(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】内視鏡および内視鏡の挿入部
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20220106BHJP
A61B 1/07 20060101ALI20220106BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20220106BHJP
G02B 23/26 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A61B1/00 715
A61B1/00 731
A61B1/07 733
G02B23/24 A
G02B23/26 C
(21)【出願番号】P 2020521695
(86)(22)【出願日】2019-02-20
(86)【国際出願番号】 JP2019006315
(87)【国際公開番号】W WO2019230071
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2020-10-09
(31)【優先権主張番号】P 2018105110
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊吉 栄太
(72)【発明者】
【氏名】今野 芳美
(72)【発明者】
【氏名】木下 博章
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-110420(JP,A)
【文献】特開平05-142485(JP,A)
【文献】特開平09-234183(JP,A)
【文献】特開2006-239185(JP,A)
【文献】特開2008-200158(JP,A)
【文献】特開2013-013712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00
A61B 1/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部の先端部に配設され、外表面に貫通孔の開口を有する枠体と、
前記貫通孔に挿入され、先端面が前記外表面から突出して配置される光学部材と、
前記貫通孔の壁面と前記光学部材の側面との間に配設される第1の樹脂と、
前記第1の樹脂の表面、および、前記枠体の前記開口の周囲、および、前記光学部材の前記先端面の外周部の全周に配設される第2の樹脂と、を具備し、
前記第2の樹脂はゴムおよび遮光粒子を含み、前記第1の樹脂よりも弾性率が小さいことを特徴とする内視鏡。
【請求項2】
前記光学部材は、前記先端面の前記外周部に切り欠きを有し、前記切り欠きに前記第2の樹脂が配設されていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記第2の樹脂の弾性率が、前記第1の樹脂の弾性率の10分の1以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記第1の樹脂は、弾性率が、1GPa以上であり、
前記第2の樹脂は、弾性率が、0.1GPa以下であることを特徴とする請求項3に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記第1の樹脂は、エポキシ樹脂であり、
前記第2の樹脂は、ゴムであることを特徴とする請求項4に記載の内視鏡。
【請求項6】
前記第2の樹脂は、フッ素ゴムであることを特徴とする請求項5に記載の内視鏡。
【請求項7】
前記第1の樹脂と前記貫通孔の前記壁面との間、および、前記第1の樹脂と前記光学部材の前記側面との間の、少なくともいずれかに、隙間が形成され、
前記第2の樹脂は、前記隙間にも配設されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の内視鏡。
【請求項8】
前記枠体の前記外表面に対する、前記第2の樹脂の接触角度が、45度以下であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の内視鏡。
【請求項9】
前記光学部材は、照明光学系および撮像光学系の少なくともいずれかの先端部材であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の内視鏡。
【請求項10】
前記光学部材の前記先端面が、前記枠体の前記外表面から、10μm以上150μm以下、突出しており、
前記第2の樹脂
の凸部が、前記先端面から、1μm以上100μm以下、突出していることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の内視鏡。
【請求項11】
先端部に配設され、外表面に貫通孔の開口を有する枠体と、
前記貫通孔に挿入され、先端面が前記外表面から突出して配置される光学部材と、
前記貫通孔の壁面と前記光学部材の側面との間に配設される第1の樹脂と、
前記第1の樹脂の表面、および、前記枠体の前記開口の周囲、および、前記光学部材の前記先端面の外周部の全周に配設される第2の樹脂と、を具備し、
前記第2の樹脂はゴムおよび遮光粒子を含み、前記第1の樹脂よりも弾性率が小さいことを特徴とする内視鏡の挿入部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿入部の先端部に配設されている枠体に、光学部材が樹脂によって固定されている内視鏡、および、先端部に配設されている枠体に光学部材が樹脂によって固定されている内視鏡の挿入部に関する
【背景技術】
【0002】
外部から観察できない被検体の体内に細長い挿入部を挿入して、先端部に配設された撮像部により体内を観察したり、先端部から突出させた処置具を用いて処置をしたりする内視鏡が広く用いられている。使用後の内視鏡は、患者間感染を防止するため、クリーニング、消毒、および殺菌を含むリプロセス処理が行われる。
【0003】
日本国特開2013-13712号公報には、照明光学系のレンズ133および撮像光学系のカバーガラス135、すなわち光学部材を、挿入部の先端131に接着剤137によって固定し、さらに、光学部材の外周縁に、フレア防止用として環状の凸部139が設けられた内視鏡が開示されている。接着剤137には、エポキシ接着材またはシリコ-ン接着材が用いられ、凸部139には、黒色化したエポキシ接着材が用いられている。
【0004】
しかし、上記内視鏡では、クリーニングを行うときの、ブラシ洗浄またはガーゼによる拭き取りによって、凸部139が削れて不要光のカットが不十分となったり、削れた部位から水分が光学系に進入したりして光学特性が劣化するおそれがある。
【0005】
また、光学部材をレンズ枠から突出するように配置すると、両者の間には段差が生じる。段差を、またぐように硬化性樹脂を配設すると、樹脂のレンズ枠を覆っている部分は、膜厚が厚くなるため、硬化時の収縮が大きく、剥離が生じやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施形態は、信頼性が高く、光学特性の良い内視鏡、および、信頼性が高く、光学特性の良い内視鏡の挿入部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の内視鏡は、挿入部の先端部に配設され、外表面に貫通孔の開口を有する枠体と、前記貫通孔に挿入され、先端面が前記外表面から突出して配置される光学部材と、前記貫通孔の壁面と前記光学部材の側面との間に配設される第1の樹脂と、前記第1の樹脂の表面、および、前記枠体の前記開口の周囲、および、前記光学部材の前記先端面の外周部の全周に配設される第2の樹脂と、を具備し、前記第2の樹脂はゴムおよび遮光粒子を含み、前記第1の樹脂よりも弾性率が小さい。
実施形態の内視鏡の挿入部は、先端部に配設され、外表面に貫通孔の開口を有する枠体と、前記貫通孔に挿入され、先端面が前記外表面から突出して配置される光学部材と、前記貫通孔の壁面と前記光学部材の側面との間に配設される第1の樹脂と、前記第1の樹脂の表面、および、前記枠体の前記開口の周囲、および、前記光学部材の前記先端面の外周部の全周に配設される第2の樹脂と、を具備し、前記第2の樹脂はゴムおよび遮光粒子を含み、前記第1の樹脂よりも弾性率が小さい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、信頼性が高く、光学特性の良い内視鏡、および、信頼性が高く、光学特性の良い内視鏡の挿入部を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態の内視鏡を含む内視鏡システムの構成図である。
【
図2】第1実施形態の内視鏡の照射光学ユニットの斜視分解図である。
【
図3】第1実施形態の内視鏡の照射光学ユニットの最前面の平面図である。
【
図4】第1実施形態の内視鏡の照射光学ユニットの
図3のIV-IV線に沿った断面図である。
【
図5】第2実施形態の内視鏡の照射光学ユニットの断面図である。
【
図6】第3実施形態の内視鏡の照射光学ユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
図1に示すように、本実施形態の内視鏡10は、画像信号を処理するプロセッサ2と、モニタ3と、使用条件等を設定するための入力部4と、光源装置5と、共に内視鏡システム1を構成している。
【0012】
なお、以下の説明において、各実施形態に基づく図面は、模式的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、夫々の部分の厚みの比率および相対角度などは現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また一部の構成要素の図示および符号の付与を省略する場合がある。また、被写体の方向を、前方向という。
【0013】
内視鏡10は、体内に挿入される細長い軟性の挿入部11と、挿入部11から操作部(不図示)を経由することによって延設されたユニバーサルコード17と、を具備する、いわゆる軟性鏡である。ライトガイド12が挿通されている挿入部11は、先端部11Aに撮像部13を有する。撮像部13は、撮像光学ユニット30(以下「光学ユニット30」という)と、CCD等の撮像素子13Aと、を有する。ユニバーサルコード17は基端部側に、光源装置5と接続されるライトガイドコネクタ15とプロセッサ2と接続される電子コネクタ16とを有する。
【0014】
光源装置5が発生した光は、ライトガイドコネクタ15およびライトガイド12を経由することによって先端部11Aまで導光され、照射光学ユニット20(以下、「光学ユニット20」という。)によって照射光として被写体に向けて出射される。照明光は被写体表面において反射し、その反射光が、光学ユニット30によって撮像素子13Aに集光されて被写体画像として撮像される。画像はプロセッサ2によって信号処理され、モニタ3の画面に表示される。撮像素子13Aに撮像信号を1次処理する電子部品が配設されている配線板が接合されていてもよい。
【0015】
先端部11Aの最前面には、光学ユニット20の光学部材であるレンズ21と、光学ユニット30の光学部材であるレンズ31と、が配設されている。
【0016】
光学ユニット20は、レンズ21と、レンズ21を保持する枠体であるレンズ枠24とを有する。一方、光学ユニット30は、レンズ31、31A、31Bと、レンズ31等を保持する枠体であるレンズ枠34とを有する。
【0017】
なお、複数の光学部材の種類、厚さ、数および積層順序は適宜、変更可能である。また、内視鏡10では、光学ユニット20のレンズ枠24と光学ユニット30のレンズ枠34とは別であるが、レンズ21とレンズ31とが共通のレンズ枠に固定されていてもよい。
【0018】
レンズ21等は、ガラス、石英、サファイア、安定化ジルコニア(YSZ)、またはイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)などの透明な光学部材である。
【0019】
レンズ21は照明光を広範囲に照射するために、そしてレンズ31は広視野を得るために、いずれも負のパワーを有する平凹レンズである。しかし、レンズ21、31は光学ユニット20、30の構成によっては平凸レンズでもよい。但し、光学ユニット20、30の最前面を構成するレンズ21、31の前面は、付着防止および衝撃による破損防止のため、平面であることが好ましい。
【0020】
また、平行平板のカバーガラスが光学ユニットの最前部に配設されている場合には、先端部11Aの最前面に露出している光学部材は、レンズではなく、平板のカバーガラスである。
【0021】
後述するように、例えば、光学ユニット20のレンズ21は、第1の樹脂40によってレンズ枠24に固定されており、第1の樹脂40の表面は、リング状の凸部を構成している第2の樹脂50に覆われている。
【0022】
<光学ユニットの構成>
次に、光学ユニットの構成について、照射光学ユニット20を例に説明する。
【0023】
図2から
図4に示すように、挿入部11の先端部11Aに配設されている光学ユニット20のレンズ枠24は、外表面24SAに貫通孔H24の開口を有する。外表面24SAは、被写体に最も近接している前面であり、外部に露出している。レンズ枠24は、金属、例えばステンレス鋼からなる。レンズ21は、レンズ枠24の貫通孔H24に挿入され、先端面21SAがレンズ枠24の外表面24SAから突出して配置されている。
【0024】
なお、先端面21SAの外表面24SAからの突出量Dは、10μm以上150μm以下が好ましい。突出量Dが、前記範囲未満または突出していない場合には、先端面21SAの外周の段差に異物が付着しやすく、また、異物を除去するのが容易ではない。突出量Dが、前記範囲超の場合には、後述する第2の樹脂50を配設すること、および、第2の樹脂50の配設によって段差を解消することが容易ではなくなる。
【0025】
貫通孔H24の壁面24SSとレンズ21の側面21SSとの間には第1の樹脂40が配設されている。第1の樹脂40は、レンズ21をレンズ枠24に固定している接着剤である。
【0026】
そして、光学ユニット20は、第1の樹脂40の表面40SA、すなわち、壁面24SSまたは側面21SSと接していない外表面を覆っている、リング状の凸部を構成している第2の樹脂50を具備する。第2の樹脂50は、第1の樹脂40の表面40SAを完全に覆うために、レンズ枠24の開口の周囲、および、レンズ21の先端面21SAの外周部(外周縁)の全周にも配設されている。
【0027】
内視鏡10は、先端面21SAが外表面24SAから突出しているが、段差が第2の樹脂50によって覆われているため、光学特性が良く、かつ、洗浄等が容易である。
【0028】
内視鏡10では、第1の樹脂40は、熱硬化性エポキシ樹脂(弾性率:E=5GPa)であり、第2の樹脂50は、カーボンブラック粒子を5重量%含んでいる熱硬化性フッ素ゴム(弾性率:E=0.012GPa)である。
【0029】
すなわち、第2の樹脂50は、第1の樹脂40よりも弾性率Eが小さい。弾性率Eは、所定の測定形状の樹脂を引っ張り試験することにより測定したヤング率である。具体的には、弾性率Eは、ASTM D882規格に準拠した方法により測定した引張弾性率である。
【0030】
第1の樹脂40は、レンズ21をレンズ枠24に強固に固定するために、弾性率E40が、例えば、1GPa以上であることが好ましく、2GPa以上が特に好ましい。弾性率E40が前記範囲未満では、外部から衝撃を受けた場合にレンズ21が、レンズ枠24の貫通孔H24の中において移動することによって、光学特性が劣化するおそれがある。弾性率E40の上限は、特に限定されないが、例えば10GPaである。
【0031】
第1の樹脂40としては、熱硬化性樹脂が好ましく、例えば、エポキシ樹脂(E=5GPa)、ポリスチレン樹脂(E=3GPa)、または、メラニン樹脂(E=9GPa)等である。
【0032】
一方、熱硬化性の第2の樹脂50は、第1の樹脂40と異なり、レンズ21の位置決めには寄与していない。このため、第1の樹脂40よりも弾性率が小さくても問題は無い。
【0033】
第2の樹脂50の弾性率E50は、例えば、0.1GPa以下であることが好ましく、0.05GPa以下であることが特に好ましい。弾性率E50の下限は、特に限定されないが、例えば0.001GPaである。
【0034】
弾性率E50が、前記範囲以下であれば、第2の樹脂50は、衝撃を受けても破損しにくい。さらに、弾性率E50が、前記範囲以下であれば、第2の樹脂50は表面に何らかの変質層が生じても、変質層によって生じる応力は、第2の樹脂50の内部において緩和されるため、接着面が剥離するおそれがない。
【0035】
さらに、第2の樹脂50は、弾性率E50が、第1の樹脂40の弾性率E40の10分の1以下であることが好ましい。弾性率E50が弾性率E40の10分の1以下であれば、第1の樹脂40によるレンズ21の固定が担保され、第2の樹脂50の破損が防止できる。
【0036】
第2の樹脂50としては、低弾性の樹脂、例えば、第1の樹脂40としてとしてメラニン樹脂を用いた場合には、弾性率がメラニン樹脂の10分の1以下のシリコーン樹脂(E=0.06GPa)でも良い。しかし、第1の樹脂40としてエポキシ樹脂を用いた場合には、さらに低弾性の樹脂であるゴム(E≦0.05GPa)を用いる。
【0037】
第1の樹脂40としてエポキシ樹脂を用いた場合には、具体的には、フッ素ゴム、シリコ-ンゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム、またはエチレンプロピレンゴム等を第2の樹脂50として用いることが好ましい。なお、本発明における「ゴム」には、弾性率E50が0.05GPa以下であれば、ゴムを主成分とするゴムを含む樹脂、および、ゴム変性した樹脂も含まれる。
【0038】
さらに、第2の樹脂50としては、第1の樹脂40よりも、耐薬品性に優れたゴムが好ましいことから、フッ素ゴム(E=0.012GPa)が特に好ましい。フッ素ゴムとしては、(CF2)を基本骨格とするフッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン-プロピレンゴム、および、四フッ化エチレン-パーフルオロメチルビニルエーテルゴムをあげることができる。
【0039】
内視鏡10は、先端面21SAが外表面24SAから突出しているが、段差が第2の樹脂50で覆われているため、洗浄等が容易であり、かつ、光学特性が良い。さらに、内視鏡10は、第1の樹脂40によりレンズ21の固定が担保され、さらに、凸状の第2の樹脂50が破損しにくいため、信頼性が高い。
【0040】
第2の樹脂50は、照明光の拡散を防止したり、隣接する撮像光学系に照明光が入射することによって発生するフレアを防止したりする。第2の樹脂50は、遮光粒子を含む遮光性樹脂であり、レンズ21の先端面21SAを囲む、リング状の凸部を構成している。凸部は、先端面21SAから、突出量H50が、1μm以上100μm以下であることが好ましい突出量H50が、前記範囲未満では、フレア防止効果が十分ではなく、前記範囲超では、照明光の照射範囲が狭くなったり、破損されやすくなったりする。
【0041】
第2の樹脂50が、遮光粒子を0.01重量%以上5重量%以下含んでいれば、遮光性能が担保される。遮光粒子は、第2の樹脂50よりも光透過率が低い材料で構成される。遮光粒子は、有機物粒子、金属粒子、または無機物粒子である。遮光粒子として材料の異なる二種類以上の粒子を組み合わせて用いてもよい。また、遮光粒子の形状は、球でもよいし、楕円体状、板状、針状などの任意の形状のものを用いてもよいし、形状の異なる二種類以上の粒子を組み合わせてもよい。遮光粒子の大きさ(粒径)は、例えば、50nm~20μmである。遮光粒子の大きさは第2の樹脂50の全体にわたって均一であってもよいし、ばらつきがあってもよい。
【0042】
遮光粒子としては、価格、遮光性能および樹脂への分散性の観点から、カーボンブラックおよびチタンブラックの少なくともいずれかが好ましい。
【0043】
なお、レンズ枠24の壁面24SSにおける反射防止のため、第1の樹脂40も遮光粒子を含んでいることが好ましい。第1の樹脂40が含む第1の遮光粒子は、第2の樹脂50が含む第2の遮光粒子と同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0044】
すでに説明したように、熱硬化性樹脂は厚さが厚いほど、硬化時の収縮が大きいため剥離が生じやすいことが知られている。第2の樹脂50では、内周部は、レンズ21の先端面21SAに配設されているのに対して、外周部はレンズ枠24の外表面24SAに配設されている。第2の樹脂50は、外周部の厚さが内周部の厚さよりも、先端面21SAの突出量Dの分だけ大きい。このため、第2の樹脂50は、外周部が剥離の起点となるおそれがある。
【0045】
このため、
図4に示すように、レンズ枠24の外表面24SAに対する、第2の樹脂50の接触角度θが、45度以下であることが好ましい。
【0046】
レンズ枠24の壁面24SSには反射防止のため、光吸収膜、例えば、黒色のクロムめっき膜が成膜されていることが好ましい。内視鏡10では、光吸収膜が、レンズ枠24の外表面24SAにも成膜されていることが好ましい。
【0047】
外表面24SAが鏡面であると接触角度θを、45度以下とすることは容易ではない。しかし、黒色のクロムめっき膜等の光吸収膜は、表面粗さ(Rz)が大きいために、第2の樹脂50の接触角度θを小さくし、接着強度を向上することが容易である。
【0048】
<第2実施形態>
第2実施形態の内視鏡10Aは、内視鏡10と類似しているので、同じ機能の構成要素には同じ符号を付し説明は省略する。
【0049】
図5に示すように、内視鏡10Aの光学ユニット20Aのレンズ21Aは、先端面21SAの外周部に切り欠きC21がある。言い替えれば、レンズ21の先端面21SAと側面21SSとが交差する稜線が面取り加工されている。
【0050】
面取り加工は、稜線を平面状態に切り欠く加工だけでなく、曲面状態に切り欠く、いわゆる角R加工でもよい。また、面取り加工は、加工を施した場合と同様の形状に成形する場合も含み、加工又は成形する方法は特定の方法に限定されない。
【0051】
切り欠きC21のあるレンズ21Aは、衝撃を受けても、先端面21SAの外周部に、欠けが生じにくい。なお、レンズ21Aは、先端面21SAの反対側の裏面21SBにも切り欠きがある。
【0052】
そして、内視鏡10Aでは、第2の樹脂50は、先端面21SAのうち、光路領域には配設されておらず、切り欠きC21にだけ配設されている。すなわち、切り欠きC21は、第2の樹脂50が先端面21SAの光路領域に広がることを、防止している。さらに、切り欠きC21に配設された第2の樹脂50は、平面に配設された場合よりも、接着力が強いため、内視鏡10Aは内視鏡10よりも信頼性が高い。
【0053】
なお、光学ユニット20Aでは、レンズ21Aは、先端面21SAの切り欠かれていない中央がレンズ枠の外表面24SAから10μm以上150μm以下突出しており、第2の樹脂の凸部が、先端面21SAの中央から、1μm以上100μm以下突出している。
【0054】
内視鏡10Aは、内視鏡10の効果を有し、さらに、レンズに欠けが生じにくいだけでなく、第2の樹脂50を、光路領域の周囲に配設することが容易であるために、より光学特性が良い。
【0055】
<第3実施形態>
第3実施形態の内視鏡10Bは、内視鏡10、10Aと類似しているので、同じ機能の構成要素には同じ符号を付し説明は省略する。
【0056】
図6に示すように、内視鏡10Bの光学ユニット20Bでは、第1の樹脂40とレンズ21の側面21SSとの間に隙間Gが形成されている。そして、第2の樹脂50は、隙間Gにも配設されている。
【0057】
例えば、内視鏡は、使用中の衝撃等によって、第1の樹脂40とレンズ21の側面21SSとの間に、経年劣化によって、隙間Gが生じることがある。すなわち、弾性率が大きい第1の樹脂40の接着面に剥離が生じることがある。また、第1の樹脂40を覆っている第2の樹脂50が破損して第1の樹脂40の表面が露出することもある。さらに、製品仕様として、第2の樹脂50が配設されていない内視鏡もある。
【0058】
隙間Gは、部分的に生じており、間隔が1μmと小さく、かつ、深さが浅くても、水分の浸入経路となり内視鏡の信頼性を低下させるおそれがある。
【0059】
内視鏡10Bは、例えば、経年劣化によって、隙間Gが生じた内視鏡を補修することによって作製される。すなわち、補修の際に、隙間Gだけに第1の樹脂40を注入するのではなく、リング状の凸部の第2の樹脂50が配設される。このとき、隙間Gにも第2の樹脂50が配設される。
【0060】
第2の樹脂50は第1の樹脂40よりも弾性率Eが小さく、外部からの衝撃を吸収する。さらに、第2の樹脂50は、隙間Gにも配設されているため、アンカー効果によって接着強度が高い。このため、内視鏡10Bは、内視鏡10A、10Bは、もちろん、隙間Gに第1の樹脂40を配設することにより補修された内視鏡よりも、信頼性が高い。なお、隙間Gに配設される第2の樹脂50は、厚くないため、固定されているレンズ21の位置精度に及ぼす影響は小さい。
【0061】
なお、製造時に第2の樹脂50が配設されていない内視鏡を補修することによって製造された内視鏡10Bは、新たにフレア防止効果が付与されている。
【0062】
なお、第1の樹脂40と貫通孔H40の壁面40SSとの間に第2の樹脂50が配設されている隙間Gがあってもよいし、第1の樹脂40とレンズ21の側面21SSとの間および第1の樹脂40と貫通孔H40の壁面40SSとの間に、それぞれ第2の樹脂50が配設されている隙間Gがあってもよい。すなわち、第1の樹脂40と貫通孔H40の壁面40SSとの間、および、第1の樹脂40とレンズ21の側面21SSとの間の少なくともいずれかに第2の樹脂50が配設されている隙間Gがあればよい。
【0063】
また、以上の説明では、照射光学ユニット20、20A、20Bを例に説明したが、撮像光学ユニット30においても、照射光学ユニット20、20A、20Bと同じ構成とすることによって、照射光学ユニット20、20A、20Bと同じ効果を有することは言うまでも無い。
【0064】
また、内視鏡の撮像光学ユニット30だけが上記構成を有していてもよい。すなわち、内視鏡の光学部材(レンズ)は、照射光学ユニット20および撮像光学ユニット30の少なくともいずれかの先端部材であればよい。さらに、先端部11Aに、複数の照射光学ユニット20、または、複数の撮像光学ユニット30が配設されていてもよい。
【0065】
また、医療用の軟性内視鏡10、10A、10Bを例に説明したが、本発明の実施形態の内視鏡は、工業用でもよいし、硬性鏡でもよいし、ユニバーサルコードのないワイヤレス内視鏡でもよい。
【0066】
本発明は上述した実施形態等に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、組み合わせ、および改変等ができる。
【0067】
本出願は、2018年5月31日に日本国に出願された特願2018-105110号を優先権主張の基礎として出願するものであり、上記の開示内容は、本願明細書、請求の範囲に引用されるものとする。
【符号の説明】
【0068】
1…内視鏡システム
2…プロセッサ
3…モニタ
4…入力部
5…光源装置
10、10A、10B…内視鏡
11…挿入部
11A…先端部
12…ライトガイド
13…撮像部
20…照射光学ユニット
21…レンズ
21SA…先端面
21SS…側面
24…レンズ枠
24SA…外表面
24SS…壁面
30…撮像光学ユニット
31…レンズ
34…レンズ枠
40…第1の樹脂
50…第2の樹脂