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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】原子干渉計システム
(51)【国際特許分類】
   H01S 1/06 20060101AFI20220106BHJP
   H03L 7/26 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
H01S1/06
H03L7/26
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020082602
(22)【出願日】2020-05-08
(65)【公開番号】P2020184633
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2020-05-29
(31)【優先権主張番号】62/845,110
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】マイケル エス.ラーセン
(72)【発明者】
【氏名】サド ジー.ウォーカー
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン エム.ブラウン
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-520093(JP,A)
【文献】特開2018-085719(JP,A)
【文献】特開2014-029325(JP,A)
【文献】特開2013-178243(JP,A)
【文献】米国特許第05274232(US,A)
【文献】米国特許第08237105(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0372808(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0299389(US,A1)
【文献】特開2006-337088(JP,A)
【文献】B. Canuel, et al.,Six-axis inertial sensor using cold-atom interferometry,Physical Review Letters,2006年07月07日,Vol.97,010402
【文献】GORDON E. LOTT et al.,Three-dimensional imaging of trapped cold atoms with a light field microscope,Applied optics,2017年11月01日,Vol. 56, No. 31,P.8738-8745
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 1/06
H03L 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
慣性センサであって、
アルカリ金属原子を含むセンサセルと、
第1の周波数および第1の円偏光を有する第1のインタロゲーションビーム、および第1の周波数とは異なる第2の周波数および前記第1の円偏光を有する第2のインタロゲーションビームを生成する光学システムであって、前記光学システムは、第1の方向において前記センサセルを通過する前記第1および第2のインタロゲーションビームを提供し、前記第1および第2のインタロゲーションビームを反射して、前記第1の方向と反対の第2の方向において前記第1の円偏光で前記センサセルを通過するように戻して、一連の測定サイクルの各々におけるインタロゲーション段階中に第1の円偏光で前記アルカリ金属原子を第1のエネルギー状態と第2のエネルギー状態との間で駆動する光学系を含前記光学システムが、前記アルカリ金属原子を通過する前記第1および第2のインタロゲーションビームを供給して、前記第1の円偏光で前記第1のインタロゲーションビームの前記第1の周波数による前記アルカリ金属原子の集団における光子の吸収をもたらして、前記アルカリ金属原子の集団の第1の運動量方向における第1の光子運動量を提供し、かつ前記アルカリ金属原子を通過する反射された第1および第2のインタロゲーションビームを供給して、前記第1の円偏光で前記第2のインタロゲーションビームの前記第2の周波数による前記アルカリ金属原子の集団の光子の放出をもたらして、前記アルカリ金属原子の集団の前記第1の運動量方向における第2の光子運動量を提供するように構成される、前記光学システムと、
前記センサセル内に均一な磁場を提供するように構成された磁場発生器であって、前記均一な磁場は、前記第1のエネルギー状態から前記第2のエネルギー状態への前記アルカリ金属原子のエネルギー遷移のゼーマンエネルギーシフトに対してほぼ中心の前記アルカリ金属原子の遷移周波数を提供する大きさを有する、前記磁場発生器と、
前記一連の測定サイクルの各々における状態読み出し段階中の光学応答に基づいて、前記インタロゲーション段階中の前記第1のエネルギー状態と前記第2のエネルギー状態との間の前記アルカリ金属原子の状態分布を検出する検出システムとを備え、前記検出システムは、前記アルカリ金属原子の状態分布に基づいて慣性パラメータを決定するように構成される、慣性センサ
【請求項2】
前記光学システムは、光トラッピングビームを生成するように構成されたトラッピングビーム源を備え、前記慣性センサは、光磁気トラッピング(MOT)システムをさらに備え、前記MOTシステムは、
前記光トラッピングビームに応答してセル内の前記アルカリ金属原子をトラップするように構成されたトラッピング磁場を発生させるように構成された第1の磁場発生器と、
前記インタロゲーション段階中に均一な磁場を発生させるように構成された第2の磁場発生器であって、前記均一な磁場は、前記第1のエネルギー状態から前記第2のエネルギー状態への前記アルカリ金属原子の集団のインタロゲーションを行うために、前記アルカリ金属原子のゼーマンシフト特性に基づく振幅を有する、前記第2の磁場発生器とを含む、請求項1に記載の慣性センサ
【請求項3】
前記アルカリ金属原子がルビジウム87原子であり、前記均一な磁場が約3.23ガウスの振幅を有し、
前記均一な磁場が、前記アルカリ金属原子の<1,-1>の前記第1のエネルギー状態から<2,1>の前記第2のエネルギー状態への、または<1,1>の前記第1のエネルギー状態から<2,-1>の前記第2のエネルギー状態へのインタロゲーションエネルギー遷移に対してほぼ中心の遷移周波数を提供する大きさを有する、請求項に記載の慣性センサ
【請求項4】
前記光学システムが、同じ光路に沿って前記センサセルを通過する前記第1および第2のインタロゲーションビームならびに前記光トラッピングビームを供給するように構成される、請求項に記載の慣性センサ
【請求項5】
前記光学システムは、
前記光学系を介して前記センサセルを通過する個々のX、Y、およびZ直交軸に沿った第1の光トラッピングビーム、第2の光トラッピングビーム、および第3の光トラッピングビームを供給するように構成されたトラッピングビーム源と、
前記第1のインタロゲーションビームを生成し、第1、第2、および第3の光トラッピングビームの個々の1つと同じ光路に沿った個々の近似X、Y、またはZ軸インタロゲーション段階の間、個々の近似X、Y、およびZ直交軸のうちの少なくとも1つに沿って前記第1のインタロゲーションビームを前記光学系を介して前記センサセルを通過して供給するように構成される第1のインタロゲーションビーム源と、
前記第2のインタロゲーションビームを生成し、前記第1、第2、および第3の光トラッピングビームの個々の1つと同じ光路に沿った個々の近似X、Y、またはZ軸インタロゲーション段階の間、前記光学系を介して前記センサセルを通過する個々の近似X、Y、およびZ直交軸のうちの少なくとも1つに沿って前記第2のインタロゲーションビームを供給するように構成される第2のインタロゲーションビーム源とを含む、請求項1に記載の慣性センサ
【請求項6】
請求項1に記載の慣性センサを含むセンサシステムであって、
少なくとも1つの慣性パラメータの第1の測定値を決定するように構成された少なくとも1つのセンサを含むセンサコントローラを備え、前記慣性センサは、前記少なくとも1つの慣性パラメータの第2の測定値を提供し、かつ前記センサコントローラに前記第2の測定値を提供するようにさらに構成され、前記センサコントローラは、前記第2の測定値に基づいて前記少なくとも1つの慣性パラメータの前記第1の測定値を改善するように構成される、センサシステム。
【請求項7】
少なくとも1つの測定サイクルの各々において、磁場および前記第1および第2のインタロゲーションビームのうちの少なくとも1つに関連する少なくとも1つの特性を変更して、前記慣性センサの通常の動作条件の間に前記慣性センサの較正を実施するように構成される較正コントローラをさらに備える、請求項1に記載の慣性センサ
【請求項8】
前記較正コントローラは、前記少なくとも1つの測定サイクルの各々において、前記第1および第2のインタロゲーションビームの各々の円偏光を変更して、前記慣性センサの通常の動作条件の間に前記慣性センサの較正を実施するように構成される、請求項に記載の慣性センサ
【請求項9】
前記較正コントローラは、前記少なくとも1つの測定サイクルの各々において、磁場の極性を変更して、前記慣性センサの通常の動作条件の間に前記慣性センサの較正を実施するように構成される、請求項に記載の慣性センサ
【請求項10】
慣性センサにより少なくとも1つの慣性パラメータを測定する方法であって、
一連の測定サイクルの各々のトラッピング段階中に、トラッピング光および磁場によりアルカリ金属原子をセンサセル内にトラップするステップと、
前記センサセル内に均一な磁場を提供するステップと、前記均一な磁場は、第1のエネルギー状態から第2のエネルギー状態への前記アルカリ金属原子のエネルギー遷移のゼーマンエネルギーシフトに対してほぼ中心の前記アルカリ金属原子の遷移周波数を提供する大きさを有しており、
インタロゲーション段階における複数のインタロゲーションサイクルの各々において、前記センサセルを通過する第1の周波数を有する第1のインタロゲーションビームと前記第1のインタロゲーションビームとは異なる第2の周波数を有する第2のインタロゲーションビームとを提供して、前記第1の周波数により前記アルカリ金属原子の集団の光子の吸収をもたらして、第1の方向における前記アルカリ金属原子の集団の第1の光子運動量を提供し、前記第2の周波数により前記アルカリ金属原子の集団の光子の放出をもたらして、前記第1の方向における前記アルカリ金属原子の集団の第2の運動量を提供するステップと、
状態読み出し段階中の光学応答に基づいて、前記インタロゲーション段階から生じる前記第1のエネルギー状態と前記第2のエネルギー状態との間の前記アルカリ金属原子の集団の遷移を検出するステップと、
前記アルカリ金属原子の検出された状態分布に基づいて、少なくとも1つの慣性パラメータを決定するステップとを含む方法。
【請求項11】
前記第1および第2のインタロゲーションビームを提供することは、前記第1および第2のインタロゲーションビームを、第1の方向において前記センサセルを第1の円偏光で前記第1の方向に通過するように供給し、かつ第2の方向において前記センサセルを前記第1の円偏光で前記第1の方向とは反対の第2の方向に光学系を介して通過するように供給することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの慣性パラメータを決定することは、前記慣性センサにより少なくとも1つの慣性パラメータの第1の測定値を決定することを含み、方法はさらに、
補助センサにより前記なくとも1つの慣性パラメータの第2の測定値を決定するステップと、
前記第1の測定値に基づいて、前記少なくとも1つの慣性パラメータの第2の測定値を改善するステップとを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第1および第2のインタロゲーションビームを提供することは、第1の測定サイクルにおいて第1の円偏光を有する前記第1および第2のインタロゲーションビームを提供することを含み、前記少なくとも1つの慣性パラメータを決定することは、前記第1の測定サイクルにおいて前記アルカリ金属原子の検出された状態分布に基づいて前記少なくとも1つの慣性パラメータを決定することを含み、方法はさらに
第2の測定サイクルにおいて前記第1の円偏光と反対の第2の円偏光を有する前記第1および第2のインタロゲーションビームを供給するステップと、
前記第2の測定サイクルにおいて前記アルカリ金属原子の検出された状態分布に基づいて前記少なくとも1つの慣性パラメータを決定するステップと、
前記第1および第2の測定サイクルの各々における前記アルカリ金属原子の検出された状態分布に基づいて前記慣性センサを較正するステップとを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記第1および第2のインタロゲーションビームを提供することは、第1の測定サイクにおいて前記第1および第2のインタロゲーションビームならびに第1の極性を有する遷移磁場を供給することを含み、前記少なくとも1つの慣性パラメータを決定することは、前記第1の測定サイクルにおいて前記アルカリ金属原子の検出された状態分布に基づいて前記少なくとも1つの慣性パラメータを決定することを含み、方法はさらに、
第2の測定サイクルにおいて前記第1および第2のインタロゲーションビームならびに第2の極性を有する遷移磁場を供給するステップと、
前記第2の測定サイクルにおいて前記アルカリ金属原子の検出された状態分布に基づいて前記少なくとも1つの慣性パラメータを決定するステップと、
前記第1および第2の測定サイクルの各々における前記アルカリ金属原子の検出された状態分布に基づいて前記慣性センサを較正するステップとを含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2019年5月8日に出願された米国仮出願番号62/845110からの優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、センサシステムに関し、具体的には、原子干渉計システムに関する。
【背景技術】
【0003】
光干渉計は、電磁波(例えば、光信号)を用いて、測定可能なパラメータの非常に正確な測定値を提供することができるシステムである。例えば、干渉法は、2つのビームに分割され、かつ2つの別々の光路に沿って提供される、単一の光源からの光を用いることができる。その後、2つのビームを結合して、結合されたビーム間の干渉に基づいて、2つの干渉計のビーム経路の相対光路長の変化を決定することができる。その結果、一方のビーム経路と他方のビーム経路との相対的な長さを変化させるパラメータは、光干渉法を使用して測定することができる。一例として、原子のドブロイ波長を使用して、原子干渉計を実施して、干渉計の1つのアーム上を移動する原子の、他のアームとの差を測定することもできる。この例では、干渉計を伝搬する波は、静止質量と電磁界に感応性のある内部エネルギー構造とを有する。例えば、典型的な光学波長と比較して劇的に短いドブロイ波長は、光ベースの干渉法と比較して、約10桁の潜在的な感度の増加を提供する。結果として、時間、磁場、電場、加速、回転などの測定可能なパラメータ、および/またはその他の様々な測定可能なパラメータは、原子干渉法によって非常に的確かつ正確に測定することができる。一例として、干渉計は、全地球航法衛星システム(GNSS)、慣性航法システム(INS)、および航空機、宇宙船、船舶などの他の航法および位置決めシステムを支援するなど、様々な航法実施形態において使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第4157495号明細書
【文献】米国特許第5227722号明細書
【文献】米国特許第7893780号明細書
【発明の概要】
【0005】
一実施形態は、原子干渉計システムを含む。システムは、アルカリ金属原子を含むセンサセルを含む。光学システムは、第1および第2の周波数ならびに円偏光を有する第1および第2のインタロゲーションビームを生成する。光学システムは、一連の測定サイクルのインタロゲーション段階中に、第1の方向においてセンサセルを通過する第1および第2のインタロゲーションビームを提供し、第1および第2のインタロゲーションビームを反射して、第1の方向とは反対の第2の方向において同じ円偏光でセンサセルを通過するように戻して、アルカリ金属原子を第1のエネルギー状態からより高いエネルギー状態に駆動する光学系を含む。検出システムは、光学応答に基づいて、インタロゲーション段階中の第1のエネルギー状態と第2のエネルギー状態との間のアルカリ金属原子の集団の状態分布を検出する。
【0006】
別の例は、原子干渉計システムにより少なくとも1つの測定可能なパラメータを測定する方法を含む。方法は、一連の測定サイクルの各々のトラッピング段階中に、トラッピング光および磁場によりアルカリ金属原子をセンサセル内にトラッピングすることを含む。方法は、インタロゲーション段階における複数のインタロゲーションサイクルの各々において、センサセルを通過する第1の周波数を有する第1のインタロゲーションビームと第1のインタロゲーションビームとは異なる第2の周波数を有する第2のインタロゲーションビームとを提供して、第1の周波数によりアルカリ金属原子の集団の光子の吸収をもたらして、第1の方向におけるアルカリ金属原子の集団の第1の光子運動量を提供し、第2の周波数によりアルカリ金属原子の集団の光子の放出をもたらして、第1の方向におけるアルカリ金属原子の集団の第2の運動量を提供することをも含む。方法は、状態読み出し段階中の光学応答に基づいて、インタロゲーション段階から生じる第1のエネルギー状態と第2のエネルギー状態との間のアルカリ金属原子の集団の遷移、またはその2つの任意の組み合わせ、を検出することをも含む。方法は、アルカリ金属原子の検出された最終の状態分布に基づいて、少なくとも1つの測定可能なパラメータを決定することをさらに含む。
【0007】
別の例は、原子干渉計システムを含む。システムは、一連の測定サイクルの各々のトラップ段階中に磁場およびトラッピング光によりセンサセル内にアルカリ金属原子をトラップする光磁気トラッピング(MOT)システムを含む。システムは、光学システムをも含む。光学システムは、第1の周波数を有する第1のインタロゲーションビームを生成するように構成された第1のインタロゲーションビーム源と、第1の周波数とは異なる第2の周波数を有する第2のインタロゲーションビームを生成するように構成された第2のインタロゲーションビーム源とを含む。光学システムは、インタロゲーション段階の複数のインタロゲーションサイクルの各々において、第1の円偏光で第1の方向にセンサセルを通過する第1および第2のインタロゲーションビームを提供して、第1の円偏光で第1のインタロゲーションビームの第1の周波数によるアルカリ金属原子の集団の光子を吸収をもたらして、アルカリ金属原子の集団の第1の運動量方向における第1の光子運動量を提供するとともに、第1の方向と反対の第2の方向において、同じ個々の円偏光で第1および第2のインタロゲーションビームをアルカリ金属原子を通過するように反射して、第1の円偏光で第2のインタロゲーションビームの第2の周波数によるアルカリ金属原子の集団の光子の放出をもたらして、アルカリ金属原子の集団の第1の運動量方向における第2の光子運動量を提供する光学系をも含む。システムはさらに、少なくとも1つの測定可能なパラメータを測定するために、状態読み出し中に光学応答に基づいてインタロゲーション段階中に誘導された第1のエネルギー状態と第2のエネルギー状態との間のアルカリ金属原子の集団の遷移、または2つの任意の組み合わせ、を検出する検出システムを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】原子干渉計システムの例を示す図である。
図2】原子干渉計システムの別の例を示す図である。
図3】タイミング図の例を示す図である。
図4】原子干渉計システムのさらに別の例を示す図である。
図5】センサシステムの例を示す図である。
図6】センサシステムの別の例を示す図である。
図7】原子干渉計システムにより少なくとも1つの測定可能なパラメータを測定する方法の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、概して、センサシステムに関し、具体的には、原子干渉計システムに関する。原子干渉計システムは、周波数、周波数差、時間、時間差、および/または加速度、加速度勾配、回転などの1つまたは複数の慣性パラメータなど、様々な測定可能なパラメータのうちの任意のものを測定するために実施することができる。本明細書で説明するように、原子干渉計システムは、測定可能なパラメータ(複数可)を測定するために、特定の方法で順次供給されるインタロゲーションビームによる原子の集団のインタロゲーションを実施することができる。原子干渉法の例は、センサセル内のアルカリ金属原子の集団の2つの状態間の遷移エネルギーを測定するための、シーケンシャルコヒーレントポピュレーショントラッピング(CPT:Coherent Population Trapping)ベースのインタロゲーション、ラビ(Rabi)パルスインタロゲーション、または他の様々なタイプの原子干渉法インタロゲーションを含む。本明細書で説明されるように、原子干渉計システムは、CPTまたはラビパルス方式のいずれかで原子の集団のインタロゲーションを実施することができる。
【0010】
一例として、原子干渉計システムは、トラップ磁場および一組のトラッピング光ビームに応答してアルカリ金属原子をトラップするように構成された原子源(例えば、磁気光学トラップ(MOT:magneto-optical trap)システム)を含むことができる。例として、各測定サイクルのトラッピング段階中に、トラッピングシステムは、サイクル遷移(即ち、F=2、m=2→F’=3’、mF’=3’、以下<2,2>-<3’、3’>と表記)でアルカリ金属原子を繰り返し中間状態(例えば、ルビジウム87の場合、F’=3の超微細構造)に励起して、アルカリ原子源を提供することができる。アルカリ金属原子をトラップしてソースおよびベースライン光学応答を提供すると、トラッピングシステムは、光トラッピングビームおよびトラッピング磁場の印加を停止して、インタロゲーション用のアルカリ金属原子を準備することができる。
【0011】
原子干渉計システムは、光学システムをも含むこともできる。光学システムは、第1のインタロゲーションビームを提供する第1のインタロゲーションビーム源と、第2のインタロゲーションビームを提供する第2のインタロゲーションビーム源とを含むことができ、各インタロゲーションビームは、互いに異なる周波数および同じ円偏光を有する。本明細書で説明するように、「円偏光」という用語は、「円偏光」が楕円偏光などの円偏光を含む偏光の組み合わせを包含するように、少なくとも円偏光成分を有する偏光を指す。さらに、本明細書でも説明するように、円偏光は、円偏光を示す個々の光ビームの伝搬方向を参照して本明細書に記載されている。本明細書でさらに説明するように、「ビーム源」という用語は、レーザーまたは任意のレーザーから個々のビームを提供するための一組の光学系など、個々のビームを提供するための様々な方法のいずれかを指す。例えば、複数のビーム源は、音響光学変調または電気光学変調による周波数シフト、または周波数サイドバンドを生成して所望の周波数を提供するために個々のビーム源の電流を変調すること等に基づいて、任意の1つのレーザーから複数の個々のビームを提供することができる。本明細書でより詳細に説明するように、光学システムは、初期状態準備段階のために実施することができる1つまたは複数の光学部品(例えば、光ポンピングビーム源)をも含むことができる。
【0012】
光学システムは、第1の方向においてセンサセルを通過する第1および第2のインタロゲーションビームを提供し、第1および第2のインタロゲーションビームを反射して第1の方向と反対の第2の方向において同じ円偏光でセンサセルを通過するように戻す光学系も含む。例えば、光学系は、センサセルの反対側に1/4波長板およびミラー(例えば、再帰反射ミラー)を含むことができる。例えば、トラッピングシステムに対して同じ光学構成を実施して、両方の動作段階で共通の光学系を使用するようにすることができる。従って、1/4波長板を最初に通過し、ミラーで反射され、1/4波長板を2回目に通過することに応答して、第1および第2のインタロゲーションビームの円偏光は、第1および第2のインタロゲーションビームの伝搬方向に関しては同じであるが、アルカリ金属原子に関しては反対の角運動量とすることができる。
【0013】
アルカリ金属原子はポンピングされ、所定の磁場にさらされて、インタロゲーション段階で、特定の周波数および円偏光の組み合わせでインタロゲーションビームによるインタロゲーションが可能となる。例えば、ポンピングおよび磁場に応答して、アルカリ金属原子は、光子の吸収に対応する第1の周波数および第1の円偏光に応答して、第1のエネルギー状態から中間状態(例えば、CPTインタロゲーションのための超微細状態またはラビインタロゲーションに関するラマン遷移のための「仮想」エネルギー状態)に駆動されるようにインタロゲーションが行われる。次に、アルカリ金属原子は、光子の放出に対応する第2の周波数および第1の円偏光に応答して、中間状態から第2のエネルギー状態に変化するように(例えば、続いて、または実質的に同時に)インタロゲーションが行われる。個々の伝搬方向の各々における第1および第2のインタロゲーションビームによる光子の吸収および放出を可能にする光学系の構造に基づいて、吸収された光子および放出された光子が対向伝搬するインタロゲーションビームに基づいて名目上に反対方向にあること等に基づいてアルカリ金属原子は、2光子の正味の運動量ゲインを示すことができ、吸収された光子および放出された光子が同一方向に伝搬する第1および第2のインタロゲーションビームまたは同一方向に伝搬する第1および第2の再帰反射されたインタロゲーションビームに基づいて名目上同じ方向にある場合、アルカリ金属原子は、2光子のエネルギー差に等しい正味の運動量ゲインを示す。その結果、トラップされたアルカリ金属原子は、比較的静止したアルカリ金属原子から開始する場合のインタロゲーションサイクル後に正味の応答を区別することができない他の原子干渉計システムとは異なり、インタロゲーションビームに対するアルカリ金属原子の速度に関係なく、光学応答を提供するようにインタロゲーションを行うことができる。例えば、従来の0-0「クロック」遷移(例えば、ルビジウム87の場合、<1,0>-<2,0>、または<2,0>-<1,0>)で原子を励起する典型的な原子干渉システムの場合、ゼロ速度原子の曖昧性(ambiguity)は、反対の運動量方向の両方の運動量状態の混合をもたらし、結果として、原子干渉計の運動量状態の分裂に依存する量の正味の測定値が得られない。しかしながら、本明細書で説明するように、2光子の正味の運動量ゲインに基づいてアルカリ金属原子の集団の運動量方向を制御することによって、静止した原子であっても測定可能なパラメータ(複数可)の測定値において運動量状態の分裂を観察することができる。
【0014】
従って、インタロゲーションビームは、アルカリ金属原子の集団のインタロゲーションを行うことができ、その後、アルカリ金属原子の光学応答を得るための状態検出段階が続く。別の例として、アルカリ金属原子のインタロゲーションが外部磁場に対して実質的に不感度性である方法で第1のエネルギー状態と第2のエネルギー状態との間にあるように、アルカリ金属原子のインタロゲーションが、アルカリ金属原子のゼーマンシフト特性に関連する均一な磁場内で提供される。一例として、均一な磁場は、磁場の変動への依存(例えば、適切な値を中心とする磁場に対する純粋に2次的なゼーマンエネルギーシフト依存性)を最小限に抑えるために、第1のエネルギー状態から第2のエネルギー状態へのアルカリ金属原子のインタロゲーションエネルギー遷移(例えば、ルビジウム87の場合、<1,-1>-<2,1>、または<1,1>-<2,-1>)に対してほぼ中心の遷移周波数を提供する大きさを有することができる。例えば、アルカリ金属原子は、均一磁場が約3.23ガウスの大きさを有することができるようなルビジウム87原子であり得る。
【0015】
例えば、光学システムは、インタロゲーション段階中に複数のインタロゲーションサイクルの各々においてインタロゲーションビームを提供することができる。インタロゲーションサイクルの各々において、第1のインタロゲーションビームは、第1の周波数で第1の円偏光によって供給される角運動量に基づいて、アルカリ金属原子の集団の光子の吸収をもたらすことができる。従って、光子の吸収は、第1の運動量方向におけるアルカリ金属原子の集団の第1の光子運動量を提供することができる。インタロゲーションビームが反射されてセンサセルを通過するように戻されるため、第2のインタロゲーションビームは、第2の周波数で第1の円偏光によって供給される角運動量に基づいて、アルカリ金属原子の集団の光子の放出をもたらすことができる。従って、光子の放出は、第1の運動量方向におけるアルカリ金属原子の集団の第2の光子運動量(例えば、第1の光子運動量にほぼ等しい)を提供することができ、従って、第1の運動量方向における運動量を(例えば、正味の2光子運動量に)増加させることができる。
【0016】
一例として、インタロゲーションサイクルは、インタロゲーションビームが任意の強度で所定の時間に亘って提供される従来のラビサイクリング項などのように、第1のπ/2パルスでインタロゲーションビームを供給することを含むことができる。従って、第1のπ/2パルスは、第1および第2のエネルギー状態におけるアルカリ金属原子と、元の光子運動量状態および2光子運動量状態におけるアルカリ金属原子との約50%重ね合わせを提供することができる。第1のπ/2パルスの後、インタロゲーションサイクルは、第1のπ/2パルスの振幅の約2倍の強度(例えば、√2倍の強度)または第1のπ/2パルスと同じ強度で2倍の時間でインタロゲーションビームが提供されるπパルスなどの中間サイクルを含むことができる。従って、πパルスは、アルカリ金属原子のエネルギー状態および運動量状態分布の両方における50%の重ね合わせを反転させるように作用することができ、その結果、2光子運動量変化を経験しなかったアルカリ金属原子の重ね合わせの半分は、2光子運動量変化を経験し、2光子運動量変化を経験した半分は、最初の2光子運動量変化を打ち消すように、反対方向に2光子運動量変化を経験する。中間サイクルは本明細書では単一のπパルスとして説明されているが、原子干渉計システムは、代わりに、原子干渉計システムの感度を高めるために、より高い運動量伝達およびより大きな運動量分離を提供するような、円偏光を交互に繰り返す一連のπパルスを実施することができることを理解されたい。
【0017】
インタロゲーションサイクルは、インタロゲーションビームが第1のπ/2パルスと同じ円偏光で所定の時間に亘って第1のπ/2パルスと同じ強度で供給される第2のπ/2パルスをさらに含むことができる。従って、第2のπ/2パルスは、第1のエネルギー状態から第2のエネルギー状態へのエネルギー状態遷移を経たアルカリ金属原子の約50%の重ね合わせを提供して、従って、第1の運動量方向に正味の運動量を有して、アルカリ金属原子をインタロゲーション段階の前と同じ状態に復元することができる。その結果、状態読み出し段階では、インタロゲーション段階中にアルカリ金属原子に発生した慣性効果を(例えば、光学応答に基づいて)検出することができ、測定可能なパラメータ(例えば、加速度、回転、時間、など)を、原子の最終的なエネルギーおよび運動量状態分布に基づいて決定することができる。マッハツェンダー(例えば、π/2-π-π/2)パルスシーケンスの実施は、実施することができる多様な干渉計インタロゲーションシーケンスのほんの一例にすぎず、他のタイプのインタロゲーションサイクルまたは他の高運動量転送技術がインタロゲーション段階で実施することができることが理解されるであろう。
【0018】
一例として、原子干渉計システムの光学システムの光学系は、典型的な原子干渉計システムと比較して、より効率的で費用効果の高い方法で実施することができる。例えば、光学系は、3つの直交軸X、Y、Zの各々に沿って、または非直交幾何学形状に沿って、第1および第2のインタロゲーションビーム、ならびに第1および第2のインタロゲーションビームの反射バージョンを供給するように構成することができる。従って、光学系は、インタロゲーションビームが光トラッピング光と同じ光路に沿って供給することができるようにすることができる。さらに、原子干渉計システムは、センサから提供される測定可能なパラメータの測定値を調整および/または較正するように構成されたセンサシステムにおいて実施することができる。例えば、センサシステムは、第1および第2のインタロゲーションビームの特性を調整することができるユーザー入力を介して構成可能とすることができる。その結果、原子干渉計システムは、測定するように構成された複数の所定の測定可能なパラメータのうちの1つの測定値を提供するようにプログラムすることができる。
【0019】
図1は、原子干渉計システム10の一例を示す。原子干渉計システム10は、航空宇宙機の慣性航法システム(INS)など、測定可能なパラメータの非常に安定した測定を必要とする様々な用途のいずれかにおいて実施することができる。原子干渉計システム10は、センサセル14内にアルカリ金属原子をトラップするように構成された原子源12を含む。センサセル14内のアルカリ金属原子の供給源は、熱ビーム、高温蒸気などの様々な技術のいずれかに基づくことができ、または低温原子トラッピング、部分的に閉じ込め原子トラッピング、または他のタイプの原子トラッピングを提供するトラッピング技術を実施することができる。一例として、原子源12は、光磁気トラップ(MOT:magneto-optical trap)システムとして構成することができる。例えば、アルカリ金属原子は、ルビジウム87であり得るが、ルビジウム87に限定されず、代わりに、異なるアルカリ金属(例えば、セシウム133)に対応し得る。一例として、アルカリ金属原子は、センサセル14内にトラップされ、次に、光トラッピングビームの印加およびトラッピング磁場の印加および除去に応答して、「光学モラセス(optical molasses)」内でさらに冷却され得る。例えば、各測定サイクルはトラッピング段階を含むことができ、そのトラッピング段階の間にアルカリ金属原子は原子源12によってトラッピングされる。
【0020】
各測定サイクルでは、トラッピング段階に続いて、インタロゲーション段階が開始される。図1の例では、原子干渉計システム10は光学システム16を含む。光学システム16は、センサセル14に提供される光ビームを生成するように構成された複数のビーム源18を含む。図1の例では、光ビームは、1つまたは複数の光トラッピングビームOPTTRP、光ポンプビームOPTPMP、および一対のインタロゲーションビームOPTINT1およびOPTINT2を含む。光トラッピングビーム(複数可)OPTTRPは、センサセル14内のアルカリ金属原子のトラッピングを提供するために、前述したように、トラッピング段階中に提供される。光ポンプビームOPTTRPを提供して、磁場発生器(「B発生器」)20によって生成された実質的に均一な磁場の存在下でアルカリ金属原子を分極して、インタロゲーション段階中のインタロゲーション用のアルカリ金属原子を準備することができる。一例として、本明細書でより詳細に説明するように、光トラッピングビームOPTTRP、光ポンプビームOPTPMP、および一対のインタロゲーションビームOPTINT1およびOPTINT2は、原子干渉計システム10の任意の軸(例えば、X、Y、Z直交軸)に沿って提供されて、任意の個々の軸に沿ってアルカリ金属原子のインタロゲーションを可能にする。
【0021】
第1および第2のインタロゲーションビームOPTINT1およびOPTINT2は、アルカリ金属原子の集団のインタロゲーションを行うために、第1の方向および第1の方向とは反対の第2の方向にセンサセル14を通過するように供給される。一例として、第1および第2のインタロゲーションビームOPTINT1およびOPTINT2は、個々の第1および第2の周波数を有することができ、かつそれぞれセンサセル14を通過する第1の方向に第1の円偏光を有することができる。光学システム16は、共通の個々の光路に沿ってなど、センサセル14を通過するように光トラッピングビーム(複数可)OPTTRPならびに第1および第2のインタロゲーションビームOPTINT1およびOPTINT2を指向させるように構成された光学系22を含む。例えば、本明細書でより詳細に説明するように、第1および第2のインタロゲーションビームOPTINT1およびOPTINT2は、3つの直交軸光トラッピング方式における光トラッピングビームOPTTRPの1つに共通の光路に沿って伝搬することができる。光学系22はまた、センサセル14を通過する同じ円偏光で、第1の方向と反対の第2の方向にセンサセル14を通過して戻る第1および第2のインタロゲーションビームOPTINT1およびOPTINT2を供給するように構成される。例えば、光学系22は、1/4波長板およびミラー(例えば、再帰反射ミラー)を含んで、第1および第2のインタロゲーションビームOPTINT1およびOPTINT2を反射して同じ円偏光および反対の角運動量でセンサセル14を通過するように戻すことができる。従って、1/4波長板を最初に通過し、ミラーで反射され、1/4波長板を2回目に通過することに応答して、第1および第2のインタロゲーションビームOPTINT1とOPTINT2の円偏光が反転する。従って、第1および第2のインタロゲーションビームOPTINT1およびOPTINT2の円偏光は、OPTINT1およびOPTINT2の伝搬方向に関してセンサセル14を通過する各伝搬方向で同じであるが、角運動量はセンサセル14内のアルカリ金属原子に関して反対である。
【0022】
従って、アルカリ金属原子は、インタロゲーション段階の複数のインタロゲーションサイクルの各々の間に、第1および第2のインタロゲーションビームOPTINT1およびOPTINT2の特定の周波数および円偏光の組み合わせに基づいて、第1のエネルギー状態と第2のエネルギー状態との間で遷移するように誘導され得る。例えば、ポンピングおよび磁場に応答して、アルカリ金属原子は、光子の吸収に対応する第1の周波数および第1の円偏光に応答して(例えば、σ+またはσ-のアルカリ金属原子の角運動量に基づいて)、第1のエネルギー状態から中間状態に変化するようにインタロゲーションされる。次いで、アルカリ金属原子は、光子の放出に対応する第2の周波数および第1の円偏光に応答して(例えば、σ-またはσ+のアルカリ金属原子に個々に反対の角運動量に基づいて)、中間状態から第2のエネルギー状態に変化するように(例えば、続いて、または実質的に同時に)インタロゲーションが行われる。例えば、第1の周波数と第1の円偏光での第1のインタロゲーションビームOPTINT1は、トラップされたアルカリ金属原子の集団による光子の吸収を可能にし、第2の周波数と第1の円偏光での第2のインタロゲーションビームOPTINT2は、トラップされたアルカリ金属原子の集団による光子の放出を可能にする。反対方向からの第1および第2のインタロゲーションビームOPTINT1およびOPTINT2を介した光子の吸収および放出を可能にする光学系22の構造に基づいて、アルカリ金属原子は2光子の正味の運動量ゲイン(例えば、
【0023】
【数1】
【0024】
)を示すことができ、ここで、光子の吸収および放出は、第1の円偏光における第1のインタロゲーションビームOPTINT1と第1の円偏光における第2のインタロゲーションビームOPTINT2との対向伝搬(counter-propagation)に基づいて同じ近似方向であることを前提とする。動作磁場での双極子選択則の結果として、トラップされたアルカリ金属原子は、比較的静止したアルカリ金属原子に対する光子の吸収および放出を区別することができない典型的な原子干渉計システムとは異なり、インタロゲーションビームOPTINT1およびOPTINT2に対するアルカリ金属原子の速度に関係なく、光学応答を提供するようにインタロゲーションが行われる。
【0025】
一例として、インタロゲーションサイクルは、インタロゲーションビームOPTINT1およびOPTINT2が所定の時間に亘って所定の強度で供給される第1のπ/2パルスでインタロゲーションビームOPTINT1およびOPTINT2を供給することを含むことができる。従って、第1のπ/2パルスは、エネルギー状態と運動量状態との両方でアルカリ金属原子の約50%の重ね合わせを提供することができる。第1のπ/2パルスの後、インタロゲーションサイクルは、第1のπ/2パルスで供給されるインタロゲーションビームOPTINT1およびOPTINT2の各々の同じ円偏光で、第1のπ/2パルスとほぼ同じ強度で、かつ第1のπ/2パルスの2倍の時間でインタロゲーションパルスが供給されるπパルスを含むことができる。別の例として、πパルスは、第1のπ/2パルスの振幅の約2倍で、かつ第1のπ/2パルスとほぼ同じ持続時間で供給することができる。従って、πパルスは、エネルギー状態と運動量状態との両方で50%の重ね合わせを反転させて、センサセル14内のアルカリ金属原子の2つの重ね合わせの半分を共に元に戻すように作用する。中間サイクルは、本明細書では単一のπパルスとして説明されているが、原子干渉計システム10は、代わりに、原子干渉計システム10の感度を高めるために、より高い運動量伝達およびより大きな運動量分離を提供するような、円偏光を交互に繰り返す一連のπパルスまたは他の技法を実施することができることを理解されたい。
【0026】
インタロゲーションサイクルは、インタロゲーションビームOPTINT1およびOPTINT2が、第1のπ/2パルスと同じ円偏光で所定の時間に亘って第1のπ/2パルスと同じ強度で供給される第2のπ/2パルスをさらに含むことができる。従って、第2のπ/2パルスは、第1のエネルギー状態から第2のエネルギー状態へのエネルギー状態遷移を経たアルカリ金属原子の約50%の重ね合わせを提供して、従って、第1の運動量方向に正味の運動量を有して、アルカリ金属原子をインタロゲーション段階の前と同じ状態に復元するように干渉計を閉じることができる。その結果、状態読み出し段階では、インタロゲーション段階中の受感軸に沿ってアルカリ金属原子に発生した慣性効果を(例えば、光学応答に基づいて)検出することができ、測定可能なパラメータ(例えば、加速度、回転、時間など)を決定することができる。
【0027】
従って、インタロゲーションビームOPTINT1およびOPTINT2は、アルカリ金属原子の集団のインタロゲーションを行うことができ、その後、アルカリ金属原子の光学応答を得るための状態検出段階に続く。別の例として、アルカリ金属原子のインタロゲーションが外部磁場に対して実質的に不感度性である方法で第1のエネルギー状態と第2のエネルギー状態との間にあるように、アルカリ金属原子のインタロゲーションが、アルカリ金属原子のゼーマンシフト特性に関連する均一な磁場内で提供される。一例として、磁場発生器20によって生成される均一磁場は、磁場の変動への依存を最小限にするために(例えば、第1の状態と第2の状態との間の遷移のゼーマンエネルギーシフトのゼロ勾配)、第1のエネルギー状態から第2のエネルギー状態へのアルカリ金属原子のインタロゲーションエネルギー遷移(例えば、ルビジウム87の場合、<1、-1>-<2,1>、または<1,1>-<2、-1>)に対してほぼ中心の遷移周波数を提供する大きさを有することができる。例えば、アルカリ金属原子は、均一磁場が約3.23ガウスの大きさを有することができるようなルビジウム87原子であり得る。
【0028】
アルカリ金属原子のインタロゲーションにより、測定可能なパラメータを決定するために複数の測定サイクルに亘って取得される、信号OPTDETとして図1の例で示される光学応答を提供することができる。図1の例では、光学応答OPTDETは、光学検出器26を含む検出システム24に提供される。検出システム24は、光学応答OPTDETに応答して干渉法に基づいて測定可能なパラメータを決定することができる。一例として、光学検出器26は、干渉法により評価することができる光学応答OPTDETの蛍光または吸収、もしくは様々な光学検出技術のうちの任意のものを決定して、干渉計の構成に基づく測定可能なパラメータを決定することができる。本明細書でより詳細に説明するように、検出システム24は、測定可能なパラメータを、周波数、周波数差、時間、時間差、および/または1つまたは複数の慣性パラメータ(例えば、加速度、加速度勾配、および/または回転)のうちの1つまたは複数として決定するように構成され得る。また、本明細書で説明するように、検出システム24は、原子干渉計システム10が測定することができる測定可能なパラメータを柔軟に変更するようにプログラム可能にすることができる。
【0029】
図2は、原子干渉計システム50の別の例を示す。原子干渉計システム50は、一連の測定サイクルに基づいて測定可能なパラメータを決定するように実施することができる。
原子干渉計システム50は、センサセル56に閉じ込められたアルカリ金属原子54をトラップするように構成されたMOTシステム52を含む。図2の例では、センサセル56は、光学的損失を実質的に軽減する透明ガラスから作成することができる。例えば、アルカリ金属原子54は、ルビジウム87であり得る。原子干渉計システム50は、光トラッピングビームOPTTRPを生成するように構成されたトラッピングビーム源60を含む光学システム58をも含む。各測定サイクルは、トラッピング段階で開始することができ、そのトラッピング段階間、アルカリ金属原子54は、光トラッピングビームOPTTRPおよびトラッピング磁場によりMOTシステム52によってトラッピングすることができる。原子干渉計システム50は、MOTとして構成された原子源を含むものとして示されているが、アルカリ金属原子54をトラップする他の方法を原子干渉計システム50において実施することができることを理解されたい。
【0030】
光学システム58は、第1のインタロゲーションビームOPTINT1+を生成するように構成された第1のビーム源62と、第2の光ビームOPTINT2+を生成するように構成された第2のビーム源64とを含む。第1および第2のインタロゲーションビームOPTINT1+およびOPTINT2+は、アルカリ金属原子54の集団のインタロゲーションを行うために、第1の方向に、かつ第1の方向とは反対の第2の方向に光学系(図示せず)を介してセンサセル56を通過するように供給される。一例として、第1および第2のインタロゲーションビームOPTINT1+およびOPTINT2+は、個々の第1および第2の周波数を有することができ、かつ各々がセンサセル56を通過する第1の方向において第1の円偏光を有することができる。一例として、光学系は、共通の個々の光路に沿ってなど、センサセル56を通過するように光トラッピングビームOPTTRP(例えば、3つの直交軸のうちの1つに対応する)ならびに第1および第2のインタロゲーションビームOPTINT1+およびOPTINT2+を指向させるように構成される。図2の例では、原子干渉計システム50は、センサセル56の反対側にある1/4波長板66およびミラー68を含む。例えば、1/4波長板66およびミラー68は、同じ円偏光で第1の方向と反対の第2の方向にセンサセル56を通過して戻る第1および第2のインタロゲーションビームOPTINT1+およびOPTINT2+を供給するための光学系(例えば、光学系22)の一部である。例えば、ミラー68は、第1および第2のインタロゲーションビームOPTINT1+およびOPTINT2+を反射して同じ円偏光で第1および第2のインタロゲーションビームOPTINT1およびOPTINT2としてセンサセル56を通過するように戻す再帰反射ミラーとすることができる。従って、1/4波長板66を最初に通過し、ミラー68で反射され、1/4波長板66を2回目に通過することに応答して、第1および第2のインタロゲーションビームOPTINT1+およびOPTINT2+の円偏光は、同じに維持して、第1および第2のインタロゲーションビームOPTINT1-とOPTINT2-を提供することができる。
【0031】
従って、アルカリ金属原子54は、インタロゲーション段階の間に、第1および第2のインタロゲーションビームOPTINT1+およびOPTINT2+ならびに第1および第2のインタロゲーションビームOPTINT1-およびOPTINT2-の特定の周波数および円偏光の組み合わせに基づいて、第1のエネルギー状態と第2のエネルギー状態との間で遷移するように誘導され得る。図2の例では、MOTシステム52は、磁場発生器70(「遷移B発生器」)を含む。例えば、ポンピングおよび磁場発生器70によって提供される磁場に応答して、アルカリ金属原子は、光子の吸収に対応する第1の周波数および第1の円偏光に応答して、第1のエネルギー状態から中間状態に変化するようにインタロゲーションされる。例えば、ポンピングおよび磁場は、アルカリ金属原子54が第1のインタロゲーションビームOPTINT1+から光子を吸収する感度を提供する一方で、第2のインタロゲーションビームOPTINT2+に対して不感度性である(または対向伝搬する第1のインタロゲーションビームOPTINT1-から光子を吸収する感度を提供する一方で、対向伝搬する第2のインタロゲーションビームOPTINT2-に対して不感度性である)。
【0032】
従って、アルカリ金属原子54は、光子の放出に対応する第2の周波数および第1の円偏光に応答して、中間状態から第2のエネルギー状態に降下するように(例えば、続いて、または実質的に同時に)インタロゲーションが行われる。例えば、ポンピングおよび磁場は、アルカリ金属原子54が第2のインタロゲーションビームOPTINT2-に応答して光子を放出する感度を提供する一方で、第1のインタロゲーションビームOPTINT1-に対して不感度性である(または前方伝搬する第2のインタロゲーションビームOPTINT2+から光子を放出する感度を提供する一方で、前方伝搬する第1のインタロゲーションビームOPTINT1+に不感度性である)。従って、反対方向からの第1および第2のインタロゲーションビームOPTINT1+およびOPTINT2-を介した光子の吸収および放出を可能にする1/4波長板66およびミラー68の構造に基づいて、アルカリ金属原子は2光子の正味の運動量ゲインを示すことができ、ここで、光子の吸収および放出は、第1のインタロゲーションビームOPTINT1+と第2のインタロゲーションビームOPTINT2-との対向伝搬に基づいて、同じ近似方向であることを前提とする。その結果、トラップされたアルカリ金属原子は、比較的静止したアルカリ金属原子に対する光子の吸収および放出を区別することができない典型的な原子干渉計システムとは異なり、インタロゲーションビームOPTINT1およびOPTINT2に対するアルカリ金属原子の速度に関係なく、光学応答を提供するようにインタロゲーションが行われる。
【0033】
従って、インタロゲーションビームOPTINT1およびOPTINT2は、アルカリ金属原子54の集団のインタロゲーションを行うことができ、その後、アルカリ金属原子54の光学応答を得るための状態検出段階が続く。別の例として、アルカリ金属原子54のインタロゲーションが外部磁場に対して実質的に不感度性である方法で第1のエネルギー状態と第2のエネルギー状態との間にあるように、アルカリ金属原子のインタロゲーションが、アルカリ金属原子54のゼーマンシフト特性に関連する均一な磁場内で提供される。一例として、磁場発生器70によって生成される均一な磁場は、磁場の変動への依存を最小限に抑えるために(例えば、他のエネルギー遷移を拒絶するために)、第1のエネルギー状態から第2のエネルギー状態へのアルカリ金属原子のインタロゲーションエネルギー遷移(例えば、<1,-1>-<2,1>または<1,1>-<2,-1>)に対してほぼ中心の遷移周波数を提供する大きさを有することができる。例えば、アルカリ金属原子は、均一磁場が約3.23ガウスの大きさを有することができるようなルビジウム87原子であり得る。
【0034】
図1の例で説明したのと同様に、アルカリ金属原子54のインタロゲーションにより、測定可能なパラメータを決定するために複数の測定サイクルに亘って取得される、信号OPTDETとして図2の例で示される光学応答を提供することができる。図2の例では、光学応答OPTDETは、光学検出器74を含む検出システム72に提供される。検出システム72は、光学応答OPTDETに応答して干渉法に基づいて測定可能なパラメータを決定することができる。一例として、光学検出器74は、干渉法により評価することができる光学応答OPTDETの蛍光または吸収(または他の任意の光学検出技術)を決定して、原子干渉計システム50の構成に基づく測定可能なパラメータを決定することができる。本明細書でより詳細に説明するように、検出システム72は、測定可能なパラメータを、周波数、周波数差、時間、時間差、および/または1つまたは複数の慣性パラメータ(例えば、加速度、加速度勾配、および/または回転)のうちの1つまたは複数として決定するように構成され得る。また、本明細書で説明するように、検出システム72は、原子干渉計システム50が測定することができる測定可能なパラメータを柔軟に変更するようにプログラム可能にすることができる。
【0035】
図3は、タイミング図100の例を示す。タイミング図100は、所与の測定サイクルを形成する信号およびタイミングに関する各測定サイクルのタイミングに対応する。図3の例に関する以下の説明では、図1および2の例を参照する。
【0036】
タイミング図100は、各測定サイクルの個別の段階を示している。段階は、互いに対してスケーリングされたものとして示されておらず、かつ/または本明細書に記載されている段階のいくつかは必須ではない場合があることを理解されたい。時間Tから始まり、測定サイクルはトラッピング段階102で開始される。時間Tにおいて、光トラッピングビームOPTTRPが、トラッピング磁場とともにセンサセル56を通過するように供給される。さらに、前述したように、アルカリ金属原子54は、アルカリ金属原子集団の実質的に全体の励起を確実にするために、追加の誘導(例えば、光ポンプビームOPTPMPによるポンピング)を受け得る。
【0037】
時間Tにおいて、測定サイクルは、光学モラセス段階104に移行する。時間Tにおいて、光トラッピングビームOPTTRPは、センサセル56を通過するように維持されるが、トラッピング磁場は非活性化される。その結果、光トラッピングビームOPTTRPは、アルカリ金属原子54のさらなる冷却を提供することができる。例えば、アルカリ金属原子54は、温度が絶対零度近く(例えば、約5μK)に低下して、アルカリ金属原子54は、拡散速度(例えば、数センチメートル/秒)を大幅に低下させることができる。その結果、アルカリ金属原子54を、インタロゲーションの準備のために実質的に含ませることができる。一例として、光学モラセス段階104は、約25msの持続時間を有することができる。一例として、光学モラセス段階104は、本明細書に記載されるものに限定されず、本明細書に記載される原子干渉法に必要ではない場合があり得る。
【0038】
時間Tにおいて、測定サイクルは、原子状態準備段階106に移行する。時間Tにおいて、均一磁場発生器70によって提供されるような実質的に均一な磁場が活性化される。従って、原子状態準備段階106は、所与の測定サイクル中にインタロゲーションを開始するための条件を設定する。一例として、原子状態準備段階106は、約2msの持続時間を有することができる。
【0039】
時間Tで、インタロゲーション段階108が開始される。インタロゲーション段階108は、第1および第2のインタロゲーションビームOPTINT1+およびOPTINT2+がセンサセル56を通過するように提供されるインタロゲーション段階に対応する。前述したように、ポンピングおよび実質的に均一な磁場に応答して、アルカリ金属原子54は、第2のインタロゲーションビームOPTINT2+に対して不感度性でありながら、第1のインタロゲーションビームOPTINT1+から吸収された光子に応答して、第1のエネルギー状態から中間状態に変化するようにインタロゲーションが行われる。次に、アルカリ金属原子54は、第2のインタロゲーションビームOPTINT1-に対して不感度性でありながら、第2のインタロゲーションビームOPTINT2-に応答した光子の放出に基づいて中間状態から第2のエネルギー状態に降下するように(例えば、続いて、または実質的に同時に)インタロゲーションが行われる。従って、アルカリ金属原子54は、2光子の正味の運動量ゲインを示すことができ、ここで、光子の吸収および放出からのアルカリ金属原子54の集団の運動量変化は、第1のインタロゲーションビームOPTINT1+および第2のインタロゲーションビームOPTINT2-の対向伝搬に基づいて、同じ近似方向であることを前提とする。
【0040】
前述したように、インタロゲーション段階108は、複数のインタロゲーションサイクルを含むことができる。例えば、インタロゲーションサイクルは、インタロゲーションビームOPTINT1およびOPTINT2が所定の時間t1/2に亘って所定の強度で提供される第1のπ/2パルスでインタロゲーションビームOPTINT1およびOPTINT2を供給することを含むことができる。従って、第1のπ/2パルスは、エネルギー状態と運動量状態との両方でアルカリ金属原子の約50%の重ね合わせを提供することができる。第1のπ/2パルスからの時間間隔Tの後、インタロゲーションサイクルは、第1のπ/2パルスで供給されるインタロゲーションビームOPTINT1およびOPTINT2の各々の同じ円偏光で、第1のπ/2パルスの振幅の約2倍の強度(または、2倍の持続時間の間に同じ強度)でインタロゲーションビームが供給されるπパルスを含むことができる。従って、πパルスは、50%の重ね合わせを反転して、干渉経路を閉じることを開始するように作用することができる。インタロゲーションサイクルは、インタロゲーションビームOPTINT1およびOPTINT2が、第1のπ/2パルスと同じ円偏光で所定の時間t1/2に亘って第1のπ/2パルスと同じ強度で供給される第2のπ/2パルスをさらに含むことができる。従って、第2のπ/2パルスは、第1のエネルギー状態から第2のエネルギー状態へのエネルギー状態遷移を経たアルカリ金属原子の約50%の重ね合わせを提供して、従って、第1の運動量方向に正味の運動量を有して、アルカリ金属原子をインタロゲーション段階の前と同じ状態に復元することができる。
【0041】
時間Tにおいて、測定サイクルは、状態読み出し段階110に移行する。時間Tにおいて、光トラッピングビームOPTTRPが再び活性化され、均一磁場が非活性化される。状態読み出し段階110の間、第2の状態(例えば、それぞれ状態<2、1>または<2-1)に対する第1の状態(例えば、状態<1,-1>または<1,1>)におけるアルカリ金属原子54の集団の状態分布が測定されて、アルカリ金属原子54の集団が状態読み出し段階110中に光学応答OPTDETを提供するようにする。一例として、状態読み出し段階110は、約3msの持続時間を有することができる。さらに、インタロゲーション段階108中にアルカリ金属原子に発生した慣性効果を(例えば、光学応答に基づいて)検出することができ、測定可能なパラメータ(例えば、加速度、回転、時間など)を決定することができる。
【0042】
図4は、原子干渉計システム150の別の例を示す。原子干渉計システム150は、前述したのと同様に、一連の測定サイクルに基づいて測定可能なパラメータを決定するように実施することができる。図1の例で前述したのと同様に、原子干渉計システム150は、磁場発生器156によって発生した磁場に基づいてセンサセル154内にアルカリ金属原子をトラップするように構成された原子源152を含む。
【0043】
図1の例においても前述したように、各測定サイクルでは、トラッピング段階に続いて、インタロゲーション段階が開始される。図4の例では、原子干渉計システム150は、光学システム158を含む。光学システム158は、光学システム162によりセンサセル154に供給される光学ビームを生成するように構成された複数のビーム源160を含む。図4の例では、原子干渉計システム150は、光学システム158が、光トラッピングビームOPTTRPX、OPTTRPY、およびOPTTRPZとして示されるように、3つのほぼ直交する軸X、Y、およびZの各々に沿って光トラッピング光を供給することができることを示す。光学システム158はまた、3つの直交軸X、Y、およびZの各々に沿って、インタロゲーションビームOPTINTX、OPTINTY、およびOPTINTZのペアを供給するものとして示されている。例えば、インタロゲーションビームOPTINTX、OPTINTY、およびOPTINTZのペアは、個々の光トラッピングビームOPTTRPX、OPTTRPY、およびOPTTRPZと同じ光路に沿って供給される。一例として、原子干渉計システム150は、アルカリ金属原子の光トラッピングを提供するものと同じ光学系を使用して、3つの直交軸の各々に沿った測定を交互に順番に提供することができる。従って、検出システム164は、インタロゲーションビームOPTINTX、OPTINTY、およびOPTINTZのペアの検出を提供して、3つの直交軸の各々に沿った測定可能なパラメータ(複数可)の測定値を提供することができる。図4の例で示されている軸は、X、Y、およびZの直交軸として示されているが、追加の軸または異なる軸に沿った測定が、センサシステム150によって実施されてもよく、かつX、Y、およびZ直交軸が例として提供されていることを理解されたい。
【0044】
図5は、センサシステム200の例を示す。センサシステム200は、原子干渉計システム10、50、または150と実質的に同じ構成とすることができる。例えば、原子干渉計システム200は、磁場発生器206によって生成された磁場に基づいて、センサセル204内にアルカリ金属原子をトラップするように構成された原子源202を含む。原子干渉計システム200は、光学システム208をも含む。光学システム208は、センサセル204に供給される光ビームを生成するように構成された複数のビーム源210および光学系212を含む。従って、センサシステム200は、検出システム213において本明細書で前述した原子干渉法を実施するように構成されている。
【0045】
図5の例では、センサシステム200は、1つまたは複数のセンサ216を含むセンサコントローラ214をも含む。例えば、センサ(複数可)216は、時間を測定する水晶発振器、磁場を測定する磁力計、電界を測定する電位計、受感軸に沿って加速度を測定する加速度計、受感軸を中心とした回転を測定するジャイロスコープなど、測定可能なパラメータを測定(または提供)する様々なセンサの任意のものを含むことができる。一例として、センサ(複数可)216は、本明細書でより詳細に説明するように、測定可能なパラメータ(複数可)の測定を可能にするために、より低い精度を有し得る補助センサ(複数可)として構成することができる。
【0046】
図6は、センサシステム250の別の例を示す。センサシステム250は、図5の例におけるセンサシステム200の一部に対応することができる。センサシステム250は、図2の例で説明したのと同様に、センサセル256に閉じ込められたアルカリ金属原子254をトラップするように構成されたMOTシステム252を含む。図6の例では、原子干渉計システム250は、センサセル256の反対側にある1/4波長板258およびミラー260を含む。例えば、1/4波長板258およびミラー260は、同じ円偏光で第1の方向と反対の第2の方向にセンサセル256を通過して戻る第1の円偏光を有する第1および第2のインタロゲーションビームOPTINT1+およびOPTINT2+を供給するための光学系(例えば、光学系22)の一部である。例えば、ミラー260は、第1および第2のインタロゲーションビームOPTINT1+およびOPTINT2+を反射して同じ円偏光で第1および第2のインタロゲーションビームOPTINT1およびOPTINT2としてセンサセル256を通過するように戻す再帰反射ミラーとすることができる。
【0047】
センサシステム250は、ミラー260の反射または再帰反射表面に対してミラー260の遠位表面に取り付けられるように実施される1つまたは複数のセンサ262をも含む。センサ(複数可)262は、図5の例におけるセンサ(複数可)216に対応することができ、従って、時間を測定する水晶発振器、磁場を測定する磁力計、電界を測定する電位計、受感軸に沿って加速度を測定する加速度計、受感軸を中心とした回転を測定するジャイロスコープなど、測定可能なパラメータを測定(または提供)する様々なセンサの任意のものを含むことができる。従って、センサ(複数可)262は、MOTシステム252に関連する干渉法に関して非常に近接して取り付けられるように配置されて、測定可能なパラメータ(複数可)のベースライン測定値を提供するセンサ(複数可)262の機能を提供することができ、センサシステム250は、本明細書で説明した干渉法による測定可能なパラメータ(複数可)のベースライン測定値に対して非常に正確な改善を提供することができる。
【0048】
図5の例を再び参照すると、センサコントローラ214は、ユーザー入力に対応する入力CNFGを受信して、干渉計が測定することができる様々な所定の測定可能なパラメータの任意のもののような、測定可能なパラメータの任意の1つを測定するように原子干渉計システムを構成する。従って、入力CNFGは、干渉計の選択的な構成を提供して、原子干渉計システムがサポートできる所定の測定可能なパラメータのうちの所望のもの(以前に示された測定可能なパラメータのうちの任意の2つ以上)を測定するための選択入力であり得る。従って、センサコントローラ214は、調整信号TNを光学システムに提供して、干渉計により測定可能なパラメータを測定する機能を提供するようにビーム源を調整することができる。例えば、調整信号TNは、干渉計が個々の選択された測定可能なパラメータを測定する機能を提供するために、ビーム源の周波数および/または偏光、ひいてはインタロゲーションビームに影響を与えることができる。
【0049】
センサコントローラ214は、検出システム213から個々の選択された測定可能なパラメータの測定値に対応する信号MPを受信する。従って、センサコントローラ214は、信号MPによって提供されるような測定されたパラメータに基づいて、センサ(複数可)216のうちの個々の1つから提供される測定可能なパラメータを調整および/または較正することができる。従って、原子干渉計システム200は、精度の低いセンサ(複数可)216の1つに対して、測定可能なパラメータの非常に精度の高い測定値を決定する際の支援を提供することができる。特に、センサ(複数可)216は、測定可能なパラメータ(複数可)のベースライン測定値を提供することができ、それにより、センサシステム200は、本明細書で説明した干渉法により測定可能なパラメータ(複数可)のベースライン測定値に対して非常に正確で安定した改善を提供することもできる。
【0050】
さらに、センサシステム200は、較正システム218を含む。較正システム218は、特に本明細書で説明されるような原子干渉法に関して、センサシステム200の較正を実施するように構成される。例えば、較正システム218は、センサシステム200の通常の動作モード中に動作することができ、その結果、較正システム218は、センサシステム200の較正を、センサシステム200の通常の動作中に実質的に継続的に、従って、リアルタイム動作の中断なしに実行することができる、センサシステム200の自己較正を実施することができる。
【0051】
図5の例では、較正システム218は、検出システム213からの信号MPと、センサ(複数可)216からの信号SMとを受信する。従って、信号SMは、センサ(複数可)216による個々の測定可能なパラメータ(複数可)の測定値を示す、個々のセンサ(複数可)216からの出力信号(複数可)に対応することができる。従って、較正システム218は、検出システム213およびセンサ(複数可)216によって提供される測定可能なパラメータ(複数可)の測定値を実質的に継続的に監視するように構成される。さらに、較正システム218は、原子源202および/または光学システム208に較正信号CALを提供する。較正信号CALは、磁場発生器206によって発生した磁場および/または測定サイクルの周期的間隔で(例えば、交互の測定サイクルで)、ビーム源210によって生成されたインタロゲーションビームの少なくとも1つに対する調整を提供することができる。
【0052】
例えば、較正信号CALは、インタロゲーションビームOPTINTの円偏光の変化に対応することができる。従って、アルカリ金属原子の集団は、異なる較正測定サイクルにおいてインタロゲーションサイクルでの光子運動量方向の反対の変化(例えば、各交互測定サイクルにおけるような、πパルスおよびπ/2パルスの各々における光子吸収および放出から生じる反対運動量方向)を有することができる。別の例として、較正信号CALはまた、ビーム源210の強度、活性化時間、および/または周波数に影響を与えて、アルカリ金属原子によるインタロゲーションビームOPTINTの光子吸収および放出から生じる運動量変化のほぼ等しいかつ反対の効果を提供することもできる。別の例として、較正信号CALは、磁場発生器206によって発生する遷移磁場の極性を反転させることができ、これにより、同様に、異なる較正測定サイクルにおいてインタロゲーションサイクルでの光子運動量方向の反対の変化(例えば、各交互測定サイクルにおけるような、πパルスおよびπ/2パルスの各々における光子吸収および放出から生じる反対運動量方向)を生じさせることができる。別の例として、較正信号CALは、例えば、インタロゲーションパルスの持続時間、インタロゲーションパルス間の遅延、および/または全体のインタロゲーションサイクル時間など、インタロゲーションサイクルのタイミングにも影響を与えることができる。タイミング調整がレーザー強度調整と組み合わされて、πパルスおよびπ/2パルス効果を維持するために積分パルス領域を維持しながら、インタロゲーションパルスの持続時間を変更することもできる。さらに別の例として、較正信号CALは、ビーム源210の円偏光の変化と、磁場発生器206によって発生する磁場の極性の変化との異なる組み合わせを提供して、選択された測定サイクルにおいて、光子の吸収および放出の効果の変化、およびその結果として生じるアルカリ金属原子の運動量変化を実施することができる。
【0053】
前述したように、較正システム218は、検出システム213およびセンサ(複数可)216によって提供される測定可能なパラメータ(複数可)の測定値を実質的に継続的に監視するように構成される。従って、較正システム218は、較正信号CALによって提供される調整に基づいて測定可能なパラメータ(複数可)の測定値を識別するように構成され、従って、アルカリ金属原子の運動量変化の影響をフィードバック方式で識別するように構成される。例えば、較正システム218は、測定サイクルに亘って測定可能なパラメータ(複数可)の測定値を集約して、測定可能なパラメータ(複数可)の測定値に与えるインタロゲーションビームおよび磁場の影響を識別するための1つまたは複数のフィルタリングアルゴリズム(例えば、カルマンフィルタ、粒子フィルタ、またはその他の様々なタイプのフィルタリングアルゴリズムの任意のものを介して)を実施するように構成される。従って、較正システム218は、測定可能なパラメータ(複数可)の測定値における識別されたバイアス誤差を除去するために、ビーム源210(例えば、強度および/または周波数)、磁場発生器206(例えば、強度および/または方向)、またはセンサシステム200の任意の他の部分(例えば、温度)に関連するパラメータを調整する等によって、センサシステム200の自己較正を実施するように構成することができる。別の例として、測定可能なパラメータ(複数可)の測定値に対するインタロゲーションビームおよび磁場の系統的な効果を観察可能に表現することに応答して、較正システム218は、測定可能なパラメータ(複数可)の測定値から識別されたバイアス誤差を単に減算することができる。例えば、較正信号CALはまた、ビーム源210、磁場発生器206、またはセンサシステム200の他の構成要素に対してチューニング調整を提供することができる。従って、較正システム218は、センサシステム200の動作を中断することなく、経時的に測定可能なパラメータ(複数可)のより正確な測定値を提供することができる。
【0054】
前述した構造的および機能的特徴を考慮すると、本発明の様々な態様による方法は、図7を参照してよりよく理解されるであろう。説明を簡単にするために、図7の方法は、連続的に実行されるように示され、説明されているが、いくつかの態様は、本発明に従って、本明細書に示され説明されたものからの他の態様と異なる順序で、かつ/または同時に発生することができるので、本発明は、図示の順序に限定されないことが理解され、認識されるべきである。さらに、本発明の態様による方法を実施するために、例示されているすべての特徴が必要とされるとは限らない。
【0055】
図7は、原子干渉計システム(例えば、原子干渉計システム10)により少なくとも1つの測定可能なパラメータを測定するための方法300の例を示す。302において、アルカリ金属原子は、一連の測定サイクルの各々のトラッピング段階中に、トラッピング光(例えば、トラッピングビームOPTTRP)および磁場によりセンサセル(例えば、センサセル14)内にトラップされる。304において、インタロゲーション段階における複数のインタロゲーションサイクルの各々において第1の周波数を有する第1のインタロゲーションビーム(例えば、インタロゲーションビームOPTINT1)が供給され、かつ第1のインタロゲーションビームとは異なる第2の周波数を有する第2のインタロゲーションビーム(例えば、インタロゲーションビームOPTINT2)がセンサセルを通過するように供給される。インタロゲーションビームは、第1の周波数によりアルカリ金属原子の集団の光子の吸収をもたらして、第1の運動量方向におけるアルカリ金属原子の集団の第1の光子運動量を提供し、第2の周波数によりアルカリ金属原子の集団の光子の放出をもたらして、第1の運動量方向におけるアルカリ金属原子の集団の第2の光子運動量を提供する。306において、インタロゲーション段階から生じる第1のエネルギー状態と第2のエネルギー状態との間のアルカリ金属原子の集団の遷移が、状態読み出し段階中の光学応答に基づいて検出される。308において、アルカリ金属原子の検出された状態分布に基づいて、少なくとも1つの測定可能なパラメータが決定される。
【0056】
上述したものは、本発明の例である。当然ながら、本発明を説明するために考えられる構成要素または方法のすべての組み合わせを説明することはできないが、当業者は、本発明の多くのさらなる組み合わせおよび置換が可能であることを認識するであろう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲の技術思想および範囲内にあるそのようなすべての変更、修正、および変形を包含することを意図している。さらに、開示または請求項が「1つの」、「第1の」、または「別の」要素、またはそれらの同等物を記載する場合、1つまたは複数のそのような要素を含むと解釈されるべきであり、2つ以上のそのような要素の要求も除外もされない。本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、限定されるものではないが、含むことを意味し、「含んでいる」という用語は、限定されるものではないが、含んでいることを意味する。「~に基づく」という用語は、少なくとも部分的に基づくことを意味する。
【0057】
以下に、上記実施形態から把握できる技術思想を付記として記載する。
[付記1]
原子干渉計システムであって、
アルカリ金属原子を含むセンサセルと、
第1の周波数および第1の円偏光を有する第1のインタロゲーションビーム、および第1の周波数とは異なる第2の周波数および前記第1の円偏光を有する第2のインタロゲーションビームを生成する光学システムであって、前記光学システムは、第1の方向において前記センサセルを通過する前記第1および第2のインタロゲーションビームを提供し、前記第1および第2のインタロゲーションビームを反射して、前記第1の方向と反対の第2の方向において前記第1の円偏光で前記センサセルを通過するように戻して、一連の測定サイクルの各々におけるインタロゲーション段階中に第1の円偏光で前記アルカリ金属原子を第1のエネルギー状態と第2のエネルギー状態との間で駆動する光学系を含む、前記光学システムと、
前記一連の測定サイクルの各々における状態読み出し段階中の光学応答に基づいて、前記インタロゲーション段階中の前記第1のエネルギー状態と前記第2のエネルギー状態との間の前記アルカリ金属原子の状態分布を検出する検出システムとを備える原子干渉計システム。
【0058】
[付記2]
前記光学システムが、前記アルカリ金属原子を通過する前記第1および第2のインタロゲーションビームを供給して、前記第1の円偏光で前記第1のインタロゲーションビームの前記第1の周波数による前記アルカリ金属原子の集団における光子の吸収をもたらして、前記アルカリ金属原子の集団の第1の運動量方向における第1の光子運動量を提供し、かつ前記アルカリ金属原子を通過する反射された第1および第2のインタロゲーションビームを供給して、前記第1の円偏光で前記第2のインタロゲーションビームの前記第2の周波数による前記アルカリ金属原子の集団の光子の放出をもたらして、前記アルカリ金属原子の集団の前記第1の運動量方向における第2の光子運動量を提供するように構成される、付記1に記載のシステム。
【0059】
[付記3]
前記光学系は、1/4波長板およびミラーを備え、前記ミラーは、前記第1および第2のインタロゲーションビームを反射するように構成され、前記1/4波長板は、第1および第2の方向の各々における前記第1および第2のインタロゲーションビームの各々に対する前記第1の円偏光を維持するように構成される、付記1に記載のシステム。
【0060】
[付記4]
前記光学システムが、前記インタロゲーション段階中に第1のπ/2パルス、πパルス、および第2のπ/2パルスで前記第1および第2のインタロゲーションビームを供給するように構成され、前記検出システムは、前記状態読み出し段階中の前記第2のπ/2パルス後の前記アルカリ金属原子の集団に関連する変化に基づいて少なくとも1つの測定可能なパラメータを決定するように構成される、付記1に記載のシステム。
【0061】
[付記5]
前記光学システムは、光トラッピングビームを生成するように構成されたトラッピングビーム源を備え、前記原子干渉計システムは、光磁気トラッピング(MOT)システムをさらに備え、前記MOTシステムは、
前記光トラッピングビームに応答してセル内の前記アルカリ金属原子をトラップするように構成されたトラッピング磁場を発生させるように構成された第1の磁場発生器と、
前記インタロゲーション段階中に均一な磁場を発生させるように構成された第2の磁場発生器であって、前記均一な磁場は、前記第1のエネルギー状態から前記第2のエネルギー状態への前記アルカリ金属原子の集団のインタロゲーションを行うために、前記アルカリ金属原子のゼーマンシフト特性に基づく振幅を有する、前記第2の磁場発生器とを含む、付記1に記載のシステム。
【0062】
[付記6]
前記アルカリ金属原子がルビジウム87原子であり、前記均一な磁場が約3.23ガウスの振幅を有する、付記5に記載のシステム。
【0063】
[付記7]
前記均一な磁場が、前記アルカリ金属原子の<1,-1>の前記第1のエネルギー状態から<2,1>の前記第2のエネルギー状態への、または<1,1>の前記第1のエネルギー状態から<2,-1>の前記第2のエネルギー状態へのインタロゲーションエネルギー遷移に対してほぼ中心の遷移周波数を提供する大きさを有する、付記6に記載のシステム。
【0064】
[付記8]
前記光学システムが、同じ光路に沿って前記センサセルを通過する前記第1および第2のインタロゲーションビームならびに前記光トラッピングビームを供給するように構成される、付記5に記載のシステム。
【0065】
[付記9]
前記光学システムは、
前記光学系を介して前記センサセルを通過する個々のX、Y、およびZ直交軸に沿った第1の光トラッピングビーム、第2の光トラッピングビーム、および第3の光トラッピングビームを供給するように構成されたトラッピングビーム源と、
前記第1のインタロゲーションビームを生成し、第1、第2、および第3の光トラッピングビームの個々の1つと同じ光路に沿った個々の近似X、Y、またはZ軸インタロゲーション段階の間、個々の近似X、Y、およびZ直交軸のうちの少なくとも1つに沿って前記第1のインタロゲーションビームを前記光学系を介して前記センサセルを通過して供給するように構成される第1のインタロゲーションビーム源と、
前記第2のインタロゲーションビームを生成し、前記第1、第2、および第3の光トラッピングビームの個々の1つと同じ光路に沿った個々の近似X、Y、またはZ軸インタロゲーション段階の間、前記光学系を介して前記センサセルを通過する個々の近似X、Y、およびZ直交軸のうちの少なくとも1つに沿って前記第2のインタロゲーションビームを供給するように構成される第2のインタロゲーションビーム源とを含む、付記1に記載のシステム。
【0066】
[付記10]
付記1に記載の原子干渉計システムを含むセンサシステムであって、
少なくとも1つの測定可能なパラメータの第1の測定値を決定するように構成された少なくとも1つのセンサを含むセンサコントローラを備え、前記原子干渉計システムは、前記少なくとも1つの測定可能なパラメータの第2の測定値を提供し、かつ前記センサコントローラに前記第2の測定値を提供するようにさらに構成され、前記センサコントローラは、前記第2の測定値に基づいて前記少なくとも1つの測定可能なパラメータの前記第1の測定値を改善するように構成される、センサシステム。
【0067】
[付記11]
前記センサコントローラは、前記原子干渉計システムに少なくとも1つの調整信号を提供して、前記原子干渉計システムを、前記光学システムに関連する少なくとも1つのパラメータを調整して、前記原子干渉計システムが前記原子干渉計システムが提供するように構成されている複数の所定の測定可能なパラメータのうちの1つの第2の測定値を提供することが可能となるように構成するように構成されている、付記10に記載のセンサシステム。
【0068】
[付記12]
前記複数の所定の測定可能なパラメータは、周波数、周波数差、時間、時間差、および少なくとも1つの慣性パラメータを含む、付記11に記載のセンサシステム。
【0069】
[付記13]
少なくとも1つの測定サイクルの各々において、磁場および前記第1および第2のインタロゲーションビームのうちの少なくとも1つに関連する少なくとも1つの特性を変更して、前記原子干渉計システムの通常の動作条件の間に前記干渉計システムの較正を実施するように構成される較正コントローラをさらに備える、付記1に記載のシステム。
【0070】
[付記14]
前記較正コントローラは、前記少なくとも1つの測定サイクルの各々において、前記第1および第2のインタロゲーションビームの各々の円偏光を変更して、前記原子干渉計システムの通常の動作条件の間に前記原子干渉計システムの較正を実施するように構成される、付記13に記載のシステム。
【0071】
[付記15]
前記較正コントローラは、前記少なくとも1つの測定サイクルの各々において、磁場の極性を変更して、前記原子干渉計システムの通常の動作条件の間に前記原子干渉計システムの較正を実施するように構成される、付記13に記載のシステム。
【0072】
[付記16]
原子干渉計システムにより少なくとも1つの測定可能なパラメータを測定する方法であって、
一連の測定サイクルの各々のトラッピング段階中に、トラッピング光および磁場によりアルカリ金属原子をセンサセル内にトラップするステップと、
インタロゲーション段階における複数のインタロゲーションサイクルの各々において、前記センサセルを通過する第1の周波数を有する第1のインタロゲーションビームと前記第1のインタロゲーションビームとは異なる第2の周波数を有する第2のインタロゲーションビームとを提供して、前記第1の周波数により前記アルカリ金属原子の集団の光子の吸収をもたらして、第1の方向における前記アルカリ金属原子の集団の第1の光子運動量を提供し、前記第2の周波数により前記アルカリ金属原子の集団の光子の放出をもたらして、前記第1の方向における前記アルカリ金属原子の集団の第2の運動量を提供するステップと、
状態読み出し段階中の光学応答に基づいて、前記インタロゲーション段階から生じる第1のエネルギー状態と第2のエネルギー状態との間の前記アルカリ金属原子の集団の遷移を検出するステップと、
前記アルカリ金属原子の検出された状態分布に基づいて、少なくとも1つの測定可能なパラメータを決定するステップとを含む方法。
【0073】
[付記17]
前記第1および第2のインタロゲーションビームを提供することは、前記第1および第2のインタロゲーションビームを、第1の方向において前記センサセルを第1の円偏光で前記第1の方向に通過するように供給し、かつ第2の方向において前記センサセルを前記第1の円偏光で前記第1の方向とは反対の第2の方向に光学系を介して通過するように供給することを含む、付記16に記載の方法。
【0074】
[付記18]
前記第1および第2のインタロゲーションビームを提供することは、インタロゲーション段階中に第1のπ/2パルス、πパルス、および第2のπ/2パルスを含む複数のインタロゲーションサイクルの各々において前記第1および第2のインタロゲーションビームを供給することを含み、遷移を検出することは、前記状態読み出し段階中の前記第2のπ/2パルス後の前記アルカリ金属原子の集団に関連する変化を検出することを含む、付記16に記載の方法。
【0075】
[付記19]
前記アルカリ金属原子をトラップすることは、
光トラッピングビームを生成するステップと、
前記光トラッピングビームに応答してセル内の前記アルカリ金属原子をトラップするように構成されたトラッピング磁場を発生させるステップとを含む、付記16に記載の方法。
【0076】
[付記20]
前記アルカリ金属原子がルビジウム87原子であり、方法は、前記インタロゲーション段階中に均一な磁場を約3.23ガウスの大きさで発生させて、前記アルカリ金属原子の集団の<1,-1>の第1のエネルギー状態から<2,1>の第2のエネルギー状態への、または<1,1>の第1のエネルギー状態から<2,-1>の第2のエネルギー状態へのインタロゲーション行うステップをさらに含む、付記16に記載の方法。
【0077】
[付記21]
前記アルカリ金属原子をトラップすることは、個々の近似X、Y、およびZ直交軸に沿って光学系を介してセンサセルを通過する第1の光トラッピングビーム、第2の光トラッピングビーム、および第3の光トラッピングビームにより前記アルカリ金属原子をトラップすることを含み、前記第1および第2のインタロゲーションビームを生成することは、前記光学系を介した前記第1、第2、および第3の光トラッピングビームの個々の1つと同じ光路に沿った個々の近似X、Y、またはZ軸インタロゲーション段階の間、前記個々の近似X、Y、およびZ直交軸のうちの少なくとも1つに沿って前記第1および第2のインタロゲーションビームの各々を生成することを含む、付記16に記載の方法。
【0078】
[付記22]
前記少なくとも1つの測定可能なパラメータを決定することは、前記原子干渉計システムにより少なくとも1つの測定可能なパラメータの第1の測定値を決定することを含み、方法はさらに、
補助センサにより前記なくとも1つの測定可能なパラメータの第2の測定値を決定するステップと、
前記第1の測定値に基づいて、前記少なくとも1つの測定可能なパラメータの第2の測定値を改善するステップとを含む、付記16に記載の方法。
【0079】
[付記23]
前記第1および第2のインタロゲーションビームを提供することは、第1の測定サイクルにおいて第1の円偏光を有する前記第1および第2のインタロゲーションビームを提供することを含み、前記少なくとも1つの測定可能パラメータを決定することは、前記第1の測定サイクルにおいて前記アルカリ金属原子の検出された状態分布に基づいて前記少なくとも1つの測定可能パラメータを決定することを含み、方法はさらに
第2の測定サイクルにおいて前記第1の円偏光と反対の第2の円偏光を有する前記第1および第2のインタロゲーションビームを供給するステップと、
前記第2の測定サイクルにおいて前記アルカリ金属原子の検出された状態分布に基づいて前記少なくとも1つの測定可能なパラメータを決定するステップと、
前記第1および第2の測定サイクルの各々における前記アルカリ金属原子の検出された状態分布に基づいて前記原子干渉計システムを較正するステップとを含む、付記16に記載の方法。
【0080】
[付記24]
前記第1および第2のインタロゲーションビームを提供することは、第1の測定サイクにおいて前記第1および第2のインタロゲーションビームならびに第1の極性を有する遷移磁場を供給することを含み、前記少なくとも1つの測定可能なパラメータを決定することは、前記第1の測定サイクルにおいて前記アルカリ金属原子の検出された状態分布に基づいて前記少なくとも1つの測定可能なパラメータを決定することを含み、方法はさらに、
第2の測定サイクルにおいて前記第1および第2のインタロゲーションビームならびに第2の極性を有する遷移磁場を供給するステップと、
前記第2の測定サイクルにおいて前記アルカリ金属原子の検出された状態分布に基づいて前記少なくとも1つの測定可能なパラメータを決定するステップと、
前記第1および第2の測定サイクルの各々における前記アルカリ金属原子の検出された状態分布に基づいて前記原子干渉計システムを較正するステップとを含む、付記16に記載の方法。
【0081】
[付記25]
原子干渉計システムであって、
測定サイクルの各々のトラッピング段階中に磁場およびトラッピング光によりセンサセル内にアルカリ金属原子をトラップする光磁気トラッピング(MOT)システムと、
光学システムであって、
第1の周波数を有する第1のインタロゲーションビームを生成するように構成された第1のインタロゲーションビーム源と、
前記第1の周波数とは異なる第2の周波数を有する第2のインタロゲーションビームを生成するように構成された第2のインタロゲーションビーム源と、
インタロゲーション段階の複数のインタロゲーションサイクルの各々において、第1の円偏光で第1の方向にセンサセルを通過する前記第1および第2のインタロゲーションビームを提供して、前記第1の円偏光で前記第1のインタロゲーションビームの前記第1の周波数によるアルカリ金属原子の集団の光子を吸収をもたらして、前記アルカリ金属原子の集団の第1の運動量方向における第1の光子運動量を提供するとともに、前記第1の方向と反対の第2の方向において、前記第1の円偏光で前記第1および第2のインタロゲーションビームを前記アルカリ金属原子を通過するように反射して、前記第1の円偏光で前記第2のインタロゲーションビームの前記第2の周波数による前記アルカリ金属原子の集団の光子の放出をもたらして、前記アルカリ金属原子の集団の前記第1の運動量方向における第2の光子運動量を提供する光学系とを含む、前記光学システムと、
少なくとも1つの測定可能なパラメータを測定するために、状態読み出し段階中に光学応答に基づいて前記インタロゲーション段階中に誘導された第1のエネルギー状態と第2のエネルギー状態との間のアルカリ金属原子の集団の状態分布を検出する検出システムと、
前記測定サイクルの少なくとも1つの各々において、磁場および前記第1および第2のインタロゲーションビームのうちの少なくとも1つに関連する少なくとも1つの特性を変更して、前記原子干渉計システムの通常の動作条件の間に前記原子干渉計システムの較正を実施する較正コントローラとを備える、光学システム。
図1
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図7