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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】油性化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/39 20060101AFI20220106BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20220106BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20220106BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A61K8/39
A61K8/34
A61K8/37
A61Q1/14
A61Q19/00
A61K8/31
A61K8/89
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020508955
(86)(22)【出願日】2018-09-12
(86)【国際出願番号】 JP2018033819
(87)【国際公開番号】W WO2019187215
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2018065159
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018065160
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 真樹
(72)【発明者】
【氏名】森川 愛
【審査官】小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-88883(JP,A)
【文献】特開2016-74637(JP,A)
【文献】特開2013-237646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)及び下記成分(C)を含有し、引火点が190~215℃である油性化粧料。
成分(A):不飽和脂肪酸及び/又は分岐鎖脂肪酸と、ポリグリセリンとのエステルであるポリグリセリン脂肪酸エステルであり、HLB値が8.0~14.0のポリグリセリン脂肪酸エステル
成分(C):炭素数12~24の不飽和の脂肪族アルコール、炭素数12~24の分岐鎖状の脂肪族アルコール、及びテトラオクタン酸ペンタエリスリチルからなる群から選択される少なくとも1種
【請求項2】
さらに下記成分(B)を含有する請求項1に記載の油性化粧料。
成分(B):HLB値が7.0~13.0のポリオキシエチレン鎖を有するノニオン界面活性剤
【請求項3】
さらに下記成分(D)を含有する請求項1又は2に記載の油性化粧料。
成分(D):グリセリン
【請求項4】
さらに下記成分(E)を含有する請求項1~のいずれか1項に記載の油性化粧料。
成分(E):炭化水素油、エステル油、シリコーン油、及び植物油からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、かつ引火点が170℃以上である油性成分
【請求項5】
下記成分(a)、下記成分(b)、及び下記成分(c)を含有する油性液状皮膚洗浄剤組成物を除く、請求項1~4のいずれか1項に記載の油性化粧料。
成分(a)12-ヒドロキシステアリン酸(4量体)ペンタエリスリトール、12-ヒドロキシステアリン酸(6量体)ペンタエリスリトール、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルから選ばれる1種又は2種以上
成分(b)ジオレイン酸ポリグリセリル-10
成分(c)常温で液状の油剤(但し、成分(a)を除く。)
【請求項6】
下記成分(d)及び下記成分(e)を含有する油性クレンジング化粧料を除く、請求項1~5のいずれか1項に記載の油性化粧料。
成分(d)トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン-20グリセリルまたはトリオレイン酸ポリオキシエチレン-20グリセリルを1種以上、
成分(e)モノイソステアリン酸デカグリセリル
を含有する、油性クレンジング化粧料
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性化粧料に関する。本願は、2018年3月29日に日本に出願した特願2018-065159号及び特願2018-065160号の優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
メイク汚れを除去する油性化粧料として、クレンジング効果(いわゆる、メイク汚れの除去効果)に優れる観点から、従来から油性クレンジング化粧料が汎用されている。
【0003】
これまでに、特定の界面活性剤と油剤を配合した油性液状透明組成物(例えば、特許文献1)や、一定量以下の水と特定の組成の界面活性剤を配合した油性液状透明組成物(例えば、特許文献2)によって、濡れた皮膚に使用する場合でも、クレンジング力の低下や、外観および使用感の悪さを生じないようにする試みが開示されている。
【0004】
また、特定のIOB値(Inorganic Organic Balance)の非イオン界面活性剤を特定の比率で組合せ、油性成分と水とともに配合する皮膚洗浄料によって、クレンジング効果と水による洗い流しやすさを両立しようとする試みが開示されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-26791号公報
【文献】特開2004-75566号公報
【文献】特開2008-106060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
化粧料に対する最近の使用者のニーズの一つとして、使用実感が挙げられる。この使用実感とは、使用者が目的の化粧料を肌に適用していると感じる感覚のこと、すなわち一種の納得感を意味する。例えば、化粧料の肌への塗布時に厚み感が感じられることにより、濃厚な剤を用いているという使用実感につながる。また、クレンジングやマッサージに用いる化粧料では、塗布時の厚み感により、良好なマッサージ性が感じられるため、優れた使用実感につながる。さらに、マッサージをするにしたがって、次第に肌になじんで厚みが消えてゆく感触を与えることで、より一層優れた使用実感を与えることができる。なお、本明細書において、「塗布時の厚み感」とは、化粧料を肌に塗布した際に、手指がある程度厚みのある塗布層を感じられる感触を意味する。また、本明細書において「マッサージ性」とは、マッサージ中に手と肌との間に化粧料が存在し続けていると感じられ、手と肌との抵抗が小さく引っ掛かりがないと感じられることをいう。また、本明細書において、「肌になじむ」とは、化粧料を肌に伸展する過程において、指先がある程度厚みのある塗布層を感じる感触が、次第に消えてゆく状態を意味する。
【0007】
この点、従来の油性クレンジング化粧料は、塗布時の厚み感が十分とはいえず、使用実感に優れたものとは言い難いという現状があった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、塗布時に厚み感を与え、優れたマッサージ性を有する油性化粧料を提供することにある。また、本発明の別の目的は、洗い流しやすく、洗い上がり後のさっぱり感に優れる油性化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、成分(A)として、不飽和脂肪酸及び/又は分岐鎖脂肪酸と、ポリグリセリンとのエステルであるポリグリセリン脂肪酸エステルであり、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)値が8.0~14.0のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有し、引火点が190~215℃である油性化粧料によれば、塗布時に厚み感を与え、優れたマッサージ性を有することによって、使用実感に優れる油性化粧料が得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、下記成分(A)を含有し、引火点が190~215℃である油性化粧料を提供する。
成分(A):不飽和脂肪酸及び/又は分岐鎖脂肪酸と、ポリグリセリンとのエステルであるポリグリセリン脂肪酸エステルであり、HLB値が8.0~14.0のポリグリセリン脂肪酸エステル
【0011】
上記油性化粧料は、さらに下記成分(B)を含有することが好ましい。
成分(B):HLB値が7.0~13.0のポリオキシエチレン鎖を有するノニオン界面活性剤
【0012】
上記油性化粧料は、さらに下記成分(C)を含有することが好ましい。
成分(C):炭素数12~24の不飽和の脂肪族アルコール、炭素数12~24の分岐鎖状の脂肪族アルコール、及びテトラオクタン酸ペンタエリスリチルからなる群から選択される少なくとも1種
【0013】
上記油性化粧料は、さらに下記成分(D)を含有することが好ましい。
成分(D):グリセリン
【0014】
上記油性化粧料は、さらに下記成分(E)を含有することが好ましい。
成分(E):炭化水素油、エステル油、シリコーン油、及び植物油からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、かつ引火点が170℃以上である油性成分
【発明の効果】
【0015】
本発明の油性化粧料は、塗布時に厚み感を与えることによって、さらに優れたマッサージ性を有することによって、使用実感に優れる。また、成分(D)を含む場合、洗い上がり後のさっぱり感にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の油性化粧料は、必須成分として、不飽和脂肪酸及び/又は分岐鎖脂肪酸と、ポリグリセリンとのエステルであるポリグリセリン脂肪酸エステルであり、HLB値が8.0~14.0のポリグリセリン脂肪酸エステルを含み、引火点が190~215℃である油性化粧料である。本明細書においては、上記「不飽和脂肪酸及び/又は分岐鎖脂肪酸と、ポリグリセリンとのエステルであるポリグリセリン脂肪酸エステルであり、HLB値が8.0~14.0のポリグリセリン脂肪酸エステル」を「成分(A)」と称する場合がある。
【0017】
本発明の油性化粧料は、用途に応じて、さらに、必須成分である成分(A)以外の成分を含んでいてもよい。本発明の油性化粧料に含まれる上記成分(A)及び他の成分などの各成分は、それぞれ、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0018】
本発明の油性化粧料は、引火点が190~215℃である。引火点を、上記範囲内に制御することにより、塗布時に厚み感を与え、優れたマッサージ性を有し、使用実感に優れたものとすることができる。引火点が190℃未満であると、塗布時に厚み感を十分に付与することができず、マッサージ性も低下する。また、引火点が、215℃を超えると、揮発性が低下することによって、肌に油分が残留しやすくなるため、べたつきや肌にはりついたような感触が生じる。このためマッサージ性も低下し、良好な使用実感が得られない。
【0019】
従来、塗布時の厚み感を正確に評価する手法は確立していなかった。例えば、塗布時の厚み感に影響を及ぼす因子の一つとして、粘度を指標とした場合、一般的な粘度測定法(例えば、B型回転粘度計を用いる方法など)では、手指の触感として感じる厚み感の差が数値に反映されにくいため、正確に測定することは困難であった。本発明者らは、剤の引火点が上昇するに伴い、塗布時の厚み感が向上するという関係に着目して、本発明を完成させた。本発明の油性化粧料は、成分(A)を含有し、引火点を190~215℃という限定的な温度範囲とすることにより、塗布時の厚み感を最適なものに制御し、優れたマッサージ性を有し、優れた使用実感を得ることに成功したのである。
【0020】
上記引火点は、クリーブランド開放式の試験法(JIS K 2265-4)によって測定することができる。
【0021】
以下に、本発明の油性化粧料の必須成分である成分(A)について説明する。
【0022】
[成分(A):不飽和脂肪酸及び/又は分岐鎖脂肪酸と、ポリグリセリンとのエステルであるポリグリセリン脂肪酸エステルであり、HLB値が8.0~14.0のポリグリセリン脂肪酸エステル]
成分(A)は、ポリグリセリン脂肪酸エステルである。成分(A)のポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、不飽和脂肪酸及び/又は分岐鎖脂肪酸である。上記脂肪酸は、不飽和かつ分岐鎖の脂肪酸であってもよい。成分(A)は、親水基としてポリグリセリン鎖を有するノニオン界面活性剤である。本発明の油性化粧料は、成分(A)を含有することにより、肌へ塗布時の厚み感が向上する。また、洗い流し後の肌に保湿感を与え、乾燥によるかさつきを防ぐ効果が得られる。成分(A)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0023】
成分(A)としては、例えば、モノエステル、ジエステル、トリエステルなどが挙げられる。すなわち、成分(A)としては、例えば、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリグリセリンジ脂肪酸エステル、ポリグリセリントリ脂肪酸エステルなどが挙げられる。成分(A)はこれらの混合物であってもよい。
【0024】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する不飽和脂肪酸としては、特に限定されないが、好ましくは炭素数が6~22の不飽和脂肪酸であり、より好ましくは炭素数が8~18の不飽和脂肪酸である。例えば、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸などが挙げられる。上記不飽和脂肪酸の炭素数が上記範囲内であると、塗布時の厚み感の向上に一層寄与するため好ましい。
【0025】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する分岐鎖脂肪酸としては、特に限定されないが、好ましくは炭素数が6~22の分岐鎖脂肪酸であり、より好ましくは炭素数が8~18の分岐鎖脂肪酸である。上記分岐鎖脂肪酸としては、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよく、例えば、イソステアリン酸、イソノナン酸、2-エチルヘキサン酸、2-ヘプチルウンデカン酸、2-オクチルドデカン酸などが挙げられる。上記分岐鎖脂肪酸の炭素数が上記範囲内であると、塗布時の厚み感の向上に一層寄与するため好ましい。なお、上記ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸は、不飽和脂肪酸と分岐鎖脂肪酸の双方に該当するものであってもよい。
【0026】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの平均重合度は、特に制限されないが、好ましくは2~10、より好ましくは5~10である。上記ポリグリセリンの平均重合度が上記範囲内であると、所望のHLB値に調節しやすくなるため好ましい。
【0027】
成分(A)のHLB値は、8.0~14.0であり、好ましくは9.0~13.0であり、より好ましくは10.0~12.5である。HLB値が8.0以上であると、洗い流し時に水とよくなじみ、肌からのすすぎ性がより高まる。また、HLB値が14.0以下であると、安定性に優れる。さらに、耐水性にも優れるため、浴室などでの濡れた肌への使用性が一層高まる。すなわち、成分(A)のHLB値が、8.0~14.0の範囲内であることにより、肌からのすすぎ性と安定性とのバランスに優れる。なお、上記HLB値は、グリフィン(Griffin)法により算出することができる。
【0028】
成分(A)としては、特に限定されないが、例えば、モノオレイン酸テトラグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、モノリノール酸デカグリセリルなどのポリグリセリンモノ脂肪酸エステル;ジイソステアリン酸デカグリセリル、ジオレイン酸デカグリセリルなどのポリグリセリンジ脂肪酸エステル;トリオレイン酸デカグリセリルなどのポリグリセリントリ脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0029】
成分(A)としては、中でも、塗布時の厚み感をより向上させる観点から、ジオレイン酸デカグリセリル(ジオレイン酸ポリグリセリル-10)が好ましい。
【0030】
本発明の油性化粧料中の成分(A)の含有量は、特に限定されないが、本発明の油性化粧料100質量%に対して、2.0~10.0質量%が好ましく、より好ましくは2.5~8.0質量%である。上記含有量が2.0質量%以上であると、肌へ塗布時の厚み感をより向上させることができ、かつ洗い流し後の保湿感の付与により優れる。上記含有量が10.0質量%以下であると、洗い流し後の肌のべたつきを一層抑えることができる。上記成分(A)の含有量は、本発明の油性化粧料中の全ての成分(A)の含有量の合計である。
【0031】
以下に、本発明の油性化粧料の好ましい任意成分について説明する。
【0032】
[成分(B):HLB値が7.0~13.0のポリオキシエチレン鎖を有するノニオン界面活性剤]
成分(B)は、HLB値が7.0~13.0のポリオキシエチレン鎖を有するノニオン界面活性剤である。本発明の油性化粧料は、成分(A)による化粧料の肌に対するなじみの速さを緩和してマッサージ性を一層高める観点、及び洗い上がりの肌のべたつきを一層抑える観点から、成分(B)を配合することが好ましい。なお、成分(B)には、成分(A)に相当するものは含まれないものとする。成分(B)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0033】
成分(B)としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ、ポリオキシエチレン(硬化)ヒマシ油などが挙げられる。
【0034】
成分(B)としては、成分(A)による化粧料の肌に対するなじみの速さを緩和してマッサージ性を一層高める観点、及び洗い上がりの肌のべたつきを一層抑える観点から、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルを用いることが好ましい。
【0035】
上記ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、特に限定されないが、例えば炭素数8~22の脂肪酸が挙げられる。具体的には、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘニン酸などが挙げられる。
【0036】
なお、上記ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、飽和脂肪酸であっても、不飽和脂肪酸であっても、直鎖脂肪酸であっても、分岐鎖脂肪酸であっても、特に限定されないが、成分(A)の肌に対するなじみの速さを緩和してマッサージ性を一層高める観点、及び洗い上がりの肌のべたつきを一層抑える観点から、不飽和脂肪酸及び/または分岐鎖脂肪酸であることが好ましい。
【0037】
上記ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、ジラウリン酸ポリエチレングリコール、モノミリスチン酸ポリエチレングリコール、モノパルミチン酸ポリエチレングリコール、ジパルミチン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、モノイソステアリン酸ポリエチレングリコール、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコールなどが挙げられる。酸化エチレンの付加モル数は、特に限定されないが、HLB値を調節する観点から、2~60であることが好ましく、より好ましくは、5~50である。
【0038】
上記ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレン(カプリル/カプリン酸)グリセリル、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリン、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノミリスチン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ジイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルなどが挙げられる。酸化エチレンの付加モル数は、特に限定されないが、HLB値を調節する観点から、2~60であることが好ましく、より好ましくは、5~50である。
【0039】
成分(B)のHLB値は、7.0~13.0であり、好ましくは8.0~12.0である。HLB値が7.0以上であると、洗い流し時に水とよくなじみ、肌からのすすぎ性がより高まる。また、HLB値が13.0以下であると、安定性により優れる。さらに、耐水性にも優れるため、浴室などでの濡れた肌への使用性が一層高まる。すなわち、成分(B)のHLB値が、上記範囲内であることにより、肌からのすすぎ性と安定性とのバランスに優れる。なお、上記HLB値は、グリフィン(Griffin)法により算出することができる。
【0040】
本発明の油性化粧料中の成分(B)の含有量は、特に限定されないが、本発明の油性化粧料100質量%に対して、1.0~15.0質量%が好ましく、より好ましくは3.0~12.0質量%である。上記含有量が1.0質量%以上であると、成分(A)による化粧料のなじみのはやさを緩和することによりマッサージ性がより向上し、また、洗い上がりの肌のべたつきを一層抑えることができる。上記含有量が15.0質量%以下であると、肌のきしみ感を一層抑制することができる。なお本明細書において、「きしみ感」とは、指を肌上で肌に対して水平方向に接触移動させたときに、引っ掛かりを感じるような感触を意味する。上記成分(B)の含有量は、本発明の油性化粧料中の全ての成分(B)の含有量の合計である。
【0041】
[成分(C):炭素数12~24の不飽和の脂肪族アルコール、炭素数12~24の分岐鎖状の脂肪族アルコール及びテトラオクタン酸ペンタエリスリチルからなる群から選択される少なくとも1種]
成分(C)は、炭素数12~24の不飽和の脂肪族アルコール、炭素数12~24の分岐鎖状の脂肪族アルコール及びテトラオクタン酸ペンタエリスリチルからなる群から選択される少なくとも1種である。本発明の油性化粧料は、成分(A)による化粧料の肌に対するなじみの速さを緩和し、マッサージ性を一層高める観点から、成分(C)を配合することが好ましい。成分(C)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0042】
また、本発明の油性化粧料は、成分(C)と、成分(B)との組み合わせにより、成分(A)による化粧料の肌に対するなじみの速さを緩和し、マッサージ性をより一層高めることができる。また組み合わせによって、成分(B)に由来する肌のきしみ感と、成分(C)に由来する洗い上がり後の肌のべたつきが、緩和される効果が得られる。成分(B)のみでなじみの速さを十分に緩和しようとすると肌のきしみ感が生じやすくなり、成分(C)のみでなじみの速さを十分に緩和しようとすると、洗い上がり後の肌のべたつきが生じやすくなる。
【0043】
上記炭素数12~24の不飽和の脂肪族アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、パルミトオレイルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、イコセニルアルコール、エルシルアルコールなどの不飽和高級アルコールなどが挙げられる。
【0044】
上記炭素数12~24の分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノールなどの分岐鎖高級アルコールなどが挙げられる。
【0045】
上記テトラオクタン酸ペンタエリスリチルは、分子内に極性構造を有する液状のエステル油であり、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチルとも称される。
【0046】
成分(C)としては、中でも、炭素数12~24の分岐鎖状の脂肪族アルコールが好ましく、特に、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノールが好ましい。
【0047】
本発明の油性化粧料中の成分(C)の含有量は、特に限定されないが、本発明の油性化粧料100質量%に対して、0.2~5.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5~4.5質量%である。上記含有量が0.2質量%以上であると、成分(A)による化粧料の肌に対するなじみの速さを緩和し、マッサージ性を一層高めることができる。上記含有量が5.0質量%以下であると、洗い上がりの肌のべたつきを一層抑えることができる。上記成分(C)の含有量は、本発明の油性化粧料中の全ての成分(C)の含有量の合計である。
【0048】
[成分(D):グリセリン]
成分(D)はグリセリンである。本発明の油性化粧料は、成分(D)を配合することにより、洗い流し後に、さっぱりとした使用感が得られるため好ましい。
【0049】
本発明の油性化粧料中の成分(D)の含有量は、特に限定されないが、本発明の油性化粧料100質量%に対して、1.0~5.0質量%が好ましく、より好ましくは1.5~4.5質量%である。上記含有量が1.0質量%以上であると、洗い流し後に一層さっぱりとした使用感が得られる。上記含有量が5.0質量%以下であると、低温での保存安定性にも一層優れる。
【0050】
[成分(E):炭化水素油、エステル油、シリコーン油、及び植物油からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、かつ引火点が170℃以上である油性成分]
本発明の油性化粧料は、油性化粧料の基材(ベース)となる成分として、成分(E)を配合することが好ましい。本発明の油性化粧料がクレンジング化粧料の場合、成分(E)はクレンジング効果を付与する成分として機能する。成分(E)は、引火点の制御にも関係する。なお、成分(E)のエステル油には、成分(C)のテトラオクタン酸ペンタエリスリチルは含まれないものとする。成分(E)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0051】
成分(E)は、引火点が170℃以上であり、好ましくは180℃以上である。成分(E)の引火点が170℃以上であると、本発明の油性化粧料の引火点を190~215℃に制御しやすくなり、本発明の油性化粧料の塗布時の厚み感の向上に一層寄与しやすくなる。なお引火点は、クリーブランド開放式の試験法(JIS K 2265-4)によって測定することができる。
【0052】
上記炭化水素油の具体例としては、特に限定されないが、例えば、α-オレフィンオリゴマー、合成スクワラン、植物性スクワラン、スクワラン、セレシン、固形パラフィン、ポリエチレン末、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、流動イソパラフィン、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ワセリンなどが挙げられる。
【0053】
上記エステル油の具体例としては、特に限定されないが、例えば、2-エチルヘキサン酸セチル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、イソステアリン酸プロピレングリコールなどが挙げられる。
【0054】
上記シリコーン油の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルポリシロキサンなどが挙げられる。
【0055】
上記植物油とは、植物由来の油分である。上記植物油の具体例としては、特に限定されないが、例えば、コメ胚芽油、ヒマワリ油、マカデミアナッツ油、ユーカリ油、ヤシ油、アボカド油、サフラワー油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ククイナッツ油、シアバター、アーモンド油、ヒマワリ油、ローズヒップ油、オリーブスクワラン、シュガースクワラン、カメリアオイル、キウイフルーツシード油、ツバキ油、杏仁油、ゴマ油、大豆油、ホホバ油、ヒマシ油、ヘーゼルナッツ油、メドホーム油、ハッカ油、カロットオイル、アルガンオイルなどが挙げられる。
【0056】
本発明の油性化粧料中の成分(E)の含有量は、特に限定されないが、本発明の油性化粧料100質量%に対して、50.0~90.0質量%が好ましく、より好ましくは55.0~85.0質量%である。上記含有量が50.0質量%以上であると、一層良好なクレンジング効果を発揮させることができる。上記含有量が90.0質量%以下であると、成分(A)及び他の成分の配合量を確保できるため、塗布時の厚み感を付与し、マッサージ性をより向上させることができる。さらに、洗い上がり後の油膜感をより抑えることができる。上記成分(E)の含有量は、本発明の油性化粧料中の全ての成分(E)の含有量の合計である。
【0057】
なお、油性化粧料の引火点を制御し、塗布時の厚み感を付与させる観点から、本発明の油性化粧料には、引火点が170℃未満の油性成分は含まない、または、少量しか含まないことが好ましい。上記の油性成分は、塗布時の厚み感を低下させる方向に作用するためである。上記引火点が170℃未満の油性成分の含有量は、特に限定されないが、本発明の油性化粧料100質量%中、15.0質量%以下(0~15.0質量%)が好ましく、より好ましくは12.0質量%以下(0~12.0質量%)、さらに好ましくは5.0質量%以下(0~5.0質量%)である。
【0058】
[その他成分]
本発明の油性化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記した成分の他に、通常化粧料に用いられる成分を配合することができる。他の成分としては、特に限定されず、例えば、成分(A)及び成分(B)以外のノニオン界面活性剤;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジグリセリン、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオールなどの多価アルコール;エタノールなどの低級アルコール;トリメチルグリシン、グルコース、ソルビトール、マルチトールなどの保湿剤;メントール、メンチルグリセリルエーテルなどの清涼剤;パラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノールなどの防腐・殺菌剤;香料;粉体;色材などが挙げられる。上記その他成分は、適宜、その用途、目的に応じて配合することができる。
【0059】
なお、本発明の油性化粧料は、油性の化粧料とする観点から、水を含まないか、又は水を含みかつ油性化粧料100質量%中の水の含有量が5.0質量%以下であることが好ましい。すなわち、本発明の油性化粧料中の水の含有量は0~5.0質量%であることが好ましく、0~3.0質量%であることがより好ましい。
【0060】
<本発明の油性化粧料>
本発明の油性化粧料の製造方法は、油性の化粧料を調製することができる製造方法であれば特に限定されないが、例えば、上記各構成成分を混合し、公知の方法、例えば、ディスパーミキサー、ホモミキサー、ディスパーミルなどを用いて攪拌する方法が挙げられる。また、本発明の油性化粧料は、ディスペンサー容器、ローションボトルなどの容易に取り出すことが可能な容器に充填されることが好ましい。
【0061】
本発明の油性化粧料は、例えば、化粧品、医薬部外品、医薬品、雑貨などとして用いられる。具体的には、特に限定されないが、クレンジング化粧料、マッサージ化粧料、ボディオイルなどに好ましく用いられる。
【0062】
本発明の油性化粧料を適用する部位としては、特に限定されず、例えば、顔(額、目元、目じり、頬、口元など)、身体(腕、肘、手の甲、指先、足、膝、かかと、首、脇、背中など)などが挙げられる。中でも、特に好ましくは顔である。本発明の油性化粧料は、顔用の油性化粧料(特に、クレンジング化粧料)であることが好ましい。
【0063】
本発明の油性化粧料は、成分(A)を含み、引火点が190~215℃であるため、塗布時に厚み感を与え、優れたマッサージ性を有し、使用実感に優れる。成分(A)が、塗布時の厚み感を向上させるメカニズムは明らかではないものの、分岐鎖や不飽和の脂肪酸残基と、ポリグリセリンがエステル結合した、分子量が比較的大きいバルキーな構造を有するためと推測される。つまり、油性成分が成分(A)の上記構造内に、保持されることによって、塗布時の厚み感を向上させる。そして、塗布時には厚み感を与え、良好なマッサージ性を有しながらも、マッサージをするにしたがって、次第に肌になじんで厚みが消えてゆく感覚を与えることができるため、使用実感に優れた油性化粧料とすることができる。逆に、ポリグリセリンエステルの脂肪酸残基が直鎖や飽和した構造であると、分子量が比較的小さく、バルキーな構造とならないため、油性成分を構造内に保持することができず、塗布時の厚み感を効果的に向上させることができない。
本発明においては、上記成分(A)に加え、引火点を190℃~215℃の範囲に制御することにより、塗布時の厚み感を優れたものとすることに成功した。引火点を指標することにより、油性化粧料中の構成成分の分子量がある程度高くなり、これが厚み感の付与に寄与するものと推定される。
【実施例
【0064】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、表に記載の配合量は、各成分の配合量(すなわち、各原料中の有効成分の配合量)であり、特記しない限り「質量%」で表す。また、表中の配合量における「-」は、その成分を配合していないことを示す。なお、実施例5~7は参考例として記載する。
【0065】
実施例1~24、比較例1~6
(各試料の調製)
表1~表2に記した組成に従い、実施例1~24及び比較例1~6の油性化粧料を常法により調製し、下記評価試験に供した。結果をそれぞれ表1~表2に併記する。
【0066】
表1~2に記載の各成分の詳細は次のとおりである。
<成分(A)>
ジオレイン酸ポリグリセリル-10:商品名「サンソフトQ-172Y-C」、太陽化学株式会社製、ジオレイン酸デカグリセリル、HLB:11.9
ジステアリン酸ポリグリセリル-10:商品名「サンソフトQ-182S」、太陽化学株式会社製、ジステアリン酸デカグリセリル、HLB:11
ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10:商品名「NIKKOL DECAGLYN 2-ISV」、日光ケミカルズ株式会社製、ジイソステアリン酸デカグリセリル、HLB:10
ジミリスチン酸ポリグリセリル-10:商品名「サンソフトQ-142Y-C」、太陽化学株式会社製、ジミリスチン酸デカグリセリル、HLB:12.3
<成分(B)>
イソステアリン酸PEG-8グリセリル:商品名「ブラウノン RGL-8MISE(酸化エチレン付加モル数:8)」、青木油脂工業株式会社製、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、HLB:12
トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル:商品名「NIKKOL TGI-20(酸化エチレン付加モル数:20)」、日光ケミカルズ株式会社製、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、HLB:8
ジイソステアリン酸PEG-20グリセリル:商品名「GWIS-220(酸化エチレン付加モル数:20)」、日本エマルジョン株式会社製、ジイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、HLB:10
<成分(C)>
オクチルドデカノール:商品名「カルコール200GD」、花王株式会社製
デシルテトラデカノール:商品名「リソノールSP24」、高級アルコール工業株式会社製
オレイルアルコール:商品名「カルコール90BHR」、花王株式会社製
テトラオクタン酸ペンタエリスリチル:商品名「サラコス5408」、日清オイリオグループ株式会社製
<成分(D)>
グリセリン:商品名「化粧用濃グリセリン」、阪本薬品工業株式会社製
<成分(E)>
コメ胚芽油:商品名「PRO-15」、築野食品工業株式会社製、引火点:306℃
ヒマワリ油:商品名「ハイオレイックひまわり油」、OLEOMONTERREAL S.L.製、引火点:330℃
流動パラフィン(A):商品名「NO380-SP」、三光工業株式会社製、引火点:250℃
流動パラフィン(B):商品名「KAYDOL」、Sonneborn LLC製、引火点:221℃
流動パラフィン(C):商品名「CARNATION」、Sonneborn LLC製、引火点185℃
パルミチン酸エチルヘキシル:商品名「コーヨー POC」、交洋ファインケミカル株式会社製、引火点:223℃
<その他成分>
ミリスチン酸ポリグリセリル-10:商品名「サンソフトQ-14S」、太陽化学株式会社製、ミリスチン酸デカグリセリル、HLB:14.5
ラウリン酸ポリグリセリル-10:商品名「サンソフトQ-12S」、太陽化学株式会社製、ラウリン酸デカグリセリル、HLB:15.5
ミリスチン酸イソプロピル:商品名「エキセパールIPM」、花王株式会社製、引火点:164℃
イソノナン酸イソノニル:商品名「サラコス99」、日清オイリオグループ株式会社製、引火点:136℃
【0067】
(試験1:厚み感、なじみの速さ)
化粧を施していない女性官能評価パネル4名が評価を行った。実施例及び比較例で得られた各試料1mgを頬に塗布して塗りこみ、塗布時の「厚み感」及び「なじみの速さ」について、下記の評価基準に従って官能評価した。
【0068】
<厚み感の評価基準>
◎(良好):手と肌の間に、ある程度の厚みの化粧料の層が明らかに感じられる。
○(使用可能):手に抵抗感(引っ掛かり)が感じられず、手と肌の間に化粧料の層が感じられる。
×(不良):手に抵抗感(引っ掛かり)が感じられる。
【0069】
<なじみの速さの評価基準>
◎(良好):なじみがある程度おそく、十分に長くマッサージを行うことができる。
○(使用可能):マッサージを行うのに許容範囲のなじみの速さである。
×(不良):マッサージは可能であるものの、なじみが速く、十分にマッサージするには物足りない。
【0070】
(試験2:洗い上がり後の、べたつきのなさ、きしみ感のなさ、しっとり感(保湿感))
上記試験1の後、約30℃の温水で試料を十分に洗い流し、タオルドライした直後に、頬を指で触り、「べたつきのなさ」、「きしみ感のなさ」、「しっとり感(保湿感)」、について下記の評価基準に従って、官能評価した。
【0071】
<べたつきのなさの評価基準>
◎(良好):頬に指が張り付く感触がなく、べたつきを感じない。
○(使用可能):頬に指が張り付く感触があり、わずかにべたつきを感じるものの、実用上許容できる。
×(不良):頬に指が張り付く感触が強く、明らかにべたつきを感じ、実用上不快である。
【0072】
<きしみ感のなさの評価基準>
◎(良好):肌に沿って指を移動させる際に抵抗(ひっかかり)を感じない。
○(使用可能):肌に沿って指を移動させる際にわずかに抵抗(ひっかかり)を感じるものの、実用上許容できる。
×(不良):肌に沿って指を移動させる際に明らかに抵抗(ひっかかり)を感じ、実用上不快である。
【0073】
<しっとり感(保湿感)の評価基準>
◎(良好):肌が水分を含んでいる感触を明らかに感じる。
○(使用可能):肌が水分を含んでいる感触がわずかにあり、乾燥した感触(かさつき)を感じない。
×(不良):肌が乾燥した感触(かさつき)を感じる。
【0074】
(試験3:保存安定性)
各実施例及び比較例で得られた油性化粧料を、容積60mLの透明ガラス容器に充填し、5℃に保った恒温槽内で保管し、保管後の上記透明ガラス容器内の油性化粧料の外観・性状を目視観察した。その結果、比較例2及び3は、4日後に分離が認められ、保存安定性が不良であった。一方、それ以外の油性化粧料は、1ヶ月保管後にも外観・性状の大きな変化は認められず、優れた保存安定性を示した。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
表1及び2の結果より、実施例の油性化粧料は、塗布時の厚み感、なじみの速さ、べたつきのなさ、きしみ感のなさ、しっとり感(保湿感)、及び保存安定性の全てにおいて、使用可能又は良好であった。つまり、実施例の油性化粧料は、塗布時の厚み感に優れ、マッサージを行うのに適したなじみの速さとべたつきのなさを有し、使用実感に優れることが分かる。一方、比較例1は、成分(A)を欠く処方であり、塗布時の厚み感、きしみ感のなさ、しっとり感(保湿感)が不十分(不良)であった。比較例2及び3は、成分(A)のHLB値が上限値を上回る処方であるところ、試料が分離し、保存安定性が不良であった。このため、他の評価項目は、評価不能と判断した(なお表中、「※」で示す)。比較例4及び5は、剤の引火点が190℃未満の処方であるところ、塗布時の厚み感が不十分(不良)であった。比較例6は、剤の引火点が215℃を上回る処方であるところ、頬に指が張り付く感触が強く、べたつきのなさが不良であった。このため、マッサージ性に劣り、良好な使用実感が得られていないことが分かる。これらのことから、本発明の油性化粧料は、特定範囲のHLB値を有する成分(A)を必須成分として配合し、かつ剤の引火点を極めて限定された範囲に制御することで、塗布時の厚み感を付与し、さらに優れたマッサージ性を有することによって、使用実感に優れる油性化粧料としていることが理解できる。
【0078】
さらに、以下に本発明の油性化粧料の処方例を示す。なお、配合量は「質量%」を表す。
(処方例)
ジオレイン酸ポリグリセリル-10(HLB:11.9) 3.5
イソステアリン酸PEG-8グリセリル(HLB:12) 4.4
トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル(HLB:8)5.6
オクチルドデカノール 1.0
グリセリン 3.0
1,2-オクタンジオール 0.2
フェノキシエタノール 0.3
メチルパラベン 0.2
L-メントール 0.2
コメヌカ油(引火点:314℃) 30.0
オリーブ油(引火点:310℃) 20.0
パルミチン酸イソプロピル(引火点:223℃) 11.6
ミリスチン酸イソプロピル(引火点:164℃) 5.0
精製水 1.0
流動パラフィン(引火点:221℃) 残 部
合計 100.0
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の油性化粧料は、クレンジング化粧料、マッサージ化粧料、ボディオイルなどに好ましく用いられる。