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特許6994511血管を修復するためのプロテーゼおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】血管を修復するためのプロテーゼおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/07 20130101AFI20220106BHJP
【FI】
A61F2/07
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019544776
(86)(22)【出願日】2017-07-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-21
(86)【国際出願番号】 EP2017069263
(87)【国際公開番号】W WO2018077499
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-07-30
(31)【優先権主張番号】P20160103292
(32)【優先日】2016-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AR
(73)【特許権者】
【識別番号】519155778
【氏名又は名称】バローネ, エクトル ダニエル
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バローネ, エクトル ダニエル
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-508569(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0074049(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0137969(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0204351(US,A1)
【文献】特表2006-500107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腔内挿入および固定によって、主血管から分岐する、少なくとも一つの側副血管を有する前記主血管を修復するためのプロテーゼであって、前記プロテーゼが、前記主血管の患部を覆うために患者の主血管内に挿入されており、
前記プロテーゼが、少なくとも一つの拡張可能な側壁血管プロテーゼと、主プロテーゼとを備え、
(a)前記側壁血管プロテーゼは、前記側副血管の内壁に拡張状態で接触するように、所定の外径を有しており、
(b)前記主プロテーゼは、
i)前記血管内に、そして前記患部に沿って、しっかりと固定するための拡張可能な支持体であって、当該拡張可能な支持体を介して拡張状態で前記少なくとも一つの側壁血管プロテーゼを通すよう、変形可能な拡張構造を有する複数のセルを備える支持体、および、
ii)2つの反対側の端部と両端部間において長手方向に延伸する中央部とを有するチューブ状の裏地とを備え、
前記裏地は、複数の隣接した同心層から成り、各層は、すべて一緒に重なり合って壁を構成する3次元マトリクスを形成するために互いに密着しており、前記層のそれぞれが、開いているウェブの形で動き得る繊維の布材を備え、重なり合った層のそれぞれのウェブが、隣接する層間の3次元マトリクスで迷路隙間を形成しており、前記同心層は、少なくとも前記裏地の前記中央部において互いに独立しており、
前記裏地は、初期状態で第1の水多孔性を有するものであり、
前記迷路隙間は、所定の初期径を有して半径方向に整列しており、前記壁を通して前記側壁血管プロテーゼの通路を形成させ、そして、それによって前記側壁血管プロテーゼを収容するよう、前記拡張可能な側壁血管プロテーゼが前記外径まで拡張することを許すためのサイズに至るまで、所定の内径に拡張可能であり、
前記層のそれぞれは、単独で前記第1の水多孔性よりも大きい第2の水多孔性を有している、プロテーゼ。
【請求項2】
前記拡張可能な支持体が、裏地の全長に沿って延びかつ裏地の端部を越えて延びて血管の壁に対して固定するためのアンカー部分を形成する少なくとも1つのステントである、請求項1に記載のプロテーゼ。
【請求項3】
前記ステントが、バルーン拡張型ステントおよび自己拡張型ステントからなる群から選
択される、請求項2に記載のプロテーゼ。
【請求項4】
各層が同じ前記第2の水多孔性を有する、請求項1に記載のプロテーゼ。
【請求項5】
各層が多孔性を提供し、各層の多孔性が他の層の多孔性とは異なる、請求項1に記載のプロテーゼ。
【請求項6】
前記層が同じ布材でできている、請求項1に記載のプロテーゼ。
【請求項7】
前記層が異なる布材でできている、請求項1に記載のプロテーゼ。
【請求項8】
前記布材が、編物および縦横横糸布地からなる群から選択される、請求項1に記載のプロテーゼ。
【請求項9】
前記主プロテーゼの壁を形成する複の前記同心層が、ジグザグパターンに陥入された連続的な布地を含む、請求項1に記載のプロテーゼ。
【請求項10】
前記主プロテーゼの壁を形成する複の前記同心層が、独立した布材で形成されている、請求項1に記載のプロテーゼ。
【請求項11】
前記同心の層数が少なくとも2つである、請求項1に記載のプロテーゼ。
【請求項12】
前記裏地は、2つの反対側の端部のうちの一方または両方で折り返させた、単一の編物からなる請求項に記載のプロテーゼ。
【請求項13】
前記裏地は、2つの反対側の端部で接続されていない、分割された編物からなる請求項に記載のプロテーゼ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側副血管を含む患部を有する血管を修復するためのプロテーゼに関し、好ましくは、大動脈の患部の管腔内修復のための動脈瘤および/または大動脈解離の治療のためのプロテーゼに関し、大動脈は、腕頭動脈、左頸動脈、左鎖骨下動脈、腹腔動脈、上腸間膜動脈および/または腎動脈などの側副動脈を含む。これらの動脈の灌流は極めて重要であり、そのため、これらの動脈のあらゆる閉塞は病変を持っている患者の寿命と両立しないため、プロテーゼを設置するのにかかる時間の間だけでなくプロテーゼが設置された途端も灌流を維持しなければならない。
【0002】
以下の説明は大動脈プロテーゼに特に言及しているが、前記プロテーゼは、1つ以上の側副血管または動脈が関与するあらゆる血管の修復または治療に適用可能であることを理解されたい。大動脈への言及は、それが、疾患がより頻繁に起こる血管であるためになされるであろう。
【背景技術】
【0003】
動脈などの血管が、損傷または破裂の可能性をもった患部を有する場合、それは、腔内に埋め込まれたプロテーゼによって修復することができる。しかし、この部分が1つ以上の側副血管、すなわち側副動脈を含む場合、このようなプロテーゼの設置は、極めて重要な側副動脈を、一時的にではなく、なおさら永久に閉塞することを考慮するべきである。大動脈は、この種の病変の最も高い発生率をもった血管である。
【0004】
大動脈は、動脈系の主幹であり、心臓から始まり、胸部を通って、そして2つの腸骨動脈に分かれている腹部を通って下に延びている。大動脈に最も影響を及ぼす病変の中には、解離と動脈瘤がある。両方の病態は、非常に短時間で致命的な出血をもたらす大動脈破裂を防ぐために治療されるべきである。これは一般に、前記病変を患っている個人の死を招く。
【0005】
前記の結果として、動脈瘤および大動脈解離を治療することを可能にし、したがって、従来の手術または開腹手術を回避すること、および、より具体的には、これらの外科診療によって引き起こされた術後症状を回避することを可能にした種々の管腔内プロテーゼが開発されてきた。患部を隔離するために大動脈の内側にこの種のプロテーゼを埋め込む場合、プロテーゼを拡張および設置するときに遮断されるべきでない、いくつかの動脈があることを考慮しなければならない。これらの動脈がそれらの正常な灌流を維持することを確実にするために、いくつかのプロテーゼが開発されてきた。その中に、穿孔または穿孔されるべき場所を有する、いわゆる有窓がある。これらのプロテーゼのいくらかは分岐と呼ばれ、動脈を通る血流の連続性を確実にするために、ブリッジまたは分岐によって側副動脈に接続されるスリーブを有する。しかし、既に開いているかまたは穿孔されるように設計された、このような部位は、プロテーゼが拡張および固定されるときに、プロテーゼがそれらの動脈の入口または心門と正確に一致する正確な位置に設けられるべきである。この問題は、参照される種々の先行技術文献から分かるように、まだ十分に解決されていない。
【0006】
Noureddineに対する米国特許第7,588,597号明細書は、織り交ぜられている複数層の生体適合性金属線を含む、編まれた、または、かみ合った支持体であって、前記各層が、それぞれ右旋性および左旋性であり、織り交ぜられて格子または網を形成している2つの折り目またはワイヤを含む支持体を含む管腔内プロテーゼを開示している。所与の層の複数のワイヤは、隣接する層の少なくとも1つの格子または網に一体化され、複数層は、壁を通る血行力学的対流を拡散流に変えることができる多孔性を有する側壁を内部プロテーゼに設けている。次いで、Nouredinneの考えは、血流が、流れの漏れがある場所で金属メッシュを通過することであり、これが、側副動脈、すなわち、このような動脈の入口または心門の前で起こるということである。
【0007】
Noureddineに対する特許は、漏れを防ぐための被覆プロテーゼの典型的な変形が、プロテーゼと血管壁との間に徐々に漏れを生じさせることを記載している。したがって、動脈瘤嚢は再び加圧され、埋め込まれたプロテーゼは動脈瘤の破裂を防ぐことを止める。Nouredinneが動脈瘤嚢に対する漏れの問題を認識している場合でも、血液が心門を通過することを可能にするプロテーゼの金属メッシュは、それを通過する流れがメッシュを横切る前記動脈の方へ向けられるように、そして、また、それによって加圧されたままである動脈瘤嚢の内側に向けられるように、関与した側副動脈の心門の周りを完全に密封する手段を持たないため、彼の提案した構造はこの問題を解決しない。すなわち、Noureddineは動脈瘤を血流から隔離することに失敗した。
【0008】
Bruszewskiに対する米国特許第8,100,960号明細書は、近位部、遠位部、および、前記近位部と遠位部との間に配置され、各々の縫合糸によってそれに接続されている「鈍化」部を備える「鈍化」移植片ステントおよび開窓方法を開示している。Bruszewskiのステントは、近位部を動脈の上に固定し、そのため前記「鈍化」部を前記動脈の各々の心門の前に配置するように設計されている。Bruszewskiは、「鈍化」部が側副動脈の心門の前に正確にあると、大動脈と動脈、例えば腎動脈との間の圧力の差のために、「ポケット」が腎動脈内に形成されるように「鈍化」部の「吸引」が生じる。前記ポケットは、血流の循環を可能にする心門または窓を生成するために後で有窓になるであろう。開窓方法は、その先端がポケットに穿孔する、または穴をあける穿孔装置の挿入によって行われる。「鈍化」部も穿孔装置の先端部も、埋込みおよび開窓プロセスを容易にするために放射線不透過性マーカーを有するべきである。Bruszewskiの内部プロテーゼは動脈瘤を隔離させるようである。しかし、Bruszewskiの内部プロテーゼは、「鈍化」部上の穿刺によって形成された窓が、動脈瘤または大動脈の壁を密封することなく開いているままであり、動脈の方への血液の通過だけでなくプロテーゼの壁と心門の周りの大動脈の壁との間の血液の漏れも可能にする窓であるという欠点を有する。鈍化部のメッシュが動脈の心門と密着している限り、これはすべて起こるであろう。Bruszewskyの図6は、心門の周囲を密封するものとしてプロテーゼの切断端を示しているが、何も窓の端部を心門に保持せず、そして典型的な拍動流が端部と門および大動脈の壁との間の漏れを確実に生成するため、これは実際には起こらない。すなわち、穴のあいた窓の端部は、接続されるべき動脈の壁にシールもアンカーもない。さらに、その部分が側副動脈の反対側の心門と一致するが整列していないように、鈍化部はプロテーゼ内に正確に設計され配置されるべきであることを考慮すべきである。鈍化部は、同じ反対側を心門の前に正確に配置することを保証するために放射線不透過性マーカーを必ず有しなければならない。これは、プロテーゼを動脈内に位置決めし、関与した心門の前に鈍化部を配置する間、プロテーゼの壁が、造影剤を伴う血液のメッシュを通って動脈へ向かう循環を可能にしないため接続されるべき動脈の正確な位置を血管造影で可視化することができないという事実に加えられる。さらに、Bruszewskiは、側副レベルの拡張の直径がプロテーゼの直径よりも大きいことを予想していない。そうであるならば、図示の心門内に鈍化部を配置することができず、動脈瘤の排除は布地の穿孔後に実行不可能になる。ただし、穿孔は、選択された動脈の分岐と相互接続されるであろう。考慮すべき別の欠点は、Bruszewskiのプロテーゼは、プロテーゼからの血液の通過を許さないように閉じたウェブを有しなければならない布地でできていることである。これが、鈍化部が穿孔されるべき、すなわち、血液の動脈への通路を開くために切断器具または鋭利な器具で切断されるべきである理由である。その切断または穿刺では、心門の外側に作られると動脈破裂または大動脈の壁に対する損傷を引き起こすであろう計算誤差は布地の穿孔において予測されない。前記のように、これは、血管造影検査技術によって、その位置を見るために造影剤を動脈に運ぶ血流がない場合には動脈を見ることができないからである。
【0009】
一方、Cullyらに対する米国特許出願公開第2004/0059406号明細書は、ワイヤガイドを膨張可能なバルーンカテーテルとともに通すことができる、穿刺することができる、または穴をあけることができるフレームで区切られた窓を有する「パッチ」を組み込んだ、少なくとも1つの異なる穿孔可能セクター、すなわち開窓用の埋込み型プロテーゼを開示している。パッチは、その中でフレームまたはシルエットが埋込み型ポリマー材料の層によって囲まれているサンドイッチ構造および壊れやすい材料のバリアによって完全に覆われている窓を含む。Cullyらに対する特許の図で分かるように、窓は、膨張可能なバルーンカテーテルによって横断され、バルーンを膨張させることによって開かれる。バルーンが収縮すると、窓が変形して血流を通過させる。また、血流の通過を妨げることなく、変形した窓を確実に開いているままにしておくためのプロテーゼが提供される。壊れやすいバリアは、膨張可能なバルーンを穿孔して通過させて相互接続する分岐またはプロテーゼを関与した動脈に接続することができる窓を形成することを可能にするが、前記壊れやすいバリアは、相互接続プロテーゼが接続されるべき動脈の心門と一致する所定の位置に配置される。先行技術の他の装置に関して上記のように、管腔内プロテーゼの埋込み中に、その一部を、それとともに流体接続を確立しようとする側副動脈と完全に一致するように配置することは、不可能ではないにしても非常に難しい。なおさら、4つの側副動脈との同時相互接続のための正確な位置決めは不可能であろう。これは、造影剤として作用する壊れやすい材料の周りに放射線不透過性マーカーを用いて、埋込み中に血管造影検査によってパッチおよびその壊れやすい材料の正確な位置を突き止めることによって行われる。プロテーゼが拡張されると、接続されるべき動脈の心門がプロテーゼの壁によって塞がれ、血液が動脈に循環しないため、2つの基本的な問題が生じることを再び思い出す価値がある。一方は、動脈によって供給される臓器への血液供給の欠如が臓器を死に至らしめるため、動脈が灌流なく長期間留まることができないことであり、もう一方の問題は、動脈を通る血液供給がないために既知の血管造影技術によって動脈を見ることを可能にする必要な造影剤を、それを通して送る方法がないことである。正確な心門の位置が分からない場合は、穿孔可能なバリア材料を穿孔するために使用されるツールが、接続する動脈の心門を正確に貫通するのではなく大動脈の壁を穿孔することができる。
【0010】
上記のこれらの問題は、腹部大動脈瘤治療用の大動脈プロテーゼであって、プロテーゼが、腔内に埋め込まれており、主鎖または支持体、異なる程度の多孔性をもった3つの部分を有するメッシュによって覆われたステント、より高い多孔性を有する上部、中間の多孔性を有する中間部、および最も低い多孔性を有する下部から成る本体を備えているプロテーゼを開示している、本発明の同じ発明者/出願人に対するアルゼンチン特許出願第20160101195号明細書において考慮された。より大きな多孔性をもった上部は、固定手段を介して腎動脈の高さで大動脈壁に対してしっかりと固定されるように意図されている。中間部は腎動脈の下に配置されなければならず、そして下部は動脈瘤を循環から排除するために分岐によって接続される動脈瘤内および腸骨動脈の上の位置に自由に配置される。
【0011】
このプロテーゼの正しい動作条件は、最も開いているウェブが大動脈の患部の外側に、かつ大動脈の健康な壁と密着して配置されることを必要とする。より大きな多孔性をもったこのウェブの目的は、関与した側副動脈に対する灌流を確実にすることである。上記のように、より大きな多孔性をもったこの部分は大動脈の健康な壁に対してのみ配置されるべきであるため、前記側副動脈は必ず健康な壁の前記部分内になければならない。側副動脈が患部内にある場合、この内部プロテーゼは、患者の抗凝固状態を逆転させた後でさえも、より多孔性のウェブ部分がそこを通る流れをそれ自体によって密封しないため、うまく使用できない。
【0012】
さらに、最も多孔性のウェブ部分は、それが高い多孔性を有するが、経時的に側副枝への流れを減少させ、そして結局それが腎臓に向かって遠位塞栓形成を生成する血餅形成マトリックスとなるため、相互接続分岐によって対応する側副動脈と相互接続されなければならない。
【0013】
要約すると、後者の内部プロテーゼは、前記の、より多孔性のウェブ部分が患部内ではなく大動脈の健康な部分内に配置され、このために上記の他のすべての先行技術の場合のように設置時のその位置のための造影マーカーを必要とする。
【0014】
したがって、動脈の患部内で相互接続されるべき側副動脈と一致するように配置されなければならない所定の部分、セクター、ブラウスまたはパッチの位置決めを心配することなく設置でき、たとえ、これらの側副動脈が内部プロテーゼによって覆われていても、医師に、患部に亘ってプロテーゼを位置決めさせ、拡張させ、および設置させることができる動脈病変の治療用の新たなプロテーゼがあることが望ましい。したがって、専門家は、患部を越えてプロテーゼの端部を位置決めして固定することに集中しなければならないだけであり、これは習慣的であり、技術の実践における困難を表すものではない。
【発明の概要】
【0015】
したがって、本発明の目的は、側副動脈が関与しているあらゆる種類の大動脈瘤または大動脈解離を排除するための、修復されるべき大動脈の領域内にある、いずれかの前記側副動脈に対する損傷の危険性または灌流の欠如が設置の間も後もなく大動脈内に設置および埋め込むことができるプロテーゼ、好ましくは大動脈プロテーゼを提供することである。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、血液循環系からの動脈瘤または解離を排除するためにプロテーゼを大動脈内に挿入することによって動脈瘤ならびに胸部および腹胸部の大動脈解離を修復するのに使用するための大動脈プロテーゼであって、プロテーゼが、ウェブ、網、または格子を有し、設置時に関与した任意の側副動脈に対する血液灌流を可能にし、プロテーゼまたは前記任意の動脈との相互接続の分岐の設置のために破裂なく横断することも可能にするのに十分に開いている複数層、好ましくは少なくとも2つまたは3つの同心層によって画定された柔軟な布材の支持体および裏地を備えているが、層が、前記設置が完了すると大動脈プロテーゼの壁の密封を可能にし、前記壁を通る血液の通過を防ぐために組み合わせられている大動脈プロテーゼを提供することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、血管を修復するためのプロテーゼであって、その壁が、各々が何ら不都合なく血流の通過を可能にするのに十分に開いている布地ウェブを有する複数の布地層、好ましくは少なくとも2つまたは3つの同心層によって形成されており、層が、その中に形成された壁が制御された時間中、前記血液の通過を可能にする組み合わされたウェブを有するように配置されている主プロテーゼを含むプロテーゼを提供することである。
【0018】
本発明のさらなる目的は、制御された時間中、血流の通過を可能にし、そして前記3層から成る前記ウェブに形成された通路またはチャネルを通る1つ以上の各側副動脈との相互接続のための1つ以上の相互接続プロテーゼの埋め込みを行うために、ウェブ、繊維または布地を破裂なく通路またはチャネルを開くために装置の穿孔先端または穿孔末端によってさらに穿孔することができる柔軟な布地メッシュまたはウェブまたは裏地を画定するように少なくとも3つの重なり合う層を有する主大動脈プロテーゼを提供することである。
【0019】
本発明のさらに別の目的は、関与した側副動脈とのその相互接続プロテーゼを伴う主大動脈プロテーゼの埋め込みを行うための手術の時間を増大させる、複数層、好ましくは少なくとも3つの非常に開いている布地ウェブの同心層から成る裏地を提供することである。
【0020】
本発明のさらに別の目的は、血管を修復するためのプロテーゼであって、プロテーゼが、患者の腔内に挿入されて1つの血管内に固定されており、血管の患部を覆い、血管が、その灌流が、プロテーゼの埋込み中および埋込み後に保証されなければならない側副動脈を有しているプロテーゼであって、プロテーゼが、
a)主プロテーゼであって、
i)前記血管内に、そして前記患部に沿って、しっかりと固定するための拡張可能な支持体、および
ii)複数の同心層から成る布材製の裏地であり、各層が、そこを通過する血流を可能にするのに十分に開いているウェブを提供し、層がすべて一緒に重なり合って主プロテーゼの設置および埋込みのために制御された期間中に開いていることができ、前記期間が経過した後に患者の血液のフィブリンによって密封される迷路間隙を画定する主プロテーゼの壁を形成し、各1つの重なり合う層のウェブによって形成された前記間隙が、間隙を通過する非切断要素によって開かれて、複数の同心層によって形成された壁を通る少なくとも1つの通路を形成することができる裏地
を含む主プロテーゼと、
b)複数の同心層によって形成された壁を通る前記少なくとも1つの通路を通って設置するための少なくとも1つの相互接続プロテーゼであり、相互接続プロテーゼが、複数層によって形成された前記壁および患部に関与した側副血管の1つの壁に対して前記少なくとも1つの通路を密封するように設置されており、相互接続プロテーゼが、主プロテーゼの内部を前記1つの側副血管に相互接続する相互接続プロテーゼ
とを含む、プロテーゼを提供することである。
【0021】
本発明の別の目的は、側副血管を含む患者の血管を修復するためのプロテーゼの埋め込み方法であって、プロテーゼが、
a)主プロテーゼであって、
i)前記血管内に、そして前記患部に沿って、しっかりと固定するための拡張可能な支持体、および
ii)複数の同心層から成る布材製の裏地であり、各層が、そこを通過する血流を可能にするのに十分に開いているウェブを提供し、層がすべて一緒に重なり合って主プロテーゼの設置および埋込みのために制御された期間中に開いていることができ、前記期間が経過した後に患者の血液のフィブリンによって密封される迷路間隙を画定する主プロテーゼの壁を形成し、各1つの重なり合う層のウェブによって形成された前記間隙が、間隙を通過する非切断要素によって開かれて、複数の同心層によって形成された壁を通る少なくとも1つの通路を形成することができる裏地
を含む主プロテーゼと、
b)複数の同心層によって形成された壁を通る前記少なくとも1つの通路を通って設置するための少なくとも1つの相互接続プロテーゼであり、相互接続プロテーゼが、複数層によって形成された前記壁および患部に関与した側副血管の1つの壁に対して前記少なくとも1つの通路を密封するように設置されており、相互接続プロテーゼは、主プロテーゼの内部を前記1つの側副血管に相互接続する相互接続プロテーゼ
とを含み、方法が、
第1のガイドを用いて血管内の通路を介して前記主プロテーゼを血管内に設置する工程であって、プロテーゼが血管の前記患部に沿って延びるように配置されており、接続されるべき前記側副血管が前記患部から生じる工程と、
接続されるべきいずれか前記側副血管の前にある検出される主プロテーゼの壁のあらゆる場所に前記少なくとも1つの相互接続プロテーゼを設置する工程であり、前記主プロテーゼの内部と接続された側副血管との間に流体連通が確立される工程
とを含む方法である、方法を提供することである。
【0022】
本発明のさらなる目的は、側副血管を含む患者の血管を修復するためのプロテーゼの埋め込み方法であって、プロテーゼが、
a)主プロテーゼであって、
i)前記血管内に、そして前記患部に沿って、しっかりと固定するための拡張可能な支持体、および
ii)複数の同心層から成る布材製の裏地であり、各層が、そこを通過する血流を可能にするのに十分に開いているウェブを提供し、層がすべて一緒に重なり合って主プロテーゼの設置および埋込みのために制御された期間中に開いていることができ、前記期間が経過した後に患者の血液のフィブリンによって密封される迷路間隙を画定する主プロテーゼの壁を形成し、各1つの重なり合う層のウェブによって形成された前記間隙が、間隙を通過する非切断要素によって開かれて、複数の同心層によって形成された壁を通る少なくとも1つの通路を形成することができる裏地
を含む主プロテーゼと、
b)複数の同心層によって形成された壁を通る前記少なくとも1つの通路を通って設置するための少なくとも1つの相互接続プロテーゼであり、相互接続プロテーゼが、複数層によって形成された前記壁および患部に関与した側副血管の1つの壁に対して前記少なくとも1つの通路を密封するように設置されており、相互接続プロテーゼは、主プロテーゼの内部を前記1つの側副血管に相互接続する相互接続プロテーゼ
とを含み、方法が、
第1のガイドを用いて血管内の通路を介して前記主プロテーゼを血管内に設置する工程であって、プロテーゼが血管の前記患部に沿って延びるように配置されており、接続されるべき前記側副血管が前記患部から生じる工程と、
前記第1のガイド上で、弁、拡張器および格納端を有する第1の導入器を前進させる工程と、
拡張器および前記第1のガイドを取り外し、第1の導入器の格納端を曲げて、格納端を接続されるべき側副血管の心門の前に配置する工程と、
第2の直線先端ガイドを前記第1の導入器内に前進させ、前記第2のガイドを前記主プロテーゼの壁の前記複数層に通して前記壁を通る通路を形成する工程と、
前記第2のガイドを接続されるべき前記側副血管に入れる工程と、
前記第2のガイド上に装着して、前記第1の導入器を介してカテーテルバルーンを導入し、前記複数層のウェブ間に形成された隙間を通って前記カテーテルを主プロテーゼの壁に通し、ウェブの繊維または鎖を切断、破損または裂くことなく移す工程と、
前記通路を主プロテーゼの壁の左右に拡大するように前記バルーンを接続されるべき側副血管の直径よりも小さな直径に膨張させる工程と、
前記カテーテルバルーンを収縮させて取り外す工程と、
第1の導入器に沿って第2のガイド上に装着された拡張器を有する第2の導入器を導入し、第2の導入器を主プロテーゼの壁を形成する複数層内の開放通路に通し、拡張器付き第2の導入器を接続されるべき側副血管内に配置する工程と、
第2の導入器から拡張器を取り外す工程と、
膨張バルーン上に装着された相互接続プロテーゼを第2の導入器内および前記第2のガイド上に導入する工程と、
相互接続プロテーゼを所望の位置に位置決めする工程と、
第2の導入器を後方に滑らせ、相互接続プロテーゼを主プロテーゼの壁に形成された前記通路内の位置に、そして接続されるべき側副血管内に残す工程と、
相互接続プロテーゼを装着した膨張バルーンを膨張させ、相互接続プロテーゼを展開し、主プロテーゼの前記壁に形成された通路を拡張し、接続されるべき側副血管内に相互接続プロテーゼを詰め込み、こうして主プロテーゼの内部を側副血管に相互接続する工程と、
前記膨張バルーンを収縮させる工程と、
膨張バルーンを第2の導入器から取り外す工程と、
第2の導入器を取り外す工程と、
第2のガイドを取り外す工程と、
第1の導入器を別の側副血管に接続するために所望の位置に位置決めする工程と、
前記他の側副血管の接続のために上記工程を繰り返す工程と
を含む方法である、方法を提供することである。
【0023】
本発明の別の目的は、側副血管を含む患者の血管を修復するためのプロテーゼの埋め込み方法であって、プロテーゼが、
a)主プロテーゼであって、
i)前記血管内に、そして前記患部に沿って、しっかりと固定するための拡張可能な支持体、および
ii)例えば幾何学的な長手方向軸の周りに延びる複数の同心層から成る布材製の裏地であり、各層が、そこを通過する血流を可能にするのに十分に開いているウェブを提供し、層がすべて一緒に重なり合って主プロテーゼの設置および埋込みのために制御された期間中に開いていることができ、前記期間が経過した後に患者の血液のフィブリンによって密封される迷路間隙を画定する主プロテーゼの壁を形成し、各1つの重なり合う層のウェブによって形成された前記間隙が、間隙を通過する非切断要素によって開かれて、複数の同心層によって形成された壁を通る少なくとも1つの通路を形成することができる裏地を含む主プロテーゼと、
b)複数の同心層によって形成された壁を通る前記少なくとも1つの通路を通って設置するための少なくとも1つの相互接続プロテーゼであり、相互接続プロテーゼが、複数層によって形成された前記壁および患部に関与した側副血管の1つの壁に対して前記少なくとも1つの通路を密封するように設置されており、相互接続プロテーゼが、主プロテーゼの内部を前記1つの側副血管に相互接続する相互接続プロテーゼ
とを含み、方法が、
第1のガイドを用いて血管内の通路を介して前記主プロテーゼを血管内に設置する工程であって、プロテーゼが血管の前記患部に沿って延びるように配置されており、接続されるべき前記側副血管が前記患部から生じる工程と、
前記第1のガイド上で、弁、拡張器および格納端を有する第1の導入器を前進させる工程と、
拡張器および前記第1のガイドを取り外し、第1の導入器の格納端を曲げて、格納端を接続されるべき側副血管の心門の前に配置する工程と、
第2の直線先端ガイドを前記第1の導入器内に前進させ、前記第2のガイドを前記主プロテーゼの壁の前記複数層に通して前記壁を通る通路を形成する工程と、
前記第2のガイドを接続されるべき前記側副血管に入れる工程と、
前記第2のガイド上に装着された拡張器付き第2の導入器を第1の導入器に沿って導入し、第2の導入器を主プロテーゼの前記壁を形成する前記複数層内の前記開放通路に通す工程と、
拡張器を第2の導入器から取り外す工程と、
膨張バルーン上に装着された相互接続プロテーゼを第2の導入器内および前記第2のガイド上に導入する工程と、
相互接続プロテーゼを所望の位置に位置決めする工程と、
第2の導入器を後方に滑らせ、相互接続プロテーゼを主プロテーゼの壁に形成された前記通路内の位置に、そして接続されるべき側副血管内に残す工程と、
相互接続プロテーゼを装着した拡張バルーンを膨張させ、相互接続プロテーゼを展開し、主プロテーゼの壁に形成された通路を拡張し、接続されるべき側副血管内で相互接続プロテーゼを詰め込み、こうして主プロテーゼの内部を側副血管に相互接続する工程と、
前記膨張バルーンを収縮させる工程と、
膨張バルーンを第2の導入器から取り外す工程と、
第2の導入器を取り外す工程と、
第2のガイドを取り外す工程と、
第1の導入器を別の側副血管に接続するために所望の位置に位置決めする工程と、
前記他の側副血管の接続のために上記工程を繰り返す工程
とを含む方法である、方法を提供することである。
【0024】
本発明のさらなる目的は、側副血管を含む患者の血管を修復するためのプロテーゼの埋め込み方法であって、プロテーゼが、
a)主プロテーゼであって、
i)前記血管内に、そして前記患部に沿って、しっかりと固定するための拡張可能な支持体、および
ii)例えば幾何学的な長手方向軸の周りに延びる複数の同心層から成る布材製の裏地であり、各層が、そこを通過する血流を可能にするのに十分に開いているウェブを提供し、層がすべて一緒に重なり合って主プロテーゼの設置および埋込みのために制御された期間中に開いていることができ、前記期間が経過した後に患者の血液のフィブリンによって密封される迷路間隙を画定する主プロテーゼの壁を形成し、各1つの重なり合う層のウェブによって形成された前記間隙が、間隙を通過する非切断要素によって開かれて、複数の同心層によって形成された壁を通る少なくとも1つの通路を形成することができる裏地
を含む主プロテーゼと、
b)複数の同心層によって形成された壁を通る前記少なくとも1つの通路を通って設置するための少なくとも1つの相互接続プロテーゼであり、相互接続プロテーゼが、複数層によって形成された前記壁および患部に関与した側副血管の1つの壁に対して前記少なくとも1つの通路を密封するように設置されており、相互接続プロテーゼが、主プロテーゼの内部を前記1つの側副血管に相互接続する相互接続プロテーゼ
とを含み、方法が、
第1のガイドを用いて血管内の通路を介して前記主プロテーゼを血管内に設置する工程であって、プロテーゼが血管の前記患部に沿って延びるように配置されており、接続されるべき前記側副血管が前記患部から生じる工程と、
前記第1のガイド上で、弁、拡張器および格納端を有する第1の導入器を前進させる工程と、
拡張器および前記第1のガイドを取り外し、第1の導入器の格納端を曲げて、格納端を接続されるべき側副血管の心門の前に配置する工程と、
拡張器付き第2の導入器を前記第1の導入器に沿ってその内部に導入し前進させ、第2の導入器の軸をわずかに回転させて前方に押し、第2の導入器を主プロテーゼの壁を形成する複数層を通し、この壁を通る通路を形成し、拡張器付き第2の導入器を接続されるべき側副血管内に位置決めする工程と、
第2の導入器の拡張器を通して接続されるべき側副血管内に第2のガイドを位置決めする工程と、
拡張器を第2の導入器から取り外す工程と、
拡張バルーン上に装着された相互接続プロテーゼを第2の導入器内および前記第2のガイド上に導入する工程と、
相互接続プロテーゼを所望の位置に位置決めする工程と、
第2の導入器を後方に滑らせ、相互接続プロテーゼを主プロテーゼの壁に形成された前記通路内の位置に、そして接続されるべき側副血管内に残す工程と、
相互接続プロテーゼを装着した膨張バルーンを膨張させ、相互接続プロテーゼを展開し、主プロテーゼの前記壁に形成された前記通路を膨張させ、相互接続プロテーゼを接続されるべき側副血管内に詰め込み、こうして主プロテーゼの内部を側副血管に相互接続する工程と、
前記膨張バルーンを収縮させる工程と、
膨張バルーンを第2の導入器から取り外す工程と、
第2の導入器を取り外す工程と、
第2のガイドを取り外す工程と、
別の側副血管を接続するために第1の導入器を所望の位置に位置決めする工程と、
前記他の側副血管の接続のために上記工程を繰り返す工程と
を含む方法である、方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明は、以下の図面において例として説明される。
図1】本発明による、非常に開いているメッシュまたはウェブでできている複数層を含む主プロテーゼの斜視図および部分断面図である。
図2】本発明による主プロテーゼの分解図である。
図3】本発明の主プロテーゼの部分断面側面図である。
図4】既に埋め込まれて側副動脈を相互接続するための相互接続プロテーゼの埋込み前の工程中の本発明の主プロテーゼを示す、腹部大動脈由来動脈瘤、ならびに関与した側副動脈、すなわち腎動脈、上腸間膜動脈および腹腔動脈のすべて斜視図および断面図である。
図5】例として、腎動脈の1つの心門の前の部分における、主プロテーゼの多層壁を通るバルーンカテーテルの遠位端が見られる、設置された主プロテーゼの壁を通して相互接続プロテーゼを埋め込む前の段階または方法の工程の部分断面側面図である。
図6】バルーンが主プロテーゼの壁を形成する複数層を通る通路を開くように膨張される、図5の段階または方法の工程の後の工程の部分断面側面図である。
図7a】バルーンが取り外され、拡張器付き第2の導入器が接続されるべき動脈内に挿入された、図6と同様の図である。
図7b】主プロテーゼの多層壁を通ってガイドの助けなく導入されて腎動脈の1つ内に部分的に配置されている、その拡張器付き第2の導入器が見られる、設置された主プロテーゼの壁を通して相互接続プロテーゼを埋め込む前の段階の部分切欠側面図である。
図8】拡張器が第2の導入器から取り外され、第2の導入器のさやの内側に配置されて、相互接続プロテーゼが、主プロテーゼの管腔内に部分的に接続されるべき動脈内で膨張バルーン上に部分的に装着され、主プロテーゼの壁の複数層を横断している、図7aと同様の図である。
図9】第2の導入器のさやが取り外され、相互接続プロテーゼ、膨張可能バルーンが主プロテーゼの管腔内に部分的に接続されるべき腎動脈内に部分的に挿入されて、主プロテーゼの壁の複数層を横断している、図8の工程の後の工程の部分断面側面図である。
図10】プロテーゼの膨張バルーンが、相互接続プロテーゼを主大動脈プロテーゼの壁および腎動脈内に固定するために膨張および拡張される、図9の工程の後の工程の部分断面側面図である。
図11】膨張バルーンが相互接続プロテーゼをその最終拡張直径まで拡張させた、図10と同様の図である。
図12】相互接続プロテーゼが定位置にある間に膨張バルーンが取り外された、図11と同様の図である。
図13】ジグザグ形状に陥入された単一の管状布地から形成された3つの層の布地から成る主大動脈プロテーゼの代替実施形態を示す縦断面図および部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ここで図面を詳細に参照すると、本発明は、修復されるべき大動脈の部分に関与したあらゆる側副動脈の損傷の危険性および望ましくない閉塞なく大動脈内に腔内に設置され得る、動脈瘤および/または解離の治療のための新たな大動脈プロテーゼから成ることが分かる。本発明のプロテーゼは、プロテーゼの壁の層の布地または任意の糸を破損、切断または裂くことなくプロテーゼの壁を通過する主大動脈プロテーゼ内に固定および密封される1つ以上の2次または相互接続プロテーゼを容易に接続することができる主プロテーゼを備える。これらの切断および断裂は、先行技術の大動脈プロテーゼの使用において避けられない。それとは異なり、本発明は、大動脈からの動脈への血流を確実にするために対応する側副動脈内に埋め込まれるべき相互接続プロテーゼの密封接続のための主プロテーゼの壁上に通路、チャネル、開口または窓の形成を提供する。いくつかの図では胸腹部大動脈瘤の場合に埋め込まれるべきプロテーゼが示されているが、これは本発明がそれに限定されることを意味するのではなく、本発明のプロテーゼが上行大動脈、大動脈弓および下行大動脈に使用できることを意味する。
【0027】
本発明によれば、図1に示され、一般参照1によって示され、支持体2と、可撓性のある、または柔軟な織物の布地の裏地3とを含む、主プロテーゼによって形成された新たな大動脈プロテーゼが提供される。前記支持体2は、自己拡張型またはバルーン拡張型の既知であり得るステントまたは金属主鎖を含むことができる円筒形構造を有する。ステントまたは支持体2は、裏地3を伴う主プロテーゼ1全体に沿って延びる。固定手段としてのステントは周知であり、本発明の技術分野において使用されているため、同じものに関する説明的詳細は含まれない。ステントは2つの末端、上部4および下部6を有し、大動脈壁へのプロテーゼの固定を容易にするために裏地3の端部を越えて突出する固定部5aおよび5bの両方を任意に有する。
【0028】
その結果、織物裏地3は、本発明によれば、長手方向軸7に対して同心円状に配置された複数層、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの層を含む新規な形状を有する。本発明の好ましい実施形態によれば、前記層は、プロテーゼの壁または膜11を画定する互いに重なり合う内層8、中間層9および外層10を含む。プロテーゼが大動脈壁に対して固定されるように支持体またはステント2とともに拡張されるとき、プロテーゼ壁を画定するそれらの間の構造的一体性が達成されるように、層は互いから独立して重なり合ってもよいことに留意されたい。層は、示されるように別々の層であって、一方をもう片方内に配置されてもよく、または図3に示されるようにプロテーゼの長さに3つの層を画定するためにジグザグ陥入パターンに配置された単一の管状の布地であってもよい。層が別々の布地または独特のジグザグ布地を構成するかどうかにかかわらず、それらは、例えば縫合糸、クリップなどの既知の技術および手段によってステントまたは金属主鎖2に取り付けることができる。
【0029】
また、各内層8、中間層9および外層10は、任意の適切な種類の布、例えば横糸縦糸編物、編物などを含む。壁または膜11を形成する多層は、同じ種類の布地または別の布地であってもよい。本発明の概念によれば、各層は、無制限に、そこを通る血流の通過を可能にするように十分に開いている布地ウェブを別々に有する。したがって、本大動脈プロテーゼの壁または膜を形成する層は、プロテーゼを通る血流の通過を防止し、それが埋め込まれて、この種の処置に必要な抗凝固治療が逆転した途端、その孔を密封するのに必要な量の血液のフィブリンを固定するマトリックスを形成するために単一または別々の形態では使用できない。動脈瘤または解離を排除するのに必要なシールは、本発明によれば一緒に働く前記複数層、例えば3つの層8、9および10を組み合わせることによってのみ得ることができる。したがって、一緒に働くことによって、それらは別々にはできない、すべての層を相互接続して壁のこの多層構造の孔または間隙を密封するフィブリンマトリックスの形成のための三次元構造を提供することを行う。
【0030】
各層の「十分に開いているウェブ」は、そこを通る水の通過に対するその抵抗が非常に低いような多孔性を有するものを意味すると理解される。各層の多孔性は同じでも異なっていてもよく、すなわち、すべての層が同じ、または異なるウェブを有してもよく、層の間で同じ多孔性または異なる多孔性を有してもよい。一方、複数層8、9および10によって形成された前記壁が、2500cm3/cm2/分を超える初期水多孔性を有し得ると、そのとき従来の織物プロテーゼは、50cm3/cm2/分以上、200cm3/cm2/分以下の多孔性を有する。
【0031】
より具体的には、本発明の主プロテーゼの層は極めて薄くかつ高度に多孔性であり、そして組み合わせて、患者の血液からのフィブリンが制御された時間後にのみ孔を密封する三次元マトリックスまたは三次元構造を形成する。これが起こるためには、層がそれらの長さに亘って密着していることが必要であり、したがって自己拡張型であるか、またはバルーン拡張型である内部金属ステントまたは主鎖2は、埋込み中に前記層を半径方向外側に拡張し、互いに密着した永久的な緊張状態に維持しなければならない。層8、9および10の布地は、好ましくは、プロテーゼおよびその分岐または相互接続プロテーゼが埋め込まれて、この種の処置のために患者に投与される薬物の抗凝固効果が逆転した途端、血液フィブリンの沈着および固定を促進するマルチフィラメントポリエステル布地である。
【0032】
大まかに言えば、本発明の概念は、前記各層8、9および10が非常に開いている布地ウェブを有し、層が一緒に重なり合って、各層のウェブの間に、大動脈内にプロテーゼを埋め込む作業に必要な所定の時間中、開け放つことができ、かつ上記のように、完全なプロテーゼがその動脈の相互接続とともに埋め込まれた途端、前記制御時間の後に大動脈を通って循環する血液からのフィブリンによって密封することができる迷路孔または迷路間隙を画定するプロテーゼ壁または膜を形成するように同心であるという事実に基づいている。前記孔は、各層8、9、10のウェブを通過するに際し、そこでプロテーゼの壁または膜11に、ならびに関与した側副動脈13内に、かつ側副動脈13内に対して固定され密封される2次相互接続プロテーゼ21に接続することを可能にするプロテーゼ1の壁11を貫通する開口または通路またはチャネル26を形成する、バルーンカテーテルまたは導入器拡張器の一端または先端などの先細部材の使用によって整列させることができる。
【0033】
すなわち、主大動脈プロテーゼ1の壁または膜11を形成する各層8、9、10は、非切断先細部材によって穿孔されると、所望の直径または選択された直径まで横断される孔の繊維または糸の破損なく拡大を可能にする物理的構造または布地を有する。この特性は、3つの層8、9、10が内部金属支持体またはステント2によって半径方向に拡張されると、膜11の拡張中維持される。拡張されたステント2のセルの構成は、相互接続プロテーゼの通過および固定を可能にする。いずれのセルも半径方向に変形され得、設置時の相互接続プロテーゼ21の拡張を制限しない。
【0034】
これにより、主プロテーゼ1の壁11を通過し、先行技術のプロテーゼにおいて起こるように、主プロテーゼ上に特定の穿刺、破裂、開口部または相互接続の場所を設ける必要なく相互接続プロテーゼまたは分岐21を選択された側副動脈の前の正確な位置に設置することができる。これは、実際に、例えば、ともに上記先行技術文献のBruszewskyのブラウスおよびCullyらの打ち抜き可能なパッチにおいて事実である。
【0035】
本発明は、保護範囲を限定するものでも制限するものでもない以下の実施例を参照してよりよく理解されるであろう。それどころか、本発明の精神およびまたは添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、本明細書を読んだ後に、多くの他の実施形態、修正および本発明の要素と等価な変更が当業者によって示唆され得ることを明確に理解しなければならない。
【実施例
【0036】
本発明によるプロテーゼを製造した。プロテーゼは、
SETA(登録商標)内部プロテーゼに使用されたものと同様の、会社Latecba S.A.によって提供された、長さ47mm、最大40mmの拡張範囲の、ステンレス鋼製の独立気泡型ステントを含んでいた。
【0037】
裏地は、ニット地、ジャージータイプの3つの同心層を形成するジグザグパターンに配置された管状メッシュであった。管状メッシュは、1インチ当たり20本の針をもった直線二本針ミシンで加工されたマルチフィラメントポリエステル糸で織られた。
【0038】
裏地は、ステントの両端に配置され、長手方向軸上に整列された、Johnson&Johnson 4/0 Ethibond編組ポリエステル縫合糸によってステントに固定された。裏地は、最大30mmまで拡張する能力をもった初期直径16mmを有していた。
【0039】
プロテーゼはまた、アルゼンチン由来の会社Latecba S. A社製のSICBI Gタイプの超微細PTFE膜で覆われたEucatech(登録商標)拡張可能バルーン腎臓ステントで製造された2つの相互接続プロテーゼを含んでいた。
【0040】
ここで本発明によって提案された方法を参照し、その第1の代替案に従って、本発明の主プロテーゼ1は、従来のいずれかの血行力学的処置、そして明らかに患者が適切にヘパリン処置、すなわち抗凝固剤処置されており、次いで、既知の第1の導入器などの管状位置決め装置によって血管の患部、この場合は大動脈内に位置決めされる。例えば図4に示す動脈瘤17では、プロテーゼが埋め込まれるべき所望の位置にくると、プロテーゼを所定の位置に残して主プロテーゼ1が管状位置決め装置から解放される。埋込み技術は、主プロテーゼがバルーン拡張型のものであるかそれが自己拡張型のものであるかに依存し、そして両方の場合において当該技術分野において既知の処置に従うであろう。治療されるべき位置が腹部大動脈であり、患部に関与した側副動脈が腎動脈12、13、上腸間膜14および腹腔動脈15である場合、図4に示すように、プロテーゼは腹腔動脈の上および腎動脈の下に延びるべきであり、プロテーゼ1は既に設置され埋め込まれている。分かるように、本発明によれば、これらの動脈の心門は閉塞されていない、すなわち、各層の布地の開いているウェブのおかげで、それらの灌流を塞いでいないため、プロテーゼ1が側副動脈12から15の全体にわたって延びていることは重要ではない。
【0041】
プロテーゼの両端4および6は、修復されるべき病変の近位および遠位の首に密封されるべきである。本発明の大動脈プロテーゼの端部を正確に位置決めするために、一方または両方の端部が造影マーカー27を有することができる(図1参照)。プロテーゼが展開されると、接続されるべき各側副動脈の位置の検出がカテーテルおよび造影剤とともに血行動態の標準的な技術を用いて行われ、血管造影的に側副動脈を位置決めする。これは、プロテーゼ1の膜または壁11、特に層8、9および10の高い初期多孔性、ならびに患者の抗凝固状態のために可能であろう。すなわち、示したように一旦設置されたプロテーゼ1を通って流れる血液は、側副動脈12から15に入る多層壁11を通過するであろう。したがって、造影剤が血液に注入されると、接続されるべき各動脈の位置は、既知の血管造影検査の技術で検出されるであろう。これらの側副動脈によって灌流される臓器は、全処置に亘って血液を受け取るため、部分的および/または全面的および/または一時的および/または永久的な閉塞の望ましくない結果を回避することに留意することが重要である。この点について、最初からそこを通る血液のあらゆる漏れを防ぐために、不透過性または十分に閉じたウェブを生むメッシュまたは膜とともにすべての既知のプロテーゼが設計されていることは注目に値する。このため、図4に埋め込まれたプロテーゼが当該技術分野において従来のものの膜を有する場合、側副動脈は確実に閉塞されるであろう。今度は、図4の前記プロテーゼが、いずれかの先行技術の膜を有し、その設置が、時間がかかるか、またはそれが間違って埋め込まれた場合、一時的または永久的に閉塞した動脈は、この側副動脈によって灌流される臓器に部分的、全面的、一時的または永久的な損傷を引き起こすであろう。
【0042】
これらの一時的または永久的な閉塞は、あらゆるプロテーゼの設置時に奇妙な状況にはならない。これは通常、プロテーゼが1つ以上の側副動脈を閉塞する間違った場所に展開されるときに起こる。従来のプロテーゼの場合は、不本意に閉塞した側副枝への血流の回復を試みるために即座の行動をとるべきである。これが本発明のプロテーゼで起こるとすれば、側副動脈への流れの中断はないであろう。具体的には、患者が抗凝固剤の影響下にある間は閉塞がないであろう。実際、本発明の概念は、血流の通過が、層8、9、10から成る布地壁11の開いているウェブによって所望のそして制御可能な期間保証されるため、灌流の欠如の危険性なく側副動脈の心門を含む大動脈壁に沿って延びる大動脈プロテーゼを設置することができることに基づいている。
【0043】
本発明のプロテーゼのメッシュを通る流れは、患者が手術の所用時間の間、抗凝固の影響下にある間、維持される。次いで、側副動脈との相互接続を含むプロテーゼの完全セットが設置され、抗凝固が逆転されると、壁11の層8、9、10によって形成された新規のネットまたはウェブ上への患者の血中フィブリンの沈着のおかげで既に説明した壁の密封の効果が起こるであろう。
【0044】
大動脈プロテーゼ1が設置されると、それらを主プロテーゼ1の内部に接続するために保存されるべき側副動脈の各々の位置決めが順次行われるであろう。このために、手術者は、血行力学的技術のために既知の補助装置(その中でも、我々が言及できるのは直線末端親水性ガイド、格納式先端案内カテーテル、バルーン、そして拡張器またはマンドレル付き導入器)を有しているであろう。本発明によれば、相互接続プロテーゼの接続のために提案された方法を以下に説明する。
【0045】
大動脈プロテーゼ1を位置決めし設置するために使用された第1のガイド(図示せず)上に、既知の拡張器および格納式末端19付き第1の弁導入器18を前進させて、接続されるべき動脈の心門が検出されるレベルに位置決めする。図4から12に示すように、導入器の拡張器(図示せず)および前記第1のガイドを取り外し、導入器を、プロテーゼ1の膜11の反対側にある接続されるべき動脈13の心門と対面するまで格納式末端19を曲げるように操作する。確認後、新たな血管造影画像によって、第1の導入器18の正しい位置決めを行い、そこに第2のガイド16の直線先端をプロテーゼ1の膜または壁11の3つの層を通過するまで前進させ、接続されるべき側副動脈13の内側に入れる(図4参照)。膜11の3つの層を通過し、すでに動脈13の内側にある第2のガイド16上で、膜11の3つの層8、9および10を容易に通過する第1のカテーテルバルーン22を前進させる(図5参照)。より具体的には、第1のバルーン22の先端20を、層8、9および10のウェブによって形成された間隙を通過させ、そこに収容して図5から12に示すように、未切断層のウェブの鎖または繊維を破損または裂くことなく、プロテーゼ壁1の一方の側から反対側に開放通路26を形成するように移す。繊維を切断したり裂いたりしないことによって、メッシュを破損して不必要な漏れを発生させることになる従来技術では、これらの断裂が将来広がる危険性はない。第2のガイド16が通過する3つの層8、9および10の間隙、穴または孔を訓練して整列させるために、接続されるべき側副動脈13の直径よりも小さな直径を有するべきこのバルーン22を膨張させる。次いで、それを収縮させてバルーンを取り除き、次の工程の操作を容易にするために3つの膜8、9および10の穴を、向きをつけ、または部分的に整列させて残す。
【0046】
図7aに示すように、先に開けた開口または通路26を通る膜を通って延びる拡張器またはマンドレル24付き第2の導入器23を同じ第2のガイド16上を前進させ、接続されるべき側副動脈13内に位置決めする。次いで、拡張器24をこの第2の導入器23から取り外し、そして図8に示すように、導入器内で、その膨張バルーン25とともに相互接続プロテーゼ21を第2のガイド16上で前進させる。この位置が定まると、図9に示すように、第2の導入器23を後方に滑らせて分岐または相互接続プロテーゼ21を拡張して残す。相互接続プロテーゼ21のバルーン25を膨張させ、それを展開し、3つの層上に形成された開口部または通路26を拡張させ、こうして接続されている動脈を詰め込む(図10から12参照)。
【0047】
上記のように、第1のバルーン22は、動脈13の直径よりも小さな直径をもった開口または通路26を形成した。これは、相互接続プロテーゼ21が、そこに埋め込まれるべき動脈13の直径まで拡張しなければならないためであり、そして、この直径は通路26の直径よりも大きいため、プロテーゼは、通路26の直径を越えて拡張することによって、通路26内に半径方向の圧力密封を生成し、こうして最後に図12に設置して示すように将来の漏れを防止する。
【0048】
本発明の埋め込み方法の第2の代替案によれば、図5に示すように、層8、9、10を通る通路を開くために使用されたカテーテルバルーン22を使用する必要はないかもしれない。実際、図5および6に示す開放通路26のための前記工程は不要にすることができ、その代わりに、第2のガイド16をプロテーゼの壁11を通過させた後、この第2のガイド上で図7aに示した第2の導入器23を前進させることが可能である。次いで、拡張器24を取り外し、既に上記の図8から12に示した工程を続ける。
【0049】
次いで、この第2の代替案によれば、血管内経路によって主プロテーゼを設置した後、第1のガイド(図示せず、当技術分野で周知)を用いて、弁および拡張器および格納式末端付き第1の導入器18を前記第1のガイド上で前進させる。拡張器および前記第1のガイドを取り外し、そして導入器の格納式末端19を、主プロテーゼの壁の反対側にある接続されるべき側副血管の心門に向けるように曲げる(図4参照)。次いで、第2の直線先端ガイド16を、主プロテーゼ1の壁11の前記複数層8、9、10が通過するまで前進させ、前記壁を通る通路26を形成する。第2のガイド16上に装着されたマンドレルまたは拡張器24付き第2のガイド23を、壁11を形成する層8、9および10内で開いている通路26を通って第2のガイド16とともに接続されるべき側副血管13内に導入して挿入し、拡張器24付き第2の導入器23を接続されるべき側副血管13内に位置決めする。次に、上記第1の方法のように続き、次いで、膨張バルーン25に装着された相互接続プロテーゼ21を第2の導入器23内および第2のガイド16上に挿入し、相互接続プロテーゼを所望の位置に位置決めすることによって拡張器24を第2の導入器23から取り外す(図8参照)。次いで、第2の導入器23を後方に滑らせて、相互接続プロテーゼ21を通路26内の所定の位置および接続されるべき側副血管13内に残す(図9参照)。次いで、膨張バルーン25を、その上に装着された相互接続プロテーゼ21とともに膨張させ、そして相互接続プロテーゼを展開し、それを通路26内および側副動脈内に詰め込む。次いで、膨張バルーン25を収縮させ、第2の導入器23とともに取り外し、そして第1の導入器18を別の側副血管に接続するための所望の位置に位置決めし、このように、前記他の側副血管12、14、および15を接続するための上記工程を繰り返す。
【0050】
本発明の埋め込み方法の第3の代替案によれば、図5および6に示した訓練バルーン22の使用は、拡張器24付き導入器23を用いることによって、続けて壁11および各層8、9、10を通過して制御することによって抑制することができる(図7b参照)。拡張器24付き導入器23を、第2のガイド16(この場合不使用)の助けなく第1の導入器18の内側に導入し前進させる。拡張器24付き導入器23の軸をわずかに回転させて前方に押すことによって、主プロテーゼ1の壁11を形成する複数層8、9、10を通過させ、こうして、それを通る通路26を生成し、拡張器24付き第2の導入器23を接続されるべき側副血管13内に位置決めする。複数層8、9、10を通過させると、導入器23の拡張器24を通って接続されるべき側副動脈13内に第2のガイド16を位置決めし、他の代替案に示した工程を続けて図8から12に示した工程を進める。
【0051】
続いて、図10から12に示したように、かつ、いずれかの上記代替例に従って動脈13を接続すると、相互接続プロテーゼ21を拡張するために使用したバルーン25を取り外し、導入器18を接続されるべき別の動脈内に位置決めし、動脈13を相互接続するために行ったのと同じ工程を繰り返す。
【0052】
2次または相互接続プロテーゼ21は、当該技術分野において周知であるため、詳細には説明されないであろう裏張りステントを含むことができる。
【0053】
最後に、すべての側副動脈は、主プロテーゼ1の内部と流体連通しており、何ら不都合なく血流の通過を可能にし、また動脈瘤および/または腹部解離などの患部の隔離に成功している。すべての側副動脈に相互接続プロテーゼを埋め込むことは、処置中に各側副動脈の灌流の欠如の危険性なく埋込みまたは設置を完了するのに必要な時間を要する可能性がある。実際、患者を抗凝固剤処置する限り、血液は壁11を通過し続け、まだ相互接続されていない動脈12、13、14、15に達する。すべての側副動脈が相互接続され、そして患者における抗凝固効果が消散すると、血液のフィブリンが、3つのウェブまたは層8、9および10の布地によって形成された三次元迷路ウェブ上に堆積し始め、孔および間隙を密封する。この三次元性および迷路デザインは、それを密封して動脈瘤嚢への血液の通過を防ぐことによってプロテーゼの壁を覆うフィブリンの沈着および固定を可能にするものである。
【0054】
分かるように、本発明は、互いに重なり合っている少なくとも2つまたは3つの同心層によって構成された支持体および裏地を含む主プロテーゼに焦点を合わせている。非常に開いている布地ウェブのこのような層を配置することによって、上記のように、大動脈からそれぞれの動脈への血流の一時的な通過が可能になる。これにより、患者に対する介入時間が長くなり、こうして患者についての潜在する危険性が回避される。
【0055】
従来のプロテーゼおよび上記先行技術によるプロテーゼと異なり、本発明は、上に明確に説明および図示したように、すべての層を通る相互接続プロテーゼの通過および前記層におけるその固定および密封を各層のメッシュを破損する必要なく可能にするのに十分に開いているウェブを有する拡張可能な布地の複数の同心層によって裏打ちされた支持体から成る。抗凝固剤処置している患者にプロテーゼを埋め込んでいる間に、すべてプロテーゼの裏地または被履を「破損する」必要なく対応する側副動脈への血流を保証し、埋め込んだプロテーゼの内部を側副動脈に接続するであろう対応するプロテーゼの埋込みを完了するのに必要な時間を手術者に与えるように異なる層のメッシュのウェブも十分に開いている。側副枝の埋込みを完了し、抗凝固効果が逆転すると、異なる布地層の上および間のフィブリン固定のプロセスが始まり、血液循環から動脈瘤を除外する三次元血液不透過性マトリックスを形成する。
【0056】
本発明の好ましい実施形態を例示し説明してきたが、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく種々の変更および修正を行うことができることは当業者にとって明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8
図9
図10
図11
図12
図13