IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイエル・クロップサイエンス・アーゲーの特許一覧

特許69944983-アミノ-1-(2,6-二置換フェニル)ピラゾール類を調製する方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】3-アミノ-1-(2,6-二置換フェニル)ピラゾール類を調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 231/38 20060101AFI20220128BHJP
   C07C 255/66 20060101ALI20220128BHJP
   C07C 253/30 20060101ALI20220128BHJP
   B01J 23/04 20060101ALI20220128BHJP
   B01J 27/10 20060101ALI20220128BHJP
   B01J 27/08 20060101ALI20220128BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
C07D231/38 A
C07C255/66 CSP
C07C253/30
B01J23/04 Z
B01J27/10 Z
B01J27/08 Z
C07B61/00 300
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019507935
(86)(22)【出願日】2017-08-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-03
(86)【国際出願番号】 EP2017070305
(87)【国際公開番号】W WO2018033467
(87)【国際公開日】2018-02-22
【審査請求日】2020-08-05
(31)【優先権主張番号】16184135.8
(32)【優先日】2016-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507203353
【氏名又は名称】バイエル・クロップサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】サマーン,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン,ダブリュー・ジェー・ケネディ
(72)【発明者】
【氏名】フォン・モルゲンシュテルン,サシャ
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/150252(WO,A1)
【文献】特表2015-535843(JP,A)
【文献】Haviv, Fortuna; Ratajczyk, James D.; DeNet, Robert W.; Kerdesky, Francis A.; Walters, Roland L.; Schmidt, Steven P.; Holms, James H.; Young, Patrick R.; Carter, George W.,3-[1-(2-Benzoxazolyl)hydrazino]propanenitrile derivatives: inhibitors of immune complex induced inflammation,Journal of Medicinal Chemistry ,1988年,31(9),,1719-28
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D201/00-521/00
C07C 1/00-409/44
C07B 31/00- 61/00
B01J 21/00- 38/74
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
〔式中、
、R及びRは、互いに独立して、ブロモ、クロロ、フルオロ、シアノ、(C -C )アルキル、(C -C )アルコキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、(C -C )アルキルチオ;
nは、0及び1からなる群から選択される数を表し;及び、
及びR は、互いに独立して、水素、シアノ、(C -C )アルキル、(C -C )アルコキシ、トリフルオロメチル、(C -C )アルキルチオを表す
で表される化合物を調製する方法であって、
第1段階において、式(IV)
【化2】
〔式中、R、R、R及びnは、上記で記載されている意味を有する〕
で表される化合物又はその塩を、触媒量の塩基の存在下で、式(V)
【化3】
〔式中、R及びRは、上記で記載されている意味を有する〕
で表されるE-異性体又はZ-異性体としての化合物と反応させて、式(III)
【化4】
〔式中、R、R、R、R、R及びnは、上記で記載されている意味を有する〕
で表される化合物が得られ;
式(III)で表される該化合物を、第2段階において、酸の存在下で環化させて、式(II)
【化5】
〔式中、R、R、R、R、R及びnは、上記で記載されている意味を有する〕
で表される化合物を生成させ;
式(II)で表される該化合物を、第3段階において、 、NaI、KI及びHIから選択される触媒量のヨウ化物源及びカルボン酸またはHIの存在下で、式(I)で表される化合物に変換させる;
前記調製方法。
【請求項2】
、R 及びR は、互いに独立して、クロロ、フルオロ又はトリフルオロメチルを表し;
nは、0及び1からなる群から選択される数を表し、n=1の場合、R は4位にあり;及び
及びR は、水素を表す;
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
は、フルオロを表し;
は、フルオロを表し;
nは、0を表し;
は、水素を表し;及び、
は、水素を表す;
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項3に記載の調製方法で得られた化合物を、式(VI)
【化6】
〔式中、Mは、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルスルファニル、又はアシルオキシを表す〕
で表される化合物と反応させて、式(VII)
【化7】
で表される化合物を得る段階を付加的に含んでいる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】

【化8】
で表される化合物。
【請求項6】
請求項5に記載の化合物を調製する方法であって、式
【化9】
で表される化合物又はその塩を、触媒量の塩基の存在下で、式
【化10】
で表されるアクリロニトリルと反応させる、前記調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリロニトリルのフェニルヒドラジンへのマイケル付加、対応するマイケル付加体の環化及びそれに続く得られた5-アミノ-1-フェニル-3,4-ジヒドロピラゾールの酸化からなる反応順序による、式(I)
【化1】
【0002】
〔式中、R、R、R、R、R及びnは、以下に記載されている意味を有する〕
で表される3-アミノ-1-((2,6-二置換)フェニル)ピラゾールの効率的な調製を開示する。
【背景技術】
【0003】
式(I)で表される化合物及びそれらの誘導体は、例えば望ましくない有害な生物(harmful pest)を防除するために使用することが可能な、生物活性化合物を合成するための重要な構成単位である。
【0004】
さまざまなアミド-ピラゾール類が、重要な用途、例えば、有害生物(pest)防除剤としての用途を示したことは知られている(例えば、WO2014/053450A1、WO2015/144652A2、WO2015/150252A1)。
【0005】
3-アミノ-1-フェニル-ピラゾール類の合成に関しては、文献に記載されている。古典的な合成は、2段階プロセスである。最初に、フェニルヒドラジンをエタノール中で大過剰量のNaOEtを用いてアクリロニトリルと反応させて、5-アミノ-1-フェニル-3,4-ジヒドロピラゾール類を中間体として調製する(J. Chem. Soc. 1954, 408; Chem. Ber. 1965, 98, 3377; Tetrahedron Lett. 1998, 39, 5845)。該反応は、報じられているところによれば、マイケル付加によって起こって、α-シアノエチルヒドラジン中間体を生成し、次いで、このα-シアノエチルヒドラジン中間体をその場で環化させて、該5-アミノ-3,4-ジヒドロピラゾールとする。次に、これらのジヒドロピラゾール誘導体を、最も一般的には、酸化剤、例えば、DDQ(US2007/0112034A1; Bioorg. Med. Chem. 2002, 10, 817)、p-クロラニル(WO2013/031922A1)、MnO(J. Med. Chem. 2012, 55, 8211; US2004/0116475A1)又はNBS(WO2011/132017A1)を用いて、酸化させて、対応する3-アミノ-ピラゾール類とする。
【0006】
別の可能性は、フェニルヒドラジン類を対応する3-アミノ-1-フェニル-ピラゾール類に直接変換させることである。この場合、該ヒドラジンは、二重結合上に脱離基を有するアクリロニトリル誘導体と反応している。一般的な例は、フェニルヒドラジンと、3-メトキシアクリロニトリルの反応(Tetrahedron 2013, 69, 8429; Pharmaceuticals 2015, 8, 257)、3-クロロ-アクリロニトリルの反応(Sci. Synth. 2002, 12, 15)、又は、3-MeN-アクリロニトリル誘導体の反応(Lett. Org. Chem. 2015, 12, 187)である。
【0007】
別の合成経路は、ハロゲン化フェニルと3-アミノピラゾールの間のC-N-カップリングである。そのようなカップリングに関しては幾つかの前例があり、そして、該ピラゾール単位における3つの窒素の間の選択性は、所望の1位におけるアリール化を促進するように思われる。3-アミノピラゾールとヨウ化アリール(WO2015/172196A1; Bull. Korean Chem. Soc. 2012, 33, 2067)又は3-アミノピラゾールとフェニルボロン酸(WO2010/014453A1; Chem. Comm. 2014, 50, 12911)の銅が触媒する数種類のカップリンが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際特許出願公開第2014/053450A1号
【文献】国際特許出願公開第2015/144652A2号
【文献】国際特許出願公開第2015/150252A1号
【文献】米国特許出願公開第2007/0112034A1号
【文献】国際特許出願公開第2013/031922A1号
【文献】米国特許出願公開第2004/0116475A1号
【文献】国際特許出願公開第2011/132017A1号
【文献】国際特許出願公開第2015/172196A1号
【文献】国際特許出願公開第2010/014453A1号
【非特許文献】
【0009】
【文献】J. Chem. Soc. 1954, 408
【文献】Chem. Ber. 1965, 98, 3377
【文献】Tetrahedron Lett. 1998, 39, 5845
【文献】Bioorg. Med. Chem. 2002, 10, 817
【文献】J. Med. Chem. 2012, 55, 8211
【文献】Tetrahedron 2013, 69, 8429
【文献】Pharmaceuticals 2015, 8, 257
【文献】Sci. Synth. 2002, 12, 15
【文献】Lett. Org. Chem. 2015, 12, 187
【文献】Bull. Korean Chem. Soc. 2012, 33, 2067
【文献】Chem. Comm. 2014, 50, 12911
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一般に、上記方法は、式(I)で表される3-アミノ-1-((2,6-二置換)フェニル)ピラゾールの合成には使用することができない。文献の実施例は、該フェニル環上に置換基を有さないか又は単一のオルト置換基のみを有している。このように、極めて限られた置換パターンを有する誘導体のみしか合成することができないということは注目すべきである。従って、3-アミノ-1-((2,6-二置換)フェニル)ピラゾール類の単純で規模拡大可能な一般的な合成に関する未だ満たされていない要求が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、容易に入手可能な化合物から出発し、そして、高価な触媒に頼らないか、又は、安全性の観点、経済的な観点若しくは環境的な観点から大規模な製造には不利である化学反応若しくは試薬を必要としない、段階的な反応順序(スキーム1)を考案することによって解決された。
【0012】
スキーム1:
【化2】
【0013】
本発明は、式(I)で表される化合物の簡単で便利な調製について記述する。式(I)で表される所望の化合物を良好な収率及び純度で合成するためには式(III)で表されるマイケル付加体を選択的に調製することが必要であるということが分かった。式(IV)で表されるヒドラジン及び式(V)で表されるアクリロニトリルから出発して、選択的な塩基が触媒するマイケル付加に付すことで式(III)で表される化合物が生成され、この式(III)で表される化合物は、酸が誘発する環化を選択的に且つ直接的に受けて式(II)で表される化合物となる。次いで、これらの化合物を酸化して、式(I)で表される所望の化合物とすることができる。これは、少なくとも化学量論的な量の塩基の存在下におけるその場での環化と協同で実施されるヒドラジン類とアクリロニトリル類の上記マイケル付加(J. Chem. Soc. 1954, 408; Chem. Ber. 1965, 98, 3377;Tetrahedron Lett. 1998, 39, 5845)とは著しく異なっている。この方法は、2,6-二置換フェニルヒドラジン類(特に、2,6-ジ-フルオロ置換フェニルヒドラジン類)では充分には機能しない(cf. 比較実施例3’)。
【0014】
本発明において記述されている合成は、式(V)で表されるアクリロニトリルを式(IV)で表されるフェニルヒドラジンへの塩基が触媒する付加に付すことによって、式(III)で表されるマイケル付加体を調製することから始める(スキーム2)。
【0015】
スキーム2(段階1):
【化3】
【0016】
触媒量のNaOH(50%)及びNEtの存在下でアクリロニトリルをフェニルヒドラジンに選択的に付加することによってα-シアノエチル異性体のみが生成されるということが、Hahnによって報告された(Soc. Sci. Lodz., Acta Chim. 1962, 8, 37)。Hahnは、当該反応条件(例えば、最初に、その反応混合物から当該マイケル付加体を蒸留すること)を厳格に観察することの重要性を強調した。そうでなければ、環化して対応するジヒドロ-ピラゾールとなることが観察された。驚くべきことに、2,6-二置換フェニルヒドラジンに対して、僅かに触媒量の1種類の塩基のみが必要であるということが分かった。さらにまた、当該付加反応に対してNEtの存在は必要ではないこと、及び、その反応混合物から当該マイケル付加体を直接留去しなかった場合にその場での環化が観察されないということも分かった。
【0017】
本発明における次の段階は、式(III)で表されるマイケル付加体を酸が介在する環化に付して、式(II)で表される5-アミノ-1-フェニル-3,4-ジヒドロピラゾールを生成させることである(スキーム3)。
【0018】
スキーム3(段階2):
【化4】
【0019】
その場での環化と協同で実施されるヒドラジン類とアクリロニトリル類の上記マイケル付加のような文献に記載されている既知方法は、通常、大過剰量の塩基、一般に、アルコキシドを、それらに対応する溶媒としてのアルコールの中で使用する(J. Chem. Soc. 1954, 408; Chem. Ber. 1965, 98, 3377;Tetrahedron Lett. 1998, 39, 5845)。驚くべきことに、式(III)で表されるマイケル付加体が、酸(好ましくは、強酸)と一緒に、式(II)で表される環化された所望の生成物を生じさせる迅速でクリーンな反応をもたらすということが分かった。このことは、一層さらに驚くべきことである。それは、式(III)で表されるマイケル付加体を用いた塩基が触媒する環化は、酸が触媒する反応ほど効率的ではなく、そして、副生物の形成を伴う比較的遅い反応をもたらし、収率は低いか又は殆どなかったからである。
【0020】
本発明の第3段階は、式(II)で表されるフェニル-ジヒドロピラゾールを酸化して、式(I)で表される所望の2,6-二置換フェニルヒドラジンとすることである(スキーム4)。
【0021】
スキーム4(段階3):
【化5】
【0022】
上記で記載したように、文献に記載されている方法は、最も一般的には、この反応に関して以下の酸化剤を使用する:DDQ(US2007/0112034A1; Bioorg. Med. Chem. 2002, 10, 817), p-クロラニル(WO2013/031922A1)、MnO(J. Med. Chem. 2012, 55, 8211; US2004/0116475A1)、又は、NBS(WO2011/132017A1)。しかしながら、これらの試薬は、安全性の観点、経済的な観点又は環境的な観点から大規模な製造には不利である。
【0023】
この課題は、単純で、環境に優しく、費用効率が高いプロトコルを考案することによって解決された。Malekiらは、H/AcOH/KI系を使用して置換ジヒドロピラゾール類を芳香族化することによるピラゾール類の合成に関するワンポット法について記載した(Bull. Korean Chem. Soc. 2011, 32, 4366)。報告された最良の結果は、10当量のH、2当量のAcOH及び1当量のKIを用いて得られた。例えばKIの量を低減させることは、収率の著しい低下に直接つながるということが報告された。さらにまた、式(II)で表されるフェニル-ジヒドロピラゾールは、この方法を用いて酸化して、式(I)で表される所望の2,6-二置換フェニルヒドラジンとすることもできる。しかしながら、極めて驚くべきことに、収率又は選択性を低減させることなく、使用する試薬の当量を劇的に低減させることができるということが分かった。従って、10当量よりも遙かに少ない酸化剤(好ましくは、H)及び僅かに触媒量のヨウ化物源が必要であった。
【0024】
本出願は、各段階1~3自体、全3段階の組み合わせ、段階1と段階2の組み合わせ、及び、さらに、段階2と段階3の組み合わせを対象とする。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、式(I)
【化6】
【0026】
〔式中、
、R及びRは、互いに独立して、ハロゲン、シアノ、ニトロ、(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)アルキニル、(C-C)シクロアルキル、(C-C)アルコキシ、(C-C)アルケノキシ、(C-C)アルキノキシ、(C-C)シクロアルコキシ、フェニル(C-C)アルキル、アリール、シアノ(C-C)アルキル、1~9個の同一であるか若しくは異なっているハロゲン原子を有するハロゲン(C-C)アルキル、1~9個の同一であるか若しくは異なっているハロゲン原子を有するハロゲン(C-C)シクロアルキル、1~9個の同一であるか若しくは異なっているハロゲン原子を有するハロゲン(C-C)アルコキシ、(C-C)アルコキシカルボニル(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ(C-C)アルキル、(C-C)アルキルチオ、1~9個の同一であるか若しくは異なっているハロゲン原子を有するハロゲン(C-C)アルキルチオ、(C-C)アルキルスルフィニル、1~9個の同一であるか若しくは異なっているハロゲン原子を有するハロゲン(C-C)アルキルスルフィニル、(C-C)アルキルスルホニル、1~9個の同一であるか若しくは異なっているハロゲン原子を有するハロゲン(C-C)アルキルスルホニルを表し;
nは、0、1及び2からなる群から選択される数を表し、ここで、n>1である場合、Rは同一であっても又は異なっていてもよく;及び、
及びRは、互いに独立して、水素、シアノ、ニトロ、(C-C)アルキル、(C-C)シクロアルキル、(C-C)アルコキシ、(C-C)シクロアルコキシ、フェニル(C-C)アルキル、アリール、ヘテロアリール、シアノ(C-C)アルキル、1~9個の同一であるか若しくは異なっているハロゲン原子を有するハロゲン(C-C)アルキル、1~9個の同一であるか若しくは異なっているハロゲン原子を有するハロゲン(C-C)アルコキシ、(C-C)アルコキシカルボニル(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ(C-C)アルキル、(C-C)アルキルチオ、1~9個の同一であるか若しくは異なっているハロゲン原子を有するハロゲン(C-C)アルキルチオ、(C-C)アルキルスルフィニル、1~9個の同一であるか若しくは異なっているハロゲン原子を有するハロゲン(C-C)アルキルスルフィニル、(C-C)アルキルスルホニル、1~9個の同一であるか若しくは異なっているハロゲン原子を有するハロゲン(C-C)アルキルスルホニルを表す〕
で表される化合物を調製するための効率的な合成経路を開示する。
【0027】
、R、R、R又はRがアリールを表す場合、それは、フェニル基、ナフチル基又はアントラセニル基であり、そして、置換されていないか、又は、以下のリストから独立して選択される1~4の置換基で置換されている:C1-4-アルキル基(これは、直鎖、環状又は分枝鎖であることができる)、C1-4-ハロアルキル基(これは、直鎖、環状又は分枝鎖であることができる)、C1-4-アルコキシ基(これは、直鎖、環状又は分枝鎖であることができる)、ハロゲン、ニトロ基、ニトリル基、又は、構造C(=O)NR(ここで、R及びRは、独立して、H及びC1-4-アルキル基(これは、直鎖又は分枝鎖であることができる)から選択される)を有する基。
【0028】
又はRがヘテロアリールを表す場合、それは、O、N及びSから独立して選択される1~4個のヘテロ原子を含んでいる4員、5員又は6員の環であり、そして、特に、
【化7】
【0029】
〔ここで、これは、環炭素原子のいずれかを介して当該分子の残部に結合し得る〕
からなる群から選択される。このヘテロ環は、置換されていないか、又は、以下のリストから独立して選択される1~3の置換基で置換されている:C1-4-アルキル基(これは、直鎖、環状又は分枝鎖であることができる)、C1-4-ハロアルキル基(これは、直鎖、環状又は分枝鎖であることができる)、C1-4-アルコキシ基(これは、直鎖又は分枝鎖であることができる)、ニトリル類、ニトロ基、ハロゲン、又は、構造C(=O)NR(ここで、R及びRは、独立して、H又はC1-4-アルキル基(これは、直鎖又は分枝鎖であることができる)から選択される)を有する基。
【0030】
本発明の好ましい実施形態では、
、R及びRは、互いに独立して、ハロゲン、シアノ、ニトロ、(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)アルキニル、(C-C)シクロアルキル、(C-C)アルコキシ、フェニル(C-C)アルキル、アリール、シアノ(C-C)アルキル、1~7個の同一であるか若しくは異なっているハロゲン原子を有するハロゲン(C-C)アルキル、1~7個の同一であるか若しくは異なっているハロゲン原子を有するハロゲン(C-C)アルコキシ、(C-C)アルコキシカルボニル(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ(C-C)アルキル、(C-C)アルキルチオ、1~7個の同一であるか若しくは異なっているハロゲン原子を有するハロゲン(C-C)アルキルチオ、(C-C)アルキルスルフィニル、(C-C)アルキルスルホニルを表し;
nは、0、1及び2からなる群から選択される数を表し、ここで、n>1である場合、Rは同一であっても又は異なっていてもよく;及び、
及びRは、互いに独立して、水素、シアノ、(C-C)アルキル、(C-C)シクロアルキル、(C-C)アルコキシ、フェニル(C-C)アルキル、アリール、ヘテロアリール、シアノ(C-C)アルキル、1~7個の同一であるか若しくは異なっているハロゲン原子を有するハロゲン(C-C)アルキル、1~7個の同一であるか若しくは異なっているハロゲン原子を有するハロゲン(C-C)アルコキシ、(C-C)アルコキシカルボニル(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ(C-C)アルキル、(C-C)アルキルチオ、1~9個の同一であるか若しくは異なっているハロゲン原子を有するハロゲン(C-C)アルキルチオを表す。
【0031】
、R、R、R又はRがアリールを表す場合、それは、フェニル基又はナフチル基であり、そして、置換されていないか、又は、以下のリストから独立して選択される1~3の置換基で置換されている:C1-3-アルキル基(これは、直鎖、環状又は分枝鎖であることができる)、C1-3-ハロアルキル基(これは、直鎖、環状又は分枝鎖であることができる)、C1-3-アルコキシ基(これは、直鎖、環状又は分枝鎖であることができる)、ハロゲン、ニトロ基、ニトリル基、又は、構造C(=O)NR(ここで、R及びRは、独立して、H及びC1-3-アルキル基(これは、直鎖又は分枝鎖であることができる)から選択される)を有する基。
【0032】
又はRがヘテロアリールを表す場合、それは、O、N及びSから独立して選択される1~4個のヘテロ原子を含んでいる4員、5員又は6員の環であり、そして、特に、
【化8】
【0033】
〔ここで、これは、環炭素原子のいずれかを介して当該分子の残部に結合し得る〕
からなる群から選択される。このヘテロ環は、置換されていないか、又は、以下のリストから独立して選択される1~3の置換基で置換されている:C1-3-アルキル基(これは、直鎖、環状又は分枝鎖であることができる)、C1-3-ハロアルキル基(これは、直鎖、環状又は分枝鎖であることができる)、C1-3-アルコキシ基(これは、直鎖又は分枝鎖であることができる)、ニトリル類、ニトロ基、ハロゲン、又は、構造C(=O)NR(ここで、R及びRは、独立して、H又はC1-3-アルキル基(これは、直鎖又は分枝鎖であることができる)から選択される)を有する基。
【0034】
本発明の特に好ましい実施形態では、
、R及びRは、互いに独立して、ブロモ、クロロ、フルオロ、シアノ、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、(C-C)アルキルチオを表し;
nは、0及び1からなる群から選択される数を表し、ここで、n=1である場合、Rは好ましくは4位に存在し;及び、
及びRは、互いに独立して、水素、シアノ、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、トリフルオロメチル、(C-C)アルキルチオを表す。
【0035】
本発明の極めて特に好ましい実施形態では、
、R及びRは、互いに独立して、クロロ、フルオロ、トリフルオロメチルを表し;
nは、0及び1からなる群から選択される数を表し、ここで、n=1である場合、Rは4位に存在し;及び、
及びRは、水素を表す。
【0036】
本発明の極めて特に好ましい別の実施形態では、
は、フルオロを表し;
は、フルオロを表し;
nは、0を表し;
は、水素を表し;及び、
は、水素を表す。
【0037】
式(I)で表される3-アミノ-1-((2,6-二置換)フェニル)ピラゾールは、式(II)
【化9】
【0038】
〔式中、R、R、R、R、R及びnは、式(I)で表される化合物に関して上記で与えられている定義と同じ定義を有する〕
で表される5-アミノ-1-((2,6-二置換)フェニル)ジヒドロピラゾールから、酸化剤、ヨウ化物源及び酸からなる酸化系を用いた酸化によって調製する。
【0039】
式(II)で表されるジヒドロピラゾールを酸化して式(I)で表されるピラゾールとすることは、何も加えずに実施することができるか、又は、溶媒の存在下で実施することができる。溶媒を使用する反応においては、アミド類(例えば、DMF、DMAc、NMP)、ニトリル類(例えば、MeCN、PrCN)、アルコール類(例えば、MeOH、EtOH、(i)-PrOH、(n)-BuOH)、エーテル類(例えば、EtO、2-メチルテトラヒドロフラン、THF、MTBE)、エステル類(例えば、MeOAc、EtOAc、(i)-PrAc、BuOAc)、カルボネート類(例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン)、芳香族炭化水素類若しくはそれらのハロゲン化誘導体(例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン)、炭化水素類若しくはそれらのハロゲン化誘導体(例えば、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、ジクロロメタン、ジクロロエタン)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルイソブチルケトン)又は水などの溶媒を、単独で使用することができるか、又は、それらのうちの2種類以上の混合物として使用することができる。ニトリル類、アルコール類、水又はそれらの混合物を使用するのが好ましい。特に好ましくは、MeOH、EtOH、(i)-PrOH、(n)-BuOH、MeCN、PrCN、水又はこれら溶媒のうちの2種類以上の混合物を使用する。
【0040】
該酸化を溶媒又は溶媒混合物の中で実施する場合、得られた混合物の中の式(II)で表されるジヒドロピラゾールの濃度は、1%~50%(w/w)であり得るが、10%~40%(w/w)の範囲が好ましい。
【0041】
該酸化剤は、無機過酸化物(例えば、H)又は有機過酸化物(例えば、アルキルヒドロペルオキシド類又はアルキルアリールヒドロペルオキシド類)であることができる。好ましい酸化剤は、Hである。一般に、1当量の式(II)で表されるジヒドロピラゾールを、0.9当量~5当量の該酸化剤と反応させ、好ましくは、1~3当量(さらに好ましくは、1~2当量)の該酸化剤と反応させる。
【0042】
該ヨウ化物源は、無機ヨウ化物塩(例えば、NaI、KI、CsI又はAgI)又は別のヨウ化物含有化合物(例えば、HI)であることができる。好ましいヨウ化物源は、NaI、KI又はHIである。式(II)で表されるジヒドロピラゾールと該ヨウ化物源の間の反応化学量論は、0.01当量から0.5当量まで変動し得るが、0.02~0.5当量の範囲が好ましく、0.02~0.1当量の範囲が特に好ましい。
【0043】
該酸は、鉱酸(例えば、HI)、カルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸)又はスルホン酸(例えば、MsOH、pTsOH)であることができる。好ましい酸は、カルボン酸又はHIである。一般に、1当量の式(II)で表されるジヒドロピラゾールを0.1当量~1当量の該酸と反応させ、好ましくは、0.2~1当量(さらに好ましくは、0.2~0.8当量)の該酸と反応させる。
【0044】
該反応は、-40℃~180℃で実施することができ、そして、好ましくは、-10℃~120℃で実施し、特に好ましくは、10℃~90℃で実施する。
【0045】
該反応は、0.1bar~10barの圧力で実施することができ、そして、好ましくは、0.8bar~1.2barで実施する。
【0046】
式(II)で表される5-アミノ-1-((2,6-二置換)フェニル)ジヒドロピラゾールは、式(III)
【化10】
【0047】
〔式中、R、R、R、R、R及びnは、式(II)で表される化合物に関して上記で与えられている定義と同じ定義を有する〕
で表されるα-シアノエチルヒドラジンから、酸が介在する環化によって調製する。
【0048】
式(III)で表されるα-シアノエチルヒドラジンを環化して式(II)で表されるジヒドロピラゾールとすることは、何も加えずに実施することができるか、又は、溶媒の存在下で実施することができる。溶媒を使用する反応においては、アミド類(例えば、DMF、DMAc、NMP)、ニトリル類(例えば、MeCN、PrCN)、アルコール類(例えば、MeOH、EtOH、(i)-PrOH、(n)-BuOH)、エーテル類(例えば、EtO、2-メチルテトラヒドロフラン、THF、MTBE)、エステル類(例えば、MeOAc、EtOAc、(i)-PrAc、BuOAc)、カルボネート類(例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン)、芳香族炭化水素類若しくはそれらのハロゲン化誘導体(例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン)、炭化水素類若しくはそれらのハロゲン化誘導体(例えば、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、ジクロロメタン、ジクロロエタン)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルイソブチルケトン)又は水などの溶媒を、単独で使用することができるか、又は、それらのうちの2種類以上の混合物として使用することができる。溶媒を使用しないか、又は、ニトリル類、アルコール類、エーテル類、エステル類、水若しくはそれらの混合物を使用するのが好ましい。特に好ましくは、ニトリル類、エーテル類、エステル類若しくは水又はこれら溶媒のうちの2種類以上の混合物を使用する。
【0049】
該環化を溶媒又は溶媒混合物の中で実施する場合、得られた混合物の中の式(II)で表されるジヒドロピラゾールの濃度は、1%~50%(w/w)であり得るが、10%~40%(w/w)の範囲が好ましい。
【0050】
該酸は、鉱酸(例えば、HCl、HSO、HPO)又は有機酸(例えば、CFCOH、CHSOH、CFSOH、pTsOH、MsOH)であることができる。好ましい酸は、HCl又はHSOなどの鉱酸である。一般に、1当量の式(III)で表されるα-シアノエチルヒドラジンを、0.01当量~10当量の該酸と反応させ、好ましくは、0.1~5当量(さらに好ましくは、0.1~2当量)の該酸と反応させる。
【0051】
該反応は、-40℃~180℃で実施することができ、そして、好ましくは、-10℃~150℃で実施し、特に好ましくは、40℃~120℃で実施する。
【0052】
該反応は、0.1bar~10barの圧力で実施することができ、そして、好ましくは、0.8bar~1.2barで実施する。
【0053】
式(III)で表されるα-シアノエチルヒドラジンは、式(IV)で表される(2,6-二置換)フェニルヒドラジン及び式(V)で表されるアクリロニトリル
【化11】
【0054】
〔式中、R、R、R、R、R及びnは、式(III)で表される化合物に関して上記で与えられている定義と同じ定義を有する〕
から、塩基が触媒するマイケル付加によって調製する。
【0055】
該反応は、式(IV)で表される遊離ヒドラジンを用いて実施することができるか、又は、そのようなヒドラジンの塩を用いて実施することができる。そのような塩を使用する場合、それは、式(IV)で表されるヒドラジンの塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、メタンスルホン酸塩又は4-トルエンスルホン酸塩であることができる。好ましくは、遊離ヒドラジン又はその塩酸塩を使用する。式(IV)で表されるこれらのヒドラジンの多くは、市販されているか、又は、容易に、例えば、対応するフェニルハロゲン化物をジアゾ化し、次いで、還元することによって、合成することができる。
【0056】
当業者は、さらに、式(V)で表されるアクリロニトリルがE-異性体又はZ-異性体として存在し得ること、及び、これらの異性体が相互変換可能であるということを知っている。必要に応じて、これらの異性体は、通常、標準的な単離技術(例えば、クロマトグラフィー、再結晶、蒸留)によって分離させることができる。本発明は、これらの異性体形態の使用及びそれらの混合物の使用の両方とも包含する。式(V)で表されるアクリロニトリルの多くは、市販されている。
【0057】
式(IV)で表される(2,6-二置換)フェニルヒドラジンと式(V)で表されるアクリロニトリルのマイケル付加は、何も加えずに実施することができるか、又は、溶媒の存在下で実施することができる。溶媒を使用する反応においては、アミド類(例えば、DMF、DMAc、NMP)、ニトリル類(例えば、MeCN、PrCN)、アルコール類(例えば、MeOH、EtOH、(i)-PrOH、(n)-BuOH)、エーテル類(例えば、EtO、2-メチルテトラヒドロフラン、THF、MTBE)、エステル類(例えば、MeOAc、EtOAc、(i)-PrAc、BuOAc)、カルボネート類(例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン)、芳香族炭化水素類又はそれらのハロゲン化誘導体(例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン)、炭化水素類又はそれらのハロゲン化誘導体(例えば、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、ジクロロメタン、ジクロロエタン)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン)又はケトン類(例えば、アセトン、メチルイソブチルケトン)などの溶媒を、単独で使用することができるか、又は、それらのうちの2種類以上の混合物として使用することができる。溶媒を使用しないか、又は、溶媒としてニトリル類を使用するのが好ましい。
【0058】
該マイケル付加を溶媒又は溶媒混合物の中で実施する場合、得られた混合物の中の式(II)で表されるジヒドロピラゾールの濃度は、1%~50%(w/w)であり得るが、10%~40%(w/w)の範囲が好ましい。
【0059】
該塩基は、水含有溶液としての若しくは何も加えられていない無機塩基(例えば、NaOH、KOH)であることができるか、又は、有機塩基(例えば、EtN、DIPEA、アルコキシド類)であることができる。好ましい塩基は、NaOH又はKOHなどの無機塩基である。一般に、1当量の式(IV)で表されるフェニルヒドラジンを、0.01当量~0.8当量の塩基の存在下、好ましくは、0.01~0.5当量の塩基の存在下、さらに好ましくは、0.01~0.2当量の塩基の存在下で、約1当量の式(V)で表されるアクリロニトリルと反応させる。
【0060】
該反応は、-40℃~180℃で実施することができ、そして、好ましくは、-10℃~120℃で実施し、特に好ましくは、10℃~100℃で実施する。
【0061】
該反応は、0.1bar~10barの圧力で実施することができ、そして、好ましくは、0.8bar~1.2barで実施する。
【0062】
本発明は、さらに、式(VII)
【化12】
【0063】
で表される化合物を調製する方法も対象とし、
ここで、式(VII)で表される化合物は、本発明による調製方法で得られた式(Ia)
【化13】
【0064】
で表される化合物を、式(VI)
【化14】
【0065】
〔式中、Mは、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルスルファニル、アシルオキシ、N-ヘテロシクリル(例えば、イミダゾリル)を表すか、又は、ヒドロキシルを表し、好ましくは、ハロゲンを表し、さらに好ましくは、塩素を表す〕
で表される化合物と反応させることによって、得ることができる。
【0066】
式(VI)で表される化合物は、予め活性化させることができるか、又は、その場で活性化させることができる。式(VI)で表される化合物は、例えば、酸ハロゲン化物(例えば、M=塩素)として、使用することができる。この場合、該反応は、有利には、塩基の非存在下で高温で実施するか、又は、塩基(例えば、トリエチルアミン又は水酸化ナトリウム)の存在下で低温で実施する。しかしながら、カップリング試薬(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド)及び添加剤(例えば、1-ヒドロキシ-1-H-ベンゾトリアゾール)の存在下でカルボン酸(M=OH)を使用することも可能である(W. Konig, R. Geiger, Chem. Ber. 1970, 103, 788)。さらにまた、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1,1’-カルボニル-1H-イミダゾール、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート及び類似化合物などのカップリング試薬を使用することもできる。上記調製方法を実施するのに適しているカップリング試薬は、特に、アミド結合を形成させ得る全ての化合物である(cf.、例えば、「E. Valeur, M. Bradley Chem. Soc. Rev. 2009, 38, 606」、「S.-Y. Han, Y.-A. Kim Tetrahedron 2004, 60, 2447」)。さらにまた、式(VII)で表される化合物を調製するために、対称無水物又は混合無水物を使用することもできる(G. W. Anderson, J. E. Zimmerman, F. M. Calahan, J. Am. Chem. Soc. 1967, 89, 5012)。ここで、さまざまなクロロギ酸エステル(例えば、クロロギ酸イソブチル及びクロロギ酸sec-ブチル)を使用することができる。例えば、塩化イソバレリル及び塩化ピバロイルなども使用することができる(cf. WO2014/53450A1)。
【0067】
式(VII)で表される化合物は、節足動物、昆虫類及び線虫類などの害虫(animal pest)を防除するのに有用であることが知られている(cf. WO2014/053450A1)。
【実施例
【0068】
実施例:
実施例1: 3-(N-アミノ-2,6-ジフルオロ-アニリノ)プロパンニトリルの合成
【化15】
【0069】
(2,6-ジフルオロフェニル)ヒドラジン(88.6g、0.62mol)を250mLのMeCNに溶解させた溶液を2.6mL(0.05mol)のNaOH(50%)で処理し、50℃まで加熱した。次いで、アクリロニトリル(34.3g、0.65mol)を20分間かけて滴下して加えた。その温度を60℃未満に維持した。50℃で1時間撹拌した後、MeCNの大部分を留去した。その反応物を200mLの水で希釈し、150mLのEtOAcで3回抽出した。その有機相を合してブラインで1回洗浄し、NaSOで脱水し、溶媒を蒸発させて、3-(N-アミノ-2,6-ジフルオロ-アニリノ)プロパンニトリル(110.0g、収率90%、HPLCによる純度96.2%)が白色の固体として得られた。
【0070】
H NMR(CDCN) δ(ppm)=7.1-7.2(m,1H),6.9-7.0(m,2H),4.1(br s,2H),3.4(t,2H),2.7(t,2H)。
【0071】
実施例2: 2-(2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロピラゾール-5-アミンの合成
【化16】
【0072】
3-(N-アミノ-2,6-ジフルオロ-アニリノ)プロパンニトリル(110.0g、0.56mol)を200mLのMeCNに溶解させた溶液を94mLの水性HCl(32%)で処理し、5時間加熱環流した。その反応混合物を50℃まで冷却し、192mLの水性NaOH(20%)を添加した。50℃で15分間撹拌した後、相を分離し、その有機相をNaSOで脱水した。その有機相の溶媒を減圧下で除去し、残った固体をトルエンから再結晶させて、2-(2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロピラゾール-5-アミン(104.9g、収率95%、HPLCによる純度96.8%)が薄いベージュ色の固体として得られた。
【0073】
H NMR(CDCN) δ(ppm)=7.0-7.1(m,1H),6.8-6.9(m,2H),4.4(br s,2H),3.6(t,2H),2.8(t,2H)。
【0074】
実施例3: ワンポット法として、3-(N-アミノ-2,6-ジフルオロ-アニリノ)プロパンニトリルを介した、2-(2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロピラゾール-5-アミンの合成
【化17】
【0075】
(2,6-ジフルオロフェニル)ヒドラジン(35.4g、0.25mol)を100mLのMeCNに溶解させた溶液を1.0mL(0.02mol)のNaOH(50%)で処理し、50℃まで加熱した。次いで、アクリロニトリル(13.7g、0.26mol)を20分間かけて滴下して加えた。その温度を60℃未満に維持した。50℃で1時間撹拌した後、38mLの水性HCl(32%)を添加し、その反応物を5時間加熱環流した。その反応混合物を50℃まで冷却し、77mLの水性NaOH(20%)を添加した。50℃で15分間撹拌した後、相を分離し、その有機相をNaSOで脱水した。その有機相の溶媒を減圧下で除去し、残った固体をトルエンから再結晶させて、2-(2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロピラゾール-5-アミン(41.9g、収率85%、HPLCによる純度96.5%)が薄いベージュ色の固体として得られた。
【0076】
H NMR(CDCN) δ(ppm)=7.0-7.1(m,1H),6.8-6.9(m,2H),4.4(br s,2H),3.6(t,2H),2.8(t,2H)。
【0077】
比較実施例3’: 2-(2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロピラゾール-5-アミンの合成
【化18】
【0078】
アクリロニトリル(345mg、6.4mmol)を5mLのEtOHに溶解させた溶液を室温でNaOMe(1.94g、10.7mmol)で処理し、30分間撹拌した。次いで、(2,6-ジフルオロフェニル)ヒドラジン(1.0g、5.4mmol)を添加し、その反応混合物を一晩加熱環流した。その反応混合物を室温まで冷却し、20mLの水を添加した。DCM(3×20mL)で抽出した後、その有機相を合してNaSOで脱水し、蒸発させた。2-(2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロピラゾール-5-アミン(770mg、収率32%、HPLCによる純度44.3%)が褐色の油状物として得られた。
【0079】
H NMR(CDCN) δ(ppm)=7.0-7.1(m,1H),6.8-6.9(m,2H),4.4(br s,2H),3.6(t,2H),2.8(t,2H)。
【0080】
実施例4: 1-(2,6-ジフルオロフェニル)ピラゾール-3-アミン(Ia)の合成
【化19】
【0081】
2-(2,6-ジフルオロフェニル)-3,4-ジヒドロピラゾール-5-アミン(10.0g、50.7mmol)とKI(420mg、2.5mmol)とAcOH(1.5g、25.0mmol)を50mLのMeCNに溶解させた溶液にH(3.5g、53.2mmol、50%)を40℃で1時間かけて添加した。その温度を65℃未満に維持した。50℃で1時間撹拌した後、その反応物を9mLの水性NaOH(20%)と4mLの水性NaHSO(40%)でクエンチした。次いで、MeCNの大部分を留去し、懸濁液が形成された。固体を濾過し、次いで、再結晶させて、1-(2,6-ジフルオロフェニル)ピラゾール-3-アミン(7.8g、収率80%、HPLCによる純度96.7%)がベージュ色の固体として得られた。
【0082】
H NMR(CDCN δppm)=7.5(d,1H),7.4-7.5(m,1H),7.1-7.2(m,2H),5.8(d,1H),4.1(br s,2H)。
【0083】
実施例5: N-[1-(2,6-ジフルオロフェニル)ピラゾール-3-イル]-2-(トリフルオロメチル)ベンズアミド(VII)の合成
【化20】
【0084】
1-(2,6-ジフルオロフェニル)ピラゾール-3-アミン(56.0g、0.29mmol)を425mLのトルエンに溶解させた溶液に2-(トリフルオロメチル)ベンゾイルクロリド(60.4g、0.29mmol)を50℃で2時間かけて添加し、50℃でさらに1時間撹拌した。次いで、6時間加熱環流した後、その反応混合物を冷却し、沈澱した固体を濾過し、100mLのトルエンで2回洗浄した。N-[1-(2,6-ジフルオロフェニル)ピラゾール-3-イル]-2-(トリフルオロメチル)ベンズアミド(96.8g、収率91%、HPLCによる純度99.7%)が褐色の固体として得られた。
【0085】
H NMR(CDCN) δ(ppm)=9.2(br.s,1H),7.8(d,1H),7.6-7.7(m,4H),7.4-7.5(m,1H),7.2(t,2H),7.0(d,1H)。