(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】加工業者に対する部品の製造委託を支援するための装置、方法及びそのためのプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20220106BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
G06Q50/04
G05B19/418 Z
(21)【出願番号】P 2020164719
(22)【出願日】2020-09-30
(62)【分割の表示】P 2020099980の分割
【原出願日】2020-06-09
【審査請求日】2020-09-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517404991
【氏名又は名称】キャディ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174078
【氏名又は名称】大谷 寛
(72)【発明者】
【氏名】加藤 勇志郎
【審査官】梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-102057(JP,A)
【文献】特開2003-088919(JP,A)
【文献】特開2001-357241(JP,A)
【文献】特開2002-366801(JP,A)
【文献】特開2018-063734(JP,A)
【文献】特開2019-159667(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0012947(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが、製造業者による部品の加工業者への製造委託を支援するための方法であって、
前記コンピュータが、製造業者端末から、前記部品を二次元で表す二次元データを受信するステップと、
前記コンピュータが、前記二次元データに対する画像認識又は文字認識によって、前記二次元データから指定情報を抽出するステップと、
前記コンピュータが、前記指定情報に基づいて前記二次元データに含まれ得る指定情報とその解釈との対応づけを参照して、前記指定情報に応じた委託条件を判定するステップと、
前記コンピュータが、前記委託条件の少なくとも一部の下で加工するための見積価格を前記製造業者端末に送信するステップと、
前記コンピュータが、前記二次元データに前記委託条件の少なくとも一部に対応する付加データを付加して、加工業者端末に送信するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記付加データは、前記委託条件の少なくとも一部の視覚表現を表示させるためのデータであることを特徴とする方法。
【請求項3】
コンピュータに、製造業者による部品の加工業者への製造委託を支援するための方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、
製造業者端末から、前記部品を二次元で表す二次元データを受信するステップと、
前記二次元データに対する画像認識又は文字認識によって、前記二次元データから指定情報を抽出するステップと、
前記指定情報に基づいて前記二次
元データに含まれ得る指定情報とその解釈との対応づけを参照して、前記指定情報に応じた委託条件を判定するステップと
前記委託条件の少なくとも一部の下で加工するための見積価格を前記製造業者端末に送信するステップと、
前記二次元データに前記委託条件の少なくとも一部に対応する付加データを付加して、加工業者端末に送信するステップと
を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項4】
製造業者による部品の加工業者への製造委託を支援するための装置であって、
製造業者端末から、前記部品を二次元で表す二次元データを受信して、前記二次元データに対する画像認識又は文字認識によって前記二次元データから指定情報を抽出し、
前記指定情報に基づいて前記二次
元データに含まれ得る指定情報とその解釈との対応づけを参照して、前記指定情報に応じた委託条件を判定し、
前記委託条件の少なくとも一部の下で加工するための見積価格を前記製造業者端末に送信し、
前記二次元データに前記委託条件の少なくとも一部に対応する付加データを付加して、加工業者端末に送信することを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工業者に対する部品の製造委託を支援するための装置、方法及びそのためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
CAD(Computer Aided Design)と呼ばれる製図(technical drawing)をデジタルに作図可能な設計支援ツールが使用されている。CADには、2次元で立体を表現する2次元CAD(2D-CAD)と三次元で立体を表現する三次元CAD(3D-CAD)があり、業種及び国によってそれぞれの導入率は異なるものの、作図において2D-CADが使用される割合は低くない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2D-CADのデータに基づいて製品又はその部品の加工を行う加工業者では、当然ながら当該データを必要とするわけであるが、当該製品又は部品の製造を発注する製造業者から必要なデータを受領できないことがある。
【0005】
たとえば、製造業者における設計段階では2D-CADの一規格であるDXF形式のCADデータが用いられていても、外部には2D-CADに対応していないPDF形式の文書データのみが提供される場合がある。このような場合には、加工業者は、受領した文書データからCADデータを作成しなければならない。文書データに不明確な記載があったり、不正確な記載があったりすることも少なくなく、そのような場合には、製造業者に正しい仕様の確認を行う負担が発生する。正しい仕様の確認をせずに加工を行えば、品質不良が発生することなどにより後に製造業者との認識齟齬が明らかになり、より大きな負担が発生する。
【0006】
また、2D-CADに対応した2D-CADデータを受領できた場合においても、寸法線が繋がっていなかったり、不正確な点が存在したりすることも少なくなく、やはり、加工業者は製造業者に正しい仕様の確認を行う負担、そしてCADデータを修正する負担が発生する。文書データに加えてCADデータを受領している場合に両者に齟齬があることもある。
【0007】
出願人が、製造業者が加工業者に部品の製造委託を行う上で発生する業者選定の効率化を可能とするサービスを提供する中で(特許文献1参照)、発明者らは、2D-CADデータ、PDFデータ等の二次元で加工対象の部品を表すデータ(以下「二次元データ」という。)に上述したような問題があり、より具体的には、二次元データの記載内容が製造業者の意図を正しく表しているかという問題があることを見出した。加工業者に自らの意図が伝わっていることの確認は、製造業者にとって、新たな加工業者を選定する際の取引コストとなっている。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、製造業者が加工業者に対する部品の製造委託を支援するための装置、方法及びそのためのプログラムにおいて、当該部品を表す二次元データの記載内容が製造業者の意図を正しく表しているかの確認負担を軽減することにある。
【0009】
なお、本明細書において、用語「部品」は複数の部品で構成される組立品を含み、用語「加工」は複数の部品の組み立てを含む。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明の第1の態様は、製造業者による部品の加工業者への製造委託を支援するための方法であって、製造業者端末から、前記部品を二次元で表す二次元データを受信するステップと、前記二次元データから指定情報を抽出するステップと、前記指定情報に応じた委託条件を判定するステップと、前記委託条件の少なくとも一部の下で加工するための見積価格を前記製造業者端末に送信するステップとを含む。
【0011】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様であって、前記抽出は、OCRによる文字認識によって行うことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の第3の態様は、第1の態様であって、前記二次元データに前記委託条件の少なくとも一部に対応する付加データを付加して、加工業者端末に送信するステップをさらに含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれかの態様であって、前記判定は、二次元データに含まれ得る指定情報とその解釈との対応づけを参照して行うことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第5の態様は、第4の態様であって、前記対応づけは、製造業者毎の対応づけであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の第6の態様は、第4の態様であって、前記対応づけは、少なくとも一部の製造業者共通の対応づけであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の第7の態様は、第4の態様であって、前記対応づけは、前記二次元データに含まれ得る少なくともいずれかの指定情報に対して複数可能な解釈のうちの特定の解釈を対応づけることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の第8の態様は、第3の態様であって、前記付加データは、前記委託条件の少なくとも一部の視覚表現を表示させるためのデータであることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の第9の態様は、コンピュータに、製造業者による部品の加工業者への製造委託を支援するための方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、製造業者端末から、前記部品を二次元で表す二次元データを受信するステップと、前記二次元データから指定情報を抽出するステップと、前記指定情報に応じた委託条件を判定するステップと前記委託条件の少なくとも一部の下で加工するための見積価格を前記製造業者端末に送信するステップとを含む。
【0019】
また、本発明の第10の態様は、製造業者による部品の加工業者への製造委託を支援するための装置であって、製造業者端末から、前記部品を二次元で表す二次元データを受信して、前記二次元データから指定情報を抽出し、前記指定情報に応じた委託条件を判定し、前記委託条件の少なくとも一部の下で加工するための見積価格を前記製造業者端末に送信する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、受信した二次元データから指定情報を抽出して、当該指定情報に応じた委託条件の判定を行うことで、加工対象の部品を表す文書データの記載内容が製造業者の意図を正しく表しているかの製造業者に対する確認負担を軽減することができる。このことは、工数を増大させることなく、品質不良の抑止に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる加工業者に対する部品の製造委託を支援するためのシステムを示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかる加工業者に対する部品の製造委託を支援するための方法の流れ図である。
【
図3】本発明の一実施形態において受信する二次元データにより表示される図面の一例である。
【
図4】本発明の一実施形態にかかる付加データを有する二次元データにより表示される図面の一例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態において受信する二次元データにより表示される図面の別の例である。
【
図6】本発明の一実施形態において製造業者共通の解釈を参照して判定された委託条件の視覚表現の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0023】
図1に、本発明の一実施形態にかかる製造業者が加工業者に対する部品の製造委託を支援するためのシステムを示す。システム100は、製造業者と1又は複数の加工業者との間に介在する介在業者の装置110と、装置110に加工対象となる部品の二次元データを送信する製造業者端末120と、装置110から当該部品の加工に関する受注確認を受信する加工業者端末131とを備える。
【0024】
装置110は、通信インターフェースなどの通信部111と、プロセッサ、CPU等の処理部112と、メモリ、ハードディスク等の記憶装置又は記憶媒体を含む記憶部113とを備え、各処理を行うためのプログラムを処理部112で実行することによって構成することができ、1又は複数の装置ないしサーバを含むことがある。また、当該プログラムは、1又は複数のプログラムを含むことがあり、また、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録して非一過性のプログラムプロダクトとすることができる。
【0025】
装置110は、記憶部113に加えて、装置110からアクセス可能なデータベース114を備えることができ、たとえば、データベース114に、製造業者の意図を正しく表すために、受信した図面データに付加されるデータを記憶しておくことができる。以下の説明では、データベース114を記憶部113とは別個に備えるものとして装置110を記述するが、データベース114に記憶されるデータを記憶部113に記憶してもよく、またその逆としてもよい。
【0026】
図1では、製造業者端末120、第1の加工業者端末131、第2の加工業者端末132、及び第3の加工業者端末133を各企業を表すイラストによって示しているが、より正確には、各企業で用いられるコンピュータに対応する。また、
図1には、第1の加工業者端末131に加えて、第2の加工業者端末132及び第3の加工業者端末133についても図示しているが、第1の加工業者端末131を単に加工業者端末131と呼ぶことがある。また、製造業者端末120及び加工業者端末131についても装置110と同様に通信部、処理部及び記憶部を有するが、簡単のため図示しない。
【0027】
本実施形態では、装置110はIPネットワークを含むコンピュータネットワークを介して加工業者端末131と通信可能であるとして説明するが、FAX等の通信手段によって人を介在させて加工業者端末131との所要のデータの授受を行うことも可能である。
【0028】
まず、製造委託を行う製造業者は、製造業者端末120から、装置110に対して、加工対象となる部品の二次元データを送信する(S201)。二次元データとして、たとえばPDF形式の文書データ、DXF形式の2D-CADデータが挙げられる。2D-CADデータは、3D-CADにより描画された図面を複数の二次元の図面として出力することで得ることができ、この際にPDF形式として出力したり、DXF形式として出力したりすることができる。DXF形式の2D-CADデータとして出力した後に、2D-CADを用いて後述する指定情報が記入されることがある。2D-CADデータをさらにPDF形式の図面として出力することができる。また、装置110は、製造業者が求める数量、材質、公差、品質基準、納期等の各種条件を発注条件として、二次元データに加えて受信することがある。
【0029】
図3に、装置110が受信する二次元データにより表示される図面の一例を示す。図面300は、加工対象となる部品の形状及び寸法に加えて、仕様、当該仕様を実現するための製造方法等の指定情報を含むことがある。
図3の例では、「全面硬質クロムメッキ0.03m/m厚」という第1の指定310-1と、「G」というグラインダー加工、すなわち粗さに関する第2の指定310-2が指定情報として含まれている。
【0030】
装置110は、二次元データを受信した後、当該二次元データの分析を行う(S202)。分析の詳細はさらに後述するが、当該二次元データに含まれる指定情報を抽出し、抽出した指定情報に応じて、当該二次元データにより表される部品の委託条件が判定される。抽出は、たとえば、OCRによる文字認識、画像認識等の手法によって行うことができる。
【0031】
装置110は、委託条件の判定と同時に、又はその後に、当該二次元データにより表される部品の見積価格を取得する。見積価格は、さまざまな手法によって取得することができ、装置110において二次元データに基づいて算出したり、二次元データに基づいて装置110を提供する事業者の従業員が算出した価格を入力したりすることが含まれる。見積価格は、発注条件及び委託条件によって変動し得るため、受信した発注条件及び判定された委託条件の少なくとも一部の下で加工するための価格とすることが好ましい。ここで、発注条件と委託条件とで項目が重複することが考えられるが、その場合にいずれを優先するかは適宜定めておけばよい。
【0032】
見積価格は、一例として、実在又は架空の加工業者の当該部品の販売価格に介在業者である装置110を提供する事業者の利益を加算した価格とすることができる。装置110は、データベースに自らの利益の価格を保持しておくとともに、加工業者の当該部品の販売価格を算出するための各種単価を保持しておくことで、各加工業者の販売価格を算出し、よって介在業者の見積価格を算出することができる。装置110を介して行われる取引の形態に応じて、見積価格は、加工業者の販売価格とすることも考えられる。いずれにしても、装置110は、データベース114に記憶された価格情報を参照して、当該部品の見積価格を算出可能とすることができる。ここで、架空の加工業者の販売価格とは、たとえば、実在する複数の加工業者について算出した複数の販売価格の少なくとも一部に基づいて算出される価格を例に挙げられる。
【0033】
加えて、装置110は、委託条件の判定と同時に、又はその前後に、当該二次元データにより表される部品の加工可能性を判定してもよい。当該判定は、部品の加工に必要となる1又は複数の形状及びその寸法の特定を含み、形状の位置、厚さ、直径、角度等をさらに特定してもよい。このようにして特定された形状データから、装置110において、各加工業者が対応可能な加工方法で加工可能か否か、及び/又は各加工業者が利用可能な設備によって加工可能か否かが判定される。この際に、上述のように判定された委託条件下で加工可能か否かがさらに判定されてもよい。
【0034】
二次元データの分析の後、装置110は、判定された二次元条件とともに、算出された見積価格を製造業者端末120に送信する(S203)。製造業者は、その端末120において受信した見積価格での発注を決定した場合、装置110に対し、発注指示を送信する(S204)。装置110を提供する介在業者は、1又は複数の加工業者端末131に受注確認を送信する(S205)。ここで、介在業者は、発注指示を受信した段階で受注を確定してもよく、また、いずれかの加工業者による受注が確定してから、自らの受注を確定してもよい。また、装置110を介して行われる取引の形態に応じて、製造業者と加工業者との間で直接的に受発注を確定することも考えられる。また、装置110を介して行われる取引の形態に応じて、見積価格の送信、発注指示の送信、及び受注確認の送信の順序は入れ替わることがある。
【0035】
装置110は、加工業者端末131に受注確認を送信するのと同時に、又はその前後に、判定された委託条件の少なくとも一部に対応する付加データを二次元データに付加して送信する。
【0036】
図4に、付加データを有する二次元データにより表示される図面の一例を示す。「G」という粗さに関する第2の指定310-2は、第1の指定310-1のようにメッキ指定がなされている場合に、ある製造業者において「メッキした後に研磨加工を行うこと」を意図している。データベース114には、このような製造業者毎又は製造業者共通の指定情報の解釈が記憶されており、二次元データに含まれる指定情報に基づいて、二次元データに含まれ得る指定情報とその解釈との対応づけを参照して、指定情報に応じた委託条件の判定が行われる。二次元データには、判定された委託条件に対応する付加データが付加され、当該付加データにより、委託条件の視覚表現の一例として、スタンプ410が図面400に表示されている。
【0037】
このように、装置110は、受信した二次元データから指定情報を抽出し、当該指定情報に基づいて、製造業者毎又は製造業者共通の指定情報の解釈を参照することで、指定情報に応じた委託条件の判定を行う。ここで判定には、明示的に指定がない場合に特定の委託条件を判定することも含まれる。委託条件の判定がなされることで、装置110は、製造業者に対しては、その意図の確認を不必要に行うことなく、見積価格の提示を簡便に行うことが可能となる。加えて、加工業者に対して、製造業者の意図が正しく反映された二次元データを送信すれば、加工業者による解釈のぶれを抑制することができる。
【0038】
なお、「××のみに基づいて」、「××のみに応じて」、「××のみの場合」というように「のみ」との記載がなければ、本明細書においては、付加的な情報も考慮し得ることが想定されていることに留意されたい。また、一例として、「aの場合にbする」という記載は、明示した場合を除き、「aの場合に常にbする」こと、「aの直後にbする」ことを必ずしも意味しないことに留意されたい。また、「Aを構成する各a」という記載は、必ずしもAが複数の構成要素によって構成されることを意味するものではなく、構成要素が単数であることを含む。
【0039】
また、念のため、なんらかの方法、プログラム、端末、装置、サーバ又はシステム(以下「方法等」)において、本明細書で記述された動作と異なる動作を行う側面があるとしても、本発明の各態様は、本明細書で記述された動作のいずれかと同一の動作を対象とするものであり、本明細書で記述された動作と異なる動作が存在することは、当該方法等を本発明の各態様の範囲外とするものではないことを付言する。
【0040】
二次元データ分析の詳細
図3の例では、製造業者毎の指定情報の解釈を参照することによって、当該製造業者の意図に合致した委託条件を判定し、装置110が受信する二次元データの記載から不明確さを低減している。同様の指定情報として、一例として、材質にステンレスの指定がある場合に製造業者毎の解釈を参照して、たとえばSUS304等の特定の材質で加工することを判定することができる。このように、二次元データに含まれ得る少なくともいずれかの指定情報に対して複数可能な解釈が存在する場合に、それらのうちの特定の解釈を関連づけることで、明確さが得られる。
【0041】
図5の例では、材質として鉄の指定がある。鉄は一般に、細分化されたいくつもの種類があり、一意に定まらない。ある製造業者では、図面に「鉄」との記載があれば「SPCC」を指しているという慣習がある場合、当該製造業者のための指定情報と解釈との対応づけとして記憶しておくことで、当該製造業者の意図を正しく確認可能である。
図5に記載の「MICr」という指定は、「硬質クロムメッキ」を表す表現として用いられることがあるものの、必ずしも一般的なものではないことから、このような表現を用いる製造業者につき、当該製造業者のための対応づけに記憶しておくことができる。また、
図5に記載の「溶接後美観のこと」という指定は、溶接を行った後に、外観上の観点から、見た目が綺麗になるようにする指定を表す。しかしながら、どこまでの品質が求められるかにおいて業界標準が存在せず、製造業者毎に想定されている水準が異なる。そのため、このような指定がなされる場合には、製造業者毎に「実際には特別な処理必要なく、グラインダーで削ることで、外観を仕上げる程度で問題ない」などの水準を委託条件として判定することが必要となる。
図3の例に加え、
図5の例で示すように、多義的な指定が二次元データに含まれることが少なくなく、製造業者毎の対応づけによって、不明確さを低減する意義は大きい。
【0042】
また、製造業者によっては、溶接を含まない図面に対しても「溶接は全周溶接のこと」などの指定情報が図面に含まれることがあり、このような指定情報は委託条件に含まれないものとして判定して、打ち消すことができる。
【0043】
また、材質にステンレスの指定がある場合に対応可能な加工業者の多いもの、あるいは加工コストの低いものとして、複数可能な選択肢の中からSUS304等の特定の材質で加工することを判定することも考えられる。当該判定は、一例として、データベース114に記憶された製造業者共通の指定情報の解釈を参照することで行うことができる。同様の指定情報として、溶接方法の指定がない場合にピッチ溶接等の特定の溶接方法で加工することを判定することができる。つまり、二次元データに指定情報が一切記載されていない場合においても、特定の委託条件の判定を行うことが考えられる。また、「溶接」とのみ指定があり、その具体的な方法、たとえば全周溶接か断続溶接のいずれかについては指定がない場合に複数可能な選択肢の中から特定の溶接方法で加工することを判定してもよい。二次元データに含まれる指定情報に複数の解釈があり得る場合、また、指定情報が明示されていない場合に特定の委託条件を判定することは、見積価格の精度向上につながる。
図6に、指定情報としてステンレスが記載され、溶接については明示的な記載がない場合に、製造業者共通の解釈を参照して判定された委託条件の視覚表現の一例600を示す。
【0044】
また、装置110で受信する二次元データは、装置110により提供されるサービスにおいて、対応不可の指定情報を含むことがある。このような場合に対応不可であることを製造業者端末120に送信することも可能であるが、対応可能な範囲で委託条件を判定して見積金額を送信したり、対応不可の工程を除外した工程の委託条件を判定して見積金額を送信したりすることによって、製造業者における不必要に負担を増大させることなく、発注の検討を促すことができる。
【符号の説明】
【0045】
100 システム
110 介在業者装置
120 製造業者端末
131 第1の加工業者端末
132 第2の加工業者端末
133 第3の加工業者端末
300 図面
400 スタンプが付加された図面
500 図面
600 スタンプ