(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】測距システム、測距方法及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/14 20060101AFI20220106BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20220106BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
G01B11/14 H
G01B11/00 B
G01C3/06 120S
G01C3/06 120Q
G01C3/06 120W
(21)【出願番号】P 2020054846
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2020-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】504130809
【氏名又は名称】東芝インフォメーションシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲裴▼ 秉哲
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 翔太
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-024336(JP,A)
【文献】特開2002-174510(JP,A)
【文献】国際公開第2018/020568(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104573171(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01C 3/06
H02G 1/00- 1/10
H02G 7/00- 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距装置及び情報処理装置を有する測距システムであって、
前記測距装置は、
実在する第1の電柱の測定点までの距離、及び実在する第2の電柱の測定点までの距離、並びに実在する建物の測定点までの距離を測定する測距センサを有し、
前記情報処理装置は、
前記第1及び第2の電柱、並びに前記建物を含む空間内の領域の画像を撮影するカメラと、
前記カメラによって撮影された画像を画面に表示する表示部と、
弛度に従い、前記第1の電柱の測定点と前記第2の電柱の測定点との間にひも状のオブジェクトを生成する生成部と、
前記建物の測定点と前記ひも状のオブジェクトとの間の距離を計算する計算部と、
を有し、
前記表示部は、前記測距センサによって測定された距離、及び前記計算部によって計算された距離を前記画面に表示することを特徴とする測距システム。
【請求項2】
測距装置及び情報処理装置を有する測距システムであって、
前記測距装置は、
実在する電柱の測定点までの距離、及び実在する建物の測定点までの距離を測定する測距センサを有し、
前記情報処理装置は、
前記実在する電柱及び建物を含む空間内の領域の画像を撮影するカメラと、
前記カメラによって撮影された画像及び電柱を模したARオブジェクトを画面に表示する表示部と、
弛度に従い、前記実在する電柱の測定点と前記ARオブジェクトに配置されたバーチャル付箋との間にひも状のオブジェクトを生成する生成部と、
前記建物の測定点と前記ひも状のオブジェクトとの間の距離を計算する計算部と、
を有し、
前記表示部は、前記測距センサによって測定された距離、及び前記計算部によって計算された距離を前記画面に表示することを特徴とする測距システム。
【請求項3】
実在する建物及び第1の電柱並びに第2の電柱を含む空間内の領域の画像を撮影するカメラと、
前記カメラによって撮影された画像を画面に表示する表示部と、
前記画面に表示される前記建物及び前記第1の電柱並びに前記第2の電柱までの距離を測定する測距センサと、
弛度に従い、前記第1の電柱に配置されたバーチャル付箋と前記第2の電柱に配置されたバーチャル付箋との間にひも状のオブジェクトを生成する生成部と、
前記建物に配置されたバーチャル付箋と前記ひも状のオブジェクトとの間の距離を計算する計算部と、
を有し、
前記表示部は、前記測距センサによって測定された距離、及び前記計算部によって計算された距離を前記画面に表示することを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
実在する建物及び実在する電柱を含む空間内の領域の画像を撮影するカメラと、
前記カメラによって撮影された画像及び電柱を模したARオブジェクトを画面に表示する表示部と、
前記画面に表示される前記実在する建物及び前記実在する電柱までの距離を測定する測距センサと、
弛度に従い、前記実在する電柱に配置されたバーチャル付箋と前記ARオブジェクトに配置されたバーチャル付箋との間にひも状のオブジェクトを生成する生成部と、
前記建物に配置されたバーチャル付箋と前記ひも状のオブジェクトとの間の距離を計算する計算部と、
を有し、
前記表示部は、前記測距センサによって測定された前記建物及び前記実在する電柱までの距離、及び前記計算部によって計算された距離を前記画面に表示することを特徴とする情報処理装置。
【請求項5】
前記生成部は、複数のひも状のオブジェクトを生成し、
前記計算部は、前記複数のひも状のオブジェクト間の距離を計算することを特徴とする請求項1又は2に記載の測距システム。
【請求項6】
前記生成部は、前記画面の操作によって調整された弛度、又は太さ強度に従い、前記ひも状のオブジェクトを生成することを特徴とする請求項1、2、5のいずれか1項に記載の測距システム。
【請求項7】
測距システムによって実行される測距方法であって、
実在する建物及び第1の電柱並びに第2の電柱を含む空間内の領域の画像を撮影し、
撮影した画像を画面に表示し、
前記画面に表示される前記第1の電柱の測定点までの距離、及び前記第2の電柱の測定点までの距離、並びに前記建物の測定点までの距離を測定し、
弛度に従い、前記第1の電柱の測定点と前記第2の電柱の測定点との間にひも状のオブジェクトを生成し、
前記建物の測定点と前記ひも状のオブジェクトとの間の距離を計算し、
前記測定した距離、及び計算した距離を前記画面に表示することを特徴とする測距方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、測距方法及び測距システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電柱や電線の設置及びメンテナンスにおいては、安全の確保のため、電線と周囲の建物等のオブジェクトとの間に一定の距離を確保することが必要である。そのような距離は離隔距離と呼ばれ、経済産業省から公表されている電技解釈(電気設備の技術基準の解釈)で詳細に規定されている。
【0003】
従来、離隔距離を計測するための技術が知られている。例えば、設置済みの電線と家屋との離隔距離を、所定の間隔で目盛りが付された棒を使って測定する方法が知られている。また、例えば、レーザ測距により得られた測定値を基に離隔距離を計算する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、例えば、設置済みの電線の周辺の画像から離隔距離を計算する方法が知られている(例えば、特許文献2を参照)。また、例えば、電線の設置場所周辺の複数の画像と電線のモデリング情報を基に、電線と設置場所周辺の樹木との離隔距離を計算する方法が知られている(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-43109号公報
【文献】特開2002-39715号公報
【文献】特開2002-174510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術には、オブジェクトが未設置の場合に離隔距離を得ることが困難な場合があるという問題がある。例えば、特許文献1及び特許文献2に記載の技術は、電線が設置済みであることを前提とするものである。また、特許文献3に記載の技術は、電線を設置するための鉄塔や、周辺の樹木が既に存在していることを前提とするものである。このため、従来の技術では、例えば電線を設置するための鉄塔や、離隔距離の測定対象のオブジェクトクトが実際に存在しない場合、離隔距離を得ることは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の測距システムは、測距装置及び情報処理装置を有する測距システムであって、前記測距装置は、実在する第1の電柱の測定点までの距離、及び実在する第2の電柱の測定点までの距離、並びに実在する建物の測定点までの距離を測定する測距センサを有し、前記情報処理装置は、前記第1及び第2の電柱、並びに前記建物を含む空間内の領域の画像を撮影するカメラと、前記カメラによって撮影された画像を画面に表示する表示部と、弛度に従い、前記第1の電柱の測定点と前記第2の電柱の測定点との間にひも状のオブジェクトを生成する生成部と、前記建物の測定点と前記ひも状のオブジェクトとの間の距離を計算する計算部と、を有し、前記表示部は、前記測距センサによって測定された距離、及び前記計算部によって計算された距離を前記画面に表示することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る測距システムの概要について説明するための図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る測距システムの構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、情報処理装置に装着された測距装置の正面図の一例である。
【
図4】
図4は、情報処理装置に装着された測距装置の斜視図の一例である。
【
図5】
図5は、表示部に表示される画面の一例である。
【
図6】
図6は、表示部に表示される画面の一例である。
【
図7】
図7は、弛度の調整について説明する図である。
【
図8】
図8は、位置の調整について説明する図である。
【
図9】
図9は、電柱のオブジェクトの位置の調整について説明する図である。
【
図10】
図10は、車両のオブジェクトの回転について説明する図である。
【
図12】
図12は、第1の実施形態に係る測距システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、ARオブジェクトを配置する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本願に係る情報処理装置、測距方法及び測距システムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態により限定されるものではない。
【0009】
(第1の実施形態)
まず、
図1を用いて、本実施形態の測距システムの概要について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る測距システムの概要について説明するための図である。
図1に示すように、測距システム1は、ユーザが手に持った状態で使用されてもよい。例えば、測距システム1は、アタッチメントが装着されたスマートフォンである。
【0010】
ここで、測距システム1は、オブジェクト31、オブジェクト32及びオブジェクト33の周辺の空間内の領域を撮影する。なお、
図1には複数の種類のオブジェクトを示しているが、各オブジェクトは現実に存在するオブジェクトであってもよいし、AR(Augmented Reality)技術により仮想的に配置されたARオブジェクトであってもよい。例えば、オブジェクト31及びオブジェクト32は、実在の電柱又はARオブジェクトの電柱である。また、例えば、オブジェクト33は、実在の家屋である。
【0011】
さらに、オブジェクト31及びオブジェクト32には、それぞれ点31p及び点32pが配置される。また、オブジェクト33には、点33pが配置される。点31p、点32p及び点33pはいずれも仮想的なオブジェクトである。点31pは、第1の点の一例である。点32pは、第2の点の一例である。点33pは、第3の点の一例である。
【0012】
さらに、点31pと点32pとの間には、線状オブジェクト41wが配置される。線状オブジェクト41wは、例えば電線を模した弛度を定義可能なひも状のオブジェクトであってもよい。空間内への各オブジェクトの配置方法については後述する。
【0013】
測距システム1は、これまでに説明した各オブジェクトに関する情報を使って、離隔距離41dを計算する。例えば、離隔距離41dは、線状オブジェクト41wと点33pとの間の最短距離である。
【0014】
(第1の実施形態の構成)
図2を用いて、測距システム1の構成について説明する。
図2は、第1の実施形態に係る測距システムの構成の一例を示す図である。
図2に示すように、測距システム1は、情報処理装置10及び測距装置20を有する。情報処理装置10及び測距装置20は、有線又は無線により通信可能に接続されている。
【0015】
例えば、測距装置20は、情報処理装置10に着脱可能な機構を備えたアタッチメントである。測距装置20は、所定の通信規格に対応する通信モジュールを備え、当該通信モジュールによって情報処理装置10との間で通信を行うものであってもよい。このとき、測距装置20は、WiFi(登録商標)及びBluetooth(登録商標)等の広く普及している通信規格を利用することで、幅広いデバイスとの間でデータの通信を行うことができる。
【0016】
測距装置20は、情報処理装置10から独立したバッテリーを備えたものであってもよい。また、測距装置20は、有線ケーブルにより情報処理装置10から給電を受けるものであってもよい。
【0017】
測距装置20は所定の面までの距離を測定する。このとき、測距装置20は、レーザを用いた測距センサにより距離を測定する。ここで、レーザは指向性及び直進性が高く、例えば赤外線を用いたセンサと比べて、長距離の測距を行うことができる(例えば5mから50m)。例えば、測距装置20が用いるレーザの波長は、可視光の波長以上かつ赤外線の波長未満(例えば600nm程度)であってもよい。また、測距装置20は、情報処理装置10に備えられたカメラと同じ方向にある点までの距離を測定することができる。また、例えば、測距装置20は、測距センサにより点31p、点32p、点33pまでの距離を測定し、測定した距離を情報処理装置10に送信する。
【0018】
情報処理装置10はAR機能を有する。例えば、情報処理装置10によれば、カメラで撮影した画像内の指定した場所にARオブジェクトを配置することができる。ここで、情報処理装置10は面までの正確な距離を得ることができるため、ARオブジェクトを面に密着させて配置することが可能になる。例えば、ARオブジェクトは、厚さがないもしくは薄いシート状のオブジェクトであり、現実空間の所定の面に添付された付箋のように機能するものであってもよい。
【0019】
さらに、情報処理装置10は、カメラで撮影した画像にARオブジェクトを重畳させて表示することができる。その際、情報処理装置10は、さらに面までの距離を数値で表示することができる。
【0020】
図2に示すように、情報処理装置10は、通信部11、カメラ12、入力部13、表示部14、測位部15、記憶部16及び制御部17を有する。
【0021】
通信部11は、ネットワークを介して、他の装置との間で有線又は無線によるデータ通信を行う。例えば、通信部11はNIC(Network Interface Card)である。カメラ12は、画像を撮像する。カメラ12は、空間内の所定の点を含む領域の画像を撮影する。カメラ12はカメラである。入力部13は、ユーザからのデータの入力を受け付ける。入力部13は、例えば、マウスやキーボード等の入力装置である。また、表示部14は、画面の表示を行うディスプレイ等の表示装置である。なお、入力部13及び表示部14は、タッチパネルディスプレイであってもよい。
【0022】
ここで、表示部14は、測距装置20から送信された距離に関する情報に基づく距離を表示する。また、表示部14は、計算部174によって計算された距離を表示する。測距装置20は、測定した距離そのものを情報処理装置10に送信してもよいし、距離を計算するために必要な時間等の測定値を情報処理装置10に送信してもよい。
【0023】
測位部15は、空間における情報処理装置10の位置を特定する。測位部15は、例えば、赤外線、無線LAN(Local Area Network)のビーコン信号、又はGPS(Global Positioning System)、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System)等のGNSS(Global Navigation Satellite System)を利用して位置の特定を行う。
【0024】
記憶部16は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、光ディスク、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、NVSRAM(Non Volatile Static Random Access Memory)等の記憶装置である。記憶部16は、情報処理装置10で実行されるOS(Operating System)やプログラムを記憶する。さらに、記憶部16は、プログラムの実行で用いられる各種情報を記憶する。例えば、記憶部16は、AR情報161及びオブジェクト情報162を記憶する。
【0025】
制御部17は、情報処理装置10を制御する。制御部17は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等である。例えば、制御部17は、特定部171、配置部172、画像処理部173、計算部174及び生成部175として機能する。
【0026】
特定部171は、ARマーカの位置を原点とした場合の情報処理装置10の相対的な位置を特定することができる。また、ARマーカは、AR情報161として記憶部16に記憶されているものとする。
【0027】
配置部172は、カメラ12によって撮影された領域に含まれる基準点を基準にARオブジェクトを配置する。また、基準点は、測距装置20が距離の測定の対象とする点である。
【0028】
配置部172によって配置されるARオブジェクトには、点31p、点32p、点33p及び線状オブジェクト41wが含まれる。また、オブジェクト31、オブジェクト32及びオブジェクト33がARオブジェクトであれば、配置部172によって配置される。
【0029】
画像処理部173は、表示部14に表示するための各種画像の生成を行う。例えば、画像処理部173は、カメラ12によって撮影された画像に、測距装置20によって測定された距離を表す数値、及び後述する計算部174によって計算された数値を重畳させた画像を生成する。また、画像処理部173は、配置済みのARオブジェクトに関する情報をオブジェクト情報162から取得し、カメラ12によって撮影された画像に当該ARオブジェクトを重畳させた画像を生成する。
【0030】
計算部174は、2つの点の間の距離、3つ以上の点で囲まれる2次元の領域の面積、及び4つ以上の点で囲まれる3次元の領域の体積を計算する。
【0031】
さらに、計算部174は、空間内の点と線状のオブジェクトとの距離を計算する。例えば、計算部174は、線状のオブジェクト上の点のうち、第3の点との間の距離が最短である点との距離を計算する。
図1の例では、計算部174は、点33pと線状オブジェクト41wとの間の最短距離を計算することができる。また、計算部174は、複数の線状のオブジェクト間の距離を計算してもよい。
【0032】
生成部175は、空間内の撮影された領域にある2点を結ぶ線状のオブジェクトを生成する。生成部175は、点31pと点32pとを結ぶ線状オブジェクト41wを生成する。生成部175は、指定された弛度に基づいて線状のオブジェクトを生成する。なお、生成部175は、複数の線状のオブジェクトを生成してもよい。
【0033】
本実施形態では、生成部175は、空間内の撮影された領域に実在する電柱又は、電柱を模したARオブジェクトに付された2点を結ぶ、電線を模した線状のオブジェクトを生成するものとする。生成部175によって生成される線状のオブジェクトは電線を模したものに限られず、ロープや送水管等を模したものであってもよい。
【0034】
図2に示すように、測距装置20は、通信部21、制御部22及び測距センサ23を有する。例えば、通信部21は、情報処理装置10との間でデータの通信を行うための無線通信モジュールである。また、制御部22は、測距装置20の各部の制御を行う。例えば、制御部22は、測距センサ23が距離を測定するタイミングの制御を行う。
【0035】
測距センサ23は、レーザを用いてカメラ12から基準点までの距離に関する情報を取得する。測距センサ23は、投光部231及び受光部232を有する。測距センサ23は、レーザを利用して位相差検出方式やTOF(Time of Flight)方式等により距離を測定する。
【0036】
ここで、測距装置20の構造について説明する。測距装置20は、測距装置20を情報処理装置10に着脱可能に留める留め具を有する。留め具の少なくとも一部は、長さ及び位置の調整が可能である。
【0037】
図3は、情報処理装置に装着された測距装置の正面図の一例である。
図3に示すように、測距装置20は、基部20aを有する。基部20aには、留め具として保持部20b、位置決め部20c、位置決め部20d及び保持部20eが備えられている。また、基部20aには、通信部21及び制御部22として機能する基板を収める基板部22aが備えられている。例えば、基板はマイコンである。また、投光部231及び受光部232は、投光素子又は受光素子とレンズを収めた鏡胴を有する。
【0038】
また、保持部20b及び位置決め部20cは、基部20aに設けられた溝にネジ留めされており、ネジを緩めて溝をスライドさせることで、装着する情報処理装置10の大きさや形状に合わせて位置及び長さを調整することができる。また、情報処理装置10のカメラ12を塞がないように配置されている。
【0039】
図4は、情報処理装置に装着された測距装置の斜視図の一例である。
図4に示すように、保持部20bは、コの字の形状の部分で、情報処理装置10の端部を挟み込むように保持する。また、保持部20eは、保持部20bと同様の形状である。また、位置決め部20c及び位置決め部20dは、L字の形状であり、情報処理装置10が左右方向に動かないように固定する。
【0040】
ここで、保持部20eから保持部20bへ向かう方向を上方向、保持部20bから保持部20eへ向かう方向を下方向、位置決め部20cから位置決め部20dへ向かう方向を右方向、位置決め部20dから位置決め部20cへ向かう方向を左方向とする。
【0041】
図4に示すように、投光部231及び受光部232の鏡胴の長さは、情報処理装置10の厚みの2倍以上である。このように、レーザを用いた測距の有効距離や精度を向上させるためには、鏡胴を含む測距センサ23全体を大型化する必要がある。また、大型化した測距センサ23を一般的に使用されるスマートフォン等に組み込むことは現実的に困難である。このため、本実施形態のように、スマートフォン等に着脱可能な測距装置20に大型の測距センサ23を備えることで、レーザを用いた測距を容易かつ高精度に行うことが可能になる。
【0042】
また、測距装置20をスマートフォンである情報処理装置10に装着した場合、各留め具に囲まれた領域にタッチパネルディスプレイが位置する。また、各留め具は、情報処理装置10のタッチパネルディスプレイや各端子及びボタン等に干渉しないように配置される。
【0043】
図5は、表示部に表示される画面の一例である。
図5に示すように、表示部14には、オブジェクト31、オブジェクト32、オブジェクト33、点31p、点32p、点33p、線状オブジェクト41wが表示される。各オブジェクト等の詳細は、
図1で説明した通りである。また、以降の説明では、点31p、点32p、点33pのような点状のオブジェクトをバーチャル付箋と呼ぶ。
【0044】
画面には、
図6のように複数の線状オブジェクトが表示されてもよい。
図6は、表示部に表示される画面の一例である。表示部14には、オブジェクト31、オブジェクト32、点31p、点32p、線状オブジェクト41wに加えて、オブジェクト34、点34p、線状オブジェクト42wが表示される。線状オブジェクト42wは、点31pと点34pを結んでいる。測距システム1は、線状オブジェクト41wと線状オブジェクト42wとの間の離隔距離42dを計算することができる。
【0045】
図5に戻り、画面の左側には、設定ボタン141a、距離表示欄141b、オプションボタン141c、種類選択ボタン141d、配置ボタン141eが表示される。設定ボタン141aは、バーチャル付箋の大きさ、色、形状等を設定するためのボタンである。距離表示欄141bは、測距装置20の出力値を表示する。例えば、距離表示欄141bは、レーザによって計測された距離を表示する。オプションボタン141cは、右側のオプション画面の表示非表示を切り替えるためのボタンである。種類選択ボタン141dは、配置するバーチャル付箋の種類を選択するためのボタンである。本実施形態では、例えば、電線の離隔距離を計算するためのバーチャル付箋が選択されているものとする。
【0046】
また、画面の右側には、オブジェクト配置モードパネル143a、車両配置モードパネル143b、電線離隔距離計測モードパネル143c、スケッチボタン143dが表示される。オブジェクト配置モードパネル143a、車両配置モードパネル143b、電線離隔距離計測モードパネル143c、スケッチボタン143dが表示される領域をオプション画面と呼ぶ。
【0047】
電線離隔距離計測モードパネル143cは、生成部175によって生成される線状のオブジェクトに関する調整を行うためのパネルである。電線離隔距離計測モードパネル143cによれば、弛度及び位置を調整することができる。
【0048】
図7は、弛度の調整について説明する図である。
図7に示すように、電線離隔距離計測モードパネル143cの弛度の「+」又は「-」が操作されると、生成部175は、弛度を増減させつつ線状オブジェクト41wを生成する。配置部172は、弛度を考慮して生成された線状オブジェクト41wを配置する。
【0049】
図8は、位置の調整について説明する図である。電線離隔距離計測モードパネル143cの位置の「+」又は「-」が操作されると、生成部175は、線状オブジェクト41wの始点又は終点の位置を上下させつつ線状オブジェクト41wを生成する。配置部172は、位置を考慮して生成された線状オブジェクト41wを配置する。
【0050】
オブジェクト配置モードパネル143aは、配置されるオブジェクトの位置等を調整するためのパネルである。例えば、オブジェクト配置モードパネル143aによれば、電柱を模したARオブジェクトの位置等を調整することができる。
【0051】
図9は、電柱のオブジェクトの位置の調整について説明する図である。例えば、オブジェクト配置モードパネル143aの「D」及び「U」は、それぞれオブジェクト32の下降及び上昇に対応する。また、例えば、オブジェクト配置モードパネル143aの「↑」、「↓」は、オブジェクト32の画面奥側への移動及び手前側への移動に対応する。また、例えば、オブジェクト配置モードパネル143aの「←」、「→」は、オブジェクト32の左側への移動及び右側への移動に対応する。また、オブジェクト32の位置の変更に伴い点32pの位置が変化した場合、生成部175は、線状オブジェクト41wを再生成する。
【0052】
車両配置モードパネル143bは、配置されるオブジェクトの位置等を調整するためのパネルである。例えば、車両配置モードパネル143bによれば、車両を模したARオブジェクトの位置等を調整することができる。例えば、車両配置モードパネル143bの「RotateR」、「RotateL」は、オブジェクト34の右回転及び左回転に対応する。
【0053】
ここで、測距システム1は、電柱以外にも車両等の様々なオブジェクトを配置することができる。そして、測距システム1は、配置された車両等のオブジェクトと所定の点との間の距離、又は、配置された車両等のオブジェクトと所定の線状のオブジェクトとの距離を計算することができる。
【0054】
また、画面の上側には、離隔距離表示欄142が表示される。離隔距離表示欄142には、計算部174によって計算された離隔距離が表示される。
図5の例では、離隔距離41dが2.062mであることが表示されている。また、スケッチボタン143dが操作されると、現在表示されている画面のキャプチャ画像が取得され保存される。
【0055】
(AR機能)
測距システム1によって実現されるARに関する機能について説明する。ユーザは、測距装置20を装着した情報処理装置10を手に持ち、カメラ12及び測距センサ23を基準点に向けているものとする。
【0056】
図11は、基準点について説明する図である。まず、表示部14は、
図11のように、カメラ12によって撮影された画像を表示する。このとき、測距の対象である基準点は、垂直に交わる破線の交点として表される。
図11の例では、基準点と点33pが一致している。すなわち、
図11の状態で配置ボタン141eが操作されると、点33pが配置される。
【0057】
また、測距装置20を情報処理装置10に装着した際に、測距の対象の点、すなわちレーザの軸中心位置と、カメラ12の光学主点が基準点で一致するように、画像処理部173は、画像のトリミングや破線の位置の調整等を行う。
【0058】
表示部14は、距離表示欄141bに、測距装置20によって測定された情報に基づく距離を表示する。
図11の例では、基準点までの距離が12.090mであることが距離表示欄141bに表示されている。
【0059】
配置部172は、ARオブジェクトの配置を行う。このとき、配置部172は、基準点を基準にARオブジェクトを配置することができる。このため、ユーザは、意図した位置に正確にARオブジェクトを配置することができる。
【0060】
配置部172によって配置されるオブジェクトには、線状オブジェクトの端点である点31p及び32pが含まれる。配置部172によって配置されるオブジェクトには、電柱を模したオブジェクト31及びオブジェクト32が含まれる。なお、オブジェクト31及びオブジェクト32は、配置部172によって配置されるARオブジェクトであってもよいし、実在するオブジェクトであってもよい。
【0061】
また、配置部172は、配置したARオブジェクトに、緯度、経度、三次元位置情報、配置した時刻、画像、動画、テキストメモ等を含めてオブジェクト情報162として記憶部16に格納することができる。また、オブジェクト情報162は、ネットワークを介した共有やエクスポートファイル等により、他のシステムやデバイスと共有することができる。
【0062】
(第1の実施形態の処理)
図12は、第1の実施形態に係る測距システムの処理の流れを示すフローチャートである。まず、情報処理装置10は、必要に応じてARオブジェクトの配置を行う(ステップS101)。次に、情報処理装置10は、始点、終点、測位点を決定する操作を受け付ける(ステップS102)。
図5の例では、始点、終点、測位点は、それぞれ点31p、点32p、点33pに対応する。また、例えば、各点を決定する操作は、配置ボタン141eを押下する操作である。
【0063】
そして、情報処理装置10は、弛度に従い始点、終点間にひも状のオブジェクトを生成する(ステップS103)。ここでは、ひも状のオブジェクトは、弛度を定義可能な線状のオブジェクトであるものとする。
【0064】
ここで、情報処理装置10は、ひも状のオブジェクトと測位点との間の距離を計算する(ステップS104)。そして、情報処理装置10は、計算結果を表示する(ステップS105)。
【0065】
図13は、ARオブジェクトを配置する処理の流れを示すフローチャートである。
図13のARオブジェクトを配置する処理は、
図12のS101の処理である。また、ここでのARオブジェクトは、例えば電柱を模したオブジェクトである。まず、情報処理装置10は、GPS等により現在の位置を測位する(ステップS201)。次に、情報処理装置10は、画像を撮影する(ステップS202)。
【0066】
情報処理装置10は、画像中のARマーカを特定できた場合(ステップS203、Yes)、配置済みのARオブジェクトを画像中に表示する(ステップS204)。情報処理装置10は、画像中のARマーカを特定できなかった場合(ステップS203、No)、ARオブジェクトを配置せずに次の処理へ進む。なお、ステップS101の測位結果は、ARマーカの特定の際に補助的な情報として用いられる場合がある。
【0067】
測距装置20は、距離を測定する(ステップS205)。そして、情報処理装置10は、測距装置20が測定した距離を画像中に表示する(ステップS206)。ここで、情報処理装置10は、ARオブジェクトを配置する操作を受け付けなかった場合は(ステップS207、No)、処理を終了する。
【0068】
情報処理装置10は、ARオブジェクトを配置する操作を受け付けた場合(ステップS207、Yes)、測定した距離を基にARオブジェクトを配置した上で(ステップS208)、配置したARオブジェクトを画像中に表示する。
【0069】
(第1の実施形態の効果)
これまで説明してきたように、生成部175は、空間内の撮影された領域にある第1の点と第2の点を結ぶ線状のオブジェクトを生成する。また、計算部174は、空間内の第3の点と線状のオブジェクトとの距離を計算する。このように、情報処理装置10は、仮想的な線状のオブジェクトと、現実の空間内の点との間の距離を計算することができる。その結果、本実施形態によれば、電線及び電柱等のオブジェクトが未設置の場合であっても離隔距離を得ることができる。
【0070】
生成部175は、指定された弛度に基づいて線状のオブジェクトを生成する。このように、情報処理装置10は、弛度を考慮することにより、線状のオブジェクトをより実際の電線に近付けることができる。このため、本実施形態によれば、より正確な離隔距離が計算できる。
【0071】
計算部174は、線状のオブジェクト状の点のうち、第3の点との間の距離が最短である点との距離を計算する。最短の離隔距離が条件を満たしていれば、その電線は全体として条件を満たしていると考えられる。このため、本実施形態によれば、電線を設置した場合に離隔距離に関する条件が満たされるか否かを効率的に判定することができる。
【0072】
生成部175は、複数の線状のオブジェクトを生成する。また、計算部174は、複数の線状のオブジェクト間の距離を計算する。このように、本実施形態によれば、点と線状のオブジェクトとの間の距離だけでなく、線状のオブジェクト間の距離を計算することができる。
【0073】
生成部175は、空間内の撮影された領域に実在する電柱又は、電柱を模したARオブジェクトに付された第1の点と第2の点を結ぶ、電線を模した線状のオブジェクトを生成する。このように、本実施形態によれば、電線の離隔距離を計算することができる。
【0074】
また、本実施形態によれば、ユーザは離隔距離を計測したい地点まで移動する必要がない。特に、計測したい地点が、線路内等の危険地域、私有地等である場合に本実施形態は有効である。また、電線を設置する領域に樹木や建物等の障害物がある場合であっても、本実施形態によれば、当該領域に仮想の線状のオブジェクトを配置することができる。
【0075】
表示部14は、計算部174によって計算された距離を表示する。これにより、ユーザは、計算された離隔距離を容易に把握することができる。
【0076】
(その他の実施形態)
これまでに説明した実施形態によれば、測距システム1は、電線が未設置の場合に離隔距離を計算することができる。一方で、電線はゴム被覆体である場合が多く、レーザにより電線表面を測距することが困難な場合がある。このため、本実施形態は、設置済みの電線の正確な位置をレーザ測距により計測することが難しい場合に、離隔距離の推定値を計算するために利用することができる。
【0077】
また、測距システム1によって生成される線状のオブジェクトは、線の太さ及び重さが調整可能なものであってもよい。これにより、例えば、所定の風速下において電線がどの程度揺れるかをシミュレーションにより計算することが可能になる。その結果、風で電線が揺れたときに想定される離隔距離の最小値及び最大値を計算することができる。
【0078】
なお、本実施形態の情報処理装置10及び測距装置20で実行されるプログラムは、ROM等にあらかじめ組み込まれて提供される。本実施形態の情報処理装置10及び測距装置20で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0079】
さらに、本実施形態の情報処理装置10及び測距装置20で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、本実施形態の情報処理装置10及び測距装置20で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供又は配布するように構成してもよい。
【0080】
本実施形態の情報処理装置10及び測距装置20で実行されるプログラムは、上述した各部(特定部171、配置部172、画像処理部173、計算部174及び生成部175)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPUが上記ROMからプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、特定部171、配置部172、画像処理部173及び計算部174が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0081】
本発明の実施形態を説明したが、実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0082】
1 測距システム
10 情報処理装置
11、21 通信部
12 カメラ
13 入力部
14 表示部
15 測位部
16 記憶部
17、22 制御部
20 測距装置
20a 基部
20b、20e 保持部
20c、20d 位置決め部
22a 基板部
23 測距センサ
31、32、33、34 オブジェクト
31p、32p、33p、34p 点
41w、42w 線状オブジェクト
41d、42d 離隔距離
141a 設定ボタン
141b 距離表示欄
141c オプションボタン
141d 種類選択ボタン
141e 配置ボタン
142 離隔距離表示欄
143a オブジェクト配置モードパネル
143b 車両配置モードパネル
143c 電線離隔距離計測モードパネル
143d スケッチボタン
161 AR情報
162 オブジェクト情報
171 特定部
172 配置部
173 画像処理部
174 計算部
175 生成部
231 投光部
232 受光部