(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】工作機械および表示制御装置
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4063 20060101AFI20220106BHJP
G05B 19/18 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
G05B19/4063 L
G05B19/18 W
(21)【出願番号】P 2021106226
(22)【出願日】2021-06-28
【審査請求日】2021-07-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】特許業務法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】榎本 潤次郎
(72)【発明者】
【氏名】大矢 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】香田 信平
(72)【発明者】
【氏名】長野 利隆
【審査官】尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-67887(JP,A)
【文献】特開2016-224695(JP,A)
【文献】特開2012-88967(JP,A)
【文献】特開2018-20426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18-19/416
G05B 19/42-19/46
B23Q 15/00-15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を取り付け可能な取付部と、
加工プログラムにしたがって前記取付部の移動と前記工具の回転速度とを制御する数値制御部と、
前記工具の振動を検出する振動検出部と、
を有する工作機械の状態を表示制御する表示制御装置であって、
前記振動検出部で検出される振動レベルの変化と、工具の回転速度の変化とを示す時系列データを表示制御する表示制御部を備え、
前記表示制御部は、前記回転速度の変更指示を受け付けた際に、前記変更指示を示すマーカを前記時系列データに重ねて表示するように表示制御する、表示制御装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、オペレータの操作入力による選択指示に応じて、前記工具の回転速度の変化とともに又は前記工具の回転速度の変化に代えて他のパラメータの変化を前記時系列データとして表示させる、請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記他のパラメータの選択対象として、前記加工プログラムのブロック番号および前記振動レベルが最大となるピーク周波数の少なくとも一方が含まれる、請求項2に記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記変更指示に対応する変更内容を数値として表す変更適用画面を表示させる、請求項1~3のいずれかに記載の表示制御装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記マーカをオペレータの選択入力を受け付ける入力オブジェクトとして表示し、
いずれかのマーカが選択された場合に、前記変更適用画面として、選択されたマーカに対応する変更内容を表示する、請求項4に記載の表示制御装置。
【請求項6】
オペレータの操作入力を受け付ける入力部と、
工具を取り付け可能な取付部と、
加工プログラムにしたがって前記取付部の移動と前記工具の回転速度とを制御する数値制御部と、
前記工具の振動を検出する振動検出部と、
前記振動検出部で検出される振動レベルの変化と、工具の回転速度の変化とを示す時系列データを表示制御する表示制御部と、
を備え、
前記表示制御部は、前記入力部から前記回転速度の変更指示を受け付けた際に、前記変更指示の時を示すマーカを前記時系列データに重ねて表示する、工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械において発生するびびり振動への対策を支援するための表示制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械において、びびり振動の発生はワーク加工面の品質低下につながるため、その発生を抑制することは重要である。びびり振動の発生原因は多岐にわたる。振動源が工具の場合もあれば、ワークの場合もある。この原因を把握し排除するために、オペレータは自身の経験に基づいて対処することが多い。例えば、振動の音を聞き、ワークの加工面を観察してびびり振動の発生原因を予想し、主軸の回転速度や送り速度、工具の切込み深さや切込み幅などを調整する。それでもびびり振動が収まらない場合は、ワークの固定方法の変更や工具の変更を試みる。このような対処方法は、オペレータ自身の経験や知見に基づいて選択される。
【0003】
びびり振動の要因は複数ある。主なものとして、振動により生じた加工面の起伏が工具の切込み厚さを変動させることに起因する再生びびりと、固有振動数に基づく共振による強制びびりがある。このようなびびり振動が発生したときに、これを収束させるようオペレータの操作を支援する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、オペレータは、自身が行ったびびり振動への対処が有効であったか否か、また有効であった場合の操作がどのようであったかを事後的に判断できるよう、その操作を詳細に記録しておくことが望ましい。それにより、その後にびびり振動が発生したときにこれを効率よく収束させやすくなる。しかしながら、オペレータが機械の操作と同時にその記録を行うのは容易ではない。特にびびり振動の大きさや周波数などの特徴量は加工中に時々刻々と変化するため、オペレータが手で記録する手法では操作内容と操作タイミングとの間に時間的ずれが生じてしまう可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、工具を取り付け可能な取付部と、加工プログラムにしたがって取付部の移動と前記工具の回転速度とを制御する数値制御部と、工具の振動を検出する振動検出部と、を有する工作機械の状態を表示制御する表示制御装置である。この表示制御装置は、振動検出部で検出される振動レベルの変化と、工具の回転速度の変化とを示す時系列データを表示制御する表示制御部を備える。表示制御部は、回転速度の変更指示を受け付けた際に、変更指示を示すマーカを時系列データに重ねて表示するように表示制御する。
【0007】
本発明の別の態様は工作機械である。この工作機械は、オペレータの操作入力を受け付ける入力部と、工具を取り付け可能な取付部と、加工プログラムにしたがって取付部の移動と前記工具の回転速度とを制御する数値制御部と、工具の振動を検出する振動検出部と、振動検出部で検出される振動レベルの変化と、工具の回転速度の変化とを示す時系列データを表示制御する表示制御部と、を備える。表示制御部は、入力部から回転速度の変更指示を受け付けた際に、変更指示の時を示すマーカを時系列データに重ねて表示する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、工作機械の使用に際し、オペレータによるびびり振動への対策を支援する表示が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る工作機械の概略構成を表す斜視図である。
【
図2】びびり振動の検出に関わる機能部の電気的構成を模式的に示す図である。
【
図4】制御装置による制御状態を管理するための管理画面を表す図である。
【
図5】チューニング画面およびステータス画面を表す図である。
【
図7】振動制御処理の過程で表示されうる画面例を表す図である。
【
図8】振動制御処理の過程で表示されうる画面例を表す図である。
【
図10】
図9のS22における主軸回転速度調整処理を表すフローチャートである。
【
図11】振動制御処理の過程で表示されうるステータス画面の一例を表す図である。
【
図12】変形例に係るステータス画面を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係る工作機械の概略構成を表す斜視図である。なおここでは、工作機械1を正面からみて左右方向,上下方向,前後方向を、それぞれX軸方向,Y軸方向,Z軸方向とする。
【0011】
工作機械1は、横型のマシニングセンタであり、加工装置2および制御ユニット4を備える。加工装置2を覆うように図示しない筐体が設けられ、その筐体の側面に操作盤が設けられている。操作盤は、オペレータが操作可能なタッチパネル(後述)を有する。
【0012】
加工装置2は、ベッド10と、ベッド10に立設されたコラム12と、コラム12の前面側に移動自在に設けられた主軸頭14と、ベッド10上に移動自在に設けられたテーブル16を備える。主軸頭14は、Z軸方向の軸線を有し、主軸18をその軸線周りに回転可能に支持する。主軸頭14には、主軸18を回転駆動するためのスピンドルモータが設けられている。主軸18は、工具ホルダ20に保持された工具Tを同軸状に取り付け可能な「取付部」として機能する。テーブル16には、図示略の治具を介してワークWが固定される。
【0013】
コラム12の前面にガイドレール22が設けられ、サドル24がX軸方向に移動可能に支持される。サドル24の前面にはガイドレール26が設けられ、主軸頭14がY軸方向に移動可能に支持される。サドル24および主軸頭14の移動は、図示略の送り機構とそれを駆動するサーボモータにより実現される。この送り機構は、例えばボールねじを用いたねじ送り機構である。主軸18は、サドル24および主軸頭14が駆動されることによりX,Y軸方向に移動自在である。主軸頭14には、加速度センサ30が内蔵されている。加速度センサ30は、工具Tのびびり振動を検出するために用いられるが、その詳細については後述する。
【0014】
一方、ベッド10の上面にガイドレール32が設けられ、サドル34がZ軸方向に移動可能に支持される。サドル34上にテーブル16が固定されている。サドル34の移動は、図示略の送り機構とそれを駆動するサーボモータにより実現される。この送り機構は、例えばボールねじを用いたねじ送り機構である。ワークWは、サドル34が駆動されることによりZ軸方向に移動自在である。すなわち、以上の構成により、ワークWと工具Tとの相対位置を三次元的に調整することができる。
【0015】
図2は、びびり振動の検出に関わる機能部の電気的構成を模式的に示す図である。
上述のように、主軸頭14には加速度センサ30が内蔵されている。加速度センサ30は、ワークWの加工中に工具Tに生じる振動を検出し、その振動に応じた信号を出力する。加速度センサ30にて検出された加速度(より詳細には、加速度を表す電気信号)は、信号処理装置40に入力される。
【0016】
信号処理装置40は、専用の基板にA/D変換器42および周波数解析装置44を搭載して構成される。加速度センサ30から出力された信号は、A/D変換器42によりAD変換され、周波数解析装置44によりFFT(高速フーリエ変換)が行われる。それらの情報が制御ユニット4に出力される。
【0017】
制御ユニット4は、制御装置50および振動処理装置52を含む。制御ユニット4には表示装置54が接続されている。表示装置54は、操作盤に設けられたタッチパネルであり、工作機械1の制御状態を表す画面やオペレータが操作する操作画面を表示する。
【0018】
振動処理装置52は、制御装置50から制御状態を示す情報を受け取る一方、オペレータの操作入力に応じた制御指令を制御装置50に対して出力する。振動処理装置52は、信号処理装置40や制御装置50から受信した信号に基づき、びびり振動に関する所定の処理を実行する。
【0019】
振動処理装置52は、信号処理装置40から入力される信号に基づき、主軸18の振動状態(つまり工具Tの振動状態)を示す画面(ステータス画面)を表示させるとともに、びびり振動の発生有無を判定する。振動処理装置52は、びびり振動が発生したと判定すると、そのびびり振動を収束させるための操作画面(チューニング画面)を表示させる。これらの詳細については後述する。
【0020】
制御装置50は、手動又は自動で生成された加工プログラム(NCプログラム)にしたがってモータ等のアクチュエータを制御する。ワークWにターニング加工を施す際、制御装置50は、駆動回路56を介してサーボモータを駆動し、主軸頭14を送り駆動する。また、駆動回路56を介してスピンドルモータを駆動し、主軸18を回転させる。
【0021】
図3は、制御ユニット4の機能ブロック図である。
制御ユニット4の各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)および各種コンピュータプロセッサなどの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアによって実現される。コンピュータプログラムは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、それらの上位層に位置する各種アプリケーションプログラム、また、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
【0022】
制御ユニット4は、ユーザインタフェース処理部110、データ処理部112、データ格納部114および検出部116を含む。ユーザインタフェース処理部110は、オペレータからの操作入力を受け付けるほか、画像表示や音声出力など、ユーザインタフェースに関する処理を担当する。データ処理部112は、ユーザインタフェース処理部110により取得されたデータ、検出部116により検出された情報およびデータ格納部114に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部112は、ユーザインタフェース処理部110、検出部116およびデータ格納部114のインタフェースとしても機能する。データ格納部114は、各種プログラムと設定データを格納する。
【0023】
ユーザインタフェース処理部110は、入力部120および出力部122を含む。入力部120は、タッチパネルあるいはハンドル等のハードデバイスを介してオペレータからの入力を受け付ける。入力部120は変更受付部124を含む。変更受付部124は、主軸18の回転速度や送り速度の変更など、オペレータによる変更指示を受け付ける。
【0024】
出力部122は、画像表示あるいは音声出力によりオペレータに各種情報を提供する。出力部122は、表示部126を含む。表示部126は、表示装置54おける操作画面として、パネル(キーボードおよび機械操作パネル)を画面表示させてもよい。表示部126は、主軸18の状態(制御状態や振動状態)を示すステータス画面を表示し、びびり振動が発生した場合には上述したチューニング画面を表示する(詳細後述)。
【0025】
検出部116は、振動検出部130および回転速度検出部132を含む。振動検出部130は、加速度センサ30からのセンサ出力に基づき主軸18の振動(つまり工具Tの振動)を検出し、また、信号処理装置40から出力される情報を取得する。回転速度検出部132は、主軸18に付設したロータリエンコーダ(図示せず)のセンサ出力に基づき、主軸18の回転速度(つまり工具Tの回転速度)を検出する。
【0026】
データ格納部114は、NCプログラム格納部140、工具データ格納部142および表示データ格納部144を含む。NCプログラム格納部140は、加工プログラム(NCプログラム)を格納する。工具データ格納部142は、工作機械1にて使用される工具Tの情報(工具情報)を工具IDに対応づけて格納する。工具情報には、例えば工具の種類、工具径、刃数などの情報が含まれる。また、振動処理装置52による主軸回転速度の調整可能な範囲(以下「調整範囲」という)についても工具情報と対応づけられている。表示データ格納部144は、表示部126に表示させる画面データ、画面内に表示させるソフトキー、ダイアログボックス等の種々の画像データを格納する。
【0027】
データ処理部112は、数値制御部150、工具情報管理部152、振動処理部154、推奨回転速度計算部156および表示制御部158を含む。数値制御部150は、制御装置50の機能を含む。数値制御部150は、入力部120から入力される指令に基づき、データ格納部114に格納されている加工プログラムにしたがって加工装置2を制御する。
【0028】
数値制御部150は、また、制御装置50による現在の制御状態を示す情報(制御情報)を振動処理部154へ逐次送信する。数値制御部150は、例えば主軸回転速度の制御指令値(以下「制御指令主軸回転速度」ともいう)を送信する。
【0029】
工具情報管理部152は、工具データ格納部142に格納される工具Tの情報(工具情報)を工具IDに対応づけて管理する。
【0030】
振動処理部154は、振動処理装置52の機能としてびびり検出部160を含む。上述した周波数解析装置44が、加速度センサ30から連続的に出力される信号を受信し、その信号を所定のサンプリング間隔でフーリエ解析(周波数解析)することで、工具Tに生じている振動の周波数(「振動周波数」という)とその大きさ(「振動レベル」ともいう)を算出する。びびり検出部160は、これら振動レベルおよび振動周波数の情報を取得し、その振動レベルが所定の閾値を超えたときにびびり振動が発生したと判定する。
【0031】
なお、本実施形態では、周波数解析装置44を信号処理装置40に設け(
図2参照)、制御ユニット4と分離する構成を例示したが、変形例においては、周波数解析装置44の機能を「周波数解析部」として振動処理部154に含めてもよい。また、信号処理装置40を制御ユニット4の一部として組み込んでもよい。
【0032】
推奨回転速度計算部156は、びびり振動が発生したときに、これを収束させるために好適な主軸回転速度の変更先(「推奨回転速度」ともいう)を計算する。なお、推奨回転速度は、例えば特開2018-176296号公報に記載の方法で算出できる。
【0033】
具体的には、検出されたびびり振動が再生びびりである場合、そのときの振動周波数ω0(びびり周波数)および工具Tの刃数nに基づいて、下記式(1)により推奨回転速度SS(推奨値)を算出できる。
SS=(60×ω0)/(n×k)・・・(1)
但し、kは1以上の任意の整数である。
【0034】
この推奨回転速度SSは、安定限界線図におけるk次の安定ポケットに対応した回転速度である。主軸回転速度を推奨回転速度SSに調整することで、びびり振動を解消できる可能性がある。びびり振動が発生したときの主軸回転速度S0に対し、例えばkを2としたときに上記式(1)によって得られる推奨回転速度SSが安定領域内となるような場合には、主軸回転速度をS0からSSに変更することによってびびり振動を解消できる。
【0035】
なお、工具Tの刃数nは、現在使用中の工具Tの工具IDに基づいて取得できる。工具情報管理部152は、その工具IDに基づいて工具データ格納部142を参照し、刃数nを取得する。推奨回転速度計算部156は、オペレータに提示する推奨回転速度として、現在の制御指令主軸回転速度よりも高い第1推奨値と、現在の制御指令主軸回転速度よりも低い第2推奨値を算出する。
【0036】
表示制御部158は、表示部126による表示を制御する。表示制御部158は、制御装置50による制御状態を示す画面(ステータス画面等)や、びびり振動の発生を監視するための画面(チューニング画面等)を表示部126に表示させる。
【0037】
振動処理部154、推奨回転速度計算部156、表示制御部158、変更受付部124および表示部126は、工作機械1の稼働状態を表示制御する「表示制御装置」として機能する。
【0038】
次に、びびり振動の発生検知および抑制に関する処理について具体的に説明する。
図4は、制御装置50による制御状態を管理するための管理画面を表す図である。
この管理画面では、画面右側領域に実行中のNCプログラムが表示されている。画面左上領域にステータス画面が表示され、画面左下領域にチューニング画面が表示されている。これらの表示には、表示データ格納部144に格納されたデータが用いられる。
【0039】
図5は、チューニング画面およびステータス画面を表す図である。
図5(A)はチューニング画面の一例を示し、
図5(B)はステータス画の一例を示す。
【0040】
図5(A)に示すように、チューニング画面の中央領域には、主軸回転速度を表すためのオーバーライドバー180が表示される。オーバーライドバー180は、画面の左右に延びるスケールオブジェクト(スケール機能を有するオブジェクト)であり、その中央がプログラム指令主軸回転速度の100%の位置を示す。ここで、「プログラム指令主軸回転速度」は、加工プログラムにより指定される主軸回転速度である。プログラム指令主軸回転速度は、プログラム上で新たな値が指令されない限り変化しない。オーバーライドバー180の上側に現在の制御指令主軸回転速度が表記される(図示の例では2500min
-1)。制御指令主軸回転速度は、PLCにより指令される主軸回転速度である。
【0041】
チューニング画面の起動時は、プログラム指令主軸回転速度と制御指令主軸回転速度は等しくなるため、オーバーライドバー180の中央上側に制御指令主軸回転速度が表示される。なお、振動処理装置52により主軸回転速度が変更された場合には、変更された割合に応じて制御指令主軸回転速度の表示位置が変更される。なお、正常な制御が行われている限り、上述したロータリエンコーダにより検出される実際の主軸回転速度(「実主軸回転速度」ともいう)は、制御指令主軸回転速度とほぼ一致することとなる。
【0042】
オーバーライドバー180において、右端はプログラム指令主軸回転速度の150%(つまり+50%)の位置を示し、左端はプログラム指令主軸回転速度の50%(つまり-50%)の位置を示す。すなわち、オーバーライドバー180は、現在のプログラム指令主軸回転速度に対する制御指令主軸回転速度の変更の割合を示す「割合表示部」に対応する。
【0043】
チューニング画面の上領域には、現時点で検出されている振動レベルとピーク周波数が表記される。「ピーク周波数」は、現時点で振動レベルが最大となっている振動周波数を意味する。図示の例では、振動レベル:68(dB)、ピーク周波数:1152(Hz)が示されている。さらに、この振動レベルによりびびり振動の発生が判定されたため、その旨を報知する「びびり発生中」との文字列が表示されている。
【0044】
びびり振動が検出されると、上述のように、推奨回転速度計算部156が、これを収束させるための2つの推奨回転速度(第1推奨値および第2推奨値)を算出する。表示制御部158は、算出された2つの推奨値をチューニング画面に表示させる。図示の例では、スケールに沿った下側に第1推奨値として「2878min-1」が表示され、第2推奨値として「2466min-1」が表示されている。
【0045】
オーバーライドバー180においてプログラム指令主軸回転速度に対する割合に対応する箇所に、制御指令主軸回転速度の位置を示す▼とその数値(2500min-1)が表示される。そして、第1推奨値の位置を示す▲とその数値(2878min-1)が、オーバーライドバー180においてプログラム指令主軸回転速度に対する割合に対応する箇所に表示される。同様に、第2推奨値の位置を示す▲とその数値(2466min-1)が、オーバーライドバー180においてプログラム指令主軸回転速度に対する割合に対応する箇所に表示される。
【0046】
なお、主軸回転速度の下の数値(m/min)は、工具の周速(m/min)を示し、下記式(2)により算出される。
周速[m/min]=主軸回転速度[min-1]×π×(工具直径[mm]/1000)・・・(2)
この「周速」は、工具負荷の指標となる。
【0047】
ただし、後述のように、オペレータの事前設定により第1推奨値および第2推奨値の一方が選択可能とされるため、選択対象でない推奨値はグレーアウトされる。この推奨値の事前設定は、後述の選択ボタン182a,182bを切り替えることで行うことができる。その詳細な説明については省略する。
【0048】
チューニング画面はタッチパネル機能を有する操作画面であり、オペレータにより選択可能な複数種のボタンが表示される。オーバーライドバー180の左右端のやや下方には、推奨値の設定方法を選択するための選択ボタン182a,182bが表示される。チューニング画面の下領域には、リセットボタン184と調整ボタン186が表示される。調整ボタン186は、主軸回転速度について速度変更指令を受け付ける「指示入力部」として機能する。リセットボタン184は、制御指令主軸回転速度をプログラム指令主軸回転速度にリセットする指令を受け付ける「リセット指令入力部」として機能する。
【0049】
ただし、リセットボタン184および調整ボタン186については、振動処理部154による処理過程で選択可否が判定され、選択可能であるときは通常の表示(「アクティブ表示」ともいう)がなされ、選択不可のときはグレーアウトされる。調整ボタン186は、選択されている推奨値が事前設定した調整範囲内であればアクティブ表示される。
【0050】
図示の例では、事前設定として第1推奨値が選択されており、選択ボタン182aがアクティブ表示されている。その状態でびびり振動が発生したため、第2推奨値はグレーアウトされている。そして、選択されている第1推奨値が調整範囲内であったため、調整ボタン186がアクティブ表示されている。オペレータは、この状態で調整ボタン186をタップ(選択)することにより、制御指令主軸回転速度(2500min-1)を推奨回転速度(第1推奨値:2878min-1)に変更するよう指示できる。
【0051】
本実施形態では図示のように、主軸回転速度の調整範囲が、プログラム指令主軸回転速度に対して50~150%(つまり±50%)の範囲に設定されている。それにより、オペレータの想定外に主軸18の回転数(制御状態)が急変しないようにされている。
【0052】
振動処理部154は、オペレータの入力に応じて数値制御部150に対し、主軸回転速度の変更指示を出力する。数値制御部150は、この変更指示を受けて主軸回転速度の制御指令値(つまり制御指令主軸回転速度)を変更する。
【0053】
図5(B)に示すステータス画面は、
図5(A)のチューニング画面による推奨回転速度の提示に応じて制御指令主軸回転速度を変更した結果を例示する。このステータス画面は、初期設定のステータス画面(第1ステータス画面)である。ステータス画面の中央には、横軸を経過時間、縦軸を振動レベルおよび主軸回転速度とするサンプリング画面170が表示される。サンプリング画面170は、振動レベルおよび主軸回転速度の変化をリアルタイムで表示するリアルタイムチャートである。実線が振動レベル(dB)の変化を示し、点線が制御指令主軸回転速度(min
-1)の変化を示している。グラフ中の▼は、オペレータの操作入力(変更指示)に応じた制御指令主軸回転速度の切り替えタイミングを表すマーカである。
【0054】
このステータス画面はタッチパネル機能を有する操作画面でもあり、サンプリング画面170における横軸のスケールとして、最大10minとするパターンと、最大1min(60s)とするパターンのいずれかを選択できる。図示の例では、後者が選択されている。画面右端の「0min」が現在の時点であり、その左側にそれ以前のサンプリング履歴が連続的に表示されている。サンプリング画面170は、画面左上のデータ収集ボタン172をオンにすることでリアルタイム表示される。
【0055】
表示制御部158は、振動検出部130で検出される振動レベルの変化と、主軸回転速度(つまり工具Tの回転速度)の変化とを示す時系列データを、このステータス画面として表示制御する。表示制御部158は、オペレータの操作入力による主軸回転速度の変更指示を受け付けた際に、その変更指示タイミングを示すマーカ▼をその時系列データに重ねて表示させる。
【0056】
図示の例では、工作機械のアイドリング状態から約48秒前に、制御指令主軸回転速度を2500min-1として所定ブロックの加工が開始されている。その直後にびびり振動が発生したため、振動レベルが60dB程度まで急増している。このため、約45秒前にチューニング画面の提示にしたがったオペレータの操作により、制御指令主軸回転速度が2500min-1から約2878min-1に変更されている。その結果、約40秒前にびびり振動が収束し、振動レベルが40dB程度に低下した状態で加工が継続されている。約26秒前に当該ブロックの加工が終了している。
【0057】
図6は、ステータス画面の切替画面を表す図である。
図6(A)は第2ステータス画面を示し、
図6(B)は第3ステータス画面を示す。
図6(A)において、点線は加工プログラムのブロック番号を示している。オペレータは、図示略の設定画面により
図5(B)の画面を本図の第2ステータス画面に切り替えることができる。表示制御部158は、オペレータの操作入力による選択指示に応じて、指令主軸回転数とは別のパラメータであるブロック番号を時系列データとして表示させる。
【0058】
第2ステータス画面によれば、びびり振動が発生し、オペレータにより制御指令主軸回転速度が切り替えられたブロックを把握できる。図示の例では、加工プログラムにおける50番目のブロックにおいてびびり振動が発生し、オペレータの操作入力が行われたことが分かる。
【0059】
この第2ステータス画面では、第1ステータス画面にあった制御指令主軸回転速度そのものは表示されないが、その変更指示タイミング(マーカ▼)の表示が残されている。このため、第2ステータス画面を確認すれば、オペレータによりどのブロックで制御指令主軸回転速度が切り替えられたかは一目瞭然である。
【0060】
図6(B)において、点線はピーク周波数を時系列に示している。「ピーク周波数」は、各時点において振動レベルを最も大きくしている振動周波数を意味する。このため、びびり振動発生時のピーク周波数は、びびり振動そのものの周波数(「びびり周波数」ともいう)を示す。
【0061】
オペレータは、図示略の設定画面(プルダウンメニューなど)により
図5(B)又は
図6(A)の画面を本図の第3ステータス画面に切り替えることができる。表示制御部158は、オペレータの操作入力による選択指示に応じて、さらに別のパラメータであるピーク周波数を時系列データとして表示させる。
【0062】
第3ステータス画面によれば、びびり振動が発生し、オペレータにより制御指令主軸回転速度が切り替えられる直前のピーク周波数、つまりびびり振動の要因となっている周波数を把握できる。図示の例では、びびり周波数が約1200Hzであることを確認できる。
【0063】
この第3ステータス画面においても、第1ステータス画面にあった制御指令主軸回転速度そのものは表示されないが、その変更指示タイミング(マーカ▼)の表示が残されている。このため、第3ステータス画面を確認すれば、オペレータにより制御指令主軸回転速度が切り替えられる直前、つまりびびり振動が発生している状態でのピーク周波数を把握できる。
【0064】
なお、以上に述べた第1~第3ステータス画面に表示される振動レベル、制御指令主軸回転速度、変更指示タイミング(マーカ)、ブロック番号およびピーク周波数を含む時系列データは、制御履歴データとしてデータ格納部114に格納される。このため、オペレータは、各ステータス画面を事後的に確認することができる。
【0065】
図7および
図8は、振動制御処理の過程で表示されうる画面例を表す図である。
この例では、
図7に示すように、オペレータによる制御指令主軸回転速度の調整が2回行われた後、ステータス画面において、時系列データに変更タイミングを示すマーカ▼が2つ重畳表示されている。この2回の調整でもびびり振動が収束しなかったため、チューニング画面において、3回目の推奨回転速度の提示がなされている。
【0066】
この3回目の提示にしたがってオペレータが制御指令主軸回転速度の変更を行ったため、
図8に示すように、ステータス画面において、時系列データに変更タイミングを示すマーカ▼が3つ重畳表示されている。この3回の調整でもびびり振動が収束しなかったため、チューニング画面において、4回目の推奨回転速度の提示がなされている。
【0067】
このように、制御指令主軸回転速度の切り替えが複数回にわたる場合、チューニング画面に提示される推奨回転速度がその都度変化する。そして、オペレータによる入力操作に伴う振動レベルの変化や制御指令主軸回転速度の変更履歴が、ステータス画面において時々刻々更新される。
【0068】
次に、びびり振動を抑制するための具体的処理について説明する。
図9は、振動制御処理を表すフローチャートである。
図10は、
図9のS22における主軸回転速度調整処理を表すフローチャートである。
図11は、振動制御処理の過程で表示されうるステータス画面の一例を表す図である。
【0069】
図9に示すように、振動制御処理において、振動処理部154は、検出部116を介して主軸18の振動データを取得する(S10)。表示制御部158は、その振動データに基づいてステータス画面およびチューニング画面を更新する(S12)。
【0070】
びびり振動が発生しない間もステータス画面およびチューニング画面は表示される。振動レベルが閾値を超え、びびり検出部160がびびり振動を検出すると(S14のY)、推奨回転速度計算部156が推奨回転速度を計算する(S16)。そして、推奨値提示処理が実行される(S18)。
【0071】
この推奨値提示処理においては、表示制御部158は、算出された第1推奨値および第2推奨値の双方が調整範囲内(本実施形態ではプログラム指令主軸回転速度の±50%以内)にあれば、両推奨値を表示させる(
図5(A)参照)。この場合、オペレータが調整ボタン186をタップ(選択)することにより、制御指令主軸回転速度が第1推奨値へ変更されることとなる。
【0072】
一方、選択した側の推奨値(選択推奨値)のみが調整範囲にあれば、表示制御部158は、その選択推奨値のみを表示させ、調整ボタン186を有効にする。この場合も、オペレータが調整ボタン186をタップすることにより、制御指令主軸回転速度が第1推奨値へ変更されることとなる。
【0073】
選択していない側の推奨値(非選択推奨値)のみが調整範囲にあれば、表示制御部158は、その非選択推奨値のみ表示させるが、調整ボタン186は無効にする。すなわち、この状態ではオペレータは主軸回転速度を変更できない。選択ボタン182a,182bを切り替えて選択推奨値を変更すれば、主軸回転速度を変更できるようになる。
【0074】
第1推奨値および第2推奨値のいずれも調整範囲内にない場合、表示制御部158は、両推奨値を非表示とし、調整ボタン186を無効とする。この状態ではオペレータは主軸回転速度を変更できない。
【0075】
オペレータの操作入力により調整ボタン186がタップされると(S20のY)、主軸回転速度調整処理が実行される(S22)。
【0076】
図10に示すように、主軸回転速度調整処理では、振動処理部154が、選択された推奨回転速度への変更指示を出力する(S62)。数値制御部150は、制御指令主軸回転速度をその推奨回転速度に変更して主軸18を制御する。表示制御部158は、ステータス画面およびチューニング画面を更新する(S63)。このとき、ステータス画面において制御指令主軸回転速度の切り替えタイミングを示す▼が追加され、チューニング画面において制御指令主軸回転速度の表示位置が更新される。また、リセットボタン184が有効とされており、オペレータは、いつでも制御をリセットすることができる。リセットボタン184は、プログラム指令主軸回転速度と制御指令主軸回転速度とが異なるときに有効化される。
【0077】
振動処理部154は、検出部116を介して主軸18の振動データを取得する(S64)。このとき、所定の終了条件が成立していなければ(S66のN)、推奨回転速度計算部156が推奨回転速度を再計算する(S68)本実施形態では、この「終了条件」として、びびり振動が収束したこと、びびり振動が調整前よりも大きくなったこと、びびり振動の種類が変化したこと、びびり振動の周波数が変化したことなどが設定されている。なお、変形例においては、これらの全てではなくいずれかを終了条件として設定してもよい。表示制御部158は、この再計算中において停止ボタン187を表示させたままとする。
【0078】
算出された推奨値が調整範囲内であれば(S70のY)、S62へ戻る。こうして終了条件が成立すれば(S66のY)、S68およびS70の処理をスキップする。表示制御部158は、推奨値を非表示とし(S72)、調整ボタン186をグレーアウトさせて無効にする(S74)。一方、算出された推奨値が調整範囲内でない場合も(S70のN)、表示制御部158は、推奨値を非表示とし(S72)、調整ボタン186をグレーアウトさせて無効にする(S74)。
【0079】
図9に戻り、調整ボタン186がタップされなければ(S20のN)、S22の処理をスキップする。びびり振動が検出されなければ(S14のN)、S16~S22の処理をスキップする。そして、工作機械1の稼働が停止されるなど、システム終了となれば(S24のY)、一連の処理を終了する。システム終了でなければ(S24のN)、S10へ戻る。
【0080】
以上の処理過程において、仮に
図11に示す時系列データが得られた場合、前半と後半で振動レベルが類似した挙動を示すものの、マーカ▼が後半にしか表示されていないため、オペレータの関与は後半のみに認められることが分かる。すなわち、前者は加工プログラムの指令に基づいた結果であり、後者はオペレータの操作入力による指令に基づいた結果であることが分かる。
【0081】
以上、実施形態に基づいて工作機械1について説明した。
本実施形態によれば、びびり振動対処のための情報、つまり主軸回転速度の変更とその変更タイミング、その変更タイミングにあたるプログラムの個所などを、工作機械1側で自動的に記録し、重畳的に表示する。それにより、工作機械1の稼働中のオペレータの手間を削減できる。工作機械1が時系列データを常に記録することで、制御指令主軸回転速度の変更タイミング、変更内容、変更時の制御状態などのデータを完全に同期させたものとしてオペレータに提示できる。
【0082】
振動レベルの時系列データに対して加工条件(主軸回転速度)を重畳的に表示することで、自らが変更した加工条件を容易に確認できる。また、主軸回転速度を複数回変更した場合において、びびり振動の抑制に最も効果的な加工条件を容易に確認できるようになる。
【0083】
また、振動レベルの時系列データに対し、加工条件(主軸回転速度)の変更ポイント(マーカ)とピーク周波数を重畳的に表示することで、びびり周波数を容易に特定できる。特許文献1に記載の技術を併せて利用すれば、びびり振動の発生個所を特定することもできる。このため、万が一制御指令主軸回転速度の変更だけでびびり振動を収束できなかった場合でも、工具、工具ホルダ、ワークの固定方法のいずれを変更すればよいか容易に判断できるようになる。
【0084】
さらに、振動レベルの時系列データに対し、加工条件(主軸回転速度)の変更ポイント(マーカ)とプログラムのブロック番号を重畳的に表示することで、プログラム個所を容易に特定できる。さらに1ブロックの中でも特にびびり振動が大きくなる個所も容易に特定できる。主軸回転速度の表示をオフにしても、マーカを表示することで、変更ポイントは容易に把握できる。
【0085】
また、びびり振動が発生した際には、これを収束するための制御指令主軸回転速度の変更推奨値(推奨回転速度)が工作機械において内部的に計算され、オペレータはそれを承認するかどうかを判断するだけでよいため、迅速な対応をとりやすい。経験が少なく勘が働きにくいオペレータであっても対応しやすい。本実施形態によれば、工作機械1におけるびびり振動を抑制する操作を促すにあたり、オペレータに使い勝手のよい表示画面を提供できる。
【0086】
[変形例]
【0087】
図12は、変形例に係るステータス画面を表す図である。
本変形例では、ステータス画面として、サンプリング画面170とともに、加工条件の変更内容が数値として示される変更適用画面190が含まれる。表示制御部158は、オペレータの操作に基づいてこの変更適用画面190を表示させる。図示の例では、オペレータによる制御指令主軸回転速度の調整が4回行われており、時系列データに変更タイミングを示すマーカ▼が4つ重畳表示されている。
【0088】
変更適用画面190には、合計調整回数、調整番号、主軸回転速度の変更内容、送り速度の変更内容、プログラム名およびプログラム行(ブロック番号)が表示されている。ここで、「合計調整回数」はびびり振動収束に向けて制御指令値を変更した回数を示す。
【0089】
「調整番号」は、オペレータが確認しようとする調整の番号であり、主軸回転速度が複数回変更された場合に任意選択できる。図示の例では4つのマーカ▼が示す1~4番目のいずれかの番号を入力できる。すなわち、表示制御部158は、マーカをオペレータの選択入力を受け付ける入力オブジェクトとして表示し、いずれかのマーカが選択された場合に、変更適用画面190として、選択されたマーカに対応する変更内容を表示する。オペレータは、+ボタン又は-ボタンにより調整番号を増減することで特定できる。この例では、1番目の調整番号が選択されたため、該当するマーカがアクティブ表示され、他のマーカがグレーアウトされている。
【0090】
その結果、その1番目の調整において、制御指令主軸回転速度が2458min-1から2558min-1に変更されたこと、送り速度が880mm/minから1013mm/minに変更されたこと、その変更がブロック番号:10番においてなされたことなどが表示されている。本図の例では、1番目の調整ではびびり振動が収束しておらず、4番目の調整で収束している。このため、調整番号として4番目を指定すれば、びびり振動を収束させるに到った指令主軸回転数を確認できる。
【0091】
本変形例によれば、加工後に変更適用画面190を表示させることで、びびり振動の発生時に適用した加工条件と振動の変化を事後的に数値として明確に確認できる。
【0092】
上記実施形態では、制御指令値として制御指令主軸回転速度を例示したが、これとともに又はこれに代えて主軸の送り速度の指令値(指令送り速度)を時系列データに含めてもよい。それにより、主軸回転速度および主軸送り速度のいずれがびびり振動の主要因となっているかを把握できるようになる。
【0093】
上記実施形態では、第2,第3ステータス画面として、時系列データにブロック番号やピーク周波数などの他のパラメータを表示する一方で指令主軸回転数の表示をオフにする例を示した。変形例においては、制御指令主軸回転速度の表示を維持しつつ他のパラメータを重畳表示させてもよい。
【0094】
上記実施形態では、
図8に示したように、主軸回転速度の調整範囲が、制御指令主軸回転速度に対して50~150%(つまり±50%)の範囲に設定される例を示した。変形例においては、オペレータの判断により調整範囲を設定変更することができる。
【0095】
例えば、調整範囲を50~150%(つまり±50%)とすることもできれば、調整範囲を80~120%(つまり±20%)とできるようにしてもよい。また、制御指令主軸回転速度に対してプラス側とマイナス側で調整可能な割合(%)を異ならせることができるようにしてもよい。例えば、比較的安全側であるマイナス側の調整範囲を大きくするなど、適宜設定できる。これらの設定は、チューニング画面を設定画面に切り替えることで行うことができる。このような設定により、オペレータの判断により調整範囲の上限と下限を設定でき、個々のオペレータの感覚に合わせた運用が可能となる。
【0096】
上記実施形態では、チューニング画面を表示し、びびり振動が発生した際に、主軸回転速度の変更推奨値が工作機械において内部的に計算される例を示した。変形例においては、オペレータが自身の感覚に基づいて変更してもよい。その場合、チューニング画面を省略してもよい。具体的には、工作機械の操作盤に設けられたオーバーライドスイッチをオペレータが手動操作して制御指令値の変更を行った場合などが該当する。その際、びびり振動対処の情報を工作機械側で自動的に記録して重畳的に表示することで、オペレータがその後のびびり振動対策に反映させることができる。
【0097】
上記実施形態では、オーバーライドバー180の上側に現在の制御指令主軸回転速度を表示させる例を示した。変形例においては、これに代えて実主軸回転速度を表示させてもよい。現在の制御指令主軸回転速度が実主軸回転速度にほぼ等しくなるためである。その場合、「実主軸回転速度」が「第2回転速度」に該当する。推奨回転速度計算部156は、オペレータに提示する推奨回転速度として、実主軸回転速度よりも高い第1推奨値と、実主軸回転速度よりも低い第2推奨値を算出する。
【0098】
上記実施形態では、工作機械1として横型のマシニングセンタを例示した。変形例においては、縦型のマシニングセンタであってもよい。あるいは、ターニングセンサであってもよいし、マシニングセンタとターニングセンタの双方の機能を備えた複合加工機であってもよい。それらの工作機械に対し、上述したびびり振動を抑制するための表示制御を適用してもよい。
【0099】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 工作機械、2 加工装置、4 制御ユニット、12 コラム、14 主軸頭、16 テーブル、18 主軸、20 工具ホルダ、30 加速度センサ、40 信号処理装置、44 FFT、50 制御装置、52 振動処理装置、54 表示装置、110 ユーザインタフェース処理部、112 データ処理部、114 データ格納部、116 検出部、120 入力部、122 出力部、124 変更受付部、126 表示部、130 振動検出部、132 回転速度検出部、150 数値制御部、152 工具情報管理部、154 振動処理部、156 推奨回転速度計算部、158 表示制御部、160 びびり検出部、170 サンプリング画面、172 データ収集ボタン、180 オーバーライドバー、186 調整ボタン、190 変更適用画面、T 工具、W ワーク。
【要約】
【課題】工作機械の使用に際し、オペレータによるびびり振動への対策を支援する表示を提供する。
【解決手段】ある態様の表示制御装置は、工具を取り付け可能な取付部と、加工プログラムにしたがって取付部の移動と前記工具の回転速度とを制御する数値制御部と、工具の振動を検出する振動検出部と、を有する工作機械の状態を表示制御する。この表示制御装置は、振動検出部で検出される振動レベルの変化と、工具の回転速度の変化とを示す時系列データを表示制御する表示制御部を備える。表示制御部は、回転速度の変更指示を受け付けた際に、変更指示を示すマーカを時系列データに重ねて表示するように表示制御する。
【選択図】
図5