【0086】
また、コイル状圧延接合体2から引き出された圧延接合体1が最初のロール(図3においては1stロール31)に接触する面は、圧延接合体を筐体とした場合に外観とならない面(図3においては第2金属層20側)であることが好ましい。次いで、第1金属層10側が2ndロール32に接触し、さらに第2金属層20側が3rdロール33に接触するように通板される。
【0087】
このように本実施形態では、上記した形状修正工程後の通板工程において、圧延接合体1のうちの第2金属層20の表面を最初に1stロール31に接触させたり、使用するロールのうち少なくとも工程終端側(巻き取り直前)のロールの外径を200mm以上とすることを特徴とする。
これにより、通板中に新たなうねりが生じることが抑制され、形状修正の工程後の第1金属層10の表面における算術平均うねり(Wa)を0.01μm~0.96μmで最大高さうねり(Wz)を0.2μm~5.0μmに維持した状態で通板することが出来る。
【0088】
以上により、本実施形態の圧延接合体1を得ることができる。得られた圧延接合体1は、スマートフォンやノートPCなどのモバイル電子機器、PCなとの各種電子機器、自動車等の輸送機器用電子部材、及び家電用電子部材などに適用されるカバー、筐体、ケースに用いることができる。さらには、得られた圧延接合体は、各種の補強部材、放熱・電磁波シールド等の機能性部材としても利用することができる。
【0089】
<実施例>
以下に実施例を挙げて本発明について具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0090】
<実施例1>
表面活性化接合法によりステンレス板とアルミニウム合金板との圧延接合体(厚み:0.96mm)を準備した。まず、第1金属層10となる金属板として厚み0.25mmのステンレス板(SUS304)を用い、第2金属層20として厚み0.8mmのアルミニウム合金板(A5052)を用いた。SUS304とA5052に対してスパッタエッチング処理を施した。SUS304についてのスパッタエッチングは、0.1Pa下で、プラズマ出力700W、13分間の条件にて実施し、A5052についてのスパッタエッチングは、0.1Pa下で、プラズマ出力700W、13分間の条件にて実施した。
【0091】
スパッタエッチング処理後のSUS304とA5052を、常温で、圧延ロール径130~180mm、圧延線荷重1.9tf/cm~4.0tf/cmの加圧力にてロール圧接により接合して、SUS304とA5052の圧延接合体を得た。この圧延接合体に対し、300℃、2時間の条件でバッチ焼鈍を行った。
得られた圧延接合体において、ステンレス層の厚みは0.24mm、アルミニウム合金層の厚みは0.72mmであった。
【0092】
続いて、圧延接合体の反りを除去するために、テンションレベラーを用いて圧延接合体に形状修正を施し、スリッターでRD方向と平行に2条に切断した後、圧延接合体をコイル状に巻き取った。
【0093】
図4に示すように、圧延接合体から50mm×100mmの板をサンプルとして切り出し、アルミニウム合金板側の任意の5箇所(n6~n10)において、触針式粗度計(東京精密製、surfcom1400D-3DF)を用いてうねり曲線を得た。測定方向は、圧延(RD)方向とした。
【0094】
また、図示は省略するが、ステンレス板10側についても、上記と同様に任意の5箇所(n1~n5)において触針式粗度計(東京精密製、surfcom1400D-3DF)を用いて測定した測定曲線から順次カットオフ値でフィルタリングして断面曲線やうねり曲線を得た。
【0095】
なお、触針式粗度計による測定条件は、JIS B 0601:2001に準拠して、以下のとおりとした。
ピックアップ :標準ピックアップ
測定種別 :ろ波中心線うねり測定
測定長さ :40.0mm
カットオフ波長:2.5~25mm
測定速度 :0.3mm/s
カットオフ種別:ガウシアン
傾斜補正 :最小二乗曲線補正
実施例1における触針式粗度計により得られた測定結果を図5(a)に示す。
【0096】
<実施例2>
圧延接合体をスリッターでRD方向と平行に2条に切断した後、外径200mmのロールを備えた巻き替え装置を用いて、コイル状の圧延接合体から別コイルへの巻き替えを行った。その際、アルミニウム合金側を最初のロールに接触させた。その他は、実施例1と同様にしてサンプルを得た。
この実施例2における触針式粗度計により得られた測定結果を図5(a)に示す。
【0097】
<実施例3>
形状修正の後に、シャーリング装置へ通板し、圧延接合体をRD方向へ300mm毎にシート状に切断した他は、実施例1と同様にしてサンプルを得た。
上記シャーリング装置は外径50mmのロールを複数備え、終端側のロールのみ外径200mmであった。
この実施例3における触針式粗度計により得られた測定結果を図5(a)に示す。
【0098】
<実施例4>
冷間圧延接合方法を用いてステンレス板とアルミニウム合金板との圧延接合体(厚み:1.00mm)を準備した。ステンレス層の厚みは0.29mm、アルミニウム合金層の厚みは0.73mmであった。この圧延接合体から50mm×100mmの板をサンプルとして切り出し、実施例1と同様の方法で、触針式粗度計による測定によりうねり曲線を得た。
この実施例4における触針式粗度計により得られた測定結果を図5(a)に示す。
【0099】
<実施例5>
冷間圧延接合方法を用いてステンレス板とアルミニウム合金板との圧延接合体(厚み:0.6mm)を準備した。ステンレス層の厚みは0.16mm、アルミニウム合金層の厚みは0.44mmであった。この圧延接合体から50mm×100mmの板をサンプルとして切り出し、実施例1と同様の方法で、触針式粗度計による測定によりうねり曲線を得た。
この実施例5における触針式粗度計により得られた測定結果を図5(b)に示す。
【0100】
<実施例6>
冷間圧延接合方法を用いてステンレス板とアルミニウム合金板との圧延接合体(厚み:0.55mm)を準備した。ステンレス層の厚みは0.11mm、アルミニウム合金層の厚みは0.42mmであった。この圧延接合体から50mm×100mmの板をサンプルとして切り出し、実施例1と同様の方法で、触針式粗度計による測定によりうねり曲線を得た。
この実施例6における触針式粗度計により得られた測定結果を図5(b)に示す。
【0101】
<実施例7>
冷間圧延接合方法を用いてステンレス板とアルミニウム合金板との圧延接合体(厚み:0.4mm)を準備した。ステンレス層の厚みは0.2mm、アルミニウム合金層の厚みは0.2mmであった。この圧延接合体から50mm×100mmの板をサンプルとして切り出し、実施例1と同様の方法で、触針式粗度計による測定によりうねり曲線を得た。
この実施例7における触針式粗度計により得られた測定結果を図5(b)に示す。
【0102】
<実施例8>
温間圧延接合法を用いてステンレス板とアルミニウム板(A1100)との圧延接合体(厚み:1.0mm)を準備した。ステンレス層の厚みは0.27mm、アルミニウム層の厚みは0.73mmであった。この圧延接合体から50mm×100mmの板をサンプルとして切り出し、実施例1と同様の方法で、触針式粗度計による測定によりうねり曲線を得た。
この実施例8における触針式粗度計により得られた測定結果を図5(b)に示す。
【0103】
<比較例1>
圧延接合体をスリッターでRD方向と平行に2条に切断した後、外径50mmのロールを備えた巻き替え装置を用いて、コイル状の圧延接合体から別コイルへの巻き替えを行った。その際、ステンレス側を最初のロールに接触させた。その他は、実施例2と同様にしてサンプルを得た。
この比較例1における触針式粗度計により得られた測定結果を図6に示す。
【0104】
<鏡面研磨前の外観評価>
実施例1~8及び比較例1におけるサンプルの各々について、目視で確認できるうねりの状態を、以下のように評価した。
(評価内容)
◎・・・視認できるうねりが極めて少なく、実用に好適である。
○・・・視認できるうねりが少なく、実用に好適である。
△・・・視認できるうねりがやや多いものの、実用可能である。
×・・・視認できるうねりが多く、実用に適さない。
以上の実施例1~8及び比較例1で測定した鏡面研磨前のうねり曲線より得られる各数値を表1に示す。
【0105】
<鏡面研磨前の写像性評価>
図10に示すような面歪パターン測定装置(装置名:SurfRiDY-kit、JFEテクノリサーチ製)を用い、実施例1、2、4、8及び比較例1における各サンプルのステンレス全面に対して圧延方向の傾斜角分布を測定した。なお、各サンプルのサイズは25mm×100mm~50mm×100mmとした。得られた傾斜角分布を基に、サンプル表面内の1800mm以上5000mm以下の任意の範囲について曲率分布へ変換し、曲率分布の標準偏差、最大値、最小値、最大値と最小値を差分した絶対値及び曲率分布図を求めた。なお、実施例2、4及び比較例1については表面の鏡面性が低いことから傾斜角分布の測定が困難であったため、ミシン油を塗布した上で傾斜角分布測定を実施した。
【0106】
なお、傾斜角分布の測定条件は以下のとおりとした。
<全体観察条件>
パターンPの投影幅Wp:480mm
スクリーン―サンプル距離Dss:740mm
サンプル―カメラ距離Dsc:740mm
カメラ高さHc:215mm
カメラ中央視野幅Wc(不図示):125mm
<カメラ観察条件>
カメラ:モノクロCCD
レンズ:f=28mm、F22
撮像周期:30fps
【0107】
また、曲率分布への解析方法は以下に示す。
まず、各サンプル表面の傾斜角分布から下記の変換・表示条件を用いて曲率分布を算出した。次に上記曲率分布Aを±60画素の範囲で平滑化し、曲率分布Bを作成した。そして、曲率分布Aから曲率分布Bを差分することで材料表面の低周波成分を除去した曲率分布Cを作成した。本曲率分布Cより写像性を評価する。
<変換・表示条件>
面歪:gra/曲率
拡大率:85%
微分幅:1mm
移動平均幅:±1画素
表示ゲイン:8
ネガ/ポジ:ポジ
以上の実施例1~8及び比較例1で測定した鏡面研磨前の実施例1、2、4、8、比較例1の写像性評価を表1に示す。また、曲率分布図を図7に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
上記表1及び図7に示すとおり、本実施形態における圧延接合体は、鏡面研磨前においてもうねりが小さく、優れた写像性を示した。このことは圧延接合体の表面のゆがみが小さいことを意味し、外観性に優れていることを示す。
一方で、比較例1に係る圧延接合体は、鏡面研磨前における写像性評価において、表1に示されるように、曲率分布の最大値と最小値の絶対値(|最大値-最小値|)の値が4000(μrad/mm)以上となり、外観性に課題が残されていた。
なお上記した実施形態と各実施例は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0110】
<鏡面研磨後のうねり>
上記鏡面研磨を施したサンプルのうち、実施例1~4、6及び8、並びに比較例1について、実施例1と同様にして触針式粗度計により断面曲線及びうねり曲線を得た。これらを図8(a)及び図8(b)に示す。また、そこから得られる各数値を表2に示す。
なお、算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ粗さ(Rz)を求める際には、触針式粗度計による測定条件を、JIS B 0601:2001に準拠して、以下のとおりとした。
ピックアップ :標準ピックアップ
測定種別 :粗さ測定
測定長さ :0.4mm
カットオフ値
λs:2.5μm
λc:0.08mm
測定速度 :0.3mm/s
カットオフ種別:ガウシアン
傾斜補正 :最小二乗曲線補正
【0111】
<鏡面研磨後の外観評価>
実施例1、2、4、6及び比較例1におけるサンプルを各々、ダイヤモンドスラリーによるバフ研磨により鏡面研磨を施した後に、各々光源を写し、その写り具合及びゆがみ具合を目視で確認して、以下のように評価した。
【0112】
(評価内容)
◎・・・像のゆがみが極めて少なく、実用に好適である。
○・・・像のゆがみが少なく、実用に好適である。
△・・・像のゆがみがやや多いものの、実用可能である。
×・・・像のゆがみが多く、実用に適さない。
測定した鏡面研磨後のうねり曲線より得られる各数値及び鏡面研磨後の粗度を表2に示す。
【0113】
<鏡面研磨後の写像性評価>
上記鏡面研磨後の実施例1、2、3、4、6、8及び比較例1における各サンプルのステンレス全面に対して、鏡面研磨前の実施例1と同様に面歪パターン測定装置(装置名:SurfRiDY-kit、JFEテクノリサーチ製)を用いて圧延方向の傾斜角分布を測定した。なお、各サンプルのサイズは50mm×100mmとした。得られた傾斜角分布を基に、サンプル表面内の1800mm以上5000mm以下の任意の範囲について、鏡面研磨前の実施例1と同様の方法で曲率分布へ変換し、曲率分布の標準偏差、最大値、最小値、最大値と最小値を差分した絶対値及び曲率分布図を求めた。測定した鏡面研磨後の実施例1、2、3、4、6、8、比較例1の写像性評価を表2に示す。また、曲率分布図を図9に示す。
【0114】
【表2】
【0115】
表2及び図9に示すとおり、本実施形態における圧延接合体は、鏡面研磨後においてもうねりが小さく、優れた写像性を示した。このことは圧延接合体の表面のゆがみが小さいことを意味し、外観性に優れていることを示す
一方で、比較例1に係る圧延接合体は、鏡面研磨後における写像性評価において、表2に示されるように、曲率分布の最大値と最小値の絶対値(|最大値-最小値|)の値が3000(μrad/mm)以上となり、外観性に課題が残されていた。
なお上記した実施形態と各実施例は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0116】
<実施例9>
引き続き、本実施形態の圧延接合体を用いて、電子機器用筐体に加工した実施例を以下に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例2で得られた圧延接合体を用いて、ステンレス層が外側、アルミニウム合金層が内側となるように、縦150mm×横75mm、深さ10mmで深絞り加工を行った。次に外側のステンレス層を鏡面研磨して電子機器用筐体を作製した。
【0117】
<実施例10>
実施例2で得られた圧延接合体を用いて、ステンレス層が外側、アルミニウム合金層が内側となるように、縦150mm×横75mm、深さ10mmで深絞り加工を行った。
次に、電子機器用筐体内部の実装スペースを確保する目的で、内側のアルミニウム合金層を研削加工した後、筐体の内部形状を公知の手法で樹脂成形した。
その後、外側のステンレス層を鏡面研磨し、PVD加飾によって銀色に加飾された電子機器用筐体を作製した。
【0118】
<電子機器用筐体のうねり>
実施例9、10で得られた電子機器用筐体背面の平面部(50mm×100mm)について、鏡面研磨前の実施例1と同様に触針式粗度計により断面曲線及びうねり曲線を得た。これらを図11に示す。また、そこから得られる各数値を表3に示す。
【0119】
<電子機器用筐体の粗度>
また、鏡面研磨後の実施例1と同様に、触針式粗度計を用いて、実施例9、10における上記平面部の算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ粗さ(Rz)を求めた。また、そこから得られる各数値を表3に示す。
【0120】
<電子機器用筐体の写像性>
さらに鏡面研磨前の実施例1と同様に面歪パターン測定装置(装置名:SurfRiDY-kit、JFEテクノリサーチ製)を用い、実施例9、10における上記平面部全面に対して電子機器用筐体の長手方向の傾斜角分布を測定した。得られた傾斜角分布を基に、上記平面部内における1800mm以上5000mm以下の任意の範囲について、鏡面研磨前の実施例1と同様の方法で曲率分布へ変換し、曲率分布の標準偏差、最大値、最小値、最大値と最小値を差分した絶対値及び曲率分布図を求めた。なお、ここで長手方向の傾斜角分布を測定した理由としては、圧延接合体の圧延方向と電子機器用筐体の長手方向が同じであったためである。よって、圧延接合体を電子機器用筐体へ加工した際の圧延方向に合わせて、写像性評価を実施することが望ましい。また、そこから得られる各数値を表3に示す。また、曲率分布図を図12に示す。
【0121】
【表3】
【0122】
表3、図11及び図12に示すとおり、本実施形態における電子器筐体はうねりが小さく、優れた写像性を示した。このことは圧延接合体の表面のゆがみが小さいことを意味し、外観性に優れていることを示す。
【0123】
<実施例11>
以下に、圧延接合体を構成する金属の種類を変更した場合における実施例を挙げて本発明について具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
表面活性化接合法により純チタン板とアルミニウム合金板との圧延接合体(厚み:0.88mm)を準備した。まず、第1金属層10となる金属板として厚み0.2mmの純チタン板(TP270)を用い、第2金属層20として厚み0.8mmのアルミニウム合金板(A5052)を用いた。TP270とA5052に対してスパッタエッチング処理を施した。TP270についてのスパッタエッチングは、0.1Pa下で、プラズマ出力700W、13分間の条件にて実施し、A5052についてのスパッタエッチングは、0.1Pa下で、プラズマ出力700W、13分間の条件にて実施した。
【0124】
スパッタエッチング処理後のTP270とA5052を、常温で、圧延ロール径130~180mm、圧延線荷重1.9tf/cm~4.0tf/cmの加圧力にてロール圧接により接合して、TP270とA5052の圧延接合体を得た。この圧延接合体に対し、300℃、1時間の条件でバッチ焼鈍を行った。
得られた圧延接合体において、純チタン層の厚みは0.18mm、アルミニウム合金層の厚みは0.70mmであった。
【0125】
<純チタンとアルミニウム合金から成る圧延接合体のうねり>
実施例11で得られた圧延接合体を50mm×100mmに切り出し、鏡面研磨前の実施例1と同様に触針式粗度計により断面曲線及びうねり曲線を得た。これらを図13に示す。また、そこから得られる各数値を表4に示す。
【0126】
【表4】
【0127】
<実施例12>
引き続き、圧延接合体が3層構成である場合の実施例を用いて本発明を説明するが、本発明は以下に限定されるものではない。
表面活性化接合法によりステンレスと純アルミニウム板から構成される3層の圧延接合体(厚み:0.3mm)を準備した。まず、第1金属層111となる金属板として厚み0.05mmの純アルミニウム板(1N30)を用い、中間金属層112として厚み0.2mmのステンレス板(SUS304)を用い、第2金属層113として厚み0.05mmの純アルミニウム板(1N30)を用いた。
第1金属層となる1N30と中間金属層となるSUS304に対してスパッタエッチング処理を施した。SUS304についてのスパッタエッチングは、0.1Pa下で、プラズマ出力700W、13分間の条件にて実施し、1N30についてのスパッタエッチングは、0.1Pa下で、プラズマ出力700W、13分間の条件にて実施した。
【0128】
スパッタエッチング処理後の1N30とSUS304を、常温で、圧延ロール径130~180mm、圧延線荷重1.9tf/cm~4.0tf/cmの加圧力にてロール圧接により接合して、1N30とSUS304の2層構成の圧延接合体を得た。
【0129】
次に、前記2層構成の圧延接合体のSUS304面と、第2金属層となる1N30の接合する面に対してスパッタエッチング処理を施した。前記2層構成の圧延接合体のSUS304についてのスパッタエッチングは、0.1Pa下で、プラズマ出力700W、13分間の条件にて実施した。また、1N30についてのスパッタエッチングは、0.1Pa下で、プラズマ出力700W、13分間の条件にて実施した。
【0130】
スパッタエッチング処理後の前記2層構成の圧延接合体のSUS304面と、第2金属層となる1N30面とを重ね合わせ、常温で圧延ロール径130~180mm、圧延線荷重1.9tf/cm~4.0tf/cmの加圧力にてロール圧接により接合して、第1金属層が1N30となり、中間金属層がSUS304となり、第2金属層が1N30となる3層構成の圧延接合体を得た。この圧延接合体に対し、250℃、1時間の条件でバッチ焼鈍を行った。
得られた圧延接合体において、第1金属層1N30の厚みは0.05mm、中間金属層SUS304の厚みは0.2mm、第2金属層1N30の厚みは0.05mmであった。
【0131】
<3層構成の圧延接合体のうねり>
実施例12で得られた3層構成の圧延接合体を50mm×100mmに切り出し、鏡面研磨前の実施例1と同様に触針式粗度計により、第1金属層1N30と第2金属層1N30について断面曲線及びうねり曲線を得た。これらを図14に示す。また、そこから得られる各数値を表5に示す。
【0132】
【表5】
【0133】
以上説明した本発明の実施形態および実施例によれば、外面側における表面の「うねり」を抑制した圧延接合体を提供することができ、例えば美しい金属光沢及び写像性を有する電子機器の筐体として好適に応用することができる。
なお上記した実施形態と各実施例は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加の変形や切削、加飾が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の圧延接合体は、例えばモバイル電子機器の筐体などに用いられることで優れた外観性と放熱性などを示し、電子機器を用いる幅広い分野の産業への適用が可能である。
【符号の説明】
【0135】
1 圧延接合体
2 コイル状圧延接合体
3 コイル状圧延接合体
10 第1金属層
20 第2金属層
110 圧延接合体
111 第1金属層
112 中間金属層
113 第2金属層
71 TVカメラ
72 プロジェクタ
73 サンプル
74 スクリーン
8 電子機器用筐体
80 電子機器用筐体背面
81 電子機器用筐体側面
A 電子機器用筐体背面の平面部
図1
図2
図3
図4
図5(a)】
図5(b)】
図6
図7
図8(a)】
図8(b)】
図9
図10
図11
図12
図13
図14