(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】離型フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20220106BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B32B27/00 L
H05K3/00 L
B32B27/00 101
(21)【出願番号】P 2020539438
(86)(22)【出願日】2019-08-26
(86)【国際出願番号】 JP2019033243
(87)【国際公開番号】W WO2020045338
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2020-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2018161770
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝
(72)【発明者】
【氏名】谷本 周穂
(72)【発明者】
【氏名】西浦 克典
(72)【発明者】
【氏名】伊東 祐一
(72)【発明者】
【氏名】水田 康司
(72)【発明者】
【氏名】高木 正利
(72)【発明者】
【氏名】吉井 寛明
(72)【発明者】
【氏名】木下 仁
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-142611(JP,A)
【文献】特開平07-214728(JP,A)
【文献】特開2018-171917(JP,A)
【文献】国際公開第2015/190478(WO,A1)
【文献】特開2003-100807(JP,A)
【文献】特開2001-232712(JP,A)
【文献】特開2017-052901(JP,A)
【文献】特開2009-215517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C09J 1/00-201/10
C08J 7/04-7/06
C09D 127/12-127/20
H01L 21/603
H05K 3/00
3/32-3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品同士を、異方性導電フィルムまたは非導電性接着フィルムを用いて加熱圧着して電気的に接続する工程に用いられる離型フィルムであって、
耐熱性樹脂層(A)と、前記耐熱性樹脂層(A)の一面上に配置された離型層(B)と、を備え、前記離型層(B)の厚みが5μm以下であ
り、
前記離型層(B)は、前記離型層(B)と接する、前記離型フィルムを構成する層と200℃未満の温度にて結合可能な反応基を有するフッ素系化合物を前記離型層(B)と接する層と反応させて得られるフッ素系離型層を含み、
前記反応基がアルコキシシリル基を含む離型フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の離型フィルムにおいて、
前記離型層(B)の厚みが0.1μm未満である離型フィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の離型フィルムにおいて、
前記離型層(B)と前記耐熱性樹脂層(A)の間にプライマー層(P)をさらに備える離型フィルム。
【請求項4】
請求項3に記載の離型フィルムにおいて、
前記プライマー層(P)がシロキサン結合を有する層を含む離型フィルム。
【請求項5】
請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の離型フィルムにおいて、
前記離型層(B)がパーフルオロアルキル基およびパーフルオロポリエーテル骨格からなる群から選択される一種または二種以上の構造を含む離型フィルム。
【請求項6】
請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の離型フィルムにおいて、
前記離型フィルムの厚みが100μm以下である離型フィルム。
【請求項7】
請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の離型フィルムにおいて、
前記耐熱性樹脂層(A)がエポキシ樹脂を含む離型フィルム。
【請求項8】
請求項1乃至
7のいずれか一項に記載の離型フィルムにおいて、
前記耐熱性樹脂層(A)における前記離型層(B)が配置された面とは反対側の面に、前記耐熱性樹脂層(A)とは異なる種類の耐熱性樹脂層(C)をさらに備える離型フィルム。
【請求項9】
請求項
8に記載の離型フィルムにおいて、
前記耐熱性樹脂層(C)を構成する耐熱性樹脂は、軟化点、ガラス転移温度および融点のいずれかが200℃以上である、あるいは前記耐熱性樹脂は軟化点、ガラス転移温度および融点のいずれも有さない離型フィルム。
【請求項10】
請求項
8または
9に記載の離型フィルムにおいて、
前記耐熱性樹脂層(C)を構成する耐熱性樹脂がポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、塩化ビニリデン樹脂、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリメチルペンテンおよびシリコーン樹脂からなる群から選択される一種または二種以上の樹脂を含む離型フィルム。
【請求項11】
請求項
8乃至
10のいずれか一項に記載の離型フィルムにおいて、
前記耐熱性樹脂層(C)における前記耐熱性樹脂層(A)が配置された面とは反対側の面に、前記耐熱性樹脂層(C)とは異なる種類の耐熱性樹脂層(D)をさらに備える離型フィルム。
【請求項12】
請求項
11に記載の離型フィルムにおいて、
前記耐熱性樹脂層(D)が前記耐熱性樹脂層(A)と同種の樹脂層である離型フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置の製造工程には、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)や非導電性接着フィルム(NCF:Non Conductive Adhesive Film)等のフィルム状の接着剤を用いて、電子装置に用いられる各種の部品や部材(以下、電子部品とも呼ぶ。)同士を加熱圧着により電気的に接続する工程がある。
ACFやNCF等の接着剤は、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含んでいる。2つの電子部品の間に接着剤を配置し、電子部品同士を加熱圧着すると、接着剤に含まれる熱硬化性樹脂が熱によって硬化して、電子部品同士を接合することができる。
ここで、電子部品同士を加熱圧着する工程では、加熱加圧するための加熱加圧ヘッド部と電子部品との間に、加熱加圧ヘッド部と電子部品との接着を防止するための離型フィルムが配置される。
【0003】
このような離型フィルムに関する技術としては、例えば、特許文献1(特開2006-231916号公報)および特許文献2(特開2007-8153号公報)に記載のものが挙げられる。
【0004】
特許文献1には、電子部品の加熱圧着による接合に用いられる圧着離型シートであって、シリコーンゴム層と、第1の多孔質ポリテトラフルオロエチレン層とを含み、上記第1の多孔質ポリテトラフルオロエチレン層が空孔を有し、上記シリコーンゴム層と上記第1の多孔質ポリテトラフルオロエチレン層とが、互いに一体化されている圧着離型シートが記載されている。
【0005】
特許文献2には、電子部品の加熱圧着による接合に用いられる圧着離型シートであって、超高分子量ポリエチレン層と、シリコーンゴム層とを含み、上記超高分子量ポリエチレン層と上記シリコーンゴム層とが互いに一体化されており、上記超高分子量ポリエチレン層の厚さが30μm以上である圧着離型シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-231916号公報
【文献】特開2007-8153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで近年、半導体デバイスの高密度化および小型化が可能になるシリコン貫通電極(TSV)技術が注目され、開発が進められている。本技術を用いることで、半導体チップを積層し、3次元構造を形成することができるため、従来のデバイスに比べて、大幅な高密度化および小型化を達成することができる。
本技術では、チップを積み上げた後に加熱圧着するため、下層のチップにまで熱が伝わるように、従来よりもヒーターを高温化している。それに伴い、離型フィルムにおいても、更なる耐熱性が要求されている。
【0008】
本発明者らの検討によれば、離型フィルムを介してヒーターにより電子部品同士を加熱圧着する場合、電子部品を構成する半導体や金属材料と離型フィルムが、高温になるほど剥離し難くなることが見出された。
従来、フッ素系樹脂フィルムや、フッ素系樹脂が支持体上に塗工されたフィルムが、当該用途の離型フィルムとして使用されている。2つの電子部品の間にACFやNCF等の接着剤を配置して、電子部品同士を加熱圧着する場合、高温になるほど接着剤を構成する樹脂成分と離型フィルムとが溶融して融着するため、接着剤の一部が離型フィルムに付着してしまう場合があることが明らかになった。
接着剤の一部が離型フィルムに付着してしまうと、離型フィルムに付着した接着剤が、製造ライン中に脱落し、製造ラインの汚染や停止が起こり、製品の歩留まりが低下してしまう懸念がある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、電子部品同士を高温で加熱圧着する際において、離型層への接着剤の付着を抑制できる離型フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、耐熱性樹脂層と離型層とを組み合わせて用いることにより、電子部品同士を加熱圧着する際の接着剤の付着を抑制できる離型フィルムが得られることを見出して、本発明を完成させた。
【0011】
本発明によれば、以下に示す離型フィルムが提供される。
【0012】
[1]
電子部品同士を、異方性導電フィルムまたは非導電性接着フィルムを用いて加熱圧着して電気的に接続する工程に用いられる離型フィルムであって、
耐熱性樹脂層(A)と、上記耐熱性樹脂層(A)の一面上に配置された離型層(B)と、を備え、上記離型層(B)の厚みが5μm以下であり、
前記離型層(B)は、前記離型層(B)と接する、前記離型フィルムを構成する層と200℃未満の温度にて結合可能な反応基を有するフッ素系化合物を前記離型層(B)と接する層と反応させて得られるフッ素系離型層を含み、
前記反応基がアルコキシシリル基を含む離型フィルム。
[2]
上記[1]に記載の離型フィルムにおいて、
上記離型層(B)の厚みが0.1μm未満である離型フィルム。
[3]
上記[1]または[2]に記載の離型フィルムにおいて、
上記離型層(B)と上記耐熱性樹脂層(A)の間にプライマー層(P)をさらに備える離型フィルム。
[4]
上記[3]に記載の離型フィルムにおいて、
上記プライマー層(P)がシロキサン結合を有する層を含む離型フィルム。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の離型フィルムにおいて、
上記離型層(B)がパーフルオロアルキル基およびパーフルオロポリエーテル骨格からなる群から選択される一種または二種以上の構造を含む離型フィルム。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の離型フィルムにおいて、
上記離型フィルムの厚みが100μm以下である離型フィルム。
[7]
上記[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の離型フィルムにおいて、
上記耐熱性樹脂層(A)がエポキシ樹脂を含む離型フィルム。
[8]
上記[1]乃至[7]のいずれか一つに記載の離型フィルムにおいて、
上記耐熱性樹脂層(A)における上記離型層(B)が配置された面とは反対側の面に、上記耐熱性樹脂層(A)とは異なる種類の耐熱性樹脂層(C)をさらに備える離型フィルム。
[9]
上記[8]に記載の離型フィルムにおいて、
上記耐熱性樹脂層(C)を構成する耐熱性樹脂は、軟化点、ガラス転移温度および融点のいずれかが200℃以上である、あるいは上記耐熱性樹脂は軟化点、ガラス転移温度および融点のいずれも有さない離型フィルム。
[10]
上記[8]または[9]に記載の離型フィルムにおいて、
上記耐熱性樹脂層(C)を構成する耐熱性樹脂がポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、塩化ビニリデン樹脂、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリメチルペンテンおよびシリコーン樹脂からなる群から選択される一種または二種以上の樹脂を含む離型フィルム。
[11]
上記[8]乃至[10]のいずれか一つに記載の離型フィルムにおいて、
上記耐熱性樹脂層(C)における上記耐熱性樹脂層(A)が配置された面とは反対側の面に、上記耐熱性樹脂層(C)とは異なる種類の耐熱性樹脂層(D)をさらに備える離型フィルム。
[12]
上記[11]に記載の離型フィルムにおいて、
上記耐熱性樹脂層(D)が上記耐熱性樹脂層(A)と同種の樹脂層である離型フィルム。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電子部品同士を高温で加熱圧着する際において、離型層への接着剤の付着を抑制できる離型フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る実施形態の離型フィルムの構造の一例を模式的に示した断面図である。
【
図2】本発明に係る実施形態の離型フィルムの構造の一例を模式的に示した断面図である。
【
図3】本発明に係る実施形態の離型フィルムの構造の一例を模式的に示した断面図である。
【
図4】本発明に係る実施形態の離型フィルムの構造の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。また、数値範囲の「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。
【0016】
1.離型フィルム
以下、本実施形態に係る積層体50について説明する。
図1~
図4は、本発明に係る実施形態の離型フィルム50の構造の一例を模式的に示した断面図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る離型フィルム50は、電子部品の加熱圧着による接合に用いられる離型フィルムであって、耐熱性樹脂層(A)と、耐熱性樹脂層(A)の一面上に配置された離型層(B)と、を備え、上記離型層(B)の厚みが5μm以下である。
【0018】
本発明者らの検討によれば、2つの電子部品の間にACFやNCF等の接着剤を配置して、高温下で電子部品同士を加熱圧着する場合、接着剤を構成する樹脂成分と、離型フィルムとが溶融して融着するため、接着剤の一部が離型フィルムに付着してしまう場合があることが明らかになった。
接着剤の一部が離型フィルムに付着してしまうと、離型フィルムに付着した接着剤が、製造ライン中に脱落し、製造ラインの汚染や停止が起こり、製品の歩留まりが低下してしまう懸念がある。
【0019】
接着剤の一部が離型フィルムに付着してしまう詳細な理由は明らかではないが、以下の理由が考えられる。電子部品同士を加熱圧着する場合、例えば、離型フィルムは300℃以上に加熱される。このとき、接着剤を構成する樹脂成分は溶融状態になっており、さらに離型フィルムの離型層が軟化して溶融状態に近い状態になっていると考えられる。そして、溶融した接着剤の一部と、溶融状態に近い離型層の一部とが相溶してしまう。これにより、電子部品から離型フィルムを剥離した際に、接着剤の一部が離型フィルムの離型層の表面に残ってしまい、その結果、接着剤の一部が離型フィルムに付着してしまうと考えられる。
そこで、本発明者らは、電子部品同士を加熱圧着する際の接着剤の付着を抑制できる離型フィルムを実現するために、鋭意検討を重ねた。その結果、耐熱性樹脂層(A)と離型層(B)とを組み合わせて用いることにより、電子部品同士を加熱圧着する際に接着剤の付着を抑制できることを初めて見出した。
すなわち、本実施形態に係る離型フィルム50は、耐熱性樹脂層(A)と、耐熱性樹脂層(A)の一面上に配置された離型層(B)と、を有することで、電子部品同士を加熱圧着する際の接着剤の付着を抑制することが可能となる。
また、離型層(B)の膜厚を0.1μm未満にすることによって、電子部品同士を高温で加熱圧着する際において、離型層(B)への接着剤の付着をより一層抑制できることが分かった。さらに、離型層(B)を、当該離型層(B)と接する、離型フィルムを構成する層と200℃未満の温度にて結合可能な反応基を有するフッ素系化合物を上記離型層(B)と接する層と反応させて得られるフッ素系離型層とすることにより、離型層(B)の離型性がさらに向上することを見出した。
【0020】
本実施形態に係る離型フィルム50全体の厚みは、機械的特性、熱伝導性、取扱い性のバランスの観点から、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは60μm以下であり、さらに好ましくは40μm以下であり、より好ましくは30μm以下である。
【0021】
本実施形態に係る離型フィルム50の形状は特に限定されないが、例えば、フィルム状、シート状、板状等が挙げられる。これらの中でもフィルム状またはシート状が好ましい。
【0022】
本実施形態に係る離型フィルム50は電子部品の加熱圧着による接合に用いられる。より具体的には、2つの電子部品の間にACFやNCF等の接着剤を配置して、電子部品同士を加熱圧着する工程で使用する離型フィルムとして好適に用いることができる。
ただし、本実施形態に係る離型フィルム50は、ACFやNCF等の接着剤を用いた電子部品同士の電気的な接続に限定されず、加熱圧着による電子部品の接合に広く用いることができる。接合する電子部品の種類は特に限定されないが、例えば、金属基板やガラス基板等の各種基板類(基板上に電極が設けられていてもよい);プリント回路基板、TCP(Tape Carrier Package)、FPC(Flexible Printed Circuit)等の各種回路類(TCPやFPC上にIC等が設けられていてもよい);ITO(Indium Tin Oxide)層等の透明導電層;等が挙げられる。
離型フィルム50は、複数の異なる電子部品がモジュール化された電子部品の接合にも用いることができる。
【0023】
次に、本実施形態に係る離型フィルム50を構成する各層について説明する。
【0024】
<耐熱性樹脂層(A)>
耐熱性樹脂層(A)は耐熱性樹脂を含む層であり、電子部品同士を加熱圧着により接合する際に、熱源により加熱される側、すなわち加熱加圧ヘッド部と接する側の層である。
ここで、本実施形態において、耐熱性とは高温における樹脂層の寸法安定性や熱分解安定性を意味する。すなわち、耐熱性に優れる樹脂層ほど、高温における膨張や収縮、軟化等の変形や溶融、分解等が起き難いことを意味する。
また、本実施形態に係る耐熱性樹脂層(A)からは、特許文献1に記載されているシリコーンゴム層や、特許文献2に記載されている超高分子量ポリエチレン層等のポリオレフィン系樹脂層は除かれる。
耐熱性樹脂層(A)は特に限定されないが、例えば、樹脂フィルムが挙げられる。
【0025】
耐熱性樹脂層(A)は耐熱性樹脂を含む。耐熱性樹脂層(A)を構成する耐熱性樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂を用いることができる。これらの耐熱性樹脂は一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
また、耐熱性樹脂層(A)を形成するために硬化促進剤を用いてもよい。硬化促進剤は特に限定されないが、熱硬化促進剤を用いてもよく、光硬化促進剤を用いてもよく、あるいは両者を併用もよい。
【0027】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等が挙げられる。
【0028】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、塩化ビニリデン樹脂、ポリベンゾイミダゾールおよびポリベンゾオキサゾール等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
これらの中でも、耐熱性や機械的強度、透明性、価格等のバランスに優れる観点から、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリエステルから選択される一種または二種以上が好ましい。
【0029】
光硬化性樹脂としては、例えば、重合性不飽和基を導入したアクリル樹脂又はアルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0030】
本実施形態に係る耐熱性樹脂が熱硬化促進剤を含む場合、熱硬化促進剤としては特に限定されないが、例えば、脂肪族アミン類、芳香族アミン類、ポリアミド樹脂、二級または三級アミン類、イミダゾール類、液状ポリメルカプタン類、ポリスルフィド樹脂、酸無水物類、ホウ素‐アミン錯体類、ジシアンアミド類、有機酸ヒドラジド類、パーオキサイド類等が挙げられる。これらの熱硬化促進剤は一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
本実施形態に係る耐熱性樹脂が光硬化促進剤を含有する場合、光硬化促進剤としては特に限定されないが、例えば、光ラジカル硬化促進剤、光カチオン重合開始剤及び光アニオン重合開始剤等が挙げられる。これらの光重合開始剤は一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、必要に応じて増感剤を併用してもよい。
光ラジカル硬化促進剤としては特に限定されないが、例えば、アルキルフェノン類、オキシムエステル類、有機リン化合物類等が挙げられる。
光カチオン硬化促進剤としては特に限定されないが、例えば、ヨードニウム塩類、スルホニウム塩類等が挙げられる。
光アニオン硬化促進剤としては特に限定されないが、例えば、オキシムエステル類、アミニウム塩類等が挙げられる。
【0032】
耐熱性樹脂層(A)を構成する耐熱性樹脂としては、高温での弾性率と柔軟性(クッション性)とのバランスに優れる点から、熱硬化性樹脂が好ましく、エポキシ樹脂がより好ましい。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオンレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、トリスグリシジルイソシアヌレート型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの耐熱性樹脂は一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
耐熱性樹脂層(A)は、単層であっても、二種以上の層であってもよい。
また、耐熱性樹脂層(A)を形成するために使用する樹脂フィルムの形態としては、押出フィルムやキャストフィルムなどの未延伸フィルムであってもよいし、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであってもよい。耐熱性樹脂層(A)の耐熱性や機械的強度を向上させる観点から、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであってもよい。
【0034】
耐熱性樹脂層(A)は、耐熱性樹脂層(A)の熱伝導性を良好にする観点から、熱伝導性材料を含んでもよい。熱伝導性材料としては特に限定されないが、例えば、アルミナ、酸化マグネシウム、シリカ、チタニア等の無機微粒子が挙げられる。
【0035】
耐熱性樹脂層(A)の厚さは、良好なフィルム特性を得る観点から、好ましくは1μm以上60μm以下、より好ましくは1μm以上40μm以下、さらに好ましくは3μm以上30μm以下、さらにより好ましくは5μm以上25μm以下である。
耐熱性樹脂層(A)は他の層との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等を行ってもよい。
【0036】
<離型層(B)>
離型層(B)は離型性を有する層であり、電子部品同士を加熱圧着により接合する際に、電子部品と対向するように配置される層であり、電子部品同士の加熱圧着後に電子部品から離型フィルム50を剥離するために設けられる層である。
離型層(B)は特に限定されないが、例えば、コーティング層や樹脂フィルム等が挙げられる。
ここで、本実施形態において、離型性を有するとは、例えば、水に対する接触角が80°以上である場合をいう。
【0037】
離型層(B)を構成するための離型剤としては、例えば、フッ素系離型剤、シリコン系離型剤、シリコン・フッ素系離型剤、炭化水素系離型剤等が挙げられる。ここで、シリコン・フッ素系離型剤とは、フッ素原子とケイ素原子とを有する離型剤を意味する。
これらの中でも、離型性をより一層良好にする観点から、フッ素系離型剤が好ましい。
【0038】
フッ素系離型剤は、離型性をより一層良好にする観点から、フッ素系樹脂および含フッ素化合物から選択される一種または二種以上のフッ素系化合物を含むことが好ましい。
離型層(B)を構成するフッ素系樹脂としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PVF(ポリフッ化ビニル)、PFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体)、ETFE(テトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体)、ECTFE(クロロトリフルオロエチレンとエチレンとの共重合体)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンとの3元共重合体、フッ素ゴム等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
【0039】
フッ素系離型剤を構成するフッ素系化合物は、耐熱性樹脂層(A)や後述するプライマー層(P)等の離型層(B)と接する、離型フィルムを構成する層と200℃未満の温度にて結合可能な反応基を有するフッ素系化合物を含むことが好ましい。離型層(B)と接する層と200℃未満の温度にて結合可能な反応基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、ビニル基、スチリル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、アルコキシシリル基、イソシアネート基等が挙げられる。中でもアルコキシシリル基が、離型フィルム表面のフッ素系化合物の濃度を高めることができるため好ましい。
アルコキシシリル基としては、例えば、メトキシシリル基、エトキシシリル基、イソプロポキシシリル基などが挙げられる。反応性の観点から、メトキシシリル基、エトキシシリル基が好ましい。
【0040】
フッ素系離型剤を構成するフッ素系化合物は、良好な離型性を得る観点から炭素数1~18のパーフルオロアルキル基およびパーフルオロポリエーテル(PFPE)骨格からなる群から選択される一種または二種以上の構造を分子中に含む化合物であることが好ましい。
上記炭素数1~18のパーフルオロアルキル基は、炭素数1~6であることがより好ましい。上記炭素数1~18のパーフルオロアルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。
パーフルオロポリエーテル(PFPE)骨格を分子中に含む化合物としては、例えば、パーフルオロポリエーテル鎖を有するシラン化合物、パーフルオロポリエーテル鎖を有するジオール化合物、直鎖状のパーフルオロエーテル化合物等が挙げられる。
フッ素系化合物は、プライマー層(P)との良好な接着性を得る観点からアルコキシシラン結合またはアルキルシロキサン結合を有することが好ましい。アルコキシシラン結合を含む化合物としては例えば、炭素数1~18のアルコキシ基を含む化合物等、アルキルシロキサン結合を有する化合物としては例えば、炭素数1~18のジメチルシロキサン結合を含む化合物等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
このようなフッ素系化合物としては、特開2006-347062号公報、特開2009-045867号公報に開示されている化合物を例示することができる。
【0041】
また、離型層(B)は、導電性材料を含んでもよい。これにより、電子部品同士を加熱圧着により接合する工程における離型フィルム50への静電気の発生を抑制でき、電子部品の接合をより安定して行うことができる。導電性材料としては特に限定されないが、例えば、カーボン粒子等が挙げられる。
【0042】
また、離型層(B)は、離型層(B)の厚みを薄くすることが可能な点から、フッ素系コーティング層であることが好ましい。フッ素系コーティング層であると、離型層(B)の厚みを薄くすることができるため、電子部品同士を加熱圧着する際の離型層(B)の軟化をより一層抑制でき、その結果、溶融した接着剤の一部と、離型層(B)の一部とが相溶してしまうことをより一層抑制することができる。これにより、電子部品同士を加熱圧着する際の接着剤の付着をより一層抑制することが可能となる。
フッ素系コーティング層は、例えば、上記したフッ素系樹脂や含フッ素化合物等のフッ素系化合物を含むフッ素系コーティング剤を耐熱性樹脂層(A)に塗工して乾燥することにより形成することができる。また、フッ素系コーティング剤はフッ素系化合物のラテックスであってもよいし、フッ素系化合物の溶液であってもよい。
【0043】
離型層(B)の厚みは、接着剤の付着をより一層抑制する観点から、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.1μm未満であり、特に好ましくは0.01μm未満である。離型層(B)の厚みが上記上限値以下または未満であると、電子部品同士を加熱圧着する際の離型層(B)の軟化をより一層抑制でき、その結果、溶融した接着剤の一部と、離型層(B)の一部とが相溶してしまうことをより一層抑制することができる。
【0044】
離型層(B)は単層であっても、二種以上の層であってもよい。
また、離型層(B)は、他の層との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等を行ってもよい。
【0045】
<耐熱性樹脂層(C)>
本実施形態に係る離型フィルム50は、接着剤の付着をより一層抑制する観点から、
図3に示すように、耐熱性樹脂層(A)における離型層(B)が配置された面とは反対側の面に、耐熱性樹脂層(A)とは異なる種類の耐熱性樹脂層(C)をさらに備えることが好ましい。これにより、電子部品同士を加熱圧着する際の離型層(B)の軟化をより一層抑制でき、その結果、溶融した接着剤の一部と、離型層(B)の一部とが相溶してしまうことをより一層抑制することができる。ここで、耐熱性樹脂層(A)とは異なる種類の耐熱性樹脂層とは、例えば、主成分として含まれる耐熱性樹脂が異なる耐熱性樹脂層をいう。主成分とは、最も多く含まれる耐熱性樹脂をいう。
耐熱性樹脂層(C)は特に限定されないが、例えば、樹脂フィルムが挙げられる。
【0046】
耐熱性樹脂層(C)は耐熱性樹脂を含む。
耐熱性樹脂層(C)を構成する耐熱性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、塩化ビニリデン樹脂、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリメチルペンテンおよびシリコーン樹脂等から選択される一種または二種以上の樹脂を挙げることができる。
これらの中でも、耐熱性や機械的強度、透明性、価格等のバランスに優れる観点から、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリエステルから選択される一種または二種以上が好ましい。
【0047】
耐熱性樹脂層(C)を構成する耐熱性樹脂は軟化点、ガラス転移温度および融点のいずれかが200℃以上であることが好ましく、220℃以上であることがより好ましい。あるいは耐熱性樹脂層(C)を構成する耐熱性樹脂は軟化点、ガラス転移温度および融点のいずれも有さないものであることが好ましく、分解温度が200℃以上であることがより好ましく、分解温度が220℃以上であることがさらに好ましい。
このような耐熱性樹脂を用いると、耐熱性樹脂層(C)の耐熱性をより一層良好にすることができる。
【0048】
耐熱性樹脂層(C)は、単層であっても、二種以上の層であってもよい。
また、耐熱性樹脂層(C)を形成するために使用する樹脂フィルムの形態としては、押出フィルムやキャストフィルムなどの未延伸フィルムであってもよいし、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであってもよい。耐熱性樹脂層(C)の耐熱性や機械的強度を向上させる観点から、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであってもよい。
【0049】
耐熱性樹脂層(C)の厚さは、良好なフィルム特性を得る観点から、好ましくは5μm以上400μm以下であり、より好ましくは10μm以上200μm以下、さらに好ましくは15μm以上100μm以下である。
耐熱性樹脂層(C)は他の層との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等を行ってもよい。
【0050】
<プライマー層(P)>
本実施形態に係る離型フィルム50は、離型層(B)の塗布性および離型性を向上させる観点から、
図2に示すように、離型層(B)の下層すなわち離型層(B)と耐熱性樹脂層(A)の間にプライマー層(P)を有することが好ましい。プライマー層(P)はシロキサン結合(-Si-O-)やシロキサン結合を有するシラン系化合物の前駆体、またはシラノール基を有していることが好ましい。
シロキサン結合やシラノール基を有するプライマー層は、例えば、ペルヒドロポリシラザン(PHPS)を、大気中または、水蒸気雰囲気下で加熱して得られるシリカ膜や、アルコキシシランのゾルゲル反応により得られるシリカ膜などが挙げられる。
【0051】
プライマー層(P)の厚さは、例えば0.001μm以上1μm以下である。
【0052】
<耐熱性樹脂層(D)>
本実施形態に係る離型フィルム50は、電子部品同士を加熱圧着する際に発生しうるフィルム全体の反りや変形をより一層抑制する観点から、
図4に示すように、耐熱性樹脂層(C)における耐熱性樹脂層(A)が配置された面とは反対側の面に、耐熱性樹脂層(C)とは異なる種類の耐熱性樹脂層(D)をさらに備えることも好ましい。耐熱性樹脂層(D)は、その線膨張係数が耐熱性樹脂層(A)と近しいものが好ましく、より好ましくは耐熱性樹脂層(D)と耐熱性樹脂層(A)の線膨張係数が同一であることが好ましい。これにより、電子部品同士を加熱圧着する際の離型フィルムの反りや変形をより一層抑制し、電子部品の生産性をより一層向上させることができる。
耐熱性樹脂層(D)は特に限定されないが、例えば、樹脂フィルムが挙げられる。
【0053】
耐熱性樹脂層(D)は耐熱性樹脂を含む。耐熱性樹脂層(D)を構成する耐熱性樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0054】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等が挙げられる。
【0055】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、塩化ビニリデン樹脂、ポリベンゾイミダゾールおよびポリベンゾオキサゾール等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
これらの中でも、耐熱性や機械的強度、透明性、価格等のバランスに優れる観点から、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリエステルから選択される一種または二種以上が好ましい。
【0056】
耐熱性樹脂層(D)を構成する耐熱性樹脂としては、高温での弾性率と柔軟性(クッション性)とのバランスに優れる点から、熱硬化性樹脂が好ましく、エポキシ樹脂がより好ましい。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオンレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、トリスグリシジルイソシアヌレート型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの耐熱性樹脂は一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせてもちいてもよい。
【0057】
耐熱性樹脂層(D)を構成する耐熱性樹脂は、耐熱性樹脂層(A)を構成する耐熱性樹脂と同一でも異なっていてもよいが、フィルムの反りや変形を抑制する観点から、同一であることがより好ましい。
【0058】
<その他の層>
本実施形態に係る離型フィルム50は、本実施形態の効果を損なわない範囲で、耐熱性樹脂層(A)と離型層(B)との間や、耐熱性樹脂層(A)と耐熱性樹脂層(C)との間、耐熱性樹脂層(C)と耐熱性樹脂層(D)との間に、例えば接着層や凹凸吸収層、衝撃吸収層等がさらに設けられていてもよい。
【0059】
2.離型フィルム50の製造方法
本実施形態に係る離型フィルム50の製造方法は特に限定されず、一般的に公知の積層フィルムの製造方法を採用することができる。例えば、本実施形態に係る離型フィルム50は、耐熱性樹脂層(A)と離型層(B)と必要に応じて耐熱性樹脂層(C)や耐熱性樹脂層(D)とを共押出成形して積層することによって得ることができる。また、本実施形態に係る離型フィルム50は、例えば、フィルム状の耐熱性樹脂層(A)とフィルム状の離型層(B)と必要に応じてフィルム状の耐熱性樹脂層(C)や耐熱性樹脂層(D)とをラミネート(積層)することにより得ることもできる。さらに、本実施形態に係る積層体50は、例えば、フィルム状の耐熱性樹脂層(A)上に離型層(B)をコーティングすることにより得ることもできる。
さらに、本実施形態に係る離型フィルム50は、例えば耐熱性樹脂層(A)上にプライマー層(P)を形成後、離形層(B)をコーティングすることにより得ることもできる。プライマー層(P)および離形層(B)の形成法は特に限定されないが、各層を形成する化合物溶液を塗布乾燥する方法が挙げられる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0061】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
以下、参考形態の例を付記する。
1.
電子部品の加熱圧着による接合に用いられる離型フィルムであって、
耐熱性樹脂層(A)と、前記耐熱性樹脂層(A)の一面上に配置された離型層(B)と、を備え、前記離型層(B)の厚みが5μm以下である離型フィルム。
2.
1.に記載の離型フィルムにおいて、
前記離型層(B)の厚みが0.1μm未満である離型フィルム。
3.
1.または2.に記載の離型フィルムにおいて、
前記離型層(B)と前記耐熱性樹脂層(A)の間にプライマー層(P)をさらに備える離型フィルム。
4.
3.に記載の離型フィルムにおいて、
前記プライマー層(P)がシロキサン結合を有する層を含む離型フィルム。
5.
1.乃至4.のいずれか一つに記載の離型フィルムにおいて、
前記離型層(B)は、前記離型層(B)と接する、前記離型フィルムを構成する層と200℃未満の温度にて結合可能な反応基を有するフッ素系化合物を前記離型層(B)と接する層と反応させて得られるフッ素系離型層を含む離型フィルム。
6.
5.に記載の離型フィルムにおいて、
前記反応基がアルコキシシリル基を含む離型フィルム。
7.
1.乃至6.のいずれか一つに記載の離型フィルムにおいて、
前記離型層(B)がパーフルオロアルキル基およびパーフルオロポリエーテル骨格からなる群から選択される一種または二種以上の構造を含む離型フィルム。
8.
1.乃至7.のいずれか一つに記載の離型フィルムにおいて、
前記離型フィルムの厚みが100μm以下である離型フィルム。
9.
1.乃至8.のいずれか一つに記載の離型フィルムにおいて、
前記耐熱性樹脂層(A)がエポキシ樹脂を含む離型フィルム。
10.
1.乃至9.のいずれか一つに記載の離型フィルムにおいて、
前記耐熱性樹脂層(A)における前記離型層(B)が配置された面とは反対側の面に、前記耐熱性樹脂層(A)とは異なる種類の耐熱性樹脂層(C)をさらに備える離型フィルム。
11.
10.に記載の離型フィルムにおいて、
前記耐熱性樹脂層(C)を構成する耐熱性樹脂は、軟化点、ガラス転移温度および融点のいずれかが200℃以上である、あるいは前記耐熱性樹脂は軟化点、ガラス転移温度および融点のいずれも有さない離型フィルム。
12.
10.または11.に記載の離型フィルムにおいて、
前記耐熱性樹脂層(C)を構成する耐熱性樹脂がポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、塩化ビニリデン樹脂、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリメチルペンテンおよびシリコーン樹脂からなる群から選択される一種または二種以上の樹脂を含む離型フィルム。
13.
10.乃至12.のいずれか一つに記載の離型フィルムにおいて、
前記耐熱性樹脂層(C)における前記耐熱性樹脂層(A)が配置された面とは反対側の面に、前記耐熱性樹脂層(C)とは異なる種類の耐熱性樹脂層(D)をさらに備える離型フィルム。
14.
13.に記載の離型フィルムにおいて、
前記耐熱性樹脂層(D)が前記耐熱性樹脂層(A)と同種の樹脂層である離型フィルム。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
【0063】
<材料>
離型フィルムの作製に用いた材料の詳細は以下の通りである。
【0064】
(耐熱性樹脂層(A))
A1:エポキシ樹脂製フィルム(厚み:10μmまたは25μm)
A2:ポリイミド製フィルム(東レ・デュポン社製、製品名:カプトン(登録商標)、厚み:25μm、ガラス転移温度:328℃)
【0065】
(離型層(B))
B1:フッ素系コーティング層1(フロロテクノロジー社製、製品名:フロロサーフFG5020(パーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物、含有官能基:アルコキシシリル基)、厚み:<0.1μm)
B2:PTFE製フィルム(日東電工社製、製品名:NITOFLONフィルムNO.900UL、厚み:30μm、融点:327℃)
【0066】
(耐熱性樹脂層(C))
C1:ポリイミド製フィルム(東レ・デュポン社製、製品名:カプトン(登録商標)、厚み:25μm、ガラス転移温度:328℃)
【0067】
[実施例1]
耐熱性樹脂層(A2)上にフロロサーフFG5020(フロロテクノロジー社製)を塗布した。その後、130℃の温度で15分乾燥させて離型層(B1)を形成し、離型フィルム1を得た。
得られた離型フィルム1について以下の評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0068】
[実施例2]
耐熱性樹脂層(A2)上にPC-3B(フロロテクノロジー社製、シロキサン結合を有するシラン系化合物)を塗布した後、室温で1時間静置して乾燥させることにより、50nmの厚みのプライマー層(P)を形成した。次いで、プライマー層(P)上にフロロサーフFG5020(フロロテクノロジー社製)を塗工し、130℃の温度で15分乾燥させることにより離型層(B1)を形成して、離型フィルム2を得た。
【0069】
[実施例3]
耐熱性樹脂層(A2)の代わりに耐熱性樹脂層(A1)を用いた以外は、実施例2と同様にして離型フィルム3を得た。なお、エポキシ樹脂製フィルムは特許第5696038号に記載の製膜方法によって作製した後、更なる加熱によって硬化させたものを用いた。得られた離型フィルムについて実施例1と同様の評価をそれぞれおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0070】
[実施例4および5]
耐熱樹脂層(C1)に未硬化の耐熱樹脂層(A1)フィルムをラミネートした後、更なる加熱により耐熱樹脂層(A1)を硬化させることで耐熱樹脂層(A1)と耐熱樹脂層(C)からなる積層フィルムを作製した。次に耐熱樹脂層(A1)上にPC-3B(フロロテクノロジー社製)を塗布した後、室温で1時間静置して乾燥させることにより、50nmの厚みのプライマー層(P)を形成した。次いで、プライマー層(P)上にフロロサーフFG5020(フロロテクノロジー社製)を塗工し、130℃の温度で15分乾燥させることにより離型層(B1)を形成して、離型フィルム4および5をそれぞれ得た。
なお、実施例4の耐熱性樹脂層(A1)の厚みは25μmとし、実施例5の耐熱性樹脂層(A1)の厚みは10μmとした。得られた離型フィルムについて実施例1と同様の評価をそれぞれおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0071】
[比較例1]
PTFE製フィルム(離型層(B2))を離型フィルムとし、実施例1と同様の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0072】
[比較例2]
耐熱性樹脂層(A2)上にPTFE製フィルム(離型層(B2))を積層して離型フィルムとし、実施例1と同様の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0073】
<評価>
(1)電子部品同士を加熱圧着する際の接着剤の付着評価
シリコンウェハ―上にNCF(特開2018-22819号公報の実施例1に記載のアンダーフィル絶縁フィルム)を接着した。次いで、NCF上に実施例および比較例で得られた離型フィルムを積層し、得られた積層体を330℃、圧着圧力0.6MPaの条件で、30秒間プレスした。次いで、積層体を室温まで冷却してから離型フィルムをNCFから剥離した。次いで、離型フィルムの表面を観察し、NCFの付着の有無を以下の基準で評価した。
◎:離型フィルムの表面に粉状の付着物が観察されなかった
〇:離型フィルムの表面に粉状の付着物が極わずかに観察された
×:離型フィルムの表面に粉状の付着物が観察された
【0074】
(2)剥離強度評価
被着体としてポリイミド粘着テープ(日東電工製、テープ幅25mm)を用い、表に示す各離型フィルムの離型層と、ポリイミド粘着テープの粘着層を、向かい合うように重ねて、330℃、1MPaの圧力でプレスすることで積層体を得た。次いで180°剥離試験を実施し、ポリイミド粘着テープと離型フィルム間の剥離強度を測定した。
【0075】
(3)実装用ボンダーを用いた熱伝導性試験
10mm角のシリコンウェハ2枚の間に熱電対を挟んだチップ形状物を、150℃に熱したステージに置き、その上に離型フィルムを配置した。次に、330℃に設定した実装用ボンダーを用いて、荷重10Nで30秒間、離型フィルムを介してチップ形状物を加圧した。その際、チップ形状物の温度を測定し、ボンダー温度(330℃)と、チップ形状物の温度差を算出した。
【0076】
【0077】
電子部品同士を加熱圧着する際の接着剤の付着評価において、実施例の離型フィルムは、電子部品同士を加熱圧着する際の接着剤の付着が無いか、わずかの付着であり、良好な離型性を示した。これに対し、比較例の離型フィルムは、粘着剤の付着が観察された。また、剥離強度評価においては、実施例の離型フィルムは、比較例のフィルムに比べて剥離強度が低く、離型性が高いことが示唆された。さらに、実装用ボンダーを用いた熱伝導性試験においては、全体膜厚の薄いフィルムのほうが、ボンダーとチップの温度差が小さく、熱伝導性が良好であることが確認された。加えて、プライマー層を有する離型フィルム(実施例2~5)には、プライマー層のないフィルムと比較して、NCFの付着が少なく、また剥離強度が低いことから、良好な離型性が確認された。
【0078】
この出願は、2018年8月30日に出願された日本出願特願2018-161770号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0079】
A 耐熱性樹脂層
B 離型層
C 耐熱性樹脂層
D 耐熱性樹脂層
P プライマー層
50 離型フィルム