(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】コーティング用樹脂組成物及びその硬化物をコーティング層として含むコーティングフィルム
(51)【国際特許分類】
C09D 183/04 20060101AFI20220106BHJP
C08J 7/046 20200101ALI20220106BHJP
C08G 77/14 20060101ALI20220106BHJP
C08G 77/20 20060101ALI20220106BHJP
C08G 77/48 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
C09D183/04
C08J7/046 CFH
C08G77/14
C08G77/20
C08G77/48
(21)【出願番号】P 2020508003
(86)(22)【出願日】2018-08-23
(86)【国際出願番号】 KR2018009715
(87)【国際公開番号】W WO2019039881
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2020-02-12
(31)【優先権主張番号】10-2017-0107238
(32)【優先日】2017-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0098127
(32)【優先日】2018-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】キム,ハン グン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ドン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】ベク,ソン フン
(72)【発明者】
【氏名】アン,ビョン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】アン,サン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ピル レ
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-119525(JP,A)
【文献】特開昭56-099668(JP,A)
【文献】特開2017-008146(JP,A)
【文献】特開2013-221112(JP,A)
【文献】特開2013-035918(JP,A)
【文献】国際公開第2016/098596(WO,A1)
【文献】特表2009-524727(JP,A)
【文献】特開2000-272071(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102264783(CN,A)
【文献】特開2008-285502(JP,A)
【文献】特開2004-238418(JP,A)
【文献】特開2012-009796(JP,A)
【文献】特開2007-084605(JP,A)
【文献】特開昭61-051036(JP,A)
【文献】特開2012-180462(JP,A)
【文献】国際公開第2016/146896(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0016380(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0165698(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0093027(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 183/04
C08J 7/046
C08G 77/14
C08G 77/20
C08G 77/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムを含み、また、
前記基材フィルムの少なくとも一面に積層された、コーティング用樹脂組成物の硬化物をコーティング層として含む、コーティングフィルムであって、
前記コーティング用樹脂組成物は、
下記の化学式1で表示されるアルコキシシラン
、
下記の化学式2及び化学式3でそれぞれ表示されるアルコキシシランから選択される1種以上のアルコキシシラン
、及び
下記の化学式4で表示されるジオールを含む化合物から化学結合が
なされたシロキサン樹脂を含む、コーティング用樹脂組成物。
<化学式1>
R
1
nSi(OR
2)
4-n
前記化学式1にて、R
1は、エポキシ又はアクリルが置換されたC1~C3の線型、分岐型又は脂環型のアルキレン基であり、R
2は、C1~C8の線型、分岐型又は脂環型のアルキル基であり、nは1~3の整数である。
<化学式2>
R
3Si(OR
4)
3
前記化学式2にて、R
3及びR
4は、それぞれ独立にC1~C4の線型又は分岐型のアルキル基である。
<化学式3>
R
5
2Si(OR
6)
2
前記化学式3にて、R
5及びR
6は、それぞれ独立にC1~C4の線型又は分岐型のアルキル基である。
<化学式4>
HO(CH
2
)
n
OH
前記化学式4にて、nは1~10の整数である。
【請求項2】
前記化学式2及び化学式3で表示されるアルコキシシランから選択される1種以上のアルコキシシランは、化学式1で表示されるアルコキシシランのトータル100モルに対して10~100モル%のモル比で含まれることを特徴とする、請求項1に記載のコーティング
フィルム。
【請求項3】
前記シロキサン樹脂は、前記化学式2で表示されるアルコキシシラン及び化学式3で表示されるアルコキシシランの両者を含む化合物から化学結合がなされることを特徴とする、請求項1に記載のコーティング
フィルム。
【請求項4】
前記化学式2で表示されるアルコキシシランと、化学式3で表示されるアルコキシシランとのモル比は1:0.1~10であることを特徴とする、請求項3に記載のコーティング
フィルム。
【請求項5】
前記ジオール
は、化学式1で表示されるアルコキシシランのトータル100モルに対して10~150モル%のモル比で含まれることを特徴とする、請求項
1に記載のコーティング
フィルム。
【請求項6】
前記化学式1で表示されるアルコキシシランは、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリプロポキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン及び2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシランから選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載のコーティング
フィルム。
【請求項7】
前記シロキサン樹脂は、重量平均分子量(Mw)が1,000~10,000、分子量分布度(Mw/Mn
)が1.2~2.7であることを特徴とする、請求項1に記載のコーティング
フィルム。
【請求項8】
前記コーティング用樹脂組成物は、有機溶媒、光開始剤、熱開始剤、酸化防止剤、レベリング剤及びコーティング助剤からなる群から選択される1種以上の添加物をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のコーティング
フィルム。
【請求項9】
前記コーティングフィルムは、コーティング層が形成された方向への表面硬度が、ASTM D3363の測定規格にて5H以上であることを特徴とする、請求項
1に記載のコーティングフィルム。
【請求項10】
前記コーティングフィルムは、コーティング厚さ10~50μmを基準に、フィルムの隅角部が平面の床面から離隔する距離
が10mm以下であることを特徴とする、請求項
1に記載のコーティングフィルム。
【請求項11】
前記コーティングフィルムは、コーティング厚さ10~50μm
を基準に、屈曲測定器(JIRBT-620-2)のラジウスモードを用いて測定した屈曲半径が5.0mm以下であることを特徴とする、請求項
1に記載のコーティングフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング用樹脂組成物、及び、その硬化物をコーティング層として含むコーティングフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
透明高分子フィルムは、光学、透明、フレキシブルディスプレイ産業の核心素材として多く活用されており、特に、その軽量性、加工容易性及び柔軟性によって、ディスプレイ産業にてガラスに代わって適用されている。しかし、ガラスに比べて低い表面硬度及び耐磨耗性が欠点であるから、高分子フィルムの耐磨耗性を向上させるためのコーティング技術が、重要な課題(issue)となっている。
【0003】
高分子フィルムのコーティングに使われる材料としては、大別して、有機、無機、及び、有機・無機複合材料が存在する。有機材料は、有機物の特性によって柔軟性及び成形性に対する利点を持っているが、表面硬度が低いという欠点を持っているのであり、無機材料は、高い表面硬度及び透明性という利点を持っているが、柔軟性及び成形性が低いという欠点を持っている。よって、両材料の利点を全て持っている有機・無機複合材料は、現在多くの脚光を浴びており、多くの研究が進められているが、未だ、両材料の利点を全て具現するのには充分でないというのが実情である。
【0004】
また、表面コートされた高分子フィルムが、光学用として有用に適用されるためには、何よりも、フィルムに対するコーティング剤の付着力に優れなければならず、カール(Curl)現象及びレインボー(rainbow;虹彩)現象などがあってはならず、これら全ての利点を示すコーティング素材を捜し出すことが、技術開発の核心課題として浮き彫りにされているという状況にある。
【0005】
高分子フィルムに対するコーティング組成物に関連して、従来の、開示された特許文献を見てみるならば、一例として、韓国特許公開第2010-0041992号には紫外線硬化性ポリウレタンアクリレート系オリゴマーを含む高硬度ハードコーティングフィルム組成物が開示されており、韓国特許公開第2011-0013891号には金属触媒を含むビニルオリゴシロキサンハイブリッド組成物が提案されているのである。前者の場合、カール現象を最小化し、光干渉によるレインボー現象を防止することができるのであり、後者の場合、無機網目構造の組成物であって、収縮率が小さく、優れた光学特性及び耐熱性を達成したと報告されている。
【0006】
一方、国際特許公開第WO2014-129768号公報には、脂環式エポキシ基を含む高硬度シロキサン樹脂組成物及びその製造方法と前記硬化物を含む光学フィルムが開示されたことから、最近、ハードコーティング分野の技術水準が9Hの高硬度を具現することになったことが確認された。ただし、このように高硬度コーティングを達成したにもかかわらず、前記特許では、単一の単量体と陽イオン開始剤の使用による耐候性の問題が生じるおそれがあり、ロールツーロール(Roll to Roll)工程といった大量生産において、工程進行にとり大きな妨害要素となるとともに、この後に製品として提供されたときに、耐久性の問題を引き起こしうるカールが発生するという限界が存在するのであり、過度な高硬度の具現による柔軟性の低下のために、フレキシブルディスプレイに適用するのには制約が伴うと評価された。
【0007】
このように、コーティング素材は、有機材料の利点を強調すれば硬度及び透過性に弱点を有することになり、無機材料の利点を強調すれば柔軟性などの弱点を完璧に解消することができないという限界が存在する。特に、有機材料は柔軟性を有するという利点によって高分子フィルムの表面コーティングに相応しいのであるが、分子間に緻密なネットワークを形成してコーティング層の表面硬度を向上させれば、収縮性が増加してカール及びクラックが発生することになり、これにより接着性が減少してコーティング層の剥離が発生するのであるから、高分子フィルムに、もっと広範囲に活用されるためには、表面硬度を補いながらもコーティングによるフィルムの柔軟性の低下を防止することができる技術が何よりも必要であるという状況にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明は、5H以上の表面硬度を確保するとともに優れた柔軟性及びカール特性を有するコーティング用樹脂組成物を提供しようとする。また、前記樹脂組成物の硬化物をコーティング層として含むコーティングフィルムを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための本発明の好適な第1具現例は、下記の化学式1で表示されるアルコキシシラン、及び下記の化学式2及び化学式3でそれぞれ表示されるアルコキシシランから選択される、1種以上のアルコキシシランを含む化合物から化学結合がなされたシロキサン樹脂を含むコーティング用樹脂組成物を提供するものである。
【0010】
<化学式1>
R1
nSi(OR2)4-n
【0011】
前記化学式1にて、R1は、エポキシ又はアクリルが置換された、C1~C3の線型、分岐型又は脂環型のアルキレン基であり、R2は、C1~C8の線型、分岐型又は脂環型のアルキル基であり、nは1~3の整数である。
【0012】
<化学式2>
R3Si(OR4)3
【0013】
前記化学式2にて、R3及びR4は、それぞれ独立に、C1~C4の線型又は分岐型のアルキル基である。
【0014】
<化学式3>
R5
2Si(OR6)2
【0015】
前記化学式3にて、R5及びR6は、それぞれ独立に、C1~C4の線型又は分岐型のアルキル基である。
【0016】
前記第1具現例にて、化学式2及び化学式3で表示されるアルコキシシランから選択される1種以上のアルコキシシランは、化学式1で表示されるアルコキシシランのトータル100モルに対して、10~100モル%のモル比で含まれうる。
【0017】
ここで、前記シロキサン樹脂は、前記化学式2で表示されるアルコキシシラン及び化学式3で表示されるアルコキシシランの両者を含む化合物から化学結合がなされうるのであり、化学式2で表示されるアルコキシシランと、化学式3で表示されるアルコキシシランとのモル比は1:0.1~10でありうる。
【0018】
前記第1具現例にて、シロキサン樹脂は、下記の化学式4で表示されるジオール(diol)をさらに含む化合物から化学結合がなされたものでりうる。
【0019】
<化学式4>
HO(CH2)nOH
【0020】
前記化学式4にて、nは1~10の整数である。
【0021】
ここで、前記ジオール(diol)は、化学式1で表示されるアルコキシシランのトータル100モルに対して10~150モル%のモル比で含まれうる。
【0022】
前記化学式1で表示されるアルコキシシランは、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリプロポキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン及び2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシランから選択される少なくとも1種でありうる。
【0023】
前記第1具現例のシロキサン樹脂は、重量平均分子量が1,000~10,000、分子量分布度が1.2~2.7でありうる。
【0024】
前記第1具現例のコーティング用樹脂組成物は、有機溶媒、光開始剤、熱開始剤、酸化防止剤、レベリング剤及びコーティング助剤からなる群から選択される1種以上の添加物をさらに含むことができる。
【0025】
また、本発明は、前記第1具現例のコーティング用樹脂組成物を、基材フィルムの少なくとも一面に、コーティング層として形成したコーティングフィルムを、好適な第2具現例とする。
【0026】
ここで、前記第2具現例のコーティングフィルムは、コーティング層が形成された方向への表面硬度がASTM D3363の測定規格にて5H以上でありうる。
【0027】
また、前記第2具現例のコーティングフィルムは、コーティング厚さ10~50μmを基準に、フィルムの隅角部が、平面の床面から離隔する距離(curl)が、10mm以下であり、屈曲測定器(JIRBT-620-2)のラジウスモードを用いて測定した屈曲半径が5.0mm以下という、優れたカール特性及び柔軟性を有する。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、エポキシ又はアクリルを含むアルコキシシランから形成されるシロキサンネットワークの緻密な架橋によって表面硬度及び耐スクラッチ性を確保するとともに、シランD構造(2官能のD単位)のジアルコキシシラン(Dialkoxysilane)、又は、シランT構造(3官能のT単位)のトリアルコキシシラン(Trialkoxysilane)を導入することにより、分子結合の柔軟性を確保して、硬化時のカール特性及び柔軟性を極大化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、エポキシ又はアクリルを含むアルコキシシランと、シランT構造のトリアルコキシシラン(Trialkoxysilane)、ないしは、シランD構造のジアルコキシシラン(Dialkoxysilane)を含む化合物から化学結合がなされたシロキサン樹脂を含むコーティング用樹脂組成物を提供する。
【0030】
より具体的に、本発明において、前記エポキシ基又はアクリル基を含むアルコキシシランは、下記の化学式1で表示することができ、より好ましくは3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、3-メタアクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタアクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリプロポキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン及び2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルプロポキシシランから選択される少なくとも1種でありうる。
【0031】
<化学式1>
R1
nSi(OR2)4-n
【0032】
前記化学式1で、R1はエポキシ又はアクリルが置換されたC1~C3の線型、分岐型又は脂環型のアルキレン基であり、R2はC1~C8の線型、分岐型又は脂環型のアルキル基であり、nは1~3の整数である。
【0033】
ただ、シラン化合物のみでシロキサン樹脂を合成する場合、高い表面硬度は確保することができるが、緻密なシロキサン架橋によってのみ結合構造が形成されるので、柔軟性を確保するのに限界が存在する。よって、本発明は、前記化学式1で表示されるアルコキシシランとともに、下記の化学式2及び化学式3でそれぞれ表示されるアルコキシシランから選択される1種以上のアルコキシシランを含む化合物によってシロキサン樹脂を重合することにより、分子結合の柔軟性を確保して、硬化物が優れた柔軟性を有するようにする。
【0034】
<化学式2>
R3Si(OR4)3
【0035】
前記化学式2にて、R3及びR4は、それぞれ独立にC1~C4の線型又は分岐型のアルキル基である。
【0036】
<化学式3>
R5
2Si(OR6)2
【0037】
前記化学式3にて、R5及びR6は、それぞれ独立にC1~C4の線型又は分岐型のアルキル基である。
【0038】
すなわち、前記化学式2及び化学式3は、それぞれ、シランT構造のトリアルコキシシラン(Trialkoxysilane)ないしはシランD構造のジアルコキシシラン(Dialkoxysilane)であり、シランの重合作用基に相当しないアルキル基を含んでいるから、化学結合の際、分子間の空間を確保することができるので、柔軟性及びカール特性を向上させることができるものである。
【0039】
本発明にて、前記化学式2及び化学式3で表示されるアルコキシシランから選択される1種以上のアルコキシシランは、化学式1で表示されるアルコキシシランのトータル100モルに対して、10~100モル%、好ましくは40~60モル%のモル比で含まれることが、高い表面硬度を確保するとともに柔軟性を向上させることができるという側面で好ましい。前記範囲に達しない場合には、化学式1で表示されるアルコキシシランの含量が高くなって硬化物の表面硬度はさらに上昇すしうるが柔軟性が低下するのであり、前記範囲を超える場合には、過度な柔軟性によって一定水準の表面硬度を達成することができないのでありうる。
【0040】
ここで、5H以上の硬度を維持しながら屈曲性を上昇させようとする場合、本発明にて、前記シロキサン樹脂は、前記化学式2で表示されるアルコキシシランと化学式3で表示されるアルコキシシランを全て含む化合物から化学結合がなされたものでるのが有利でありうる。
【0041】
前記化学式2で表示されるアルコキシシランと、前記化学式3で表示されるアルコキシシランとのモル比は、1:0.1~10、好ましくは1:0.5~10、より好ましくは1:0.5~5であることが硬度を維持するという側面で良いのであり、化学式3のアルコキシシランが前記範囲に達しない場合、前記範囲を満たす場合に比べて屈曲性が低く現れうる。
【0042】
一方、本発明は、より優れた柔軟性を確保するために、シロキサン樹脂の重合の際、下記の化学式4で表示されるジオール(diol)をさらに含むことができる。ジオールを添加する場合、シロキサン樹脂の高分子鎖に線型(linear)のジオール構造が導入されるので、硬化物の柔軟性がより向上しうる。
【0043】
<化学式4>
HO(CH2)nOH
【0044】
前記化学式4で、nは1~10の整数である。
【0045】
本発明にて、前記ジオール(diol)は、シラン化合物のトータル100モルに対して、10~150モル%、好ましくは10~100モル%、より好ましくは50~80モル%のモル比で含まれることが好ましい。仮に、ジオールのモル比が前記範囲を超える場合、残余のジオールの問題で重合速度が遅くなりうるのであり、反対に前記範囲未満の場合、柔軟性の上昇幅が小さくて添加の意味が色あせてしまいうる。
【0046】
本発明にて、シロキサン樹脂の合成は常温で進みうるが、反応を促進するためには、50℃~120℃で1時間~120時間撹拌して進めることができる。また、前記反応を進めるための触媒として、塩酸、酢酸、フッ化水素、硝酸、硫酸ヨウ素酸などの酸触媒、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、イミダゾールなどの塩基触媒、及び、アンバーライト(Amberite)などのイオン交換樹脂を使うことができ、これらの触媒は単独で使うこともでき、これらを組み合わせて使うこともできる。ここで、触媒の量は、シロキサン樹脂100重量部を基準に、0.0001~約10重量部を添加することができるが、特にこれに制限されるものではない。反応が進めば、副産物として水又はアルコールが生成されるが、これを除去することによって逆反応を減らして正反応をより速く進めることができ、これによって反応速度の調節が可能である。また、反応終了後、前記副産物は、減圧しながら熱を加えることによって除去することができる。
【0047】
このように合成された前記本発明のシロキサン樹脂は、重量平均分子量が1,000~10,000であり、多分散指数(PDI)は1.2~2.7であり得る。ここで、前記分子量及び分子量分布度(多分散指数、PDI)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(Waters社製、モデルe2695)によってポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を求めたものである。測定する重合体は、1%の濃度となるように、テトラヒドロフランに溶解させ、GPCに20μLを注入する。GPCの移動相には、テトラヒドロフランを使い、1.0mL/分の流速で流入させたのであり、分析は30℃で行った。カラムは、Waters社製のStyragel HR3を2個直列に連結した。検出器としては、RI検出器(Waters社製、2414)を用いて40℃で測定した。ここで、PDI(分子量分布度)は、測定された重量平均分子量を数平均分子量で割ることによって算出した。
【0048】
一方、本発明によると、コーティング用樹脂組成物の成分として、前記シロキサン樹脂の他に、有機溶媒、光開始剤、熱開始剤、酸化防止剤、レベリング剤及びコーティング助剤からなる群から選択される1種以上の添加物をさらに含むことができる。ここで、添加する添加剤の種類及び含量を調節することにより、多様な用途に合ったコーティング用樹脂組成物として提供することができるのであり、本発明では、特にフィルム又はシートの硬度、耐磨耗性、柔軟性及びカール防止特性を上昇させることができるコーティング用樹脂組成物として提供することが好ましい。
【0049】
本発明で、前記開始剤としては、例えば有機金属塩などの光重合開始剤とアミン、イミダゾールなどの熱重合開始剤を使うことができる。ここで、開始剤の添加量は、シロキサン樹脂の総100重量部に対して、約0.01~10重量部で含まれることが好ましい。0.01重量部未満で含まれれば、十分な硬度を得るためのコーティング層の硬化時間が増加して効率性が低下し、10重量部を超える場合、コーティング層の黄色度が増大するため、透明なコーティング層を得にくくなりうる。
【0050】
また、前記有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類、又はエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類;イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、メタノールなどのアルコール類;ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類;及びノルマルヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素類などからなる溶媒から選択される1種以上を含むことができ、その種類は特に制限されない。有機溶媒は、シロキサン樹脂の粘度を制御するので、加工性をより容易にするかコーティング膜の厚さを調節するために、添加量を適切に制御することができる。
【0051】
さらに、本発明は、前記コーティング用樹脂組成物をコーティング、キャスティング(casting)、モールディング(molding)などの方法で成形した後、光重合、熱重合によって高硬度コーティング硬化物として提供することができる。特に、本発明は、基材フィルムを含み、また、前記基材フィルムの少なくとも一面に積層されるとともに、前記コーティング用樹脂組成物の硬化物をコーティング層として含む、コーティングフィルムを提供する。
【0052】
本発明のコーティングフィルムは、コーティング層が形成された方向への表面硬度がASTM D3363の測定規格における5H以上の硬度を示し、コーティング厚さ10~50μmを基準に、フィルムの隅角部が平面の床面から離隔する距離(curl)が10mm以下であり、屈曲測定器(JIRBT-620-2)のラジウスモードを用いて測定した屈曲半径が5.0mm以下であり、硬度とともにカール特性と柔軟性に非常に優れることが示される。特に、前述したいろいろの好ましい条件に合えば合うほど、5H以上の硬度を確保しながら、カール(curl)及び屈曲半径は、コーティング厚さ10μmを基準に、それぞれ5mm以下及び2.5mm以下となり、物性がより向上しうる。
【0053】
本発明にて、前記コーティング用樹脂組成物を重合する場合、光重合に適した光量の条件は50mJ/cm2以上かつ20000mJ/cm2以下であり、光照射前、均一な表面を得るために、40℃以上かつ約300℃以下の温度で熱処理することができる。また、熱重合に適した温度条件は40℃以上かつ300℃以下であるが、これに制限されない。
【0054】
[発明の実施のための形態]
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、これらによって本発明が限定されるものではない。
【0055】
本発明の実施例及び比較例で使用された化合物のうち、KBM-403は、<化学式1>のR1
nSi(OR2)4-nにて、R1がグリシドキシプロピレン(glycidoxypropylene)基、R2がメチル基、nが1であるアルコキシシランであり、KBM-503は、<化学式1>のR1
nSi(OR2)4-nにて、R1がメタアクリルオキシプロピレン(methacryloxypropylene)基、R2がメチル基、nが1であるアルコキシシランである。
【0056】
また、TEMS(Methyltrimethoxysilane)は、<化学式2>のR3Si(OR4)3にて、R3がメチル(Methyl)基、R4がエチル基であるアルコキシシランであり、DMDMS(Dimethoxydimethylsilane)は、<化学式3>のR5
2Si(OR6)2にて、R5がメチル(Methyl)基、R6がメチル基であるアルコキシシランである。また、比較例に使用されたTEOS(Tetraethoxysilane)は、化学式Si(OR8)4にて、R8がエチル基であるアルコキシシランである。
【0057】
実施例1
KBM-403(Shinetsu社製)、TEMS(Sigma-Aldrich社製)及び蒸留水を414g:134g:67g(1.75mol:0.75mol:3.75mol)の比で混合し、1,000mLの二重ジャケット反応器に入れた後、水酸化ナトリウム水溶液(H2O 1g中のNaOH 0.1g)を触媒として添加し、恒温槽を用いて90℃で8時間の間に機械的撹拌機(メカニカルスターラ;Mechanical Stirrer)を用いて200RPMで撹拌した。その後、2-ブタノンに固形分50wt%となるように希釈した後、0.45μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過してシロキサン樹脂を得た。前記樹脂の分子量はGPCを用いて測定し、4,527の数平均分子量、6,280の重量平均分子量、及び1.38の多分散指数(PDI、Mw/Mn)値を有することを確認した。
【0058】
その後、前記溶媒に希釈されたシロキサン樹脂に、光開始剤であるIRGACURE250(BASF社製)を、前記シロキサン樹脂100重量部に対して3重量部添加して、最終的にコーティング用樹脂組成物を得た。
【0059】
この組成物をポリイミド表面上にバー(Bar)でコートした後、80℃で20分間乾燥した後、315nmの波長の紫外線ランプに30秒間露出させて、10μmのコーティングフィルムを製造した。
【0060】
実施例2
KBM-403(Shinetsu社製)、DMDMS(Sigma-Aldrich社製)及び蒸留水を414g:90g:60g(1.75mol:0.75mol:3.375mol)の比で混合して1,000mLの二重ジャケット反応器に入れた後、水酸化ナトリウム水溶液(H2O 1g中のNaOH 0.1g)を触媒として添加し、恒温槽を用いて90℃で8時間の間に機械的撹拌機(Mechanical Stirrer)を用いて200RPMで撹拌した。その後、2-ブタノンに固形分50wt%となるように希釈した後、0.45μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過してシロキサン樹脂を得た。前記樹脂の分子量はGPCを用いて測定し、3,216の数平均分子量、5,325の重量平均分子量、及び1.65の多分散指数(PDI、Mw/Mn)値を有することを確認した。ついで、前記実施例1と同様の方法でコーティング用樹脂組成物を製造し、これをポリイミドフィルムにコートして10μmのコーティングフィルムを製造した。
【0061】
実施例3
KBM-403(Shinetsu社製)、TEMS(Sigma-Aldrich社製)及び蒸留水を537g:41.4g:67.5g(2.27mol:0.23mol:3.75mol)の比で混合して1,000mLの二重ジャケット反応器に入れた後、水酸化ナトリウム水溶液(H2O 1g中のNaOH 0.1g)を触媒として添加し、恒温槽を用いて90℃で8時間の間に機械的撹拌機(Mechanical Stirrer)を用いて200RPMで撹拌した。その後、2-ブタノンに固形分50wt%となるように希釈した後、0.45μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過してシロキサン樹脂を得た。前記樹脂の分子量はGPCを用いて測定し、5,897の数平均分子量、8,721の重量平均分子量、及び1.47の多分散指数(PDI、Mw/Mn)値を有することを確認した。ついで、前記実施例1と同様の方法でコーティング用樹脂組成物を製造し、これをポリイミドフィルムにコートして10μmのコーティングフィルムを製造した。
【0062】
実施例4
KBM-503(Shinetsu社製)、TEMS(Sigma-Aldrich社製)及び蒸留水を435g:134g:67g(1.75mol:0.75mol:3.75mol)の比で混合して1,000mLの二重ジャケット反応器に入れた後、水酸化ナトリウム水溶液(H2O 1g中のNaOH 0.1g)を触媒として添加し、恒温槽を用いて90℃で8時間の間に機械的撹拌機(Mechanical Stirrer)を用いて200RPMで撹拌した。その後、2-ブタノンに固形分50wt%となるように希釈した後、0.45μmのテフロ(登録商標)ンフィルターで濾過してシロキサン樹脂を得た。前記樹脂の分子量はGPCを用いて測定し、4,383の数平均分子量、6,671の重量平均分子量、及び1.52の多分散指数(PDI、Mw/Mn)値を有することを確認した。ついで、前記実施例1と同様の方法でコーティング用樹脂組成物を製造し、これをポリイミドフィルムにコートして10μmのコーティングフィルムを製造した。
【0063】
実施例5
KBM-503(Shinetsu社製)、DMDMS(Sigma-Aldrich社製)及び蒸留水を435g:90g:61g(1.75mol:0.75mol:3.375mol)の比で混合して1,000mLの二重ジャケット反応器に入れた後、水酸化ナトリウム水溶液(H2O 1g中のNaOH 0.1g)を触媒として添加し、恒温槽を用いて90℃で8時間の間に機械的撹拌機(Mechanical Stirrer)を用いて200RPMで撹拌した。その後、2-ブタノンに固形分50wt%となるように希釈した後、0.45μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過してシロキサン樹脂を得た。前記樹脂の分子量はGPCを用いて測定し、3,317の数平均分子量、5,681の重量平均分子量、及び1.71の多分散指数(PDI、Mw/Mn)値を有することを確認した。ついで、前記実施例1と同様の方法でコーティング用樹脂組成物を製造し、これをポリイミドフィルムにコートして10μmのコーティングフィルムを製造した。
【0064】
実施例6
KBM-403(Shinetsu社製)、TEMS(Sigma-Aldrich社製)、エチレングリコール(Sigma-Aldrich社製)及び蒸留水を414g:134g:116g:34g(1.75mol:0.75mol:1.875mol:1.875mol)の比で混合して1,000mLの二重ジャケット反応器に入れた後、水酸化ナトリウム水溶液(H2O 1g中のNaOH 0.1g)を触媒として添加し、恒温槽を用いて90℃で8時間の間に機械的撹拌機(Mechanical Stirrer)を用いて200RPMで撹拌した。その後、2-ブタノンに固形分50wt%となるように希釈した後、0.45μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過してシロキサン樹脂を得た。前記樹脂の分子量はGPCを用いて測定し、1,139の数平均分子量、2,131の重量平均分子量、及び1.87の多分散指数(PDI、Mw/Mn)値を有することを確認した。ついで、前記実施例1と同様の方法でコーティング用樹脂組成物を製造し、これをポリイミドフィルムにコートして10μmのコーティングフィルムを製造した。
【0065】
実施例7
KBM-403(Shinetsu社製)、DMDMS(Sigma-Aldrich社製)、エチレングリコール(Sigma-Aldrich社製)及び蒸留水を414g:90g:104g:30g(1.75mol:0.75mol:1.688mol:1.688mol)の比で混合して1,000mLの二重ジャケット反応器に入れた後、水酸化ナトリウム水溶液(H2O 1g中のNaOH 0.1g)を触媒として添加し、恒温槽を用いて90℃で8時間の間に機械的撹拌機(Mechanical Stirrer)を用いて200RPMで撹拌した。その後、2-ブタノンに固形分50wt%となるように希釈した後、0.45μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過してシロキサン樹脂を得た。前記樹脂の分子量はGPCを用いて測定し、1,039の数平均分子量、1,721の重量平均分子量、及び1.65の多分散指数(PDI、Mw/Mn)値を有することを確認した。ついで、前記実施例1と同様の方法でコーティング用樹脂組成物を製造し、これをポリイミドフィルムにコートして10μmのコーティングフィルムを製造した。
【0066】
実施例8
KBM-503(Shinetsu社製)、TEMS(Sigma-Aldrich社製)、エチレングリコール(Sigma-Aldrich社製)及び蒸留水を435g:134g:116g:34g(1.75mol:0.75mol:1.875mol:1.875mol)の比で混合して1,000mLの二重ジャケット反応器に入れた後、水酸化ナトリウム水溶液(H2O 1g中のNaOH 0.1g)を触媒として添加し、恒温槽を用いて90℃で8時間の間に機械的撹拌機(Mechanical Stirrer)を用いて200RPMで撹拌した。その後、2-ブタノンに固形分50wt%となるように希釈した後、0.45μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過してシロキサン樹脂を得た。前記樹脂の分子量はGPCを用いて測定し、1,213の数平均分子量、2,407の重量平均分子量、及び1.98の多分散指数(PDI、Mw/Mn)値を有することを確認した。ついで、前記実施例1と同様の方法でコーティング用樹脂組成物を製造し、これをポリイミドフィルムにコートして10μmのコーティングフィルムを製造した。
【0067】
実施例9
KBM-503(Shinetsu社製)、DMDMS(Sigma-Aldrich社製)、エチレングリコール(Sigma-Aldrich社製)及び蒸留水を435g:90g:104g:30g(1.75mol:0.75mol:1.688mol:1.688mol)の比で混合して1,000mLの二重ジャケット反応器に入れた後、水酸化ナトリウム水溶液(H2O 1g中のNaOH 0.1g)を触媒として添加し、恒温槽を用いて90℃で8時間の間に機械的撹拌機(Mechanical Stirrer)を用いて200RPMで撹拌した。その後、2-ブタノンに固形分50wt%となるように希釈した後、0.45μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過してシロキサン樹脂を得た。前記樹脂の分子量はGPCを用いて測定し、1,079の数平均分子量、2,016の重量平均分子量、及び1.86の多分散指数(PDI、Mw/Mn)値を有することを確認した。ついで、前記実施例1と同様の方法でコーティング用樹脂組成物を製造し、これをポリイミドフィルムにコートして10μmのコーティングフィルムを製造した。
【0068】
実施例10
KBM-403(Shinetsu社製)、TEMS(Sigma-Aldrich社製)、DMDMS(Sigma-Aldrich社製)及び蒸留水を414g:67g:45g:64g(1.75mol:0.375mol:0.375mol:3.56mol)の比で混合して1,000mLの二重ジャケット反応器に入れた後、水酸化ナトリウム水溶液(H2O 1g中のNaOH 0.1g)を触媒として添加し、恒温槽を用いて90℃で8時間の間に機械的撹拌機(Mechanical Stirrer)を用いて200RPMで撹拌した。その後、2-ブタノンに固形分50wt%となるように希釈した後、0.45μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過してシロキサン樹脂を得た。前記樹脂の分子量はGPCを用いて測定し、3,863の数平均分子量、6,528の重量平均分子量、及び1.69の多分散指数(PDI、Mw/Mn)値を有することを確認した。ついで、前記実施例1と同様の方法でコーティング用樹脂組成物を製造し、これをポリイミドフィルムにコートして10μmのコーティングフィルムを製造した。
【0069】
実施例11
KBM-403(Shinetsu社製)、TEMS(Sigma-Aldrich社製)、DMDMS(Sigma-Aldrich社製)及び蒸留水を414g:89g:30g:65g(1.75mol:0.5mol:0.25mol:3.625mol)の比で混合して1,000mLの二重ジャケット反応器に入れた後、水酸化ナトリウム水溶液(H2O 1g中のNaOH 0.1g)を触媒として添加し、恒温槽を用いて90℃で8時間の間に機械的撹拌機(Mechanical Stirrer)を用いて200RPMで撹拌した。その後、2-ブタノンに固形分50wt%となるように希釈した後、0.45μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過してシロキサン樹脂を得た。前記樹脂の分子量はGPCを用いて測定し、4,174の数平均分子量、7,054の重量平均分子量、及び1.69の多分散指数(PDI、Mw/Mn)値を有することを確認した。ついで、前記実施例1と同様の方法でコーティング用樹脂組成物を製造し、これをポリイミドフィルムにコートして10μmのコーティングフィルムを製造した。
【0070】
実施例12
KBM-403(Shinetsu社製)、TEMS(Sigma-Aldrich社製)、DMDMS(Sigma-Aldrich社製)、エチレングリコール(Sigma-Aldrich社製)及び蒸留水を414g:67g:45g:110g:32g(1.75mol:0.375mol:0.375mol:1.78mol:1.78mol)の比で混合して1,000mLの二重ジャケット反応器に入れた後、水酸化ナトリウム水溶液(H2O 1g中のNaOH 0.1g)を触媒として添加し、恒温槽を用いて90℃で8時間の間に機械的撹拌機(Mechanical Stirrer)を用いて200RPMで撹拌した。その後、2-ブタノンに固形分50wt%となるように希釈した後、0.45μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過してシロキサン樹脂を得た。前記樹脂の分子量はGPCを用いて測定し、1,119の数平均分子量、1,835の重量平均分子量、及び1.64の多分散指数(PDI、Mw/Mn)値を有することを確認した。ついで、前記実施例1と同様の方法でコーティング用樹脂組成物を製造し、これをポリイミドフィルムにコートして10μmのコーティングフィルムを製造した。
【0071】
実施例13
KBM-403(Shinetsu社製)、TEMS(Sigma-Aldrich社製)、DMDMS(Sigma-Aldrich社製)及び蒸留水を414g:12g:82g:61g(1.75mol:0.068mol:0.682mol:3.409mol)の比で混合することを除き、実施例11と同様の方法で実施した。
【0072】
実施例14
KBM-503(Shinetsu社製)、DMDMS(Sigma-Aldrich社製)、エチレングリコール(Sigma-Aldrich社製)及び蒸留水を435g:90g:10.8g:57.6g(1.75mol:0.75mol:0.175mol:3.2mol)の比で混合することを除き、実施例9と同様の方法で実施した。
【0073】
比較例1
KBM-403(Shinetsu社製)及び蒸留水を591g:67.5g(2.50mol:3.75mol)の比で混合して1,000mLの二重ジャケット反応器に入れた後、水酸化ナトリウム水溶液(H2O 1g中のNaOH 0.1g)を触媒として添加し、恒温槽を用いて90℃で8時間の間に機械的撹拌機(Mechanical Stirrer)を用いて200RPMで撹拌した。その後、2-ブタノンとなるように固形分50wt%に希釈した後、0.45μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過してシロキサン樹脂を得た。前記樹脂の分子量はGPCを用いて測定し、5,136の数平均分子量、16,486の重量平均分子量、及び3.21の多分散指数(PDI、Mw/Mn)値を有することを確認した。ついで、前記実施例1と同様の方法でコーティング用樹脂組成物を製造し、これをポリイミドフィルムにコートして10μmのコーティングフィルムを製造した。
【0074】
比較例2
KBM-503(Shinetsu社製)及び蒸留水を621g:67.5g(2.50mol:3.75mol)の比で混合して1,000mLの二重ジャケット反応器に入れた後、水酸化ナトリウム水溶液(H2O 1g中のNaOH 0.1g)を触媒として添加し、恒温槽を用いて90℃で8時間の間に機械的撹拌機(Mechanical Stirrer)を用いて200RPMで撹拌した。その後、2-ブタノンに固形分50wt%となるように希釈した後、0.45μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過してシロキサン樹脂を得た。前記樹脂の分子量はGPCを用いて測定し、4,927の数平均分子量、16,456の重量平均分子量、及び3.34の多分散指数(PDI、Mw/Mn)値を有することを確認した。ついで、前記実施例1と同様の方法でコーティング用樹脂組成物を製造し、これをポリイミドフィルムにコートして10μmのコーティングフィルムを製造した。
【0075】
比較例3
KBM-403(Shinetsu社製)、TEOS(Sigma-Aldrich社製)及び蒸留水を414g:156g:74g(1.75mol:0.75mol:4.125mol)の比で混合して1,000mLの二重ジャケット反応器に入れた後、水酸化ナトリウム水溶液(H2O 1g中のNaOH 0.1g)を触媒として添加し、恒温槽を用いて90℃で8時間の間に機械的撹拌機(Mechanical Stirrer)を用いて200RPMで撹拌した。その後、2-ブタノンに固形分50wt%となるように希釈した後、0.45μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過してシロキサン樹脂を得た。前記樹脂の分子量はGPCを用いて測定し、3,339の数平均分子量、21,370の重量平均分子量、及び6.4の多分散指数(PDI、Mw/Mn)値を有することを確認した。ついで、前記実施例1と同様の方法でコーティング用樹脂組成物を製造し、これをポリイミドフィルムにコートして10μmのコーティングフィルムを製造した。
【0076】
<測定例>
前記製造された実施例及び比較例のコーティングフィルムを対象として、下記の方法で物性評価を実施し、その結果を下記の表1に示した。
【0077】
(1)表面硬度:日本IMOTO社の鉛筆硬度測定器を使い、ASTM D3363に従って、180mm/minの速度で1kgfの荷重で鉛筆硬度を測定した。
【0078】
(2)カール(Curl):試料を100mm×100mmの正方形に切り取って平面に位置させたとき、隅角部が床面から離隔する距離の最大値を測定した。
【0079】
(3)耐スクラッチ性:20cm×5cmに切り取ったフィルムをコーティング面が上方に向かうように接着テープ(3M)で平面に固定させた後、#0000(LIBERON社製)の不織布を巻き付けた棒でもって、1.5kgfの荷重、45RPMの速度で表面を10回往復させたときにスクラッチが発生するか否かを測定し、スクラッチが発生する場合はNGと判断し、スクラッチが発生しない場合は良好と判断した。
【0080】
(4)屈曲性:実施例及び比較例によって製造された最終フィルムを50mm×100mmに切り取って、コーティング層の上面に約100nmの銀を蒸着して銀ナノ薄膜を形成した後、ジュンイルテク(JUNILTECH)社の屈曲測定器(JIRBT-620-2)のラジウスモードを用いて、最終フィルムの屈曲半径を、伝導度を確認しながら20R(R=mm)から0.1Rずつ減らして行き、伝導度が消失した時点を確認し、その時点を屈曲特性(Crack)とした。
【0081】
(5)透過度及びヘイズ:実施例及び比較例によって製造された最終フィルムを50mm×50mmに切り取って、株式会社村上色彩技術研究所(MURAKAMI社)のヘイズメーター(モデル:HM-150)装備を用いて、ASTM D1003に従って透過度及びヘイズを5回測定し、その平均値を確認した。
【0082】
【0083】
前記表1から知られるように、シロキサン樹脂の合成時にT構造のアルコキシシラン又はD構造のアルコキシシランが使われなかった比較例1~3の場合、実施例1~14に比べ、屈曲半径(R)が3.0mmを超えて柔軟性が著しく低下するか、カール特性が非常に低いことが確認された。
【0084】
特に、エポキシ反応基を含むKBM-403を使った比較例1と、同等な水準でKBM-403を使った実施例3とを比較して見ると、D構造のアルコキシシランを含む実施例3が比較例1よりも、硬度だけではなくカールと屈曲性も向上したことが知られた。
【0085】
また、アクリル反応基を含むKBM-503を使った、比較例2と実施例4、5、8、9及び14とを比較して見ると、アルコキシシラン又はジオールを含む実施例4、5、8、9及び14が鉛筆硬度、カール、耐スクラッチ性及び屈曲性の全てに優れた効果を示すことが知られた。
【0086】
また、実施例の中でも、D構造のアルコキシシランを含む実施例2、5、7及び9は、T構造のアルコキシシランを含む実施例1、4、6及び8に比べて屈曲性がもう少し良くなる傾向を示した。
【0087】
また、実施例の中でも、エポキシ反応基を含むKBM-403を使った実施例1、2、6及び7は、アクリル反応基を含むKBM-503を使った実施例4、5、8及び9に比べてカール及び屈曲性がもう少し向上する傾向を示した。
【0088】
また、実施例の中でも、ジオールを含む実施例6~9及び12は、ジオールを含まない実施例よりも、屈曲性がもう少し良くなるという傾向を示した。
【0089】
前記実施例から確認することができるように、本発明のコーティング用樹脂組成物は、シロキサン樹脂の重合の際、シランD構造(2官能のD単位)のジアルコキシシラン(Dialkoxysilane)ないしはシランT構造(3官能のT)単位)のトリアルコキシシラン(Trialkoxysilane)の導入することにより、分子結合の柔軟性を確保し、表面硬度の低下なしに硬化時のカール特性及び柔軟性を極大化することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、光学、透明、フレキシブルディスプレイ産業の核心素材として多く活用される透明高分子フィルムに適用可能である。