(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】ミューオン撮像による固体物体の非侵襲的検査のための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/04 20180101AFI20220106BHJP
G01T 1/22 20060101ALI20220106BHJP
G01N 23/046 20180101ALI20220106BHJP
G01V 5/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
G01N23/04
G01T1/22
G01N23/046
G01V5/00 Z
(21)【出願番号】P 2018524813
(86)(22)【出願日】2016-11-17
(86)【国際出願番号】 IB2016056937
(87)【国際公開番号】W WO2017089932
(87)【国際公開日】2017-06-01
【審査請求日】2019-11-15
(31)【優先権主張番号】UB2015A005808
(32)【優先日】2015-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518162773
【氏名又は名称】イスティトゥート ナツィオナーレ ディ アストロフィージカ
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】カタラーノ,オスヴァルド
(72)【発明者】
【氏名】コンコーニ,パオロ
(72)【発明者】
【氏名】クズマーノ,ジャンカルロ
(72)【発明者】
【氏名】デル サント,メラニア
(72)【発明者】
【氏名】ラ ローザ,ジョヴァンニ
(72)【発明者】
【氏名】マッカローネ,マリア コンチェッタ
(72)【発明者】
【氏名】ミネオ,テレサ
(72)【発明者】
【氏名】パレスキ,ジョヴァンニ
(72)【発明者】
【氏名】ソッティーレ,ジュゼッペ
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06518580(US,B1)
【文献】特開2013-002830(JP,A)
【文献】特開2006-226998(JP,A)
【文献】CATALANO,O.,Volcanoes muon imaging using Cherenkov telescopes,arXiv.org,2015年11月05日,pp.1-21,https://arxiv.org/abs/1511.01761,検索日 2020-12-02
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-23/2276
G01T 1/00-7/12
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミューオン撮像による固体物体の非侵襲的検査のための装置において、
-検査される物体の部分を通過する宇宙線に関連するミューオン束
から発生するチェレンコフ放射を
検出するように適合される受信機(3)と、
-前記ミューオン束に関連するチェレンコフ放射の量を検出するように適合されるセンサ手段(4)と、
-検査される前記物体の前記部分に入射する前記ミューオン束のエネルギー及び方向を再構築して、検査される前記物体の前記部分の局所的密度を計算するように適合される電子処理手段とを備える、装置であって、
前記受信機(3)は、ミューオンに関連する前記チェレンコフ放射を前記センサ手段(4)に向かって運ぶように適合される、反射特性及び/または回折特性を有する
1次受信表面(6)
及び2次受信表面(10)を備える光学デバイス(5)を備え、前記センサ手段(4)は、ミューオン束の前記エネルギー及び方向の関数として半径及び位置変数を有する前記ミューオンの環状画像を提供するように適合される検出チャンバー(8)を備え
、
前記光学デバイス(5)は、前記2次受信表面(10)が前記1次受信表面(6)に面しかつ整列させた状態で2重反射及び/または回折を有するタイプであり、前記2次受信表面(10)は、前記2次受信表面(10)に面する前記検出チャンバー(8)に向かって、前記2次受信表面(10)によって受信される光子の前記流れを移送し、光子の前記流れを集中させるためのものであり、前記光学デバイス(5)はプラスチック材料で作られたフレネルレンズからなることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記検出チャンバー(8)は、前記受信用光学デバイス(5)の焦点面に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記光学デバイス(5)は、チェレンコフ光子の流れを前記焦点面に向かって運ぶように適合される1次受信表面(6)を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記光学デバイス(5)は、10°と15°との間の、好ましくは12°に近い収束範囲を有するように設計されることを特徴とする、請求項1から
3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
複数の前記光学デバイスであって、異なる方向からやって来るミューオン束を検出するため、それぞれのセンサ手段及びそれぞれの電子処理手段に連結され、前記光学デバイスの少なくとも1つの光学デバイスは、前記少なくとも1つの光学デバイスの検出方向を変更するため可動である、複数の前記光学デバイスを備えることを特徴とする、請求項1から
4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記
検出チャンバー(8)は、ミューオン束のエネルギー及び方向の関数としてアナログ信号を生成するように適合される、SiPMタイプ、光電子増倍管、または同様なものの光子センサを備え、前記電子処理手段は、前記アナログ信号をデジタル信号に変換するように適合される処理ユニットを備えることを特徴とする、請求項1から
5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記電子処理手段は、前記チェレンコフ放射の信号を検出し、異なる方向に沿って、検査される前記部分を通過する前記ミューオン束の減衰差及びエネルギーを測定するように適合される分析を実施し、前記検査される部分の局所的密度を決定するように適合されることを特徴とする、請求項
6に記載の装置。
【請求項8】
ミューオン撮像による固体物体の非侵襲的検査のための方法であって、
a.少なくとも1つの検出平面に沿って、検査される物体の部分を通過する宇宙線に関連するミューオン束
から発生するチェレンコフ放射を
検出するステップと、
b.
前記ミューオンの環状画像を規定するために検出された
前記ミューオン束に関連するチェレンコフ放射の量を検出するステップと、
c.プラスチック材料で作られたフレネルレンズを使用して2重反射及び/または回折によって検出チャンバー(8)に向かって前記チェレンコフ放射を移送し、集中させるステップと、
d.検査される前記物体の前記部分に入射する前記ミューオン束のエネルギー及び方向を再構築して、前記環状画像の半径及び位置変数として前記ミューオン束のエネルギー及び方向を計算し、前記検査された物体の局所的密度を、前記計算されたエネルギー及び方向の関数として測定する
ために、
検出された前記チェレンコフ放射を電子処理するステップとを含む、方法。
【請求項9】
前記ミューオン束
から発生する前記チェレンコフ放射は、複数の検出平面に沿って
検出され、前記平面の少なくとも1つの平面は、検査される前記物体の3Dトモグラフィを実施するために可動であることを特徴とする、請求項
8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器を測定する技術分野に適用があり、本発明は、土木工学、考古学、火山学、構造学において、また、たとえ大きな寸法でもその地質学的及び/または工学的構造のラジオグラフィック及び/またはトモグラフィック非破壊検査が必要であるところではどこでも使用可能なミューオン撮像による固体物体の非侵襲的検査のための装置に関する。
【0002】
本発明は、更に、前記装置によって実装可能なミューオン撮像による非侵襲的検査のための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
「追跡(tracking)」技法に基づくトモグラフィック調査が知られており、トモグラフィック調査は、調査される材料を通過する宇宙線の荷電粒子に関連するエネルギーの検出を利用して、非侵襲的検査を実施する。
【0004】
こうした技法は、検出平面、通常、シンチレーティング平面を通過する間に、正確に分析されると粒子の起源の方向を与える電気パルスを生成する、粒子の軌跡を表示することに基づいている。
【0005】
1次宇宙線(ハドロン及びガンマ光子)と大気の原子との相互作用は、他の粒子のシャワーを生成し、その中で、多くのパイオンは、非常に急速に崩壊して、ミューオン、高透過粒子になる。
【0006】
後に、ミューオンは、長い崩壊時間を有し、主に、クーロン力を通して物質と相互作用するため、地球表面に達することができ、海水面で、1分間に1平方センチあたり1ミューオンの等方性透過荷電放射線束を生じる。
【0007】
巨大物体のラジグラフィ/トモグラフィのためのミューオン「追跡」技法は、ミューオンの高い透過性及び交差材料における電磁気的相互作用を通した巨大物質の同時発生のエネルギー喪失を利用する。その理由は、エネルギー吸収が、交差材料の厚さ及び密度ならびに入射ミューオンのエネルギーに依存するからである。
【0008】
したがって、出て行くミューオンは、入射ミューオンより低いエネルギーを有し、更に、交差するときに起こる多くの小さな角度偏向(クーロン散乱)によって元の方向から偏向する。
【0009】
更に、平均偏向角度は、粒子の運動量の逆数及び所定の放射長で測定される材料の真密度の2乗根に比例する。
【0010】
したがって、異なる方向で交差する物質の量の関数としてミューオン束の減衰を測定することによって、調査される材料の分布密度を決定することが可能である。
【0011】
特に火山学分野で使用され、既知の地球物理学的調査技術は、例えば、特開2006-0096285号公報に記載されるように、火山からやって来るミューオンを検出する、光電子増倍管またはシリコン光電子増倍管のような光検出器によって読取られる、シンチレータバーを有するテレスコープを使用することを可能にする。
【0012】
しかし、こうした機器によって生成される信号は、例えば、事象をシミュレートするテレスコープ平面に同時に衝突する低エネルギー粒子、および、調査される材料を通過する束と逆の方向から到達する束である、いわゆる逆方向束による、偶発的同時発生の効果によって影響を受ける。
【0013】
更にこうした機器は、観測データと比較されるための物体を通る統合された束モデルを計算するために知られていなければならない、不当なミューオンのエネルギースペクトルに関する情報を提供しない。
【0014】
部分の機器は、最大6個のシンチレータ平面を、鉛吸収平面と鉄吸収平面との間に挿入することによって後方束を制限しようと試みた。この解決策は、たとえ完全にではなくても、非コヒーレントなミューオンの背景をかなり減少させたが、同様に、機器の重量を過度に増加させ、その輸送可能性及びコンパクトさを制限した。
【0015】
特開2010-101892号公報は、シンチレータ平面のエンドスコープを通過するミューオンの軌道を検出することに基づく火山学分野において適用される測定技法を記載する。
【0016】
しかし、そのような技法は、避けることのできない背景粒子による誤検知のレベルを減少させるのに十分高等な多くの検出層及び、分解能時間を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】特開2006-0096285号公報
【文献】特開2010-101892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、特に効率的および非常に安価である、ミューオン撮像による固体物体の非侵襲的検査のための装置を提供することによって、先に述べた欠点を克服することである。
【0019】
特定の目的は、たとえ大きな寸法であってもその構造のラジオグラフィ及び/またはトモグラフィが、誤差を最小にしながら、また、既知の技法に比べてかなり少ない時間をかけながら、確実に実施されることを可能にする、ミューオン撮像による固体物体の非侵襲
的検査のための装置を提供することである。
【0020】
更に別の目的は、おそらくは輸送されるため、また、火山のような大きな物体のラジオグラフィ及び/またはトモグラフィ調査を迅速かつ確実な方法で可能にするため、かなり減少した負担及び重量を有する、ミューオン撮像による固体物体の非侵襲的検査のための装置を提供することである。
【0021】
更に別の目的は、使用されるのに柔軟性がある、ミューオン撮像による固体物体の非侵襲的検査のための装置を提供することである。
【0022】
更なる目的は、特に確実かつ安価であり、また、システムエラー及び誤検知が最小化されることを可能にする、ミューオン撮像による固体物体の非侵襲的検査のための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
こうした目的ならびに以下でより明白になる他の目的は、ミューオン撮像による固体物体の非侵襲的検査のための装置によって達成され、装置は、請求項1によれば、検査される物体の部分を通過する宇宙線に関連するミューオン束から発生するチェレンコフ放射を検出するように適合される受信機と、検出されたミューオン束に関連するチェレンコフ放射の量を検出するように適合されるセンサ手段と、局所的密度を計算するために検査される、物体の部分に入射するミューオン束のエネルギー及び方向を再構築するように適合される電子処理手段とを備える。
【0024】
受信機は、ミューオンに関連するチェレンコフ放射を前記センサ手段に向かって運ぶように適合される、反射特性及び/または回折特性を有する少なくとも1つの受信表面を備える光学デバイスを備える。
【0025】
センサ手段は、次に、ミューオン束のエネルギー及び方向の関数として半径及び位置変数を有するミューオンの環状画像を提供するように適合される検出チャンバーを備える。
【0026】
こうした特性の組合せによって、ミューオン追跡技法が密度測定を得るために使用される機器に比べて極端に単純かつ確実な機器を使用することが可能になるであろう。
【0027】
更に、調査は、十分に確立されかつ効率的な技法であるチェレンコフリング画像の分析及び再構築に基づく。ミューオンエネルギーの測定は、同様に、物体の内部の吸収が評価されることを可能にし、したがって、物体の内部のミューオンの真の経路が効果的に決定されることを可能にする。
【0028】
更なる利点は、大気がミューオン・チェレンコフ光子変換媒体であるため、例えば、プラスチックシンチレータ等のアクティブ要素が、ミューオンを検出するために必要とされないことである。
【0029】
有利には、前記検出チャンバーは、前記受信機光学デバイスの焦点面に配置され得る。
【0030】
光学デバイスは、チェレンコフ光子束を前記焦点面に向かって運ぶことを意図される1次受信平面を備え得る。
【0031】
更に、光学デバイスは、2次受信表面が前記1次受信表面に面しかつ整列させた状態で2重反射及び/または回折を有するタイプであり得、2次受信表面は、前記2次受信表面
に面する前記検出チャンバーに向かって、2次受信表面によって受信される光子束を移送し、光子束を集中させるためのものである。
【0032】
そのため、ミューオンによって生成されるチェレンコフ信号は、指向性がありかつ非常にコリメートされていることになり、また、不可避的に偽の同時計数の一因となる大気中で発生した、他のミューオンによって生成される逆方向束をなくすことが可能にする。
【0033】
光学軸に関して、チェレンコフ光子の放射円錐の角度サイズである1.3°の角度内で、光学デバイスの受信表面から到達するミューオンだけが、光学デバイスの焦点面においてチェレンコフリングを発生できることになる。
【0034】
適切には、装置は、異なる方向からやって来るミューオン束を検出するため、それぞれのセンサ手段及びそれぞれの電子処理手段に連結され、前記光学デバイスの少なくとも1つの光学デバイスは、検出方向を変更するため可動である、多数の前記光学デバイスを備え得る。
【0035】
そのため、3Dトモグラフィを実施するため、調査下の材料物体の周りにミューオン束の検出平面を配置することを可能にする。
【0036】
本発明の別の態様によれば、上記利点の全てを有する請求項9によるミューオン撮像による固体物体の非侵襲的検査を提供する方法がある。
【0037】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項から得られる。
【0038】
本発明の更なる特徴及び利点は、添付図表の助けによって非制限的な例として示される、本発明によるミューオン撮像による固体物体の非侵襲的検査のための装置の、好ましいが非排他的な実施形態の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図2】ミューオンの2つの異なる衝突状態において、装置によって発生されるミューオンの画像を示す図である。
【
図3】好ましい構成による、装置に属する光学デバイスの略図である。
【
図4】画像の中心に関して測定される半径の関数としての、収束範囲の或る角度について画像内に封入される光子のスポットダイアグラム及び割合に関するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
添付図を参照すると、添付図は、ミューオン撮像による固体物体の非侵襲的検査のための装置の、好ましいが非排他的な構成を示す。
【0041】
特に、
図1は、可動タイプの、すなわち、容易に輸送され異なる検出エリアに設置されるよう可動構造2内に搭載された、全体的に1で示す装置の好ましい配置構成を概略的に示す。そのため、装置1は、おそらくは、必ずしも互いに同じではない、本発明による2つ以上の装置を備えるシステムにおいて、2Dラジオグラフィ及び3Dトモグラフィのために共に使用され得る。
【0042】
装置1は、本質的に、検査される物体の部分を通過する宇宙線に関連するミューオン束から発生するチェレンコフ放射を検出するように適合される受信機3と、検出されたミューオン束に関連するチェレンコフ放射の量を検出するように適合されるセンサ手段4と、局所的密度を計算するために、検査される物体の部分に入射するミューオン束のエネルギー及び方向を再構築するように適合される、センサ手段の機械的構造内に埋め込まれるため目に見えない、電子処理手段とを備える。
【0043】
受信機3は、ミューオンに関連するチェレンコフ放射をセンサ手段に向かって運ぶように適合される、反射特性を有する少なくとも1つの受信表面6を備える光学デバイス5を備える。
【0044】
特に、反射表面6は、ミューオン束から発生するチェレンコフ放射を検出し、ミューオン束をセンサ手段4に向かって方向付けるために適切に設計されたミラー7に属する。センサ手段4は、受信用光学デバイス5の焦点面に配置され、ミューオン束のエネルギー及び方向の関数として半径及び位置変数を有するミューオンの環状画像を提供するように適合される検出チャンバー8を備える。
【0045】
図2は、
検出チャンバー8によって処理されたミューオンの典型的な環状画像を示す。特に、左の画像は、ミューオンが受信表面に衝突する場合を示し、一方、右の画像は、ミューオンの衝突点が受信表面の外にある場合を示す。
【0046】
好ましいが非排他的な示す構成によれば、光学デバイス5は、それぞれの反射表面を有する1次ミラー7及び2次ミラー9を有する2重ミラータイプである。
【0047】
1次反射受信表面6は、チェレンコフ光子束を検出し、チェレンコフ光子束を、1次受信表面6に面しかつ、整列させた2次反射表面10上に運ぶことを意図される。
【0048】
センサ手段4は、焦点面のアライメントを得るため2次反射表面10に面する適切な検出チャンバー8と一緒に、2つの反射表面6と10との間に挿入される。
【0049】
こうしたアライメントは、装置1が保持構造2に締結されることを可能にすることに加えて、ミラー7、9及びチャンバー8が互いに締結されることを可能にする、適した機械的支持構造11によって得られる。
【0050】
そのため、反射タイプの2次受信表面10は、1次表面6によって受信された光子束を移送し、光束に直面する検出チャンバー8に向かって光子束を集中させ得る。
【0051】
光学デバイス5の特定の構成は、分解能ニーズに、また同様に空間ニーズに応じて選択され得る。
図3は、2つの受信表面6、10が、球面収差及びコマ収差を補正するために設計された2つの非球面ミラー7、9によって画定されるSchwarzschild-Couderタイプの考えられる構成を概略的に示す。
【0052】
こうした構成は、より高い分解能を有するため、観測収束範囲が10°と15°との間に、好ましくは12°の付近に設けられることを可能にする。
【0053】
更に、こうした構成は、焦点面のピクセルの寸法をSiPMのような現代の光子検出器に調和させながら、チャンバー8の寸法がかなり低減されることを可能にする。
【0054】
1つの例示的な形態において、1次ミラー7は、1次反射表面6を形成する8つの部分からなり得、2100mmの直径を有する。2次ミラー9は、一枚岩的であり、800mmの直径を有する。1次ミラー7と2次ミラー9との距離は、1600mmであり、チャンバー8は2次ミラー9から275mmの距離に設置される。
【0055】
光学設計ソフトウェアZEMAXによって実施されたシミュレーションは、こうした構
成において、格子の80%が2.8mmの範囲内に集中することを示す。
【0056】
図4は、画像の中心に関して測定される直線寸法(半径)の関数としての、フォーカス範囲の或る角度について画像内に封入される光子のスポットダイアグラム及び割合に関する幾つかのグラフを示す。
【0057】
Schwarzschild-Couder構成は、負担を低減し、高い視準を得るという利点を有するが、排他的な構成ではない。
【0058】
例えば、同様にプラスチック材料で作られたフレネルレンズを使用することが可能であり、装置1の重量を更に低減し、装置1の輸送可能性を改善するという利点を有する。
【0059】
代替の図示しない構成によれば、受信表面6、10は、回折タイプであり得る。特に、ミラー7、9の代わりに、ミューオン束を、チャンバー8が配置されることになる焦点面に向かって運ぶため、2つの適切に設計されたレンズを使用することが可能である。
【0060】
特に、関連する検出チャンバー8を有するセンサ手段4は、2次レンズの焦点に設置されることになる。
【0061】
受信表面が反射ミラーであり、一方、他の表面が屈折レンズであるハイブリッド構成が同様に可能である。
【0062】
光学デバイス5について使用される特定の構成によらず、装置1は、3Dトモグラフィを実施するため、異なる方向からやって来るミューオン束を検出するために、それぞれのセンサ手段及びそれぞれの電子処理手段に連結された複数の光学デバイスを備えるシステムで構成され得る。
【0063】
光学デバイスは、必ずしも同じタイプである必要はなく、また好ましくは、光学デバイスの少なくとも1つの光学デバイスは、その検出方向を変えるため、おそらくはエネルギーの観点から自律的な可動構造内に挿入され得る。
【0064】
センサ手段4の特性に関して、検出チャンバー8は、SiPMタイプ、光電子増倍管、または同様なものの光子センサを備え、光子センサは、電子処理手段に送出されるアナログ信号を、ミューオン束の入射光子及び方向の関数として生成することを意図され、電子処理手段は、適切な処理ユニットによってアナログ信号をデジタル信号に変換することを可能にする。
【0065】
特に、電子処理手段は、チェレンコフ放射の信号を検出すること、そして、異なる方向に沿って、検査される部分を通過するミューオン束の減衰差及びエネルギーを測定し、したがって、検査される物体の局所的密度を決定することを意図される分析を実施することを意図される。
【0066】
検出チャンバー8は、本質的に、その主要な機能が全ての電子構成要素を含むことである機械的構造、ならびに、実際の電子構成要素、その中で、電圧分配モジュール、検出器、画像プロセッサ、ならびにコマンド及びデータ通信モジュールで構成される。
【0067】
1つの例示的な方法において、検出チャンバー8の機械的構造は、300mmの直径サイズ及び300mmの高さサイズを有する円筒形状を有し、適切には、反射するか、または回折した光子が入るための透明窓、及び、光学デバイス5の支持構造11に接続するための機械的インタフェースフランジを備える。
【0068】
チャンバー8の電子機器は、SiPMセンサ、フロントエンド電子機器、及びバックエンド電子機器を備える。
【0069】
フロントエンド電子機器の主要な役割は、SiPMのアナログ信号をデジタル信号になるよう処理することであり、一方、バックエンド電子機器は、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)によってデータの読取り及び管理を含むシステムの全体の挙動を管理し制御する。
【0070】
バックエンド電子機器は、例えば温度及び電圧等のシステムの状態情報を含むデータの全ストリームを処理し、外部コンピュータに送信するために必要な全ての機能を更に提供する。
【0071】
チャンバー8の焦点面は、例えば、寸法57mm*57mm*30mmの16のモジュールで構成されたモジュール式タイプである。各モジュールは、SiPM(8ピクセル*8ピクセル)を有する基板、SiPMの信号を読取り処理するASIC基板、及び、フロントエンド電子機器の全ての操作機能を制御し管理するFPGA基板を含む。各モジュールの基板は、例えばアルミニウムで作られた金属ケーシングに機械的に締結され、コネクタによって互いに接続され得る。16のモジュールは、228mm*228mmの寸法の場合、4*4モジュールを含むグリッドで幾何学的に配置され、アルミニウム支持体に機械的に締結されることになる。
【0072】
バックエンド電子機器は、システムプロセッサであり、引き起こされる事象の速度より速い速度でデータを受信し処理することができなければならない。バックエンド電子機器は、焦点面の電子機器のための/に対するデータ及びコマンドのストリームを制御しモニターするFPGAに基づく。
【0073】
電圧分配基板は、24Vの単一入力電圧を使用することによって異なるモジュールに対して必要な電圧を提供する。基板は、基板に接続される各サブシステムを独立してイネーブル/ディスエーブルすることを可能にする。
【0074】
データ収集システム、例えば、イーサネット(登録商標)ケーブルを通してバックエンド基板に接続された可搬型PCが同様に設けられ、データ収集システムから、コマンドが送出され、データが受信される。
【0075】
しかし、チャンバー8が、本発明の保護範囲から逸脱することなく、異なる方法で、例えば、異なる数のモジュールを持つよう及び/またはその空間における異なる配置構成を持つように同様に設計され得ることが明らかである。
【0076】
先に開示されたものから、本発明による装置及び方法が先に述べた目的を達成することが明らかである。
【0077】
本発明による装置及び方法は、添付特許請求の範囲において開示される本発明の教示内に全てが入る、多くの変更及び変形が可能である。本発明の保護範囲から逸脱することなく、全ての詳細は、他の技術的に同等な要素によって置換され得、材料は、必要に応じて異なり得る。
【0078】
たとえ装置及び方法が、特に添付図を参照して述べられても、説明及び特許請求の範囲において使用される参照数字は、本発明の理解を改善するために使用され、請求される保護範囲に対する制限を構成しない。